膜状素材と具材による組合せ食品
【課題】
本発明は、平易な方法でしかも従来にない新規かつ特異な形状の組合せ食品を得ることを目的とする。
【解決手段】
具材を柔軟性のある膜状素材で包むことで、比較的平易かつ正確に、特異な形状の組合せ食品を製造できる。
本発明は、平易な方法でしかも従来にない新規かつ特異な形状の組合せ食品を得ることを目的とする。
【解決手段】
具材を柔軟性のある膜状素材で包むことで、比較的平易かつ正確に、特異な形状の組合せ食品を製造できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、具材を柔軟性のある膜状素材で包んだ、特異な形状の組合せ食品及びその製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、市場には様々な食品が存在するが、中でも組合せ食品、特にその中でもフィリングと焼成食品を組合せた組合せ食品は非常にポピュラーなものであった。
一例を挙げると、焼成食品としてケーキのスポンジによりフィリングであるクリームを巻いたロールケーキ(図1−a)やショートケーキ(図1−b)などは代表的なものである。
【0003】
しかしながら、組合せ食品に対する消費者の嗜好としては、風味はもちろん、外見的な要因も大きく、またケーキのスポンジのような柔軟な焼成食品とフィリングとの組合せ食品はサンドやロールといった比較的典型的なものが殆どであるため、組合せ食品の形状を特徴的なものにすることへの市場での需要は高く、特に最近の様々な嗜好の多様化に伴う市場の要求により多種多様なものが要求されるようになってきていた。
【0004】
組合せ食品の形状を特異なものにする方法は以前にも考案されている。
例えばビスキュイと呼ばれる焼き菓子を予め底部は円形に、側面部は長方形に成型して焼成し、それぞれを円筒状の金型の底面と側面に隙間無く敷き込み、ビスキュイで円筒状の金型の側面と底面が覆い尽くされた凹状の部位にババロアを流し入れ、最後にふたの部分を被せて、冷やし固める方法にて作成される、具材を焼成食品で全面を覆った円筒状の組合せ食品の製造法(「シャルロット・オ・ポワール」と称される・図2−c)が考案されている。(例えば非特許文献1)
また、ジェノワーズやスポンジといった焼き菓子を予め焼成した上でスライスし、さらに5mm程度に切り分け、半球状のボールの凹部の面に隙間無く敷き詰めたものにバニラムース等の具材を流し込み、最後にふたの部分にあたる焼き菓子を被せて冷やし固める方法にて作成される、具材を焼成食品で全面を覆った半球状の組合せ食品の製造法(「シェプレーム・ア・ラ・ヴァニーユ」や「ズコット」と称される・図2−d)(例えば非特許文献2・非特許文献3)や「ボンブ型」と呼ばれる半球状の焼成型で作成したスポンジ生地をスライスしてクリームを挟んだ「ボンブケーキ」が考案されている。
しかしながら上記の方法は作業がすべて手作業で複雑であり、大量生産的な手法によって作製するのが極めて困難であった。
また、予め半球状の容器にスポンジ生地を敷き詰めて蒸しあげることではじめから半球状凹状のスポンジ容器を作成し、アイスクリームを詰めてスポンジでふたをするという方法にて作製される、具材を焼成食品で全面を覆った半球状の組合せ食品の製造法が考案されている。(例えば特許文献1)
【0005】
しかしながら上記方法にしても具材を覆った食品は半球の形状に合うように予め生地の段階から成型したのちに加熱加工工程に供するため、当初生地を敷き詰める容器の形状に依存するため煩雑で汎用性に欠け、大量生産には向かないものであった。
【0006】
よって、組合せ食品の形状を従来にない特徴的な外観形状を呈するものにすることへの市場からの要望は極めて強かった。
【非特許文献1】「別冊家庭画報・一流シェフが手ほどきする人気のケーキ」(30〜31頁:286〜287頁、石川貴之 編、株式会社世界文化社 1996年10月1日発行)
【非特許文献2】「別冊家庭画報・一流シェフが手ほどきする人気のケーキ」(146〜147頁:286〜287頁、石川貴之 編、株式会社世界文化社 1996年10月1日発行)
【非特許文献3】「別冊家庭画報・初心者でもラクラクできる人気シェフのケーキ教室」(254〜256頁:286〜287頁、石川貴之 編、株式会社世界文化社 1999年11月20日発行)
【特許文献1】特開平9−299036号公報(第1−3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、平易な方法でしかも従来にない新規な形状の組合せ食品を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記目的を達成する為に鋭意研究を行った結果、具材を柔軟性のある膜状素材で包むことで、比較的平易かつ正確に、特異な形状の組合せ食品を製造可能である事を見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、(1)としては形状が球形、楕円球、ラグビーボール型または紡錘形である具材を、柔軟性のある膜状素材にて包んだ組合せ食品であり、(2)としては膜状素材が具材の展開図に相当し、かつ平面に展開する事が可能である(1)記載の組合せ食品であり、(3)としては膜状素材が野球ボール外皮展開図に代表される鉄亜鈴型である(1)または(2)記載の組合せ食品であり、(4)としては膜状素材が焼成食品であることを特徴とする(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の組合せ食品であり、(5)としては膜状素材が焼成されたスポンジケーキまたはパンまたはドラヤキの皮またはクレープである(4)記載の組合せ食品であり、(6)としては具材と膜状素材を組み合わせる作業時に、具材が10℃以下である(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の組合せ食品の製造法であり、(7)としては具材が凍結したフィリングまたは蛋白食品である(1)ないし(6)のいずれか1項に記載の組合せ食品の製造法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、例えば円筒や円錐の側面とは異なり、球や楕円球、ラグビーボール(紡錘形)に代表される曲面を有する具材に対して、柔軟性のある膜状素材を皺・弛み無く全表面に密着させるかそれに準ずる程度に密接な状態で包含させる事を、平易且つ比較的平易かつ正確に行う事が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において言うところの「柔軟性のある膜状素材」とは曲がるが伸びにくい食品素材であり、その特性を有する食品素材であれば特に限定はされないが、一例としては、スポンジケーキ、パン、どら焼きの皮、クレープ、ライスペーパーや湯葉などが挙げられる。
