説明

膜状表示体を有する棒状タグ

【課題】 種々の個体に装着することができ、しかも多大な費用をかけることなく、必要十分な情報を表示しておくことができるようにする。
【解決手段】 本体となるピン2と、ピン2の一端寄り部分に巻き付けられた方形の膜状表示体3等とを有する棒状タグ1であって、ピン2は、例えばナイロン6やナイロン66等の合成樹脂によって成形され、膜状表示体3は、例えば市販のレーザーマーキングフィルムを所定サイズに切断して構成したものであって、裏面にはリピール用微弱粘着剤が塗布されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の生態調査や魚介類の流通過程等において個体識別に用いられる棒状タグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば牛や豚等の家畜を識別するためのタグとしては、家畜の個体情報が表示された小形の表示板と、該表示板を家畜の耳に装着するための挟止部とを備えた耳標が広く知られている。
【0003】
また、近年では、個体に係止されるT字バー部と、該T字バー部の軸部を延設してなる支持ピン部と、個体情報が表示されたプレートと、該プレートを前記支持ピン部に連結するための連結部材とを備えた表示タグも知れられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−209975
【特許文献2】特開2010−224511
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来のタグのうち、前者の耳識は基本的に牛や豚といった家畜の耳に付ける構造となっているため、魚介類等の他の個体に装着することができず、用途が限定的であるという欠点があった。
【0006】
一方、後者の表示タグは前記耳標と異なり、種々の個体に装着することができる構造のものであるが、小形のプレートに表示できる個体情報の情報量が限定であるという不都合があった。また、個体情報の情報量を多くするためにプレートの外形を大きくした場合には、例えば魚類の生態調査では、調査対象の魚の回遊時にタグの抵抗が大きくなり、そのため魚体に負荷がかかるおそれがあった。
【0007】
また、最近では、個体情報を多く管理するためにICチップすることも行われているが、この場合、システムの管理費およびICチップのコストがかかることから、運用管理に多大な費用が必要になるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、種々の個体に装着することができ、しかも多大な費用をかけることなく、必要十分な情報を表示しておくことができる棒状タグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の本発明は、ピンの一側寄り部分に弱粘着性接着剤を介して膜状表示体が展開可能に巻き付けられた棒状タグである。
【0010】
請求項2記載の本発明は、前記請求項1記載の棒状タグについて、膜状表示体がレーザーマーキング用フィルムであって、膜状表示体にレーザーによる樹脂発色印字が施されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3記載の本発明は、前記請求項1または請求項2記載の棒状タグについて、ピンに巻き付けられた膜状表示体の外側に円筒状カバーが着脱自在に装着されたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項4記載の本発明は、前記請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項記載の棒状タグについて、円筒状カバーの外側に更に熱収縮性チューブが被着されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の本発明に係る棒状タグは、ピンの一側寄り部分に弱粘着性接着剤を介して膜状表示体が展開可能に巻き付けられた構造であるため、膜状表示体に多くの情報を表示しておくことができ、しかも該膜状表示体がピンに巻き付けられた状態においては、回遊魚等の移動時の抵抗になるおそれもなく、また回遊魚の捕獲時においては、前記膜状表示体を展開するだけでその情報を読むことができる。更に、本発明の棒状タグは、コスト的にも安価に製造することができるという利点がある。
【0014】
請求項2記載の本発明に係る棒状タグは、膜状表示体がレーザーマーキング用フィルムであって、膜状表示体にレーザーによる樹脂発色印字が施されている構造であるため、膜状表示体に表された情報が、にじんだり、流れ落ちたり、退色したりすることがなく、より確実な情報表示が可能となる。
【0015】
請求項3および請求項4記載の本発明に係る棒状タグによれば、前記膜状表示体をより強固にピンに巻着させておくことができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1に係る棒状タグの分解正面図である。
【図2】実施形態1に係る棒状タグの正面図である。
【図3】実施形態2に係る棒状タグであって、(a)がピン、(b)がピンに膜状表示体が巻き付けられ、カバーケースが装着される前の状態を示し、(c)最終的にカバーケースが装着された状態を示し、(d)がその横断面図である。
【図4】実施形態3に係る棒状タグであって、(a)がピン、(b)がピンに膜状表示体が巻き付けられ、カバーケースが装着される前の状態を示し、(c)カバーケースが装着された後、熱収縮チューブが被着される前の状態を示し、(d)が熱収縮チューブが被着された状態を示し、(e)その横断面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を図面にしたがって説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0018】
(実施形態1)
【0019】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る棒状タグ1は、本体となるピン2と、ピン2の一端寄り部分に巻き付けられた方形の膜状表示体3とを有するものである。
