説明

膜形成用組成物、絶縁膜及び電子デバイス

【課題】低い比誘電率であり、高い機械強度を有し、かつ面状が優れた膜を得ることができる膜形成用組成物、前記膜形成用組成物を用いて得られる絶縁膜、及び、前記絶縁膜を有する電子デバイスを提供すること。
【解決手段】式(I)で表される化合物を重合させた重合体を含むことを特徴とする膜形成用組成物、前記膜形成用組成物を用いて得られる絶縁膜、並びに、前記絶縁膜を有する電子デバイス。なお、式(I)中、Xは、それぞれ独立に、炭素−炭素三重結合又は炭素−炭素二重結合を含む基を表し、Yは、それぞれ独立に、置換基を表し、mは、3〜6の整数を表し、nは、0〜17の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜形成用組成物、絶縁膜及び電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子材料分野においては、高集積化、多機能化、高性能化の進行に伴い、回路抵抗や配線間のコンデンサー容量が増大し、消費電力や遅延時間の増大を招いている。中でも、遅延時間の増大は、デバイスの信号スピードの低下やクロストークの発生の大きな要因となるため、この遅延時間を減少させてデバイスの高速化を図るべく、寄生抵抗や寄生容量の低減が求められている。この寄生容量を低減するための具体策の一つとして、配線の周辺を低誘電性の層間絶縁膜で被覆することが試みられている。また、層間絶縁膜には、実装基板製造時の薄膜形成工程やチップ接続、ピン付け等の後工程に耐えうる優れた耐熱性やウェットプロセスに耐え得る耐薬品性が求められている。さらに、近年は、Al配線から低抵抗のCu配線が導入されつつあり、これに伴い、CMP(ケミカルメカニカルポリッシング、化学的機械的研磨)による平坦化が一般的となっており、このプロセスに耐え得る高い機械的強度が求められている。
【0003】
高耐熱性の絶縁膜として、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミドが広く知られているが、極性の高いN原子を含むため、低誘電性、低吸水性、耐久性及び耐加水分解性の面では、満足なものは得られていない。
また、上記のような有機ポリマーは概して有機溶剤への溶解性の不十分なものが多く、塗布液中での析出、絶縁膜中でのブツ発生の抑制が重要な課題となっているが、溶解性を向上させるためにポリマー主鎖を折れ曲がり構造にするとガラス転移点の低下、耐熱性の低下が弊害となりこれらを両立することは容易ではない。
また、ポリアリーレンエーテルを基本主鎖とする高耐熱性樹脂が知られており、比誘電率は2.6〜2.7の範囲である。しかし、高速デバイスを実現するためには更なる低誘電率化が望まれており、多孔化せずにバルクでの比誘電率を好ましくは2.6以下、より好ましくは2.5以下にすることが望まれている。
【0004】
特許文献1にエチニル基が置換したアダマンタンの熱重合体を利用した絶縁膜が開示されている。しかし、このモノマーは重合触媒を使用せずに重合するため、反応に長時間が必要であり、この結果、空気酸化等の望ましくない副反応が進行して得られる絶縁膜の比誘電率が高くなったり、機械強度が低下したり、塗布溶剤に溶けにくい重合体が大量に副生してしまい、面状が悪化するなどの問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2003−292878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、低い比誘電率であり、高い機械強度を有し、かつ面状が優れた膜を得ることができる膜形成用組成物、前記膜形成用組成物を用いて得られる絶縁膜、及び、前記絶縁膜を有する電子デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、上記課題が下記の<1>、<7>及び<8>の構成により解決されることを見出した。好ましい実施態様である<2>〜<6>とともに以下に示す。
<1> 式(I)で表される化合物を重合させた重合体を含むことを特徴とする膜形成用組成物、
【0008】
【化1】

(式(I)中、Xは、それぞれ独立に、炭素−炭素三重結合又は炭素−炭素二重結合を含む基を表し、Yは、それぞれ独立に、置換基を表し、mは、3〜6の整数を表し、nは、0〜17の整数を表す。)
<2> 塗布溶剤を含む上記<1>に記載の膜形成用組成物、
<3> 前記重合体が式(I)で表される化合物をラジカル重合開始剤の存在下で重合して得られた化合物である上記<1>又は<2>に記載の膜形成用組成物、
<4> ラジカル重合開始剤が有機過酸化物又はアゾ化合物である上記<3>に記載の膜形成用組成物、
<5> さらに空孔形成剤を含む上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の膜形成用組成物、
<6> さらに密着促進剤を含む上記<1>〜<5>のいずれか1つに記載の膜形成用組成物、
<7> 上記<1>〜<6>のいずれか1つに記載の膜形成用組成物を用いて形成した絶縁膜、
<8> 上記<7>に記載の絶縁膜を有する電子デバイス。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低い比誘電率であり、高い機械強度を有し、かつ面状が優れた膜を得ることができる膜形成用組成物、前記膜形成用組成物を用いて得られる絶縁膜、及び、前記絶縁膜を有する電子デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の膜形成用組成物は、式(I)で表される化合物を重合させた重合体を含むことを特徴とする。
【0011】
【化2】

