説明

膝サポーター

【課題】装着操作が容易で、痛みに応じて適切な箇所を重点的に圧迫、固定、保温等することができ、簡単な製造工程で製作可能な膝サポーターの提供。
【解決手段】膝関節の前面を被覆する部位に、異なる伸長性を有する複数の領域1,3A,3Bが編み分け編成されて設けられ、前記部位のうち、膝蓋骨周囲を被覆する一部の領域1が、他の領域3A,3Bに比べて低い伸長性を有する低伸長性領域とされた膝サポーターを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膝用のサポーターに関する。より詳しくは、医療用、生活用、スポーツ用等として膝の機能を保護、制限、補強、強化等したり、膝関節の疼痛軽減、保温等を行うために用いられる膝サポーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変形性膝関節症や膝関節炎などの膝の痛みを緩和することを目的として、膝関節を固定したり、保温したりするための膝用のサポーターが種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、本体の膝蓋骨に当る部分の上下にそれぞれ横方向に配置され一端を本体に固定し他端を本体に脱着可能にした2本のストラップと、膝蓋骨の側方に当るように両ストラップに固定したパテラパッドと、を備える膝サポーターが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、伸縮性素材と非伸縮性素材又は伸縮性素材から成る本体と、本体を構成する伸縮性素材の所定箇所の伸縮性を処理剤の含浸処理により変えた部分とを有することを特徴とする被覆装具が開示され、その一例として膝サポーターが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平6−12747号公報
【特許文献2】特許第2818209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
膝サポーターは、装着操作が容易であり、装着感に優れ、必要な部位のみを圧迫、固定、保温等して歩行、階段の昇降、正座等の日常動作を阻害しないことが必要である。また、一概に膝の痛みといってもその状態は様々であり、痛みが発生し易い箇所がある一方で、日によって痛む箇所が変化することもあるため、膝サポーターは、痛みに応じて適切な箇所に重点的な圧迫、固定、保温等を行えることが望ましい。
【0007】
上記特許文献1に開示された膝サポーターは、2本のストラップによってパテラパッドを膝蓋骨の側方に密接させて固定することで、膝蓋骨に側方からの圧迫圧を加えた状態で膝関節を固定することができる。一方で、この膝サポーターは、構造がやや複雑なために、装着操作に手間がかかる場合があった。
【0008】
また、上記特許文献2に開示される膝サポーターは、含浸処理を施した部位の圧迫力や保温力等を適宜高めることで、膝関節の所望の箇所に圧迫圧等を加えることができる。一方で、この膝サポーターの製造には、伸縮性素材の含浸処理という特別な工程が必要となる。
【0009】
本発明は、装着操作が容易で、痛みに応じて適切な箇所を重点的に圧迫、固定、保温等することができ、簡単な製造工程で製作可能な膝サポーターを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題解決のため、本発明は、膝関節と該膝関節近位の大腿及び下腿を被覆する筒状の装具として構成され、膝蓋骨周囲を被覆する部位に異なる伸長性を有する複数の領域が編み分け編成されて設けられ、前記部位の少なくとも一部が該部位以外の領域に比べて低い伸長性を有する低伸長性領域とされた膝サポーターを提供する。
この膝サポーターにおいて、前記低伸長性領域は、膝蓋骨中央を被覆する箇所を囲繞する枠状に配されていることが好ましい。また、前記低伸長性領域のうち最も伸長性が低くされた最低伸長性領域は、膝関節内側若しくは外側の一方側のみに、又は、膝関節上側若しくは下側の一方側のみに、配されていることが好ましい。
また、この膝サポーターにおいて、前記異なる伸長性を有する複数の領域は、伸長性が膝の周方向に変化するように配列されていることが好ましい。
さらに、この膝サポーターにおいて、前記膝蓋骨周囲を被覆する部位は、カットボス加工により異なる伸長性を有する複数の領域に編み分け編成されたものとできる。この場合において、カットボス加工の際に挿入する添え糸には、地糸とは異なる色で、かつ地糸と同系色の糸を使用することが好適となる。また、カットボス加工がなされた部位の皮膚接触面側に、カットボス加工の際に挿入する添え糸のカット端部の集合により形成される凸状部を設けることも好適である。
【0011】
本発明において、「膝蓋骨周囲」とは、膝関節において膝蓋骨外縁に沿った箇所を意味するものとする。膝蓋骨外縁に沿った箇所は、膝蓋骨の外縁上に加えて、外縁近傍をも含む。外縁近傍は、具体的には、膝蓋骨の外縁よりも内側であって膝蓋骨上に位置する膝蓋骨外縁内側と、膝蓋骨の外縁よりも外側であって膝蓋骨上に位置しない膝蓋骨外縁外側と、のうち、膝蓋骨外縁に近い箇所(概ね、膝蓋骨外縁から内側又は外側に距離で5cm以内の箇所)を指す。
