説明

膜形成用組成物

【課題】本発明は、優れた耐熱性を有し、高屈折率を示す硬化膜を形成しうる有機系の膜形成用組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】硬化後に400℃以上の熱分解温度を有する有機化合物と、アルミニウム化合物粒子、スズ化合物粒子、チタン化合物粒子およびジルコニウム化合物粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物粒子とを含む膜形成用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化時に400℃以上の熱分解温度を有する化合物と金属化合物粒子とを含有する膜形成用組成物、および該膜形成用組成物より得られる硬化膜、さらに該硬化膜を有する光学物品に関する。本発明の膜形成用組成物および光学物品は、半導体集積回路用光配線構造を初めとする光導波路、固体撮像素子用マイクロレンズアレイを初めとする光学レンズ、反射防止膜、反射防止フィルム、反射防止板、光学フィルター、ディスプレイ、光触媒機能含有フィルムなどに好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の微細化と共に、金属配線の抵抗・容量(RC)遅延による伝送速度の限界、および充放電による消費電力の増大が課題になっている。本課題を解決する為に、半導体集積回路内に光導波路を形成させるという光による配線構造が広く検討されている。この場合、屈折率を代表とする光学的性質が優れていると共に、CVD工程を代表とする成膜工程における400℃程度の加熱に対しても耐性を有していないと既存の半導体製造プロセスとの親和性が著しく悪くなる。また、固体撮像素子も半導体集積回路と同様に小型化、高画素化が要求されており、その課題の一つとして受光部と集光レンズの材料として好適な屈折率1.6〜2.0程度の材料が求められている。
【0003】
そこで、高屈折率で光学的性質に優れた硬化膜を提供する目的で、シロキサン系樹脂組成物と金属化合物粒子を含む樹脂組成物が開示されている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2007−246877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の樹脂組成物による硬化膜は、耐熱性、高屈折率などの諸要求性能の観点からは必ずしも満足できるものではない。特に、得られる硬化膜の耐熱性が350℃程度であるために、既存の半導体プロセスへの適用は困難である。
【0006】
また、半導体集積回路などのデバイス製造時にはドライエッチングが使用される。上述のようなシロキサン構造を有する樹脂を使用すると、半導体集積回路などで使用されるシリコン酸化膜などの無機材料とのドライエッチング速度が似通ってくるためエッチングの選択性が低下する。そのため、半導体集積回路の微細加工が困難な場合があった。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みて、優れた耐熱性を有し、高屈折率を示す膜を形成しうる有機系の膜形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、上記課題が下記の<1>〜<7>の構成により解決されることを見出した。
【0009】
<1> 硬化後に400℃以上の熱分解温度を有する有機化合物と、アルミニウム化合物粒子、スズ化合物粒子、チタン化合物粒子およびジルコニウム化合物粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物粒子とを含む膜形成用組成物。
<2> 前記有機化合物が、一般式(1)で表される化合物、または該化合物の重合体である<1>に記載の膜形成用組成物。
【0010】
【化4】


(一般式(1)中、Aは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、芳香族基、または一般式(2)で表される基を表す。Xは、カゴ構造または一般式(3)で表される基を表す。nは2〜10の整数を表す。)
【0011】
【化5】


(一般式(2)中、Rはそれぞれ独立にアルキル基を表す。*は一般式(1)中の炭素原子との結合部を表す。)
【0012】
【化6】


(一般式(3)中、Ar、ArおよびArは、それぞれ独立に芳香族基を表す。芳香族基は炭素数1〜20のアルキル基で置換されていてもよい。)
<3> 前記金属化合物粒子の数平均粒子径が1〜200nmである<1>または<2>に記載の膜形成用組成物。
<4> さらに界面活性剤を含有する<1>〜<3>のいずれかに記載の膜形成用組成物。
<5> <1>〜<4>のいずれかに記載の膜形成用組成物を用いて形成した膜。
<6> <5>に記載の膜を有する光学デバイス。
<7> <5>に記載の膜を有する半導体集積回路。
【発明の効果】
【0013】
本発明の膜形成用組成物によれば、耐熱性に優れ、高屈折率を示す膜を形成することができる。さらに、該膜は、優れた耐熱性を示すなど既存の半導体プロセスとの親和性が高く、特に半導体集積回路の光導波路(光配線)として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係る膜形成用組成物および該膜形成用組成物より得られる膜について詳細に説明する。
【0015】
本発明の膜形成用組成物は、硬化後に400℃以上の熱分解温度を有する有機化合物と、アルミニウム化合物粒子、スズ化合物粒子、チタン化合物粒子およびジルコニウム化合物粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物粒子とを含む。
【0016】
<硬化後に400℃以上の熱分解温度を有する有機化合物>
本発明の膜形成用組成物には、硬化後に400℃以上の熱分解温度を有する有機化合物が含まれる。一般的に、半導体製造工程において300〜400℃の温度領域は成膜などのプロセスでよく用いられる温度領域である。そのため、既存の半導体製造工程との親和性を高める観点から、上述の化合物を使用することが好ましい。硬化後に400℃以上の熱分解温度を有する有機化合物としては、例えば、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド、ポリアリーレン、かご型構造を有する化合物、などが挙げられる。なお、有機化合物には低分子化合物および高分子化合物が含まれる。
【0017】
上述の硬化後に400℃以上の熱分解温度を有する有機化合物として、金属化合物との親和性の観点から、一般式(1)で表される化合物、または該化合物の重合体が好ましい。特に、耐熱性に優れており架橋時にガスを発生させないため、他の材料との密着性が良好であるとの観点から、一般式(1)で表される化合物の重合体が好ましい。一般式(1)で表される化合物は三重結合を有しており、この三重結合のπ電子が金属と錯形成することで金属と強固な結合を形成しやすくなる。そのため、硬化膜中での金属化合物粒子の凝集が抑えられて分散性が向上し、併せて光線透過率など硬化膜の透明性の向上が期待できる。さらに、有機化合物と金属化合物粒子間の強固な結合により、その間の界面剥離などが抑制され硬化膜中でクラックが発生しにくくなると共に、硬化時の内部応力の発生が抑制されるなどが期待できる。また、重合体の場合でも、重合の際に生成すると考えられる二重結合も金属化合物粒子と強固な結合を形成しうる。
【0018】
【化7】


