説明

膜形成方法及び電気光学装置の製造方法

【課題】膜厚ムラや塗布ムラの無い平坦な膜を形成することが可能な膜形成方法及び電気
光学装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】基体上の有機EL素子内に親液性領域70及び撥液性領域80のパターンを
形成する工程の後、不活性気体の雰囲気において、親液性領域に紫外線を照射する工程を
有しているので、撥液性領域を形成する際、親液性領域の一部に撥液性のフッ素原子が結
合した場合であっても、紫外線によって当該フッ素原子を除去することができる。これに
より、親液性領域の親液性が低下することは無く、良好な状態の正孔注入層を形成するこ
とが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜形成方法及び電気光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学装置のうち、例えば有機エレクトロルミネセンス装置(以下、「有機EL装置
」という。)の正孔注入層や液晶装置のカラーフィルタ層等の機能膜を形成する際に、液
滴吐出法と呼ばれる方法が用いられている。液滴吐出法は、複数種類の液体を混合した溶
媒に機能膜を構成する機能材料を溶解させてなるインクを基板上の画素領域に塗布し、こ
のインクの溶媒を蒸発させインクを乾燥することで機能膜を形成する手法である。
【0003】
液滴吐出法においては、基板上にインクを塗布する際に、インクが所望の位置に配置さ
れるように、基板上に親液性領域及び撥液性領域のパターンを形成する。例えば、基板上
に酸素プラズマを照射して親液性領域を形成した後、基板上にCFプラズマを照射して
撥液性領域を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】国際公開第99/48339号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、CFプラズマを照射して撥液性領域を形成する場合に、すでに親液化
された基板上の親液化領域の一部にフッ素原子が結合し、この部分が撥液化されるという
問題がある。そうなると、この撥液化された部分ではインクの塗布性が悪くなってしまう
ため、機能膜に膜厚ムラや塗布ムラが形成され、表示特性が低下してしまう。
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、膜厚ムラや塗布ムラの無い平坦な膜を形成
することが可能な膜形成方法及び電気光学装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る膜形成方法は、複数種類の液体を混合した溶媒
に機能材料を溶解させてなる液状組成物を基板上に塗布し、前記液状組成物を乾燥させて
膜を形成する膜形成方法であって、基板上に前記液状組成物に対する親液性領域及び撥液
性領域のパターンを形成する工程と、前記パターンを形成する工程の後、不活性気体の雰
囲気において、前記親液性領域の少なくとも一部に紫外線を照射する工程と、前記紫外線
を照射する工程の後、前記親液性領域に前記液状組成物を塗布する工程とを具備すること
を特徴とする。
【0006】
本発明によれば、基板上に親液性領域及び撥液性領域のパターンを形成する工程の後、
不活性気体の雰囲気において、親液性領域の少なくとも一部に紫外線を照射する工程を有
しているので、基板上に撥液性領域を形成する際に親液性領域の一部に撥液性の原子が結
合した場合であっても、紫外線によって当該原子を除去することができる。したがって、
親液性領域の親液性が低下することは無いため、液状組成物を塗布する工程においても濡
れ性が良くなる。これにより、膜厚ムラや塗布ムラの無い平坦な膜を形成することが可能
となる。
【0007】
また、前記パターンを形成する工程の前に、前記親液性領域に、光活性を有する材料か
らなる光活性層を形成する工程を更に具備することが好ましい。
液滴吐出法では、基板上に撥液性のパターンを形成する際に親液性領域の一部に撥液性
の原子が結合する他、有機物が付着することもある。この有機物も、親液性領域の親液性
を低下させる原因になる。本発明によれば、親液性領域に、光活性を有する材料からなる
光活性層が形成されるので、当該親液性領域に紫外線を照射したときに光活性層が活性化
し、光活性層の表面に付着した有機物を分解することができる。これにより、親液性領域
の親液性を向上させることが可能となる。
【0008】
また、前記光活性を有する材料が、インジウムチンオキサイド、酸化チタン、セレン化