また、その「柔軟性」を規定するにおいて、外部からの力により破断することなく伸張する伸張量((伸張後の寸法)−(伸張前の寸法))と原寸法との比率を限界伸張率(伸張率((%)=(伸張量)/(伸張前の寸法)×100、限界伸張率は破断することなく伸張する限界における伸張率をさす。図3−e参照)とおいた場合、下限としては3%以上、望ましくは5%以上であるものが好ましく、上限は特に限定はされないが通常50%以下、より望ましくは30%以下であることが好ましい。
【0011】
限界伸張率の下限が3%未満の食品素材は外部からの力により変形しにくく、無理に変形させると破断するため、具材(後述)の特異な形状に沿わせて変形させることができない。限界伸張率の低い食品としては、外部からの力によりきわめて低い伸張率で破断するものであり、一例として乾燥状態の海苔などが挙げられる。また乾燥した状態でのクッキー・固焼き煎餅といったものは柔軟性すらなく、折り曲げなどの外部からの力による変形により、構造が不可逆的に破壊されるものも当然、本発明で言うところの「柔軟性のある膜状素材」にはあたらない。
【0012】
限界伸張率の上限が必要以上に大きい場合は変形の自由度が大きい為、どんな形状の具材の表面に沿って変形でき、本願発明を用いる必要が無い。限界伸張率が50%以下の食品素材を用いた場合は、従来では困難であった組合せ作業が容易になるためより効果的である。
【0013】
さらに、膜状素材が伸張といった変形の後、外部からの力の大きさが変化した場合に速やかにそれに即した伸張率になる事、即ち応答性が高い事が望ましい。応答性が悪い(ない)状態とは、例えば外部からの力により伸張した膜状素材の外部からの力が減少あるいは無くなった場合に伸張した状態から戻りにくい(もどらない)状態を示す。
【0014】
膜状素材の上記の機能は食品としては、組合せ作業の際に上記規定を満たしていれば特に限定はされない。上記例示の湯葉やライスペーパーなどは水分量によりその限界膨張率がことなり、乾燥した状態では限界伸張率は小さく、本発明における膜状素材として望ましいものではないが、適当な加水により規定の限界伸張率と柔軟性を有する素材となる。また、組合せ作業の後に規定の伸張率から逸脱しても構わない。
【0015】
応答性が悪い場合、膜状素材が伸びてたるむ若しくは皺のよった状態から復元しにくい。一例としては外部からの力により伸張したものの、外部からの張率が復元しにくい、餅のようなものが挙げられる。加えて、膜状素材が外部からの力を受けている変形をしている間に徐々に破断したりしないことが好ましい。
【0016】
膜状素材の厚さについては特に限定はされないが、具材の曲率が極端に大きい、または膜状素材の厚さが極端に厚い場合、具材に接している部分と外部に露出している部分の寸法差が大きくなるため、外部露出部分にひび割れ・破断を生じる。
【0017】
膜状素材の厚さの上限は上記組み合わせる対象の具材の形状寸法にもよるが、具材の短径をDaとした場合、望ましくは0.5Da以下、より望ましくは0.4Da以下、より具体的には具材の短径が5cmである場合は、組み合わせる膜状素材の厚さは望ましくは2.5cm以下、より望ましくは2cm以下である事が好ましい。また、下限に関しては特に強度的に具材を包含する事が可能であれば制限は無く、薄く焼いたクレープなど1mm以下であっても特に問題はない。(図3−f、図3−g参照)
【0018】
「具材」とは前記「柔軟性のある膜状素材」との組合せ作業の際に自重にてその形状が大きく歪まない程度のものであれば特に限定はされない。
【0019】
大きく歪まない程度とは、自重にてつぶれる事によって生じる寸法差である自重変形量((自重による変形前の寸法)−(自重による変形後の寸法))と原寸法との比率を自重変形率(%)(=(自重変形量/(自重による変形前の寸法)×100)とした場合(図4−h参照)、自重変形率が30%以下、望ましくは20%以下を保持できる程度であることが好ましく、さらには変形しにくいほど望ましい。この自重変形率はおもに具材を構成する材質の物理的な強度と具材自体の大きさに影響を受ける。一例としては同じ材質であり、かつ大きさの異なる相似形状の具財同士を比較すると大きいものはより自重による変形を受けやすい。逆に、同じ形状・寸法であっても具材の物理的強度が異なると、より構造の脆弱なほうが自重による変形を受けやすい。本願においては具材の大きさや強度には特に限定はされず、どのような大きさや強度であっても上記特定の自重変形率の範囲の規定を満たしていれば構わない。
【0020】
また、具材の保形性は組合せ作業の際に発現していれば特にそれ以外の時点では必要ない。もちろん具材が堅い状態で喫食に供することもかまわないが、特に喫食事に具材が柔らかい必要がある場合、作業時に具材に保形性を付与する手段をとることが望ましい。
具材に保形性を付与する手段としては特に限定はされないが、一例としては低温にすることで保形性を持たせることが可能である。室温では脆弱な構造のものも、低温にするにつれ構造が強くなり、作業に耐えうる程度の保形性を付与できる。特に限定はされないが一例としては、ゼリーやババロア、ムース、あんまんの具に代表されるような粒餡や練餡、胡麻餡、肉まんの具に代表されるよなひき肉や、卵、小麦粉といった動・植物由来の蛋白食品などが挙げられ、作業温度についても10℃以下にする事でのゲル構造が強化され、組合せ作業がより効率的になる。
また、更に低温にして氷点下まで下げると水相も凍結するため、より組合せ作業をする上で望ましい。一例としてはフィリング、アイスクリームなどが挙げられる。
【0021】
組合せ形状は具材を膜状素材で包含する形状を指し、包含は具材の表面に密着、或は密着に準ずる程度に密接な状態にする事が望ましい。