(一般式(1)中、Aは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、芳香族基、または一般式(2)で表される基を表す。Xは、カゴ構造または一般式(3)で表される基を表す。nは2〜10の整数を表す。nが2以上の場合、Aは同一でも異なっていてもよい。)
【0019】
【化8】


(一般式(2)中、Rはそれぞれ独立にアルキル基を表す。*は一般式(1)中の炭素原子との結合部を表す。)
【0020】
【化9】


(一般式(3)中、Ar、ArおよびArは、それぞれ独立に芳香族基を表す。芳香族基は炭素数1〜20のアルキル基で置換されていてもよい。)
【0021】
一般式(1)中、Aは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、芳香族基、または一般式(2)で表される基を表す。
【0022】
【化10】


(一般式(2)中、Rはそれぞれ独立にアルキル基を表す。*は一般式(1)中の炭素原子との結合部を表す。)
【0023】
一般式(1)中、Aで表される炭素数1〜10のアルキル基は、直鎖、分岐鎖、または環状でもよい。具体的には、メチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0024】
一般式(1)中、Aで表される芳香族基は、芳香族性を有している基であれば特に制限されるものではないが、芳香族炭化水素基や芳香族複素環基などが挙げられ、芳香族炭化水素基が好ましい。芳香族基はハロゲン基などの置換基を有していてもよい。芳香族基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。
【0025】
一般式(2)中、Rで表されるアルキル基は、特に限定されず、直鎖、分岐鎖、または環状でもよい。炭素数1〜10が好ましく、さらに炭素数1〜5が好ましい。具体的には、メチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、好ましくはメチル基、tert−ブチル基である。一般式(2)で表される基として、具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基などが挙げられる。
【0026】
一般式(1)中、nは2〜10の整数を表し、好ましくは2〜4の整数である。
【0027】
一般式(1)中、Xはカゴ構造または一般式(3)で表される基を表す。これらの構造を有することにより、耐熱性の向上が期待できる。熱分解温度が450℃以上要求されるプロセスにおいては、一般式(3)で表される基が好適に使用できる。また、いわゆるレジストポイゾニング現象の発生を抑制する観点からは、カゴ構造が好ましい。
【0028】
【化11】


(一般式(3)中、Ar、ArおよびArは、それぞれ独立に芳香族基を表す。芳香族基は炭素数1〜20のアルキル基で置換されていてもよい。)
【0029】
Xで表されるカゴ構造とは、共有結合した原子で形成された複数の環によって容積が定まり、容積内に位置する点は環を通過せずには容積から離れることができないような分子を指す。例えば、アダマンタン構造はカゴ構造と考えられる。対照的にノルボルナン(ビシクロ[2,2,1]ヘプタン)などの単一架橋を有する環状構造は、単一架橋した環状化合物の環が容積を定めないことから、カゴ構造とは考えられない。
【0030】
Xで表されるカゴ構造は飽和、不飽和結合のいずれを含んでいてもよく、酸素、窒素、硫黄などのヘテロ原子を含んでもよいが、レジストポイゾニング現象の発生を抑制する観点から、飽和炭化水素が好ましい。
【0031】
Xで表されるカゴ構造は、高い耐熱性を有している点で、好ましくはダイヤモンド類似構造のアダマンタン、ビアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタン、ドデカヘドランであり、より好ましくはアダマンタン、ビアダマンタン、ジアマンタンであり、半導体集積回路の配線層に用いる際の低誘電率性、耐熱性、光学特性の観点から、特にビアダマンタン、ジアマンタンが好ましい。上述のようなカゴ構造は、ダイヤモンド構造と類似しており、非常に透明性が高く光学特性の観点から好ましい。
【0032】
Xで表されるカゴ構造は1つ以上の置換基を有していてもよく、置換基の例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、またはヨウ素原子)、炭素数1〜10の直鎖、分岐、環状のアルキル基(メチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなど)、炭素数2〜10のアルケニル基(ビニル、プロペニルなど)、炭素数2〜10のアルキニル基(エチニル、フェニルエチニルなど)、炭素数6〜20のアリール基(フェニル、1−ナフチル、2−ナフチルなど)、炭素数2〜10のアシル基(ベンゾイルなど)、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニルなど)、炭素数1〜10のカルバモイル基(N,N−ジエチルカルバモイルなど)、炭素数6〜20のアリールオキシ基(フェノキシなど)、炭素数6〜20のアリールスルホニル基(フェニルスルホニルなど)、ニトロ基、シアノ基、シリル基(トリエトキシシリル、メチルジエトキシシリル、トリビニルシリルなど)などが挙げられる。
【0033】
Xで表されるカゴ構造は2〜4価であることが好ましい。このとき、カゴ型構造に結合する基は1価以上の置換基でも2価以上の連結基でもよい。カゴ型構造は好ましくは、2または3価であり、特に好ましくは2価である。ここで「価」とは、結合手の数の意である。
【0034】
カゴ構造を有する化合物は、例えば市販のジアマンタンを原料として、臭化アルミニウム触媒存在下または非存在下で臭素と反応させて臭素原子を所望の位置に導入、続けて臭化アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化鉄等のルイス酸の存在下で臭化ビニルとフリーデルクラフツ反応させて2,2−ジブロモエチル基を導入、続けて強塩基で脱HBr化してエチニル基に変換することで合成することができる。具体的にはMacromolecules, 1991年24巻5266〜5268頁、1995年28巻5554〜5560頁、Journal of Organic Chemistry, 39, 2995-3003(1974)などに記載された方法に準じて合成することが出来る。また、末端アセチレン基の水素原子をブチルリチウムなどでアニオン化して、これにハロゲン化アルキルやハロゲン化シリルを反応させることによって、アルキル基やシリル基を導入することが出来る。
【0035】
以下に一般式(1)中のXがカゴ構造である化合物の具体例を記載するが、本発明はこれらに限定はされない。
【0036】
【化12】