【0012】
また、本発明において、「伸長性」とは引き伸ばし易さを意味する。伸長性が低い場合には、引き伸ばし難く、強い緊締力が得られる。一方、伸長性が高い場合には、引き伸ばし易く、緊締力は弱くなる。
伸長性の測定は、一定領域に、その部分の生地が裂けたり、破断したりしない程度の一定荷重を加えた状態で、その領域の生地の引き伸ばし量を評価することによって行う。
具体的には、例えば、以下のような伸長率を測定して行う。すなわち、膝サポーターの伸長性測定領域にチャック幅25mm、チャック間距離L(30mm)の条件で引張試験機のチャックを取り付け、サポーターの周径方向(装着時の垂直方向と直交する方向)に引張速度30mm/分で20Nの荷重をかけて引張ったときの伸びE(mm)を測定する。その結果に基づいて次式で伸長率を算出する。引張試験には、例えば、島津製作所社製 引張試験機(オートグラフAG−I,ロードセル1kN)を使用できる。なお、サポーターが円筒状の場合は、サポーターの一部をカットし円筒を開いてシート状にして、測定部にチャックを挟めるようにして測定する。
伸長率(%)=(E/L)×100
【発明の効果】
【0013】
本発明により、装着操作が容易で、痛みに応じて適切な箇所を重点的に圧迫、固定、保温等することができ、簡単な製造工程で製作可能な膝サポーターが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第一実施形態に係る膝サポーターを説明する模式図である。
【図2】本発明の第二実施形態に係る膝サポーターを説明する模式図である。
【図3】本発明の第三実施形態に係る膝サポーターを説明する模式図である。
【図4】本発明の第四実施形態に係る膝サポーターを説明する模式図である。
【図5】本発明の第五実施形態に係る膝サポーターを説明する模式図である。
【図6】本発明の第一実施形態に係る膝サポーターの変形例を説明する模式図である。
【図7】カットボス加工の際に挿入する添え糸のカット端部の集合により形成される凸状部を説明する図面代用写真である。膝サポーターAの裏側(皮膚接触面となるサポーターの内側)を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0016】
1.第一実施形態
(1)全体形状
図1は、本発明の第一実施形態に係る膝サポーターを説明する模式図である。(A)は正面図、(B)は背面図を示す。
【0017】
図1中、符号Aで示す膝サポーターは、伸縮性素材により、膝関節と膝関節近位の大腿及び下腿を被覆する筒状の装具として形成されている。
【0018】
膝サポーターAは、膝関節近位の大腿から膝関節近位の下腿までを覆う長さを有する。膝サポーターAの長さ(筒の開口両端間の距離)は、着用者の身体に合わせて適宜設定され得るが、例えば10〜80cm、好ましくは15〜70cm、さらに好ましくは20〜60cmである。また、膝サポーターAは、膝関節近位の大腿から膝関節近位の下腿までを挿入可能な内径を有する。膝サポーターAの内径も、着用者の身体に合わせて適宜設定することができるが、例えば20〜100cm、好ましくは25〜90cm、さらに好ましくは30〜80cmである。
また、膝サポーターAの両端における開口部分の内径は、左右兼用または上下入れ替えても装着できるように、上端内径と下端内径の比が、1.0:0.8〜0.8:1.0となることが好ましく、1.0:1.0となることが特に好ましい。
膝サポーターAの長さ及び内径は、装着時には伸縮性素材の伸縮によって変化し得るものであり、上記数値範囲は非装着時の値を示す。膝サポーターAの長さ及び内径は、装着時において以下に説明する適切な圧迫圧が膝関節各所に加えられるように調整される。
【0019】
(2)編成
膝サポーターAの編生地を構成する糸の素材としては、天然繊維、化学繊維のいずれでもよく、例えば、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、セルロース系繊維(綿、レーヨン、ポリノジック、リヨセル等)、ポリウレタン系繊維、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン,ポリプロピレン等)、アセテート系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、毛(羊毛、獣毛等)などを単独で用いた糸、又はこれら繊維を混用した糸を用いることができる。糸の種類としては、モノフィラメント、マルチフィラメント、撚糸、カバードヤーン、コアヤーン等が利用でき、伸縮加工や嵩高加工等を施したものを利用してもよい。
【0020】
膝サポーターAの編成は、経編又は緯編の各種編組織が利用でき、例えば、平編生地、ゴム編(リブ編)生地、パール編生地、タック編生地、丸編生地、横編生地、トリコット生地、ラッシェル生地、パイル編生地、添え糸編生地等が利用できる。膝サポーターAの伸長性や伸縮性は、これらの編組織を構成する糸にポリウレタン繊維のカバードヤーンやゴム糸等の弾性糸を挿入したり、これらの弾性糸の挿入本数を調節したりすることで、調節することが可能である。膝サポーターAは、ポリアミド系糸等の地糸にポリウレタン糸ややゴム糸等の弾性糸を挿入した筒状のゴム編物(リブ編物)として、丸編み機や靴下編み機により好適に編成され得る。