(式(I)中、Xは、それぞれ独立に、炭素−炭素三重結合又は炭素−炭素二重結合を含む基を表し、Yは、それぞれ独立に、置換基を表し、mは、3〜6の整数を表し、nは、0〜17の整数を表す。)
【0012】
本発明の膜形成用組成物に含有される重合体は、式(I)で表される化合物を重合させた重合体であり、式(I)で表される化合物を重合促進剤の存在下で重合したものであることが好ましい。
本発明の膜形成用組成物に含有される重合体は、シクロヘキサノン等の電子デバイス製造分野で汎用の塗布溶剤に十分な溶解性を有し、該重合体を用いた膜形成用組成物は均一であり不溶物の析出がなく、該組成物から形成した絶縁膜は低い比誘電率、高い機械強度を有し、かつ面状が良く、電子デバイスなどにおける層間絶縁膜として好適に利用できる。
【0013】
式(I)で表される化合物は、ジアマンタン骨格(Decahydro-3,5,1,7-[1.2.3.4]-butanetetraylnaphtalene骨格)に結合した基であるXとして、炭素−炭素三重結合及び/又は炭素−炭素二重結合を含む基を少なくとも三つ有する。また、m個存在するXは、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
Xの好ましい炭素−炭素三重結合及び/又は炭素−炭素二重結合を含む置換基としては、アルキニル基(好ましくは総炭素数2〜10のアルキニル基であり、例えば、エチニル、プロパルギル、2−ブチン−1−イル、1−ブチン−4−イル、1−ヘキシン−6−イル)、アルケニル基(好ましくは総炭素数2〜10のアルケニル基であり、例えば、ビニル、アリル、1−プロペニル、2−ブテン−1−イル、1−ブテン−4−イル)、芳香環上の置換基として炭素−炭素三重結合又は炭素−炭素二重結合を有する基を有するアリール基(好ましくは総炭素数8〜30のアリール基であり、例えば、4−ビニルフェニル、3,5−ジビニルフェニル、4−エチニルフェニル、3,5−ジエチニルフェニル)を挙げることができる。
Xとして好ましい基は、アルケニル基又はアルキニル基であり、より好ましくはアルキニル基であり、特に好ましくはエチニル基である。
【0014】
これらの炭素−炭素三重結合及び/又は炭素−炭素二重結合を含む基は、さらに他の置換基を有していてもよい。
他の置換基の例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又は、沃素原子)、直鎖、分岐、環状のアルキル基(炭素数1〜20の、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、例えば、メチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチル、ビアダマンチル、ジアマンチル等)、アルケニル基(好ましくは総炭素数2〜10のアルケニル基であり、例えば、ビニル、アリル、1−プロペニル、2−ブテン−1−イル、1−ブテン−4−イル等)、アルキニル基(炭素数2〜10のアルキニル基であり、例えば、エチニル、フェニルエチニル等)、アリール基(炭素数6〜10のアリール基であり、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等)、アシル基(炭素数1〜10のアシル基であり、例えば、アセチル、ベンゾイル等)、アリールオキシ基(炭素数6〜10のアリールオキシ基であり、例えば、フェノキシ等)、アリールスルホニル基(炭素数6〜10のアリールスルホニル基であり、例えば、フェニルスルホニル等)、ニトロ基、シアノ基、シリル基(炭素数1〜10のシリル基であり、例えば、トリエトキシシリル、メチルジエトキシシリル、トリビニルシリル等)、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル等)、カルバモイル基(炭素数1〜10のカルバモイル基であり、例えば、カルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル等)等が挙げられる。これらの置換基はさらに別の置換基で置換されていてもよい。
【0015】
式(I)で表される化合物におけるジアマンタン骨格は、Yとして置換基を有していてもよい。また、Yが2個以上存在する場合、すなわち、nが2以上である場合は、2個以上存在するYは、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
Yの置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又は、沃素原子)、アルキル基(炭素数1〜20の、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、例えば、メチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチル、ビアダマンチル、ジアマンチル等)、アシル基(炭素数2〜10のアシル基であり、例えば、アセチル、ベンゾイル等)、アリールオキシ基(炭素数6〜10のアリールオキシ基であり、例えば、フェノキシ等)、アリールスルホニル基(炭素数6〜10のアリールスルホニル基であり、例えば、フェニルスルホニル等)、ニトロ基、シアノ基、シリル基(炭素数1〜10のシリル基であり、例えば、トリエトキシシリル、メチルジエトキシシリル、トリビニルシリル等)等が挙げられる。
式(I)においては、nが0であるか、又は、Yが炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、nが0であるか、又は、Yがメチル基若しくはエチル基であることがより好ましく、nが0であることが最も好ましい。
【0016】
式(I)で表される化合物におけるジアマンタン骨格の炭素−炭素三重結合又は炭素−炭素二重結合を含む基の置換数mは、3〜6の整数であり、好ましくは3〜5の整数であり、特に好ましくは3又は4である。また、Yで表される置換基の総置換数nは、0〜17の整数であり、好ましくは0〜6の整数であり、より好ましくは0〜4の整数であり、特に好ましくは0〜2の整数である。
【0017】
式(I)で表される化合物の分子量は、好ましくは260〜7,000、より好ましくは260〜2,000、特に好ましくは260〜350である。
【0018】
本発明の膜形成用組成物に含有される重合体としては、式(I)で表される化合物を少なくとも用いて重合させた重合体であればよく、式(I)で表される化合物の単独重合体、式(I)で表される化合物と他の重合性化合物との共重合体、2種以上の式(I)で表される化合物の共重合体、又は、2種以上の式(I)で表される化合物と他の重合性化合物との共重合体が挙げられる。
【0019】
以下に、式(I)で表される化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0020】
【化3】

