説明

膜材周縁部の定着構造およびその施工方法

【課題】ケーブル分割タイプ及びケーブル連続タイプの利点と欠点とに鑑み、両者の中間的なケーブル定着タイプとすることにより、両者の利点を併せ持つ定着構造とする。
【解決手段】膜材の定着部に周縁を凹状に欠切して膜欠切部6を形成し、該膜欠切部6で露出される前記ケーブル5の中間に中間クランプ7を圧着し、両側に夫々、位置調整ボルト8,8を配設する。そして、フレーム3の膜欠切部6に対応する位置に固設された固定プレート9と、膜欠切部6の周縁に沿って膜材4を定着する膜定着機構10を備えた膜定着部材11と、膜欠切部6で露出されるケーブル5の配設方向に沿って、部材長手方向に沿って中間クランプ7を外部側から挿入可能とするスリット状の切欠き溝12が形成され、内周面に位置調整ボルト8、8が螺合されるネジ溝が形成された中間クランプ7の筒状固定部13が設けられたケーブル定着部材14とによりケーブル5の中間定着を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駅のプラットホーム、屋外展示会場、通路などに構築される、骨組構造等からなるフレームの上面に膜材が張設された構造物における膜材周縁部の定着構造およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、駅のプラットホーム、屋外展示会場、通路などを覆う屋根材等として膜材が使用されている。
【0003】
これらの膜構造物では、膜材の両側縁にケーブル(リッジケーブル)を装着し、このケーブルをフレームや基礎などに固定して膜材及びケーブルに張力を導入している(例えば下記特許文献1〜4等参照)。このような膜構造物によって、駅のプラットホームや屋外展示会場、通路などを構築する場合、骨組構造等からなるフレームの上面に、両側縁を長手方向に沿って折り返してループ部を形成するとともに、該ループ部にケーブルを挿通した膜材を張設し、前記ケーブルを所定の間隔位置で前記フレームに固定する構造が採用されている。
【0004】
ここで、前記膜材の両側縁に挿通されたケーブルを、所定の間隔位置でフレームに定着する手段として、主に、ケーブルを各スパンごとにそれぞれ分割して定着させるケーブル分割タイプと、ケーブルを膜材の両側縁に沿って連続的に設け、ケーブル長手方向への移動を拘束せずに摺動可能に定着するケーブル連続タイプとが存在する。
【特許文献1】特開平7−109770号公報
【特許文献2】特開平7−216992号公報
【特許文献3】特開平7−269174号公報
【特許文献4】特開2006−9345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記ケーブル分割タイプは、各スパン長ごとにケーブルが分割されるため、ケーブルの取扱いが容易となり施工性に優れるとともに、前記フレーム、膜材又はケーブルの製作や施工の精度誤差に対応し易い。また、経時的に膜材の緊張力の低下が生じてもケーブルによって、緊張力の再導入が容易である、相隣接するケーブル間に張力差が発生してもケーブルに移動が発生しないなどの利点がある一方で、各定着部構造が大きくなる欠点があった。
【0006】
前記ケーブル連続タイプの場合は、小規模構造物への適用を前提としており、ケーブルが連続し張力が拡散されるため定着部への負荷が軽減されるとともに、定着構造のコンパクト化が可能であるなどの利点を有する一方で、大規模構造物になるほどケーブルの取り扱いが不便となるとともに、ケーブルを所定の位置に定着するのが困難になる。また、経時的に応力弛緩等によって膜材に伸びが発生または緊張力が減少した場合、再緊張及び各スパン毎の緊張力の調整が困難である。更に膜材が風圧などの偏分布荷重を受けたことによってケーブルに移動(滑動)が生じ復元しない。また、ケーブルの移動(滑動)に起因し、膜材に応力集中が発生することがあるとともに、前記フレーム、膜材又はケーブルの製作や施工の精度誤差に対応し難いなどの問題があった。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、前記ケーブル分割タイプ及びケーブル連続タイプの利点と欠点とに鑑み、両者の中間的なケーブル定着タイプとすることにより、両者の欠点を無くすと共に、両者の利点を併せ持つ膜材周縁部の定着構造およびその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、フレームの上面に膜材が張設された膜構造物において、前記膜材の周縁部にケーブルを配設し、該ケーブルを所定の間隔位置で前記フレームに固定するための膜材周縁部の定着構造であって、