【0021】
さらに、膝サポーターAの編成では、少なくとも膝関節前面の膝蓋骨周囲を被覆する部位に異なる編組織が編み分けられる。編組織の編み分けは、編組織の変化、編密度の調整、ループ長の調整、編み糸種類の変更等によって行うことができる。異なる編組織を編成することによって、膝サポーターAの所定の部位に所定の伸長性を付与できる。
【0022】
編組織の編み分けは、例えば、地糸(表糸と裏糸)に別の糸(添え糸)を編み込んで編成を行いながら、編み込む添え糸の本数や種類を部分的に変化させるカットボス加工によって行うことが好ましい。具体的には、表糸と裏糸を供給して丸編機で編む際に、低い伸長性を付与したい部位に添え糸(中糸)を表糸と裏糸の間に挿入して、表糸と添え糸と裏糸をそろえて供給して丸編機で編み込む。次に、伸長性を高くしたい部位は、添え糸が表糸と裏糸の間に挿入されないように添え糸を裏側に浮かせて、表糸と裏糸のみで編む。そして、裏側に浮かされた添え糸をカットすることにより、添え糸が挿入された伸長し難い低伸長性領域と、表糸と裏糸のみで編まれた伸長し易い高伸長性領域を編み分ける。また、添え糸として用いる糸の本数や種類を順次変化させながら編組織を編成していくことによっても伸長性の高低を調整でき、添え糸を挿入した領域又は添え糸の数が相対的に多い領域を伸長し難い低伸長性領域(符号1、3A,3Bで示す領域)として編み分け、添え糸を挿入しない領域又は添え糸の数が相対的に少ない領域を伸長し易い高伸長性領域(符号4A,4B、5で示す領域)として編み分けることができる。このように、カットボス加工を用いることで、簡単な製造工程で、異なる伸長性を有する複数の領域を簡単に編み分け編成することが可能となる。
【0023】
カットボス加工の際に挿入する添え糸としては、編成の地糸の色とは異なる色の糸を使用することが好ましく、編成の地糸の色とは異なる色であってかつ地糸と同系色の糸を使用することがさらに好ましい。
添え糸を地糸の色と異なる色にすることで、低伸長性領域の境界が他の領域と視覚的に区別することができるので、その色の違いを目安として、低伸長性領域を膝蓋骨周囲の適切な位置に合わせて膝サポーターAを簡便に装着することが可能となる。
また、添え糸に地糸と同系色の糸を用いることで、長期間の使用や外部との摩擦により添え糸が地糸の編目から抜けたり、本来は生地表側に現れるはずの添え糸が製造工程で生地表側から一部抜けてしまったりした場合でも、同系色であれば目立たず、糸の解れやまだら模様の発生によるデザイン性の低下を防ぐことが可能となる。なお、ここで、同系色とは、同一又は類似する色相をもつ色同士を意味するものとする。
なお、添え糸の地糸の編目からの抜け落ちは、地糸に編みこむ添え糸の長さを長くしたり、伸縮し難い糸を添え糸に用いたり、地糸に対する摩擦抵抗の高い糸(紡績糸、撚糸、ダル糸等の滑り難い糸)を添え糸に用いたりすることによって、防止することができる。
【0024】
カットボス加工を用いて膝蓋骨周囲を被覆する部位に低伸長性領域を編成する場合、膝サポーターAの裏側(皮膚接触面となるサポーターの内側)に、挿入した添え糸の集合により形成される凸状部を設けることが好ましく、カットした添え糸端部の集合により形成される凸状部(図7参照)を設けることがさらに好ましい。このカットボス加工の添え糸からなる凸状部は、低伸長性領域の外縁又は膝蓋骨周囲の外縁に沿って線状の凸状部として設けることが特に好ましい。カットボス加工を用いることで、膝サポーターAの皮膚接触面側に、添え糸のカット端による凸状部を簡便に形成することができる。そして、この凸状部により、膝蓋骨周囲に効果的に圧迫を付与することが可能となる。これにより、面状の低伸長性領域の緊締作用と相俟って、膝蓋骨周囲への疼痛軽減効果等を高めることができる。
【0025】
添え糸の集合により形成される凸状部の高さ(他の部分より凸になっている部分の厚さ)は、0.2〜10mmが好ましく、0.4〜5mmであることがさらに好ましい。また、この凸状部を線状に形成した場合は、添え糸の集合により形成される凸状部の幅(凸状部の長手方向に直交する方向の長さ)は、0.5〜50mmが好ましく、1.0〜10mmであることがさらに好ましい。凸状部をこの範囲の高さと幅にすることで、違和感、不快感を与えず、適度な固定感・支持感、疼痛軽減効果を与えることができる。このような凸状部形成のためには、カットする添え糸に、ウリー糸、撚糸、カバードヤーン、ネップヤーン、分繊糸等の伸縮加工又は嵩高加工した糸を用いることが好ましく、このような糸を用いることで、凸状部が簡便に形成することができるとともに、皮膚に対しても好適な感触を付与することが可能となる。
【0026】
(3)各領域の伸長性と作用
膝サポーターAには、膝蓋骨周囲を被覆する部位に、異なる伸長性を有する複数の領域が編み分け編成されて設けられている。以下、各領域の伸長性と作用について順に説明する。
【0027】
(i)領域1・領域3
(A)伸長性