【0037】
【化13】

【0038】
【化14】

【0039】
一般式(3)中、Ar、ArおよびArは、それぞれ独立に芳香族基を表す。Ar、ArおよびArで表される芳香族基は、芳香族性を有している基であれば特に制限されるものではないが、芳香族炭化水素基や芳香族複素環基などが挙げられ、芳香族炭化水素基が好ましい。芳香族基は炭素数1〜20のアルキル基で置換されていてもよく、炭素数1〜10がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
【0040】
一般式(3)中、Arは4価の芳香族基を表し、炭素数6〜25が好ましい。Arで表される芳香族基として、硬化膜の耐熱性の観点より、以下の一般式(4)〜一般式(8)で表されるいずれかの構造が好ましい。中でも、屈折率の観点から、一般式(7)がより好ましい。
【0041】
【化15】


(一般式(6)中、Yはスルホニル基、酸素原子、フェニレン基、ナフチレン基、フルオレン基、アルキレン基、ハロゲン置換アルキレン基、またはこれらを2つ以上組み合わせて構成された基を表す。一般式(7)中、Zは3価の芳香族炭化水素基を表す。一般式(4)〜一般式(8)中、*はヒドロキシ基との結合を表し、**はアミド基との結合を表す。)
【0042】
一般式(6)中、Yはスルホニル基、酸素原子、フェニレン基、ナフチレン基、フルオレン基、アルキレン基、ハロゲン置換アルキレン基、またはこれらを2つ以上組み合わせて構成された基を表す。
【0043】
一般式(7)中、Zは3価の芳香族炭化水素基を表し、好ましくはベンゼン環基、ナフタレン環基である。
【0044】
一般式(4)〜一般式(8)で表されるArの具体例としては以下の構造が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
【化16】

【0046】
上記の例示構造中Yとしては、以下の構造が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
【化17】

【0048】
一般式(3)中、ArおよびArはそれぞれ芳香族基を表し、一般式(1)中のn個の官能基と結合する。炭素数6〜30が好ましく、炭素数6〜12がより好ましい。なかでも、ベンゼン環基、ナフタレン環基、またはこれらを2以上組み合わせて構成される基が好ましく、ベンゼン環基、ナフタレン環基がより好ましい。
【0049】
一般式(3)中、ArおよびArの具体例として以下の構造が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0050】
【化18】

