説明

膜形成用組成物、膜、及び、電子デバイス

【課題】誘電率、機械強度等の特性が良好であるとともに、面状が良好な膜を形成することができる膜形成用組成物、該膜形成用組成物を用いて形成された膜、及び、該膜を有する電子デバイスを提供すること。
【解決手段】式(I)で表される化合物を含むことを特徴とする膜形成用組成物、前記膜形成用組成物を用いて形成された膜、並びに、前記膜を有する電子デバイス。なお、式(I)中、Xはアダマンタン構造、ジアマンタン構造、ビアダマンタン構造、及び、トリアマンタン構造よりなる群から選択された構造であり、Xがアダマンタン構造の場合、nは3又は4であり、Xがアダマンタン構造以外の場合、nは3〜6の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜形成用組成物、膜、及び、電子デバイスに関し、さらに詳しくは電子デバイスなどに用いられる誘電率、機械強度等の特性が良好な膜、特に反射防止膜及び絶縁膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子材料分野においては、高集積化、多機能化、高性能化の進行に伴い、回路抵抗や配線間のコンデンサー容量が増大し、消費電力や遅延時間の増大を招いている。中でも、遅延時間の増大は、デバイスの信号スピードの低下やクロストークの発生の大きな要因となるため、この遅延時間を減少させてデバイスの高速化を図るべく、寄生抵抗や寄生容量の低減が求められている。この寄生容量を低減するための具体策の一つとして、配線の周辺を低誘電性の層間絶縁膜で被覆することが試みられている。また、層間絶縁膜には、実装基板製造時の薄膜形成工程やチップ接続、ピン付け等の後工程に耐え得る優れた耐熱性やウェットプロセスに耐え得る耐薬品性が求められている。さらに、近年は、Al配線から低抵抗のCu配線が導入されつつあり、これに伴い、CMP(ケミカルメカニカルポリッシング、化学的機械的研磨)による平坦化が一般的となっており、このプロセスに耐え得る高い機械的強度が求められている。
また、ポリアリーレンエーテルを基本主鎖とする高耐熱性樹脂が知られており(特許文献1)、比誘電率は2.6〜3.0の範囲である。しかし、高速デバイスを実現するためには更なる低誘電率化が望まれている。
【0003】
また、光学部品や眼鏡などのレンズ、ディスプレイ装置のスクリーンなどの被覆に用いる反射防止膜としては、単層又は複数層からなるものが知られている。単層及び2層からなるものは、残存反射率が大きいため、屈折率の異なる3層を用いたものが好ましいと言われている。しかしながら、3層を積層させる場合、ディップコーティング法、真空蒸着法などの公知の方法を用いても、煩雑であるとともに生産性が低いという問題があった。
そこで、単層膜で反射率を低減させる試みがなされているが、低屈折率、高機械強度を併せ持つ材料が得られていないのが現状である。
【0004】
【特許文献1】特開2002−3752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、誘電率、機械強度等の特性が良好であるとともに、面状が良好な膜を形成することができる膜形成用組成物、該膜形成用組成物を用いて形成された膜、及び、該膜を有する電子デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題が下記の<1>、<13>及び<16>の構成により解決されることを見出した。好ましい実施態様である<2>〜<12>、<14>及び<15>とともに以下に記す。
<1> 式(I)で表される化合物を含むことを特徴とする膜形成用組成物、
【0007】
【化1】

(式(I)中、Xはアダマンタン構造、ジアマンタン構造、ビアダマンタン構造、及び、トリアマンタン構造よりなる群から選択された構造であり、Xがアダマンタン構造の場合、nは3又は4であり、Xがアダマンタン構造以外の場合、nは3〜6の整数である。)
【0008】
<2> ポリマーを含む上記<1>に記載の膜形成用組成物、
<3> ポリマーが有機系ポリマーである上記<2>に記載の膜形成用組成物、
<4> 有機系ポリマーが芳香環を含まない上記<3>に記載の膜形成用組成物、
<5> 有機系ポリマーがカゴ型構造を含む上記<3>又は<4>に記載の膜形成用組成物、
<6> カゴ型構造がアダマンタン構造、ジアマンタン構造、ビアダマンタン構造、トリアマンタン構造、及び、テトラマンタン構造よりなる群から選ばれた構造である上記<5>に記載の膜形成用組成物、
<7> カゴ型構造を含む有機系ポリマーが重合促進剤を用いて得られる上記<6>に記載の膜形成用組成物、
<8> 重合促進剤がラジカル重合開始剤である上記<7>に記載の膜形成用組成物、
<9> ラジカル重合開始剤が有機過酸化物又はアゾ化合物である上記<8>に記載の膜形成用組成物、
<10> 塗布溶剤を含む上記<1>〜<9>のいずれか1つに記載の膜形成用組成物、
<11> 空孔形成剤を含む上記<1>〜<10>のいずれか1つに記載の膜形成用組成物、
<12> 密着促進剤を含む上記<1>〜<11>のいずれか1つに記載の膜形成用組成物、
<13> 上記<1>〜<12>のいずれか1つに記載の膜形成用組成物を用いて形成された膜、
<14> 絶縁膜である上記<13>に記載の膜、
<15> 反射防止膜である上記<13>に記載の膜、
