膜移動方法および器具
濃縮水を保持するフィルタ膜(130)を試薬パッド(310)に移動するための方法であって、膜は、肩部(121)および肩部から突出するスカート(122)を有する支持フレーム(120)内に載置され、パッドは前記スカートに対して相補的な形状のカセット(300)上に載置されており、スカートは肩部によって形成され当接するまでカセット上で密封摺動するようになっており、本方法は、カセット上に膜支持フレームのスカートを密封係合させるステップと、膜が、その頂点がパッドを向くドームの形状を取るように、カセットと膜支持フレームとの間に圧力差を確立するステップと、圧力差を維持しながら、ドームの端部とパッドとの間に接触が確立されるまでスカートをカセット上で摺動させるためにフレームに対して力を加えるステップと、圧力差を維持しながら肩部によって形成され当接するまでフレームを下向きに動かすために、フレームに対する力を維持するステップとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には液体の微生物学的試験の分野に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、膜ろ過と称される方法に関する。本方法は、多孔性膜上で液体試料をろ過すること、および、その後膜をゲル成長培地上に堆積させることから成る。この組立体は次に、ろ過の間膜上に保持される試料の微生物が肉眼に見えるほど十分に成長することが可能であるようにインキュベートされる。この単純な方法は、試料内に存在する微生物が計数可能となり、したがってその汚染度を判定することを可能にする。
【背景技術】
【0003】
この方法が実施されることを可能にするフィルタ膜デバイスが既知である。
【0004】
仏国特許第2558847号明細書は、試料を収容するための管状スリーブを有するフィルタデバイスを記載しており、その基部は、フィルタ膜によって構成され、これはその膜のための保持フレームを形成する雌端部接続部においてスリーブの端部に固定され、成長培地を収容する容器と協働するようになっている。ろ過が実行されると、スリーブの対向端上に流体密封カバーが配置され、その効果は、スリーブ内に少量の空気を圧縮して膜に押し付けることであり、この膜はその後スリーブの外側に頂点を向けるドームの形状を取る。その後スリーブは成長培地上に配置され、膜はその中心から外側に向かって成長培地と接触するようになり、それによって気泡形成の危険性が最小限に抑えられる。
【0005】
膜が成長培地と接触すると、スリーブは膜を支える端部接続部から分離されることができる。端部接続部は次に、保護カバーによって提供され、その後、組立体がインキュベートされる。
【0006】
実際には、膜が乾燥状態から湿潤状態に移行すると、膜の表面積は増大する。これはろ過ステップまでさらに起こることである。さらに、その後その上に膜が堆積される成長培地は、膜の方に頂点を向けるドームの形状を有する。したがって、インキュベーションにおいて、膜は成長培地と接触してクリープによって変形し、その表面積は、ろ過ステップの完了時に得られるものと比較してさらに増大する。
【0007】
特定の微生物分析において、膜をインキュベートした後に膜に試薬を与えることが必要である。例えば、これは、顕現試薬であり得る。このために、実質的に平坦なパッドが使用され、これは、その上に膜を堆積させる前に選択された試薬を含浸され、これは事前に成長培地から分離されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】仏国特許第2558847号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
実際には、これはいくつかの問題を呈する、すなわち:
ろ過およびインキュベーションに加えて、膜の表面積が試薬パッドの表面積よりも大きく、
膜の曲率半径とパッドの曲率半径とが一致せず、
スリーブがもはや適切な場所になく、それゆえもはや膜に、頂点が外側を向いたドームの形状を与えるためにさらに圧力を加えることが可能でなく、
外気によって起こり得る汚染を回避するためにインキュベーションの前に付着されるカバーを除去することができない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、実質的に平坦なパッドによって、ろ過およびインキュベーション後に変形される膜に試薬が与えられることを可能にするために、これらの問題を克服することを目的とする。その目的のために、本発明は、濃縮水を保持するフィルタ膜を試薬パッドまで移動するための方法を提供し、膜は、肩部および肩部から突出するスカートを有する支持フレーム内に載置され、パッドは前記スカートに対して相補的な形状のカセット上に載置されており、スカートは肩部によって形成され当接するまでカセット上で密封摺動するようになっており、本方法は、カセット上に膜支持フレームのスカートを密封係合させるステップと、膜が、その頂点がパッドを向くドームの形状を取るように、カセットと膜支持フレームとの間に圧力差を確立するステップと、圧力差を維持しながら、ドームの端部とパッドとの間に接触が確立されるまでスカートをカセット上で摺動させるためにフレームに対して力を加えるステップと、圧力差を維持しながら肩部によって形成され当接するまでフレームを下向きに動かすために、フレームに対する力を維持するステップとを含む。
【0011】
したがって、本発明の有利な結果によれば、本方法に加えて、膜が、パッドの実質的な中心点から外側に付着されながら、その支持フレームの寸法と実質的に同一であるその元の寸法に戻っており、それによって、気泡の形成が回避される。
【0012】
事実、湿度が高く濃縮水を保持している場合であっても、膜はある程度の剛性を有する。膜の両側に圧力差を加えるということは、膜が、パッドの方に頂点を向けるドームの形状を与えられることを可能にする。これは、下向きの移動が起こると実質的に中心点においてパッドが接触されることを可能にする。この第1の接触ゾーンが確立されると、接触領域上で膜と含浸パッドとの間に接触摩擦がもたらされる。膜がそれ自体のある剛性を有するため、パッドに対して下向きに膜を動かすためにフレームに対して力を加えるということは結果として、膜がパッドと接触する領域を区切る線に沿って膜の、半径方向求心性の圧縮力をもたらす。
【0013】
換言すれば、接触領域が確立されると、その領域にわたって膜とパッドとの間に存在する摩擦が、その表面を区切る線上に、膜がパッドに対して付着されていく途上で膜を中心に向かって圧迫する、求心力を供給するために利用される。この力は、フレームに加えられる力から生じる。この力は膜自体の剛性によって接触領域に向かって伝達される。圧力差は、力が加えられる場合であっても膜がそれ自体を損傷することを回避するために、膜をドーム状のままにかつ補剛されたままに維持するのに寄与する。
【0014】
したがって、本発明による方法は、上記で提示された問題が解決されることを可能にし、膜は、気泡形成の危険性を制限しながらパッド上に均一に付着され、この操作に加えて、膜の表面積が実質的に、それ自体パッドの表面積と実質的に同一であるその元の表面積に戻る。
【0015】
組み合わされることができる他の特徴によれば:
圧力差は膜とカセットとの間の空間において加えられる減圧である。
本方法に先行して、パッドを試薬に浸すステップが行われる。
試薬は膜の濃縮水内に含まれる微生物を暴露するようになっている溶液である。
【0016】