前記ケーブルにおける前記フレームへの固定部位に、該ケーブルより大径の中間クランプが固定されるとともに、該中間クランプの両側に夫々、外周面にネジ溝が形成され、かつ前記ケーブル回りに回転可能な状態で外嵌された位置調整ボルトが配設され、
前記フレームの固定部位に、内周面に前記位置調整ボルトが螺合されるネジ溝が形成されたケーブル定着部材が固設され、前記ケーブル定着部材のネジ溝内に前記中間クランプが挿入されるとともに、両端から螺入された前記位置調整ボルトによって前記中間クランプの位置が固定されていることを特徴とする膜材周縁部の定着構造が提供される。
【0009】
上記請求項1記載の本発明は、フレームの上面に膜材が張設された膜構造物において、前記膜材の周縁部にケーブルを配設し、該ケーブルを所定の間隔位置で前記フレームに固定するために膜材周縁部の定着構造が設けられることにより、上記ケーブル分割タイプ及びケーブル連続タイプの欠点を無くすとともに、両者の利点を併せ持つ膜材周縁部の定着構造となっている。
【0010】
具体的には、前記ケーブルにおける前記フレームへの固定部位に、該ケーブルより大径の中間クランプが固定されるとともに、該中間クランプの両側に夫々、外周面にネジ溝が形成され、かつ前記ケーブル回りに回転可能な状態で外嵌された位置調整ボルトが配設され、さらに、前記フレームの固定部位に、内周面に前記位置調整ボルトが螺合されるネジ溝が形成されたケーブル定着部材が固設された構造としている。そして、前記ケーブル定着部材のネジ溝内に前記中間クランプが挿入されるとともに、両端から螺入された前記位置調整ボルトによって前記中間クランプの位置を固定することによって、ケーブルの緊張力を確保する構造となっている。
【0011】
請求項2に係る本発明として、フレームの上面に、両側縁を長手方向に沿って折り返してループ部を形成し、該ループ部にケーブルを連続的に挿通した膜材が張設された膜構造物において前記ケーブルを所定の間隔位置で前記フレームに固定するための膜材周縁部の定着構造であって、
前記フレームと膜材との固定部位において前記膜材の周縁を凹状に欠切して膜欠切部を形成し、該膜欠切部で露出される前記ケーブルの中間に、該ケーブルより大径の中間クランプが圧着固定されるとともに、該中間クランプの両側に夫々、外周面にネジ溝が形成され、かつ前記ケーブル回りに回転可能な状態で外嵌された位置調整ボルトが配設され、
前記フレームの前記膜欠切部に対応する位置に固設された固定プレートと、前記膜欠切部の周縁に沿って前記膜材を定着する膜定着機構を備えた膜定着部材と、前記膜欠切部で露出される前記ケーブルの配設方向に沿って、部材長手方向に沿って前記中間クランプを外部側から挿入可能とするスリット状の切欠き溝が形成されるとともに、内周面に前記位置調整ボルトが螺合されるネジ溝が形成された前記中間クランプの筒状固定部が設けられたケーブル定着部材とを備え、
前記膜定着機構に膜材を定着した膜定着部材と、前記ケーブル定着部材とが前記固定プレートに固定され、前記ケーブル定着部材の筒状固定部に前記ケーブルが中間クランプとともに挿入され、筒状固定部の両端から螺入された前記位置調整ボルトによって前記中間クランプの位置が固定されていることを特徴とする膜材周縁部の定着構造が提供される。
【0012】
上記請求項2記載の本発明は、上記請求項1記載の発明の具体的な実施形態を示したものであり、前記膜定着機構に膜材を定着した膜定着部材と、前記ケーブル定着部材とを前記固定プレートに固定し、前記ケーブル定着部材の筒状固定部に前記中間クランプを挿入し、筒状固定部の両端から前記位置調整ボルトをそれぞれ螺入させるとともに、螺入量の調整によって前記中間クランプの位置が固定されているため、各部材の製作や施工の精度誤差に容易に対応することが可能となる。また、経時的に応力弛緩等によって膜材に伸びが発生または緊張力が減少したとしても、前記位置調整ボルトの螺入量を調整し、ケーブルの長さを短くすることによって、膜材の再緊張及び各スパンごとの緊張力の再導入が容易となる。