<16> 上記<13>〜<15>のいずれか1つに記載の膜を有する電子デバイス。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、誘電率、機械強度等の特性が良好であるとともに、面状が良好な膜を形成することができる膜形成用組成物、該膜形成用組成物を用いて形成された膜、及び、該膜を有する電子デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の膜形成用組成物は、式(I)で表される化合物を含むことを特徴とする。
【0011】
【化2】

(式(I)中、Xはアダマンタン構造、ジアマンタン構造、ビアダマンタン構造、及び、トリアマンタン構造よりなる群から選択された構造であり、Xがアダマンタン構造の場合、nは3又は4であり、Xがアダマンタン構造以外の場合、nは3〜6の整数である。)
【0012】
式(I)で表される化合物において、Xがアダマンタン構造の場合、nは3又は4であり、好ましくは3である。Xがジアマンタン構造、ビアダマンタン構造又はトリアマンタン構造の場合、nは3〜6の整数であり、より好ましくは3〜5の整数であり、特に好ましくは3又は4である。
式(I)におけるXは、Xはアダマンタン構造、ジアマンタン構造、ビアダマンタン構造、及び、トリアマンタン構造よりなる群から選択された構造、すなわち、Xはアダマンタン、ジアマンタン、ビアダマンタン、及び、トリアマンタンよりなる群から選択された化合物の水素原子をn個除いたn価の基である。
また、式(I)におけるXとエチニル基とは、アダマンタン構造、ジアマンタン構造、ビアダマンタン構造又はトリアマンタン構造における橋頭位(メチン基部分)で結合していることが好ましい。すなわち、式(I)におけるXは、アダマンタン、ジアマンタン、ビアダマンタン、及び、トリアマンタンよりなる群から選択された化合物の橋頭位の水素原子をn個除いたn価の基であることが好ましい。
さらに式(I)におけるXは、誘電率の観点から、Xはジアマンタン構造、ビアダマンタン構造、及び、トリアマンタン構造よりなる群から選択された構造であることがより好ましい。
【0013】
式(I)で表される化合物の分子量は、好ましくは200〜1,000、より好ましくは200〜750、特に好ましくは200〜450である。
本発明の膜形成用組成物には、式(I)で表される化合物を1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
【0014】
本発明の膜形成用組成物における式(I)で表される化合物の含有量は、膜形成用組成物の全固形分に対して、好ましくは1〜50重量%、さらに好ましくは1〜30重量%、特に好ましくは1〜15重量%である。ここで全固形分とは、この組成物を用いて得られる膜を構成する全成分に相当する。
【0015】
また、本発明の膜形成用組成物における式(I)で表される化合物は、膜形成時に架橋剤として作用することが好ましい。
本発明の膜形成用組成物は、絶縁膜形成用組成物として好適に用いることができる。また、本発明の膜形成用組成物は、反射防止膜形成用組成物として好適に用いることができる。
【0016】
以下に、式(I)で表される化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。なお、(D−1)及び(D−2)は、アダマンタン構造を有する式(I)で表される化合物、(D−3)及び(D−4)は、ジアマンタン構造を有する式(I)で表される化合物、(D−5)〜(D−8)は、ビアダマンタン構造を有する式(I)で表される化合物、(D−9)及び(D−10)は、トリアマンタン構造を有する式(I)で表される化合物である。
【0017】
【化3】

【0018】
【化4】

【0019】
式(I)で表される化合物の合成において、アダマンタン構造、ジアマンタン構造、ビアダマンタン構造又はトリアマンタン構造に炭素−炭素三重結合を含む置換基を導入する際には公知の合成法を用いることができ、例えば、エチニル基を導入するためには、例えば、ジアマンタンを原料として臭素化を行うことにより臭素置換ジアマンタンを合成し、臭化アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化鉄等のルイス酸の存在下で臭化ビニルとフリーデルクラフツ反応させて2,2−ジブロモエチル基を導入、続けて強塩基で脱HBr化することによって容易に得ることができる。
【0020】
本発明の膜形成用組成物は、ポリマーを含むことが好ましい。
膜形成用組成物中のポリマーとしては、有機系ポリマー、無機系ポリマーのどちらでもよいが、有機系ポリマーの方が好ましい。
【0021】
有機系ポリマーの例としては、有機シロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、アミノポリアクリルアミド、イソブチレン無水マレイン酸アミド、AAS(アクリロニトリル−アクリレート−スチレンコポリマー)、AES(アクリロニトリル−エチレン−プロピレン−スチレンコポリマー)、AS(アクリロニトリル−スチレンコポリマー)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー)、ACS(アクリロニトリル−スチレンコポリマーと塩素化ポリエチレンのブレンド)、MBS(メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレンコポリマー)、エチレン−塩化ビニルコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン酢酸ビニル塩化ビニルグラフトコポリマー、エチレンビニルアルコールコポリマー、塩素化ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、カルボキシビニルポリマー、ケトン樹脂、フッ素化プラスチック、