別の態様によれば、本発明は、濃縮水を保持するフィルタ膜を試薬パッドに移動するための器具に関し、膜は、肩部および肩部から突出するスカートを有する支持フレーム内に載置され、パッドは前記スカートに対して相補的な形状のカセット上に載置され、スカートは肩部によって形成され当接するまでカセット上で密封摺動するようになっており、膜移動器具は前記試薬カセットを受けるようになっている自由端を有する器具本体と、カセットを排出するためにカセットを圧迫するようになっている、本体に対する並進移動のために載置される排出ヘッドと、ヘッドを並進移動において作動させるための手段と、カセットを器具本体上に密封保持するために器具本体上に配置される密封および保持のための手段と、カセットと器具の本体との間に圧力差を加えるための手段とを備える。
【0017】
組み合わされることができる有利な特徴によれば:
カセットと器具の本体との間に圧力差を加えるための手段は、器具の外部にある真空ポンプに接続されるようになっている、器具の本体内に形成される開口、および、その他方の端にある、カセットと器具の本体との間の流体密封空間内への開口である。
排出ヘッドは環状であり、器具の本体を取り囲む。
【0018】
したがって、有利には、周辺に均一に分散される排出力が生成され、カセットまたはフレームは変形せず、したがって、膜がパッドと接触すると、膜とパッドとの間の良好な接着が可能となる。
【0019】
組み合わされることができる有利な特徴によれば:
器具は、圧力調整のための組み込まれる手段をさらに備える。
圧力調整手段は40〜70ミリバールの圧力と平衡するようになっている。
【0020】
したがって、有利には、これらの条件が、膜が実質的にその元の寸法に戻るように、膜がパッドに付着されるときに膜の圧迫を達成するために最適な圧力を維持しながら、膜を変形させないために過度に高い圧力が加えられることを回避することを可能にする。さらに、このデバイスは、真空ポンプの不規則な動作から生じる、起こり得る変化が打ち消されることを可能にする。
【0021】
本発明の有利な特徴によれば、カセットを器具本体上に密封保持するために器具本体上に配置される密封および保持のための手段は、その目的のために本体内に形成される溝の中に挿入されるシールである。
【0022】
この構造は特に単純であり、器具上でのカセットの密封および機械的保持の機能は同じ部材によって提供される。
【0023】
有利な特徴によれば、ヘッドを並進移動において作動させるための手段は排出レバーである。これは、排出力が増大されることを可能にする。
【0024】
別の態様によれば、本発明は、上記のような器具を実装する方法であって:
その目的のために提供される密封および保持のための手段と係合させるためにカセットを器具上に配置するステップと、
パッドを試薬に浸すステップと、
カセットと器具の本体との間に圧力差を加える手段を起動するステップと、
膜支持フレームのスカートをカセットに密封係合させるステップと、
膜が、パッドの方に頂点を向けるドームの形状を取るように、カセットと膜支持フレームとの間に圧力差を確立するステップと、
圧力差を維持しながら、ドームの端部とパッドとの間に接触が確立されるまで、スカートをカセット上で摺動させるために、フレームに対して力を加えるステップと、
圧力差を維持しながら、フレームが肩部によって形成され当接するまで、フレームを下向きに動かすために、フレームに対する力を維持するステップとを含む、方法に関する。
【0025】
有利な特徴によれば、カセットは、空気がカセットを通過することを可能にする開口を有し、膜が、パッドに頂点を向けるドームの形状を取るような、カセットと膜支持フレームとの間の圧力差の確立は、カセットを介して器具と膜との間に空気を通過させることによって、カセットと器具の本体との間に圧力差を加えるための手段によって生成される。
【0026】
本発明は、非限定的な例のために与えられる添付の図面を参照して、本発明による器具および方法の実施の一実施形態の記載を読むとより良好に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】既知の微生物分析デバイスの概略断面図である。
【図2】既知の微生物分析デバイスの概略断面図である。
【図3】既知の微生物分析デバイスの概略断面図である。
【図4】相補的なカセット上に載置される膜支持フレームの図である。
【図5】カセットおよび膜サポートを有する、本発明による器具の拡大図である。
【図6】本発明による微生物分析の方法における、図5において表されているデバイスの使用の一ステップの図である。
【図7】本発明による微生物分析の方法における、図5において表されているデバイスの使用の一ステップの図である。
【図8】本発明による微生物分析の方法における、図5において表されているデバイスの使用の一ステップの図である。
【図9】本発明による微生物分析の方法における、図5において表されているデバイスの使用の一ステップの図である。
【図10】本発明による微生物分析の方法における、図5において表されているデバイスの使用の一ステップの図である。
【図11】本発明による微生物分析の方法における、図5において表されているデバイスの使用の一ステップの図である。
【図12】本発明による微生物分析の方法における、図5において表されているデバイスの使用の一ステップの図である。
【図13】本発明による微生物分析の方法における、図5において表されているデバイスの使用の一ステップの図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1および図2により詳細に図示されているように、ろ過デバイス100は、成長培地210を収容するカセット200と協働するようになっている、膜130のための保持フレーム120に接合される管状スリーブ110を有する。図示されていない液体の試料がスリーブ110内に導入され、その後ろ過膜130を通じてろ過される。ろ過が実行されると、濃縮水を保持する膜130は乾燥状態から膜を緩ませる湿潤状態に移行し、それによって、その表面積がその初期の表面積と比較して増大する。これは図1においてより詳細に見える。
【0029】
膜130を成長培地210上に堆積させるために、スリーブは流体密封カバー111を使用して閉じられる。このカバーを閉じることは、少量の空気がスリーブ内に圧縮されることを可能にし、これは次いで膜に対して圧力を及ぼし、その効果は、膜を外側に向かって押し出し、それによって、図2に図示されているように、膜に、その頂点がスリーブの外側を向いているドームの形状を与える。その後、スリーブは気泡が形成される危険なしに成長培地210上に置かれることができる。実際に、図1および図2に図示されているように、成長培地210は、スリーブの方に頂点を向けるドームの形状を有する。膜130と成長培地210との間の接触は、まず第一に中心によって起こり、その後外側に拡大し、それによって、気泡形成の危険性が制限され、ろ過に由来する濃縮水を保持する膜と成長培地との最適な接着が確実となる。
【0030】
膜130と成長培地210との間の接触が確立されると、スリーブ110は膜130のための保持フレーム120から分離され、膜130を起こり得る汚染から保護するために、カバー111がフレーム上に配置される。図3に図示されているような、成長培地210を収容するカセット200、膜130を支持するフレーム120、およびカバー111によって形成される組立体はその後、一般的に6〜24時間の期間にわたってインキュベートされる。
【0031】