【0021】
【化4】

【0022】
【化5】

【0023】
【化6】

【0024】
【化7】

【0025】
【化8】

【0026】
【化9】

【0027】
【化10】

【0028】
式(I)で表される化合物の合成において、ジアマンタン骨格に炭素−炭素二重結合を含む置換基を導入する際には公知の合成法を用いることができ、例えば、ビニル基を導入するためには、ジアマンタンを原料として臭素化を行うことにより臭素置換ジアマンタンを合成し、臭化アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化鉄等のルイス酸の存在下で臭化ビニルとフリーデルクラフツ反応させて2,2−ジブロモエチル基を導入、続けて強塩基で脱HBr化し、さらに水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL−H)などで還元することによって容易に得ることができる。また、臭素置換ジアマンタンと芳香族化合物とのフリーデルクラフツ反応によって、アリール基を導入することも容易にできる。
【0029】
また、式(I)で表される化合物の合成において、ジアマンタン骨格に炭素−炭素三重結合を含む置換基を導入する際には公知の合成法を用いることができ、例えば、エチニル基を導入するためには、例えば、ジアマンタンを原料として臭素化を行うことにより臭素置換ジアマンタンを合成し、臭化アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化鉄等のルイス酸の存在下で臭化ビニルとフリーデルクラフツ反応させて2,2−ジブロモエチル基を導入、続けて強塩基で脱HBr化することによって容易に得ることができる。
【0030】
式(I)の化合物の重合は溶媒中で行うことが好ましい。
式(I)の化合物の重合反応で使用する溶媒は、原料モノマーが必要な濃度で溶解可能であり、かつ得られる重合体から形成する膜の特性に悪影響を与えないものであればどのようなものを使用してもよい。例えば、水やメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトン、アルコールアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルベンゾエート等のエステル系溶媒、ジブチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン、メシチレン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,4−ジ−t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼン、4−t−ブチル−オルトキシレン、1−メチルナフタレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒などが利用できる。
【0031】
これらの中でより好ましい溶媒はアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、アニソール、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,4−ジ−t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼン、4−t−ブチル−オルトキシレン、1−メチルナフタレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、より好ましくはテトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、γ−ブチロラクトン、アニソール、トルエン、キシレン、メシチレン、イソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼン、1−メチルナフタレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、特に好ましくはジフェニルエーテル、γ−ブチロラクトン、アニソール、メシチレン、t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンである。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
重合反応に用いる有機溶媒の沸点は、50℃以上が好ましく、より好ましくは100℃以上であり、特に好ましくは150℃以上である。
反応液の濃度は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは10〜20重量%である。
【0033】
式(I)で表される化合物の重合は、炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合の付加重合反応によって行うことが好ましい。本発明における付加重合反応としては、有機合成分野で公知のカチオン重合、アニオン重合、ラジカル重合、熱重合等が利用できる。
本発明において、式(I)で表される化合物の重合反応は、重合促進剤の存在下で行うことが好ましい。重合促進剤としては、例えば、金属触媒及びラジカル重合開始剤を挙げることができる。
【0034】
例えば、金属触媒を使用することで、反応時間短縮、反応温度を低くすることができるメリットの他、特に本発明においては塗布溶剤への溶解性の良好な重合体をより高い収率で得ることができる優れた効果がある。
使用できる金属触媒としては遷移金属触媒が好ましく用いられ、例えばテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(Pd(PPh34)、ビス(ベンゾニトリル)パラジウムクロライド、酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)等のパラジウム系触媒、Ziegler−Natta触媒、ニッケルアセチルアセトネート等のNi系触媒、WCl6等のW系触媒、MoCl5等のMo系触媒、TaCl5等のTa系触媒、NbCl5等のNb系触媒、Rh系触媒、Pt系触媒等が好ましく用いられる。
【0035】