【0051】
上述の一般式(1)で表される化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。好ましい態様の一つとして、Xがカゴ構造、特にビアダマンタン、ジアマンタンである一般式(1)で表される化合物またはその重合体と、Xが一般式(3)で表される基である一般式(1)で表される化合物またはその重合体とを併用することが好ましい。併用することにより、耐熱性、機械的特性のバランスがより優れる。
【0052】
一般式(1)で表される化合物の重合体の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは1000〜500000、より好ましくは5000〜200000、特に好ましくは10000〜100000である。一般式(1)で表される化合物が低分子化合物である場合、その分子量は好ましくは150〜3000、より好ましくは200〜2000、特に好ましくは220〜1000である。
【0053】
一般式(1)で表される化合物の重合反応は、三重結合などの重合性基によって起こる。ここで重合性基とは、一般式(1)で表される化合物を重合せしめる反応性の置換基を指す。該重合反応としてはどのような重合反応でもよいが、例えばラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、開環重合、重縮合、重付加、付加縮合、遷移金属触媒重合などが挙げられる。
【0054】
一般式(1)で表される化合物の重合反応は、遷移金属触媒存在下で行うこともできる。例えば、重合可能な炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有するモノマーを例えばPd(PPh)、Pd(OAc)などのPd系触媒、Ziegler−Natta触媒、ニッケルアセチルアセトネートなどのNi系触媒、WClなどのW系触媒、MoClなどのMo系触媒、TaClなどのTa系触媒、NbClなどのNb系触媒、Rh系触媒、Pt系触媒などを用いて重合することが好ましい。遷移金属触媒は1種のみ、または2種以上を混合して用いてもよい。本発明の遷移金属触媒の使用量はモノマー(一般式(1)で表される化合物)1モルに対して、好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.01〜1モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルである。
【0055】
一般式(1)で表される化合物の重合反応は、非金属の重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。例えば、加熱によって炭素ラジカルや酸素ラジカルなどの遊離ラジカルを発生して活性を示す重合開始剤存在下で重合することが出来る。
【0056】
重合開始剤としては有機過酸化物または有機アゾ系化合物が好ましく用いられるが、特に有機過酸化物が好ましい。
有機過酸化物としては、日本油脂株式会社より市販されているパーヘキサHなどのケトンパーオキサイド類、パーヘキサTMHなどのパーオキシケタール類、パーブチルH−69などのハイドロパーオキサイド類、パークミルD、パーブチルC、パーブチルDなどのジアルキルパーオキサイド類、ナイパーBWなどのジアシルパーオキサイド類、パーブチルZ、パーブチルLなどのパーオキシエステル類、パーロイルTCPなどのパーオキシジカーボネートなどが好ましく用いられる。
有機アゾ系化合物としては和光純薬工業株式会社で市販されているV−30、V−40、V−59、V−60、V−65、V−70などのアゾニトリル化合物類、VA−080、VA−085、VA−086、VF−096、VAm−110、VAm−111などのアゾアミド化合物類、VA−044、VA−061などの環状アゾアミジン化合物類、V−50、VA−057などのアゾアミジン化合物類等が好ましく用いられる。重合開始剤は1種のみ、または2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の使用量はモノマー(一般式(1)で表される化合物)1モルに対して、好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.01〜1モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルである。
【0057】
重合反応で使用する溶媒は、原料であるモノマー(一般式(1)で表される化合物)が必要な濃度で溶解可能であり、かつ得られる重合体から形成する膜の特性に悪影響を与えないものであればどのようなものを使用してもよい。例えば、水やメタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶剤、アルコールアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルベンゾエートなどのエステル系溶剤、ジブチルエーテル、アニソールなどのエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,4−ジ−t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼン、4−t−ブチル−オルトキシレン、1−メチルナフタレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンなどのハロゲン系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶剤などが利用できる。これらの中でより好ましい溶剤は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、アニソール、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,4−ジ−t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼン、4−t−ブチル−オルトキシレン、1−メチルナフタレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、より好ましくはテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、アニソール、トルエン、キシレン、メシチレン、イソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼン、1−メチルナフタレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、特に好ましくはγ−ブチロラクトン、アニソール、メシチレン、t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンである。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。反応液中のモノマーの濃度は好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜20質量%である。
【0058】
本発明における重合反応の最適な条件は、重合開始剤、モノマー(一般式(1)で表される化合物)、溶媒の種類、濃度などによって異なるが、好ましくは内温0℃〜200℃、より好ましくは50℃〜170℃、特に好ましくは100℃〜150℃で、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜20時間、特に好ましくは3〜10時間の範囲である。
また、酸素による重合開始剤の不活性化を抑制するために不活性ガス雰囲気下(例えば窒素、アルゴン等)で反応させることが好ましい。反応時の酸素濃度は好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、特に好ましくは20ppm以下である。
【0059】
後述する膜形成用組成物を製造する際には、一般式(1)で表される化合物の重合反応を行った反応液をそのまま膜形成用組成物として用いてもよいが、反応溶媒を留去し、濃縮して用いることが好ましい。また、再沈殿処理を行った後に用いることが好ましい。
【0060】
本発明における上述した有機化合物の熱分解温度の評価は、昇温脱離ガス分析(TPD)法で行った。昇温脱離ガス分析は、真空容器内で試料を加熱して昇温させ、昇温中に試料から発生するガス成分を質量分析計で検出する分析法である。本発明における熱分解温度は、昇温脱離ガス分析により得られたマスフラグメントスペクトル図において材料分解ガスが発生し始める温度をさす。分析条件は、昇温レートは20℃/秒で、加熱開始時の圧力は3×10−6Pa以下である。温度は、室温から600℃まで昇温する。より具体的には、上記有機化合物を後述する有機溶媒に溶解させ、シリコンウエハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素雰囲気下200℃で60秒間加熱し、さらに400℃で60分間加熱して得られる硬化膜を用いて、昇温脱離ガス分析を行う。
