膝保護用エアバッグ装置
【課題】簡便な構成で、作動時のインフレーターを安定して保持可能な膝保護用エアバッグ装置を提供すること。
【解決手段】膝保護用エアバッグ装置では、インフレーター43が、一端側に接続口部46を配置させるとともに、リテーナ51によって外周面を挟持されつつ保持されて、リテーナ51のボルト58を利用してケース27に取り付けられる。ケース27の側壁36に、インフレーター43の接続口部46を露出可能な挿通孔37が、形成される。挿通孔37の周縁における突出用開口側に、突出片40が、形成される。ケース27の底壁部28において、側壁36近傍に、インフレーター43と当接可能な突起部30が、形成される。突出片40が、先端をケース27内方側に向けるように屈曲され、突起部30に当接された状態のインフレーター43の接続口部46周縁の端面44bを押えて、インフレーター43の挿通孔37からの抜けを防止している。
【解決手段】膝保護用エアバッグ装置では、インフレーター43が、一端側に接続口部46を配置させるとともに、リテーナ51によって外周面を挟持されつつ保持されて、リテーナ51のボルト58を利用してケース27に取り付けられる。ケース27の側壁36に、インフレーター43の接続口部46を露出可能な挿通孔37が、形成される。挿通孔37の周縁における突出用開口側に、突出片40が、形成される。ケース27の底壁部28において、側壁36近傍に、インフレーター43と当接可能な突起部30が、形成される。突出片40が、先端をケース27内方側に向けるように屈曲され、突起部30に当接された状態のインフレーター43の接続口部46周縁の端面44bを押えて、インフレーター43の挿通孔37からの抜けを防止している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフレーターを挟持して保持したリテーナに配置されるボルトを、ケースから突出させてナットを締結させることにより、リテーナを利用して、インフレーターをケースに取り付ける構成の膝保護用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リテーナを利用してインフレーターをケースに取り付ける構成の膝保護用エアバッグ装置としては、エアバッグ作動回路から延びるリード線を結線させたコネクタを接続させるための接続口部側の端部を、ケースから突出させるようにして、略円柱状のインフレーターをケースに収納させており、ケースと別体からなる抜け防止部材を、インフレーターの接続口部側の端部を押えるようにして、ケースに取り付けて、インフレーターのケースからの抜けを防止しているものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−321333公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の膝保護用エアバッグ装置では、ケースと別体の抜け防止部材を使用していることから、部品点数が多く、また、抜け防止部材を別途ケースに取り付ける必要があって、組付工数も増大することとなり、構成を簡便にする点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、簡便な構成で、作動時のインフレーターを安定して保持可能な膝保護用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る膝保護用エアバッグ装置は、折り畳まれて収納されるエアバッグと、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、エアバッグとインフレーターとを収納する板金製のケースと、を備えて構成されて、
ケースが、略四角形状の底壁部と、底壁部の周縁から延びる略四角筒状の周壁部と、を有して、エアバッグを突出可能な突出用開口を有した略箱形状とされて、
インフレーターが、外形形状を略円柱状として、軸方向に沿った一端側に、膨張用ガスを吐出させるガス吐出口を配置させ、他端側に、エアバッグ作動回路から延びるリード線を結線させたコネクタを接続させる接続口部を配置させて構成されるとともに、リテーナによって外周面を挟持されることにより、リテーナに保持されて、
リテーナに配置されるボルトを、ケースから突出させてナットを締結させることにより、リテーナを利用してケースに取り付けられる構成の膝保護用エアバッグ装置であって、
ケースの周壁部において、インフレーターの接続口部側に配置される側壁に、インフレーターをケースに取り付けた状態で、接続口部にコネクタを接続可能に、接続口部を露出可能とされる挿通孔が、形成され、
挿通孔の周縁において突出用開口側となる縁部の一部に、挿通孔周縁から部分的に突出するような突出片が、形成され、
ケースの底壁部において、側壁近傍となる位置に、インフレーター側に向かって突出して、インフレーターの作動時における軸直交方向側への揺動時に、インフレーターと当接可能とされる突起部が、形成され、
突出片が、先端をケース内方側に向けるように屈曲して形成されるとともに、突起部に当接された状態のインフレーターにおける接続口部周縁の端面を押えて、インフレーターの前記挿通孔からの抜けを防止可能に構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の膝保護用エアバッグ装置では、インフレーターは、作動時において、膨張用ガス吐出時の反力により、接続口部側を先頭として、リテーナから抜けるように、軸方向に沿って移動するとともに、ケースの突出用開口から突出する際のエアバッグの引張力を受けて、軸直交方向側に揺動することとなる。そして、本発明の膝保護用エアバッグ装置では、ケースにおけるインフレーターの接続口部側に配置される側壁に形成されて、インフレーターの接続口部を露出させるように構成される挿通孔の突出用開口側の縁部に、部分的に突出するような突出片を、配設させるとともに、ケースの底壁部における側壁近傍に、インフレーター側に向かって突出する突起部を、配置させていることから、インフレーターが、作動時に、接続口部側の端部を底壁部側に向けるように揺動しつつ、リテーナから抜けるように、軸方向に沿って移動しようとしても、外周面を底壁部から突出している突起部に当接させることとなる。換言すれば、突起部が、インフレーターが突出片から外れるように底壁部側に移動することを抑制することができることから、突出片によって、インフレーターにおける接続口部周縁の端面を、確実に押えることができる。また、この突出片は、先端をケース内方側に向けるように屈曲して形成されている。そのため、インフレーターが軸方向に沿って大きく移動しようとしても、突出片が、屈曲部位の高い剛性により、変形を抑制されて、インフレーターの接続口部周縁の端面を確実に押えることができて、インフレーターの軸方向に沿った移動を、抑制できる。そして、本発明の膝保護用エアバッグ装置では、突出片及び突起部は、それぞれ、ケースに形成されていることから、従来の抜け防止部材を使用している膝保護用エアバッグ装置と比較して、部品点数を低減できて、構成を簡便にすることができる。
【0008】
したがって、本発明の膝保護用エアバッグ装置では、簡便な構成で、作動時のインフレーターを安定して保持することができる。
【0009】
また、本発明の膝保護用エアバッグ装置において、インフレーターを、底壁部に取り付ける構成として、
リテーナを、インフレーターの外周側を覆う略円筒状の板金製の保持部を備えて、保持部の軸方向に沿った2箇所において、ボルトを保持部の軸方向と略直交するように突設させて構成し、
インフレーターを、保持部においてボルトと対向する位置にそれぞれ配置されてインフレーター側に突出するように形成される2つの当接部と、底壁部におけるルトを挿通させる挿通孔の間においてインフレーター側に突出するように形成される1つの支持突起と、により、挟持されて、ケースに取り付けられる構成とし、
突起部を、支持突起よりも、底壁部からのインフレーター側への突出量を小さく設定して、支持突起の支持によるインフレーターのケースへの取付時に、インフレーターとの間に隙間を有するように、構成することが、好ましい。
【0010】
上記構成の膝保護用エアバッグ装置では、インフレーターを、リテーナの保持部に形成される2つの当接部と、底壁部に形成される1つの支持突起と、によって挟持することにより、ケースの底壁部側に取り付ける構成であっても、底壁部に形成される支持突起の支持によるインフレーターのケースへの取付時に、底壁部に形成される突起部は、インフレーターとの間に隙間を有して、インフレーターと非接触とされることから、突起部がインフレーターと接触して異音が発生することを抑制できる。また、上記構成の膝保護用エアバッグ装置では、リテーナに形成される2つの当接部と、ケースの底壁部における当接部間となる位置に配置される1つの支持突起と、の3点支持により、安定してインフレーターを支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態である膝保護用エアバッグ装置の使用状態を示す車両前後方向の概略縦断面図である。
【図2】実施形態の膝保護用エアバッグ装置の車両前後方向の概略拡大縦断面図である。
【図3】実施形態の膝保護用エアバッグ装置の車両左右方向の概略横断面図である。
【図4】実施形態の膝保護用エアバッグ装置の使用状態を示す車両後方側から見た概略正面図である。
【図5】実施形態の膝保護用エアバッグ装置に使用するケースを、車両前方側から見た斜視図である。
【図6】図5のケースの右側面図である。
【図7】図5のケースの部分拡大横断面図である。
【図8】実施形態の膝保護用エアバッグ装置に使用するリテーナの斜視図である。
【図9】実施形態の膝保護用エアバッグ装置に使用するエアバッグの背面図である。
【図10】図9のX−X部位の拡大断面図である。
