説明

膜状の無機材料

【課題】(1)絶縁性があり、(2)耐熱性があり、(3)金属などの基材に塗布および熱処理して用いることができ、(4)基材との熱膨張係数差が大きくても剥離および破壊しない膜状の材料を得ること。
【解決手段】Al、Mg、Si、Ti、Zr、Beのいずれかからなる金属アルコキシドが加水分解および脱水重合されて形成される無機物質中にフィラーを分散した材料で、フィラーの粒子は結晶面の一つが完全なへき開面を有する無機物を含んだものとし、さらにフィラーの粒子のへき開面は膜の面方向に対して並行に略整列とすることにより解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性で膜状の無機材料であり、その膜と接する母材の膨張または収縮が大きい場合でも十分に追従し、破壊や剥離を起こさない膜状の無機材料に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスや照明機器、モーターやエンジン周辺の部材は、比較的高温にさらされることが多い。そのために、一般的には耐熱性が十分高い金属材料が用いられる。
【0003】
金属材料は一様に電気抵抗率が低いために、電力や電気信号(以後まとめて「電気」という)を必要箇所に流し、または、流さないといった制御はできない。そのために、様々な装置には電気を流したくない部分には絶縁体を用いることでこれに対応している。
【0004】
絶縁体には様々な種類があり、多くのセラミックス、大部分の樹脂、油脂、ガラス、ダイヤモンドなどがあるが、これらのうち絶縁体として面状態に適用でき、さらに例えば150℃を超える温度に適用できるものは限られる。樹脂や油脂は熱により分解や燃焼しやすい状態となり、ガラスは熱変動により極めて割れやすくなる。また、セラミックスやダイヤモンドは絶縁性や耐熱性は有すものの、所望の形状に適用するのは難しいまたは製造費用が高くなる。
【0005】
このような環境下で用いる絶縁体としては、例えば特許文献1にはアルコキシド化合物からなるバインダーと、酸化チタン、アルミナ及びジルコニアの少なくとも一つを含む顔料と、溶媒とからなる塗料を十分な脱水縮合を行うことにより得られる材料が記載されている。また、この材料には、任意でカーボンを加えてよいことが記載されている。
【0006】
また、引用文献2にはアルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されたSi−Oネットワークおよび残存するシラノール基の前記生成化合物を含有するバインダーと、第1の顔料と、ナノ粒子化合物である第2の顔料を備えたものであり、熱伝導性絶縁膜を用いた熱伝導性電子回路基板が記載されており、顔料として窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化マグネシウム、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化カルシウムの化合物のいずれかまたはそれらの混合物、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化カルシウムの化合物を添加しても効果が得られることが述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−305406号公報
【特許文献2】特開2010−205955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1は、絶縁性を有する無機膜としてアルコキシド化合物からなるバインダーと、酸化チタン、アルミナ及びジルコニアの少なくとも一つを含む顔料と、溶媒とからなる塗料を十分な脱水縮合を行うことにより得られる材料が述べられている。アルコキシド化合物からなるバインダーを脱水縮合することによって得られる材料は非金属質の無機物としては変形を許容し、例えば金属に被覆するような形態で使用された場合でも、金属の熱膨張または収縮に追従しやすく、剥離や割れを起こしにくい。
【0009】
一方、その材料に添加する顔料として述べられている酸化チタン、アルミナ、ジルコニアは特許文献1や特許文献2で目的のひとつとして挙げられている熱伝導率の向上には一定の役割を果たす。しかしながら、例えば薄膜状で金属に被覆されたような形態の場合は、金属と熱膨張係数差が大きいだけでなく、引き張り応力に極めて弱いために熱膨張係数差によって容易に剥離または破壊を起こす。
【0010】