カドミウム、硫化カドミウム及び酸化亜鉛のうち少なくとも1つであることが好ましい。

本発明によれば、光活性を有する材料が、インジウムチンオキサイド、酸化チタン、セ
レン化カドミウム、硫化カドミウム及び酸化亜鉛のうち少なくとも1つであり、これらは
薄膜化しやすい物質であるため、親液性領域に光活性層として容易に形成することができ
る。
【0009】
また、前記光活性層が、インジウムチンオキサイドからなる第1の層と、前記第1の層
上に設けられ酸化チタンからなる第2の層とを有しており、前記液状組成物を塗布する工
程では、前記液状組成物を前記第2の層上に配置することが好ましい。
本発明によれば、インジウムチンオキサイドからなる第1の層上に酸化チタンからなる
第2の層が設けられているので、インジウムチンオキサイドに含まれるインジウム原子の
拡散を防止することができる。また、製造工程においては、酸化チタンからなる第2の層
上に液状組成物を配置することによって、液状組成物の塗布性を向上させることができる
。さらに、本発明に係る膜形成方法によって有機EL装置のキャリア(正孔、電子)注入
膜を形成する場合、当該キャリア注入膜が、この第1の層及び第2の層を有する光活性層
上に形成されることになるため、キャリアの注入効率を増大させることができるという利
点がある。
【0010】
本発明に係る電気光学装置の製造方法は、基板上に機能膜が設けられた電気光学装置の
製造方法であって、上記の膜形成方法によって、前記機能膜を形成することを特徴とする

本発明によれば、良好な状態の膜を形成することが可能な膜形成方法によって機能膜を
形成するので、表示特性の高い電気光学装置を得ることができる。ここで、機能膜として
は、例えば、上述した有機EL装置のキャリア注入膜や発光膜などが挙げられる。また、
機能膜として、液晶装置やプラズマディスプレイ装置などのカラーフィルタなどを挙げる
こともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づき説明する。
(有機EL装置)
図1は、有機EL装置1の全体構成を概略的に示す斜視図である。以下の図では、各部
材を認識可能な大きさとするため、縮尺を適宜変更している。
【0012】
有機EL装置1は、基板2に配線や絶縁層等が形成された基体10と、この基体10上
に形成された有機EL素子部3と、基体10の端部2aに取り付けられた駆動部4と、有
機EL素子部3及び基体10を覆う封止部材5とを有しており、駆動部4から供給される
電気信号に応じて有機EL素子部3が発光することで、画像や動画等を表示できるように
なっている。本実施形態では、薄膜トランジスタ(Thin film Transistor:TFT)が形
成されたアクティブマトリクス型であり、有機EL素子部3により発生した光が基体10
を透過して取り出されるボトムエミッション型である有機EL装置1を例に挙げて説明す
る。
【0013】
図2は、有機EL装置1の平面図である。この図では、有機EL素子部3及び封止部材
5を省略している。
同図に示すように、基体10は、画素部7(一点鎖線内の領域)と周縁部8(当該一点
鎖線の外の領域)とに区画されており、画素部7内では、実表示領域P(二点鎖線内の領
域)とダミー領域Q(一点鎖線と二点鎖線との間の領域)とに更に区画されている。画素
部7の実表示領域Pには、当該発光領域14からの光が通過する画素領域Kがマトリクス
状に設けられている。画素領域Kの間の領域には、図中X方向に延在する走査線15aと
、図中Y方向に延在するデータ線17aとが形成されている。
【0014】
図3は、有機EL装置1のA−A断面を概略的に示す図である。図4は、有機EL装置
1のB−B断面を概略的に示す図である。
図3及び図4に示すように、基体10の構成要素である基板2は、例えば、ガラス、石
英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等からなる透明基板である。本実施形
態に係る有機EL装置1はボトムエミッション型のものであり、光を取り出すには基板2
を透明にする必要がある。基板2の表面2bには、下地として例えばSiO等の透明な
下地保護層11が形成されている。
【0015】
画素部7の実表示領域Pでは、下地保護層11上に、シリコン膜12、第1絶縁層(ゲ
ート絶縁層)13、ゲート電極15、第2絶縁層16、ソース電極17、ドレイン電極1
8、第3絶縁層19が形成されている。また、画素部7のダミー領域Qでは、下地保護層
11上に、走査駆動回路20、データ駆動回路21等が形成されており、駆動部4に接続
されるように電源線(図示せず)が形成されている。