【図11】実施形態の膝保護用エアバッグ装置において、ケースから突出しているリテーナのボルトへのナットの締結作業工程を説明する概略部分拡大断面図である。
【図12】実施形態の膝保護用エアバッグ装置において、ケース内に収納されるインフレーターが接続口部側を前方に向けるように傾斜した状態を説明する概略部分拡大横断面図である。
【図13】実施形態の膝保護用エアバッグ装置において、ケース内に収納されるインフレーターが接続口部側を前方に向けるように傾斜した状態を説明する概略部分拡大右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の膝保護用エアバッグ装置(以下「エアバッグ装置」と省略する)Sは、図1,4に示すように、乗員としての運転者Dの膝K(KL,KR)を保護できるように、運転者Dの車両前方側であるステアリングコラム8の下方に配設されている。なお、本明細書における上下、左右、及び、前後は、エアバッグ装置Sを車両に搭載させた際の車両の上下・左右・前後の方向に対応するものである。
【0013】
ステアリングコラム8は、図1,4に示すように、コラム本体9と、コラム本体9の外周側を覆うコラムカバー12とを備えている。コラム本体9は、図1,4に示すように、メインシャフト10と、メインシャフト10の周囲を覆うコラムチューブ11と、から構成されている。
【0014】
エアバッグ装置Sは、図2,3に示すように、折り畳まれたエアバッグ61と、エアバッグ61に膨張用ガスを供給するインフレーター43と、インフレーター43を保持するリテーナ51と、折り畳まれたエアバッグ61とインフレーター43とを収納するとともに車両後方側を開口させたケース27と、ケース27における突出用開口27aの車両後方側を覆うエアバッグカバー17と、を備えて構成されている。
【0015】
エアバッグカバー17は、オレフィン系等の熱可塑性エラストマーから形成されて、ケース27の車両後方側を覆い可能に、構成されている。このエアバッグカバー17は、図1〜4に示すように、アッパパネル13aとロアパネル13bとから構成されるインストルメントパネル(以下「インパネ」と省略する)13のロアパネル13b側に配設されている。エアバッグカバー17は、実施形態の場合、ケース27の突出用開口27a付近に配置される扉配設部18と、扉配設部18の周囲に延びる周縁部25と、を備えて構成されている。
【0016】
扉配設部18は、ケース27の突出用開口27aを覆う扉部19と、扉部19の上下両側から前方に向かって延びて、エアバッグカバー17をケース27に取り付けるための取付片部22,23と、を備えている。扉部19は、ケース27の突出用開口27aより僅かに大きく形成されて、突出用開口27aの車両後方側を覆う略長方形板状とされている。そして、扉部19は、実施形態では、周囲に、車両後方側から見て略H字形状とされる薄肉の破断予定部20と、上下両端側に配置されて開き時の回転中心となるヒンジ部21と、を配設させて構成され、開き時に、上下両側に開く構成とされている。取付片部22,23は、ケース27における後述する上側壁33と下側壁34との外周側に、それぞれ、隣接して、車両前方側に突出するように配置されるもので、前端側に、ケース27に形成される係止爪33a,34aを係止させるための長方形状に開口した係止穴22a,23aを、それぞれ、係止爪33a,34aに対応して、左右方向に沿った4箇所に、配設させている。
【0017】
周縁部25は、扉配設部18の左右両側の部位において、扉部19より一段車両前方側に凹むような段差状として構成され、ロアパネル13bにおける扉部19の左右両側に配置される部位を支持して、扉部19とロアパネル13bとの車両後方側の面を略面一とするように、構成されている(図3参照)。
【0018】
ケース27は、板金製とされるもので、図2,3,5に示すように、車両前方側に配置される略四角形状の底壁部28と、底壁部28の周縁から前後方向に略沿って延びる略四角筒状の周壁部32と、を有して、周壁部32の後端側に、エアバッグ61を突出可能な突出用開口27aを有した略箱形状とされている。
【0019】
底壁部28は、詳細に説明すれば、左右に幅広の略長方形板状とされるもので、リテーナ51に配設される後述するボルト58を挿通させるための挿通孔28a,28aを、左右方向に沿って2箇所に、配設させている。また、底壁部28において、挿通孔28a,28a間の略中央となる位置には、ボルト58の突出方向に略沿ってケース27の内側(インフレーター43側)に突出するように、支持突起29が形成されている。この支持突起29は、略円錐台形状とされるもので、車両搭載時において、略平面状の先端部29aをインフレーター43の後述する本体部44の中央側部位44cの外周面44eに当接させることにより、インフレーター43を支持可能な構成とされている。実施形態の場合、支持突起29は、底壁部28の左右の略中央(後述する突起部30,30間の略中央)となる位置に、形成されている。
【0020】
また、底壁部28において、周壁部32の後述する左側壁35及び右側壁36近傍となる左右両端側には、ケース27の内側(インフレーター43側)に突出する突起部30,30が、形成されている。実施形態の場合、突起部30,30は、左右対称形として、それぞれ、頂部を左右方向の外方側にやや偏らせた断面略V字形状として、形成されるもので、底壁部28からのインフレーター43側への突出量(突出高さ)h1を、支持突起29の突出量(突出高さ)h2よりも小さく設定されている(図7参照)。この突起部30の底壁部28からの突出量(突出高さ)h1は、支持突起29の支持によるインフレーター43のケース27への取付時に、インフレーター43における本体部44の右端側部位44aの外周面44dとの間に隙間を有し、かつ、インフレーター43の作動時における軸直交方向側への揺動時に、インフレーター43における本体部44の右端側部位44aの外周面44dと当接可能な寸法に、設定されている。
【0021】
周壁部32は、上下方向で対向する上側壁33,下側壁34と、左右方向で対向する左側壁35,右側壁36と、を備えている。上側壁33,下側壁34における後端近傍には、エアバッグカバー17の取付片部22,23に形成される係止穴22a,23a周縁を係止するための係止爪33a,34aが、上下の外方へ突出し、先端を車両前方側に向けるように断面略L字形状に屈曲して、形成されている。係止爪33a,34aは、上側壁33,下側壁34に、それぞれ、左右方向に沿って4箇所ずつ、形成されている。
【0022】
右側壁36は、実施形態の場合、図7に示すように、水平方向に沿った横断面において、それぞれ、前後方向に略沿って配設される前方側の元部側部位36aと、後方側の先端側部位36bと、の間に、傾斜部位36cを配置させ、この傾斜部位36cを、先端側部位36b側を拡開させるように傾斜させて、段差状に形成されている。すなわち、傾斜部位36cは、前側を左右の内方(ケース27内方)に向けるように、傾斜されている。
【0023】
右側壁36には、図6,7に示すように、インフレーター43をケース27に取り付けた状態で、インフレーター43の後述する接続口部46を露出させるための挿通孔37が、形成されている。この挿通孔37は、元部側部位36aから傾斜部位36cにおける前半分程度にかけての領域に形成される穴本体38と、傾斜部位36cの後半分程度から先端側部位36bにかけての領域に形成される補助開口39と、を備えている。穴本体38は、右方から見た状態で、後方側にかけて拡開する略半円形状とされており、補助開口39は、穴本体38より開口幅寸法を小さく設定される略長方形状として、穴本体38と連通されて後方に延びるように形成されている。すなわち、挿通孔37は、右方側から見た外形形状を、マッシュルームのような形状としている。穴本体38は、接続口部46のみを挿通可能で、インフレーター43自体を挿通不能な大きさに、設定されている。実施形態の場合、穴本体38は、内径寸法を、インフレーター43の本体部44における右端側部位44aの外径寸法と略同程度に、設定されている。また、実施形態の場合、インフレーター43は、接続口部46を、穴本体38から僅かに突出させるようにして、ケース27に取り付けられる構成であり、補助開口39も、開口幅寸法をインフレーター43の接続口部46を挿通可能な寸法に設定されている。
【0024】
また、挿通孔37は、外形形状を、後方側(突出用開口27a側)を狭幅としたマッシュルーム形状としており、換言すれば、穴本体38と補助開口39との境界部位付近を、部分的に前方に突出させるような構成とされている(図7参照)。すなわち、実施形態の挿通孔37では、周縁におけるこの穴本体38と補助開口39との境界部位付近が、挿通孔37周縁において突出用開口27a側となる縁部(後縁)の一部を部分的に突出させるような、突出片40を構成することとなる。そして、この突出片40は、図5,6に示すように、先端側部位36bから傾斜部位36cにかけての領域に配置されていることから、先端40aをケース27内方(左側)に向けるように屈曲して構成されることとなる。この突出片40は、図13のAに示すように、インフレーター43をケース27に取り付けた状態で、右方から見て、インフレーター43における接続口部46の周縁の端面(右端面44b)と重なるように、配置されており、さらには、図13のBに示すように、接続口部46側の端部(右端側部位44a)近傍を、突起部30に当接させるように軸直交方向側となる前方側に移動した状態のインフレーター43においても、右方から見て、接続口部46の周縁の端面(右端面44b)と重なる領域を有しており、インフレーター43の接続口部46周縁の右端面44bを押えて、インフレーター43の挿通孔37からの抜けを防止可能としている。
【0025】