【0022】
具材の材料についても特に制限はないが、膜状素材を表面に密着、あるいは密着に準ずる程度に密接な状態にする際に、具材の表面が付着性のある物質(一例として液糖など)で一部または全体が覆われていることが好ましく、さらに望ましくは具材自体が付着力を有するものである事が望ましい。その付着力は具材が低温にて保形性を付与されている場合でも、膜状素材との組合せ作業の際に表面が一部溶け出してくることで発揮されることでも構わない。
【0023】
また、具材の保形性を示す指標として示される「自重にてその形状が大きく歪まない程度」は組合せ作業の際に発揮されていればよく、喫食事などはその限りではない。
【0024】
その場合は具材と膜状素材が密着、或は密着に準ずる程度に密接な状態にあることで、それぞれの物理的な強度が相乗し合うことが好ましい。一例としては、組合せ作業時には具材は強い保形性を有していたため、膜状素材はその具材表面に具材の形状に沿う形で変形して密着(図4−i参照)、その後具材は昇温などのため自重にて大きく歪む程度まで保形性が弱まったとしても、膜状素材が具材表面に密着しており、その膜状素材の張力により保形性を維持し、極端に喫食に耐えることの出来ないような変形を引き起こさない状態が挙げられる(図4−j参照)。
【0025】
具材の形状には制限が無いものの、平面によって構成される立体形状(一例として立方体や直方体・図5−k参照)や、直線によって構成される線分の回転体によってなる立体形状(一例としては円筒・円錐の側面・図5−l参照)はその展開図を平面上に容易く展開できるため、限界伸張率の下限が3%未満の食品素材、すなわち、海苔のような無理に変形させると破断する素材であっても、容易に皺・弛み無く全表面に密着させる事が可能であり、本願発明を用いるまでもない。
【0026】
一方、具材の形状が曲線を有する線分の回転体によってなる立体形状(一例としては球形または楕円球またはラグビーボール型または紡錘形・図5−m参照)の展開図は平面状に展開することが困難であり、従来の方法では組合せ作業を行うことが極めて困難であったが、本願発明を用いることで比較的容易に組合せ作業が可能であり、新規な形状であるなどの視覚的な効果などのため、用いる具材の形状としてはより好ましい。
【0027】
展開された膜状素材の形状は上記具材表面に膜状素材の限界伸張率以下の伸張にて密着、或は密着に準ずる程度に密接な状態にできさえすれば特に限定されない。一例を挙げると、世界地図で言うところの舟型多円錐図法(経度30度ごとに12の正距多円錐図法で投影し並べたもの)のように数枚から十数枚の舟型を用いる方法(図6−n参照)や、渦巻きの帯状(図6−o参照)などが考えられるが、野球のボールの外皮展開図に代表される鉄亜鈴状の展開図(図6−p参照)が作業効率などから考えるとより好ましい。
【0028】
また上記条件をみたすそれぞれの具材・膜状素材を用いる事以外には特に限定はされず、工程や生地組成、焼成温度等は既存のケーキの常法によって製造する事が可能である。
【実施例】
【0029】
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明の精神は以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、%及び部は重量基準を意味する。
<実施例1・実施例2・実施例3>
【0030】
[膜状素材]
【0031】
全卵200重量部、卵黄40重量部をほぐし、砂糖60重量部を加えて、湯せんにかけ、ミキサーで泡立てる。充分泡立てたら、水飴40重量部を加えてさらにしっかり泡立てる。ついで薄力粉150重量部とベーキングパウダー2重量部を2回に分けてふるい入れ、泡をつぶさないように混ぜ込む。別のボウルで作製したメレンゲ(卵白120重量部と砂糖60重量部)を前記の生地に混ぜ込み、天板に流し込み焼成条件190℃/200℃で10分焼成した。
焼成した生地を表1に示された形状に切り分けた。
【0032】
[具材]
卵黄100重量部、全卵120重量部、グラニュー糖50重量部をすり混ぜ、加温したフルーツピューレ(タカ食品工業株式会社製)200重量部を合わせた。ついで、粉ゼラチン(ゼライス株式会社製)2.0重量部を水10重量部で膨潤、溶解させたものを合わせ、最後に別に用意したフィリング(製品名:アートピアピュアレモア、不二製油株式会社製)50重量部をポマード状になるまで攪拌したものを加え、均一になるように混合し、半球状の型(株式会社マトファー・ジャパン)に詰めて冷凍したのち抜き出し、半球2個を合わせ球形にした。
【0033】
[組合せ]
膜状素材を球形の具材の表面に隙間なく付着させ、再度冷蔵雰囲気下に保存し、評価を行った。
【0034】
<比較例1・比較例2>
[膜状素材]
実施例1と同様の配合と方法で膜状素材を作製し、表1に示された形状に切り分けた。
[具材]
型への流し込みと冷凍工程以外は実施例1と同様の配合と方法で具材を作製した。
[組合せ]
前述の形状に切り分けた膜状素材を半球状の型の表面に隙間無く敷き詰めた上に具材を流し込んで成型、同様のものをもう一つ作製して合わせて球形にした。(図8−x参照)
[表1]
【0035】
実施例1・実施例2・実施例3は具材と膜状素材の組合せが比較的容易く、また出来上がった組合せ食品は球形で極めて新規性の高いものであった。
ただ、実施例2は膜状素材に鋭角部があり、その鋭角部が組み合わせた際に球形具材の表面で一点に集まり強度的にやや弱い点、また張り合わせる膜状素材のパーツが多いため貼り付け作業がやや煩雑である点が見られるし、実施例3は膜状素材が長く膜状素材同士の接触部が長く強度的にやや弱い点、また膜状素材の形状が複雑で切り分けの際に無駄な生地が多く発生する難点はあるものの、双方とも十分に作業に耐える事ができるものであった。
【0036】
特に実施例1はパーツが2つのみで形状も単純で、貼り付け作業がきわめて容易であり、かつ切り分け時の無駄生地も少なく、膜状素材の鋭角部の集中や膜状素材同士の接触部が冗長になることもなく強度的にも優れたものであった。(図9・図10参照)