【0016】
シリコン膜12は、チャネル領域、ソース領域及びドレイン領域を有する駆動用トラン
ジスタである。シリコン膜12のうち、ゲート絶縁層13を挟んでゲート電極15と重な
る領域がチャネル領域12aである。チャネル領域12aのソース側には、低濃度ソース
領域12b及び高濃度ソース領域12sが形成され、チャネル領域12aのドレイン側に
は、低濃度ドレイン領域12c及び高濃度ドレイン領域12dが形成されている。このよ
うにシリコン膜12は、LDD(Lightly Doped Drain)構造になっている。
【0017】
高濃度ソース領域12s及び高濃度ドレイン領域12dには、ゲート絶縁層13と第2
絶縁層16とを連通して開孔されたコンタクトホール23、24が形成されている。一方
、高濃度ドレイン領域12d側には、ドレイン電極18に接続されるように、第3絶縁層
19を貫通してコンタクトホール25が形成されている。
ゲート絶縁層13は、例えばSiOやSiN等で形成された透明な層であり、シリコ
ン膜12とゲート電極15とを絶縁している。
【0018】
ゲート電極15は、例えばアルミニウムや銅等により形成されており、走査線15aに
接続されている。ソース電極17は、ゲート電極15と同様にアルミニウムや銅等により
形成されており、データ線17aに接続されている。ソース電極17は、コンタクトホー
ル23を介して高濃度ソース領域12sに接続されている。また、ドレイン電極18は、
高濃度ドレイン領域12dに接続されている。
【0019】
第2絶縁層16は、主にSiOからなる透明な層であり、ゲート電極15、ソース電
極17及びドレイン電極18をそれぞれ絶縁している。
第3絶縁層19は、例えばアクリル系の樹脂成分を主体とし、ソース電極17とドレイ
ン電極18及びコンタクトホール25とを絶縁している。なお、アクリル系の絶縁膜以外
の材料、例えば、SiN、SiOなどを用いることもできる。
また、ダミー領域Qに設けられる走査駆動回路20は、シフトレジスタ等のメモリや信
号レベルを変換するレベルシフタ等の回路を有しており、走査線15aに接続されている

【0020】
データ駆動回路21は、このシフトレジスタ、レベルシフタの他、ビデオラインやアナ
ログシフタ等の回路を有しており、データ線17aに接続されている。走査駆動回路20
及びデータ駆動回路21は、駆動制御信号線28a、28bを介して駆動部4に接続され
ており、当該駆動部4の制御により走査線15a及びデータ線17aに電気信号を出力す
るようになっている。走査駆動回路20及びデータ駆動回路21は、駆動電源線29a、
29bを介して電源に接続されている。
周縁部8には、有機EL素子3に接続する接続用配線27が形成されている。この接続
用配線27は駆動部4に接続されており、当該接続用配線27を介して駆動部4からの電
気信号を有機EL素子3に供給することができるようになっている。
【0021】
一方、有機EL素子3は、陽極31と、正孔注入層32と、発光層33と、共通電極(
陰極)34と、画素開口膜35と、隔壁36とを有している。これらは上述した基体10
上に積層されている。
【0022】
陽極31は、正孔注入層32に正孔を注入する透明な電極であり、例えばITO(Indi
um Tin Oxide)等から形成されている。当該陽極31は、コンタクトホール25を介して
ドレイン電極18に接続されており、正孔注入層32を圧迫するように、凸状に形成され
ている。正孔注入層32は、例えば、ポリオレフィン誘導体である3、4−ポリエチレン
ジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)等の材料により
形成されている。
【0023】
発光層33は、正孔注入層32からの正孔と陰極34からの電子とが結合して光を発す
る層であり、例えば分子量が1000以上の高分子材料が用いることが好ましい。具体的
には、ポリフルオレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチ
オフェン誘導体、またはこれらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ロー
ダミン系色素、例えばルブレン、ペリレン、9、10−ジフェニルアントラセン、テトラ
フェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープしたものが用
いられる。
【0024】
発光層33には、赤色光を発する層(33R)、緑色光を発する層(33G)、青色光