実施形態のケース27の周壁部32における上側壁33の左右両端側と、下側壁34の左右両端側と、には、図5に示すように、ケース27を車両のボディ1側に取り付ける取付ブラケット41,42が、配置されている。上側壁33に配置される取付ブラケット41,41は、図4に示すように、ボディ1側のインパネリインフォースメント2から延びるブラケット4,4に連結されるもので、下側壁34に配置される取付ブラケット42,42は、ボディ1側の図示しないセンターブレースやフロントボディピラーから延びるブラケット5,6に連結される構成である。
【0026】
インフレーター43は、図3に示すように、軸方向を左右方向に略沿わせて配置される略円柱状とされて、大径の本体部44と、本体部44の左右方向の一端側から突設される小径のガス吐出部45と、を備えて構成されている。ガス吐出部45には、膨張用ガスを吐出可能なガス吐出口45aが、周方向に沿って多数放射状に形成されている。実施形態の場合、ガス吐出部45は、本体部44の左端側に、配設されている。本体部44における右端側には、作動信号入力用のリード線49を結線させたコネクタ48を接続させるための接続口部46が、形成されている。実施形態のインフレーター43では、本体部44において、接続口部46側となる右端側部位44aが、中央側部位44cよりもわずかに小径として構成されている。さらに、実施形態のインフレーター43では、接続口部46は、本体部44の右端側部位44aより小径とされて、本体部44の右端面44bから右方に僅かに突出するように、形成されている。
【0027】
リテーナ51は、図3,8に示すように、インフレーター43の外周側を覆う略円筒状の保持部52と、保持部52の軸方向と略直交するように突設される2つのボルト58,58と、を備えて構成されている。ボルト58は、車両搭載時に、車両前方側に向かって突出するように、配置されている。
【0028】
保持部52は、板金製とされて、軸方向を左右方向に略沿わせた略円筒状とされている。保持部52において、インフレーター43の後方側に配置される部位には、車両搭載時においてインフレーター43の本体部44における中央側部位44cの外周面44eと当接する当接部53が、形成されている。この当接部53は、ボルト58と対向する位置の2箇所に、形成されている。各当接部53は、図2,11に示すように、前後方向に沿った断面において、ボルト58と対向する領域で、略上下方向に沿うように、保持部52の周方向に沿って配置される2つの突起54を、備えている。各突起54は、保持部52をインフレーター43側に向かって凹ませるようにして、インフレーター43側に突出して形成されるもので、外形形状を略半円弧状として、先端面54aを、インフレーター43における本体部44の中央側部位44cの外周面44eと当接させる構成とされている。また、保持部52において、車両搭載時のインフレーター43の前方側となる位置であって、ボルト58,58の間となる部位には、ケース27の底壁部28に形成される支持突起29を挿通させるための貫通穴53aが、形成されている(図3,8参照)。
【0029】
また、保持部52における左端近傍には、内部にインフレーター43を挿入させた際のインフレーター43の位置決めとなる突出片56が、内周側に突出するように、形成されている(図3参照)。この突出片56は、インフレーター43の本体部44におけるガス吐出部45側の端面(左端面44f)に当接されて、本体部44の左方への移動を規制して、リテーナ51内におけるガス吐出部45の位置を決めるためのものである。さらに、保持部52における右端側には、後述するインフレーター挿入用の開口スリット64から、リテーナ51をエアバッグ61内に収納させてエアバッグ61を折り畳んだ際に、この開口スリット64から突出するように配設される係止爪部57が、形成されている。係止爪部57は、車両搭載時における後縁側から後方に突出して、先端側を上方に向けるように屈曲された略L字形状とされている。実施形態のエアバッグ装置Sでは、組立作業時において、リテーナ51を内部に収納させた状態でエアバッグ61を折り畳んだ後、インフレーター43を、開口スリット64からエアバッグ61内に挿入させて、リテーナ51の保持部52内に挿入させる構成であり、この係止爪部57は、エアバッグ61内に収納させたリテーナ51の保持部52が開口スリット64に対して位置ずれすることを防止するために、配設されている。
【0030】
そして、実施形態のエアバッグ装置Sでは、インフレーター43をエアバッグ61内に配置されるリテーナ51の保持部52に収納させて、エアバッグ61をケース27内に収納させる際に、リテーナ51のボルト58を、ケース27の底壁部28から突出させて、ボルト58にナット59を締結させることにより、インフレーター43とエアバッグ61とをケース27に取り付ける構成である。詳細には、インフレーター43は、このナット59の締結時に、ケース27の底壁部28に形成される支持突起29と、リテーナ51の保持部52に形成される当接部53とにより、挟持されて、リテーナ51に保持されることとなる。
【0031】
エアバッグ61は、実施形態の場合、可撓性を有したポリエステルやポリアミド糸等からなる織布から形成されるもので、膨張完了時の形状を、図1,4の二点鎖線に示すように、略長方形板状として、運転者Dの左右の膝K(KL,KR)を保護可能に構成されている。実施形態の場合、エアバッグ61は、図9,10に示すように、膨張完了時にケース27内に配置される取付部62と、取付部62より左右に幅広とされて膨張完了時に運転者Dの膝K(KL,KR)を保護する保護膨張部67と、を備えて構成されている。
【0032】
取付部62には、図9に示すように、2つの挿通孔63,63と、開口スリット64と、貫通穴65と、が、形成されている。挿通孔63,63は、リテーナ51の各ボルト58を挿通させるためのものである。開口スリット64は、リテーナ51とインフレーター43とをエアバッグ61の内部に挿入させるためのものであり、エアバッグ61を単体で平らに展開した状態では、略左右方向に沿った直線状とされるもので(図9参照)、車両搭載時においては、図2に示すごとく、略前後方向に沿って配置されることとなる。リテーナ51を内部に収納させた状態では、リテーナ51の係止爪部57は、開口スリット64の右端(車両搭載時おける前端)側から突出することとなる。貫通穴65は、ケース27の底壁部28に形成される支持突起29を挿通させるためのものであり、挿通孔63,63間に形成されている。
【0033】
実施形態のエアバッグ61では、エアバッグ61内に、2つのテザー69,70が、上下で離隔されて、それぞれ、左右方向に略沿って配設されている。テザー69は、取付部62と保護膨張部67とを区画するように配置され、テザー70は、保護膨張部67の領域を上下で区画するように配置されている。各テザー69,70には、膨張用ガスを流通可能な複数のガス流通孔69a,70aが、形成されている。
【0034】
次に、実施形態のエアバッグ装置Sの車両への搭載について説明する。まず、リテーナ51を、ボルト58を挿通孔63から突出させるようにして、開口スリット64からエアバッグ61内に収納させる。そして、保持部52に形成される係止爪部57を、開口スリット64から突出させた状態で、エアバッグ61を、ケース27内に収納可能とするように折り畳み、折り崩れ防止用の破断可能な図示しないラッピング材により、周囲をくるんでおく。このとき、開口スリット64周縁の部位は、ラッピング材から露出させておく。
【0035】
次いで、インフレーター43を、開口スリット64を経て、ガス吐出部45側からエアバッグ61内に(リテーナ51の保持部52内)に挿入させる。このとき、本体部44の左端面44fが、リテーナ51の保持部52に形成される突出片56に当接するまで、インフレーター43を挿入させる。その後、底壁部28からボルト58を突出させるようにして、折り畳まれたエアバッグ61とインフレーター43とを、ケース27内に収納させ、底壁部28から突出しているボルト58にナット59を締結させて、エアバッグ61とインフレーター43とをケース27に取り付ける。このナット59の締結時に、リテーナ51は、図11のA,Bに示すように、インフレーター43の外周側を覆っている保持部52を、底壁部28側へ移動させることとなる。そして、底壁部28に形成される支持突起29が、先端部29aをインフレーター43における本体部44の中央側部位44cの外周面44eに当接されるようにして、インフレーター43を、逆に、車両後方側へ押圧するような態様となり、保持部52に形成される当接部53の各突起54の先端面54aに、インフレーター43の本体部44の中央側部位44cの外周面44eが当接されて、インフレーター43が、本体部44における中央側部位44cを、車両後方側に配置される4個の突起54の先端面54aと、車両前方側に配置される1個の支持突起29の先端部29aと、によって、挟持されて、リテーナ51に保持されることとなる。
【0036】
その後、各係止爪33a,34aを係止穴22a,23a周縁に係止させるようにして、エアバッグカバー17をケース27に組み付ければ、エアバッグ組付体を組み立てることができる。そして、エアバッグ組付体を、ブラケット4,5,6を利用して、ボディ1側に取付固定し、ケース27の挿通孔37から露出しているインフレーター43の接続口部46に、エアバッグ作動回路から延びるリード線49を結線させたコネクタ48を接続させる。その後、インパネ13やアンダーカバー14(図1,2参照)を取り付ければ、エアバッグ装置Sを車両に搭載することができる。
【0037】
エアバッグ装置Sの車両への搭載後、リード線49を経て、インフレーター43に作動信号が入力されれば、インフレーター43のガス吐出口45aから膨張用ガスが吐出されて、エアバッグ61内に流入することとなる。そして、エアバッグ61は、内部に膨張用ガスを流入して膨張し、図示しないラッピング材を破断するとともに、エアバッグカバー17の扉部19を押圧し、扉部19が、周囲の破断予定部20を破断させつつ、ヒンジ部21を回転中心として上下に開くこととなる。そして、エアバッグ61が、ケース27の突出用開口27aから車両後方側に向かって突出し、図1,4の二点鎖線に示すように、膨張を完了させることとなる。