本発明に用いることができる金属触媒は、1種のみ、又は、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明における金属触媒の使用量は、モノマー1モルに対して、好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.01〜1モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルである。
【0036】
モノマーの重合反応は、ラジカル重合開始剤の存在下で行うことが特に好ましい。例えば、重合可能な炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合を有するモノマーを、加熱によって炭素ラジカルや酸素ラジカル等の遊離ラジカルを発生して活性を示す重合開始剤存在下で重合することができる。
ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物又はアゾ化合物が好ましく用いられるが、有機過酸化物が特に好ましい。
【0037】
有機過酸化物としては、日本油脂株式会社より市販されているパーヘキサH等のケトンパーオキサイド類、パーヘキサTMH等のパーオキシケタール類、パーブチルH−69等のハイドロパーオキサイド類、パークミルD、パーブチルC、パーブチルD等のジアルキルパーオキサイド類、ナイパーBW等のジアシルパーオキサイド類、パーブチルZ、パーブチルL等のパーオキシエステル類、パーロイルTCP等のパーオキシジカーボネート、ジイソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4−t−ブチルクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジコハク酸パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ[4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル]プロパン、
【0038】
t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ジーt−ブチルパーオキシバレレート、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーイキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メタンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3−イン、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、o−クロロベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、2,4,4−トリメチルペンチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、ジ‐3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、ジエチレングリコールビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート等が好ましく用いられ、より好ましくは、パークミルD、パーブチルC、パーブチルDであり、特に好ましくは、パークミルDである。
【0039】
アゾ化合物(有機アゾ系化合物)としては、和光純薬工業株式会社で市販されているV−30、V−40、V−59、V−60、V−65、V−70等のアゾニトリル化合物類、VA−080、VA−085、VA−086、VF−096、VAm−110、VAm−111等のアゾアミド化合物類、VA−044、VA−061等の環状アゾアミジン化合物類、V−50、VA−057等のアゾアミジン化合物類、2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシブチル)プロピオンアミド]、2,2−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオアミド)、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルフェートジヒドレート、2,2−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラヒドレート、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が好ましく用いられ、より好ましくは、V−30、V−40、V−59、V−60、V−65、V−70、VA−080、VA−085、VA−086、VF−096、VAm−110、VAm−111であり、特に好ましくは、V−30、V−40、V−59、V−60、V−65、V−70である。
【0040】
本発明に用いることができるラジカル重合開始剤は、1種のみ、又は、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明におけるラジカル重合開始剤の使用量は、モノマー1モルに対して、好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.01〜1モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルである。
本発明におけるラジカル重合開始剤の添加形態としては、そのまま添加してもよいし、溶液にして添加してもよい。また、本発明におけるラジカル重合開始剤の添加方法としては、一括でもよいし、分割添加してもよい。
【0041】
この中でもシクロヘキサノンのような塗布溶剤に高い溶解性を有する可溶性重合体が収率よく得られる点で、有機過酸化物系ラジカル重合開始剤が特に好ましい。
【0042】
本発明における付加重合反応の最適な条件は、触媒、溶媒の種類、触媒の量、濃度等によって異なるが、好ましくは内温0℃〜230℃、より好ましくは100℃〜230℃、特に好ましくは140℃〜200℃で、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜20時間、特に好ましくは3〜10時間の範囲である。
また、重合体の酸化分解を抑制するために不活性ガス雰囲気下(例えば窒素、アルゴン等)で反応させることが好ましい。また、望まない光反応を抑制するために遮光条件で重合することも好ましい。
重合して得られるポリマーの重量(質量)平均分子量の好ましい範囲は1,000〜500,000、より好ましくは3,000〜300,000、特に好ましくは5,000〜200,000である。