を発する層(33B)の3種類がある。このような発光層33からの光が正孔注入層32
、陽極31及び基体10を透過することで、基板2の実表示領域Pに画像や動画等が表示
されるようになっている。
【0025】
陰極34は、駆動部4からの電気信号に応じて発光層33に電子を注入する層であり、
例えばカルシウム等の金属により形成されている。陰極34は、実表示領域Pおよびダミ
ー領域Qの総面積より広い面積を備え、それぞれの領域を覆うように形成されたもので、
有機EL素子3の外側を覆った状態で基体10上に形成されている。この陰極34は、接
続用配線27に接続されており、当該接続用配線27を介して駆動部4に接続されている
。製造時の陰極34の腐食防止のため、陰極34の上層部に例えばアルミニウム等の保護
層を形成してもよい。
【0026】
画素開口膜35は、例えばSiO2等からなる絶縁膜である。この画素開口膜35は、
壁面35bで囲まれた開口部35aにおいて陽極31からの正孔の移動を可能にすると共
に、開口部35aが設けられない部位での正孔の移動が起こらないようにしている。
隔壁36は、正孔注入層32や発光層33をインクジェット法等の液滴吐出法で形成す
る際に各画素を隔てる部材である。また、隣接する正孔注入層32及び発光層33の間で
電子の移動が起こらないようにする絶縁部材である。隔壁36は、例えばアクリルやポリ
イミド等の耐熱性・耐溶性のある材料で形成されており、各正孔注入層32及び発光層3
3を遮断している。
【0027】
また、隔壁36の壁面36c、陽極31の上面31a、画素開口膜35の側面35c及
び上面35dについては、親液性を示す領域(親液性領域)70になっており、隔壁36
の上面36eおよび壁面36cについては、撥液性を示す領域(撥液性領域)80になっ
ている。
【0028】
(有機EL装置の製造方法)
次に、このように構成された有機EL装置1を製造する工程を説明する。以下、基体1
0及び有機EL素子3の画素部7の領域を形成する工程を中心に説明し、周縁部8を形成
する工程の説明は省略する。本実施形態において正孔注入層32及び発光層33を形成す
る際には、正孔注入層32の材料及び発光層33の材料を溶媒に溶解させ、所定の場所に
滴下するインクジェット法を行う。
【0029】
まず、基板2にTFT素子や絶縁膜等を形成することにより、基体10を形成する工程
について説明する。
公知の方法により基板2に下地保護層11を形成する。当該下地保護層11の上に、シ
リコン膜12を形成し、レーザーアニールしてポリシリコン化する。ポリシリコン化され
たシリコン膜12をゲート絶縁層13で覆った後、ゲート電極15を形成し、その上に再
びゲート絶縁層13を形成する。また、ソース側のコンタクトホール23をパターニング
して形成する。
【0030】
次に、第2絶縁層16を形成し、コンタクトホール24及びこのコンタクトホール24
に接続するソース電極17をパターニングして形成する。第2絶縁層16上には、ソース
電極17及びドレイン電極18をパターニングして形成する。当該ソース電極17及びド
レイン電極18上には第3絶縁層19を形成し、ドレイン側のコンタクトホール25をパ
ターニングして形成する。
このように、基体10が形成される。
【0031】
次に、有機EL素子3を形成する工程を説明する。
基体10のほぼ全面を覆うように透明な導電膜を形成し、陽極31が所定の領域に形成
されるようにこの導電膜をパターニングする。同時にダミー領域Qのダミーパターン(図
示せず)も形成する。画素領域Kでコンタクトホール25と陽極31とを接続し、陽極と
ドレイン電極18とを導通させる。
【0032】
次に、第3絶縁層19上に画素開口膜35を形成する。画素開口膜35は、壁面35b
で囲まれた開口部35aが形成されるように、例えば陽極31に重ねて形成する。また、
画素開口膜35上には、隔壁36を形成する。アクリル樹脂やポリイミド等の樹脂からな
る材料を溶媒に溶解したレジストをスピンコート法、ディップコート法などの各種塗布法
により塗布してレジスト層を形成し、フォトリソグラフィ技術等によりパターニングして
、開口部35aを所定のパターンに形成する。
【0033】
次に、全面を所定温度、例えば70〜80℃程度に加熱してプラズマ処理を施すことに
よって、親液性領域70及び撥液性領域80のパターンを形成する。
親液性領域70を形成する際には、大気雰囲気中で酸素を反応ガスとするOプラズマ
を陽極31の上面31a、画素開口膜35の側面35c及び画素開口膜35の上面35d
に照射する。そうすると、図5に示すように、陽極31の上面31a、画素開口膜35の
側面35c及び画素開口膜35の上面35dが親液層に変質する。
