説明

膜接触装置による液体の脱ガス

【課題】膜接触装置により液体を脱ガスする方法を提供する。
【解決手段】溶解気体を含む液体が真空源に接続された接触装置中に導入される。この接触装置12は、穴あきのコア32と、複数の中空ファイバー膜38と、上記ファイバーの各末端を固定するチューブシート40と、液体出口を持つシェル42を有する。このシェルは、ファイバー、チューブシート、及びコアを収めている。この中空ファイバー内腔は真空源と流体連通している。液体は、コアの開放末端34を経てこの接触装置に入り、コアを径方向に出て、シェル内で膜を横断し、液体出口44により接触装置を出る。これにより溶解気体は、液体から膜を通って内腔中に拡散する。流出する液体は、1ppb未満の溶解気体含量を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜接触装置を用いて液体を脱ガスすることに関する。
【背景技術】
【0002】
液体の脱ガス用の膜接触装置の使用は知られている。例えば、米国特許第5,938,922号、日本特許第2,725,311号、同第2,743,419号、及び同第2,949,732号、及び大日本インキ化学工業社(日本国東京)のSeparelRの名前で販売されている中空ファイバー膜脱ガスモジュール及びCelgard社(ノースカロライナ州シャーロット)のLiqui−CelR膜接触装置の市販製品を参照されたい。
【0003】
米国特許第5,938,922号は、液体の流れを特定な経路に向けるバッフル付きの接触装置を開示している。米国特許第5,938,922号の図2を見ると、液体は、コアから径方向に通過し、膜(気体が内腔中に拡散する)を越え、長手方向にバッフルを廻り、径方向にコアの中に入り、コアを経て接触装置を出る。ポリプロピレンの均質なマイクロ多孔性中空ファイバー膜の内腔側を真空に引き、液体を穴あきのコアを経て接触装置のシェル内に導入する。この接触装置は、15〜20Torrの圧力範囲で1ppb未満の溶解気体を得ることが可能であるが、製造が困難である。
【0004】
日本特許第2,725,311号は、ポリ(4−メチルペンテン−1)(またはPMP)でできた非均質中空ファイバー膜付きの液体を脱ガスする接触装置を開示している。非均質膜は、多孔性膜(例えば、マイクロ多孔性膜)と区別される。
【0005】
日本特許第2,743,419号は、300ppb未満の溶解気体を含む液体を排出することが可能である接触装置を開示しているが、液体温度を約40〜80°Cに高めなければならず、真空レベルは30〜100Torrである。
【0006】
日本特許第2,949,732号は、非均質PMP中空ファイバー膜と掃気(スイープ)気体または真空と掃気気体の組み合わせを用いる脱ガス用の接触装置を開示している。液体は、7〜8.3リットル/分(Lpm)の流速と28〜38Torrの真空圧力で500ppb近傍迄脱ガスされ得る。
【0007】
大日本インキ化学工業社(日本国東京)のSeparelR EF 040Pは、上述のスキン付きの(非連通性の孔)PMP膜を使用し、シェルの出口を持つ径方向の流れパターンを有し、そして低流速(≦20リットル/分)においてのみであるが、40m2の膜面積で1ppb未満の溶解気体レベルを報告している。より大きな流速(33〜57リットル/分)では、溶解気体レベルは18〜96ppbの範囲である。
【0008】
膜接触装置は、次の商業的用途で有用である。医薬及び食品製造で酵素と微生物を培養するための酸素の供給;排水処理システムでの酸素の供給;化学及び医薬のユニット操作における空気またはオゾンによる肉汁の酸化;魚の養殖及び輸送業における酸素の供給;水耕農業における培養液への酸素の供給;顔面処理液及び健康飲料の製造用の高酸素含量を持つ水の製造;廃ガスクリーニングにおける液体(例えば、SOX、NOx、H2Sなど)中に溶解させることによる気体に含まれる一以上の成分の除去及び発酵メタン気体からのCO2の除去;半導体のリンス用の超純水、及び配管及び冷凍機のミスト防止用の脱酸素水及び海水の製造、生物培養物からCO2の除去、排水からの有機溶剤の除去、及び液体からの気体の同時溶解と除去など、液体、例えば、ボイラーに供給される脱酸素水及び逆浸透膜に供給される液体の脱ガスである。
【0009】
半導体リンス用の高純度水の領域においては、半導体がより複雑になるに従って、更に高純度の水(例えば、1ppb未満の溶解酸素)に対するニーズはより大きくなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、膜接触装置により液体を脱ガスすることに関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