【0013】
さらに、ケーブルが連続していることによって、定着構造のコンパクト化が可能となる。各スパン長が相違する場合や膜材が風圧などの偏分布荷重を受けてもケーブルに移動(滑動)が生じることがなくなり、かつケーブルの移動(滑動)に起因した膜材の応力集中が無くなる。
【0014】
請求項3に係る本発明として、フレームの上面に、両側縁を長手方向に沿って折り返してループ部を形成し、該ループ部にケーブルを連続的に挿通した膜材が張設された膜構造物において前記ケーブルを所定の間隔位置で前記フレームに固定するための膜材周縁部の定着構造であって、
前記フレームと膜材との固定部位において前記膜材の周縁を凹状に欠切して膜欠切部を形成し、該膜欠切部で露出される前記ケーブルの中間に、該ケーブルより大径の中間クランプが圧着固定されるとともに、該中間クランプの両側に夫々、外周面にネジ溝が形成され、かつ前記ケーブル回りに回転可能な状態で外嵌された位置調整ボルトが配設され、
前記フレームの前記膜欠切部に対応する位置に固設された固定プレートと、前記膜欠切部の周縁に沿って前記膜材を定着する膜定着機構を備えるとともに、前記膜欠切部で露出される前記ケーブルの配設方向に沿って、部材長手方向に沿って前記中間クランプを外部側から挿入可能とするスリット状の切欠き溝が形成されるとともに、内周面に前記位置調整ボルトが螺合されるネジ溝が形成された前記中間クランプの筒状固定部が設けられた膜及びケーブル用定着部材とを備え、
前記膜定着機構に膜材を定着した膜及びケーブル定着部材が前記固定プレートに固定され、前記ケーブル定着部材の筒状固定部に前記ケーブルが中間クランプとともに挿入され、筒状固定部の両端から螺入された前記位置調整ボルトによって前記中間クランプの位置が固定されていることを特徴とする膜材周縁部の定着構造が提供される。
【0015】
上記請求項3記載の本発明は、上記請求項1記載の発明の第2の実施形態であり、部品点数の低減によって施工工数の削減を図ることが可能となるため、上記請求項2記載の膜定着部材とケーブル定着部材とを一体的に一部材として構成したものである。
【0016】
請求項4に係る本発明として、前記膜定着機構は、前記膜欠切部に沿って前記膜材の端縁にエッジロープが装着され、前記エッジロープの内側に沿って設けられた挟持用プレートによる挟み付けによって前記膜定着部材又は膜及びケーブル用定着部材に定着されている請求項2、3いずれかに記載の膜材周縁部の定着構造が提供される。
【0017】
上記請求項4記載の本発明は、前記膜定着機構の具体的な態様例を示したものであり、前記膜材は、前記膜欠切部に沿って前記膜材の端縁にエッジロープが装着され、前記エッジロープの内側に沿って設けられた挟持用プレートによる挟み付けによって前記膜定着部材又は膜及びケーブル用定着部材に定着されることにより、膜欠切部での膜材の補強及び膜材の定着が図られている。
【0018】
請求項5に係る本発明として、前記膜欠切部の両端部に、前記ケーブルを支持するサドル部が設けられ、前記膜欠切部で露出されるケーブルが直線状に延長されている請求項2〜4いずれかに記載の膜材周縁部の定着構造が提供される。
【0019】
上記請求項5記載の本発明では、前記膜欠切部の両端部に、前記ケーブルを支持するサドル部が設けられることによって、前記膜欠切部で露出されるケーブルが直線状に延長されるようになり、前記位置調整ボルトの筒状固定部への螺入がスムーズに行われるようになる。
【0020】
請求項6に係る本発明として、前記ケーブル定着部材又は前記膜及びケーブル用定着部材の筒状固定部に形成されたスリット状の切欠き溝は、中間に前記中間クランプを挿入可能とする拡幅部を有し、その両側は前記ケーブルのみを挿入可能な幅としてある請求項2〜5いずれかに記載の膜材周縁部の定着構造が提供される。
【0021】
請求項7として、前記膜定着部材の膜定着機構に膜材を定着するとともに、この膜定着部材と前記ケーブル定着部材とを仮止めして一体とし、前記ケーブル定着部材の筒状固定部にケーブルを中間クランプとともに挿入し、筒状固定部の両端から前記位置調整ボルトをそれぞれ螺入させて前記中間クランプの位置を固定した後、前記膜定着部材と前記ケーブル定着部材を前記フレームの固定プレートに対して固定することを特徴とする請求項2記載の膜材周縁部の定着構造のための施工方法が提供される。