【0034】
また、撥液性領域80を形成する際には、不活性ガスの雰囲気、例えば窒素ガスの雰囲
気中で四フッ化メタンを反応ガスとするCFプラズマを隔壁36の上面36eおよび壁
面36cに照射する。そうすると、図6に示すように、隔壁36の上面36eおよび壁面
36cが撥液層に変質する。この工程では、親液性領域70の一部にフッ素原子が結合す
る。また、親液性領域70及び撥液性領域80を形成のパターンを形成する過程で、親液
性領域70に有機物が付着する。その後、各部を室温まで冷却する。
【0035】
次に、親液性領域70である陽極31の上面31a、画素開口膜35の側面35c及び
上面35dに、紫外線を照射する。紫外線は、波長が約172〜365nmの範囲光を、
5〜5000mJ/cm程度の強度で、照射する。
【0036】
紫外線を照射することにより、親液性領域70に結合しているフッ素原子が除去される
と共に、ITOによって形成された陽極31が光活性層として活性化し、親液性領域70
及び撥液性領域80のパターンを形成する際に当該陽極31の上面31aに付着した有機
物を分解する。
【0037】
次に、正孔注入層32及び発光層33を形成する。これらの工程は、例えばインクジェ
ット法により、隔壁36で囲まれた領域に液滴を吐出し、その液滴を乾燥することによっ
て当該隔壁36で囲まれた領域に膜を形成するものである。
まず、正孔注入層32を形成する。この工程で吐出される液滴は、例えばジエチレング
リコールと水とを混合した混合溶媒に上述した正孔注入材料を溶解させたインクである。
図6に示すように、ノズル51からこのインク50を隔壁36に吐出すると、親液化処理
がなされた陽極31上で広がって開口部35a内に満たされる。その一方で、撥液化処理
された隔壁36の上面では液滴がはじかれて付着しない。このインク50の周囲を減圧し
て当該インク50を乾燥する。
【0038】
次に、発光層33を形成する。この工程では、例えば正孔注入層32で用いた溶媒とは
別の液体を混合させた混合溶媒に上述した発光材料を溶解させたインク60を用いる。図
7に示すように、ノズル51から、インク60を隔壁36間に吐出する。インク60を吐
出したら、正孔注入層32を形成する場合と同様の方法により乾燥工程を行う。
【0039】
発光層33を形成後、例えば蒸着法等の物理的気相蒸着法によりカルシウム更にはアル
ミニウムを成膜して陰極34を形成する。陰極34が、発光層33、隔壁36の上面36
e、隔壁36の壁面36cの一部を覆い、上述した接続用配線27に接続されるように形
成する。なお、陰極34上に陰極保護層を形成させる場合には、イオンプレーティング法
等の物理的気相蒸着法により陰極34上に例えば窒化シリコン等を成膜する。このように
して、有機EL素子3が形成される。
基体10及び有機EL素子3を形成したら、当該基体10及び有機EL素子3のほぼ全
体を封止部材5により缶封止して有機EL装置1が完成する。
【0040】
このように、本実施形態によれば、基体10上の有機EL素子3内に親液性領域70(
陽極31の上面31a、画素開口膜35の側面35c及び上面35d)と撥液性領域80
(隔壁36の上面36eおよび壁面36c)とのパターンを形成する工程の後、不活性気
体の雰囲気において、親液性領域に紫外線を照射する工程を有しているので、撥液性領域
を形成する際、親液性領域の一部に撥液性のフッ素原子が結合した場合であっても、紫外
線によって当該フッ素原子を除去することができる。したがって、親液性領域70の親液
性が低下することは無いため、インク50を塗布する工程においても濡れ性が良くなる。
これにより、膜厚ムラや塗布ムラの無い平坦な正孔注入層32を形成することが可能とな
る。
【0041】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づき説明する。
(液晶装置)
次に、本発明の第2実施形態に係る液晶装置101について説明する。
図8は、液晶装置101の全体構成を示す図である。本実施形態では、スイッチング素
子に薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下TFTという)素子を用いたアクテ
ィブマトリクス方式の液晶装置を例に挙げて説明する。
図8に示すように、液晶装置101は、液晶パネル102と、バックライト103とを
主体として構成されている。
【0042】
液晶パネル102は、TFTアレイ基板104とカラーフィルタ基板105とがシール
材107によって貼り合わされ、このシール材107によって区画された領域内に液晶層