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化エチレンポリプロピレンコポリマー、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシビニルエーテルコポリマー)、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリアセタール、ポリアミド、ナイロン、共重合ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリアセチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデンラテックス、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリグルタミン酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアミンサルホン、ポリパラビニルフェノール、ポリパラメチルスチレン、ポリアリルアミン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリブタジエン、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリメチルメタクリレート、エポキシ樹脂、オリゴエステルアクリレート、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、セルロース、セルロースアセテート、セルロイド、セルロース脂肪酸エステル、セルロース芳香族カルボン酸エステル、セルロース誘導体、ポリオキサゾリン、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ゼラチン、ポリアリーレン、ポリベンゾオキサゾール等がその代表例として挙げられる。
これらの中で好ましいのは、有機シロキサン、ポリアセチレン、ポリアリーレン、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾールであり、特に好ましくは、ポリアセチレンである。
【0022】
これらの有機系ポリマーは、式(I)で表される化合物と反応させることができるため、成膜時等に式(I)で表される化合物と反応し得る炭素−炭素不飽和結合を有することが好ましい。有機系ポリマーが有する不飽和結合として、好ましくはアルケニル基又はアルキニル基であり、より好ましくはビニル基、アリル基又はエチニル基であり、特に好ましくはビニル基又はエチニル基である。有機系ポリマーが有する前記不飽和結合は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
また、本発明の膜形成用組成物が炭素−炭素不飽和結合を有する有機系ポリマーを含有する場合、前記式(I)で表される化合物は架橋剤として膜形成時に好適に作用する。
【0023】
有機系ポリマーとしては、低い誘電率、低い屈折率を維持する観点から、芳香環は含まないことが好ましい。また、低誘電率・高耐熱性・高機械強度という観点から脂環系のカゴ型構造が好ましい。
【0024】
カゴ型構造としては、アダマンタン構造、ジアマンタン構造、ビアダマンタン構造、トリアマンタン構造又はテトラマンタン構造が好ましく、ジアマンタン構造、ビアダマンタン構造又はトリアマンタン構造がより好ましく、ジアマンタン構造又はビアダマンタン構造が特に好ましい。
【0025】
有機ポリマーの重量(質量)平均分子量の好ましい範囲は1,000〜500,000であり、より好ましくは3,000〜300,000、特に好ましくは5,000〜200,000である。
【0026】
また、本発明に用いることができる有機系ポリマーは、誘電率、屈折率、膜の吸湿性の観点からポリイミド以外の化合物、すなわちポリイミド結合を有しない化合物であることが好ましい。
【0027】
本発明の膜形成用組成物に用いることができるポリマーは、1種単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0028】
本発明の膜形成用組成物におけるポリマーの含有量は、膜形成用組成物の全固形分に対して、好ましくは1〜90重量%、さらに好ましくは1〜70重量%、特に好ましくは1〜50重量%である。
【0029】
本発明に用いることができるカゴ型構造を含む有機系ポリマーは、カゴ型構造を有するモノマーを少なくとも用いて重合を行い得られるポリマーであることが好ましい。
カゴ型構造を有するモノマーを少なくとも用いた重合は、炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合の付加重合反応によって行うことが好ましい。本発明における付加重合反応としては、有機合成分野で公知のカチオン重合、アニオン重合、ラジカル重合、熱重合等が利用できる。
前記重合反応は、重合促進剤を用いて行うことが好ましい。
重合促進剤としては、例えば、金属触媒及びラジカル重合開始剤を挙げることができ、ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0030】
例えば、金属触媒を使用することで、反応時間短縮、反応温度を低くすることができるメリットの他、特に本発明においては塗布溶剤への溶解性の良好な重合体をより高い収率で得ることができる優れた効果がある。