【0022】
請求項8として、前記膜及びケーブル用定着部材に膜材を定着し、前記膜及びケーブル用定着部材の筒状固定部にケーブルを中間クランプとともに挿入し、筒状固定部の両端から前記位置調整ボルトをそれぞれ螺入させて前記中間クランプの位置を固定した後、前記膜及びケーブル用定着部材を前記フレームの固定プレートに対して固定することを特徴とする請求項3記載の膜材周縁部の定着構造のための施工方法が提供される。
【0023】
上記請求項7,8記載の施工方法によれば、膜材とケーブルとに対して同時的に張力導入ができ、現場での施工工数を低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
以上詳説のとおり本発明によれば、前記ケーブル分割タイプ及びケーブル連続タイプの中間的なケーブル定着タイプとすることにより、両者の欠点を無くすと共に、両者の利点を併せ持つ膜材周縁部の定着構造とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0026】
図1は本発明に係る膜材周縁部の定着構造を適用した駅のプラットホーム1を示す平面図及び側面図であり、図2はその横断面図、図3は膜材周縁部の定着構造2を示す要部拡大平面図(図1のT部拡大図)である。
【0027】
図1及び図2に示されるプラットホーム1では、骨組構造からなるフレーム3の上面に、図3に示されるように、両側縁を長手方向に沿って折り返してループ部4aを形成し、該ループ部4aにケーブル5を連続的に挿通した膜材4が張設されて屋根が構成される。そして、本発明に係る膜材周縁部の定着構造2は、前記膜材4の両側縁のループ部4aに挿通されたケーブル5を、所定の間隔位置で前記フレーム3に固定するための定着構造である。
【0028】
〔第1形態例〕
以下、本発明の第1形態例にかかる膜材周縁部の定着構造2について詳述する。
【0029】
まず、図3に示されるように、前記膜材4においては、前記フレーム3との固定部位において前記膜材4の周縁を凹状に欠切して膜欠切部6が形成され、詳細には図6に示されるように、該膜欠切部6で露出される前記ケーブル5の中間に、該ケーブル5より大径の中間クランプ7が圧着固定されるとともに、該中間クランプ7の両側に夫々、外周面にネジ溝が形成され、かつ前記ケーブル5回りに回転可能な状態で外嵌された位置調整ボルト8、8が配設されている。
【0030】
前記中間クランプ7は、ケーブル5との圧着状態が維持され、中間クランプ7がケーブル5の部材方向に沿って滑動するのを防止するために、ケーブル5に沿った部材長さが、ケーブル直径の3倍以上であることが好ましい。また、前記中間クランプ7の外径は、後述する位置調整ボルト8の端面と当接するように、所定の厚みを有するようにする。
【0031】
前記膜欠切部6には、図3〜図5に示されるように、前記フレーム3の前記膜欠切部6に対応する位置に固設された固定プレート9と、前記膜欠切部6の周縁に沿って前記膜材を定着する膜定着機構10を備えた膜定着部材11と、前記膜欠切部6で露出される前記ケーブル5の配設方向に沿って、部材長手方向に沿って前記中間クランプ7を外部側から挿入可能とするスリット状の切欠き溝12が形成されるとともに、内周面に前記位置調整ボルト8が螺合されるネジ溝が形成された前記中間クランプ7の筒状固定部13が設けられたケーブル定着部材14とが備えられている。
【0032】
本第1形態例では、施工性・運搬性を考慮して、前記膜定着部材11とケーブル定着部材14とがそれぞれ別体で構成され、前記固定プレート9に対して一体的に固定されるようになっている。
【0033】
前記膜材4の定着は、前記膜定着機構10に膜材4を定着した膜定着部材11と、前記ケーブル定着部材14とを前記固定プレート9に固定し、図6及び図7に示されるように、前記ケーブル定着部材14の筒状固定部13に前記ケーブル5を中間クランプ7とともに挿入し、図8に示されるように、筒状固定部13の両端から前記位置調整ボルト8、8をそれぞれ螺入させるとともに、螺入量の調整によって前記中間クランプ7の位置調整が図られている。なお、この状態で前記位置調整ボルト8,8の端面は、前記中間クランプ7の端面に当接した状態となっている。