このインキュベーションの間、濃縮水中に含まれる微生物は、それらが肉眼で見えるようになるまで成長する。したがって、それらが計数されることができ、したがって試料の汚染の度合いが判定されることができる。しかしながら、このインキュベーションの期間の間、成長培地はドーム上であるため、膜130はそれと接触しているクリープによって変形する。インキュベーションが終了すると、フレーム120およびカバー111によって形成される組立体はカセット300に取り付けられるために成長培地カセット200から分離され、カセット300上に、本発明による移動方法を使用してパッド310が載置される。
【0032】
気づかれ得るように、ろ過およびクリープに加えて、膜130は強く膨張し、その元の表面積よりもはるかに大きい表面積を有する。
【0033】
図4に図示されるように、これは、膜がパッドに付着されるのを妨げる、相当数の問題を呈する。正確には、膜130の幾何形状はパッド310の幾何形状とは非常に異なっており、膜にドーム形状を与えるためにスリーブ110はもはや利用可能でなく、何らかの汚染を回避するためにカバー111が除去されることができない。
【0034】
本発明による移動方法は、単純で、一貫した一様な様式で、気泡を形成することなく膜130がパッド310上に移動されることを可能にする。
【0035】
これは、図5以下に図示されるようなデバイスのスタックを使用することによって可能となる。本発明による、濃縮水を保持するフィルタ膜をパッド310に移動するための器具400はカセット300を受けるようになっており、カセットはそれ自体、膜支持フレーム120およびカバー111によって形成される組立体を上に載せている。
【0036】
図5により詳細に図示されているように、膜130は、肩部121および肩部から突出するスカート122を有する支持フレーム120内に載置される。パッド310を保持しているカセット300はスカート122に対して相補的な円錐外形320を有し、それによって、スカートがカセット上で肩部121によって形成され当接するまでカセット上で密封摺動することが可能となる。これは、図9〜図12により詳細に図示されている。膜130のパッド310への移動のための器具400は、カセット300を受けるようになっている自由端を有する器具本体410と、本体410の周りでの並進移動のために載置される環状排出ヘッド420とを有する。排出ヘッドは、カセットの外面の下側リム321を圧迫してカセットを排出するために器具本体に対して移動するようになっている。本体に対する排出ヘッドの並進移動は、排出力が増大されることを可能にする作動レバー421を用いて作動される。器具本体410は、その自由端において流体密封シール412を受けるような寸法になっている溝411を有する。カセットが器具に導入されると、流体密封シール412および溝411はともに結合して、カセット300の密封および保持のための手段を形成する。正確には、シール412の弾性が、カセット300の適切な場所における機械的保持に寄与する。
【0037】
器具400の本体410はさらに、端部接続部414によって図示されていない外部ポンプ装置に接続されるようになっている横開口413を有し、それによって、その対向端において、カセット300を受けるようになっている器具本体の自由端において開いているその開口内に減圧が生じることが可能になる。したがって、この開口は、カセットと器具本体との間に減圧が加えられることを可能にする。
【0038】
図6に図示されているように、本発明による、膜を移動するための方法は、第1の段階において、カセット300を器具本体410上に配置することから成る。この導入は、カセット300の内面および器具400の本体410の自由端によって形成され当接するまで実行される。この挿入の効果は、図7に図示されるように、排出ヘッドを本体410に対して下向きに移動させることである。この同じ移動によって、作動レバー421は実質的に水平な位置まで上昇する。
【0039】
次いで、パッド310上に配置される図示されていない保護フィルムが除去されることができ、緩衝器が試薬の溶液で満たされる。本実施形態において、これは、膜の濃縮水内に含まれる微生物を暴露するようになっている溶液である。
【0040】
図8により詳細に図示されているように、次いで膜支持フレーム129が、カセット300上に配置される。次いで開口413に接続される真空ポンプが起動され、カセット300とシール412との間に吸引力を生成する。図8に図示されるように、カセットはその上側部分においてパッド310の周辺に、複数の開口322を有し、それによって、空気がシール412、カセット300の下側面、および外側によって画定される空間の間を連通することが可能になる。
【0041】
図9に図示されているように、次いで膜支持フレームが、カセット300上に載置される。その後スカート122がカセットの円錐外面320と密接に協働すると、開口322を介して膜の2つの面の間に圧力差が生じる。これはその後、図9に見られるような、頂点がパッドの方を向くドームの形態を取る。図10に図示されるように、垂直な矢印によって図式的に表される力が、カバー111を介して膜支持フレーム120に加えられ、その効果は、スカート122をカセットに対して摺動させることである。次いで、膜とパッドとの間の実質的に中央の接触領域が確立される。
【0042】
膜をパッドに中央接触領域から外側に徐々に移動するために、図11および図12に見られるように、膜の両側の間の圧力差を維持しながら、膜支持フレームに対して圧縮力が連続的に加えられる。
【0043】
図10〜図12において示されているこれらのステップの間、膜は徐々にその中心に向かって圧縮され、その動作に加えて、膜はその元の寸法に戻る。膜の両側に圧力差を加えることは、膜に、パッドの方に頂点を向けるドームの形状を与える。その上、膜はそれ自体のある程度の剛性を有する。膜とパッドとの間に第1の接触ゾーンが確立されると、フレーム120に加えられる力はその第1の接触ゾーンにおいて膜とパッドとの間に生じる接触摩擦と組み合わさって、結果として、膜とパッドとの間の接触領域を区切る線に沿って膜が受ける、半径方向求心性の圧縮力をもたらす。図10〜図12に図示されるように、膜自体の剛性が、頂点をパッドの方に向けるドーム状の膜形状を提供する圧力差と組み合わさって、膜のパッドへの付着が進行するにつれて膜を中心に向かって徐々に圧縮する効果を可能にする。
【0044】
この結果を達成するためには、好ましくは40〜70ミリバールの範囲内の所定の圧力差を加えることが必要である。理想的には、この圧力は50ミリバールである。この圧力をこの値に保つために、器具410の本体には図示されていない圧力調整装置が提供され、これは、端部接続部414に接続される真空ポンプによって生成され得る圧力の起こり得る変動を打ち消すために、開口413と外部環境との間の圧力差が一定に保持されることを可能にする。正確には、圧力が低すぎると膜が十分に補剛されることが可能でなく、力が加えられている状況下ではそれ自体を損傷することになり、逆に圧力が高すぎると膜を、その表面積をさらに拡大するように変形する傾向にある。フレームの移動において加えられる力は、スカート122のカセット300に対する係合から、肩部121およびカセット300の上側部分によって構成され当接するまでの経路が完結するのに十分でなければならず、この距離は実際には5〜6mm程度であり、その結果を達成するために0.6秒を超える時間内に完結しなければならない。
【0045】