使用できる金属触媒としては遷移金属触媒が好ましく用いられ、例えばテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(Pd(PPh34)、ビス(ベンゾニトリル)パラジウムクロライド、酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)等のパラジウム系触媒、Ziegler−Natta触媒、ニッケルアセチルアセトネート等のNi系触媒、WCl6等のW系触媒、MoCl5等のMo系触媒、TaCl5等のTa系触媒、NbCl5等のNb系触媒、Rh系触媒、Pt系触媒等が好ましく用いられる。
【0031】
本発明に用いることができる金属触媒は、1種のみ、又は、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明における金属触媒の使用量は、モノマー1モルに対して、好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.01〜1モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルである。
【0032】
カゴ型構造を有するモノマーの重合反応は、ラジカル重合開始剤の存在下で行うことが特に好ましい。例えば、重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有するモノマーを、加熱によって炭素ラジカルや酸素ラジカル等の遊離ラジカルを発生して活性を示す重合開始剤存在下で重合することができる。
ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物又はアゾ化合物が好ましく用いられるが、有機過酸化物が特に好ましい。
【0033】
有機過酸化物としては、日本油脂株式会社より市販されているパーヘキサH等のケトンパーオキサイド類、パーヘキサTMH等のパーオキシケタール類、パーブチルH−69等のハイドロパーオキサイド類、パークミルD、パーブチルC、パーブチルD等のジアルキルパーオキサイド類、ナイパーBW等のジアシルパーオキサイド類、パーブチルZ、パーブチルL等のパーオキシエステル類、パーロイルTCP等のパーオキシジカーボネート、ジイソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4−t−ブチルクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジコハク酸パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ[4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル]プロパン、
【0034】
t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ジーt−ブチルパーオキシバレレート、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーイキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メタンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3−イン、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、o−クロロベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、2,4,4−トリメチルペンチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、ジ‐3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、ジエチレングリコールビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート等が好ましく用いられ、より好ましくは、パークミルD、パーブチルC、パーブチルDであり、特に好ましくは、パークミルDである。
【0035】
アゾ化合物(有機アゾ系化合物)としては、和光純薬工業株式会社で市販されているV−30、V−40、V−59、V−60、V−65、V−70等のアゾニトリル化合物類、VA−080、VA−085、VA−086、VF−096、VAm−110、VAm−111等のアゾアミド化合物類、VA−044、VA−061等の環状アゾアミジン化合物類、V−50、VA−057等のアゾアミジン化合物類、2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシブチル)プロピオンアミド]、2,2−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオアミド)、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルフェートジヒドレート、2,2−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラヒドレート、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が好ましく用いられ、より好ましくは、V−30、V−40、V−59、V−60、V−65、V−70、VA−080、VA−085、VA−086、VF−096、VAm−110、VAm−111であり、特に好ましくは、V−30、V−40、V−59、V−60、V−65、V−70である。
【0036】
ラジカル重合開始剤は、1種のみ、又は、2種以上を混合して用いてもよい。
