説明

膜電極アセンブリ

少なくとも1つの第1の触媒活性金属(A)がエタノールを酸化し、少なくとも1つの第2の触媒活性金属(B)がアセトアルデヒドを酸化する、互いに合金化されていない少なくとも2つの触媒活性金属を含む、アノードを有する膜電極アセンブリ(MEA)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接エタノール型燃料電池(DEFC)内で使用するのに適した電極だけでなく、膜電極アセンブリ(MEA)および本発明に係わる電極が使用される燃料電池にも関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の応用分野は多岐にわたる。1つの応用分野として、コンピュータのようなポータブル電気機器がある。かかる装置では、低温の燃料電池を使用することが望まれる。更に、アルコールによって燃料電池を動作させることが通常好ましい。今日まで、直接メタノール型燃料電池(DMFC)を用いて大いに将来性のある実験を行うことができている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、エタノールまたはそれより高級のアルコールを用いた燃料電池は動作できていない。この点に関する問題は、COを生じさせるのに、比較的低温ではエタノールまたはその他の高級アルコールをほとんど酸化させることができないことにある。特に、エタノールの酸化中に有害なアセトアルデヒドが発生するが、直接エタノール型燃料電池(DEFC)の商業的使用を可能にするには、このアセトアルデヒドは酸化させなければならない。
アルコールを酸化させるのに適した触媒系を開発する際に、特に白金錫合金がこれまで使用されている。その他の大いに見込みのある合金としては、白金およびランタニド族の元素、特にセリウム、ランタンまたはプラセオジムがある。更に、三元系に基づく合金も同じように使用されている。しかしながら、エタノールまたはそれより高級のアルコールを満足できるように変換できる触媒系は、現在まで開発されていない。
【0004】
従って、本発明の目的は、エタノールまたはそれより高級なアルコールによって動作すべき燃料電池、特に直接エタノール型燃料電池(DEFC)内で使用するための電極を提供することにある。更に本発明の目的は、上記燃料電池のための膜電極アセンブリ(FEA)を開発することにある。
【0005】
本発明の原理は、アルデヒド、例えばアセトアルデヒドのようなエタノールおよび/またはより高級なアルコールの中間酸化生成物を、更に第2ステップ内で酸化させなければならない、ということに基づくものである。本発明の別の原理は、互いに合金化されていない2つの異なる触媒活性金属の混合物によって、エタノールおよび/またはより高級なアルコールの酸化を行うことができるということに基づく。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明は、
電極上および/または電極内に存在し、互いに合金化されていない少なくとも2つの触媒活性成分(A)および(B)を含む電極であって、
(a)成分(A)である少なくとも1つの第1の触媒活性金属および/または合金が、エタノールおよび/または少なくとも1つのC3〜C10を含有するアルコールを酸化し、
(b)成分(B)である少なくとも1つの第2の触媒活性金属および/または合金がアセトアルデヒド(CHCHO)および/または少なくとも1つのC3〜C10を含有するアルデヒドおよび/または酢酸および/または少なくとも1つのC2〜C9を含有するカルボン酸を酸化する、電極に関する。
【0007】
第2の触媒活性金属および/または合金がアセトアルデヒド(CHCHO)および/または少なくとも1つのC3〜C10を含有するアルデヒドを酸化させることが好ましい。
【0008】
驚くことに、かかる電極はエタノールまたはより高級なアルコールを充分に酸化させることができ、従って、エタノールで動作できる公知の膜電極アセンブリ(MEA)よりもかなり大きい電力密度を有する膜電極アセンブリ(MEA)を供給することを可能にすることがわかった。
【0009】
本発明に係わる電極は、電気または電子部品、またはデバイス内、特に膜電極アセンブリ(MEA)内に設けられた導電性部品であり、この膜電極アセンブリでは電気化学的反応が生じ、アセンブリはこの電気化学的反応中に自由になった電荷キャリアを電子伝導体およびイオン伝導体、特にMEAの電解膜に伝導するようになっている。