【0038】
実施形態のエアバッグ装置Sでは、インフレーター43は、作動時において、膨張用ガス吐出時の反力により、接続口部46側(右端側部位44a側)を先頭として、リテーナ51の保持部52から抜けるように、軸方向に沿って移動するとともに、ケース27の突出用開口27aから突出する際のエアバッグ61の引張力を受けて、軸直交方向側に揺動することとなる。そして、実施形態のエアバッグ装置Sでは、ケース27におけるインフレーター43の接続口部46側に配置される右側壁36に形成されて、インフレーター43の接続口部46を露出させるように構成される挿通孔37の突出用開口27a側の縁部(後縁側)に、部分的に突出するような突出片40を、配設させるとともに、ケース27の底壁部28における右側壁36近傍に、インフレーター43側に向かって突出する突起部30を、配置させていることから、インフレーター43が、作動時に、接続口部46側の端部(右端側部位44a)を底壁部28側に向けるように揺動しつつ、リテーナ51の保持部52から抜けるように、軸方向に沿って移動しようとしても、図12のB,13のBに示すように、本体部44における右端側部位44aの外周面44dを底壁部28から突出している突起部30に当接させることとなる。換言すれば、突起部30が、インフレーター43が突出片40から外れるように底壁部28側に移動することを抑制することができることから、突出片40によって、インフレーター43における接続口部46周縁の端面(右端面44b)を、確実に押えることができる。また、この突出片40は、先端40aをケース27内方側(左側)に向けるように屈曲して形成されている。そのため、インフレーター43が軸方向に沿って大きく移動しようとしても、突出片40が、屈曲部位の高い剛性により、変形を抑制されて、インフレーター43の接続口部46周縁の端面(右端面44b)を確実に押えることができて、インフレーター43の軸方向に沿った移動を、抑制できる。そして、実施形態のエアバッグ装置Sでは、突出片40及び突起部30は、それぞれ、ケース27に形成されていることから、従来の抜け防止部材を使用している膝保護用エアバッグ装置と比較して、部品点数を低減できて、構成を簡便にすることができる。
【0039】
したがって、実施形態のエアバッグ装置Sでは、簡便な構成で、作動時のインフレーター43を安定して保持することができる。
【0040】
また、実施形態のエアバッグ装置Sでは、インフレーター43を、ケース27の底壁部28に取り付ける構成としており、インフレーター43の本体部44を、リテーナ51の保持部52に形成される2つの当接部53,53と、底壁部28に形成される1つの支持突起29と、によって挟持することにより、ケース27の底壁部28側に取り付ける構成であるが、底壁部28に形成される突起部30が、支持突起29よりも、底壁部28からのインフレーター43側への突出量を小さく設定されて、支持突起29の支持によるインフレーター43のケース27への取付時に、インフレーター43との間に隙間を有するように、構成されている。そのため、インフレーター43のケース27への取付時に、底壁部28に形成される突起部30は、インフレーター43(本体部44)との間に隙間を有して、インフレーター43と非接触とされることから、突起部30がインフレーター43と接触して異音が発生することを抑制できる。また、実施形態のエアバッグ装置Sでは、リテーナ51に形成される2つの当接部53,53と、ケース27の底壁部28における当接部53,53間となる位置に配置される1つの支持突起29と、の3点支持により、安定してインフレーター43を支持することができる。
【0041】
勿論、このような点を考慮しなければ、インフレーターをケースの底壁部に取り付ける構成であっても、底壁部に形成される突起部を、底壁部に形成される支持突起と略同等の突出高さを有するように、構成してもよい。なお、実施形態では、インフレーターはケースの底壁部に取り付けられているが、インフレーターのケースへの取付位置は実施形態に限られるものではなく、例えば、周壁部の上側壁や下側壁に、インフレーターを取り付ける構成としてもよい。
【0042】
また、実施形態のエアバッグ装置Sでは、インフレーター43の接続口部46が、本体部44の右端側部位44a側から僅かに突出し、インフレーター43をケース27内に収納させた状態においても、挿通孔37から外部に突出している構成とされている。そのため、実施形態のエアバッグ装置Sでは、インフレーター43を突出用開口27aからケース27内に円滑に収納させるために、接続口部46側となるケース27の右側壁36を、突出用開口27a側に位置する先端側部位36bを底壁部28側の元部側部位36aに対して拡開させるように、段差状として、構成し、接続口部46を露出させるための挿通孔37を、元部側部位36aから、先端側部位36bにかけて、配設させている。そして、挿通孔37は、元部側部位36a側に配置される広幅の穴本体38と、先端側部位36b側に配置される狭幅の補助開口39と、から構成されるとともに、両者の境界を、元部側部位36a,先端側部位36b間を連結する傾斜部位36cに配置させていることから、この傾斜部位36cの領域に配置されて、穴本体38と補助開口39との境界部位付近を構成する縁部を、突出片40としている。すなわち、実施形態のエアバッグ装置Sでは、突出片40を、右側壁36の屈曲形状と挿通孔37の外形形状とを利用して、大きな平板状の傾斜部位36cの平らに連なった一部分(コーナー部)を利用しており、別途ケース内方に部分的に向けるように屈曲させて構成してはいない。
【0043】
勿論、インフレーターの外形形状や、ケースにおける右側壁、挿通孔、及び、突出片の外形形状は、実施形態に限られるものではなく、インフレーターとして、接続口部を、本体部から突出させない構成のものを使用してもよい。また、ケースの右側壁を平板状として、例えば、略円形の挿通孔の周縁に部分的に突出する突出片を形成し、この突出片を、先端をケース内方に向けるように屈曲させる構成としてもよい。
【0044】
また、実施形態のエアバッグ装置Sでは、インフレーター43の本体部44が、接続口部46側となる右端側部位44aを、支持突起29を当接させる中央側部位44cより小径として、構成されているが、勿論、インフレーターとして、本体部が軸方向の全域にわたって同一の外径寸法を有するものを、使用してもよい。なお、ケースの底壁部に形成される突起部は、インフレーターの外形形状に応じて、底壁部からの突出量を、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0045】
17…エアバッグカバー、
27…ケース、
27a…突出用開口、
28…底壁部、
29…支持突起、
30…突起部、
32…周壁部、
36…右側壁、
37…挿通孔、
40…突出片、
40a…先端、
43…インフレーター、
44…本体部、
45…ガス吐出部、
45a…ガス吐出口、
46…接続口部、
48…コネクタ、
49…リード線、
51…リテーナ、
52…保持部、
53…当接部、
58…ボルト、
59…ナット、
61…エアバッグ、
S…膝保護用エアバッグ装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフレーターを挟持して保持したリテーナに配置されるボルトを、ケースから突出させてナットを締結させることにより、リテーナを利用して、インフレーターをケースに取り付ける構成の膝保護用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リテーナを利用してインフレーターをケースに取り付ける構成の膝保護用エアバッグ装置としては、エアバッグ作動回路から延びるリード線を結線させたコネクタを接続させるための接続口部側の端部を、ケースから突出させるようにして、略円柱状のインフレーターをケースに収納させており、ケースと別体からなる抜け防止部材を、インフレーターの接続口部側の端部を押えるようにして、ケースに取り付けて、インフレーターのケースからの抜けを防止しているものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−321333公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の膝保護用エアバッグ装置では、ケースと別体の抜け防止部材を使用していることから、部品点数が多く、また、抜け防止部材を別途ケースに取り付ける必要があって、組付工数も増大することとなり、構成を簡便にする点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、簡便な構成で、作動時のインフレーターを安定して保持可能な膝保護用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る膝保護用エアバッグ装置は、折り畳まれて収納されるエアバッグと、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、エアバッグとインフレーターとを収納する板金製のケースと、を備えて構成されて、
ケースが、略四角形状の底壁部と、底壁部の周縁から延びる略四角筒状の周壁部と、を有して、エアバッグを突出可能な突出用開口を有した略箱形状とされて、
インフレーターが、外形形状を略円柱状として、軸方向に沿った一端側に、膨張用ガスを吐出させるガス吐出口を配置させ、他端側に、エアバッグ作動回路から延びるリード線を結線させたコネクタを接続させる接続口部を配置させて構成されるとともに、リテーナによって外周面を挟持されることにより、リテーナに保持されて、