【0061】
<金属化合物粒子>
本発明に用いられる金属化合物粒子は、アルミニウム化合物粒子、スズ化合物粒子、チタン化合物粒子およびジルコニウム化合物粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種である。金属化合物粒子とは、金属と金属以外の他の元素との化合物の粒子である。金属化合物粒子は、単体粒子としても、2種以上の異なる金属化合物粒子が複合した複合粒子としても利用できる。複合粒子としては、例えば、粒子の内部と表面で組成の異なるもの、2種類の粒子が合一したものなどを挙げることができ、複合粒子の形状には特に制限はない。本発明の金属化合物粒子としては、例えば、アルミニウム、スズ、チタンまたはジルコニウムの酸化物、硫化物、水酸化物や、それらと他の金属化合物との複合粒子などが挙げられ、中でも入手のしやすさや屈折率の観点から、アルミニウム、スズ、チタンまたはジルコニウムの酸化物が好ましい。これらのうち、塗膜、硬化膜の屈折率調整の点から酸化ジルコニウム粒子もしくは酸化チタン粒子、またはそれらと他の金属化合物との複合粒子が好ましく用いられる。
【0062】
金属化合物粒子の数平均粒子径は、1〜200nmが好ましく、1〜100nmがより好ましく、硬化膜の耐クラック性と透明性をより高いレベルで両立できる点で、1〜70nmがさらに好ましい。数平均粒子径を1nm以上とすることで耐クラック性がより向上する。また数平均粒子径200nm以下とすることで可視光に対してより透明な膜が得られる。ここで、金属化合物粒子の数平均粒子径は、ガス吸着法や動的光散乱法、X線小角散乱法、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡により粒子径を直接測定する方法などで測定することができる。本発明における数平均粒子径は、動的光散乱法により測定した粒子径である。
【0063】
金属化合物粒子の具体例としては、市販されている無機粒子である、酸化スズ−酸化チタン複合粒子の”オプトレイクTR−502”、”オプトレイクTR−504”、”オプトレイクTR−520”、”オプトレイクTR−513”、酸化ケイ素−酸化チタン複合粒子の”オプトレイクTR−503”、”オプトレイクTR−527”、”オプトレイクTR−528”、”オプトレイクTR−529”、酸化チタン粒子の”オプトレイクTR−505”(以上、商品名、触媒化成工業(株)製)、酸化ジルコニウム粒子((株)高純度化学研究所製)、酸化スズ−酸化ジルコニウム複合粒子(触媒化成工業(株)製)、酸化スズ粒子((株)高純度化学研究所製)などが挙げられる。また、公知の合成方法により製造することもできる。
【0064】
<膜形成用組成物>
本発明の膜形成組成物における金属化合物粒子の含有量は、溶媒を除く樹脂組成物全成分中、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく。また、90質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、さらに60質量%以下が好ましい。上記範囲内であると、透明性や屈折率などの光学特性と耐熱性がより高いレベルで両立できる。樹脂組成物全成分とは、この膜形成用組成物を用いて得られる膜を構成する全固形成分に相当する。
【0065】
本発明の膜形成用組成物は溶剤を含んでいてもよく、塗布液として使用することもできる。用いられる塗布溶剤は特に限定はされないが、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−エトキシメタノール、3−メトキシプロパノール,1−メトキシー2−プロパノールなどのアルコール系溶剤、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、シクロペンタノン,シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、アニソール、フェネトール、ベラトロールなどのエーテル系溶剤、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤などが挙げられ、これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。より好ましい塗布溶剤は、1−メトキシー2−プロパノール、プロパノール、アセチルアセトン,シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ブチル,乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、アニソール、メシチレン、t−ブチルベンゼンであり、特に好ましくは1−メトキシー2−プロパノール,シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル,γ−ブチロラクトン、t−ブチルベンゼン,アニソールである。塗布液として使用する場合、本発明の膜形成用組成物の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%であり、より好ましくは2〜15質量%であり、特に好ましくは3〜10質量%である。なお、固形分とは、この膜形成用組成物を塗布して得られる膜を構成する全固形分に相当するものである。なお、有機溶媒のような膜形成後に膜中に残らないものは固形分に含めない。
【0066】
本発明の膜形成用組成物には金属化合物粒子以外の金属含量が充分に少ないことが好ましい。膜形成用組成物の金属濃度はICP−MS法にて高感度に測定可能であり、その場合の遷移金属以外の金属含有量は好ましくは30ppm以下、より好ましくは3ppm以下、特に好ましくは300ppb以下である。また、遷移金属に関しては酸化を促進する触媒能が高く、プリベーク、熱硬化プロセスにおいて酸化反応によって本発明で得られた膜の誘電率を上げてしまうという観点から、含有量がより少ないほうがよく、好ましくは10ppm以下、より好ましくは1ppm以下、特に好ましくは100ppb以下である。
【0067】
更に、本発明の膜形成用組成物には、得られる膜の特性(耐熱性、誘電率、機械強度、塗布性、密着性等)を損なわない範囲で、ラジカル発生剤、コロイド状シリカ、界面活性剤、シランカップリング剤、密着剤などの添加剤を添加してもよい。
【0068】
ラジカル発生剤とは、熱または光エネルギーの照射によって炭素、酸素、窒素等の原子のラジカルを発生する化合物を指し、硬膜反応を促進する機能を有するものである。
【0069】
コロイド状シリカとしては、例えば、高純度の無水ケイ酸を親水性有機溶媒もしくは水に分散した分散液であり、通常、平均粒径5〜30nm、好ましくは10〜20nm、固形分濃度が5〜40質量%程度のものである。本発明で使用するコロイド状シリカは、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0070】
界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤などが挙げられ、さらにシリコーン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が挙げられる。本発明で使用する界面活性剤は、一種類でもよいし、二種類以上でもよい。界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が好ましく、特にシリコーン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤を添加することにより、上述の金属化合物粒子の分散性が向上する。また、膜形成用組成物を塗布した際に、塗膜の平坦性が向上するため、特に、半導体製造プロセスなどにおいては好適である。
【0071】
本発明で使用する界面活性剤の添加量は、膜形成塗布液の全量に対して0.01〜1質量%であることが好ましく、0.1〜0.5質量%であることがより好ましい。
【0072】
本発明において、シリコーン系界面活性剤とは、少なくとも1原子のSi原子を含む界面活性剤である。本発明に使用するシリコーン系界面活性剤としては、いかなるシリコーン系界面活性剤でもよく、アルキレンオキシド及びジメチルシロキサンを含む構造であることが好ましい。下記化学式を含む構造であることが更に好ましい。
【0073】
【化19】