【0010】
電極の必須の必要要件は、互いに合金化されていない少なくとも2つの触媒活性成分(A)および(B)を含むことである。
【0011】
「合金」なる用語は、従来の一般的意味で解すべきである。従って、合金とは少なくとも2つの成分の金属化合物のことであり、この成分のうちの少なくとも一方は金属である。従って、本発明では、電極、好ましくはアノードは2つの成分(A)および(B)を含み、合金という意味での金属化合物としてこれら成分が存在しないことが必要である。他方、個々の成分(A)および(B)自身は、金属または合金を意味する。
【0012】
更に、成分(A)および(B)は触媒的に活性なものでなければならず、特に成分(A)は、低温、例えば90℃より低い温度、特に好ましくは80℃より低い温度、特に70℃より低い温度でエタノールおよび/またはより高級なアルコールを酸化できなければならない。成分(B)は、同じ温度レンジ内でアセトアルデヒドおよび/またはより高級なアルデヒド類、および/または酢酸および/またはより高級なカルボン酸を酸化できなければならない。成分(B)は、アセトアルデヒドおよび/またはより高級のアルデヒド、特にアセトアルデヒドを酸化できることが好ましい。しかしながら、驚くことにこれまで示されたように、成分(B)自身はエタノールおよび/またはより高級なアルコールを酸化するために活性である必要はない。
【0013】
次の記載において、2つの必須成分(A)および(B)についてより詳細に説明する。
【0014】
成分(A)とは、エタノールおよび/または少なくとも1つのC3〜C10を含有するアルコールを酸化する第1の触媒活性金属および/または合金のことである。C3〜C10を含有するアルコールは、n−ブタノール、イソプロパノール、ペンタノール、例えばn−ペンタノール、またはヘキサノール、例えばn−ヘキサノールであることが好ましい。成分(A)は、エタノールおよびC3〜C10を含有するアルコールの中からの混合物を酸化できることが好ましい。これら混合物は、本発明で定義されるような2つ、3つまたは4つ、好ましくは2つのアルコールの混合物、特にエタノールとブタノールとの混合物とすることができる。混合物が存在しない場合、成分(A)はエタノールを酸化できることが好ましい。この場合、少なくともアルデヒドが得られるようアルコールを酸化することが好ましい。特に成分(A)はアセトアルデヒドを生じさせるようにエタノールを酸化することが好ましい。また、酸、例えば酢酸を生じさせるよう、成分(A)がアルコールを酸化することを考えることもできる。従って、成分(A)はアセトアルデヒドおよび酢酸を生じさせるように、特にエタノールを酸化できる。
【0015】
従って、成分(A)は、周規律表の10族または9族の中の元素、好ましくは白金(Pt)またはロジウム(Rh)、特に白金(Pt)を含む第1の触媒活性金属および/または合金であることが好ましい。成分(A)は合金であることがより好ましい。成分(A)が合金である場合、この合金は、周規律表の14族の中の別の元素、好ましくは錫(Sn)を含むことが好ましい。従って、この特定の実施形態における成分(A)は2つの成分を有する合金である。成分(A)のうちの特別な構成要素としてPtSnがある。
【0016】
特に良好な結果を得るには、(例えば炭素の上に)成分(A)が支持されていることが好ましい。従って、特に適当な成分(A)として触媒PtSn/Cがある。
【0017】
本発明の別の必須要件は、電極が成分(A)と合金化されていない別の触媒活性成分(B)を含むことである。この成分(B)は、酸化生成物、特に成分(A)によって生成された酸化生成物を更に分解および/または酸化できるものでなければならない。従って、成分(A)と(B)とは別の触媒となっている。特に2つの成分(A)と(B)とは触媒活性金属および/または触媒活性合金において異なる成分である。
【0018】