【0020】
ピン2は、例えばナイロン6やナイロン66等の合成樹脂によって成形され、先端部には小球体2aが一体に成形されている。該小球体2aは、当該棒状タグ1を市販のガンを用いて魚体等の標識対象に打ち込むことによって変形し、ピン2と直角方向に左右一対の枝状部として所定長だけ突出し、該枝状部によって当該棒状タグ1が魚体等の標識対象内に係止されるのである。
膜状表示体3は、例えば市販のレーザーマーキングフィルムを所定サイズに切断して構成したものであって、表面3bにはリピール用微弱粘着剤が塗布されており、また表面3bの上縁部分3aとピン2の一端寄り部分とが熱や接着剤によって結合されている。そして、該膜状表示体3は前述したように、表面にリピール用微弱粘着剤が塗布されているため、ピン2への巻き付け過程で前記リピール用微弱粘着剤の接着力によって、膜状表示体3の表面3bと裏面3cとが接着されることとなる。
【0021】
前記膜状表示体3の表面には、生態調査用表示として、「標識魚採捕協力」の文字の下に「1.採捕年月日」「2.採捕場所」「3.使用した漁具」「4.全長、体重」「5.採捕者の氏名、住所」といった連絡情報4と、連絡先5と、連絡先の情報等にアクセスするためのQRコード6がレーザーによる樹脂発色印字によって表示されている。
【0022】
本実施形態に係る棒状タグ1の使用方法について述べると、棒状タグ1は、従来の棒状タグと同様、市販のガンを用いて魚体等の標識対象に装着することができ、そして、タグ1が装着された魚を採捕した漁民や釣り人は、タグ1のピン2に巻き付けられた膜状表示体3を広げて、その表面3bに記載された連絡事項を読んで、その情報を連絡先に通報することとなる。
【0023】
(実施形態2)
【0024】
図3に示すように、本実施形態に係る棒状タグ21は、本体となるピン22と、ピン22の一端寄り部分に巻き付けられた方形の膜状表示体23と、膜状表示体23を被覆する透明なカバーケース24とを有するものである。
【0025】
ピン22は前述した実施形態1と同様のものである。また、膜状表示体23も、前記実施形態1における膜状表示体3と同様のものである。なお、膜状表示体23の裏面には当該膜状表示体23がピン22に巻き付けられた状態において、「開けて下さい OPEN」の文字が表示されるようになされている。またこの点は他の実施形態における膜状表示体においても同様である。
【0026】
カバーケース24は、透明な合成樹脂製であって、直径方向に二分割された半体24A・24Bで構成された円筒状であって、半体24A・24B同士は、それらの一側の縁部同士がヒンジで連結され、他側の縁部同士が凹凸嵌合する構造となされている。
【0027】
本実施形態に係る棒状タグ21を製造する場合、先ず図3(a)に示すピン22に図3(b)に示すように、膜状表示体23を巻き付け、更にその外側にカバーケース24が装着されている(図3c・図3d)。そして、当該タグ21が装着された魚を捕獲した場合、先ずカバーケース24を開けて取り外し、そして、ピン22に巻き付けられた膜状表示体23を展開することで、連絡事項を読むこととなる。
【0028】
(実施形態3)
【0029】
図4に示すように、本実施形態に係る棒状タグ31は、本体となるピン32と、ピン32の一端寄り部分に巻き付けられた方形の膜状表示体33と、膜状表示体33を被覆する透明なカバーケース34と、カバーケース34の外側に被着される透明な熱収縮性チューブ35を有するものである。
【0030】
ピン22および膜状表示体23は前述した実施形態1と同様のものである。また、カバーケース34は前記実施形態2におけるカバーケース24と同様のものである。
【0031】
本実施形態に係る棒状タグ31を製造する場合、先ず図4(a)に示すピン32に図4(b)に示すように、膜状表示体33を巻き付け、次にその外側にカバーケース34を装着せしめ、更にその外側に熱収縮性チューブ35を嵌め被せて、該チューブ35を加熱することにより、該チューブ35が収縮してその内側のカバーケース34に密着した状態となる。
【0032】
そして、当該タグ31が装着された魚を捕獲した場合、先ず表面の熱収縮性チューブ35を破った後、カバーケース34を開けて取り外し、そして、ピン32に巻き付けられた膜状表示体33を展開することで、連絡事項を読むこととなる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る棒状タグは、従来のタグと同様に市販のガンを用いて簡単に標識対象に装着することができ、しかも多くの連絡情報を表示することができ、更にコスト的にも安価であるため、幅広い利用が期待できる。
【符号の説明】
【0034】
1 棒状タグ
2 ピン
3 膜状表示体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピンの一側寄り部分に弱粘着性接着剤を介して膜状表示体が展開可能に巻き付けられた、棒状タグ。
【請求項2】
膜状表示体がレーザーマーキング用フィルムであって、膜状表示体にレーザーによる樹脂発色印字が施されている、請求項1記載の棒状タグ。
【請求項3】
ピンに巻き付けられた膜状表示体の外側に円筒状カバーが着脱自在に装着された、請求項1または請求項2記載の棒状タグ。
【請求項4】
円筒状カバーの外側に更に熱収縮性チューブが被着された、請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項記載の棒状タグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−137657(P2012−137657A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290552(P2010−290552)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(592219684)株式会社イー・ピー・アイ (21)
【Fターム(参考)】