前記重合反応におけるラジカル重合開始剤の使用量は、モノマー1モルに対して、好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.01〜1モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルである。
ラジカル重合開始剤の添加形態としては、そのまま添加してもよいし、溶液にして添加してもよい。また、本発明におけるラジカル重合開始剤の添加方法としては、一括でもよいし、分割添加してもよい。
【0037】
この中でも、シクロヘキサノンのような塗布溶剤に高い溶解性を有する可溶性ポリマーが収率よく得られる点で、有機過酸化物系ラジカル重合開始剤が特に好ましい。
【0038】
本発明の膜形成用組成物は、塗布溶剤を含むことで、塗布液として好ましい膜形成用組成物とすることができる。
該膜形成用組成物は、塗布溶剤に十分な濃度で溶解することが望まれる。溶解性の目安としては、電子デバイス製造の際に使用される塗布溶剤(例えば、シクロヘキサノン)に25℃で好ましくは1重量%以上、より好ましくは7重量%以上、特に好ましくは10重量%以上溶解することが好ましい。
【0039】
好適な塗布溶剤の例としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−エトキシメタノール、3−メトキシプロパノール等のアルコール系溶剤、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、アニソール、フェネトール、ベラトロール等のエーテル系溶剤、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤などが挙げられ、これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
より好ましい塗布溶剤は、アセトン、プロパノール、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、アニソール、メシチレン、1,2−ジクロロベンゼンであり、特に好ましくはシクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、アニソールである。
【0041】
膜形成用組成物中の全固形分濃度は、好ましくは1〜50重量%であり、より好ましくは2〜20重量%であり、特に好ましくは3〜10重量%である。
【0042】
さらに、本発明の膜形成用組成物には、得られる膜の特性(耐熱性、誘電率、屈折率、機械強度、塗布性、密着性等)を損なわない範囲で、ラジカル発生剤、非イオン界面活性剤、フッ素系非イオン界面活性剤、シランカップリング剤、密着促進剤などの添加剤を添加してもよい。
本発明の膜形成用組成物に用いることができるラジカル発生剤としては、前述した重合促進剤が例示でき、前述した金属触媒及びラジカル重合開始剤が好ましく例示できる。
【0043】
非イオン界面活性剤としては、例えば、オクチルポリエチレンオキシド、デシルポリエチレンオキシド、ドデシルポリエチレンオキシド、オクチルポリプロピレンオキシド、デシルポリプロピレンオキシド、ドデシルポリプロピレンオキシド等が挙げられる。フッ素系非イオン界面活性剤としては、例えば、パーフルオルオクチルポリエチレンオキシド、パーフルオルデシルポリエチレンオキシド、パーフルオルドデシルポリエチレンオキシド等が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、トリビニルエトキシシラン等が挙げられる。
【0044】
これらの添加剤の添加量は、添加剤の用途又は塗布液の固形分濃度によって適当な範囲が存在するが、塗布液中の重量%で、好ましくは0.001%〜10%、より好ましくは0.01%〜5%、特に好ましくは0.05%〜2%である。
【0045】
本発明の膜形成用組成物は、空孔形成剤を含むことが好ましい。
空孔形成剤とは、膜形成用組成物により得た膜中に空孔を形成する機能を有する物質である。例えば、空孔形成剤を含有する膜形成用組成物により形成された膜を加熱することにより、膜中に空孔形成剤による空孔を形成し、空孔を含有する膜を得ることができる。
【0046】
空孔形成剤としては、特に限定されないが、加熱によって分解する熱分解性ポリマーを使用することができる。空孔形成剤としてのポリマーは、膜を構成するポリマーの熱分解温度より低い温度において熱分解するものが好ましい。
【0047】
空孔形成剤として使用できる熱分解性ポリマーとしては、例えば、ポリビニル芳香族化合物(ポリスチレン、ポリビニルピリジン、ハロゲン化ポリビニル芳香族化合物など)、ポリアクリロニトリル、ポリアルキレンオキシド(ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシドなど)、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクタム、ポリウレタン、ポリメタクリレート(ポリメチルメタクリレートなど)及びポリメタクリル酸、ポリアクリレート(ポリメチルアクリレートなど)及びポリアクリル酸、ポリジエン(ポリブタジエン及びポリイソプレンなど)、ポリビニルクロライド、ポリアセタール、並びに、アミンキャップドアルキレンオキシド(HuntsmanCorp.からJeffamineTMポリエーテルアミンとして商業的に入手できる)などが挙げられる。
【0048】
空孔形成剤としてのポリマーは、ホモポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマーなどいずれであってもよい。また、これらの混合物であってもよい。また、線状、分岐状、超分岐状、樹枝状又は星様状であってもよい。