従って、成分(B)はアセトアルデヒド(CHCHO)および/または少なくとも1つのC3〜C10を含有するアルデヒドを酸化する第2の触媒活性金属および/または合金である。C3〜C10を含有するアルデヒドは、n−ブタナール、ペンタナール、例えばn−ペンタナール、またはヘキサナール、例えばn−ヘキサナールであることが好ましい。成分(B)は、アセトアルデヒド(CHCHO)およびC3〜C10を含有するアルデヒドの中からの混合物を酸化できることが好ましい。この混合物は、本発明で定義されるような2つ、3つまたは4つ、好ましくは2つのアルデヒドの混合物、特にアセトアルデヒド(CHCHO)とブタナールとの混合物とすることができる。混合物が存在しない場合、成分(B)はアセトアルデヒド(CHCHO)を酸化できることが好ましい。特にアルデヒドがCOに変換されること、例えば(B)がCOを生じさせるようにアセトアルデヒド(CHCHO)を酸化することが望ましい。
【0019】
良好な変換率を得るには高い比率のアセトアルデヒド(CHCHO)および/またはC3〜C10を含有するアルデヒドが酸化されることが望ましい。従って、成分(B)が少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、特に少なくとも90重量%、例えば少なくとも99重量%のアルデヒドを酸化することが望ましい。
【0020】
従って、成分(B)は、周規律表の10族または9族の中の元素、好ましくは白金(Pt)を含む第2の触媒活性金属および/または合金であることが好ましい。成分(B)は合金であることが特に好ましい。成分(B)が合金である場合、この合金は周規律表の8族の中の別の元素、好ましくはルテニウム(Ru)またはロジウム(Rh)、特にルテニウム(Ru)を含むことが好ましい。従って、特定の実施形態では、成分(B)は2つの成分を有する合金である。成分(B)の特別な構成要素としてPtRuがある。
【0021】
特別に良好な結果を得るには、(例えば炭素の上に)成分(B)が支持されていることが好ましい。従って、特に適した成分(B)は触媒PtRu/Cである。
【0022】
既に上で述べたように、本発明における必須必要要件は、成分(A)と(B)とが合金とならないことである。すなわちこれら成分が金属混合物を形成せず、別個に構成された(化学的)単位を形成することである。これら成分は電極上および/または電極内で一様に分散できる。別の実施形態では、これらの成分、特に成分(A)および(B)が、反応体、すなわちアルコール、特にエタノールが段階的に反応できるように配置されている。特に本発明に係わる電極は、燃料電池における膜電極アセンブリ(MEA)に適したものでなければならない。従って、成分(A)および(B)が一層ごとに電極層に塗布されている場合、または濃度が変化するように成分(A)と(B)とが電極膜に存在している場合、アルコール、特にエタノールの段階的変換が生じる。従って、好ましい実施形態は3層構造となっており、その中で成分(A)は中間層に相当し、電極膜が中間層の1方の側面をカバーし、他方成分(B)が中間層の別の側面の少なくとも一部、好ましくは全体をカバーしている(図3参照)。別の実施形態では、電解膜に濃度が変化するように成分(A)と(B)が塗布されている(図4参照)。入口における成分(A)の濃度は比較的高く(すなわち高アルコール濃度となっており)、成分(B)の濃度は比較的低い。これら濃度の比率は、出口、すなわち排出口に向かって正確に反転する。すなわち成分(B)の濃度は比較的高く、成分(A)の濃度は比較的低くなっている。
【0023】
電極はスタート材料から随意的に異なる酸化生成物を発生し、および/または別の酸化生成物に変換し続ける、更に別の触媒活性成分を含むことができる。従って、電極が酢酸からCOへの更なる変換を可能にする別の触媒活性成分を含むことも特に考えられる。
【0024】
特に良好な結果を得るには、成分(A)の触媒活性金属と成分(B)の触媒活性金属との比をほぼ同じにすべきである。従って、第1成分(A)と第2成分(B)との金属部分の重量比を3:1〜1:3、好ましくは2:1〜1:2、特に1.5:1〜1:1.5、例えば1:1とすることが好ましい。
【0025】
更に成分(A)および(B)とは別に、電極はアイオノマーを含むことが好ましい。これらアイオノマーは熱可塑性樹脂である。これらアイオノマーは、非有極性モノマーと有極性モノマーとを共重合することによって得られる。極性結合は結晶化を抑制し、「イオン架橋」を生じさせる。
【0026】