一方、比較例1・比較例2は従来のズコットなどの菓子の製造方法と基本的には変わらないのではあるが、膜状素材の型への敷き詰め工程が複雑であり、また半球の場合でこそ保形性を有していたものの、球形にした場合は強度的に弱く、扁平になったり、膜状素材が剥れ易かったりした。特に従来のズコットは大きいものが多いが、目的とする球形の組合せ食品が小さいほどその敷き詰めなどの工程が細かく複雑である為、実用的ではないものであった。
【0037】
<実施例4>
[膜状素材]
全卵120重量部と砂糖60重量部を泡たて器で攪拌し、ついで牛乳200重量部を少しずつ加えまぜる。さらに予め篩っておいた小麦粉200重量部とベーキングパウダー1.5重量部を加え攪拌した。
図11に示された型のフライパンに油をうすくひいて、上記の生地を適当量流し込み、表裏を焼成する。
[具材]
実施例1と同様の配合と方法で具材を作製した。
[組合せ]
前述の膜状素材を球形の具材の表面に隙間なく付着させ、再度冷蔵雰囲気下に保存し、評価を行った。
【0038】
実施例4は実施例1同様にパーツが2つで形状も単純、貼り付け作業が容易で且つ強度的にも優れたものであり、しかも生地を切り分ける手間も無駄生地も発生せず、さらには膜状素材同士の接触部が焼成時に褐色に呈色しており一見すると野球のボールのような新規の外見を呈し、極めて商品価値の高いものであった。
なお、フライパンの表面に野球のボールの縫い目模様や、サッカーボールのような模様を予め刻んでおくことで、縫い目の付いたよりリアルな野球のボール状の組合せ食品やサッカーボール状の組合せ食品も作製する事ができ、市場での購買力を喚起する形態の組合せ食品を平易な方法で製造することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】既存のフィリングと焼成食品を組合せた組合せ食品の模式図。
【図2】既存のフィリングを焼成食品で覆った組合せの組合せ食品の模式図。
【図3】「柔軟性のある膜状素材」が外部からの力により変形する前と後の形態の模式図、並びに「具材」を「柔軟性のある膜状素材」で覆った形態の模式図。
【図4】「具材」が外部からの力により変形する前と後の形態の模式図、並びに「具材」を「柔軟性のある膜状素材」で覆った場合にそれぞれ強度を相乗し合う状態を示す模式図。
【図5】「具材」の形状と代表的展開図。
【図6】球形の形状を有する「具材」と代表的展開図と組合せた際の付着状態の模式図。
【図7】球形の形状を有する「具材」の展開図。
【図8】比較例1並びに比較例2におけるに膜状素材と具材の組合せ方法の模式図。
【図9】実施例1におけるに膜状素材と具材の組合せ食品のを示す図面に代わる写真。
【図10】実施例1におけるに膜状素材と具材の組合せ食品の断面部を示す図面に代わる写真。
【図11】実施例4の「柔軟性のある膜状素材」を焼成する為のフライパンの形状模式図。
【符号の説明】
【0040】
(a)…ロールケーキの模式図、(b)…ショートケーキの模式図、
(c)…シャルロット・オ・ポワールの模式図、(d)…ズコットの模式図、
(e)…「柔軟性のある膜状素材」が外部からの力により変形する前と後の形態の模式図、
(f)…球形の「具材」を「柔軟性のある膜状素材」で覆った形態の模式図、
(g)…変形を受けた球形の「具材」を「柔軟性のある膜状素材」で覆った形態の模式図、
(h)…「具材」が外部からの力により変形する前と後の形態の模式図、
(i)…組合せ作業の際に、強い保形性のある球形の「具材」表面に「柔軟性のある膜状素材」を具材の形状に沿う形で変形して密着している形態の模式図。
(j)…(i)の組合せ作業の後に、具材が自重にて大きく歪む程度まで保形性を失ったものの、膜状素材の張力により全体として保形性を維持している形態の模式図。
(k)…平面によって構成される立体形状の模式図、(l)…直線によって構成される線分の回転体によってなる立体形状の模式図、
(m)…曲線を有する線分の回転体によってなる立体形状の模式図、
(n)…球形の形状を有する「具材」と舟型を組み合わせた展開図と、組合せた際の付着状態の模式図、
(o)…球形の形状を有する「具材」と渦巻きの帯状の展開図と、組合せた際の付着状態の模式図、
(p)…球形の形状を有する「具材」と鉄亜鈴状の展開図と、組合せた際の付着状態の模式図、
(q)…鉄亜鈴状の展開図(実施例1)、
(r)…舟型を組み合わせた展開図(実施例2)、
(s)…渦巻きの帯状の展開図(実施例3)、
(t)…三角形を組み合わせた展開図(比較例1)、
(u)…長方形を組み合わせた展開図(比較例2)、
(v)…比較例1における成型工程の模式図、
(w)…比較例2における成型工程の模式図、
(x)…比較例1・比較例2における成型工程の模式図、
l1…伸張前の寸法、l2…伸張後の寸法、St…外部からの力、
d…膜状素材の厚み、D…具材の短径(球形の場合はD=Daで直径に相当する)、
Da…具材の短径、
h1…自重による変形前の寸法、h2…自重による変形後の寸法、Sw…外部からの力、
1…具材表面に密着した膜状素材の具材の変形に抗じて発生している張力
2…保形性が弱まった具材の自重による変形を引き起こそうとする力
【技術分野】
【0001】
本発明は、具材を柔軟性のある膜状素材で包んだ、特異な形状の組合せ食品及びその製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、市場には様々な食品が存在するが、中でも組合せ食品、特にその中でもフィリングと焼成食品を組合せた組合せ食品は非常にポピュラーなものであった。
一例を挙げると、焼成食品としてケーキのスポンジによりフィリングであるクリームを巻いたロールケーキ(図1−a)やショートケーキ(図1−b)などは代表的なものである。
【0003】
しかしながら、組合せ食品に対する消費者の嗜好としては、風味はもちろん、外見的な要因も大きく、またケーキのスポンジのような柔軟な焼成食品とフィリングとの組合せ食品はサンドやロールといった比較的典型的なものが殆どであるため、組合せ食品の形状を特徴的なものにすることへの市場での需要は高く、特に最近の様々な嗜好の多様化に伴う市場の要求により多種多様なものが要求されるようになってきていた。
【0004】
組合せ食品の形状を特異なものにする方法は以前にも考案されている。