【0049】
特にポリスチレンは、空孔形成剤として好適に使用できる。例えば、アニオン性重合ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、未置換及び置換ポリスチレン(たとえば、ポリ(α−メチルスチレン))が挙げられ、未置換ポリスチレンがより好ましい。
【0050】
空孔形成剤は、膜を形成する化合物に結合していることも好ましい。このように設計することで大きさが均一な空孔を形成することが可能となり、機械強度の低下を低減できる。
【0051】
空孔形成剤は、また、膜に生成する空孔の大きさに対応した大きさの粒状物質であってもよい。このような物質としては、好ましくは0.5〜50nm、より好ましくは0.5〜20nmの平均直径を有する物質である。かかる物質の材質等に制限はなく、例としては、デンドリマーのような超分岐状ポリマー系及びラテックス粒子、特に架橋ポリスチレン含有ラテックスが挙げられる。
これらの物質の例としては、Dendritech,Inc.を通じて入手でき、また、Polymer J.(東京),Vol.17,117(1985)にTomalia等により記載されているポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、DSMCorporationから入手できるポリプロピレンイミンポリアミン(DAB−Am)デンドリマー、フレッシェ型ポリエーテルデンドリマー(J.Am.Chem.Soc.,Vol.112,7638(1990)、Vol.113,4252(1991)にFrechet等により記載されている)、パーセク型液晶モノデンドロン、デンドロン化ポリマーおよびそれらの自己集合高分子(Nature,Vol.391,161(1998)、J.Am.Chem.Soc.,Vol.119,1539(1997)にPercec等により記載されている)、ボルトロンHシリーズ樹枝状ポリエステル(PerstorpABから商業的に入手できる)が挙げられる。
【0052】
空孔形成剤としてのポリマーの好適な重量平均分子量は、好ましくは200〜100,000、より好ましくは1,000〜50,000、特に好ましくは2,000〜20,000である。
【0053】
膜形成用組成物中の空孔形成剤の添加量は、全固形分に対して、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%、特に好ましくは20〜30重量%である。
【0054】
本発明の膜形成用組成物は、密着促進剤を含むことが好ましい。
本発明に用いることができる密着促進剤の代表的な例は、シラン、好ましくはアルコキシシラン(例えばトリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン)等のオルガノシラン、アセトキシシラン(例えばビニルトリアセトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、及びこれらの加水分解物あるいは脱水縮合物、ヘキサメチルジシラザン[(CH33−Si−NH−Si(CH33]、又は、アミノシラン・カプラー、例えばγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、又はキレート(例えば、酸化アルミニウムを形成する点から、アルミニウムモノエチルアセトアセテートジイソプロピレート[((i−C37O)2Al(OCOC25CHCOCH3))]、アルミニウム・アルコキシド)などを挙げることができる。これらの材料を混合して用いてもよい。また、接着促進剤として市販されているものを用いてもよい。
膜形成用組成物中の密着促進剤の添加量は、又は固形分に対して、好ましくは0.05〜5重量%、より好ましくは0.1〜2重量%である。
【0055】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、絶縁膜として好適に使用することができ、また、本発明の膜形成用組成物を使用して得られる絶縁膜は、電子デバイスに好適に使用できる。
さらに、本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、反射防止膜として好適に使用することができ、また、本発明の膜形成用組成物を使用して得られる反射防止膜は、電子デバイスに好適に使用できる。
また、本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、本発明の膜形成用組成物のみから得られる膜であることが好ましい。
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、本発明の膜形成用組成物をスピンコーティング法、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スキャン法等の任意の方法により基板に塗布した後、溶剤を加熱処理で除去することにより形成することができる。溶剤を乾燥するための加熱は40℃〜350℃の範囲内で、1段階で行っても2段階以上で行ってもよい。加熱時間は1段階につき5秒〜300秒で行うことが好ましい。加熱処理の方法は、特に限定されないが、一般的に使用されているホットプレート加熱、ファーネス炉を使用した方法、RTP(Rapid Thermal Processor)等によるキセノンランプを使用した光照射加熱等を適用することができる。
【0056】
本発明の膜形成用組成物は、基板上に塗布した後に加熱処理することによって硬化させることが特に好ましい。