溶解気体を含む液体は、真空源に接続された接触装置中に導入される。この接触装置は、穴あきの(perforated)コアと、複数の中空ファイバー膜と、該ファイバーの各末端を固定(affix)するチューブシートと、液体出口を持つシェルを有する。このシェルは、ファイバー、チューブシート、及びコアを収めている。この中空ファイバー内腔は、真空源と流体連通している。液体は、コアの開放末端を経てこの接触装置に入り、コアを径方向に流出して、シェル内で膜を横切り、液体出口により接触装置を出る。これにより、溶解気体は液体から膜を横切って内腔中に拡散する。流出する液体は1ppb未満の溶解気体含量を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】液体を脱ガスするためのシステムの概略図である。
【図2】本発明の接触装置の1番目の実施形態の断面図である。
【図3】本発明の接触装置の2番目の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を例示する目的で、図面で現在好ましい形を示す。しかし、本発明は、図示した配置と機器に限定されるものでないことは理解される。
【0014】
類似の番号が類似の要素を示す図面を参照する。図1には脱ガスするためのシステム10の概略図が示される。
【0015】
システム10は、主要要素として、接触装置12と真空ポンプ20を含んでなる。接触装置12は、下記に更に詳細に説明されるが、溶解気体を含有する液体を導入するポート14と脱ガスされた液体を排出する出口16を有する。接触装置12は、流体を連通するために、真空ライン18を経て真空ポンプ20と結合されている。好ましくは、真空ポンプ20は、操作を容易にするために、15Torr迄の、好ましくは15〜30Torrの真空を作ることが可能である、水シール型の真空ポンプである。
【0016】
図2を参照すると、接触装置12の1番目の実施形態が図示される。接触装置12は穴あきのコア32を含む。コア32は、開放末端34(ポート14に対応)と閉鎖末端36を有する。複数の中空ファイバー膜38がコア32を取り囲む。各中空ファイバー膜38(下記に更に詳しく述べられる)は内腔を有する。中空ファイバーの末端は、適当な位置にポッティングされて、チューブシート40を形成する。シェル42は、中空ファイバー膜38、穴あきのコア32、及びチューブシート40を収めている。シェルの出口44(出口16に対応)がシェル42に配設される。シェルの空間46がコア32の開放末端34と流体連通し、液体は、コアから径方向に流出し、中空ファイバー膜38の外表面を横断し、出口44から排出されるようになっている。接触装置12の末端には、ヘッドスペース50と連通している真空ポート48(真空ライン18に対応)が取り付けられている。中空ファイバーの内腔は、ヘッドスペース50と連通していて、真空が内腔に加えられるようになっている。
【0017】
操作としては、溶解気体(例えば、10〜9000ppb)を含有する液体は、好ましくは外気温度(例えば、20〜30℃)でコア32の開放末端34経由で接触装置12中に導入される(例えば、20リットル/分の最小流速、好ましくは20〜100リットル/分)。この液体源は限定されない。通常、水道水は550〜9000ppbの溶解気体含量を有し、例えば真空タワー中で脱ガスされた液体は、10ppbという低い溶解気体含量を有する。この液体は、穴あきのコア32から分配され、コアから外側に径方向に向かい、中空ファイバー膜38を横切って流れる。気体を含有する液体が中空ファイバー38の外表面を横断するに従って、溶解気体は、ファイバーの内腔側の真空(15〜30Torr)により駆動力を与えられて、液体から、ファイバー壁を横切り、中空ファイバーの内腔中に拡散する。次に、この溶解気体は、ヘッドスペース50を通って真空ポート48から排出される。脱ガスされた水(好ましくは<1ppb)は、出口44から排出される。更に好ましい操作性能を表1に示す。
【0018】
【表1】

1 真空源−SIHI、モデルLPH3704、5hpモーター@1750rpm。キャパシティ@25Torr=16°Cの使用水で17.0ACFM。キャパシティ(見積り)@22Torr=5°Cの使用水で12ACFM。
2 DOは「溶解酸素」を指す。
【0019】