従来の熱可塑性樹脂と対照的に、アイオノマーにはその内部で副原子価力とイオン結合の双方が効果的になるという利点がある。これらイオン結合は特に強力であり、そのような特性を有する物質を提供する。更に、ほとんどの他のプラスチックと対照的に、アイオノプラスチックは電解質として働くことができる。
【0027】
この種の構成要素として、約2100kg/mの密度および約0.5×10−3〜2.31×10−3(m・オーム)−1の導電度を有するナフィオン(Nafion)、例えばスルホン化テトラフルオロエチレン・ポリマー(PTFE)がある。この種の別の構成要素として、スルホン化ポリエーテル・エーテル・ケトン(sPEEK)がある。
【0028】
電極は、少なくとも20重量%、より好ましくは30重量%のアイオノマーを含むことが好ましい。特定の実施形態では、電極内のアイオノマー部分は30〜50重量%の範囲内にある。
【0029】
本発明に係わる電極を調製するために、炭酸二アンモニウム(NHCOまたは二炭酸アンモニウムNHHCOのような孔形成のための薬剤を使用することも可能である。
【0030】
本発明に係わる電極は、アノードとして、好ましくは特に燃料電池内の膜電極アセンブリ(MEA)のアノード電極として使用される。
【0031】
従って、本発明は、膜電極アセンブリまたは本発明に係わる電極を含む燃料電池にも関する。
【0032】
膜電極アセンブリ(MEA)のアノードは、本発明に係わる電極であることが好ましい。更に、膜としての膜電極アセンブリ(MEA)がプロトン交換膜、特に上記のようなアイオノマーを含むことが望ましい。好ましいことに、本発明に係わる電極は、プロトン交換膜となるように熱間圧延されている。この方法とは異なり、高温塗布、ドクターブレードを用いたコーティングまたはスクリーン印刷により電極構造体を塗布することもできる。本発明のカソードとして、当技術分野の従来のカソード、例えばプラチナ、またはコバルトとのプラチナ合金製のカソードも使用できる。
【0033】
最後に、本発明は、燃料電池内でアノードとして働く本発明に係わる電極を含む燃料電池にも関する。かかる燃料電池は、上記のような膜電極アセンブリ(MEA)を有することが好ましい。特定の実施形態では、燃料電池は直接エタノール型燃料電池である。すなわち燃料電池は、エタノールで満たされたアノード区画を含む。
【0034】
本発明は、本発明に係わる電極の作製にも関する。すなわち本発明の可能な実施形態のいくつかを得るよう、成分(A)と成分(B)とを混合する。混合中、モルタル、ボールミルまたは別の機械式研磨機構により混合するとき発生し得る過度に高い圧力を防止し、成分(A)と成分(B)との間の望ましくない合金の形成を防止すべきであることに注意しなければならない。その後、このように作製された混合物に水とアイオノマーの分散液を添加し、混合物をブレンドすることが望ましい。このようにして得られたインクを、例えば塗布によって基板に塗布する。膜電極アセンブリ(MEA)を作製する場合、基板は上記のようなプロトン交換膜であることが好ましい。これとは異なり、基板はガス拡散媒体、例えば東レまたはSGLによって販売されているようなカーボンペーパーまたはカーボンフェルト(商品名Sigracet)でもよい。高温圧縮により別のステップでこの基板をプロトン交換膜に貼りつける。
【0035】
上記のような勾配配置を有する膜電極アセンブリ(MEA)を作製するために次のステップを実行する。
(a)異なる比を有する数種の混合物となるように、第1の触媒活性金属および/または合金(A)と、第2の触媒活性金属および/または合金(B)とを混合する。
(b)個々の混合物に水とアイオノマーの分散液を添加し、ブレンドする。
(c)ドクターナイフを用いて、ストライプ形状となるように基板上に個々の混合物をコーティングし、よってストライプの順序が成分(A)対成分(B)の比の線型勾配を形成する。
【0036】
より詳細には、勾配配置を有するMEAの作製は次のステップを含む。
【0037】
ステップa)
異なる比、特に3:1、2:1、1:1、1:2および1:3の比で、成分AおよびBを含む数種のインク、好ましくは5種類のインクを作製した。成分AおよびBの各々は、対応する重量比の重量となっており、各ケースにおいて、5倍の量の水とアイオノマーの分散液、例えばナフィオン溶液を添加した。アイオノマーの比率、例えば固体内のナフィオンの比率が後で好ましくは40重量%に達するよう、アイオノマー分散液、例えばナフィオン溶液の量を選択した。処理する約10分前に、インクに好ましくは炭酸二アンモニウムを添加し、固体でのその比率が好ましくは10重量%となるようにした。