(式中、Rは水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基であり、xは1〜20の整数であり、a、bはそれぞれ独立に2〜100の整数である。複数のRは同じでも異なっていてもよい。)
【0074】
本発明で使用されるシリコーン系界面活性剤としては、例えばBYK306、BYK307(ビックケミー社製)、SH7PA、SH21PA、SH28PA、SH30PA(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、TroysolS366(トロイケミカル社製)などを挙げることができる。
【0075】
本発明で使用されるノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアリールエーテル類、ポリオキシエチレンジアルキルエステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリオキシエチレン類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体などを挙げることができる。
【0076】
本発明で使用される含フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオルオクチルポリエチレンオキシド、パーフルオルデシルポリエチレンオキシド、パーフルオルドデシルポリエチレンオキシドなどが挙げられる。
【0077】
本発明で使用されるアクリル系界面活性剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸系共重合体などが挙げられる。
【0078】
本発明で使用されるシランカップリング剤は、例えば、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノグリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、1−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。本発明で使用するシランカップリング剤は、一種類でもよいし、二種類以上でもよい。
【0079】
本発明で使用される密着促進剤は、例えば、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、トリメトキシビニルシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、アルミニウムモノエチルアセトアセテートジイソプロピレート、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフエニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフエニルジメトキシシラン、フエニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール、ビニルトリクロロシラン、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、チオ尿素化合物などを挙げることができる。官能性シランカップリング剤が密着促進剤として好ましい。密着促進剤の好ましい使用量は、全固形分100重量部に対して、10重量部以下、特に0.05〜5重量部であることが好ましい。
【0080】
膜形成用組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、硬化後に400℃以上の熱分解温度を有する有機化合物、金属化合物粒子、有機溶媒、ならびに必要に応じて上記各任意成分を入れ、混合ミキサーなどのかくはん機を用いて十分にかくはんする方法を用いることができる。
【0081】
膜形成用組成物はフィルターろ過により、不溶物、ゲル状成分などを除いてから膜形成に用いることが好ましい。その際に用いるフィルターの孔径は0.001〜0.2μmが好ましい。フィルターの材質はPTFE、ポリエチレン、ナイロンが好ましく、ポリエチレンおよびナイロンが、より好ましい。
【0082】
本発明における膜形成用組成物の基板上への塗布方法としては、スピンコーティング法、マイクログラビアコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンフローコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、流し塗り法、インクジェット法などを好ましく用いることができ、より好ましくはスピンコーティングである。スピンコーティングについては、市販の装置を使用できる。例えば,クリーントラックシリーズ(東京エレクトロン製)、D−スピンシリーズ(大日本スクリーン製)、SSシリーズあるいはCSシリーズ(東京応化工業製)などが好ましく使用できる。スピンコーティング条件は、使用する膜形成用組成物により適宜最適な条件が選択される。
【0083】
使用される基板としては、特に限定されず、例えば、シリコンウエハー、SiO2ウエハー、SiNウエハー、ガラス基板,セラミックス基板,プラスチック基板などが使用目的に応じて選択される。
【0084】
硬化膜を得るための加熱および乾燥条件としては、適用される基材、および使用する有機化合物に応じて適宜選択されるが、通常は室温〜400℃の温度で、0.5〜240分間の処理を行うことが好ましい。特に好ましい硬化温度としては、100〜400℃が好ましく、さらに好ましくは、150〜400℃である。加熱処理は数回に分けて行ってもよい。この加熱処理は、酸素による熱酸化を防ぐために、窒素雰囲気下または大気圧10トール以下で行うことが特に好ましい。
【0085】
膜の膜厚は、使用用途により適宜最適な膜厚が選択されるが、10〜1000nmが好ましく、より好ましくは20〜800nm、特に好ましくは30〜60nmである。膜厚が、該範囲内であると膜の光学特性や耐熱性の点から好ましい。
【0086】
本発明の膜形成用組成物を用いて形成された膜は、優れた耐熱性と高屈折率を併せ持つ。特に、一般式(1)で表される化合物(特にカゴ構造を有する化合物)またはその重合体の場合、上述のように化合物と金属化合物粒子間に強い結合の形成がされるため、耐熱性や光学特性のみならずクラックの発生の抑制され、膜の機械強度の上昇などが期待できる。さらには、線膨張係数も大きく減少する。そのため、半導体集積回路など線膨張係数が小さい材料(例えば、銅など)を含む積層構造の中に使用される場合に、ストレス(残留応力)の発生が抑制され、層間の剥離が起こりにくくなる。
【0087】
本発明の膜形成用組成物により形成された硬化膜は、多様の目的に使用することができ、特に光学デバイスへ好適に用いることができる。光学デバイスとは、光記録装置や撮像装置などを含めた広範な光学機器を意味する。具体的な使用用途としては、例えば、固体撮像素子などに形成されるマイクロレンズ、反射防止膜に使われるハードコート層、半導体装置のバッファコート、平坦化材、液晶ディスプレイの保護膜のほか、層間絶縁膜、導波路形成用材料、位相シフター用材料、各種保護膜、固体撮像素子用マイクロレンズアレイを初めとする光学レンズ、反射防止膜、反射防止フィルム、反射防止板、光学フィルター、ディスプレイ、光触媒機能含有フィルムとして用いることができる。該膜は、優れた耐熱性と高屈折率を併せ持つことから、半導体集積回路(特に、シリコン基板上)へ好適に用いることができ、なかでも光配線、光導波路として好適に用いることができる。該膜は、有機系の材料を用いているため、半導体プロセスのドライエッチング時に無機材料との高い選択性を示す。
【実施例】
【0088】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により制約されるものではない。
【0089】
以下のGPC測定は、Waters2695およびShodex製GPCカラムKF−805L3個を連結して使用し、カラム温度40℃で、溶出溶媒としてテトラヒドロフラン毎分1mlの流量で測定を行い、Mw、Mnは標準ポリスチレンを用いて作製した検量線を用いて計算した。また、昇温脱離ガス分析(以下、TPD測定)は、理学製TPDtypeVを用いて行った。
【0090】
(合成例1)
Macromolecules, 5266(1991)に記載の合成法に従って、4,9−ジエチニルジアマンタンを合成した。次に、4,9−ジエチニルジアマンタン2gとジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂製)0.22g、t−ブチルベンゼン10mlを窒素気流下で内温150℃で7時間攪拌、重合した。反応液を室温にした後、イソプロピルアルコール60mlに添加し、析出した固体を濾過して、イソプロピルアルコールで十分に洗浄した。GPC分析を行い、質量平均分子量(Mw)15000の重合体(A)を0.8g得た。重合体(A)1.0gをシクロヘキサノン10gに完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱、溶剤を乾燥させた後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分間焼成した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。該膜付シリコンウエハーを18mm角に壁開し、理学製TPDtypeVを用いてTPD測定を実施したところ425℃から脱ガスが認められた。
【0091】
(合成例2)