膜がパッドに均一に付着されると、ここではより詳細には記載されない微生物分析の後続の操作のために、器具400のフレーム120、カバー111、およびカセット300によって形成される組立体を引き出すことが必要である。図13に図示されているように、この目的のためにレバー421が作動される。次いで、排出ヘッド420が器具410の本体に対して移動し、カセット300の下側エッジ321を均一に圧迫するようになる。このようにして、カセットの周囲を囲む均一に環状に分散する力によって引き出しが達成され、この力は有利には、カセットにねじり力が加わるのを回避し、その力の効果は膜をパッドから分離することが可能であり得る。このようにして引き出されると、カセット、カバーおよびフレームによって形成される組立体は、微生物分析の後続の部分において使用される準備ができる。
【0046】
一般的に、上記の例において、すべての構成要素は実質的に円形の断面を有することが留意されよう。しかしながら、楕円または多角形の閉断面を有する、本発明による組立体の形成は、本発明の範囲から逸脱することなく当業者の能力の範疇にある。
【0047】
上記で開示されている器具400は、濃縮水を保持する膜130のようなフィルタ膜をパッド310のような試薬パッドまで移動するために設計されているが、器具400、より一般的に本発明による器具は、フィルタ膜を、例えば、以下のような試薬パッドとは異なる部材に移動するために使用されることができることが注記されるべきである:
試薬とは異なる液体物質、例えば、栄養液体培地を含浸されるパッド、または
ペトリ皿内のゲル成長培地のようなゲル成長培地。
【0048】
本発明による器具は、膜を、平坦ではないが、膜の曲率と異なる曲率を有する部材に移動するために使用されることができることも注記されるべきであり、それによって、膜と部材との間の良好な接触が確実となる。
【0049】
当然ながら、本発明の範囲から逸脱することなく、上記の実施形態に多くの変更を為すことができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には液体の微生物学的試験の分野に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、膜ろ過と称される方法に関する。本方法は、多孔性膜上で液体試料をろ過すること、および、その後膜をゲル成長培地上に堆積させることから成る。この組立体は次に、ろ過の間膜上に保持される試料の微生物が肉眼に見えるほど十分に成長することが可能であるようにインキュベートされる。この単純な方法は、試料内に存在する微生物が計数可能となり、したがってその汚染度を判定することを可能にする。
【背景技術】
【0003】
この方法が実施されることを可能にするフィルタ膜デバイスが既知である。
【0004】
仏国特許第2558847号明細書は、試料を収容するための管状スリーブを有するフィルタデバイスを記載しており、その基部は、フィルタ膜によって構成され、これはその膜のための保持フレームを形成する雌端部接続部においてスリーブの端部に固定され、成長培地を収容する容器と協働するようになっている。ろ過が実行されると、スリーブの対向端上に流体密封カバーが配置され、その効果は、スリーブ内に少量の空気を圧縮して膜に押し付けることであり、この膜はその後スリーブの外側に頂点を向けるドームの形状を取る。その後スリーブは成長培地上に配置され、膜はその中心から外側に向かって成長培地と接触するようになり、それによって気泡形成の危険性が最小限に抑えられる。
【0005】
膜が成長培地と接触すると、スリーブは膜を支える端部接続部から分離されることができる。端部接続部は次に、保護カバーによって提供され、その後、組立体がインキュベートされる。
【0006】
実際には、膜が乾燥状態から湿潤状態に移行すると、膜の表面積は増大する。これはろ過ステップまでさらに起こることである。さらに、その後その上に膜が堆積される成長培地は、膜の方に頂点を向けるドームの形状を有する。したがって、インキュベーションにおいて、膜は成長培地と接触してクリープによって変形し、その表面積は、ろ過ステップの完了時に得られるものと比較してさらに増大する。
【0007】
特定の微生物分析において、膜をインキュベートした後に膜に試薬を与えることが必要である。例えば、これは、顕現試薬であり得る。このために、実質的に平坦なパッドが使用され、これは、その上に膜を堆積させる前に選択された試薬を含浸され、これは事前に成長培地から分離されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】仏国特許第2558847号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
実際には、これはいくつかの問題を呈する、すなわち:
ろ過およびインキュベーションに加えて、膜の表面積が試薬パッドの表面積よりも大きく、
膜の曲率半径とパッドの曲率半径とが一致せず、
スリーブがもはや適切な場所になく、それゆえもはや膜に、頂点が外側を向いたドームの形状を与えるためにさらに圧力を加えることが可能でなく、
外気によって起こり得る汚染を回避するためにインキュベーションの前に付着されるカバーを除去することができない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、実質的に平坦なパッドによって、ろ過およびインキュベーション後に変形される膜に試薬が与えられることを可能にするために、これらの問題を克服することを目的とする。その目的のために、本発明は、濃縮水を保持するフィルタ膜を試薬パッドまで移動するための方法を提供し、膜は、肩部および肩部から突出するスカートを有する支持フレーム内に載置され、パッドは前記スカートに対して相補的な形状のカセット上に載置されており、スカートは肩部によって形成され当接するまでカセット上で密封摺動するようになっており、本方法は、カセット上に膜支持フレームのスカートを密封係合させるステップと、膜が、その頂点がパッドを向くドームの形状を取るように、カセットと膜支持フレームとの間に圧力差を確立するステップと、圧力差を維持しながら、ドームの端部とパッドとの間に接触が確立されるまでスカートをカセット上で摺動させるためにフレームに対して力を加えるステップと、圧力差を維持しながら肩部によって形成され当接するまでフレームを下向きに動かすために、フレームに対する力を維持するステップとを含む。
【0011】
したがって、本発明の有利な結果によれば、本方法に加えて、膜が、パッドの実質的な中心点から外側に付着されながら、その支持フレームの寸法と実質的に同一であるその元の寸法に戻っており、それによって、気泡の形成が回避される。
【0012】
事実、湿度が高く濃縮水を保持している場合であっても、膜はある程度の剛性を有する。膜の両側に圧力差を加えるということは、膜が、パッドの方に頂点を向けるドームの形状を与えられることを可能にする。これは、下向きの移動が起こると実質的に中心点においてパッドが接触されることを可能にする。この第1の接触ゾーンが確立されると、接触領域上で膜と含浸パッドとの間に接触摩擦がもたらされる。膜がそれ自体のある剛性を有するため、パッドに対して下向きに膜を動かすためにフレームに対して力を加えるということは結果として、膜がパッドと接触する領域を区切る線に沿って膜の、半径方向求心性の圧縮力をもたらす。
【0013】
換言すれば、接触領域が確立されると、その領域にわたって膜とパッドとの間に存在する摩擦が、その表面を区切る線上に、膜がパッドに対して付着されていく途上で膜を中心に向かって圧迫する、求心力を供給するために利用される。この力は、フレームに加えられる力から生じる。この力は膜自体の剛性によって接触領域に向かって伝達される。圧力差は、力が加えられる場合であっても膜がそれ自体を損傷することを回避するために、膜をドーム状のままにかつ補剛されたままに維持するのに寄与する。