図1中、符号1で示す領域は、膝蓋骨周囲を被覆する領域の一部に設けられ、同じく膝蓋骨周囲を被覆する領域の一部に設けられた領域3A,3Bや以下に説明する領域4、領域5に比べて低い伸長性を有し、伸び難く形成された最低伸長性領域(以下、「最低伸長性領域1」ともいう)とされている。なお、図中、領域6は、膝サポーターAの装着時において着用者の膝蓋骨中央を被覆する領域を示す。本実施形態では、領域2は欠番となっている。
【0028】
最低伸長性領域1は、膝蓋骨周囲を被覆する領域のうち、膝関節内側又は外側の一方側(図1(A)では、領域6の右側)のみに設けられ、膝蓋骨中央を被覆する領域6を中心として膝の周方向に非対称に配置されている。すなわち、最低伸長性領域1は、領域6の中心を通る矢状面を対称面として、非対称に膝サポーターAの膝蓋骨周囲に配置される。
【0029】
領域3A,3Bは、最低伸長性領域1に比べては高い伸長性を有するが、以下に説明する領域4及び領域5に比べては低い伸長性を有する低伸長性領域(以下、「低伸長性領域3A,3B」ともいう)とされている。
【0030】
上記のように最低伸長性領域1は領域6の右側に設けられており、最低伸長性領域1、低伸長性領域3A,3Bは、膝蓋骨中央を被覆する領域6を中心として、膝の周方向に非対称に配列されている。
また、最低伸長性領域1及び低伸長性領域3A,3Bからなる伸長性の低い領域は、領域6を囲繞する枠状に形成されている。
このように、最低伸長性領域1、低伸長性領域3A,3Bにより膝蓋骨周囲全体に圧迫圧を加えるとともに、最低伸長性領域1による局所的圧迫を加えることで、膝蓋骨全体に支持感、安心感を与えるとともに、より効果的に疼痛軽減を図ることが可能となる。
【0031】
最低伸長性領域1及び低伸長性領域3A,3Bの伸長性は、例えば上述したカットボス加工において該領域に編み込む添え糸の本数や種類を適宜変更することによって、所望の範囲に設定できる。最低伸長性領域1の20N荷重時の伸長率は、例えば20〜120%、好ましくは30〜100%である。また、低伸長性領域3A,3Bの伸長率は、例えば50〜170%、好ましくは60〜160%である。なお、低伸長性領域3A,3Bの伸長率は、同一であっても、上記数値範囲内において異なっていてもよい。
【0032】
各領域の伸長性は、前述した伸長率の測定により行う。すなわち、まず、円筒状の膝サポーターの後面側(膝窩部側)を垂直方向(サポーターの周径方向と直交する方向)にカットして、膝サポーターを一枚の扁平なシート形態にする。次いで、チャック幅25mm、チャック間距離Lを30mmとして引張試験機のチャックを伸長率の測定領域に取り付け、サポーターの周径方向(装着時の垂直方向と直交する方向)に引張速度30mm/分で引張試験を行い、測定された20Nの荷重時の伸びE(mm)とチャック間距離L(mm)を用いて、次式により伸長率を算出する。
伸長率(%)=(E/L)×100
【0033】
領域1、領域3A,3Bは、伸長性が膝の周方向に段階的に変化していくように配列されている。すなわち、図1(A)中左側の低伸長性領域3Aから最低伸長性領域1へは伸長性が低下し、最低伸長性領域1から低伸長性領域3Bは伸長性が増すようにされている。
【0034】
(B)作用
膝蓋骨には、上極に大腿四頭筋腱が付着している。大腿四頭筋のうち、中間広筋は膝蓋骨底に付着し、外側広筋腱と内側広筋腱はそれぞれ膝蓋骨の外側縁、内側縁に付着している。また、膝蓋骨の下極には膝蓋靭帯が付着している。膝関節の伸縮運動は、大腿四頭筋の収縮が大腿四頭筋腱から膝蓋骨、膝蓋靭帯を経て、脛骨結節へ伝えられることによって行われる。変形性膝関節症や関節炎では、これらの腱や靭帯が膝蓋骨に付着する箇所で痛みが発生し易く、これらの箇所に例えば局所圧力を加えたり、膝蓋骨周囲全体をサポートしたりすることで痛みが緩和することが経験的に知られている。
【0035】
最低伸長性領域1は、上記のような膝蓋骨周囲の痛みの発生し易い箇所を強い緊締力によって被覆し、面圧迫を局所的に加えることによって、痛みを緩和して不安感を消失させる作用を発揮する。
【0036】
低伸長性領域3A,3Bは、膝蓋骨周囲のうち最低伸長性領域1によって被覆される箇所以外の膝関節前面を被覆し、膝蓋骨周囲に面圧迫を加えることによって、膝関節全体を固定し、安定感を与える作用を発揮する。また、最低伸長性領域1及び低伸長性領域3A,3Bにより、複数の圧迫圧の面圧迫(機械的刺激)を膝蓋骨周囲に加えることによって、膝関節の侵害受容性の神経ネットワークをかく乱(ゲートコントロール理論)し、疼痛を消失させることも可能と考えられる。
【0037】
このとき、最低伸長性領域1及び低伸長性領域3A,3Bを伸長性が膝の周方向に段階的に変化していくように配列したことにより、周方向の圧力差の感知を際立たせることができる。これにより、着用者に最低伸長性領域1からの面圧迫圧を一層強く感知させることができ、痛みの緩和作用や不安感の消失作用を高めることが可能と考えられる。
【0038】
(ii)領域4・領域5
(A)伸長性