【0038】
ステップb)
好ましくはA:B=3:1、2:1、1:1、1:2、1:3の比の順序で端部の長さの5分の1にわたって、適当な基板、例えばSigracet35ACのタイプのカーボンフェルトの端部に、各インクのストライプを塗布する。その後、基板上で均一となるように、塗布端部から離間するよう、ドクターブレードによってインクを分散させる。こうして得られた第1の電極層を空気内で好ましくは130℃でオーブン内で乾燥させ、多孔性の極めて接着力のある構造体を形成した。
【0039】
ステップc)
所望する金属配合量が得られるような頻度でステップb)を繰り返す。一方が他方の上になるように、同じ触媒組成を有するストライプを配置する。
【0040】
ステップd)
高温圧縮により、電極と膜、例えばナフィオン膜およびカソード電極とを接続しMEAを得る。
【0041】
ステップe)
DEFCまたはDEFCスタック内に、こうして得られたMEAを組み込み、最大濃度の成分Aを有するストライプが燃料の入口に配列され、最高濃度の成分Bを有するストライプが燃料の排出開口部に配列される(図4参照)。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【発明を実施するための形態】
【0043】
次に、例により本発明についてより詳細に説明する。

1) 高温スプレーによる膜電極アセンブリ(MEA)の作製
アノードに対し、PtSn/C(成分(A))(例えばバルカンXC72上のE−Tek C 14−40/Sn HP40%PtSn合金(3:1a/o))およびPtRu/C(成分(B))(カーボンブラック上の、例えばジョンソン&マシュー社のHiSPEC10000 40%白金、20%ルテニウム)触媒を使用した。金属の比率に基づく重量比2:1で2つの触媒を混合し、10倍の重量の水とアイオノマーの分散ナフィオン溶液を添加し、均質ブレンドし、電極が固体に対して40重量%のアイオノマーを含むようにアイオノマー分散液の量を選択した。120〜140℃に加熱したガス拡散媒体上に、このようにして得られたインクを塗布し、水を急速に蒸発させ、アイオノマーが触媒粒子および基板に強力に結合するようにした。その後、空気中において1時間オーブン内で130℃で焼戻しまたは焼成する。こうして得られた電極を、次にプロトン交換膜上で高温圧縮する。別の対策として、基板としてのイオン交換膜上にインクを直接塗布してもよい。
【0044】
こうして得られた膜電極アセンブリ(MEA)をDEFC電池内で使用したところ、Pt/SnまたはPtRu触媒しか使用されていない同等の金属配合量を有する膜電極アセンブリ(MEA)よりも、電力密度がかなり高くなる(図1および図2参照)。
【0045】
2)ドクターブレードまたはブラシを用い、その後高温圧縮によるガス拡散電極からのMEAの作製
【0046】
2:1の比で触媒成分を混合し、5倍の量の水で処理する。その後、ナフィオン分散液を添加し、固体でのナフィオンの比率が40重量%となるようにする。次にインクに対して均質な混合を行う。処理前の約10分間、粉末としてインクに炭酸二アンモニウムを添加した。この炭酸二アンモニウムの量は、約10%の固体成分量に対応するように選択した。その後ブラシまたはドクターブレードを用い、基板としてのガス拡散媒体上に層状にインクを塗布する。各層の後で1時間、130℃でオーブン内で電極を焼戻しまたは焼成する。このようにして溶剤が蒸発し、孔形成剤として添加されたアンモニウムカーボネートはアンモニア、二酸化炭素および水蒸気に急速に分解する。このように、多孔質だが、アイオノマーに起因して強力な接着力の層が形成された。電極が完全に作製された後に、例1で説明したように、この電極を電解質膜と共に高温圧縮する。
【0047】
3)高温スプレーによる電極の層構造体を有するMEA
【0048】
2つの触媒成分を別々に重量比2:1となるような重量とし、各ケースにおいて10倍の量の水とナフィオンの溶液を添加し分散させた。再び、各ケースにおいて固体でのナフィオンの比率が後で40重量%となるように、ナフィオン溶液の量を選択する。その後、120〜140℃に加熱されているアイオノマー膜上に成分Aを含有するインクをまず塗布する。その後、成分Aの層上に成分Bを含有するインクを120〜140℃で塗布する。最後に、空気中で1時間130℃のオーブン内でMEAを焼戻しまたは焼成する。