【0014】
したがって、本発明による方法は、上記で提示された問題が解決されることを可能にし、膜は、気泡形成の危険性を制限しながらパッド上に均一に付着され、この操作に加えて、膜の表面積が実質的に、それ自体パッドの表面積と実質的に同一であるその元の表面積に戻る。
【0015】
組み合わされることができる他の特徴によれば:
圧力差は膜とカセットとの間の空間において加えられる減圧である。
本方法に先行して、パッドを試薬に浸すステップが行われる。
試薬は膜の濃縮水内に含まれる微生物を暴露するようになっている溶液である。
【0016】
別の態様によれば、本発明は、濃縮水を保持するフィルタ膜を試薬パッドに移動するための器具に関し、膜は、肩部および肩部から突出するスカートを有する支持フレーム内に載置され、パッドは前記スカートに対して相補的な形状のカセット上に載置され、スカートは肩部によって形成され当接するまでカセット上で密封摺動するようになっており、膜移動器具は前記試薬カセットを受けるようになっている自由端を有する器具本体と、カセットを排出するためにカセットを圧迫するようになっている、本体に対する並進移動のために載置される排出ヘッドと、ヘッドを並進移動において作動させるための手段と、カセットを器具本体上に密封保持するために器具本体上に配置される密封および保持のための手段と、カセットと器具の本体との間に圧力差を加えるための手段とを備える。
【0017】
組み合わされることができる有利な特徴によれば:
カセットと器具の本体との間に圧力差を加えるための手段は、器具の外部にある真空ポンプに接続されるようになっている、器具の本体内に形成される開口、および、その他方の端にある、カセットと器具の本体との間の流体密封空間内への開口である。
排出ヘッドは環状であり、器具の本体を取り囲む。
【0018】
したがって、有利には、周辺に均一に分散される排出力が生成され、カセットまたはフレームは変形せず、したがって、膜がパッドと接触すると、膜とパッドとの間の良好な接着が可能となる。
【0019】
組み合わされることができる有利な特徴によれば:
器具は、圧力調整のための組み込まれる手段をさらに備える。
圧力調整手段は40〜70ミリバールの圧力と平衡するようになっている。
【0020】
したがって、有利には、これらの条件が、膜が実質的にその元の寸法に戻るように、膜がパッドに付着されるときに膜の圧迫を達成するために最適な圧力を維持しながら、膜を変形させないために過度に高い圧力が加えられることを回避することを可能にする。さらに、このデバイスは、真空ポンプの不規則な動作から生じる、起こり得る変化が打ち消されることを可能にする。
【0021】
本発明の有利な特徴によれば、カセットを器具本体上に密封保持するために器具本体上に配置される密封および保持のための手段は、その目的のために本体内に形成される溝の中に挿入されるシールである。
【0022】
この構造は特に単純であり、器具上でのカセットの密封および機械的保持の機能は同じ部材によって提供される。
【0023】
有利な特徴によれば、ヘッドを並進移動において作動させるための手段は排出レバーである。これは、排出力が増大されることを可能にする。
【0024】
別の態様によれば、本発明は、上記のような器具を実装する方法であって:
その目的のために提供される密封および保持のための手段と係合させるためにカセットを器具上に配置するステップと、
パッドを試薬に浸すステップと、
カセットと器具の本体との間に圧力差を加える手段を起動するステップと、
膜支持フレームのスカートをカセットに密封係合させるステップと、
膜が、パッドの方に頂点を向けるドームの形状を取るように、カセットと膜支持フレームとの間に圧力差を確立するステップと、
圧力差を維持しながら、ドームの端部とパッドとの間に接触が確立されるまで、スカートをカセット上で摺動させるために、フレームに対して力を加えるステップと、
圧力差を維持しながら、フレームが肩部によって形成され当接するまで、フレームを下向きに動かすために、フレームに対する力を維持するステップとを含む、方法に関する。
【0025】
有利な特徴によれば、カセットは、空気がカセットを通過することを可能にする開口を有し、膜が、パッドに頂点を向けるドームの形状を取るような、カセットと膜支持フレームとの間の圧力差の確立は、カセットを介して器具と膜との間に空気を通過させることによって、カセットと器具の本体との間に圧力差を加えるための手段によって生成される。
【0026】
本発明は、非限定的な例のために与えられる添付の図面を参照して、本発明による器具および方法の実施の一実施形態の記載を読むとより良好に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】既知の微生物分析デバイスの概略断面図である。
【図2】既知の微生物分析デバイスの概略断面図である。
【図3】既知の微生物分析デバイスの概略断面図である。
【図4】相補的なカセット上に載置される膜支持フレームの図である。
【図5】カセットおよび膜サポートを有する、本発明による器具の拡大図である。
【図6】本発明による微生物分析の方法における、図5において表されているデバイスの使用の一ステップの図である。
【図7】本発明による微生物分析の方法における、図5において表されているデバイスの使用の一ステップの図である。
【図8】本発明による微生物分析の方法における、図5において表されているデバイスの使用の一ステップの図である。
【図9】本発明による微生物分析の方法における、図5において表されているデバイスの使用の一ステップの図である。
【図10】本発明による微生物分析の方法における、図5において表されているデバイスの使用の一ステップの図である。
【図11】本発明による微生物分析の方法における、図5において表されているデバイスの使用の一ステップの図である。
【図12】本発明による微生物分析の方法における、図5において表されているデバイスの使用の一ステップの図である。
【図13】本発明による微生物分析の方法における、図5において表されているデバイスの使用の一ステップの図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1および図2により詳細に図示されているように、ろ過デバイス100は、成長培地210を収容するカセット200と協働するようになっている、膜130のための保持フレーム120に接合される管状スリーブ110を有する。図示されていない液体の試料がスリーブ110内に導入され、その後ろ過膜130を通じてろ過される。ろ過が実行されると、濃縮水を保持する膜130は乾燥状態から膜を緩ませる湿潤状態に移行し、それによって、その表面積がその初期の表面積と比較して増大する。これは図1においてより詳細に見える。
【0029】
膜130を成長培地210上に堆積させるために、スリーブは流体密封カバー111を使用して閉じられる。このカバーを閉じることは、少量の空気がスリーブ内に圧縮されることを可能にし、これは次いで膜に対して圧力を及ぼし、その効果は、膜を外側に向かって押し出し、それによって、図2に図示されているように、膜に、その頂点がスリーブの外側を向いているドームの形状を与える。その後、スリーブは気泡が形成される危険なしに成長培地210上に置かれることができる。実際に、図1および図2に図示されているように、成長培地210は、スリーブの方に頂点を向けるドームの形状を有する。膜130と成長培地210との間の接触は、まず第一に中心によって起こり、その後外側に拡大し、それによって、気泡形成の危険性が制限され、ろ過に由来する濃縮水を保持する膜と成長培地との最適な接着が確実となる。