リテーナに配置されるボルトを、ケースから突出させてナットを締結させることにより、リテーナを利用してケースに取り付けられる構成の膝保護用エアバッグ装置であって、
ケースの周壁部において、インフレーターの接続口部側に配置される側壁に、インフレーターをケースに取り付けた状態で、接続口部にコネクタを接続可能に、接続口部を露出可能とされる挿通孔が、形成され、
挿通孔の周縁において突出用開口側となる縁部の一部に、挿通孔周縁から部分的に突出するような突出片が、形成され、
ケースの底壁部において、側壁近傍となる位置に、インフレーター側に向かって突出して、インフレーターの作動時における軸直交方向側への揺動時に、インフレーターと当接可能とされる突起部が、形成され、
突出片が、先端をケース内方側に向けるように屈曲して形成されるとともに、突起部に当接された状態のインフレーターにおける接続口部周縁の端面を押えて、インフレーターの前記挿通孔からの抜けを防止可能に構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の膝保護用エアバッグ装置では、インフレーターは、作動時において、膨張用ガス吐出時の反力により、接続口部側を先頭として、リテーナから抜けるように、軸方向に沿って移動するとともに、ケースの突出用開口から突出する際のエアバッグの引張力を受けて、軸直交方向側に揺動することとなる。そして、本発明の膝保護用エアバッグ装置では、ケースにおけるインフレーターの接続口部側に配置される側壁に形成されて、インフレーターの接続口部を露出させるように構成される挿通孔の突出用開口側の縁部に、部分的に突出するような突出片を、配設させるとともに、ケースの底壁部における側壁近傍に、インフレーター側に向かって突出する突起部を、配置させていることから、インフレーターが、作動時に、接続口部側の端部を底壁部側に向けるように揺動しつつ、リテーナから抜けるように、軸方向に沿って移動しようとしても、外周面を底壁部から突出している突起部に当接させることとなる。換言すれば、突起部が、インフレーターが突出片から外れるように底壁部側に移動することを抑制することができることから、突出片によって、インフレーターにおける接続口部周縁の端面を、確実に押えることができる。また、この突出片は、先端をケース内方側に向けるように屈曲して形成されている。そのため、インフレーターが軸方向に沿って大きく移動しようとしても、突出片が、屈曲部位の高い剛性により、変形を抑制されて、インフレーターの接続口部周縁の端面を確実に押えることができて、インフレーターの軸方向に沿った移動を、抑制できる。そして、本発明の膝保護用エアバッグ装置では、突出片及び突起部は、それぞれ、ケースに形成されていることから、従来の抜け防止部材を使用している膝保護用エアバッグ装置と比較して、部品点数を低減できて、構成を簡便にすることができる。
【0008】
したがって、本発明の膝保護用エアバッグ装置では、簡便な構成で、作動時のインフレーターを安定して保持することができる。
【0009】
また、本発明の膝保護用エアバッグ装置において、インフレーターを、底壁部に取り付ける構成として、
リテーナを、インフレーターの外周側を覆う略円筒状の板金製の保持部を備えて、保持部の軸方向に沿った2箇所において、ボルトを保持部の軸方向と略直交するように突設させて構成し、
インフレーターを、保持部においてボルトと対向する位置にそれぞれ配置されてインフレーター側に突出するように形成される2つの当接部と、底壁部におけるルトを挿通させる挿通孔の間においてインフレーター側に突出するように形成される1つの支持突起と、により、挟持されて、ケースに取り付けられる構成とし、
突起部を、支持突起よりも、底壁部からのインフレーター側への突出量を小さく設定して、支持突起の支持によるインフレーターのケースへの取付時に、インフレーターとの間に隙間を有するように、構成することが、好ましい。
【0010】
上記構成の膝保護用エアバッグ装置では、インフレーターを、リテーナの保持部に形成される2つの当接部と、底壁部に形成される1つの支持突起と、によって挟持することにより、ケースの底壁部側に取り付ける構成であっても、底壁部に形成される支持突起の支持によるインフレーターのケースへの取付時に、底壁部に形成される突起部は、インフレーターとの間に隙間を有して、インフレーターと非接触とされることから、突起部がインフレーターと接触して異音が発生することを抑制できる。また、上記構成の膝保護用エアバッグ装置では、リテーナに形成される2つの当接部と、ケースの底壁部における当接部間となる位置に配置される1つの支持突起と、の3点支持により、安定してインフレーターを支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態である膝保護用エアバッグ装置の使用状態を示す車両前後方向の概略縦断面図である。
【図2】実施形態の膝保護用エアバッグ装置の車両前後方向の概略拡大縦断面図である。
【図3】実施形態の膝保護用エアバッグ装置の車両左右方向の概略横断面図である。
【図4】実施形態の膝保護用エアバッグ装置の使用状態を示す車両後方側から見た概略正面図である。
【図5】実施形態の膝保護用エアバッグ装置に使用するケースを、車両前方側から見た斜視図である。
【図6】図5のケースの右側面図である。
【図7】図5のケースの部分拡大横断面図である。
【図8】実施形態の膝保護用エアバッグ装置に使用するリテーナの斜視図である。
【図9】実施形態の膝保護用エアバッグ装置に使用するエアバッグの背面図である。
【図10】図9のX−X部位の拡大断面図である。
【図11】実施形態の膝保護用エアバッグ装置において、ケースから突出しているリテーナのボルトへのナットの締結作業工程を説明する概略部分拡大断面図である。
【図12】実施形態の膝保護用エアバッグ装置において、ケース内に収納されるインフレーターが接続口部側を前方に向けるように傾斜した状態を説明する概略部分拡大横断面図である。
【図13】実施形態の膝保護用エアバッグ装置において、ケース内に収納されるインフレーターが接続口部側を前方に向けるように傾斜した状態を説明する概略部分拡大右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の膝保護用エアバッグ装置(以下「エアバッグ装置」と省略する)Sは、図1,4に示すように、乗員としての運転者Dの膝K(KL,KR)を保護できるように、運転者Dの車両前方側であるステアリングコラム8の下方に配設されている。なお、本明細書における上下、左右、及び、前後は、エアバッグ装置Sを車両に搭載させた際の車両の上下・左右・前後の方向に対応するものである。
【0013】
ステアリングコラム8は、図1,4に示すように、コラム本体9と、コラム本体9の外周側を覆うコラムカバー12とを備えている。コラム本体9は、図1,4に示すように、メインシャフト10と、メインシャフト10の周囲を覆うコラムチューブ11と、から構成されている。
【0014】
エアバッグ装置Sは、図2,3に示すように、折り畳まれたエアバッグ61と、エアバッグ61に膨張用ガスを供給するインフレーター43と、インフレーター43を保持するリテーナ51と、折り畳まれたエアバッグ61とインフレーター43とを収納するとともに車両後方側を開口させたケース27と、ケース27における突出用開口27aの車両後方側を覆うエアバッグカバー17と、を備えて構成されている。
【0015】
エアバッグカバー17は、オレフィン系等の熱可塑性エラストマーから形成されて、ケース27の車両後方側を覆い可能に、構成されている。このエアバッグカバー17は、図1〜4に示すように、アッパパネル13aとロアパネル13bとから構成されるインストルメントパネル(以下「インパネ」と省略する)13のロアパネル13b側に配設されている。エアバッグカバー17は、実施形態の場合、ケース27の突出用開口27a付近に配置される扉配設部18と、扉配設部18の周囲に延びる周縁部25と、を備えて構成されている。
【0016】
扉配設部18は、ケース27の突出用開口27aを覆う扉部19と、扉部19の上下両側から前方に向かって延びて、エアバッグカバー17をケース27に取り付けるための取付片部22,23と、を備えている。扉部19は、ケース27の突出用開口27aより僅かに大きく形成されて、突出用開口27aの車両後方側を覆う略長方形板状とされている。そして、扉部19は、実施形態では、周囲に、車両後方側から見て略H字形状とされる薄肉の破断予定部20と、上下両端側に配置されて開き時の回転中心となるヒンジ部21と、を配設させて構成され、開き時に、上下両側に開く構成とされている。取付片部22,23は、ケース27における後述する上側壁33と下側壁34との外周側に、それぞれ、隣接して、車両前方側に突出するように配置されるもので、前端側に、ケース27に形成される係止爪33a,34aを係止させるための長方形状に開口した係止穴22a,23aを、それぞれ、係止爪33a,34aに対応して、左右方向に沿った4箇所に、配設させている。
【0017】
周縁部25は、扉配設部18の左右両側の部位において、扉部19より一段車両前方側に凹むような段差状として構成され、ロアパネル13bにおける扉部19の左右両側に配置される部位を支持して、扉部19とロアパネル13bとの車両後方側の面を略面一とするように、構成されている(図3参照)。
【0018】
ケース27は、板金製とされるもので、図2,3,5に示すように、車両前方側に配置される略四角形状の底壁部28と、底壁部28の周縁から前後方向に略沿って延びる略四角筒状の周壁部32と、を有して、周壁部32の後端側に、エアバッグ61を突出可能な突出用開口27aを有した略箱形状とされている。
【0019】