例えば式(I)で表される化合物等を重合した重合物中に残存する炭素−炭素不飽和結合を後加熱時に重合させることによって、不溶不融化することができる。この後加熱処理の条件は、好ましくは100〜450℃、より好ましくは200〜420℃、特に好ましくは300℃〜400℃で、好ましくは1分〜2時間、より好ましくは10分〜1.5時間、特に好ましくは30分〜1時間の範囲である。
後加熱処理は数回に分けて行ってもよい。また、この後加熱は酸素による熱酸化を防ぐためにアルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、窒素雰囲気下で行うことが特に好ましい。
【0057】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、多様の目的に使用することができる。例えば半導体装置、マルチチップモジュール多層配線板等の電子部品における絶縁被膜として好適であり、半導体用層間絶縁膜、表面保護膜、バッファーコート膜の他、LSIにおけるパッシベーション膜、α線遮断膜、フレキソ印刷版のカバーレイフィルム、オーバーコート膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜等として使用することができる。
また、別の用途として本発明の膜に電子ドナー又はアクセプターをドープすることによって導電性を付与し、導電性膜として使用することもできる。
さらに光学部品や眼鏡などのレンズ、ディスプレイ装置のスクリーンなどの被覆に用いる反射防止膜としても好適である。
【実施例】
【0058】
以下の実施例は、本発明を説明するものであり、その範囲を限定するものではない。
【0059】
<例示化合物(D−1)の合成>
アダマンタンを臭素によりブロモ化し、1,3,5−トリブロモアダマンタン(化合物A1)を合成し、化合物A1にルイス酸として臭化アルミニウムを用い、臭化ビニルを反応させてジブロモエチル基を3個有するアダマンタン体(化合物A2)を合成し、さらに化合物A2とt−ブトキシカリウムを反応させることで1,3,5−トリエチニルアダマンタン(例示化合物(D−1))を合成した。
【0060】
【化5】

【0061】
得られた例示化合物(D−1)の元素分析値は以下の通りであった。
元素分析値 C1616=208.3として
計算値 C 92.26 H 7.74 (%)
実測値 C 92.20 H 7.80 (%)
【0062】
<例示化合物(D−3)の合成>
ジアマンタンを臭素によりブロモ化し、1,4,9−トリブロモジアマンタン(化合物B1)を合成し、化合物B1に臭化ビニルを反応させてジブロモエチル基を3個有するジアマンタン体(化合物B2)を合成し、さらに化合物B2とt−ブトキシカリウムを反応させることで1,4,9−トリエチニルジアマンタン(例示化合物(D−3))を合成した。
【0063】
【化6】

【0064】
得られた例示化合物(D−3)の元素分析値は以下の通りであった。
元素分析値 C2020=260.37として
計算値 C 92.26 H 7.74 (%)
実測値 C 92.18 H 7.82 (%)
【0065】
<例示化合物(D−6)の合成>
ビアダマンタンを臭素によりブロモ化し、1,1’,3,3’−テトラブロモビアダマンタン(化合物C1)を合成し、化合物C1に臭化ビニルを反応させてジブロモエチル基を4個有するビアダマンタン体(化合物C2)を合成し、さらに化合物C2とt−ブトキシカリウムを反応させることで1,1’,3,3’−テトラエチニルビアダマンタン(例示化合物(D−6))を合成した。
【0066】
【化7】

【0067】
得られた例示化合物(D−6)の元素分析値は以下の通りであった。
元素分析値 C2830=366.54として
計算値 C 91.75 H 8.25 (%)
実測値 C 91.82 H 8.18 (%)
【0068】
<実施例1>
例示化合物(D−1)1重量部と有機系ポリマーとして4,9−ジエチニルジアマンタンから合成したポリマー(重量平均分子量 18,000)10重量部をシクロヘキサノン95重量部に室温で完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で150℃60秒間加熱した後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成した結果、膜厚0.5μmのブツのない均一な膜が得られた。この膜をシクロヘキサノンに室温で5時間浸漬したが膜厚は全く減少しなかった。膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ社製水銀プローバ及び横川ヒューレットパッカード社製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出し、ヤング率はMTS社製ナノインデンターSA2を使用して測定した。また、塗膜後の面状は良好であった。なお、比誘電率、ヤング率の測定温度は25℃であり、以降も同様である。
【0069】
<実施例2>
塗布溶剤をアニソールに変更した他は実施例1と全く同じようにして、塗膜を作製した。塗膜後の面状は良好であった。
【0070】
<実施例3>