【0034】
前記固定プレート9は、図9に示されるように、フレーム3の前記膜欠切部6に対応する位置に、基台3aを介して固設されている。前記固定プレート9には、前記膜定着部材11及びケーブル定着部材14を一体的に締結するためのボルト挿通孔9a、9aが設けられている。なお、固定プレート9より内側のフレーム3上面には、図3及び図4に示されるように、膜材4の裏面側をフレーム3の長手方向に沿って支持する膜支持部材30を固定するための台プレート3bが、基台3cを介して固設されている。
【0035】
前記膜定着部材11は、図10(A)に示されるように、前記固定プレート9に対して固定を図る固定面11aを有するとともに、前記固定面11aの膜欠切部6に沿って連続し、膜欠切部6の周縁に沿って前記膜材4を定着するための膜定着機構10を構成するための膜定着面11dを有する主プレート11Aと、図10(B)に示される挟持用プレート16とから構成される。
【0036】
前記主プレート11Aの固定面11aには、ケーブル定着部材14と一体的に前記固定プレート9に締結するためのボルト挿通孔11b、11bが設けられている。また、前記ケーブル定着部材14と仮止めするため、前記固定プレート9と重合しない位置に、両者を貫通する仮止め用孔11c、11cが設けられている。
【0037】
前記膜定着機構10は、前記主プレート11Aの膜定着面11d及び挟持用プレート16に、それぞれ所定の間隔で膜材4の挟み付けのためのボルト挿通孔11e…、16a…が設けられ、図3及び図4に示されるように、前記膜欠切部6に沿って前記膜材4の端縁にエッジロープ15が装着され、前記エッジロープ15の内側に沿って前記挟持用プレート16が配設され、前記主プレート11Aの膜定着面11dとの挟み付けによって前記膜材4が前記膜定着部材11に定着されるようになっている。
【0038】
前記ケーブル定着部材14は、図11に示されるように、前記膜定着部材11の固定面11aを間に介して前記固定プレート9に対する固定を図る固定面14aを有するとともに、該固定面14aの前記ケーブル5側に筒状固定部13が連設されている。前記固定面14aには、膜定着部材11と共に、前記固定プレート9に締結するためのボルト挿通孔14b、14bが設けられるとともに、前記膜定着部材11と仮止めするため、前記固定プレート9と重合しない位置に、両者を貫通する仮止め用孔14c、14cが設けられている。
【0039】
前記筒状固定部13は、図6〜図8に詳細に示されるように、略円筒形状部材からなり、前述の通り、部材長手方向に沿って前記ケーブル5を中間クランプ7と共に外部側から挿入可能とするスリット状の前記切欠き溝12が形成されている。前記切欠き溝12は、図6に示されるように、中間に前記中間クランプ7を挿入可能とする拡幅部12aを有し、その両側部分12b、12bは前記ケーブル5のみを挿入可能な幅に形成することが好ましい。
【0040】
なお、前記筒状固定部13には、図11に示されるように、前記位置調整ボルト8を螺入後、該位置調整ボルト8の緩み止め用ビス(図示せず)を螺入するためのネジ孔13a、13aが設けられているとともに、下面には前記筒状固定部13内に浸入した雨水等を排出するためのドレン孔13b、13bが設けられている。
【0041】
前記膜欠切部6の両側部は、図3及び図12に示されるように、前記ケーブル5を支持するサドル部17が設けられている。このサドル部17は、図12に示されるように、膜欠切部6の両端部において、前記膜定着部材11の膜定着面11dと挟持用プレート16との定着端部をV字状に開先処理するとともに、この開先処理部分に沿ってケーブル5が支持され、該ケーブル5を保持するU字留め具18が前記膜定着面11dと挟持用プレート16とを締結するボルト11fによって固定されている。ここで、同図12に示されるように、前記挟持用プレート16の両側部の表面に補強用金具19を接合するとともに、前記膜定着面11dと挟持用プレート16との間の定着面には、前記開先部分まで延在する2枚の保護シート20、20を配設することが好ましい。
【0042】