図1中、符号4A,4Bで示す領域は、膝関節の側面を被覆する部位とこれに連続する膝関節の後面の一部を被覆する部位に設けられている。領域4A,4Bは、膝関節の前面を被覆する最低伸長性領域1及び低伸長性領域3A,3Bよりも高い伸長性を有し、次に説明する領域5よりも低い伸長性を有する高伸長性領域(以下、「高伸長性領域4A,4B」ともいう)とされている。
【0039】
領域5は、領域4A,4Bが被覆する膝関節の後面の一部を除く後面の残りの部分を被覆する部位と、大腿部及び下腿部を被覆する部位と、に設けられ、領域4A,4Bよりもさらに高い伸長性を有し、伸長し易く形成された最高伸長性領域(以下、「最高伸長性領域5」ともいう)とされている。最高伸長性領域5は、膝関節の伸縮運動に伴う周径変化に対応可能な伸長性を有している。
【0040】
高伸長性領域4A,4Bの20N荷重時の伸長率は、例えば70〜300%、好ましくは90〜200%である。また、最高伸長性領域5の伸長率は、例えば100〜400%、好ましくは120〜300%である。
【0041】
(B)作用
高伸長性領域4A,4Bは、膝関節の側面及び後面に発生する痛みに対しても面圧迫を加え、痛みを緩和する作用を発揮する。
【0042】
最高伸長性領域5は、動作による筋肉や膝関節の急速な形状変化に順応し、装着感やフィット性を向上させるとともに装着時のズレを防止し、膝全体に適度な面圧迫を加え、不安感の消失に寄与する。
【0043】
(iii)領域6・7
(A)伸長性
膝サポーターAの装着時において着用者の膝蓋骨中央を被覆する領域6の伸長性は、高伸長性領域4A,4B又は最高伸長性領域5と同程度に設定されることが好適であるが、これに限定されず、最低伸長性領域1及び低伸長性領域3A,3Bよりも高ければよいものとする。
【0044】
膝サポーターAの上端、下端の全周領域には、サポーターAの装着位置のずれを防止し得る適度な伸縮性が付与された領域7A,7Bが設けられている。領域7A,7Bの伸長性は、過度の締め付けがなく、しっかりと密着する程度に設定することができ、例えば、20N荷重時の伸長率は、5〜250%、好ましくは10〜200%である。
【0045】
(4)効果
以上のように、膝サポーターAには、伸長性の低いほうから順に、最低伸長性領域1、低伸長性領域3A,3B、高伸長性領域4A,4B、最高伸長性領域5という異なる伸長性を有する複数の領域が設けられ、これらの各領域が適切な緊締力によって膝関節各所を圧迫するように構成されている。
【0046】
また、膝関節前面を被覆する最低伸長性領域1と低伸長性領域3A,3Bから、高伸長性領域4A,4B、最高伸長性領域5へと、伸長性が膝の周方向に段階的に変化していくように配列したことによって、最低伸長性領域1による痛みの緩和作用や不安感の消失作用が一層効果的に発現されるよう構成されている。
【0047】
さらに、最低伸長性領域1を膝蓋骨の内側又は外側の一方側にのみ設けているため、上下方向を適宜変更して装着することによって、比較的症状の多い膝内側又は膝外側の痛みに対して、1つのサポーターでどちら側にも適切に圧迫、固定等を行うことができる。さらに左右どちらの膝にも対応可能となるため、汎用性があり、使い勝手が良い膝サポーターが簡便な構造、製造工程で作成し得る。
【0048】
2.第二実施形態
(1)全体形状・編成
図2は、本発明の第二実施形態に係る膝サポーターを説明する模式図である。(A)は正面図、(B)は背面図を示す。
【0049】
図2中、符号Bで示す膝サポーターも、伸縮性素材により、膝関節と膝関節近位の大腿及び下腿を被覆する筒状の装具として形成されている。膝サポーターBの長さや径、編成は、膝サポーターAと同様である。
【0050】
(2)各領域の伸長性と作用
上述した膝サポーターAでは、膝蓋骨周囲を被覆する部位に、最低伸長性領域1と低伸長性領域3A,3Bの異なる伸長性を有する2つの領域を設けているが、膝サポーターBでは、膝関節前面を被覆する部位に設ける異なる伸長性を有する領域を3つとしている。以下、膝サポーターBについては、この3つの領域の伸長性と作用についてのみ説明する。膝サポーターBのその他の領域の伸長性と作用は、膝サポーターAと同様である。
【0051】
(i)領域1・領域2・領域3
(A)伸長性
図2中、符号2で示す領域は、膝蓋骨周囲を被覆する領域の一部に設けられ、同じく膝蓋骨周囲を被覆する領域の一部に設けられた最低伸長性領域1と低伸長性領域3Bとの間に配列された中低伸長性領域(以下、「中低伸長性領域2」ともいう)とされている。
【0052】
中低伸長性領域2は、最低伸長性領域1よりも大きく、低伸長性領域3Bよりは小さい伸長性を有する。中低伸長性領域2の20N荷重時の伸長率は、例えば30〜150%、好ましくは40〜120%である。
【0053】
中低伸長性領域2は、最低伸長性領域1と同様に、膝蓋骨周囲を被覆する領域のうち、膝関節内側又は外側の一方側(図2(A)では、領域6の右側)のみに設けられている。最低伸長性領域1、中低伸長性領域2、低伸長性領域3A,3Bは、膝蓋骨中央を被覆する領域6を中心として、膝の周方向に非対称に配列されている。すなわち、伸長性の低い領域1、領域2、領域3A,3Bは、領域6の中心を通る矢状面を対称面として、非対称に膝サポーターAの膝蓋骨周囲に配置される。
【0054】