【0030】
膜130と成長培地210との間の接触が確立されると、スリーブ110は膜130のための保持フレーム120から分離され、膜130を起こり得る汚染から保護するために、カバー111がフレーム上に配置される。図3に図示されているような、成長培地210を収容するカセット200、膜130を支持するフレーム120、およびカバー111によって形成される組立体はその後、一般的に6〜24時間の期間にわたってインキュベートされる。
【0031】
このインキュベーションの間、濃縮水中に含まれる微生物は、それらが肉眼で見えるようになるまで成長する。したがって、それらが計数されることができ、したがって試料の汚染の度合いが判定されることができる。しかしながら、このインキュベーションの期間の間、成長培地はドーム上であるため、膜130はそれと接触しているクリープによって変形する。インキュベーションが終了すると、フレーム120およびカバー111によって形成される組立体はカセット300に取り付けられるために成長培地カセット200から分離され、カセット300上に、本発明による移動方法を使用してパッド310が載置される。
【0032】
気づかれ得るように、ろ過およびクリープに加えて、膜130は強く膨張し、その元の表面積よりもはるかに大きい表面積を有する。
【0033】
図4に図示されるように、これは、膜がパッドに付着されるのを妨げる、相当数の問題を呈する。正確には、膜130の幾何形状はパッド310の幾何形状とは非常に異なっており、膜にドーム形状を与えるためにスリーブ110はもはや利用可能でなく、何らかの汚染を回避するためにカバー111が除去されることができない。
【0034】
本発明による移動方法は、単純で、一貫した一様な様式で、気泡を形成することなく膜130がパッド310上に移動されることを可能にする。
【0035】
これは、図5以下に図示されるようなデバイスのスタックを使用することによって可能となる。本発明による、濃縮水を保持するフィルタ膜をパッド310に移動するための器具400はカセット300を受けるようになっており、カセットはそれ自体、膜支持フレーム120およびカバー111によって形成される組立体を上に載せている。
【0036】
図5により詳細に図示されているように、膜130は、肩部121および肩部から突出するスカート122を有する支持フレーム120内に載置される。パッド310を保持しているカセット300はスカート122に対して相補的な円錐外形320を有し、それによって、スカートがカセット上で肩部121によって形成され当接するまでカセット上で密封摺動することが可能となる。これは、図9〜図12により詳細に図示されている。膜130のパッド310への移動のための器具400は、カセット300を受けるようになっている自由端を有する器具本体410と、本体410の周りでの並進移動のために載置される環状排出ヘッド420とを有する。排出ヘッドは、カセットの外面の下側リム321を圧迫してカセットを排出するために器具本体に対して移動するようになっている。本体に対する排出ヘッドの並進移動は、排出力が増大されることを可能にする作動レバー421を用いて作動される。器具本体410は、その自由端において流体密封シール412を受けるような寸法になっている溝411を有する。カセットが器具に導入されると、流体密封シール412および溝411はともに結合して、カセット300の密封および保持のための手段を形成する。正確には、シール412の弾性が、カセット300の適切な場所における機械的保持に寄与する。
【0037】
器具400の本体410はさらに、端部接続部414によって図示されていない外部ポンプ装置に接続されるようになっている横開口413を有し、それによって、その対向端において、カセット300を受けるようになっている器具本体の自由端において開いているその開口内に減圧が生じることが可能になる。したがって、この開口は、カセットと器具本体との間に減圧が加えられることを可能にする。
【0038】
図6に図示されているように、本発明による、膜を移動するための方法は、第1の段階において、カセット300を器具本体410上に配置することから成る。この導入は、カセット300の内面および器具400の本体410の自由端によって形成され当接するまで実行される。この挿入の効果は、図7に図示されるように、排出ヘッドを本体410に対して下向きに移動させることである。この同じ移動によって、作動レバー421は実質的に水平な位置まで上昇する。
【0039】
次いで、パッド310上に配置される図示されていない保護フィルムが除去されることができ、緩衝器が試薬の溶液で満たされる。本実施形態において、これは、膜の濃縮水内に含まれる微生物を暴露するようになっている溶液である。
【0040】
図8により詳細に図示されているように、次いで膜支持フレーム129が、カセット300上に配置される。次いで開口413に接続される真空ポンプが起動され、カセット300とシール412との間に吸引力を生成する。図8に図示されるように、カセットはその上側部分においてパッド310の周辺に、複数の開口322を有し、それによって、空気がシール412、カセット300の下側面、および外側によって画定される空間の間を連通することが可能になる。
【0041】
図9に図示されているように、次いで膜支持フレームが、カセット300上に載置される。その後スカート122がカセットの円錐外面320と密接に協働すると、開口322を介して膜の2つの面の間に圧力差が生じる。これはその後、図9に見られるような、頂点がパッドの方を向くドームの形態を取る。図10に図示されるように、垂直な矢印によって図式的に表される力が、カバー111を介して膜支持フレーム120に加えられ、その効果は、スカート122をカセットに対して摺動させることである。次いで、膜とパッドとの間の実質的に中央の接触領域が確立される。
【0042】
膜をパッドに中央接触領域から外側に徐々に移動するために、図11および図12に見られるように、膜の両側の間の圧力差を維持しながら、膜支持フレームに対して圧縮力が連続的に加えられる。
【0043】
図10〜図12において示されているこれらのステップの間、膜は徐々にその中心に向かって圧縮され、その動作に加えて、膜はその元の寸法に戻る。膜の両側に圧力差を加えることは、膜に、パッドの方に頂点を向けるドームの形状を与える。その上、膜はそれ自体のある程度の剛性を有する。膜とパッドとの間に第1の接触ゾーンが確立されると、フレーム120に加えられる力はその第1の接触ゾーンにおいて膜とパッドとの間に生じる接触摩擦と組み合わさって、結果として、膜とパッドとの間の接触領域を区切る線に沿って膜が受ける、半径方向求心性の圧縮力をもたらす。図10〜図12に図示されるように、膜自体の剛性が、頂点をパッドの方に向けるドーム状の膜形状を提供する圧力差と組み合わさって、膜のパッドへの付着が進行するにつれて膜を中心に向かって徐々に圧縮する効果を可能にする。
【0044】