【0043】
また、本発明に使用する化合物の重合体は、誘電率・膜の吸収性の観点からポリイミド以外の重合体、すなわち、イミド結合を有しない重合体であることが好ましい。
【0044】
本発明の膜形成用組成物は、式(I)で表される化合物を重合させた重合体とともに、塗布溶剤を含むことで、塗布液として好ましい膜形成用組成物とすることができる。
式(I)で表される化合物を重合させた重合体は、塗布溶剤に十分な濃度で溶解することが望まれる。溶解性の目安としては、電子デバイス製造の際に使用される塗布溶剤(例えば、シクロヘキサノン)に25℃で、好ましくは1重量%以上、より好ましくは7重量%以上、特に好ましくは10重量%以上溶解することが好ましい。
【0045】
好適な塗布溶剤の例としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−エトキシメタノール、3−メトキシプロパノール等のアルコール系溶剤、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、アニソール、フェネトール、ベラトロール等のエーテル系溶剤、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤などが挙げられ、これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
より好ましい塗布溶剤は、アセトン、プロパノール、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、アニソール、メシチレン、1,2−ジクロロベンゼンであり、特に好ましくはシクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、アニソールである。
【0047】
本発明の膜形成用組成物中の全固形分濃度は、好ましくは1〜50重量%であり、より好ましくは2〜20重量%であり、特に好ましくは3〜10重量%である。
【0048】
本発明に用いることができる重合体は、単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
【0049】
さらに、本発明の膜形成用組成物には、得られる絶縁膜の特性(耐熱性、誘電率、機械強度、塗布性、密着性等)を損なわない範囲で、前述した重合開始剤や金属触媒等のラジカル発生剤やその残渣、非イオン界面活性剤、フッ素系非イオン界面活性剤、シランカップリング剤、空孔形成剤、密着促進剤などの添加剤を添加してもよい。
【0050】
非イオン界面活性剤としては、例えば、オクチルポリエチレンオキシド、デシルポリエチレンオキシド、ドデシルポリエチレンオキシド、オクチルポリプロピレンオキシド、デシルポリプロピレンオキシド、ドデシルポリプロピレンオキシド等が挙げられる。
フッ素系非イオン界面活性剤としては、例えば、パーフルオルオクチルポリエチレンオキシド、パーフルオルデシルポリエチレンオキシド、パーフルオルドデシルポリエチレンオキシド等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、トリビニルエトキシシラン等が挙げられる。
【0051】
これらの添加剤の添加量は、添加剤の用途または塗布液の固形分濃度によって適当な範囲が存在するが、一般的に、塗布液中の重量%として、好ましくは0.001%〜10%、より好ましくは0.01%〜5%、特に好ましくは0.05%〜2%である。
【0052】
本発明の膜形成用組成物は、空孔形成剤を含むことが好ましい。
空孔形成剤とは膜形成用組成物により得た膜中に空孔を形成する機能を有する物質である。例えば、空孔形成剤を含有する膜形成用組成物により形成された膜を加熱することにより、膜中に空孔形成剤による空孔を形成し、空孔を含有する膜を得ることができる。
【0053】
空孔形成剤としては、特に限定されないが、加熱によって分解する熱分解性ポリマーを使用することができる。空孔形成剤としてのポリマーは、膜を構成するポリマーの熱分解温度より低い温度において熱分解するものが好ましい。
【0054】
空孔形成剤として使用できる熱分解性ポリマーとしては、例えば、ポリビニル芳香族化合物(ポリスチレン、ポリビニルピリジン、ハロゲン化ポリビニル芳香族化合物など)、ポリアクリロニトリル、ポリアルキレンオキシド(ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシドなど)、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクタム、ポリウレタン、ポリメタクリレート(ポリメチルメタクリレートなど)又はポリメタクリル酸、ポリアクリレート(ポリメチルアクリレートなど)及びポリアクリル酸、ポリジエン(ポリブタジエン及びポリイソプレンなど)、ポリビニルクロライド、ポリアセタール、及び、アミンキャップドアルキレンオキシド(HuntsmanCorp.からJeffamineTMポリエーテルアミンとして商業的に入手できる)などが挙げられる。
【0055】
空孔形成剤としてのポリマーは、ホモポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマーなどいずれであってもよい。また、これらの混合物であってもよい。また、線状、分岐状、超分岐状、樹枝状又は星様状であってもよい。
【0056】
特にポリスチレンは、空孔形成剤として好適に使用できる。例えば、アニオン性重合ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、未置換及び置換ポリスチレン(たとえば、ポリ(α−メチルスチレン))が挙げられ、未置換ポリスチレンがより好ましい。
【0057】
空孔形成剤は、膜を形成する化合物に結合していることも好ましい。このように設計することで大きさが均一な空孔を形成することが可能となり、機械強度の低下を低減できる。
【0058】
空孔形成剤は、また、膜中に生成する空孔の大きさに対応した大きさの粒状物質であってもよい。このような物質としては、好ましくは0.5〜50nm、より好ましくは0.5〜20nmの平均直径を有する物質である。かかる物質の材質等に制限はなく、例としては、デンドリマーのような超分岐状ポリマー系及びラテックス粒子、特に架橋ポリスチレン含有ラテックスが挙げられる。