例示化合物(D−3)1重量部と有機系ポリマーとして4,9−ジエチニルジアマンタンから合成したポリマー(重量平均分子量 18,000)10重量部をシクロヘキサノン95重量部に室温で完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1μmのPTFE製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で150℃60秒間加熱した後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成した結果、膜厚0.5μmのブツのない均一な膜が得られた。この膜をシクロヘキサノンに室温で5時間浸漬したが膜厚は全く減少しなかった。膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ社製水銀プローバ及び横川ヒューレットパッカード社製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出し、ヤング率はMTS社製ナノインデンターSA2を使用して測定した。また、塗膜後の面状は良好であった。なお、比誘電率、ヤング率の測定温度は25℃であり、以降も同様である。
【0071】
<実施例4>
例示化合物(D−6)1重量部と有機系ポリマーとして4,9−ジエチニルジアマンタンから合成したポリマー(重量平均分子量 18,000)10重量部をシクロヘキサノン95重量部に室温で完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1μmのPTFE製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で150℃60秒間加熱した後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成した結果、膜厚0.5μmのブツのない均一な膜が得られた。この膜をシクロヘキサノンに室温で5時間浸漬したが膜厚は全く減少しなかった。膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ社製水銀プローバ及び横川ヒューレットパッカード社製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出し、ヤング率はMTS社製ナノインデンターSA2を使用して測定した。また、塗膜後の面状は良好であった。なお、比誘電率、ヤング率の測定温度は25℃であり、以降も同様である。
【0072】
<比較例1>
例示化合物(D−1)の代わりに1,4−ジビニルベンゼンを用いた以外は実施例1と同じ方法で塗膜を作製した。塗膜後の面状は悪かった。
【0073】
<比較例2>
例示化合物(D−1)の代わりにジアリルモノグリシジルイソシアヌル酸を用いた以外は実施例1と同じ方法で塗膜を作製した。塗膜後の面状は悪かった。
【0074】
<比較例3>
例示化合物(D−1)の代わりに1,6−ヘキサンジアクリレートを用いた以外は実施例1と同じ方法で塗膜を作製した。塗膜後の面状は悪かった。
【0075】
<比較例4>
例示化合物(D−1)の代わりに1,9−ノナンジアクリレートを用いた以外は実施例1と同じ方法で塗膜を作製した。塗膜後の面状は悪かった。
【0076】
評価結果を表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
比較例に比べ、本発明の膜形成用組成物を用いた実施例は、比誘電率、ヤング率、及び、面状が優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物を含むことを特徴とする
膜形成用組成物。
【化1】

(式(I)中、Xはアダマンタン構造、ジアマンタン構造、ビアダマンタン構造、及び、トリアマンタン構造よりなる群から選択された構造であり、Xがアダマンタン構造の場合、nは3又は4であり、Xがアダマンタン構造以外の場合、nは3〜6の整数である。)
【請求項2】
ポリマーを含む請求項1に記載の膜形成用組成物。
【請求項3】
ポリマーが有機系ポリマーである請求項2に記載の膜形成用組成物。
【請求項4】
有機系ポリマーが芳香環を含まない請求項3に記載の膜形成用組成物。
【請求項5】
有機系ポリマーがカゴ型構造を含む請求項3又は4に記載の膜形成用組成物。
【請求項6】
カゴ型構造がアダマンタン構造、ジアマンタン構造、ビアダマンタン構造、トリアマンタン構造、及び、テトラマンタン構造よりなる群から選ばれた構造である請求項5に記載の膜形成用組成物。
【請求項7】
カゴ型構造を含む有機系ポリマーが重合促進剤を用いて得られる請求項6に記載の膜形成用組成物。
【請求項8】
重合促進剤がラジカル重合開始剤である請求項7に記載の膜形成用組成物。
【請求項9】
ラジカル重合開始剤が有機過酸化物又はアゾ化合物である請求項8に記載の膜形成用組成物。
【請求項10】
塗布溶剤を含む請求項1〜9のいずれか1つに記載の膜形成用組成物。
【請求項11】
空孔形成剤を含む請求項1〜10のいずれか1つに記載の膜形成用組成物。
【請求項12】
密着促進剤を含む請求項1〜11のいずれか1つに記載の膜形成用組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1つに記載の膜形成用組成物を用いて形成された膜。
【請求項14】
絶縁膜である請求項13に記載の膜。
【請求項15】
反射防止膜である請求項13に記載の膜。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか1つに記載の膜を有する電子デバイス。

【公開番号】特開2008−239685(P2008−239685A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78943(P2007−78943)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】