例えばビスキュイと呼ばれる焼き菓子を予め底部は円形に、側面部は長方形に成型して焼成し、それぞれを円筒状の金型の底面と側面に隙間無く敷き込み、ビスキュイで円筒状の金型の側面と底面が覆い尽くされた凹状の部位にババロアを流し入れ、最後にふたの部分を被せて、冷やし固める方法にて作成される、具材を焼成食品で全面を覆った円筒状の組合せ食品の製造法(「シャルロット・オ・ポワール」と称される・図2−c)が考案されている。(例えば非特許文献1)
また、ジェノワーズやスポンジといった焼き菓子を予め焼成した上でスライスし、さらに5mm程度に切り分け、半球状のボールの凹部の面に隙間無く敷き詰めたものにバニラムース等の具材を流し込み、最後にふたの部分にあたる焼き菓子を被せて冷やし固める方法にて作成される、具材を焼成食品で全面を覆った半球状の組合せ食品の製造法(「シェプレーム・ア・ラ・ヴァニーユ」や「ズコット」と称される・図2−d)(例えば非特許文献2・非特許文献3)や「ボンブ型」と呼ばれる半球状の焼成型で作成したスポンジ生地をスライスしてクリームを挟んだ「ボンブケーキ」が考案されている。
しかしながら上記の方法は作業がすべて手作業で複雑であり、大量生産的な手法によって作製するのが極めて困難であった。
また、予め半球状の容器にスポンジ生地を敷き詰めて蒸しあげることではじめから半球状凹状のスポンジ容器を作成し、アイスクリームを詰めてスポンジでふたをするという方法にて作製される、具材を焼成食品で全面を覆った半球状の組合せ食品の製造法が考案されている。(例えば特許文献1)
【0005】
しかしながら上記方法にしても具材を覆った食品は半球の形状に合うように予め生地の段階から成型したのちに加熱加工工程に供するため、当初生地を敷き詰める容器の形状に依存するため煩雑で汎用性に欠け、大量生産には向かないものであった。
【0006】
よって、組合せ食品の形状を従来にない特徴的な外観形状を呈するものにすることへの市場からの要望は極めて強かった。
【非特許文献1】「別冊家庭画報・一流シェフが手ほどきする人気のケーキ」(30〜31頁:286〜287頁、石川貴之 編、株式会社世界文化社 1996年10月1日発行)
【非特許文献2】「別冊家庭画報・一流シェフが手ほどきする人気のケーキ」(146〜147頁:286〜287頁、石川貴之 編、株式会社世界文化社 1996年10月1日発行)
【非特許文献3】「別冊家庭画報・初心者でもラクラクできる人気シェフのケーキ教室」(254〜256頁:286〜287頁、石川貴之 編、株式会社世界文化社 1999年11月20日発行)
【特許文献1】特開平9−299036号公報(第1−3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、平易な方法でしかも従来にない新規な形状の組合せ食品を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記目的を達成する為に鋭意研究を行った結果、具材を柔軟性のある膜状素材で包むことで、比較的平易かつ正確に、特異な形状の組合せ食品を製造可能である事を見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、(1)としては形状が球形、楕円球、ラグビーボール型または紡錘形である具材を、柔軟性のある膜状素材にて包んだ組合せ食品であり、(2)としては膜状素材が具材の展開図に相当し、かつ平面に展開する事が可能である(1)記載の組合せ食品であり、(3)としては膜状素材が野球ボール外皮展開図に代表される鉄亜鈴型である(1)または(2)記載の組合せ食品であり、(4)としては膜状素材が焼成食品であることを特徴とする(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の組合せ食品であり、(5)としては膜状素材が焼成されたスポンジケーキまたはパンまたはドラヤキの皮またはクレープである(4)記載の組合せ食品であり、(6)としては具材と膜状素材を組み合わせる作業時に、具材が10℃以下である(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の組合せ食品の製造法であり、(7)としては具材が凍結したフィリングまたは蛋白食品である(1)ないし(6)のいずれか1項に記載の組合せ食品の製造法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、例えば円筒や円錐の側面とは異なり、球や楕円球、ラグビーボール(紡錘形)に代表される曲面を有する具材に対して、柔軟性のある膜状素材を皺・弛み無く全表面に密着させるかそれに準ずる程度に密接な状態で包含させる事を、平易且つ比較的平易かつ正確に行う事が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において言うところの「柔軟性のある膜状素材」とは曲がるが伸びにくい食品素材であり、その特性を有する食品素材であれば特に限定はされないが、一例としては、スポンジケーキ、パン、どら焼きの皮、クレープ、ライスペーパーや湯葉などが挙げられる。
また、その「柔軟性」を規定するにおいて、外部からの力により破断することなく伸張する伸張量((伸張後の寸法)−(伸張前の寸法))と原寸法との比率を限界伸張率(伸張率((%)=(伸張量)/(伸張前の寸法)×100、限界伸張率は破断することなく伸張する限界における伸張率をさす。図3−e参照)とおいた場合、下限としては3%以上、望ましくは5%以上であるものが好ましく、上限は特に限定はされないが通常50%以下、より望ましくは30%以下であることが好ましい。
【0011】
限界伸張率の下限が3%未満の食品素材は外部からの力により変形しにくく、無理に変形させると破断するため、具材(後述)の特異な形状に沿わせて変形させることができない。限界伸張率の低い食品としては、外部からの力によりきわめて低い伸張率で破断するものであり、一例として乾燥状態の海苔などが挙げられる。また乾燥した状態でのクッキー・固焼き煎餅といったものは柔軟性すらなく、折り曲げなどの外部からの力による変形により、構造が不可逆的に破壊されるものも当然、本発明で言うところの「柔軟性のある膜状素材」にはあたらない。
【0012】
限界伸張率の上限が必要以上に大きい場合は変形の自由度が大きい為、どんな形状の具材の表面に沿って変形でき、本願発明を用いる必要が無い。限界伸張率が50%以下の食品素材を用いた場合は、従来では困難であった組合せ作業が容易になるためより効果的である。