これらの物質の例としては、Dendritech,Inc.を通じて入手でき、また、Polymer J.(東京),Vol.17,117(1985)にTomalia等により記載されているポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、DSMCorporationから入手できるポリプロピレンイミンポリアミン(DAB−Am)デンドリマー、フレッシェ型ポリエーテルデンドリマー(J.Am.Chem.Soc.,Vol.112,7638(1990)、Vol.113,4252(1991)にFrechet等により記載されている)、パーセク型液晶モノデンドロン、デンドロン化ポリマーおよびそれらの自己集合高分子(Nature,Vol.391,161(1998)、J.Am.Chem.Soc.,Vol.119,1539(1997)にPercec等により記載されている)、ボルトロンHシリーズ樹枝状ポリエステル(PerstorpABから商業的に入手できる)が挙げられる。
【0059】
空孔形成剤としてのポリマーの好適な重量平均分子量は好ましくは200〜100,000、より好ましくは1,000〜50,000、特に好ましくは2,000〜20,000である。
【0060】
膜形成用組成物中の空孔形成剤の添加量は、全固形分に対して、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%、特に好ましくは20〜30重量%である。
【0061】
本発明の膜形成用組成物は、密着促進剤を含むことが好ましい。
本発明に用いられる密着促進剤の代表的な例は、シラン、好ましくはアルコキシシラン(例えばトリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン)等のオルガノシラン、アセトキシシラン(例えばビニルトリアセトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、及び、これらの加水分解物あるいは脱水縮合物、ヘキサメチルジシラザン[(CH33−Si−NH−Si(CH33]、又は、アミノシラン・カプラー、例えばγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、又はキレート(例えば、酸化アルミニウムを形成する点から、アルミニウムモノエチルアセトアセテートジイソプロピレート[(i−C37O)2Al(OCOC25CHCOCH3)]、アルミニウム・アルコキシド)などを挙げることができる。これらの材料を混合して用いてもよい。また、接着促進剤として市販されているものを用いてもよい。
膜形成用組成物中の密着促進剤の添加量は、全固形分に対して、好ましくは0.05重量%〜5重量%、より好ましくは0.1〜2重量%である。
【0062】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、絶縁膜として好適に使用することができ、半導体用層間絶縁膜としてより好適に使用することができる。すなわち、本発明の膜形成用組成物を使用して得られる絶縁膜は、電子デバイスに好適に使用できる。
また、本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、本発明の膜形成用組成物のみから得られる膜であることが好ましい。
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、本発明の膜形成用組成物液をスピンコーティング法、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スキャン法等の任意の方法により基板に塗布した後、溶剤を加熱処理で除去することにより形成することができる。溶剤を乾燥するための加熱は40℃〜350℃の範囲内で、1段階で行っても、2段階以上で行ってもよい。加熱時間は1段階につき5秒〜300秒で行うことが好ましい。加熱処理の方法は、特に限定されないが、一般的に使用されているホットプレート加熱、ファーネス炉を使用した方法、RTP(Rapid Thermal Processor)等によるキセノンランプを使用した光照射加熱等を適用することができる。
【0063】
本発明に用いることができる膜形成用組成物は、基板上に塗布した後に加熱処理することによって硬化させることが特に好ましい。例えば重合体中に残存する炭素−炭素二重結合及び炭素−炭素三重結合を後加熱時に重合させることによって、不溶不融化することができる。この後加熱処理の条件は、好ましくは100〜450℃、より好ましくは200〜420℃、特に好ましくは300℃〜400℃で、好ましくは1分〜2時間、より好ましくは10分〜1.5時間、特に好ましくは30分〜1時間の範囲である。
後加熱処理は数回に分けて行ってもよい。また、この後加熱は酸素による熱酸化を防ぐためにアルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、窒素雰囲気下で行うことが特に好ましい。
【0064】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、多様の目的に使用することができる。例えば半導体装置、マルチチップモジュール多層配線板等の電子部品における絶縁被膜として好適であり、半導体用層間絶縁膜、表面保護膜、バッファーコート膜の他、LSIにおけるパッシベーション膜、α線遮断膜、フレキソ印刷版のカバーレイフィルム、オーバーコート膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜等として使用することができる。
さらに、別の用途として本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜に電子ドナー又はアクセプターをドープすることによって導電性を付与し、導電性膜として使用することもできる。
【実施例】
【0065】
以下の実施例は、本発明を説明するものであり、その範囲を限定するものではない。
【0066】
<例示化合物(D−1)の合成>
ジアマンタンを臭素によりブロモ化し、1,4,9−トリブロモジアマンタン(化合物A1)を合成した。次に、ルイス酸として臭化アルミニウムを用い、化合物A1に臭化ビニルを反応させてジブロモエチル基を3個有するジアマンタン体(化合物A2)を合成した。さらに化合物A2とt−ブトキシカリウムを反応させることで1,4,9−トリエチニルジアマンタン(例示化合物(D−1))を合成した。
【0067】
【化11】