106が封入された構成になっている。シール材107の一部には液晶を注入する注入口
107aが設けられており、当該注入口107aは封止材107bにより封止されている
。シール材107の内側の領域には、遮光性材料からなる周辺見切り108が形成されて
いる。周辺見切り108の内側の領域は、画像や動画等を表示する表示領域109になっ
ている。表示領域109には、複数のドット領域110がマトリクス状に設けられている

TFTアレイ基板104の周縁部は、カラーフィルタ基板105から張り出した張出領
域になっている。この張出領域のうち図中左辺側及び右辺側には、走査信号を生成する走
査線駆動回路111が形成されている。図中上辺側には、左右の走査線駆動回路111の
間を接続する配線113が引き回されている。図中下辺側には、データ信号を生成するデ
ータ線駆動回路112と、外部の回路等に接続するための接続端子114とが形成されて
いる。走査線駆動回路111と接続端子114との間の領域には、両者を接続する配線1
15が形成されている。カラーフィルタ基板105の各角部には、TFTアレイ基板10
4とカラーフィルタ基板105との間で電気的に接続するための基板間導通材117が設
けられている。
【0043】
図9は、図8のA−A断面に沿った構成を示す図である。
TFTアレイ基板104は、例えばガラスや石英等の透光性の高い材料から形成された
基材104aと、この基材104aの液晶側に形成された画素電極118と、この画素電
極118上に形成された配向膜116とを主体として構成されている。画素電極118は
、例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透明な導電材料によって形成されている。この
他、画素電極118には、図示しないTFT素子が接続されており、TFT素子には、図
示しない走査線及びデータ線が接続されている。TFTアレイ基板104の外側(液晶層
106とは反対側)には、偏光板119が貼付されている。
【0044】
カラーフィルタ基板105は、TFTアレイ基板104と同様にガラスや石英等の透光
性材料からなる基材105aの液晶側に、例えばTiOからなる光活性層150が形成
され、当該光活性層150上に、例えば赤色層130R、緑色層130G、青色層130
Bの3色の色層からなるカラーフィルタ層130が形成され、当該カラーフィルタ層13
0の周囲には遮光膜131が形成された構成になっている。また、カラーフィルタ層13
0及び遮光膜131を覆うように共通電極128が形成され、当該共通電極128上には
配向膜126が形成されている。共通電極128は、画素電極118と同様、例えばIT
O等の透明な導電材料によって形成されている。
【0045】
また、カラーフィルタ基板105のうち、光活性層150の上面150aについては、
親液性を示す領域(親液性領域)170になっている。また、遮光膜131の内面131
a及び遮光膜131の上面131bについては、撥液性を示す領域(撥液性領域)180
になっている。
【0046】
液晶層106は、例えばフッ素系液晶化合物や非フッ素系液晶化合物等の液晶分子13
2によって構成されており、TFTアレイ基板104側の配向膜116とカラーフィルタ
基板105側の配向膜126との双方に接するように両基板に挟持されている。液晶分子
132の配向は、非選択電圧を印加したときに所定の方向に向くように、配向膜116及
び配向膜126によって規制されている。
【0047】
(液晶装置の製造方法)
次に、上記のように構成された液晶装置101の製造方法について説明する。本実施形
態では、大面積のマザー基板を用いて複数の液晶装置を一括して形成し、切断によって個
々の液晶装置101に分離する方法を例に挙げて説明する。
【0048】
まず、TFTアレイ基板104となるTFTアレイ側マザー基板の形成工程について簡
単に説明する。ガラスやプラスチック等の透光性材料からなる大判の基材の各表示領域1
09に、画素電極118やTFT素子、その他配線等を形成する。また、基材に形成され
た画素電極118やTFT素子、その他配線等を覆うように配向膜116を形成し、ラビ
ング処理を施す。配向膜116を形成し、ラビング処理を施したら、各表示領域109の
周縁部にシール材107を形成する。このとき、シール材107には、液晶を注入する注
入口107aを形成しておくようにする。
【0049】
次に、カラーフィルタ基板105となる対向側マザー基板の形成工程について説明する

まず、ガラスやプラスチック等の透光性材料からなる大判の基材の各表示領域109に
配線や電極等を形成し、表示領域109内のドット領域110を囲むように遮光膜131