複数の中空ファイバー膜は充分な膜を含まなければならず、40m2を超える膜表面積、好ましくは50m2を超える、最も好ましくはl00m2を超える面積であるようにされる。この中空ファイバー膜38は、多孔性膜と均質膜と非対称膜(非対称膜は一方の表面から他方の表面に連通する孔を持つ膜を含むが、連通する孔を持たない膜を除く。)とからなる一群から選ばれる。膜用のポリマーの選択は限定されないが、このようなポリマーは当業界で公知であるように、前出のタイプの膜を形成することが可能でなければならない。引用により本願に取り込まれている、Kesting,R.E.,Synthetic Polymeric Membranes,2版,John Wiley&Sons、Inc.,NYC,NY(1985)を参照されたい。好ましい膜はポリオレフィン、最も好ましくはポリプロピレンでできていて、マイクロ多孔性である。膜は、好ましくは、約20〜50%の多孔性と、約0.02〜0.07ミクロンの孔径と(一つの表面で)、15〜200秒のGurley(10cc当たり)と、約15〜75ミクロンの膜の壁厚を有する。最も好ましい膜は、約25%の多孔性と、約0.02ミクロンの孔径と、約190秒のGurley(10cc当たり)と、約50ミクロンの膜の壁厚を有する。例えば、このような膜は、Celgard社(ノースカロライナ州シャーロット)からCelgardR膜の商品名で市販されている。
【0020】
図3を参照すると、接触装置12'の2番目の実施形態が示されている。接触装置12'は穴あきのコア32'を含む。コア32'は開放末端34'と閉鎖末端36'を有する。複数の中空ファイバー膜38がコア32を取り囲む。膜38の末端は適当な位置にポッティングされて、チューブシート40'を形成する。末端36'でのチューブシート40'の中空ファイバー38の末端は閉じられる。シェル42'は、中空ファイバー膜38と、穴あきのコア32'と、チューブシート40'を取り囲む。シェル空間46'は開放末端34'と流体連通していて、液体がコアから径方向に流出し、中空ファイバー膜38の外表面を横切り、出口44'から排出されるようになっている。接触装置12'の一つの末端のみに、ヘッドスペース50'と連通している真空ポート48'が取り付けられていて、真空が内腔に加えられるようになっている。
【0021】
本発明によれば、開放末端及び閉鎖末端を持つ穴あきのコアと、各ファイバーが内腔を持ち、該ファイバーが該コアを取り囲み、各該ファイバーが2つの末端を持つ複数の中空ファイバー膜と、各該ファイバー末端を固定するチューブシートと、該ファイバー、該チューブシート、及び該コアを収め液体出口を持つシェルと、を含んでなる液体を脱ガスするための接触装置であって、上記内腔が上記ファイバー末端を経て真空源と連通でき、上記コアが溶解気体を含有する液体を上記ファイバーを横切って径方向に分配して、該溶解気体を上記ファイバー中に拡散でき、上記出口が上記接触装置から1ppb未満の溶解気体を含む液体を排出でき、20リットル/分の最小液体流速に用いることができる接触装置が、提供される。
上記接触装置は、0.02〜0.07ミクロンの孔径と15〜75ミクロンの膜壁厚とを持つ膜を更に含んでいてもよい。
本発明によれば、約20〜30℃の温度と20リットル/分以上の流速とを持ち溶解気体を含有する液体と、15Torr迄の真空をもたらすことが可能である真空源と、接触装置と、を含んでなる液体を脱ガスするためのシステムであって、該接触装置が、開放末端及び閉鎖末端を持つ穴あきのコアと、各ファイバーが内腔を持ち、該ファイバーが該コアを取り囲み、該ファイバーが2つの末端を持つ複数の中空ファイバー膜と、各該ファイバー末端を固定するチューブシートと、該ファイバー、該チューブシート、及び該コアを収め液体出口を持つシェルと、を含み、上記中空ファイバ内腔が上記真空源と流体連通し、溶解気体を含有する上記液体が上記コアの開放末端を経て上記接触装置に入り、上記コアを径方向に出て、上記シェル内で上記ファイバーを横切り、上記シェルの液体出口を経て上記接触装置を出るため、上記溶解気体が上記液体から上記ファイバーを横切り上記内腔中に拡散でき、上記出口を出る上記液体が1ppb以下の溶解気体含量を持つことができるシステムが、提供される。
上記システムにおいて、上記流速が、20〜100リットル/分であってもよい。
本発明によれば、約20〜30℃の温度、20リットル/分以上の流速、及び5500〜9000ppbの溶解気体含量を持つ溶解気体を含有する液体と、約15〜30Torrの真空源と、接触装置と、を含んでなる液体を脱ガスするためのシステムであって、該接触装置が、開放末端及び閉鎖末端を持つ穴あきのコアと、多孔性膜、均質膜、及び非対称性膜(複合膜)からなる一群から選ばれ、各ファイバーが内腔を持ち、該ファイバーが該コアを取り囲み、該ファイバーが2つの末端を持つ、連通孔を持つ複数の中空ファイバー膜と、各該ファイバー末端を固定するチューブシートと、該ファイバー、該チューブシート、及び該コアを収め液体出口を持つシェルと、を持ち、上記中空ファイバ内腔が上記真空源と流体連通し、溶解気体を含有する上記液体が上記コアの開放末端を経て上記接触装置に入り、上記コアから径方向に出て、上記シェル内で上記ファイバーを横切り、上記シェルの液体出口を経て上記接触装置を出るため、上記溶解気体が上記液体から上記ファイバーを横切って上記内腔中に拡散できるシステムが、提供される。