引用文献2にはアルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されたSi−Oネットワークおよび残存するシラノール基の前記生成化合物を含有するバインダーと、第1の顔料と、ナノ粒子化合物である第2の顔料を備えたものであり、熱伝導性絶縁膜を用いた熱伝導性電子回路基板が記載されており、顔料として窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化マグネシウム、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化カルシウムの化合物のいずれかまたはそれらの混合物、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化カルシウムの化合物を添加しても効果が得られることが述べられている。ここに述べられている顔料として挙げられたセラミックスも引用文献1と同様の問題が残る。唯一、述べられている窒化ホウ素が仮に六方晶で完全なへき開面を有する場合には若干問題は緩和されるが、それでも十分とはいえない。
【0011】
本発明は、特に熱膨張係数差の大きい金属などに被覆して用いる薄膜用の絶縁体材料について、従来の材料よりもより変形に対して破壊しにくい材料を得ることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0012】
金属アルコキシドが加水分解および脱水重合されて形成される無機物質と、前記無機物質中に粒子状態で分散したフィラーを有する膜状の無機材料を用い、そのフィラー粒子を結晶面の一つが完全なへき開面を持つ材質とし、かつ、膜の面方向にへき開面を略整列させた。
【0013】
また、この場合の「結晶面の一つが完全なへき開面を持つ材質」とは、例として雲母に代表されるような、平面を重ねた層状構造を有する材質を指す。後述するように、膜の面方向のみの伸縮を得ようとした材質であるために、へき開面は雲母のように一つの結晶面のみに存在する材質である必要がある。これは、例えて表現するならば結晶状態が図1に示すように複数の板を重ねた状態であり、一枚の板は内部が強固に結晶しており外力による影響を極めて受けにくいが、板同士は滑ることにより板同士が接している面上で比較的自由に動くことができる(図1の(B))。この接している面がへき開面であり、本発明に使用する「結晶面の一つが完全なへき開面を持つ材料」とはこの特徴を持つ材料をさす。この材料は粒子がほぼ板状であり、板の面方向の長さが厚さ方向に比べて極めて長い。そのために、へき開面が膜の面方向に対して整列(膜と基材の界面に対して平行)している状態は、粒子の面方向が膜の面方向に長く、膜の厚さ方向に短く配置しているのと同様の意味を持つ。
【0014】
また、この特徴は「完全なへき開面を1方向に持つ」と表現することもある。
【0015】
よって、例えば軟マンガン鉱のような2方向にへき開面を持つ鉱物や、蛍石のように4方向にへき開面を持つ鉱物は前記「結晶面の一つが完全なへき開面を持つ材質」としては適していない。
【発明の効果】
【0016】
本発明の無機材料を用いることで、
(1)絶縁性があり、(2)耐熱性があり、(3)金属などの基材に塗布および熱処理して用いることができ、(4)基材との熱膨張係数差が大きくても剥離および破壊しない
膜状の無機材料を得ることができる。この膜状の無機材料は、金属を主とする基材に被覆した状態で得ることができる。
以下、それぞれに説明を加える。
【0017】
(1)絶縁性がある
本明細書中での「絶縁性」は体積抵抗で1×1013(Ω・cm)以上のものを称している。この程度であれば、電力の伝達や信号の伝達は実用上発生しない。もちろん、耐電圧も例えば10KV/mm以上と高いほうがよい。
(2)耐熱性がある
本明細書中での耐熱性は概ね大気中−100〜500〜600℃までで、化学変化により有機物が劣化や分解、破壊しないことを指す。この温度範囲では、樹脂材料は使用できず、酸化物以外のセラミックスも酸化が起こりやすく、変質しやすい。また、熱や水分、弱酸などに対しても、長い期間安定して使用できる、いわゆる耐候性もあればなおよい。
(3)金属などの基材に塗布および熱処理して被膜として用いることができる
前記金属アルコキシドが加水分解および脱水重合されて形成される無機物質において、脱水重合させる前の状態で前駆体とすることで、金属表面に対し皮膜とすることができる。具体的には前記前駆体中に存在するヒドロキシ基などと金属表面のダングリングボンドに存在するOH基終端が加熱により脱水反応を起こし、本無機材料と金属とを化学的に結合させ皮膜を形成させることが可能になる。
(4)基材との熱膨張係数差が大きくても剥離および破壊しない
【0018】
前記(1)〜(3)について
絶縁体は多くの場合導電体と導電体の間、または、導電体の表面部に必要とされる。絶縁体自体は薄かったり小さかったりしたとしても絶縁性が確保されていればよいために、塗布する形態で導電体の表面に被覆する方法は費用面で優れている。また、前述のように耐熱性と、母材との密着強度が優れているために通常の取り扱いでは剥離を起こさない。先行技術文献に記載されている技術は、これらについては概ね解決されているといってよい。
【0019】
前記(4)について