【0049】
4)ドクターブレードによるコーティングおよび高温圧縮による成分の勾配配置を有するMEA
【0050】
ステップa)
成分AおよびBを3:1、2:1、1:1、1:2および1:3の比で含む5種類のインクを作製した。この目的のために、各ケースにおいて成分AおよびBを対応する重量比の重量とし、各ケースにおいて5倍量の水とナフィオンの溶液を添加した。再び、各ケースにおいて、ナフィオンの固体に対する比率が後で40重量%となるようにナフィオンの量を選択する。炭酸二アンモニウムの処理の約10分前にインクを添加し、固体部分が10重量%となるようにする。
【0051】
ステップb)
適当な基板、例えばSigracet35ACタイプのカーボンフェルトの端部に、A:B=3:1、2:1、1:1、1:2、1:3の比の順序で、端部の長さの5分の1にわたって各インクのストライプを塗布する。その後、ドクターブレードにより、塗布端部から離間するように基板上に均一にインクを分散させる。こうして得られた第1の電極層を、空気中において130℃のオーブン内で乾燥し、例2)に記載したように多孔質の強力接着力の構造体を形成した。
【0052】
ステップc)
所望する金属配合量が得られるような頻度でステップbを繰り返す。同じ触媒組成を有するストライプを、一方が他方の上に載るよう常時配置する。
【0053】
ステップd)
高温圧縮により電極をナフィオン膜およびカソード電極に接続しMEAを得る。
【0054】
ステップe)
こうして得られたMEAを、DEFCまたはDEFCスタック内に組み込み、最大濃度の成分Aを有するストライプを燃料の入口に配列させ、最大濃度の成分Bを有するストライプを燃料の排出開口部に配列させる(図4参照)。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極上および/または電極内に存在し、互いに合金化されていない少なくとも2つの触媒活性成分(A)および(B)を含む電極であって、
(a)成分(A)である少なくとも1つの第1の触媒活性金属および/または合金が、エタノールおよび/または少なくとも1つのC3〜C10を含有するアルコールを酸化し、
(b)成分(B)である少なくとも1つの第2の触媒活性金属および/または合金がアセトアルデヒド(CHCHO)および/または少なくとも1つのC3〜C10を含有するアルデヒドおよび/または酢酸および/または少なくとも1つのC2〜C9を含有するカルボン酸を酸化する、電極。
【請求項2】
前記成分(A)および/または前記成分(B)は合金である、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記成分(A)および/または前記成分(B)は支持体上に存在する、請求項1または2に記載の電極。
【請求項4】
前記支持体は炭素である、請求項3に記載の電極。
【請求項5】
前記成分(A)はエタノールおよび/または少なくとも1つのC3〜C10を含有するアルコールを酸化しアセトアルデヒド(CHCHO)を生じさせるか、および/または少なくとも1つのC3〜C10を含有するアルデヒドを生じさせる、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の電極。
【請求項6】
前記成分(A)である前記第1の触媒活性金属および/または合金は、周規律表の10族の元素、好ましくは白金(Pt)であるか、または周規律表の10族の元素、好ましくは白金(Pt)を含む、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の電極。
【請求項7】
前記成分(A)は合金であり、周規律表の10族の元素、好ましくは白金(Pt)の他に周規律表の14族の元素、好ましくは錫(Sn)を含む、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の電極。
【請求項8】
前記成分(B)はアセトアルデヒド(CHCHO)および/または少なくとも1つのC3〜C10を含有するアルデヒドを酸化しCOを生じさせる、請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の電極。