【0013】
さらに、膜状素材が伸張といった変形の後、外部からの力の大きさが変化した場合に速やかにそれに即した伸張率になる事、即ち応答性が高い事が望ましい。応答性が悪い(ない)状態とは、例えば外部からの力により伸張した膜状素材の外部からの力が減少あるいは無くなった場合に伸張した状態から戻りにくい(もどらない)状態を示す。
【0014】
膜状素材の上記の機能は食品としては、組合せ作業の際に上記規定を満たしていれば特に限定はされない。上記例示の湯葉やライスペーパーなどは水分量によりその限界膨張率がことなり、乾燥した状態では限界伸張率は小さく、本発明における膜状素材として望ましいものではないが、適当な加水により規定の限界伸張率と柔軟性を有する素材となる。また、組合せ作業の後に規定の伸張率から逸脱しても構わない。
【0015】
応答性が悪い場合、膜状素材が伸びてたるむ若しくは皺のよった状態から復元しにくい。一例としては外部からの力により伸張したものの、外部からの張率が復元しにくい、餅のようなものが挙げられる。加えて、膜状素材が外部からの力を受けている変形をしている間に徐々に破断したりしないことが好ましい。
【0016】
膜状素材の厚さについては特に限定はされないが、具材の曲率が極端に大きい、または膜状素材の厚さが極端に厚い場合、具材に接している部分と外部に露出している部分の寸法差が大きくなるため、外部露出部分にひび割れ・破断を生じる。
【0017】
膜状素材の厚さの上限は上記組み合わせる対象の具材の形状寸法にもよるが、具材の短径をDaとした場合、望ましくは0.5Da以下、より望ましくは0.4Da以下、より具体的には具材の短径が5cmである場合は、組み合わせる膜状素材の厚さは望ましくは2.5cm以下、より望ましくは2cm以下である事が好ましい。また、下限に関しては特に強度的に具材を包含する事が可能であれば制限は無く、薄く焼いたクレープなど1mm以下であっても特に問題はない。(図3−f、図3−g参照)
【0018】
「具材」とは前記「柔軟性のある膜状素材」との組合せ作業の際に自重にてその形状が大きく歪まない程度のものであれば特に限定はされない。
【0019】
大きく歪まない程度とは、自重にてつぶれる事によって生じる寸法差である自重変形量((自重による変形前の寸法)−(自重による変形後の寸法))と原寸法との比率を自重変形率(%)(=(自重変形量/(自重による変形前の寸法)×100)とした場合(図4−h参照)、自重変形率が30%以下、望ましくは20%以下を保持できる程度であることが好ましく、さらには変形しにくいほど望ましい。この自重変形率はおもに具材を構成する材質の物理的な強度と具材自体の大きさに影響を受ける。一例としては同じ材質であり、かつ大きさの異なる相似形状の具財同士を比較すると大きいものはより自重による変形を受けやすい。逆に、同じ形状・寸法であっても具材の物理的強度が異なると、より構造の脆弱なほうが自重による変形を受けやすい。本願においては具材の大きさや強度には特に限定はされず、どのような大きさや強度であっても上記特定の自重変形率の範囲の規定を満たしていれば構わない。
【0020】
また、具材の保形性は組合せ作業の際に発現していれば特にそれ以外の時点では必要ない。もちろん具材が堅い状態で喫食に供することもかまわないが、特に喫食事に具材が柔らかい必要がある場合、作業時に具材に保形性を付与する手段をとることが望ましい。
具材に保形性を付与する手段としては特に限定はされないが、一例としては低温にすることで保形性を持たせることが可能である。室温では脆弱な構造のものも、低温にするにつれ構造が強くなり、作業に耐えうる程度の保形性を付与できる。特に限定はされないが一例としては、ゼリーやババロア、ムース、あんまんの具に代表されるような粒餡や練餡、胡麻餡、肉まんの具に代表されるよなひき肉や、卵、小麦粉といった動・植物由来の蛋白食品などが挙げられ、作業温度についても10℃以下にする事でのゲル構造が強化され、組合せ作業がより効率的になる。
また、更に低温にして氷点下まで下げると水相も凍結するため、より組合せ作業をする上で望ましい。一例としてはフィリング、アイスクリームなどが挙げられる。
【0021】
組合せ形状は具材を膜状素材で包含する形状を指し、包含は具材の表面に密着、或は密着に準ずる程度に密接な状態にする事が望ましい。
【0022】
具材の材料についても特に制限はないが、膜状素材を表面に密着、あるいは密着に準ずる程度に密接な状態にする際に、具材の表面が付着性のある物質(一例として液糖など)で一部または全体が覆われていることが好ましく、さらに望ましくは具材自体が付着力を有するものである事が望ましい。その付着力は具材が低温にて保形性を付与されている場合でも、膜状素材との組合せ作業の際に表面が一部溶け出してくることで発揮されることでも構わない。
【0023】
また、具材の保形性を示す指標として示される「自重にてその形状が大きく歪まない程度」は組合せ作業の際に発揮されていればよく、喫食事などはその限りではない。
【0024】
その場合は具材と膜状素材が密着、或は密着に準ずる程度に密接な状態にあることで、それぞれの物理的な強度が相乗し合うことが好ましい。一例としては、組合せ作業時には具材は強い保形性を有していたため、膜状素材はその具材表面に具材の形状に沿う形で変形して密着(図4−i参照)、その後具材は昇温などのため自重にて大きく歪む程度まで保形性が弱まったとしても、膜状素材が具材表面に密着しており、その膜状素材の張力により保形性を維持し、極端に喫食に耐えることの出来ないような変形を引き起こさない状態が挙げられる(図4−j参照)。
【0025】
具材の形状には制限が無いものの、平面によって構成される立体形状(一例として立方体や直方体・図5−k参照)や、直線によって構成される線分の回転体によってなる立体形状(一例としては円筒・円錐の側面・図5−l参照)はその展開図を平面上に容易く展開できるため、限界伸張率の下限が3%未満の食品素材、すなわち、海苔のような無理に変形させると破断する素材であっても、容易に皺・弛み無く全表面に密着させる事が可能であり、本願発明を用いるまでもない。
【0026】