次に、本発明に係る膜材周縁部の定着構造2の施工方法について詳述する。先ず、前記膜定着部材11の膜定着機構10に膜材4を定着させ、この膜定着部材11の固定面11aに形成された前記仮止め用孔11cと、ケーブル定着部材14の固定面14aに形成された前記仮止め用孔14cとを貫通するボルトによって、膜定着部材11とケーブル定着部材14とを仮止めしておく。本第1形態例に係る膜材周縁部の定着構造2では、施工性・運搬性を考慮して、前記膜定着部材11とケーブル定着部材14とをそれぞれ別体に構成し、前記固定プレート9に締結するまで仮止め用孔11c、14cを貫通するボルトによって仮止めすることによって、前記膜定着部材11とケーブル定着部材14との一体化を図っている。
【0043】
この仮止めした前記膜定着部材11及びケーブル定着部材14は、前記ボルト挿通孔9a、11b、14bを貫通するボルトによって、前記固定プレート9に締結される。
【0044】
その後、図6に示されるように、前記ケーブル定着部材14の筒状固定部13に、中間クランプ7と切欠き溝12の拡幅部12aとを位置合わせした状態で、前記ケーブル5を中間クランプ7とともに挿入する(図7参照)。
【0045】
そして、筒状固定部13の両端から位置調整ボルト8、8をそれぞれ螺入させ、位置調整ボルト8の端面が中間クランプ7の端面に当接させた状態から、さらに位置調整ボルト8を螺入させると、その螺入量に応じて中間クランプ7の位置が調整されるようになる。中間クランプ7の位置調整が終了したら、図7に示されるように、対向する位置調整ボルト8を締め込み、中間クランプ7を筒状固定部13に固定し、施工を完了する。
【0046】
一方、前記膜材4の中間部は、図3及び図15に示されるように、膜材4の裏面側に、袋部を形成するように、定着部形成用膜材31を熱溶着によって固定するとともに、前記袋部に定着用ロープ32を挿入し、この定着用ロープ32を内挿した袋部分を膜支持部材30の溝30aに挿入することによって支持するようになっている。
【0047】
ところで、施工後において、経時的な応力弛緩等によって膜材4に伸びが発生または緊張力が減少し、中間クランプ7の位置調整が必要となった場合、前記位置調整ボルト8、8を所定量だけ螺退方向に回して中間クランプ7の固定状態を解除した後、再度、前記位置調整ボルト8、8の螺入量を夫々調整し、ケーブルの長さを短くすることによって膜材4に緊張力を再導入することができる。
【0048】
〔第2形態例〕
次に、本発明の第2形態例に係る膜材周縁部の定着構造2について詳述する。上記第1形態例では、膜定着部材11とケーブル定着部材14とがそれぞれ別体で構成されるようにしたが、本第2形態例では、両者を一体的に構成したものである。これにより、部品点数の低減によって施工工数の削減が図られる。
【0049】
具体的には、図13及び図14に示されるように、前記膜欠切部6には、前記フレーム3の前記膜欠切部6に対応する位置に固設された固定プレート9と、前記膜欠切部6の周縁に沿って前記膜材を定着する膜定着機構10を備えるとともに、前記膜欠切部6で露出される前記ケーブル5の配設方向に沿って、部材長手方向に沿って前記ケーブル5を中間クランプ7と共に外部側から挿入可能とするスリット状の切欠き溝12が形成されるとともに、内周面に前記位置調整ボルト8、8が螺合されるネジ溝が形成された前記中間クランプ7の筒状固定部13が設けられた膜及びケーブル用定着部材21とが備えられる。すなわち、膜材4の定着用部材(11)と、ケーブル5の定着用部材(14)とに分割せずに、1枚のプレートの膜材側周縁に膜材4を定着し、ケーブル側に前記中間クランプ7の筒状固定部13を設けるようにしたものである。
【0050】
〔その他の形態例〕
上記第1形態例では、前記膜定着部材11の膜定着機構10に膜材4を定着させ、前記膜定着部材11とケーブル定着部材14とを仮止めし一体とした後、これをフレーム3の固定プレート9に固定し、次いでケーブル5を中間クランプ7とともに挿入し、位置調整ボルト8を螺入することによって、中間クランプ7を筒状固定部13に固定するようにしたが、前記膜定着部材11の膜定着機構10に膜材4を定着し、この膜定着部材11と前記ケーブル定着部材14とを仮止めして一体とし、ケーブル5を中間クランプ7とともに挿入し、位置調整ボルト8を螺入して中間クランプ7を筒状固定部13に固定した後、これをフレーム3の固定プレート9に固定する手順としてもよい。