【0068】
得られた例示化合物(D−1)の元素分析値は以下の通りであった。
元素分析値 C2020=260.37として
計算値 C 92.26 H 7.74 (%)
実測値 C 92.18 H 7.82 (%)
【0069】
<例示化合物(D−2)の合成>
ジアマンタンを臭素によりブロモ化し、1,4,6,9−テトラブロモジアマンタン(化合物B1)を合成した。ルイス酸として臭化アルミニウムを用い、化合物B1に臭化ビニルを反応させてジブロモエチル基を4個有するジアマンタン体(化合物B2)を合成した。さらに化合物B2とt−ブトキシカリウムを反応させることで1,4,6,9−テトラエチニルジアマンタン(例示化合物(D−2))を合成した。
【0070】
【化12】

【0071】
得られた例示化合物(D−2)の元素分析値は以下の通りであった。
元素分析値 C2220=284.39として
計算値 C 92.91 H 7.09 (%)
実測値 C 92.78 H 7.22 (%)
【0072】
<実施例1>
例示化合物(D−1)10重量部とジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂製)1.8重量部、ジフェニルエーテル54重量部を窒素気流下、内温150℃で5時間撹拌、重合した。反応液を室温にした後、イソプロピルアルコール393重量部に添加、析出した固体を濾過して、イソプロピルアルコールで洗浄した。重量平均分子量17,000の重合体(A)を5.2重量部得た。重合体(A)のシクロヘキサノンへの溶解度は25℃で15重量%以上であった。
【0073】
重合体(A)1.0重量部をシクロヘキサノン9.0重量部に室温で完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下、ホットプレート上において150℃で60秒間加熱した後、さらに窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成した結果、膜厚0.5μmのブツのない均一な膜が得られた。
この膜をシクロヘキサノンに室温で5時間浸漬したが膜厚は全く減少しなかった。
膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ社製水銀プローバ及び横川ヒューレットパッカード社製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出し、ヤング率はMTS社製ナノインデンターSA2を使用して測定した。また、塗膜後の面状は良好であった。なお、比誘電率、ヤング率の測定温度は25℃であり、以降も同様である。
【0074】
<実施例2>
塗布溶剤をアニソールに変更した他は実施例1と全く同じようにして、塗膜を作製した。塗膜後の面状は良好であった。
【0075】
<実施例3>
例示化合物(D−2)2重量部とジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂製)0.3重量部、ジフェニルエーテル11重量部を窒素気流下、内温150℃で4時間撹拌、重合した。反応液を室温にした後、イソプロピルアルコール79重量部に添加、析出した固体を濾過して、イソプロピルアルコールで洗浄した。重量平均分子量18,000の重合体(B)を1.0重量部得た。
【0076】
重合体(B)1.0重量部をシクロヘキサノン9.0重量部に室温で完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1μmのPTFE製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下、ホットプレート上において150℃で60秒間加熱した後、さらに窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成した結果、膜厚0.5μmのブツのない均一な膜が得られた。
この膜をシクロヘキサノンに室温で5時間浸漬したが膜厚は全く減少しなかった。
膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ社製水銀プローバ及び横川ヒューレットパッカード社製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出し、ヤング率はMTS社製ナノインデンターSA2を使用して測定した。また、塗膜後の面状は良好であった。
【0077】
<実施例4>
例示化合物(D−1)1.0重量部、4,9−ジエチニルジアマンタン9.0重量部、ジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂製)1.7重量部、ジフェニルエーテル54重量部を窒素気流下内温150℃で5時間撹拌、重合した。反応液を室温にした後、イソプロピルアルコール393重量部に添加、析出した固体を濾過して、イソプロピルアルコールで洗浄した。重量平均分子量16,000の重合体(C)を6.0重量部得た。
【0078】
重合体(C)1.0重量部をシクロヘキサノン9.0重量部に室温で完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1μmのPTFE製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下、ホットプレート上において150℃で60秒間加熱した後、さらに窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成した結果、膜厚0.5μmのブツのない均一な膜が得られた。
この膜をシクロヘキサノンに室温で5時間浸漬したが膜厚は全く減少しなかった。
膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ社製水銀プローバ及び横川ヒューレットパッカード社製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出し、ヤング率はMTS社製ナノインデンターSA2を使用して測定した。また、塗膜後の面状は良好であった。
【0079】
<実施例5>
例示化合物(D−2)1.0重量部、4,9−ジエチニルジアマンタン9.0重量部、ジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂製)1.6重量部、ジフェニルエーテル54重量部を窒素気流下、内温150℃で5時間撹拌、重合した。反応液を室温にした後、イソプロピルアルコール393重量部に添加、析出した固体を濾過して、イソプロピルアルコールで洗浄した。重量平均分子量19,000の重合体(D)を5.5重量部得た。
【0080】
重合体(D)1.0重量部をシクロヘキサノン9.0重量部に室温で完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1μmのPTFE製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下、ホットプレート上において150℃で60秒間加熱した後、さらに窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成した結果、膜厚0.5μmのブツのない均一な膜が得られた。