この結果を達成するためには、好ましくは40〜70ミリバールの範囲内の所定の圧力差を加えることが必要である。理想的には、この圧力は50ミリバールである。この圧力をこの値に保つために、器具410の本体には図示されていない圧力調整装置が提供され、これは、端部接続部414に接続される真空ポンプによって生成され得る圧力の起こり得る変動を打ち消すために、開口413と外部環境との間の圧力差が一定に保持されることを可能にする。正確には、圧力が低すぎると膜が十分に補剛されることが可能でなく、力が加えられている状況下ではそれ自体を損傷することになり、逆に圧力が高すぎると膜を、その表面積をさらに拡大するように変形する傾向にある。フレームの移動において加えられる力は、スカート122のカセット300に対する係合から、肩部121およびカセット300の上側部分によって構成され当接するまでの経路が完結するのに十分でなければならず、この距離は実際には5〜6mm程度であり、その結果を達成するために0.6秒を超える時間内に完結しなければならない。
【0045】
膜がパッドに均一に付着されると、ここではより詳細には記載されない微生物分析の後続の操作のために、器具400のフレーム120、カバー111、およびカセット300によって形成される組立体を引き出すことが必要である。図13に図示されているように、この目的のためにレバー421が作動される。次いで、排出ヘッド420が器具410の本体に対して移動し、カセット300の下側エッジ321を均一に圧迫するようになる。このようにして、カセットの周囲を囲む均一に環状に分散する力によって引き出しが達成され、この力は有利には、カセットにねじり力が加わるのを回避し、その力の効果は膜をパッドから分離することが可能であり得る。このようにして引き出されると、カセット、カバーおよびフレームによって形成される組立体は、微生物分析の後続の部分において使用される準備ができる。
【0046】
一般的に、上記の例において、すべての構成要素は実質的に円形の断面を有することが留意されよう。しかしながら、楕円または多角形の閉断面を有する、本発明による組立体の形成は、本発明の範囲から逸脱することなく当業者の能力の範疇にある。
【0047】
上記で開示されている器具400は、濃縮水を保持する膜130のようなフィルタ膜をパッド310のような試薬パッドまで移動するために設計されているが、器具400、より一般的に本発明による器具は、フィルタ膜を、例えば、以下のような試薬パッドとは異なる部材に移動するために使用されることができることが注記されるべきである:
試薬とは異なる液体物質、例えば、栄養液体培地を含浸されるパッド、または
ペトリ皿内のゲル成長培地のようなゲル成長培地。
【0048】
本発明による器具は、膜を、平坦ではないが、膜の曲率と異なる曲率を有する部材に移動するために使用されることができることも注記されるべきであり、それによって、膜と部材との間の良好な接触が確実となる。
【0049】
当然ながら、本発明の範囲から逸脱することなく、上記の実施形態に多くの変更を為すことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃縮水を保持するフィルタ膜(130)を試薬パッド(310)に移動する方法にして、
膜は、肩部(121)および肩部から突出するスカート(122)を有する支持フレーム(120)内に載置され、
パッドは前記スカートに対して相補的な形状のカセット(300)上に載置され、
スカートは肩部によって形成され当接するまでカセット上で密封摺動するようになっている方法であって、
膜支持フレームのスカートをカセットに対して密封係合させるステップと、
膜が、パッドの方に頂点を向けるドームの形状を取るように、カセットと膜支持フレームとの間に圧力差を確立するステップと、
圧力差を維持しながら、ドームの端部とパッドとの間に接触が確立されるまで、スカートをカセット上で摺動させるために、フレームに対して力を加えるステップと、
圧力差を維持しながら、フレームが肩部によって形成され当接するまで、フレームを下向きに動かすために、フレームに対する力を維持するステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
圧力差が、膜(130)とカセット(300)との間の空間において加えられる減圧であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
パッド(310)に試薬を含浸させるステップが先行して行われることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
試薬が膜(130)の濃縮水内に含まれる微生物を暴露するようになっている溶液であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
濃縮水を保持するフィルタ膜(130)を試薬パッド(310)に移動するための器具(400)にして、
膜は、肩部(121)および肩部から突出するスカート(122)を有する支持フレーム(120)内に載置され、
パッドは前記スカートに対して相補的な形状のカセット(300)上に載置され、
スカートは肩部によって形成され当接するまでカセット上で密封摺動するようになっている器具であって、
膜移動器具は、
前記試薬カセットを受けるようになっている自由端を有する器具本体(410)と、
カセットを排出するためにカセットを圧迫するようになっている、本体に対して並進移動するために載置される排出ヘッド(420)と、
ヘッドを並進移動において作動するための手段(421)と、
カセットを器具本体上に密封保持するために器具本体上に配置される密封および保持のための手段(412、411)と、
カセットと器具の本体との間に圧力差を加える手段(413、414)と
を備えることを特徴とする、器具。
【請求項6】
カセットと器具の本体との間に圧力差を加えるための手段が、器具の外部にある真空ポンプに接続されるようになっている、器具の本体内に形成される開口(413)、および、その他方の端にある、カセットと器具の本体との間の流体密封空間内への開口であることを特徴とする、請求項5に記載の器具。
【請求項7】
排出ヘッドが環状であり、器具の本体を取り囲むことを特徴とする、請求項5または6に記載の器具。
【請求項8】
組み込み圧力調整手段をさらに備えることを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載の器具。
【請求項9】
圧力調整手段が40〜70ミリバールの圧力と平衡するようになっている、請求項8に記載の器具。
【請求項10】
カセットを器具本体上に密封保持するために器具本体上に配置される密封および保持のための手段は、その目的のために本体内に形成される溝(411)の中に挿入されるシール(412)であることを特徴とする、請求項5から9のいずれか一項に記載の器具。
【請求項11】
ヘッドを並進移動において作動させるための手段は排出レバー(421)であることを特徴とする、請求項5から10のいずれか一項に記載の器具。
【請求項12】
請求項8から11のいずれか一項に記載の器具を使用する方法であって、
その目的のために提供される密封(412、411)および保持のための手段と係合させるためにカセット(300)を器具(400)上に配置するステップと、
パッド(310)に試薬を含浸させるステップと、
カセットと器具の本体との間に圧力差を加える手段を起動するステップと、
膜支持フレームのスカート(122)をカセットに対して密封係合させるステップと、
膜が、パッドの方に頂点を向けるドームの形状を取るように、カセットと膜支持フレームとの間に圧力差を確立するステップと、
圧力差を維持しながら、ドームの端部とパッドとの間に接触が確立されるまで、スカートをカセット上で摺動させるために、フレームに対して力を加えるステップと、