を形成する。次に、図10に示すように、遮光膜131で囲まれた領域に、例えばITO
や酸化チタン(例えば、TiO)などの光活性材料によって光活性層150を形成する

【0050】
次に、図11に示すように光活性層150の上面150aを親液化し、図12に示すよ
うに遮光膜131の内面131a及び遮光膜131の上面131bを撥液化して、親液性
領域170及び撥液性領域180のパターンを形成する。この工程では、例えば第1実施
形態と同様、大気雰囲気中で酸素を反応ガスとするOプラズマ処理により親液性領域1
70を形成し、不活性ガスの雰囲気、例えば窒素ガスの雰囲気中で四フッ化メタンを反応
ガスとするCFプラズマ処理により撥液性領域180を形成する。撥液性領域180を
形成する工程では、親液性領域70の一部にフッ素原子が結合する。また、親液性領域7
0及び撥液性領域80を形成のパターンを形成する過程で、親液性領域70に有機物が付
着する。
【0051】
次に、図13に示すように、親液性領域170である光活性層150の上面150aに
紫外線を照射する。紫外線は、波長が約172〜365nmの範囲光を、5〜5000m
J/cm程度の強度で、照射する。
【0052】
紫外線を照射することにより、親液性領域170に結合しているフッ素原子が除去され
ると共に、TiOによって形成された光活性層150が活性化し、親液性領域170及
び撥液性領域180のパターンを形成する際に光活性層150の上面150aに付着した
有機物などを分解する。
【0053】
次に、紫外線を照射した光活性層150上にカラーフィルタ層130を形成する。この
カラーフィルタ層130を形成する工程は、例えばインクジェット法により、遮光膜13
1で囲まれたドット領域111に液滴を吐出し、その液滴を乾燥することによって形成す
るものである。
【0054】
具体的に説明すると、例えばジエチレングリコールと水とを混合した混合溶媒にカラー
フィルタ層を構成する材料を溶解させてなるインクを、ノズルからドット領域111に吐
出する。親液化処理がなされた光活性層150上ではインクが広がり、ドット領域111
内に満たされる。その一方で、撥液化処理された遮光膜131の上面では、インクがはじ
かれて付着しない。この状態でインクの周囲を減圧して当該インクを乾燥する。
次に、各表示領域109内に、金属酸化膜からなる配向膜126を形成し、対向側マザ
ー基板が形成される。
【0055】
次に、TFTアレイ側マザー基板と対向側マザー基板とを貼り合わせ、当該スクライブ
線に沿って液晶パネルを短冊状に切断する。次に、切断された短冊状液晶パネルに封入さ
れた液晶の等方性処理を行い、当該短冊状液晶パネルの点灯検査を行い、短冊状液晶パネ
ルをスクライブし、個々の液晶パネル2に分断する。
【0056】
次に、例えば超音波などによって各液晶パネル2の洗浄を行い、Oプラズマなどによ
ってアッシングを行って液晶パネル2のうち張出領域の配向膜を除去する。また、各液晶
パネル2の外側表面に偏光板19、29を貼着する。そして、各液晶パネル2の外部回路
に例えば駆動ドライバなどを実装して、液晶装置101が完成する。
【0057】
本実施形態によれば、対向側マザー基板に親液性領域170(遮光膜131の内面13
1a及び光活性層150の上面150a)及び撥液性領域180(遮光膜131の上面1
31b)のパターンを形成する工程の後、不活性気体の雰囲気において、親液性領域17
0に紫外線を照射する工程を有しているので、撥液性領域180を形成する際、親液性領
域170の一部に撥液性のフッ素原子が結合した場合であっても、紫外線によって当該フ
ッ素原子を除去することができる。したがって、親液性領域170の親液性が低下するこ
とは無いため、インクを塗布する工程においても濡れ性が良くなる。これにより、膜厚ム
ラや塗布ムラの無い平坦なカラーフィルタ層130を形成することが可能となる。
【0058】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸
脱しない範囲で適宜変更を加えることができるものである。
例えば、上記第1実施形態では、有機EL装置1の陽極31としてITOを用いた構成
であったが、これに限られることは無く、例えば図14に示すように、陽極31をITO
からなる下層31bと、当該下層31b上に設けられ酸化チタン(例えばTiO)から
なる上層31cとからなる構成とし、インク50を塗布する工程では、当該インク50を
上層31c上に塗布するようにしてもよい。
【0059】
このようにすれば、上層31cによってITOに含まれるインジウム原子が拡散するの