4,9−ジエチニルジアマンタン2gと1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(V−40、和光純薬工業製)0.8g、ジクロロベンゼン10mlを窒素気流下で内温100℃で8時間攪拌、重合した。反応液を室温にした後、メタノール100mlに添加した。析出した固体を濾過して、メタノールで洗浄した。GPC分析を行い、質量平均分子量(Mw)10000の重合体(B)を1.0g得た。重合体(B)1.0gをシクロヘキサノン10gに完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウエハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱、溶剤を乾燥させた後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分間焼成した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。該膜付シリコンウエハーを18mm角に壁開し、理学製TPDtypeVを用いてTPD測定を実施したところ425℃から脱ガスが認められた。
【0092】
(合成例3)
4,9−ジエチニルジアマンタンの代わりに、上記文献の合成法を参照して製造した1,6−ジエチニルジアマンタンを使用した以外は合成例1と同じ方法で重合体(C)を0.9g合成した。GPC測定の結果、質量平均分子量(Mw)は20000であった。重合体(C)1.0gをシクロヘキサノン10gに完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウエハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱、溶剤を乾燥させた後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分間焼成した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。該膜付シリコンウエハーを18mm角に壁開し、理学製TPDtypeVを用いてTPD測定を実施したところ425℃から脱ガスが認められた。
【0093】
(合成例4)
9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(東京化成工業社製)3.81g(10mmol)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン16mLに溶解し、この溶液に、公知の方法で作成した3,5−ジエチニル安息香酸塩化物4.14g(22mmol)を、乾燥窒素下10℃で添加した。添加後、10℃で1時間撹拌した。攪拌後、10℃でトリエチルアミン2.53g(25mmol)を添加した。添加後、10℃で1時間、続いて、20℃で20時間攪拌した。反応終了後、反応液をろ過して、トリエチルアミン塩酸塩を除去し、ろ過した液を、イオン交換水1Lとイソプロパノール0.5Lの混合溶液に滴下し、沈殿物を集めて乾燥することにより、9,9−ビス(3−(3,5−ジエチニル)ベンゾイルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン5.6g(化合物D)を得た。
該化合物3gをシクロペンタノン27gに溶解させ、乾燥窒素下160℃で10時間反応させた。得られた反応液を、0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウエハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱、溶剤を乾燥させた後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分間焼成した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。該膜付シリコンウエハーを18mm角に壁開し、理学製TPDtypeVを用いてTPD測定を実施したところ540℃から脱ガスが認められた。
【0094】
(実施例1)
重合体(A)1.0g、市販の数平均粒子径15nmの酸化チタン粒子分散液(酸化チタン粒子30質量%、γ−ブチロラクトン70質量%)2.0gをシクロヘキサノン5.0gに溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウエハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱、溶剤を乾燥させた後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分間焼成した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。該膜を反射型膜厚測定器F-20(フィルメトリクス社製)にて波長633nmにおける屈折率を測定したところ1.65であった。該膜付シリコンウエハーを18mm角に壁開し、理学製TPDtypeVを用いてTPD測定を実施したところ420℃から脱ガスが認められた。
【0095】
(実施例2)
重合体(B)1.0g、市販の数平均粒子径15nmの酸化チタン粒子分散液(酸化チタン粒子30質量%、γ−ブチロラクトン70質量%)2.0gをシクロヘキサノン5.0gに溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウエハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱、溶剤を乾燥させた後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分間焼成した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。該膜を反射型膜厚測定器F-20(フィルメトリクス社製)にて波長633nmにおける屈折率を測定したところ1.67であった。該膜付シリコンウエハーを18mm角に壁開し、理学製TPDtypeVを用いてTPD測定を実施したところ420℃から脱ガスが認められた。
【0096】
(実施例3)
重合体(C)1.0g、市販の数平均粒子径15nmの酸化チタン粒子分散液(酸化チタン粒子30質量%、γ−ブチロラクトン70質量%)2.0gをシクロヘキサノン5.0gに溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウエハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱、溶剤を乾燥させた後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分間焼成した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。該膜を反射型膜厚測定器F-20(フィルメトリクス社製)にて波長633nmにおける屈折率を測定したところ1.70であった。該膜付シリコンウエハーを18mm角に壁開し、理学製TPDtypeVを用いてTPD測定を実施したところ420℃から脱ガスが認められた。
【0097】
(実施例4)
化合物(D)1.0g、市販の数平均粒子径15nmの酸化チタン粒子分散液(酸化チタン粒子30質量%、γ−ブチロラクトン70質量%)2.0gをシクロヘキサノン5.0gに溶解させて乾燥窒素下160℃で10時間反応させた。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウエハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱、溶剤を乾燥させた後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分間焼成した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。該膜を反射型膜厚測定器F-20(フィルメトリクス社製)にて波長633nmにおける屈折率を測定したところ1.71であった。該膜付シリコンウエハーを18mm角に壁開し、理学製TPDtypeVを用いてTPD測定を実施したところ530℃から脱ガスが認められた。
【0098】
(実施例5)
重合体(B)0.5g、化合物(D)0.5g、市販の数平均粒子径15nmの酸化チタン粒子分散液(酸化チタン粒子30質量%、γ−ブチロラクトン70質量%)2.0gをシクロヘキサノン5.0gに溶解させて乾燥窒素下160℃で10時間反応させた。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウエハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱、溶剤を乾燥させた後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分間焼成した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。該膜を反射型膜厚測定器F-20(フィルメトリクス社製)にて波長633nmにおける屈折率を測定したところ1.68であった。該膜付シリコンウエハーを18mm角に壁開し、理学製TPDtypeVを用いてTPD測定を実施したところ420℃から脱ガスが認められた。
【0099】
(比較例1)
ナノ粒子分散液を加えないこと以外は実施例1と同様に膜形成用組成物をシリコンウエハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱、溶剤を乾燥させた後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分間焼成した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。該膜を反射型膜厚測定器F-20(フィルメトリクス社製)にて波長633nmにおける屈折率を測定したところ1.53であった。該膜付シリコンウエハーを18mm角に壁開し、理学製TPDtypeVを用いてTPD測定を実施したところ425℃から脱ガスが認められた。
【0100】
【表1】