本発明によれば、約20〜30℃の温度と、20リットル/分以上の流速と、5500〜9000ppbの溶解気体含量とを持つ溶解気体を含有する液体と、約15〜30Torrの真空源と、接触装置と、を含んでなる液体を脱ガスするためのシステムであって、該接触装置が、開放末端及び閉鎖末端を持つ穴あきのコアと、各ファイバーが内腔を持ち、該ファイバーが該コアを取り囲み、該ファイバーが2つの末端を持つ複数の中空ファイバー膜と、各該ファイバー末端を固定するチューブシートと、該ファイバー、該チューブシート、及び該コアを収め液体出口を持つシェルと、を持ち、上記中空ファイバ内腔が上記真空源と流体連通し、溶解気体を含有する上記液体が上記コアの開放末端を経て上記接触装置に入り、上記コアから径方向に出て、上記シェル内で上記ファイバーを横切って、上記シェルの液体出口を経て上記接触装置を出るため、上記溶解気体が上記液体から上記ファイバーを横切って上記内腔中に拡散でき、上記出口を出る上記液体が1ppb以下の溶解気体含量を持つことができるシステムが、提供される。
本発明は、本発明の精神または本質的な属性を逸脱せずに、他の特定な形で実施されてもよく、従って、本発明の範囲を示すものとして、前出の明細書よりも特許請求の範囲を参照すべきである。
【符号の説明】
【0022】
10 システム
12 接触装置
14 ポート
16 出口
18 真空ライン
20 真空ポンプ
32 コア
34 開放末端
36 閉鎖末端
38 中空ファイバー膜
40 チューブシート
42 シェル
44 出口
46 空間
48 真空ポート
50 ヘッドスペース
12' 接触装置
32' コア
34' 開放末端
36' 閉鎖末端
40' チューブシート
42' シェル42'
44' 出口
46' シェル空間
48' 真空ポート
50' ヘッドスペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を脱ガスするための1つの接触装置であって、
開放末端及び閉鎖末端を有する穴あきのコアと、
複数の中空ファイバー膜であって、各該中空ファイバーが内腔を有し、該中空ファイバーが該コアを取り囲み、各該中空ファイバーが2つの末端を有する、複数の中空ファイバー膜と、
各該中空ファイバー末端を固定するチューブシートと、
該中空ファイバー、該チューブシート、及び該コアを収め、液体出口を有するシェルと、
を含み、
該内腔が該中空ファイバー末端を経て真空源と連通でき、
該コアが溶解気体を含有する液体を該中空ファイバーを横切って径方向に分配して、該溶解気体を該中空ファイバー中に拡散でき、
該液体出口が該1つの接触装置から1ppb未満の溶解気体を含む液体を排出でき、
液体の流速が20リットル/分以上で用いることができる、
接触装置。
【請求項2】
該中空ファイバー膜が、0.02〜0.07ミクロンの孔径と15〜75ミクロンの膜壁厚とを有する、請求項1に記載の接触装置。
【請求項3】
該中空ファイバー膜が、連通孔を有し、かつ多孔性膜、均質膜、及び非対称性膜(複合膜)からなる一群から選ばれる、請求項1又は2に記載の接触装置。
【請求項4】
該中空ファイバー膜がポリプロピレンである、請求項1−3のいずれかに記載の接触装置。
【請求項5】
該中空ファイバー膜がl00m2を超える表面積を有する、請求項1−4のいずれかに記載の接触装置。
【請求項6】
該中空ファイバー膜が20〜50%の多孔性を有する、請求項1−5のいずれかに記載の接触装置。
【請求項7】
該流速が20〜100リットル/分である、請求項1−6のいずれかに記載の接触装置。
【請求項8】
液体を脱ガスするためのシステムであって、
約20〜30℃の温度で10〜9000ppbの溶解酸素を含有する液体が供給される、請求項1−7記載の1つの接触装置と、
15Torr迄の真空をもたらすことが可能である真空源と
を含む、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−161793(P2012−161793A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−69138(P2012−69138)
【出願日】平成24年3月26日(2012.3.26)
【分割の表示】特願2001−163627(P2001−163627)の分割
【原出願日】平成13年5月31日(2001.5.31)
【出願人】(500108987)セルガード,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】