一方、具材の形状が曲線を有する線分の回転体によってなる立体形状(一例としては球形または楕円球またはラグビーボール型または紡錘形・図5−m参照)の展開図は平面状に展開することが困難であり、従来の方法では組合せ作業を行うことが極めて困難であったが、本願発明を用いることで比較的容易に組合せ作業が可能であり、新規な形状であるなどの視覚的な効果などのため、用いる具材の形状としてはより好ましい。
【0027】
展開された膜状素材の形状は上記具材表面に膜状素材の限界伸張率以下の伸張にて密着、或は密着に準ずる程度に密接な状態にできさえすれば特に限定されない。一例を挙げると、世界地図で言うところの舟型多円錐図法(経度30度ごとに12の正距多円錐図法で投影し並べたもの)のように数枚から十数枚の舟型を用いる方法(図6−n参照)や、渦巻きの帯状(図6−o参照)などが考えられるが、野球のボールの外皮展開図に代表される鉄亜鈴状の展開図(図6−p参照)が作業効率などから考えるとより好ましい。
【0028】
また上記条件をみたすそれぞれの具材・膜状素材を用いる事以外には特に限定はされず、工程や生地組成、焼成温度等は既存のケーキの常法によって製造する事が可能である。
【実施例】
【0029】
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明の精神は以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、%及び部は重量基準を意味する。
<実施例1・実施例2・実施例3>
【0030】
[膜状素材]
【0031】
全卵200重量部、卵黄40重量部をほぐし、砂糖60重量部を加えて、湯せんにかけ、ミキサーで泡立てる。充分泡立てたら、水飴40重量部を加えてさらにしっかり泡立てる。ついで薄力粉150重量部とベーキングパウダー2重量部を2回に分けてふるい入れ、泡をつぶさないように混ぜ込む。別のボウルで作製したメレンゲ(卵白120重量部と砂糖60重量部)を前記の生地に混ぜ込み、天板に流し込み焼成条件190℃/200℃で10分焼成した。
焼成した生地を表1に示された形状に切り分けた。
【0032】
[具材]
卵黄100重量部、全卵120重量部、グラニュー糖50重量部をすり混ぜ、加温したフルーツピューレ(タカ食品工業株式会社製)200重量部を合わせた。ついで、粉ゼラチン(ゼライス株式会社製)2.0重量部を水10重量部で膨潤、溶解させたものを合わせ、最後に別に用意したフィリング(製品名:アートピアピュアレモア、不二製油株式会社製)50重量部をポマード状になるまで攪拌したものを加え、均一になるように混合し、半球状の型(株式会社マトファー・ジャパン)に詰めて冷凍したのち抜き出し、半球2個を合わせ球形にした。
【0033】
[組合せ]
膜状素材を球形の具材の表面に隙間なく付着させ、再度冷蔵雰囲気下に保存し、評価を行った。
【0034】
<比較例1・比較例2>
[膜状素材]
実施例1と同様の配合と方法で膜状素材を作製し、表1に示された形状に切り分けた。
[具材]
型への流し込みと冷凍工程以外は実施例1と同様の配合と方法で具材を作製した。
[組合せ]
前述の形状に切り分けた膜状素材を半球状の型の表面に隙間無く敷き詰めた上に具材を流し込んで成型、同様のものをもう一つ作製して合わせて球形にした。(図8−x参照)
[表1]
【0035】
実施例1・実施例2・実施例3は具材と膜状素材の組合せが比較的容易く、また出来上がった組合せ食品は球形で極めて新規性の高いものであった。
ただ、実施例2は膜状素材に鋭角部があり、その鋭角部が組み合わせた際に球形具材の表面で一点に集まり強度的にやや弱い点、また張り合わせる膜状素材のパーツが多いため貼り付け作業がやや煩雑である点が見られるし、実施例3は膜状素材が長く膜状素材同士の接触部が長く強度的にやや弱い点、また膜状素材の形状が複雑で切り分けの際に無駄な生地が多く発生する難点はあるものの、双方とも十分に作業に耐える事ができるものであった。
【0036】
特に実施例1はパーツが2つのみで形状も単純で、貼り付け作業がきわめて容易であり、かつ切り分け時の無駄生地も少なく、膜状素材の鋭角部の集中や膜状素材同士の接触部が冗長になることもなく強度的にも優れたものであった。(図9・図10参照)
一方、比較例1・比較例2は従来のズコットなどの菓子の製造方法と基本的には変わらないのではあるが、膜状素材の型への敷き詰め工程が複雑であり、また半球の場合でこそ保形性を有していたものの、球形にした場合は強度的に弱く、扁平になったり、膜状素材が剥れ易かったりした。特に従来のズコットは大きいものが多いが、目的とする球形の組合せ食品が小さいほどその敷き詰めなどの工程が細かく複雑である為、実用的ではないものであった。
【0037】
<実施例4>
[膜状素材]
全卵120重量部と砂糖60重量部を泡たて器で攪拌し、ついで牛乳200重量部を少しずつ加えまぜる。さらに予め篩っておいた小麦粉200重量部とベーキングパウダー1.5重量部を加え攪拌した。
図11に示された型のフライパンに油をうすくひいて、上記の生地を適当量流し込み、表裏を焼成する。
[具材]
実施例1と同様の配合と方法で具材を作製した。
[組合せ]
前述の膜状素材を球形の具材の表面に隙間なく付着させ、再度冷蔵雰囲気下に保存し、評価を行った。
【0038】
実施例4は実施例1同様にパーツが2つで形状も単純、貼り付け作業が容易で且つ強度的にも優れたものであり、しかも生地を切り分ける手間も無駄生地も発生せず、さらには膜状素材同士の接触部が焼成時に褐色に呈色しており一見すると野球のボールのような新規の外見を呈し、極めて商品価値の高いものであった。
なお、フライパンの表面に野球のボールの縫い目模様や、サッカーボールのような模様を予め刻んでおくことで、縫い目の付いたよりリアルな野球のボール状の組合せ食品やサッカーボール状の組合せ食品も作製する事ができ、市場での購買力を喚起する形態の組合せ食品を平易な方法で製造することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】既存のフィリングと焼成食品を組合せた組合せ食品の模式図。
【図2】既存のフィリングを焼成食品で覆った組合せの組合せ食品の模式図。
【図3】「柔軟性のある膜状素材」が外部からの力により変形する前と後の形態の模式図、並びに「具材」を「柔軟性のある膜状素材」で覆った形態の模式図。