【0101】
以上より本発明の膜形成組成物はドライエッチング時に無機膜との選択性を有する有機物を主成分としており、既存の半導体製造工程との親和性が高い400℃以上の耐熱性を有し、光学デバイスに好適な屈折率1.6以上の膜を形成することが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化後に400℃以上の熱分解温度を有する有機化合物と、アルミニウム化合物粒子、スズ化合物粒子、チタン化合物粒子およびジルコニウム化合物粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物粒子とを含む膜形成用組成物。
【請求項2】
前記有機化合物が、一般式(1)で表される化合物、または該化合物の重合体である請求項1に記載の膜形成用組成物。
【化1】


(一般式(1)中、Aは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、芳香族基、または一般式(2)で表される基を表す。Xは、カゴ構造または一般式(3)で表される基を表す。nは2〜10の整数を表す。)
【化2】


(一般式(2)中、Rはそれぞれ独立にアルキル基を表す。*は一般式(1)中の炭素原子との結合部を表す。)
【化3】


(一般式(3)中、Ar、ArおよびArは、それぞれ独立に芳香族基を表す。芳香族基は炭素数1〜20のアルキル基で置換されていてもよい。)
【請求項3】
前記金属化合物粒子の数平均粒子径が1〜200nmである請求項1または2に記載の膜形成用組成物。
【請求項4】
さらに界面活性剤を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の膜形成用組成物を用いて形成した膜。
【請求項6】
請求項5に記載の膜を有する光学デバイス。
【請求項7】
請求項5に記載の膜を有する半導体集積回路。

【公開番号】特開2009−197087(P2009−197087A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38523(P2008−38523)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】