熱膨張係数差による母材との剥離はいまだ解決されていない問題であり、本発明の主とする解決課題はこの点にある。
膜状の無機材料で被覆する基材は、たとえば基材上に直接あるいは間接的に載置された発熱体などの発熱量によってその熱変形量も変わってくる。近年のような高集積、高性能なデバイスなどであればその発熱量は年々増えているのが現状である。
フィラーを用いない、金属アルコキシドが加水分解および脱水重合されて形成される無機物質だけであるならばその伸びは十分であるが、所望の特性を得るためにフィラーを添加することにより、その伸びが十分でなくなる場合が多い。特にフィラーの量が例えば20体積%以上と多くなった際にその性質が顕著に現れる。
【0020】
前記特許文献に示されているような、金属アルコキシドが加水分解および脱水重合されて形成される無機物質は、例えば通常の焼結により生成するセラミック質と比較すると非常に高い柔軟性(伸び)を有する。一方で、フィラー(顔料)として先行技術文献に述べられている物質は剛性が高く変形しにくいセラミックスが述べられている。そのために、図6に示すように、例えば温度変化により基材3が面方向(図面の左右方向)に向かって伸びた場合には、無機材料部分が伸びる一方でフィラーは伸びずに、その結果基材に追従できずにクラック10が生じたり、母材との間に剥離11が生じたりすることになり使用ができなくなる。
【0021】
そのために、基材が熱による膨張などが発生する際に、フィラーを添加していても基板と剥離しない絶縁膜を得るためには、この絶縁膜の性質をより熱膨張に対して対応できる、言い換えれば熱膨張に追従可能な材質とする必要がある。
【0022】
また、本明細書中ではより一般に起りえる熱による「伸び」を想定しているが、伸びではなく縮む用途であっても同様の作用および効果を得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の膜状の無機材料の形態を示す模式図。
【図2】本発明の膜状の無機材料を製作する方法の一形態。
【図3】噴霧による製膜で、フィラーが平面方向に配向していない比較例を示す。
【図4】フィラーが一つの結晶面に完全なへき開面を有さない物質の場合の模式図を示す。
【図5】本発明の形態であり、基材の伸びに対してフィラーがへき開面よりすべることで無機材料が基材に追従した模式図
【図6】本発明の範囲外で、フィラーが一つの結晶面に完全なへき開面を有さない物質であり、クラックおよび剥離が生じた模式図
【図7】フィラーが一つの結晶面に完全なへき開面を有しており、粒子の長さ方向が膜の厚さ方向と略垂直な場合の模式図
【図8】一つの結晶面に完全なへき開面を有するフィラー粒子の模式図
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
請求項1に記載の本発明はAl、Mg、Si、Ti、Zr、Beのいずれか1種または2種以上からなる金属アルコキシドが加水分解および脱水重合されて形成される無機物質と、前記無機物質中に粒子状態で分散したフィラーを有する膜状の無機材料であり、前記フィラーの粒子は、結晶面の一つが完全なへき開面を有する無機物を含み、かつ前記フィラーの粒子のへき開面は膜の面方向に対して並行に略整列している膜状の無機材料である。
【0025】
Al、Mg、Si、Ti、Zr、Beのいずれか1種または2種以上からなる金属アルコキシドが加水分解および脱水重合されて形成される無機物質は、金属と酸素間の結合が鎖状に伸びた構造を有し、その組織中に粒子状のフィラーを取り込むことができる。前記無機物質は基本的に絶縁性を示し、金属と酸素間の結合が3次元的に完全に固定されていないために、通常の金属酸化物と比較して明らかに柔軟性を有する。一方、絶縁性についてはアルミナやシリカなどのセラミックスと同程度あるいはそれ以上であり、その大部分が1×1013(Ω・cm)以上で、絶縁破壊に対する耐性も10KV/mm以上と十分な場合が多い。柔軟性については、応力に対して比較的容易に変形する。
【0026】
本願請求項に記載の発明は、この無機物質に適当なフィラーを加えた場合でも、膜状の無機材料の柔軟性を維持することを目的としている。柔軟性は膜の全ての方向に対して必要ではなく、変形する距離が相対的に大きくなる膜の面方向に対して必要となる。これに対して膜の厚さ方向は厚さ自体がさして大きくないために、変形量はわずかであり、柔軟性はフィラーの種類に依存せずにおおむね十分である。よって、柔軟性については実際のところ、膜の面方向への柔軟性を考慮すればよい。なお、本明細書においては膜の「面方向」とは基材と膜の接合面に対して平行な方向の面を指している。