このような手順によって施工を行うことによって、膜材4とケーブル5とに対して同時的に張力導入ができ、現場での施工工数を低減することが可能となる。なお、この施工手順は、上記第2形態例に係る定着構造に対しても同様に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る膜材周縁部の定着構造を適用した駅のプラットホーム1を示す、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図2】その横断面図(図1のII−II線矢視図)である。
【図3】本発明の第1形態例に係る膜材周縁部の定着構造2を示す要部拡大平面図(図1のT部拡大図)である。
【図4】その横断面図(図3のIV−IV線矢視図)である。
【図5】図3のV方向矢視図である。
【図6】中間クランプ7の筒状固定部13への挿入要領を示す斜視図(手順1)である。
【図7】位置調整ボルト8,8の筒状固定部13への挿入要領を示す斜視図(手順2)である。
【図8】中間クランプ7の位置決め状態を示す斜視図(手順3)である。
【図9】固定プレート9を示す、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図10】膜定着部材11のうち、(A)は主プレート11Aを示す平面図、(B)は挟持用プレート16を示す平面図である。
【図11】ケーブル定着部材14を示す、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図12】サドル部17の拡大断面図(図3のXII−XII線矢視図)である。
【図13】本発明の第2形態例に係る膜材周縁部の定着構造2を示す平面図である。
【図14】その横断面図である。
【図15】膜中間部の固定態様を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1…膜構造物、2…膜材周縁部の定着構造、3…フレーム、4…膜材、5…ケーブル、6…膜欠切部、7…中間クランプ、8…位置調整ボルト、9…固定プレート、10…膜定着機構、11…膜定着部材、12…切欠き溝、13…筒状固定部、14…ケーブル定着部材、15…エッジロープ、16…挟持用プレート、17…サドル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームの上面に膜材が張設された膜構造物において、前記膜材の周縁部にケーブルを配設し、該ケーブルを所定の間隔位置で前記フレームに固定するための膜材周縁部の定着構造であって、
前記ケーブルにおける前記フレームへの固定部位に、該ケーブルより大径の中間クランプが固定されるとともに、該中間クランプの両側に夫々、外周面にネジ溝が形成され、かつ前記ケーブル回りに回転可能な状態で外嵌された位置調整ボルトが配設され、
前記フレームの固定部位に、内周面に前記位置調整ボルトが螺合されるネジ溝が形成されたケーブル定着部材が固設され、前記ケーブル定着部材のネジ溝内に前記中間クランプが挿入されるとともに、両端から螺入された前記位置調整ボルトによって前記中間クランプの位置が固定されていることを特徴とする膜材周縁部の定着構造。
【請求項2】
フレームの上面に、両側縁を長手方向に沿って折り返してループ部を形成し、該ループ部にケーブルを連続的に挿通した膜材が張設された膜構造物において前記ケーブルを所定の間隔位置で前記フレームに固定するための膜材周縁部の定着構造であって、
前記フレームと膜材との固定部位において前記膜材の周縁を凹状に欠切して膜欠切部を形成し、該膜欠切部で露出される前記ケーブルの中間に、該ケーブルより大径の中間クランプが圧着固定されるとともに、該中間クランプの両側に夫々、外周面にネジ溝が形成され、かつ前記ケーブル回りに回転可能な状態で外嵌された位置調整ボルトが配設され、
前記フレームの前記膜欠切部に対応する位置に固設された固定プレートと、前記膜欠切部の周縁に沿って前記膜材を定着する膜定着機構を備えた膜定着部材と、前記膜欠切部で露出される前記ケーブルの配設方向に沿って、部材長手方向に沿って前記中間クランプを外部側から挿入可能とするスリット状の切欠き溝が形成されるとともに、内周面に前記位置調整ボルトが螺合されるネジ溝が形成された前記中間クランプの筒状固定部が設けられたケーブル定着部材とを備え、