底壁部28は、詳細に説明すれば、左右に幅広の略長方形板状とされるもので、リテーナ51に配設される後述するボルト58を挿通させるための挿通孔28a,28aを、左右方向に沿って2箇所に、配設させている。また、底壁部28において、挿通孔28a,28a間の略中央となる位置には、ボルト58の突出方向に略沿ってケース27の内側(インフレーター43側)に突出するように、支持突起29が形成されている。この支持突起29は、略円錐台形状とされるもので、車両搭載時において、略平面状の先端部29aをインフレーター43の後述する本体部44の中央側部位44cの外周面44eに当接させることにより、インフレーター43を支持可能な構成とされている。実施形態の場合、支持突起29は、底壁部28の左右の略中央(後述する突起部30,30間の略中央)となる位置に、形成されている。
【0020】
また、底壁部28において、周壁部32の後述する左側壁35及び右側壁36近傍となる左右両端側には、ケース27の内側(インフレーター43側)に突出する突起部30,30が、形成されている。実施形態の場合、突起部30,30は、左右対称形として、それぞれ、頂部を左右方向の外方側にやや偏らせた断面略V字形状として、形成されるもので、底壁部28からのインフレーター43側への突出量(突出高さ)h1を、支持突起29の突出量(突出高さ)h2よりも小さく設定されている(図7参照)。この突起部30の底壁部28からの突出量(突出高さ)h1は、支持突起29の支持によるインフレーター43のケース27への取付時に、インフレーター43における本体部44の右端側部位44aの外周面44dとの間に隙間を有し、かつ、インフレーター43の作動時における軸直交方向側への揺動時に、インフレーター43における本体部44の右端側部位44aの外周面44dと当接可能な寸法に、設定されている。
【0021】
周壁部32は、上下方向で対向する上側壁33,下側壁34と、左右方向で対向する左側壁35,右側壁36と、を備えている。上側壁33,下側壁34における後端近傍には、エアバッグカバー17の取付片部22,23に形成される係止穴22a,23a周縁を係止するための係止爪33a,34aが、上下の外方へ突出し、先端を車両前方側に向けるように断面略L字形状に屈曲して、形成されている。係止爪33a,34aは、上側壁33,下側壁34に、それぞれ、左右方向に沿って4箇所ずつ、形成されている。
【0022】
右側壁36は、実施形態の場合、図7に示すように、水平方向に沿った横断面において、それぞれ、前後方向に略沿って配設される前方側の元部側部位36aと、後方側の先端側部位36bと、の間に、傾斜部位36cを配置させ、この傾斜部位36cを、先端側部位36b側を拡開させるように傾斜させて、段差状に形成されている。すなわち、傾斜部位36cは、前側を左右の内方(ケース27内方)に向けるように、傾斜されている。
【0023】
右側壁36には、図6,7に示すように、インフレーター43をケース27に取り付けた状態で、インフレーター43の後述する接続口部46を露出させるための挿通孔37が、形成されている。この挿通孔37は、元部側部位36aから傾斜部位36cにおける前半分程度にかけての領域に形成される穴本体38と、傾斜部位36cの後半分程度から先端側部位36bにかけての領域に形成される補助開口39と、を備えている。穴本体38は、右方から見た状態で、後方側にかけて拡開する略半円形状とされており、補助開口39は、穴本体38より開口幅寸法を小さく設定される略長方形状として、穴本体38と連通されて後方に延びるように形成されている。すなわち、挿通孔37は、右方側から見た外形形状を、マッシュルームのような形状としている。穴本体38は、接続口部46のみを挿通可能で、インフレーター43自体を挿通不能な大きさに、設定されている。実施形態の場合、穴本体38は、内径寸法を、インフレーター43の本体部44における右端側部位44aの外径寸法と略同程度に、設定されている。また、実施形態の場合、インフレーター43は、接続口部46を、穴本体38から僅かに突出させるようにして、ケース27に取り付けられる構成であり、補助開口39も、開口幅寸法をインフレーター43の接続口部46を挿通可能な寸法に設定されている。
【0024】
また、挿通孔37は、外形形状を、後方側(突出用開口27a側)を狭幅としたマッシュルーム形状としており、換言すれば、穴本体38と補助開口39との境界部位付近を、部分的に前方に突出させるような構成とされている(図7参照)。すなわち、実施形態の挿通孔37では、周縁におけるこの穴本体38と補助開口39との境界部位付近が、挿通孔37周縁において突出用開口27a側となる縁部(後縁)の一部を部分的に突出させるような、突出片40を構成することとなる。そして、この突出片40は、図5,6に示すように、先端側部位36bから傾斜部位36cにかけての領域に配置されていることから、先端40aをケース27内方(左側)に向けるように屈曲して構成されることとなる。この突出片40は、図13のAに示すように、インフレーター43をケース27に取り付けた状態で、右方から見て、インフレーター43における接続口部46の周縁の端面(右端面44b)と重なるように、配置されており、さらには、図13のBに示すように、接続口部46側の端部(右端側部位44a)近傍を、突起部30に当接させるように軸直交方向側となる前方側に移動した状態のインフレーター43においても、右方から見て、接続口部46の周縁の端面(右端面44b)と重なる領域を有しており、インフレーター43の接続口部46周縁の右端面44bを押えて、インフレーター43の挿通孔37からの抜けを防止可能としている。
【0025】
実施形態のケース27の周壁部32における上側壁33の左右両端側と、下側壁34の左右両端側と、には、図5に示すように、ケース27を車両のボディ1側に取り付ける取付ブラケット41,42が、配置されている。上側壁33に配置される取付ブラケット41,41は、図4に示すように、ボディ1側のインパネリインフォースメント2から延びるブラケット4,4に連結されるもので、下側壁34に配置される取付ブラケット42,42は、ボディ1側の図示しないセンターブレースやフロントボディピラーから延びるブラケット5,6に連結される構成である。
【0026】
インフレーター43は、図3に示すように、軸方向を左右方向に略沿わせて配置される略円柱状とされて、大径の本体部44と、本体部44の左右方向の一端側から突設される小径のガス吐出部45と、を備えて構成されている。ガス吐出部45には、膨張用ガスを吐出可能なガス吐出口45aが、周方向に沿って多数放射状に形成されている。実施形態の場合、ガス吐出部45は、本体部44の左端側に、配設されている。本体部44における右端側には、作動信号入力用のリード線49を結線させたコネクタ48を接続させるための接続口部46が、形成されている。実施形態のインフレーター43では、本体部44において、接続口部46側となる右端側部位44aが、中央側部位44cよりもわずかに小径として構成されている。さらに、実施形態のインフレーター43では、接続口部46は、本体部44の右端側部位44aより小径とされて、本体部44の右端面44bから右方に僅かに突出するように、形成されている。
【0027】
リテーナ51は、図3,8に示すように、インフレーター43の外周側を覆う略円筒状の保持部52と、保持部52の軸方向と略直交するように突設される2つのボルト58,58と、を備えて構成されている。ボルト58は、車両搭載時に、車両前方側に向かって突出するように、配置されている。
【0028】
保持部52は、板金製とされて、軸方向を左右方向に略沿わせた略円筒状とされている。保持部52において、インフレーター43の後方側に配置される部位には、車両搭載時においてインフレーター43の本体部44における中央側部位44cの外周面44eと当接する当接部53が、形成されている。この当接部53は、ボルト58と対向する位置の2箇所に、形成されている。各当接部53は、図2,11に示すように、前後方向に沿った断面において、ボルト58と対向する領域で、略上下方向に沿うように、保持部52の周方向に沿って配置される2つの突起54を、備えている。各突起54は、保持部52をインフレーター43側に向かって凹ませるようにして、インフレーター43側に突出して形成されるもので、外形形状を略半円弧状として、先端面54aを、インフレーター43における本体部44の中央側部位44cの外周面44eと当接させる構成とされている。また、保持部52において、車両搭載時のインフレーター43の前方側となる位置であって、ボルト58,58の間となる部位には、ケース27の底壁部28に形成される支持突起29を挿通させるための貫通穴53aが、形成されている(図3,8参照)。
【0029】
また、保持部52における左端近傍には、内部にインフレーター43を挿入させた際のインフレーター43の位置決めとなる突出片56が、内周側に突出するように、形成されている(図3参照)。この突出片56は、インフレーター43の本体部44におけるガス吐出部45側の端面(左端面44f)に当接されて、本体部44の左方への移動を規制して、リテーナ51内におけるガス吐出部45の位置を決めるためのものである。さらに、保持部52における右端側には、後述するインフレーター挿入用の開口スリット64から、リテーナ51をエアバッグ61内に収納させてエアバッグ61を折り畳んだ際に、この開口スリット64から突出するように配設される係止爪部57が、形成されている。係止爪部57は、車両搭載時における後縁側から後方に突出して、先端側を上方に向けるように屈曲された略L字形状とされている。実施形態のエアバッグ装置Sでは、組立作業時において、リテーナ51を内部に収納させた状態でエアバッグ61を折り畳んだ後、インフレーター43を、開口スリット64からエアバッグ61内に挿入させて、リテーナ51の保持部52内に挿入させる構成であり、この係止爪部57は、エアバッグ61内に収納させたリテーナ51の保持部52が開口スリット64に対して位置ずれすることを防止するために、配設されている。