図1に示すように、前記無機物質1中に添加するフィラーを構成する粒子2は膜の面方向(図面の左右方向)に対して長く、厚さ方向に対して短い状態で分散する必要がある。図8の下図において、左右がこの長い面方向、上下が厚さ方向に該当する。これは全ての粒子が面方向に長い必要はなく、例えば粒子の80%以上が膜の厚さ方向に比べて面方向に長い状態で十分であり、より望ましくは95%以上がその状態であることである。これを「略整列」と表現している。また、整列の基準としては、へき開面と膜の面方向が完全に一致する必要は無く、面方向に対してへき開面が0°以上30°以内であれば整列していると扱っている。言い換えれば、30°を超え90°(=面方向に対して垂直)のフィラーは整列していない。
【0027】
前述の、例えば粒子の80%以上が膜の厚さ方向に比べて面方向に長い状態の場合は最も多い場合で20%が膜の面方向に対して垂直(90°)に近い場合でも、基材の膨張により80%以上のフィラーが先に変形するために、図7に示すようなフィラーの破壊は全く起こらないかごく限られたものになる。
【0028】
もう一つの要件は、このフィラーを構成する粒子2がh−BN、グラファイト、さらには銅藍、輝ビスマス鉱、輝水塩鉱、ハウスマン鉱、ダイアスポア、針鉄鉱、ギブス石、ブルーサイト、あられ石、藍銅鉱、藍鉄鉱、天青石、石膏、ユウレン石、斜ユウレン石、緑レン石、トパーズ、ケイ灰石、Arfvedsonite、葉ロウ石、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、イライト、アンティゴライト、魚眼石、緑泥石、Margarite、白雲母、黒雲母、金雲母、リン雲母、斜プチロル沸石といった結晶面の一つが完全なへき開面を有する無機物から選択される、いずれか1種または2種以上の無機物を含む必要があることである。これは、前述のように無機物質はある程度の柔軟性を示し、問題となる膜の平面方向への変形(これは、主として基材の変形に起因する)に対して追従ができる。一方、フィラーに用いる粒子を例えばアルミナ粒子のような応力によりほぼ変形しない(剛性率が高く、応力が高まれば塑性変形すること無しに破壊する)粒子が分散した状態の模式図を図4および図6に示す。図4は基材が熱変形する前、図6は熱変形して図面左右方向に伸びた後の模式図である。
【0029】
基材の変形前は無機物質中にアルミナの粒子が分散しているが、基材が(図面中左右方向に)伸びることによりフィラーである無機物質が変形する際の妨げになるばかりでなく、変形しきれなかった無機物質とアルミナ粒子との間に隙間ができ、それが膜のクラックの基点になりやすい。基点から、大きく熱膨張する基材と、それに対して膨張追従できない膜との間にクラックが入り、両者は剥離または膜が割れる。これは、フィラーの部分が膜の面方向に対しての許容できる伸びが十分でないことにより生じたためである。
【0030】
一方、本願発明のように、フィラーを結晶面の一つが完全なへき開面を有する粒子を、膜の面方向に長く分散すると、無機物質の面方向への伸びおよび厚さ方向への微小な収縮を、へき開面から結晶が面すべりを起こすことにより、この無機物質の変形とほぼ同じ状態に変形が可能である。この模式図を図5に示す。フィラー粒子2がへき開面からすべりを起こすため(9)に、面方向(図面上横方向)への長さは伸びが可能であり、収縮時には同様にもとの状態に戻ることが可能となる。また、この際に膜の厚さ方向(図面上横方向)の収縮が問題になる場合には、粒子の向きが若干斜めになることにより、同様に変形に追従することができる。
【0031】
フィラーは以上の説明のように、結晶面の一つが完全なへき開面を有する粒子からなる必要がある。一つの結晶面より多くのへき開面を有する場合には、膜の面方向に対して垂直な面にもへき開面が存在することとなり、膜の面方向に熱膨張が発生した際、膜の面方向に対して垂直な面方向のへき開が発生しやすくなり、そのへき開の端点で応力集中が起きやすくなる結果、膜に微細な亀裂が生じやすくなる問題などが生じる。
【0032】
また、フィラーのへき開面を膜の面方向と略平行に合わせる必要があるために、フィラーの粒子は膜の面方向に長く、膜の厚さ方向に短く配置させる必要がある。結晶面の一つが完全なへき開面を有する粒子は、投入原料段階でほぼ板状の形状を有する。図8に模式図を示すように、この板の上下面がへき開面にあたる。よって、へき開面を膜の面方向に略平行に合わせるためには、板状の粒子を面方向に対して平行または平行に近く配置する必要がある。
【0033】
本発明の膜状の無機塗料は、これを実現するために、塗料の塗布に際して塗料を基材の平面方向に応力が掛かる状態で塗布をする方法が最も良い。実現する方法としては、塗料を基材上でスキージやローラー等で伸ばす方法や、スリットコーターなどを用いてノズルを移動させながら塗布する方法が望ましい。結晶面の一つが完全なへき開面を有するフィラーは、投入前の段階で板の面方向にへき開面が積み重なった形状の平板状のものがほとんどであるために、それが膜の面方向に長く配向して分散することにより、へき開面と膜の面方向が概ね揃うことになる。一方、塗料を単純に基材上に載せる方法や、図3に示すようにスプレー噴霧などによる基材の平面方向に応力が掛からない方法で塗布を行なうと、フィラーのへき開面とが膜の面方向(=膜と基材の界面方向)に対して平行にならずに、望ましくない。膜の平面方向以外の方向にへき開面を有していた場合、図7にその模式図を示すように、膜の面方向に熱膨張が発生した際、膜の面方向に対して垂直方向のへき開が発生しやすくなり、そのへき開の端点で応力集中が起きやすくなる結果、膜に微細な亀裂10が生じやすくなる問題が生じるためである。