前記膜定着機構に膜材を定着した膜定着部材と、前記ケーブル定着部材とが前記固定プレートに固定され、前記ケーブル定着部材の筒状固定部に前記ケーブルが中間クランプとともに挿入され、筒状固定部の両端から螺入された前記位置調整ボルトによって前記中間クランプの位置が固定されていることを特徴とする膜材周縁部の定着構造。
【請求項3】
フレームの上面に、両側縁を長手方向に沿って折り返してループ部を形成し、該ループ部にケーブルを連続的に挿通した膜材が張設された膜構造物において前記ケーブルを所定の間隔位置で前記フレームに固定するための膜材周縁部の定着構造であって、
前記フレームと膜材との固定部位において前記膜材の周縁を凹状に欠切して膜欠切部を形成し、該膜欠切部で露出される前記ケーブルの中間に、該ケーブルより大径の中間クランプが圧着固定されるとともに、該中間クランプの両側に夫々、外周面にネジ溝が形成され、かつ前記ケーブル回りに回転可能な状態で外嵌された位置調整ボルトが配設され、
前記フレームの前記膜欠切部に対応する位置に固設された固定プレートと、前記膜欠切部の周縁に沿って前記膜材を定着する膜定着機構を備えるとともに、前記膜欠切部で露出される前記ケーブルの配設方向に沿って、部材長手方向に沿って前記中間クランプを外部側から挿入可能とするスリット状の切欠き溝が形成されるとともに、内周面に前記位置調整ボルトが螺合されるネジ溝が形成された前記中間クランプの筒状固定部が設けられた膜及びケーブル用定着部材とを備え、
前記膜定着機構に膜材を定着した膜及びケーブル定着部材が前記固定プレートに固定され、前記ケーブル定着部材の筒状固定部に前記ケーブルが中間クランプとともに挿入され、筒状固定部の両端から螺入された前記位置調整ボルトによって前記中間クランプの位置が固定されていることを特徴とする膜材周縁部の定着構造。
【請求項4】
前記膜定着機構は、前記膜欠切部に沿って前記膜材の端縁にエッジロープが装着され、前記エッジロープの内側に沿って設けられた挟持用プレートによる挟み付けによって前記膜定着部材又は膜及びケーブル用定着部材に定着されている請求項2、3いずれかに記載の膜材周縁部の定着構造。
【請求項5】
前記膜欠切部の両端部に、前記ケーブルを支持するサドル部が設けられ、前記膜欠切部で露出されるケーブルが直線状に延長されている請求項2〜4いずれかに記載の膜材周縁部の定着構造。
【請求項6】
前記ケーブル定着部材又は前記膜及びケーブル用定着部材の筒状固定部に形成されたスリット状の切欠き溝は、中間に前記中間クランプを挿入可能とする拡幅部を有し、その両側は前記ケーブルのみを挿入可能な幅としてある請求項2〜5いずれかに記載の膜材周縁部の定着構造。
【請求項7】
前記膜定着部材の膜定着機構に膜材を定着するとともに、この膜定着部材と前記ケーブル定着部材とを仮止めして一体とし、前記ケーブル定着部材の筒状固定部にケーブルを中間クランプとともに挿入し、筒状固定部の両端から前記位置調整ボルトをそれぞれ螺入させて前記中間クランプの位置を固定した後、前記膜定着部材と前記ケーブル定着部材を前記フレームの固定プレートに対して固定することを特徴とする請求項2記載の膜材周縁部の定着構造のための施工方法。
【請求項8】
前記膜及びケーブル用定着部材に膜材を定着し、前記膜及びケーブル用定着部材の筒状固定部にケーブルを中間クランプとともに挿入し、筒状固定部の両端から前記位置調整ボルトをそれぞれ螺入させて前記中間クランプの位置を固定した後、前記膜及びケーブル用定着部材を前記フレームの固定プレートに対して固定することを特徴とする請求項3記載の膜材周縁部の定着構造のための施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−41322(P2009−41322A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209753(P2007−209753)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000204192)太陽工業株式会社 (174)
【出願人】(000192626)神鋼鋼線工業株式会社 (44)
【Fターム(参考)】