伸長性の低い領域1、領域2、領域3A,3Bは、領域6を囲繞する枠状に形成されている。そして、領域1、領域2、領域3A,3Bは、伸長性が膝の周方向に段階的に変化していくように配列されている。すなわち、図2(A)中左側の低伸長性領域3Aから高伸長性領域4A,最高伸長性領域5へと、周方向左周りに伸長性が増すようにされ、図2(A)中右側の最低伸長性領域1から,中低伸長性領域2、低伸長性領域3B、高伸長性領域4B、最高伸長性領域5へと、周方向右周りに、伸長性が増すようにされている。
【0055】
(B)作用
最低伸長性領域1と中低伸長性領域2は、膝蓋骨周囲の痛みの発生し易い箇所を比較的強い緊締力によって被覆し、面圧迫を局所的に加えることによって、痛みを緩和して不安感を消失させる作用を発揮する。また、膝蓋骨周囲は、歩行や屈伸などにより、形状が大きく変化する部位であるが、中低伸長性領域2を設けることで、膝蓋骨周囲の適度な圧迫は維持したまま、動作時のサポーターの順応性、フィット性を高め、サポーターのズレや装着時違和感を軽減する。
【0056】
低伸長性領域3A,3Bは、膝蓋骨周囲のうち最低伸長性領域1と中低伸長性領域2によって被覆される箇所以外の膝関節前面を被覆し、膝蓋骨周囲に面圧迫を加えることによって、膝関節全体を固定し、安定感を与える作用を発揮する。
【0057】
(3)効果
以上のように、膝サポーターBには、伸長性の低いほうから順に、最低伸長性領域1、中低伸長性領域2、低伸長性領域3A,3B、高伸長性領域4A,4B、最高伸長性領域5という異なる伸長性を有する複数の領域が設けられ、これらの各領域が適切な緊締力によって膝関節各所を圧迫するように構成されている。
【0058】
また、膝関節前面を被覆する最低伸長性領域1、中低伸長性領域2、低伸長性領域3A,3Bを、伸長性が膝の周方向に段階的に変化していくように配列するとともに、領域1、領域2、及び領域3A,3Bからなる枠状の低伸長性領域により膝蓋骨周囲全体を低伸長性の領域とすることによって、膝蓋骨全体に支持感、安心感を与え、最低伸長性領域1による痛みの緩和作用や不安感の消失作用が一層効果的に発現される。
【0059】
さらに、最低伸長性領域1及び中低伸長性領域2を膝蓋骨の内側又は外側の一方側にのみ設けているため、上下方向を適宜変更して装着することによって、比較的症状の多い膝内側又は膝外側の痛みに対して、1つのサポーターでどちら側にも適切に圧迫、固定等を行うことができる。さらに左右どちらの膝にも対応可能となるため、汎用性があり、使い勝手が良い膝サポーターが簡便な構造、製造工程で作成し得る。
【0060】
3.第三実施形態・第四実施形態
(1)全体形状・編成
図3及び図4は、それぞれ本発明の第三実施形態及び第四実施形態に係る膝サポーターを説明する模式図である。(A)は正面図、(B)は背面図を示す。
【0061】
図3及び図4中、符号C,Dで示す膝サポーターも、伸縮性素材により、膝関節と膝関節近位の大腿及び下腿を被覆する筒状の装具として形成されている。膝サポーターC,Dの長さや径、編成は、膝サポーターAと同様である。
【0062】
(2)各領域の伸長性と作用
上述した膝サポーターAでは、最低伸長性領域1を、膝蓋骨周囲を被覆する領域のうち、膝関節内側又は外側の一方側のみに設けているが、膝サポーターC,Dでは、膝関節上側又は下側の一方側のみに設けている。以下、膝サポーターC,Dについては、膝関節前面を被覆する部位に編成される最低伸長性領域1及び低伸長性領域3A,3Bの伸長性と作用についてのみ説明する。膝サポーターC,Dのその他の領域の伸長性と作用は、膝サポーターAと同様である。なお、これら第三実施形態及び第四実施形態では、領域2は欠番となっている。
【0063】
(i)領域1・領域3
(A)伸長性
図3中、符号1で示す領域は、膝蓋骨周囲を被覆する領域の一部に設けられ、同じく膝蓋骨周囲を被覆する領域の一部に設けられた領域3に比べて低い伸長性を有し、伸び難く形成された最低伸長性領域(以下、「最低伸長性領域1」ともいう)とされている。
【0064】
最低伸長性領域1は、膝蓋骨周囲を被覆する領域のうち、膝関節上側又は下側の一方側のみに設けられている。図3(A)では、最低伸長性領域1は、領域6の下側半分に「U字状」に配されている。最低伸長性領域1は、図4(A)に示すように、領域6の下側に傾斜した「U字状」に配してもよい。さらに、最低伸長性領域1は、「U字状」に限られず、例えば、半円状、扇状、コの字状等、膝蓋骨外縁に沿った箇所に種々の形状で配置され得る。
【0065】
領域3は、最低伸長性領域1に比べては高い伸長性を有するが、高伸長性領域4A,4B及び最高伸長性領域5に比べては低い伸長性を有する。
【0066】
最低伸長性領域1の20N荷重時の伸長率は、例えば20〜120%、好ましくは30〜100%である。また、低伸長性領域3の伸長率は、例えば50〜170%、好ましくは60〜160%である。
【0067】
(B)作用
最低伸長性領域1は、膝蓋骨周囲の痛みの発生し易い箇所を強い緊締力によって被覆し、面圧迫を加えることによって、痛みを緩和して不安感を消失させる作用を発揮する。
【0068】