【0034】
フィラーに用いる材質には結晶面の一つが完全なへき開面を有する材質を含む必要がある。望ましくは、フィラーの大部分、より望ましくはフィラーの全てが結晶面の一つが完全なへき開面を有する材質である。特に適しているのは一つの結晶面のへき開面から、結晶が容易にすべり変形するグラファイト、六方晶BN(h−BN)、銅藍、輝ビスマス鉱、輝水塩鉱、ハウスマン鉱、ダイアスポア、針鉄鉱、ギブス石、ブルーサイト、あられ石、藍銅鉱、藍鉄鉱、天青石、石膏、ユウレン石、斜ユウレン石、緑レン石、トパーズ、ケイ灰石、Arfvedsonite、葉ロウ石、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、イライト、アンティゴライト、魚眼石、緑泥石、Margarite、白雲母、黒雲母、金雲母、リン雲母、斜プチロル沸石より選択される。1種でも2種以上でも、必要とする特性に応じて用いることができる。また、鉱物としては代表的な一部のみを挙げているが、一つの結晶面のみに完全なへき開面を有する無機物であれば、記載した無機物以外でも当然同様の効果が得られる。
【0035】
これらのグラファイト、六方晶BN(h−BN)、および前記無機物から、使用用途に必要な物性に対して適宜フィラーとして選択すればよい。
【0036】
たとえば、基材に熱膨張率の非常に大きなアルミニウム(熱膨張率:23×10−6/K)を用いて温度が比較的高く(たとえば常温〜200℃)なるような温度変化を繰り返す際は、膜もそれに応じて伸縮が必要となる。そういった場合には、完全なへき開面を有する物質で、へき開面からのすべりが容易に(=小さな応力により)実現でき、さらに使用温度に対して化学的に安定で耐久性もあるh−BNを使用することが望ましい。
【0037】
また、これらのフィラーは膜状の無機材料全体の体積に対して3〜95体積%の割合で含まれることが望ましい。
【0038】
膜状の無機材料全体に対して3体積%未満であれば、結晶面の一つが完全なへき開面を有するフィラーがたとえへき開面ですべり追従できたとしても、フィラーの量が少なすぎるためにフィラーの特徴が十分に得られないからである。
【0039】
また逆に、フィラーがあまりにも多く95体積%を超えると、フィラー間を充填する無機物質が不足し、膜状の無機材料中に気孔が生じやすくなり、膜状の無機膜の強度が弱くなる傾向が顕著となるために望ましくない。
【0040】
そのために、フィラーの好ましい含有量は3%〜95体積%である。
【0041】
また、膜の色調として黒色が必要なときは黒雲母を使用する、熱伝導率や輻射が必要な場合はグラファイトを選択する、ジルコニア(へき開しない)の白色度が必要な場合はジルコニアと合わせて石膏をフィラーとして選択する、熱伝導率が必要な場合は粒状ダイヤモンドと合わせてh−BNを選択するなど、結晶面の一つが完全なへき開面を有する物質の中から適宜選択すればよい。また、フィラーとして一つの結晶面に完全なへき開面を持つ物質以外のものを使用したい場合でも、フィラーとして一つの結晶面に完全なへき開面を持つ物質をあわせて添加することにより、膨張収縮への追従性は維持することができる。
【0042】
前記へき開については、一般的に以下の4種類に分類される
1.完全なへき開 2.明瞭なへき開 3.不明瞭なへき開 4.へき開なし
一定の結晶方向に向かってのみ破壊するのが1.の完全なへき開を有する結晶であり、本発明のフィラーとして記載しているものは、その中でも特に「結晶面の一つが」完全なへき開を有するものである。上記2.〜4.のように、へき開面が完全でなく、面のすべりが良好でないへき開面の場合は、基材の膨張、収縮に対しての追従が十分でないか全くないために、適当とは言いがたい。
【0043】
本発明は以下の方法により実現することができる。
【0044】
まず、出発原料としてAl、Mg、Si、Ti、Zr、Beのいずれか1種または2種以上からなる金属アルコキシドを加水分解し、フィラーとしてのh−BN、グラファイトおよびそのほかの結晶面の一つが完全なへき開面を有する無機物のいずれか1種または2種以上を無機物をフィラーとして添加し、混合して塗料とする。分量についてはフィラーが全体の3〜95体積%を占めるように混合する。
【0045】
前記金属アルコキシドの加水分解については、金属アルコキシドの種類によって若干異なる。金属アルコキシドがアルミニウムイソプロポキシドの場合は、水と容易に加水分解を起こす。金属アルコキシドが珪酸エチルのようにSiを主とする場合はpHを酸性側またはアルカリ側に調整する必要がある。いずれの金属アルコキシドにおいても、必要に応じて酸やアンモニアなどでpHを調整したうえで、十分に加水分解できればよい。