圧力差を維持しながら、フレームが肩部によって形成され当接するまで、フレームを下向きに動かすために、フレームに対する力を維持するステップとを含むことを特徴とする、方法。
【請求項13】
カセットが、空気がカセットを通過することを可能にする開口(322)を有すること、および、膜が、パッドに頂点を向けるドームの形状を取るような、カセットと膜支持フレームとの間の圧力差の確立は、カセットを介して器具と膜との間に空気を通過させることによって、カセットと器具の本体との間に圧力差を加えるための手段によって生成されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項1】
濃縮水を保持するフィルタ膜(130)を試薬パッド(310)に移動する方法にして、
膜は、肩部(121)および肩部から突出するスカート(122)を有する支持フレーム(120)内に載置され、
パッドは前記スカートに対して相補的な形状のカセット(300)上に載置され、
スカートは肩部によって形成され当接するまでカセット上で密封摺動するようになっている方法であって、
膜支持フレームのスカートをカセットに対して密封係合させるステップと、
膜が、パッドの方に頂点を向けるドームの形状を取るように、カセットと膜支持フレームとの間に圧力差を確立するステップと、
圧力差を維持しながら、ドームの端部とパッドとの間に接触が確立されるまで、スカートをカセット上で摺動させるために、フレームに対して力を加えるステップと、
圧力差を維持しながら、フレームが肩部によって形成され当接するまで、フレームを下向きに動かすために、フレームに対する力を維持するステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
圧力差が、膜(130)とカセット(300)との間の空間において加えられる減圧であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
パッド(310)に試薬を含浸させるステップが先行して行われることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
試薬が膜(130)の濃縮水内に含まれる微生物を暴露するようになっている溶液であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
濃縮水を保持するフィルタ膜(130)を試薬パッド(310)に移動するための器具(400)にして、
膜は、肩部(121)および肩部から突出するスカート(122)を有する支持フレーム(120)内に載置され、
パッドは前記スカートに対して相補的な形状のカセット(300)上に載置され、
スカートは肩部によって形成され当接するまでカセット上で密封摺動するようになっている器具であって、
膜移動器具は、
前記試薬カセットを受けるようになっている自由端を有する器具本体(410)と、
カセットを排出するためにカセットを圧迫するようになっている、本体に対して並進移動するために載置される排出ヘッド(420)と、
ヘッドを並進移動において作動するための手段(421)と、
カセットを器具本体上に密封保持するために器具本体上に配置される密封および保持のための手段(412、411)と、
カセットと器具の本体との間に圧力差を加える手段(413、414)と
を備えることを特徴とする、器具。
【請求項6】
カセットと器具の本体との間に圧力差を加えるための手段が、器具の外部にある真空ポンプに接続されるようになっている、器具の本体内に形成される開口(413)、および、その他方の端にある、カセットと器具の本体との間の流体密封空間内への開口であることを特徴とする、請求項5に記載の器具。
【請求項7】
排出ヘッドが環状であり、器具の本体を取り囲むことを特徴とする、請求項5または6に記載の器具。
【請求項8】
組み込み圧力調整手段をさらに備えることを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載の器具。
【請求項9】
圧力調整手段が40〜70ミリバールの圧力と平衡するようになっている、請求項8に記載の器具。
【請求項10】
カセットを器具本体上に密封保持するために器具本体上に配置される密封および保持のための手段は、その目的のために本体内に形成される溝(411)の中に挿入されるシール(412)であることを特徴とする、請求項5から9のいずれか一項に記載の器具。
【請求項11】
ヘッドを並進移動において作動させるための手段は排出レバー(421)であることを特徴とする、請求項5から10のいずれか一項に記載の器具。
【請求項12】
請求項8から11のいずれか一項に記載の器具を使用する方法であって、
その目的のために提供される密封(412、411)および保持のための手段と係合させるためにカセット(300)を器具(400)上に配置するステップと、
パッド(310)に試薬を含浸させるステップと、
カセットと器具の本体との間に圧力差を加える手段を起動するステップと、
膜支持フレームのスカート(122)をカセットに対して密封係合させるステップと、
膜が、パッドの方に頂点を向けるドームの形状を取るように、カセットと膜支持フレームとの間に圧力差を確立するステップと、
圧力差を維持しながら、ドームの端部とパッドとの間に接触が確立されるまで、スカートをカセット上で摺動させるために、フレームに対して力を加えるステップと、
圧力差を維持しながら、フレームが肩部によって形成され当接するまで、フレームを下向きに動かすために、フレームに対する力を維持するステップとを含むことを特徴とする、方法。
【請求項13】
カセットが、空気がカセットを通過することを可能にする開口(322)を有すること、および、膜が、パッドに頂点を向けるドームの形状を取るような、カセットと膜支持フレームとの間の圧力差の確立は、カセットを介して器具と膜との間に空気を通過させることによって、カセットと器具の本体との間に圧力差を加えるための手段によって生成されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2013−516977(P2013−516977A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548517(P2012−548517)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【国際出願番号】PCT/IB2011/050134
【国際公開番号】WO2011/086508
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(504115013)イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン (33)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【国際出願番号】PCT/IB2011/050134
【国際公開番号】WO2011/086508
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(504115013)イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン (33)
【Fターム(参考)】
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