【図4】「具材」が外部からの力により変形する前と後の形態の模式図、並びに「具材」を「柔軟性のある膜状素材」で覆った場合にそれぞれ強度を相乗し合う状態を示す模式図。
【図5】「具材」の形状と代表的展開図。
【図6】球形の形状を有する「具材」と代表的展開図と組合せた際の付着状態の模式図。
【図7】球形の形状を有する「具材」の展開図。
【図8】比較例1並びに比較例2におけるに膜状素材と具材の組合せ方法の模式図。
【図9】実施例1におけるに膜状素材と具材の組合せ食品のを示す図面に代わる写真。
【図10】実施例1におけるに膜状素材と具材の組合せ食品の断面部を示す図面に代わる写真。
【図11】実施例4の「柔軟性のある膜状素材」を焼成する為のフライパンの形状模式図。
【符号の説明】
【0040】
(a)…ロールケーキの模式図、(b)…ショートケーキの模式図、
(c)…シャルロット・オ・ポワールの模式図、(d)…ズコットの模式図、
(e)…「柔軟性のある膜状素材」が外部からの力により変形する前と後の形態の模式図、
(f)…球形の「具材」を「柔軟性のある膜状素材」で覆った形態の模式図、
(g)…変形を受けた球形の「具材」を「柔軟性のある膜状素材」で覆った形態の模式図、
(h)…「具材」が外部からの力により変形する前と後の形態の模式図、
(i)…組合せ作業の際に、強い保形性のある球形の「具材」表面に「柔軟性のある膜状素材」を具材の形状に沿う形で変形して密着している形態の模式図。
(j)…(i)の組合せ作業の後に、具材が自重にて大きく歪む程度まで保形性を失ったものの、膜状素材の張力により全体として保形性を維持している形態の模式図。
(k)…平面によって構成される立体形状の模式図、(l)…直線によって構成される線分の回転体によってなる立体形状の模式図、
(m)…曲線を有する線分の回転体によってなる立体形状の模式図、
(n)…球形の形状を有する「具材」と舟型を組み合わせた展開図と、組合せた際の付着状態の模式図、
(o)…球形の形状を有する「具材」と渦巻きの帯状の展開図と、組合せた際の付着状態の模式図、
(p)…球形の形状を有する「具材」と鉄亜鈴状の展開図と、組合せた際の付着状態の模式図、
(q)…鉄亜鈴状の展開図(実施例1)、
(r)…舟型を組み合わせた展開図(実施例2)、
(s)…渦巻きの帯状の展開図(実施例3)、
(t)…三角形を組み合わせた展開図(比較例1)、
(u)…長方形を組み合わせた展開図(比較例2)、
(v)…比較例1における成型工程の模式図、
(w)…比較例2における成型工程の模式図、
(x)…比較例1・比較例2における成型工程の模式図、
l1…伸張前の寸法、l2…伸張後の寸法、St…外部からの力、
d…膜状素材の厚み、D…具材の短径(球形の場合はD=Daで直径に相当する)、
Da…具材の短径、
h1…自重による変形前の寸法、h2…自重による変形後の寸法、Sw…外部からの力、
1…具材表面に密着した膜状素材の具材の変形に抗じて発生している張力
2…保形性が弱まった具材の自重による変形を引き起こそうとする力
【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状が球形、楕円球、ラグビーボール型または紡錘形である具材を、柔軟性のある膜状素材にて包んだ組合せ食品。
【請求項2】
膜状素材が具材の展開図に相当し、かつ平面に展開する事が可能である請求項1記載の組合せ食品。
【請求項3】
膜状素材が野球ボール外皮展開図に代表される鉄亜鈴型である請求項1または請求項2記載の組合せ食品。
【請求項4】
膜状素材が焼成食品であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の組合せ食品。
【請求項5】
膜状素材が焼成されたスポンジケーキまたはパンまたはドラヤキの皮またはクレープである請求項4記載の組合せ食品。
【請求項6】
具材と膜状素材を組み合わせる作業時に、具材が10℃以下である請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の組合せ食品の製造法。
【請求項7】
具材が凍結したフィリングまたは蛋白食品である請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の組合せ食品の製造法。
【請求項1】
形状が球形、楕円球、ラグビーボール型または紡錘形である具材を、柔軟性のある膜状素材にて包んだ組合せ食品。
【請求項2】
膜状素材が具材の展開図に相当し、かつ平面に展開する事が可能である請求項1記載の組合せ食品。
【請求項3】
膜状素材が野球ボール外皮展開図に代表される鉄亜鈴型である請求項1または請求項2記載の組合せ食品。
【請求項4】
膜状素材が焼成食品であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の組合せ食品。
【請求項5】
膜状素材が焼成されたスポンジケーキまたはパンまたはドラヤキの皮またはクレープである請求項4記載の組合せ食品。
【請求項6】
具材と膜状素材を組み合わせる作業時に、具材が10℃以下である請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の組合せ食品の製造法。
【請求項7】
具材が凍結したフィリングまたは蛋白食品である請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の組合せ食品の製造法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−175011(P2007−175011A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378741(P2005−378741)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000236768)不二製油株式会社 (386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000236768)不二製油株式会社 (386)
【Fターム(参考)】
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