【0046】
つぎに、得られた塗料を膜状の無機材料を形成する母材へと塗布を行なう。塗布の際には、塗料中のフィラーのへき開面が、膜の面方向と略平行になるように行う。具体的には、スキージやローラーで塗料を伸ばして形成する方法や、スリットコーターなどで少なくとも面方向に平行な応力をかけながら塗布を行なえばよい。
【0047】
塗布を行なった後に、母材ごとあるいは塗布した面に対して100〜400℃の温度で5分〜数時間程度加熱をすることにより、加水分解された金属アルコキシドを脱水重合することができる。加水分解された後に脱水重合した金属アルコキシドは、体積減少を伴った上で固化し、フィラーを分散した無機膜ができる。
【実施例】
【0048】
(実施例1)
金属アルコキシドとしてメチルトリエトキシシラン(Siのアルコキシド)を、フィラーとして六方晶BN(h−BN)を用いた例を示す。
【0049】
まず、出発原料としてメチルトリエトキシシランを選択し、これを常温で6Nの塩酸にて加水分解し、シラノール溶液とした。得られたシラノール溶液の体積1に対して約半分の体積の六方晶BN粉末を添加した。六方晶BN粉末は平均粒子径が約8μmで、平たい形状であり厚さとのアスペクト比が約10である平板状の粒子を用いた。
【0050】
常温にて攪拌機で十分に混合して、シラノール溶液中にフィラーである六方晶BN粒子が分散した塗料を得た。
【0051】
塗料を金属製の母材に塗布した後、ローラーにて厚さをおおよそ均一にし、金属製の母材とともに大気炉中、300℃、1時間保持の条件で熱処理を行なった。熱処理によりシラノール溶液は脱水重合し、フィラーを分散した状態にて母材上で固化して、本発明である厚さ約0.2mmの膜状の無機材料となった。
【0052】
この厚さと塗布面積および重量よりフィラーの含有量を逆算したところ、膜状の無機材料中の約50体積%がフィラーであることが分かった。
【0053】
この塗料はフィラーの六方晶BNの特徴を持つために、外観上白色であり、紫外光を70%以上、可視光を90%以上反射するという特徴を持つ。
【0054】
また、絶縁性は当然高く1014(Ω・cm)以上であり、母材との密着性についても十分であった。また、断面を観察したところ、六方晶BNの粒子のへき開面の方向が膜状の無機材料の面方向に平行な向きに対して約99%が略整列していることが確認できた。へき開面の方向は、粒子の長方向にあたる。
【0055】
次に、母材ごと冷熱衝撃試験を行った。大きさは、銅基板が50×50×4mmtである。
【0056】
耐熱試験の条件としては、大気雰囲気のチャンバー内で
a.120℃まで2秒で昇温 > b.120℃で30分保持 > c.−40℃まで2秒で降温 > d.−40℃で30分保持 > a.へ
で示したa.b.c.d.のサイクルを繰り返す。
【0057】
100サイクルごとに投入したサンプルを取り出し、膜の状態について評価を行なった。
【0058】
本実施例の膜状の無機材料は、前記サイクルを2000回行なった後でも、基材との剥離、膜の破壊いずれも全く生じていなかった。あわせて、外観上の変色や膜の面粗さ、絶縁性などいずれの性質についても試験前の状態と同様であった。

(実施例2)
金属アルコキシドとしてマグネシウムイソプロポキシド(Mgのアルコキシド)を、フィラーとしてグラファイトを用いた例を示す。
【0059】
まず、出発原料としてマグネシウムイソプロポキシドを選択し、これを常温で水にて加水分解し、ヒドロキシマグネシウムゾルとした。得られた溶液の体積1に対して約2%の体積のグラファイト粉末を添加した。グラファイト粉末は平均粒子径が約20μmで、平たく、厚さとのアスペクト比が約20である平板状の粒子を用いた。
【0060】
常温にて攪拌機で十分に混合して、ヒドロキシマグネシウムゾルにフィラーであるグラファイト粒子が分散した塗料を得た。
【0061】
塗料を、ヒートシンクとして用いる銅製の母材に塗布した後、スキージにて厚さをおおよそ均一にし、金属製の母材とともに大気炉中、350℃、1時間保持の条件で熱処理を行なった。熱処理によりヒドロキシマグネシウムゾルは脱水重合して、フィラーを分散した状態にて母材上で固化して、本発明である厚さ約0.1mmの膜状の無機材料となった。
【0062】
この厚さと塗布面積および重量よりフィラーの含有量を逆算したところ、膜状の無機材料中の約3体積%がフィラーであることが分かった。
【0063】
この塗料はフィラーのグラファイトの特徴を持つために、外観上黒色であり、グラファイトの特徴である熱を輻射して赤外線にて拡散する特徴を有する。
【0064】
母材ごと恒温室で温度200度とした後、室温にて1分間放置したところ表面の温度は103℃となった。膜状の無機材料中にフィラーを添加せずに同様の試験を行ったところ、同温度は132℃であった。フィラーのグラファイトの放熱効果は明らかであった。