【請求項9】
前記成分(B)である前記第2の触媒活性金属および/または合金は、周規律表の10族の元素、好ましくは白金(Pt)であるか、または周規律表の10族の元素、好ましくは白金(Pt)を含む、請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載の電極。
【請求項10】
前記成分(B)は合金であり、周規律表の10族の元素、好ましくは白金(Pt)の他に、周規律表の8族の元素、好ましくはルテニウム(Ru)を含む、請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載の電極。
【請求項11】
前記成分(A)の金属部分と前記成分(B)の金属部分との重量比は、3:1〜1:3の値である、請求項1〜10のうちのいずれか1項に記載の電極。
【請求項12】
前記電極はアイオノマーを含む、請求項1〜11のうちのいずれか1項に記載の電極。
【請求項13】
前記電極は30〜50重量%のアイオノマーを含む、請求項1〜12のうちのいずれか1項に記載の電極。
【請求項14】
前記電極は孔形成剤を含む、請求項1〜13のうちのいずれか1項に記載の電極。
【請求項15】
請求項1〜14のうちのいずれか1項に記載の電極をアノードとして使用する方法。
【請求項16】
前記電極を膜電極アセンブリ(MEA)内で使用する、請求項15に記載の使用法。
【請求項17】
前記電極を燃料電池内で使用する、請求項14または15に記載の使用法。
【請求項18】
前記アセンブリはアノードとプロトン交換膜とカソードとを含み、前記アノードは請求項1〜14のうちのいずれか1項に記載の電極である、膜電極アセンブリ。
【請求項19】
前記プロトン交換膜はアイオノマーを含む、請求項18に記載のアセンブリ。
【請求項20】
請求項1〜14のうちのいずれか1項に記載の電極、または請求項18または19のいずれか1項に記載の膜電極アセンブリを含む燃料電池。
【請求項21】
前記燃料電池は直接エタノール型燃料電池である、請求項20に記載の燃料電池。
【請求項22】
前記第1の触媒活性金属および/または合金(A)と、前記第2の触媒活性金属および/または合金(B)とを混合する、請求項1〜14のうちのいずれか1項に記載の作製方法。
【請求項23】
a)前記第1の触媒活性金属および/または合金(A)と、前記第2の触媒活性金属および/または合金(B)とを混合し、
b)前記混合物に水とアイオノマーの分散液を添加し、ブレンドし、
c)このブレンド液を基板に噴霧する、請求項22に記載の作製方法。
【請求項24】
a)異なる比率を有する数種の混合物となるように、前記第1の触媒活性金属および/または合金(A)と前記第2の触媒活性金属および/または合金(B)とを混合し、
b)前記個々の混合物に水とアイオノマーの分散液を添加し、ブレンドし、
c)ドクターナイフを用い、基板上に前記個々の混合物をストライプ状にコーティングし、ストライプの順序が前記成分Aと前記成分Bとの比の線型勾配を形成する、請求項22に記載の作製方法。
【請求項25】
前記第1の触媒活性金属および/または合金(A)と、前記第2の触媒活性金属および/または合金(B)と層状に配置する、請求項22〜24のうちのいずれか1項に記載の作製方法。
【請求項26】
請求項22〜25のいずれか1項に記載の前記アノードを作製し、このアノードを高温圧縮により前記プロトン交換膜上に塗布する、膜電極アセンブリの作製方法。

【公表番号】特表2010−532543(P2010−532543A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513982(P2010−513982)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058551
【国際公開番号】WO2009/007294
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(505250029)フラウンホーファー − ゲゼルシャフト ツル フェーデルング デル アンゲヴァントテン フォルシュング エー.ファォ. (6)
【Fターム(参考)】