【0030】
そして、実施形態のエアバッグ装置Sでは、インフレーター43をエアバッグ61内に配置されるリテーナ51の保持部52に収納させて、エアバッグ61をケース27内に収納させる際に、リテーナ51のボルト58を、ケース27の底壁部28から突出させて、ボルト58にナット59を締結させることにより、インフレーター43とエアバッグ61とをケース27に取り付ける構成である。詳細には、インフレーター43は、このナット59の締結時に、ケース27の底壁部28に形成される支持突起29と、リテーナ51の保持部52に形成される当接部53とにより、挟持されて、リテーナ51に保持されることとなる。
【0031】
エアバッグ61は、実施形態の場合、可撓性を有したポリエステルやポリアミド糸等からなる織布から形成されるもので、膨張完了時の形状を、図1,4の二点鎖線に示すように、略長方形板状として、運転者Dの左右の膝K(KL,KR)を保護可能に構成されている。実施形態の場合、エアバッグ61は、図9,10に示すように、膨張完了時にケース27内に配置される取付部62と、取付部62より左右に幅広とされて膨張完了時に運転者Dの膝K(KL,KR)を保護する保護膨張部67と、を備えて構成されている。
【0032】
取付部62には、図9に示すように、2つの挿通孔63,63と、開口スリット64と、貫通穴65と、が、形成されている。挿通孔63,63は、リテーナ51の各ボルト58を挿通させるためのものである。開口スリット64は、リテーナ51とインフレーター43とをエアバッグ61の内部に挿入させるためのものであり、エアバッグ61を単体で平らに展開した状態では、略左右方向に沿った直線状とされるもので(図9参照)、車両搭載時においては、図2に示すごとく、略前後方向に沿って配置されることとなる。リテーナ51を内部に収納させた状態では、リテーナ51の係止爪部57は、開口スリット64の右端(車両搭載時おける前端)側から突出することとなる。貫通穴65は、ケース27の底壁部28に形成される支持突起29を挿通させるためのものであり、挿通孔63,63間に形成されている。
【0033】
実施形態のエアバッグ61では、エアバッグ61内に、2つのテザー69,70が、上下で離隔されて、それぞれ、左右方向に略沿って配設されている。テザー69は、取付部62と保護膨張部67とを区画するように配置され、テザー70は、保護膨張部67の領域を上下で区画するように配置されている。各テザー69,70には、膨張用ガスを流通可能な複数のガス流通孔69a,70aが、形成されている。
【0034】
次に、実施形態のエアバッグ装置Sの車両への搭載について説明する。まず、リテーナ51を、ボルト58を挿通孔63から突出させるようにして、開口スリット64からエアバッグ61内に収納させる。そして、保持部52に形成される係止爪部57を、開口スリット64から突出させた状態で、エアバッグ61を、ケース27内に収納可能とするように折り畳み、折り崩れ防止用の破断可能な図示しないラッピング材により、周囲をくるんでおく。このとき、開口スリット64周縁の部位は、ラッピング材から露出させておく。
【0035】
次いで、インフレーター43を、開口スリット64を経て、ガス吐出部45側からエアバッグ61内に(リテーナ51の保持部52内)に挿入させる。このとき、本体部44の左端面44fが、リテーナ51の保持部52に形成される突出片56に当接するまで、インフレーター43を挿入させる。その後、底壁部28からボルト58を突出させるようにして、折り畳まれたエアバッグ61とインフレーター43とを、ケース27内に収納させ、底壁部28から突出しているボルト58にナット59を締結させて、エアバッグ61とインフレーター43とをケース27に取り付ける。このナット59の締結時に、リテーナ51は、図11のA,Bに示すように、インフレーター43の外周側を覆っている保持部52を、底壁部28側へ移動させることとなる。そして、底壁部28に形成される支持突起29が、先端部29aをインフレーター43における本体部44の中央側部位44cの外周面44eに当接されるようにして、インフレーター43を、逆に、車両後方側へ押圧するような態様となり、保持部52に形成される当接部53の各突起54の先端面54aに、インフレーター43の本体部44の中央側部位44cの外周面44eが当接されて、インフレーター43が、本体部44における中央側部位44cを、車両後方側に配置される4個の突起54の先端面54aと、車両前方側に配置される1個の支持突起29の先端部29aと、によって、挟持されて、リテーナ51に保持されることとなる。
【0036】
その後、各係止爪33a,34aを係止穴22a,23a周縁に係止させるようにして、エアバッグカバー17をケース27に組み付ければ、エアバッグ組付体を組み立てることができる。そして、エアバッグ組付体を、ブラケット4,5,6を利用して、ボディ1側に取付固定し、ケース27の挿通孔37から露出しているインフレーター43の接続口部46に、エアバッグ作動回路から延びるリード線49を結線させたコネクタ48を接続させる。その後、インパネ13やアンダーカバー14(図1,2参照)を取り付ければ、エアバッグ装置Sを車両に搭載することができる。
【0037】
エアバッグ装置Sの車両への搭載後、リード線49を経て、インフレーター43に作動信号が入力されれば、インフレーター43のガス吐出口45aから膨張用ガスが吐出されて、エアバッグ61内に流入することとなる。そして、エアバッグ61は、内部に膨張用ガスを流入して膨張し、図示しないラッピング材を破断するとともに、エアバッグカバー17の扉部19を押圧し、扉部19が、周囲の破断予定部20を破断させつつ、ヒンジ部21を回転中心として上下に開くこととなる。そして、エアバッグ61が、ケース27の突出用開口27aから車両後方側に向かって突出し、図1,4の二点鎖線に示すように、膨張を完了させることとなる。
【0038】
実施形態のエアバッグ装置Sでは、インフレーター43は、作動時において、膨張用ガス吐出時の反力により、接続口部46側(右端側部位44a側)を先頭として、リテーナ51の保持部52から抜けるように、軸方向に沿って移動するとともに、ケース27の突出用開口27aから突出する際のエアバッグ61の引張力を受けて、軸直交方向側に揺動することとなる。そして、実施形態のエアバッグ装置Sでは、ケース27におけるインフレーター43の接続口部46側に配置される右側壁36に形成されて、インフレーター43の接続口部46を露出させるように構成される挿通孔37の突出用開口27a側の縁部(後縁側)に、部分的に突出するような突出片40を、配設させるとともに、ケース27の底壁部28における右側壁36近傍に、インフレーター43側に向かって突出する突起部30を、配置させていることから、インフレーター43が、作動時に、接続口部46側の端部(右端側部位44a)を底壁部28側に向けるように揺動しつつ、リテーナ51の保持部52から抜けるように、軸方向に沿って移動しようとしても、図12のB,13のBに示すように、本体部44における右端側部位44aの外周面44dを底壁部28から突出している突起部30に当接させることとなる。換言すれば、突起部30が、インフレーター43が突出片40から外れるように底壁部28側に移動することを抑制することができることから、突出片40によって、インフレーター43における接続口部46周縁の端面(右端面44b)を、確実に押えることができる。また、この突出片40は、先端40aをケース27内方側(左側)に向けるように屈曲して形成されている。そのため、インフレーター43が軸方向に沿って大きく移動しようとしても、突出片40が、屈曲部位の高い剛性により、変形を抑制されて、インフレーター43の接続口部46周縁の端面(右端面44b)を確実に押えることができて、インフレーター43の軸方向に沿った移動を、抑制できる。そして、実施形態のエアバッグ装置Sでは、突出片40及び突起部30は、それぞれ、ケース27に形成されていることから、従来の抜け防止部材を使用している膝保護用エアバッグ装置と比較して、部品点数を低減できて、構成を簡便にすることができる。
【0039】
したがって、実施形態のエアバッグ装置Sでは、簡便な構成で、作動時のインフレーター43を安定して保持することができる。
【0040】
また、実施形態のエアバッグ装置Sでは、インフレーター43を、ケース27の底壁部28に取り付ける構成としており、インフレーター43の本体部44を、リテーナ51の保持部52に形成される2つの当接部53,53と、底壁部28に形成される1つの支持突起29と、によって挟持することにより、ケース27の底壁部28側に取り付ける構成であるが、底壁部28に形成される突起部30が、支持突起29よりも、底壁部28からのインフレーター43側への突出量を小さく設定されて、支持突起29の支持によるインフレーター43のケース27への取付時に、インフレーター43との間に隙間を有するように、構成されている。そのため、インフレーター43のケース27への取付時に、底壁部28に形成される突起部30は、インフレーター43(本体部44)との間に隙間を有して、インフレーター43と非接触とされることから、突起部30がインフレーター43と接触して異音が発生することを抑制できる。また、実施形態のエアバッグ装置Sでは、リテーナ51に形成される2つの当接部53,53と、ケース27の底壁部28における当接部53,53間となる位置に配置される1つの支持突起29と、の3点支持により、安定してインフレーター43を支持することができる。
【0041】
勿論、このような点を考慮しなければ、インフレーターをケースの底壁部に取り付ける構成であっても、底壁部に形成される突起部を、底壁部に形成される支持突起と略同等の突出高さを有するように、構成してもよい。なお、実施形態では、インフレーターはケースの底壁部に取り付けられているが、インフレーターのケースへの取付位置は実施形態に限られるものではなく、例えば、周壁部の上側壁や下側壁に、インフレーターを取り付ける構成としてもよい。