【0065】
また、絶縁性は高く電気抵抗は1014(Ω・cm)以上であり、母材との密着性についても十分であった。また、断面を観察したところ、グラファイトの粒子のへき開面の方向が膜状の無機材料の面方向に対して約97%が略整列していることが確認できた。このことはグラファイトの粒子の長方向の辺が膜の面方向に略整列していることと実質的に一致する。
【0066】
次に、母材ごと実施例1と同様の冷熱衝撃試験を行った。
【0067】
本実施例の膜状の無機材料は、前記サイクルを2000回行なった後でも、基材との剥離、膜の破壊いずれも全く生じていなかった。あわせて、外観上の変色や膜の面粗さ、絶縁性などいずれの性質についても試験前の状態と同様であった。

(実施例3)
金属アルコキシドとしてアルミニウムイソプロポキシド(Alのアルコキシド)を、フィラーとして黒雲母を用いた例を示す。
【0068】
まず、出発原料としてアルミニウムイソプロポキシドを選択し、これを常温で水にて加水分解し、ヒドロキシアルミニウムゾルとした。得られた溶液の体積1に対して約10倍の体積の黒雲母粉末を添加した。黒雲母粉末は平均粒子径が約5μmで、平たい形状であり厚さとのアスペクト比が約10である、平板状の粒子を用いた。
【0069】
常温にて攪拌機で十分に混合して、ヒドロキシアルミニウムゾルにフィラーである黒雲母粒子が分散した塗料を得た。
【0070】
塗料を母材となるアルミニウム平板にスリットコーターにて塗布し、母材とともに窒素雰囲気炉中、200℃、1時間保持の条件で熱処理を行なった。熱処理によりヒドロキシアルミニウムゾルは脱水重合して、フィラーを分散した状態で母材上で固化して、本発明である厚さ約0.3mmの膜状の無機材料となった。
【0071】
この厚さと塗布面積および重量よりフィラーの含有量を逆算したところ、膜状の無機材料中の約95体積%がフィラーであることが分かった。
【0072】
この塗料はフィラーの黒雲母の特徴を持つために、耐電圧が非常に高いという特徴を有する。
【0073】
得られた膜状の無機材料の耐電圧試験を行ったところ、45KV/mmと非常に高い値が得られた。この試料は黒雲母が約95体積%を占めるものであるが、黒雲母の体積分率が50体積%で同様の試験を行ったところ28KV/mm、同20体積%の場合は17KV/mm、黒雲母を含まない脱水重合したヒドロキシアルミニウムは14KV/mmであった。
【0074】
また、絶縁性は高く1014(Ω・cm)以上であり、母材との密着性についても十分であった。また、断面を観察したところ、黒雲母の粒子のへき開面の方向が膜状の無機材料の面方向に対して約80%が略整列していることが確認できた。
【0075】
次に、母材ごと実施例1と同様の冷熱衝撃試験を行った。
本実施例の膜状の無機材料は、前記サイクルを2000回行なった後でも、基材との剥離、膜の破壊いずれも全く生じていなかった。あわせて、外観上の変色や膜の面粗さ、絶縁性などいずれの性質についても試験前の状態と同様であった。
【0076】
(比較例)
比較試料1、2、3として、フィラーを蛍石およびAlおよびh−BNを用いた例を挙げる。
【0077】
(比較例1)
比較試料1に用いた蛍石は4つの結晶面に完全なへき開面を有する。
この蛍石を体積で30%の含有率となるようにメチルトリエトキシシラン中に分散させ、金属母材上にローラーにて均一の膜厚になるように塗布した。使用した蛍石は粉末状で、平均粒子径が約10μmである。
【0078】
その後に金属母材ごと大気中、300℃にて熱処理することで縮合重合し、母材上に膜状の無機材料を得た。
【0079】
この膜状の無機材料を母材ごと実施例1と同様の冷熱衝撃試験を行った。
【0080】
その結果、100サイクルで最初に取出した時点で、膜の表面に貝殻上のチッピングが無数に生じており、面が粗れていた。さらに300サイクル後に観察した時点では、膜状の無機材料のほとんどが剥離した状態であった。これは、フィラーである蛍石が複数方向に完全なへき開面を持つために、熱サイクルごとに様々な方向にクラックが入り、結晶状態が維持できなくなったためと考えられる。
【0081】
(比較例2)
比較試料2に用いたAlはへき開面がない(へき開しない)。
このAlを体積で30%の含有率となるようにメチルトリエトキシシラン中に分散させ、金属母材上にローラーにて均一の膜厚になるように塗布した。使用したAlは粉末状で、平均粒子径が約10μmである。
その後に金属母材ごと大気中、300℃にて熱処理することで縮合重合し、母材上に膜状の無機材料を得た。
【0082】
この膜状の無機材料を母材ごと実施例1と同様の冷熱衝撃試験を行ったところ、700サイクル終了後に光学顕微鏡にて観察した結果、膜表面に無数の亀裂が観察された。さらによく観察すると、膜表面近傍のフィラー粒子を起点とし、亀裂が発生していることが判った。この結果からフィラーが膜の面と垂直方向にへき開し、へき開の端点で無機物質に応力集中が発生したためこの亀裂が起ったと推察した。