この膜をシクロヘキサノンに室温で5時間浸漬したが膜厚は全く減少しなかった。
膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ社製水銀プローバ及び横川ヒューレットパッカード社製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出し、ヤング率はMTS社製ナノインデンターSA2を使用して測定した。また、塗膜後の面状は良好であった。
【0081】
<実施例6>
例示化合物(D−1)5.0重量部、例示化合物(D−2)5.0重量部、ジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂製)1.5重量部、ジフェニルエーテル54重量部を窒素気流下内温150℃で5時間撹拌、重合した。反応液を室温にした後、イソプロピルアルコール393重量部に添加、析出した固体を濾過して、イソプロピルアルコールで洗浄した。重量平均分子量20,000の重合体(E)を5.3重量部得た。
【0082】
重合体(E)1.0重量部をシクロヘキサノン9.0重量部に室温で完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1μmのPTFE製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下、ホットプレート上において150℃で60秒間加熱した後、さらに窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成した結果、膜厚0.5μmのブツのない均一な膜が得られた。
この膜をシクロヘキサノンに室温で5時間浸漬したが膜厚は全く減少しなかった。
膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ社製水銀プローバ及び横川ヒューレットパッカード社製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出し、ヤング率はMTS社製ナノインデンターSA2を使用して測定した。また、塗膜後の面状は良好であった。
【0083】
<実施例7>
例示化合物(D−1)1.0重量部、例示化合物(D−2)1.0重量部、4,9−ジエチニルジアマンタン8.0重量部、ジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂製)1.6重量部、ジフェニルエーテル54重量部を窒素気流下、内温150℃で5時間撹拌、重合した。反応液を室温にした後、イソプロピルアルコール393重量部に添加、析出した固体を濾過して、イソプロピルアルコールで洗浄した。重量平均分子量18,000の重合体(F)を6.2重量部得た。
【0084】
重合体(F)1.0重量部をシクロヘキサノン9.0重量部に室温で完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1μmのPTFE製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下、ホットプレート上において150℃で60秒間加熱した後、さらに窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成した結果、膜厚0.5μmのブツのない均一な膜が得られた。
この膜をシクロヘキサノンに室温で5時間浸漬したが膜厚は全く減少しなかった。
膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ社製水銀プローバ及び横川ヒューレットパッカード社製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出し、ヤング率はMTS社製ナノインデンターSA2を使用して測定した。また、塗膜後の面状は良好であった。
【0085】
<実施例8>
実施例1と同じ方法で重合体(A)のシクロヘキサノン塗布液を10.0重量部作った。この液に空孔形成剤として重量平均分子量13,700のポリスチレン0.2重量部を加えて完全に溶解させた。この塗布液を用いて実施例1と同じ方法で塗膜を作製した。塗膜後の面状は良好であった。
【0086】
<実施例9>
実施例5と同じ方法で、重合体(D)のシクロヘキサノン塗布液を10.0重量部作った。この液に空孔形成剤として重量平均分子量13,700のポリスチレン0.2重量部を加えて完全に溶解させた。ビニルトリアセトキシシランに3倍モルの水を加えて、室温で10分間撹拌して加水分解と脱水縮合を行い、密着促進剤として部分縮合体を合成した。この縮合体0.010重量部を塗布液に加え、完全に溶解させた。こうして得られた塗布液を使用して実施例1と同じ方法で塗膜を作製した。塗膜後の面状は良好であった。
【0087】
<比較例1>
1,3,5−トリエチニルアダマンタン10重量部をジフェニルエーテル54重量部中で触媒を用いないで150℃で10時間反応させ、実施例1の方法に準じて後処理を行った結果、5.0重量部の重合体(G)を得た。重合体(G)の重量平均分子量は25,000であった。重合体(G)1.0重量部をシクロヘキサノン9.0重量部に室温で完全に溶解させて塗布液を調製して実施例1と同じ方法で塗膜を作製した。塗膜後の面状は悪かった。
【0088】
<比較例2>
例示化合物D−1の代わりに、1,3,5−トリエチニルアダマンタンを用いて、実施例1と同じ方法で塗膜を作製した。
【0089】
評価結果を表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
前記実施例1〜9、並びに、比較例1及び2より、比較例に比べ、本発明の膜形成用組成物を用いた実施例は、比誘電率が低く、ヤング率が高く、さらに、面状が優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物を重合させた重合体を含むことを特徴とする
膜形成用組成物。
【化1】

(式(I)中、Xは、それぞれ独立に、炭素−炭素三重結合又は炭素−炭素二重結合を含む基を表し、Yは、それぞれ独立に、置換基を表し、mは、3〜6の整数を表し、nは、0〜17の整数を表す。)
【請求項2】
塗布溶剤を含む請求項1に記載の膜形成用組成物。
【請求項3】
前記重合体が式(I)で表される化合物をラジカル重合開始剤の存在下で重合して得られた化合物である請求項1又は2に記載の膜形成用組成物。
【請求項4】
ラジカル重合開始剤が有機過酸化物又はアゾ化合物である請求項3に記載の膜形成用組成物。
【請求項5】
さらに空孔形成剤を含む請求項1〜4のいずれか1つに記載の膜形成用組成物。
【請求項6】
さらに密着促進剤を含む請求項1〜5のいずれか1つに記載の膜形成用組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の膜形成用組成物を用いて形成した絶縁膜。
【請求項8】
請求項7に記載の絶縁膜を有する電子デバイス。

【公開番号】特開2008−222992(P2008−222992A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67912(P2007−67912)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】