を防止することができる。また、有機EL装置1の製造工程においては、上層31cにイ
ンク50を配置することによって、当該インク50の塗布性を向上させることができる。
さらに、正孔注入層32が、下層31b及び上層31cからなる光活性層上に形成される
ことになるので、正孔の注入効率を増大させることができるという利点がある。
【0060】
また、有機EL装置1や液晶装置101に限らず、プラズマディスプレイ(PDP:Pl
asma Display Panel)、表面電界ディスプレイ(SED:Surface-conduction Electron-
emitter Display)等のカラーフィルタ層を形成する場合にも本発明の適用は可能である

【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1実施形態に係る有機EL装置の全体構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係る有機EL装置の平面構成を示す図である。
【図3】本実施形態に係る有機EL装置の断面構成を示す図である。
【図4】同、断面構成図である。
【図5】本実施形態に係る有機EL装置の製造工程の様子を示す図である。
【図6】同、工程図である。
【図7】同、工程図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る液晶装置の全体構成を示す図である。
【図9】本実施形態に係る液晶装置の断面構成を示す図である。
【図10】本実施形態に係る液晶装置の製造工程の様子を示す図である。
【図11】同、工程図である。
【図12】同、工程図である。
【図13】同、工程図である。
【図14】本発明に係る有機EL装置の他の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1…有機EL装置 31…陽極 31a…上面 31b…下層 31c…上層 32…
正孔注入層 33…発光層 34…陰極 35…画素開口膜 35a…開口部 35b…
壁面 35c…側面 35d…上面 36…隔壁 36c…壁面 36e…上面 70…
親液性領域 80…撥液性領域 101…液晶装置 102…液晶パネル 130…カラ
ーフィルタ層 131…遮光膜 131a…内面 131b…上面 150…光活性層
150a…上面 170…親液性領域 180…撥液性領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の液体を混合した溶媒に機能材料を溶解させてなる液状組成物を基板上に塗布
し、前記液状組成物を乾燥させて膜を形成する膜形成方法であって、
基板上に前記液状組成物に対する親液性領域及び撥液性領域のパターンを形成する工程
と、
前記パターンを形成する工程の後、不活性気体の雰囲気において、前記親液性領域の少
なくとも一部に紫外線を照射する工程と、
前記紫外線を照射する工程の後、前記親液性領域に前記液状組成物を塗布する工程と
を具備することを特徴とする膜形成方法。
【請求項2】
前記パターンを形成する工程の前に、前記親液性領域に、光活性を有する材料からなる
光活性層を形成する工程を更に具備することを特徴とする請求項1に記載の膜形成方法。
【請求項3】
前記光活性を有する材料が、インジウムチンオキサイド、酸化チタン、セレン化カドミ
ウム、硫化カドミウム及び酸化亜鉛のうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項
2に記載の膜形成方法。
【請求項4】
前記光活性層が、インジウムチンオキサイドからなる第1の層と、前記第1の層上に設
けられ酸化チタンからなる第2の層とを有しており、
前記液状組成物を塗布する工程では、前記液状組成物を前記第2の層上に塗布する
ことを特徴とする請求項2に記載の膜形成方法。
【請求項5】
基板上に機能膜が設けられた電気光学装置の製造方法であって、
請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載の膜形成方法によって、前記機能膜を
形成することを特徴とする電気光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−111646(P2007−111646A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306730(P2005−306730)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】