【0042】
また、実施形態のエアバッグ装置Sでは、インフレーター43の接続口部46が、本体部44の右端側部位44a側から僅かに突出し、インフレーター43をケース27内に収納させた状態においても、挿通孔37から外部に突出している構成とされている。そのため、実施形態のエアバッグ装置Sでは、インフレーター43を突出用開口27aからケース27内に円滑に収納させるために、接続口部46側となるケース27の右側壁36を、突出用開口27a側に位置する先端側部位36bを底壁部28側の元部側部位36aに対して拡開させるように、段差状として、構成し、接続口部46を露出させるための挿通孔37を、元部側部位36aから、先端側部位36bにかけて、配設させている。そして、挿通孔37は、元部側部位36a側に配置される広幅の穴本体38と、先端側部位36b側に配置される狭幅の補助開口39と、から構成されるとともに、両者の境界を、元部側部位36a,先端側部位36b間を連結する傾斜部位36cに配置させていることから、この傾斜部位36cの領域に配置されて、穴本体38と補助開口39との境界部位付近を構成する縁部を、突出片40としている。すなわち、実施形態のエアバッグ装置Sでは、突出片40を、右側壁36の屈曲形状と挿通孔37の外形形状とを利用して、大きな平板状の傾斜部位36cの平らに連なった一部分(コーナー部)を利用しており、別途ケース内方に部分的に向けるように屈曲させて構成してはいない。
【0043】
勿論、インフレーターの外形形状や、ケースにおける右側壁、挿通孔、及び、突出片の外形形状は、実施形態に限られるものではなく、インフレーターとして、接続口部を、本体部から突出させない構成のものを使用してもよい。また、ケースの右側壁を平板状として、例えば、略円形の挿通孔の周縁に部分的に突出する突出片を形成し、この突出片を、先端をケース内方に向けるように屈曲させる構成としてもよい。
【0044】
また、実施形態のエアバッグ装置Sでは、インフレーター43の本体部44が、接続口部46側となる右端側部位44aを、支持突起29を当接させる中央側部位44cより小径として、構成されているが、勿論、インフレーターとして、本体部が軸方向の全域にわたって同一の外径寸法を有するものを、使用してもよい。なお、ケースの底壁部に形成される突起部は、インフレーターの外形形状に応じて、底壁部からの突出量を、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0045】
17…エアバッグカバー、
27…ケース、
27a…突出用開口、
28…底壁部、
29…支持突起、
30…突起部、
32…周壁部、
36…右側壁、
37…挿通孔、
40…突出片、
40a…先端、
43…インフレーター、
44…本体部、
45…ガス吐出部、
45a…ガス吐出口、
46…接続口部、
48…コネクタ、
49…リード線、
51…リテーナ、
52…保持部、
53…当接部、
58…ボルト、
59…ナット、
61…エアバッグ、
S…膝保護用エアバッグ装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれて収納されるエアバッグと、該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、前記エアバッグと前記インフレーターとを収納する板金製のケースと、を備えて構成されて、
前記ケースが、略四角形状の底壁部と、該底壁部の周縁から延びる略四角筒状の周壁部と、を有して、前記エアバッグを突出可能な突出用開口を有した略箱形状とされて、
前記インフレーターが、外形形状を略円柱状として、軸方向に沿った一端側に、膨張用ガスを吐出させるガス吐出口を配置させ、他端側に、エアバッグ作動回路から延びるリード線を結線させたコネクタを接続させる接続口部を配置させて構成されるとともに、リテーナによって外周面を挟持されることにより、前記リテーナに保持されて、
前記リテーナに配置されるボルトを、前記ケースから突出させてナットを締結させることにより、前記リテーナを利用して前記ケースに取り付けられる構成の膝保護用エアバッグ装置であって、
前記ケースの周壁部において、前記インフレーターの前記接続口部側に配置される側壁に、前記インフレーターを前記ケースに取り付けた状態で、前記接続口部に前記コネクタを接続可能に、前記接続口部を露出可能とされる挿通孔が、形成され、
該挿通孔の周縁において前記突出用開口側となる縁部の一部に、前記挿通孔周縁から部分的に突出するような突出片が、形成され、
前記ケースの底壁部において、前記側壁近傍となる位置に、前記インフレーター側に向かって突出して、前記インフレーターの作動時における軸直交方向側への揺動時に、前記インフレーターと当接可能とされる突起部が、形成され、
前記突出片が、先端を前記ケース内方側に向けるように屈曲して形成されるとともに、前記突起部に当接された状態の前記インフレーターにおける前記接続口部周縁の端面を押えて、前記インフレーターの前記挿通孔からの抜けを防止可能に構成されていることを特徴とする膝保護用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記インフレーターが、前記底壁部に取り付けられる構成とされて、
前記リテーナが、前記インフレーターの外周側を覆う略円筒状の板金製の保持部を備えて、前記保持部の軸方向に沿った2箇所において、前記ボルトを、該保持部の軸方向と略直交するように突設させて構成され、
前記インフレーターが、前記保持部において前記ボルトと対向する位置にそれぞれ配置されて前記インフレーター側に突出するように形成される2つの当接部と、前記底壁部における前記ボルトを挿通させる挿通孔の間において前記インフレーター側に突出するように形成される1つの支持突起と、により、挟持されて、前記ケースに取り付けられる構成とされ、
前記突起部が、前記支持突起よりも、前記底壁部からの前記インフレーター側への突出量を小さく設定されて、前記支持突起の支持による前記インフレーターの前記ケースへの取付時に、前記インフレーターとの間に隙間を有するように、構成されていることを特徴とする請求項1に記載の膝保護用エアバッグ装置。
【請求項1】
折り畳まれて収納されるエアバッグと、該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、前記エアバッグと前記インフレーターとを収納する板金製のケースと、を備えて構成されて、
前記ケースが、略四角形状の底壁部と、該底壁部の周縁から延びる略四角筒状の周壁部と、を有して、前記エアバッグを突出可能な突出用開口を有した略箱形状とされて、
前記インフレーターが、外形形状を略円柱状として、軸方向に沿った一端側に、膨張用ガスを吐出させるガス吐出口を配置させ、他端側に、エアバッグ作動回路から延びるリード線を結線させたコネクタを接続させる接続口部を配置させて構成されるとともに、リテーナによって外周面を挟持されることにより、前記リテーナに保持されて、
前記リテーナに配置されるボルトを、前記ケースから突出させてナットを締結させることにより、前記リテーナを利用して前記ケースに取り付けられる構成の膝保護用エアバッグ装置であって、
前記ケースの周壁部において、前記インフレーターの前記接続口部側に配置される側壁に、前記インフレーターを前記ケースに取り付けた状態で、前記接続口部に前記コネクタを接続可能に、前記接続口部を露出可能とされる挿通孔が、形成され、
該挿通孔の周縁において前記突出用開口側となる縁部の一部に、前記挿通孔周縁から部分的に突出するような突出片が、形成され、
前記ケースの底壁部において、前記側壁近傍となる位置に、前記インフレーター側に向かって突出して、前記インフレーターの作動時における軸直交方向側への揺動時に、前記インフレーターと当接可能とされる突起部が、形成され、
前記突出片が、先端を前記ケース内方側に向けるように屈曲して形成されるとともに、前記突起部に当接された状態の前記インフレーターにおける前記接続口部周縁の端面を押えて、前記インフレーターの前記挿通孔からの抜けを防止可能に構成されていることを特徴とする膝保護用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記インフレーターが、前記底壁部に取り付けられる構成とされて、
前記リテーナが、前記インフレーターの外周側を覆う略円筒状の板金製の保持部を備えて、前記保持部の軸方向に沿った2箇所において、前記ボルトを、該保持部の軸方向と略直交するように突設させて構成され、
前記インフレーターが、前記保持部において前記ボルトと対向する位置にそれぞれ配置されて前記インフレーター側に突出するように形成される2つの当接部と、前記底壁部における前記ボルトを挿通させる挿通孔の間において前記インフレーター側に突出するように形成される1つの支持突起と、により、挟持されて、前記ケースに取り付けられる構成とされ、
前記突起部が、前記支持突起よりも、前記底壁部からの前記インフレーター側への突出量を小さく設定されて、前記支持突起の支持による前記インフレーターの前記ケースへの取付時に、前記インフレーターとの間に隙間を有するように、構成されていることを特徴とする請求項1に記載の膝保護用エアバッグ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−71567(P2013−71567A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211414(P2011−211414)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
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