【0083】
(比較例3)
比較試料3として用いたh−BNは実施例1と同様のものである。
他の製造方法は同様として、母材への塗布はスプレーガンを用いて行なった点のみが相違点である。
【0084】
スプレーガンを用いての塗布であるために、図3に示すようにh−BN粒子はほぼランダムに並んでおり、実施例1と同様の熱処理を行なった後でも並び方はほぼそのままであった。
【0085】
この膜状の無機材料を母材ごと実施例1と同様の冷熱衝撃試験を行った。300サイクル終了後に光学顕微鏡にて観察した結果、膜表面に無数の亀裂が観察された。さらによく観察すると、フィラーであるh−BN粒子の多くが膜の厚さ方向にクラックおよび割れが生じていることが分かった。膜状の無機材料に分散したh−BNの粒子が図7に示すように膜の厚さ方向への引張りによりクラックが生じやすい状態になっていた。
【0086】
本発明の膜状の無機材料は、絶縁部材としてエンジン、モーターの周辺部材、電子デバイスの周辺部材、光学デバイスの周辺部材、ヒートシンク、電気セパレータ、可視光や紫外線などの反射材、耐アーク材、炉壁、刃物の先端部、切削工具や研削工具の工具やホルダー、射出成型機の噴射ノズル、電極の封止材などに膜状に被覆して使用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 無機物質
2 フィラー
3 基材
4 スキージ
5 スキージの進行方向
6 スプレー噴射による液滴
7 液滴が堆積した膜
8 液滴の噴射、進行方向
9 へき開面にてすべりを起こしたフィラー
10 膜状の無機材料に生じるクラック
11 へき開面
12 板状の「板」にあたる面
13 粒子径(面方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al、Mg、Si、Ti、Zr、Beのいずれか1種または2種以上からなる金属アルコキシドが加水分解および脱水重合されて形成される無機物質と、前記無機物質中に粒子状態で分散したフィラーを有する膜状の無機材料であり、
前記フィラーの粒子は、結晶面の一つが完全なへき開面を有する無機物を含み、
かつ前記フィラーの粒子のへき開面は膜の面方向に対して並行に略整列している
膜状の無機材料。
【請求項2】
前記結晶面の一つが完全なへき開面を有する無機物がh−BN、グラファイトのいずれか1種または2種を含む請求項1に記載の膜状の無機材料。
【請求項3】
前記結晶面の一つが完全なへき開面を有する無機物が、
銅藍、輝ビスマス鉱、輝水塩鉱、ハウスマン鉱、ダイアスポア、針鉄鉱、ギブス石、ブルーサイト、あられ石、藍銅鉱、藍鉄鉱、天青石、石膏、ユウレン石、斜ユウレン石、緑レン石、トパーズ、ケイ灰石、Arfvedsonite、葉ロウ石、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、イライト、アンティゴライト、魚眼石、緑泥石、Margarite、白雲母、黒雲母、金雲母、リン雲母、斜プチロル沸石のいずれか1種または2種以上を含む
請求項1または請求項2に記載の膜状の無機材料。
【請求項4】
前記フィラーの占める割合が、膜状の無機材料全体に対して3〜95体積%である請求項1から請求項3のいずれかに記載の膜状の無機材料。
【請求項5】
温度変化により膨張または収縮する際に、
前記フィラーを構成する粒子がそのへき開面から転移することにより膜の面方向に膨張又は収縮することにより、
膜状態を破壊することなく変形することを特徴とする
請求項1から請求項4のいずれかに記載の膜状の無機材料。
【請求項6】
Al、Mg、Si、Ti、Zr、Beのいずれか1種または2種以上からなる金属アルコキシドが加水分解および脱水重合されて形成される無機物質と、前記無機物質中に粒子状態で分散したフィラーを有する膜状の無機材料で、
前記フィラーの粒子は、結晶面の一つが完全なへき開面を有する無機物を含み、
かつ前記フィラーの粒子のへき開面は膜の面方向に対して並行に略整列している膜状の無機材料の形成方法であり、
前記膜状の無機材料の少なくとも面方向に平行な応力を加えながら母材上に塗布し、
その後に100〜400℃の範囲で熱処理をすることによって脱水重合して母材上に得ることを特徴とする、
請求項1から請求項5に記載の膜状の無機材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−79157(P2013−79157A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218696(P2011−218696)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000229173)日本タングステン株式会社 (80)
【Fターム(参考)】