低伸長性領域3は、膝蓋骨周囲のうち最低伸長性領域1によって被覆される箇所以外の膝関節前面を被覆し、膝蓋骨周囲全体に面圧迫を加えることによって、膝関節全体を固定し、安定感を与える作用を発揮する。
【0069】
このとき、膝蓋骨周囲に他の領域に比べて強い緊締力を発揮する最低伸長性領域1を配したことにより、最低伸長性領域1における他の領域間との圧力差の感知を際立たせることができる。これにより、着用者に最低伸長性領域1からの面圧迫圧を一層強く感知させることができ、痛みの緩和作用や不安感の消失作用を高めることが可能である。また、膝蓋骨周囲に段階的な圧力差を伴う面圧迫(機械的刺激)を加えることによって、膝関節の侵害受容性の神経ネットワークをかく乱(ゲートコントロール理論)し、疼痛を消失させることも可能となる。
【0070】
(3)効果
以上のように、膝サポーターC,Dには、伸長性の低いほうから順に、最低伸長性領域1、低伸長性領域3、高伸長性領域4A,4B、最高伸長性領域5という異なる伸長性を有する複数の領域が設けられ、これらの各領域が適切な緊締力によって膝関節各所を圧迫するように構成されている。
【0071】
また、膝蓋骨周囲に他の領域に比べて強い緊締力を発揮する最低伸長性領域1を配したことにより、最低伸長性領域1による痛みの緩和作用や不安感の消失作用が一層効果的に発現されるよう構成されている。
【0072】
さらに、最低伸長性領域1を膝蓋骨の上側又は下側の一方側にのみ設けているため、上下方向を適宜変更して装着することによって、膝蓋骨周囲の痛みの発生し易い箇所のうち、実際に痛む側のみに重点的な面圧迫を加えることできる。
【0073】
本発明に係る膝サポーターの最低伸長性領域1は膝蓋骨外縁に沿った箇所に種々の形状で配置することができる。膝蓋骨周囲の異なる箇所に最低伸長性領域1を設けた膝サポーター(例えば、上記の膝サポーターA,C,D)を、痛みの発生箇所に応じて使い分けることによって、必要な面圧迫を一層効果的に加えることができる。
【0074】
4.第五実施形態
(1)全体形状・編成
図5は、本発明の第五実施形態に係る膝サポーターを説明する模式図である。(A)は正面図、(B)は背面図を示す。
【0075】
図5中、符号Eで示す膝サポーターも、伸縮性素材により、膝関節と膝関節近位の大腿及び下腿を被覆する筒状の装具として形成されている。膝サポーターの長さや径、編成は、膝サポーターAと同様である。
【0076】
(2)各領域の伸長性と作用
上述した膝サポーターC,Dでは、膝関節前面を被覆する部位に、最低伸長性領域1と低伸長性領域3との異なる伸長性を有する2つの領域を編み分け編成して設けているが、膝サポーターEでは、膝関節前面を被覆する部位に設ける異なる伸長性を有する領域を3つとしている。以下、膝サポーターEについては、この3つの領域の伸長性と作用についてのみ説明する。膝サポーターEのその他の領域の伸長性と作用は、膝サポーターAと同様である。
【0077】
(i)領域1・領域2・領域3
(A)伸長性
図5中、符号2で示す領域は、膝蓋骨周囲を被覆する領域の一部に設けられ、同じく膝蓋骨周囲を被覆する領域の一部に設けられた最低伸長性領域1と低伸長性領域3との間に配された中低伸長性領域(以下、「中低伸長性領域2」ともいう)とされている。
【0078】
中低伸長性領域2は、最低伸長性領域1よりも大きく、低伸長性領域3Bよりは小さい伸長性を有する。具体的には、最低伸長性領域1の20N荷重時の伸長率は、例えば20〜120%、好ましくは30〜100%である。中低伸長性領域2の20N荷重時の伸長率は、例えば30〜150%、好ましくは40〜120%である。また、低伸長性領域3の伸長率は、例えば50〜170%、好ましくは60〜160%である。
【0079】
膝サポーターEにおいて、最低伸長性領域1は、膝蓋骨周囲を被覆する領域のうち、膝関節内側又は外側の一方側(図5(A)では、領域6の右側)のみに設けられており、中低伸長性領域2は、最低伸長性領域1とともに領域6を囲繞して配されている。
【0080】
領域1、領域2、領域3の伸長性は、中央に位置する領域6から外側に向かって段階的に変化していくようにされている。すなわち、領域6から最低伸長性領域1へは伸長性が低下し、最低伸長性領域1から中低伸長性領域2、低伸長性領域3へは伸長性が増すようにされている。
【0081】
(B)作用
最低伸長性領域1と中低伸長性領域2は、膝蓋骨周囲の痛みの発生し易い箇所を比較的強い緊締力によって被覆し、面圧迫を局所的に加えることによって、痛みを緩和して不安感を消失させる作用を発揮する。膝サポーターEは、緊締力の比較的強い中低伸長性領域2で膝蓋骨周囲全体を圧迫、支持することができるので、膝の不安定感や痛みが強い患者に好適な態様である。
【0082】
(3)効果
以上のように、膝サポーターEには、伸長性の低いほうから順に、最低伸長性領域1、中低伸長性領域2、低伸長性領域3、高伸長性領域4A,4B、最高伸長性領域5という異なる伸長性を有する複数の領域が編分け編成して設けられ、これらの各領域が適切な緊締力によって膝関節各所を圧迫するように構成されている。
【0083】
また、膝関節前面を被覆する最低伸長性領域1、中低伸長性領域2、低伸長性領域3の伸長性を、中央に位置する領域6から外側に向かって段階的に変化していくようにしたことによって、最低伸長性領域1による痛みの緩和作用や不安感の消失作用が一層効果的に発現されるよう構成されている。
【0084】
さらに、最低伸長性領域1を膝蓋骨の内側又は外側の一方側にのみ設けているため、膝サポーターBの上下方向を適宜変更して装着することによって、膝蓋骨周囲の痛みの発生し易い箇所のうち、実際に痛む側のみに重点的な面圧迫を加えることできる。なお、膝サポーターEにおいて、最低伸長性領域1は、膝サポーターC,Dで説明したように、膝蓋骨の上側又は下側の一方側にのみ設けてもよい。
【0085】
以上の各実施形態において同じ記号を付した領域であっても必ずしも伸縮特性が等しいというものではなく、各実施形態間では同じ記号を付した領域であっても伸長性に多少の差がある場合があるものとする。また、以上の各実施形態においては、膝関節と膝関節近位の大腿及び下腿を被覆する筒状の装具形態とした発明の例を示したが、本発明は、これに限定されず、例えば、オーバーニーソックス状、ストッキング状、タイツ状等の形態にした膝サポーターとしてもよい。
【0086】
本発明では、以上の各実施形態において示したように、領域1、領域2、及び領域3(3A、3B)のような膝蓋骨周囲を被覆する複数の低伸長性領域を、膝蓋骨周囲を囲むよう略枠状に配置するとともに、そのうち最低伸長性領域1は膝蓋骨周囲の一部(好ましくは膝蓋骨周囲の2割から8割の範囲、より好ましくは膝蓋骨周囲の3割から6割の範囲)を局所的に被覆するように配置することが好ましい。このような態様にすることで、膝蓋骨全体に支持感、安心感を与えると共に、疼痛発生しやすい部位を重点的に圧迫し疼痛軽減効果を高めることが可能となる。
各実施形態において説明した領域1、領域2、領域3(3A、3B)、領域4(4A、4B)、及び領域5の形状・配置は、このような作用・効果を奏し得るものであれば、上記各実施形態をベースにして様々なバリエーションを展開することができる。例えば、図1に示した第一実施形態の各領域の形状を変更し、図6に示すような態様等に展開することができる(図6(A)は正面図、(B)は背面図を示す)。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係る膝サポーターでは、膝関節の前面を被覆する部位に異なる伸長性を有する複数の領域を設けたことにより、これらの各領域が適切な緊締力によって膝関節各所を圧迫するように構成されている。従って、膝関節の疼痛軽減や屈曲運動支援、保温等のために好適に使用され得る。加えて、本発明に係る膝サポーターは、編み組織の編み分けによって伸長性の異なる領域を編成することにより、簡易な製造工程で作製することができる。
【符号の説明】
【0088】
A〜E 膝サポーター
1 最低伸長性領域
2 中低伸長性領域
3A,3B 低伸長性領域
4A,4B 高伸長性領域
5 最高伸長性領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝蓋骨周囲を被覆する部位に、異なる伸長性を有する複数の領域が編み分け編成されて設けられ、
前記部位の少なくとも一部が、該部位以外の領域に比べて低い伸長性を有する低伸長性領域とされた膝サポーター。
【請求項2】
前記低伸長性領域が、膝蓋骨中央を被覆する箇所を囲繞する枠状に配された請求項1記載の膝サポーター。
【請求項3】
前記異なる伸長性を有する複数の領域が、伸長性が膝の周方向に変化するように配列されている請求項1又は2記載の膝サポーター。
【請求項4】
前記低伸長性領域のうち、最も伸長性が低くされた最低伸長性領域は、膝関節内側若しくは外側の一方側のみに、又は、膝関節上側若しくは下側の一方側のみに、配されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の膝サポーター。
【請求項5】
前記膝蓋骨周囲を被覆する部位が、カットボス加工により異なる伸長性を有する複数の領域に編み分け編成され、カットボス加工の際に挿入する添え糸には、地糸とは異なる色で、かつ地糸と同系色の糸が使用される請求項1〜4のいずれか一項に記載の膝サポーター。
【請求項6】
前記膝蓋骨周囲を被覆する部位が、カットボス加工により異なる伸長性を有する複数の領域に編み分け編成され、カットボス加工がなされた部位の皮膚接触面側に、カットボス加工の際に挿入する添え糸のカット端部の集合により形成される凸状部を設けた請求項1〜5のいずれか一項に記載の膝サポーター。
【請求項7】
膝関節と該膝関節近位の大腿及び下腿を被覆する筒状の装具として構成された請求項1〜6のいずれか一項に記載の膝サポーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−130784(P2011−130784A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290069(P2009−290069)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000151380)アルケア株式会社 (88)
【Fターム(参考)】