説明

膝保護用エアバッグ装置

【課題】インフレーターを、リテーナとインフレーター収納部との間で挟持させてケースに取り付ける構成であっても、簡便な構成として、インフレーターを、ケースに対して位置ずれなく的確に取付可能な膝保護用エアバッグ装置を提供すること。
【解決手段】本発明の膝保護用エアバッグ装置では、ケース34の突出用開口35aから、インフレーター25を、インフレーター収納部41内に収納させる。インフレーター収納部41における底壁部39近傍であって相互に対向する2箇所に、突起部47が、形成される。インフレーター25をインフレーター収納部41に収納させる際に、突起部47を、インフレーター25の外周面を部分的に凹ませるように形成された凹部27に挿入させることにより、インフレーター25が、軸方向に沿った移動と、周方向に沿った回転移動とを規制されて、インフレーター収納部41内に収納される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席に着座した乗員の膝の前方に、配置されるもので、内部に膨張用ガスを流入させて乗員の膝を保護可能に膨張するエアバッグと、外形形状を略円柱状とされてエアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、エアバッグとインフレーターとを内部に収納させるケースと、を備える膝保護用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、膝保護用エアバッグ装置としては、円筒状のリテーナにより外周側を覆われた状態の円柱状のインフレーターをエアバッグ内に配置させて、リテーナから突出する固定手段としてのボルトを、ケースから突出させてナットを締結させることにより、エアバッグとインフレーターとをケースに取り付けている構成のものがあった。この膝保護用エアバッグ装置では、リテーナを内部に収納させた状態で、エアバッグを折り畳んだ後に、インフレーターを、エアバッグに形成される開口スリットを経て、リテーナ内に挿入させる構成であり、リテーナに、インフレーターの端面に当接させてインフレーターの軸方向側への移動を規制する突出片と、インフレーターの外周面に向かって突出するように部分的に凹んでインフレーターの周方向に沿った回転移動を規制する突起部と、を、別々に配置させていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、膝保護用エアバッグ装置としては、円柱状のインフレーターを、ケース外に配置させ、別途ブラケットを用いてケースに取り付ける構成のものがあった。この膝保護用エアバッグ装置では、インフレーター側に、外周面から外方に突出するような突起を設け、インフレーターをケースに取り付けるブラケットに、この突起を挿入可能な穴部を設けて、インフレーターの軸方向側への移動と、周方向に沿った回転移動と、を規制していた(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の膝保護用エアバッグ装置では、折り畳んだエアバッグ内に配置されるリテーナに、インフレーターを挿入させて、インフレーターをケースに取り付ける構成であることから、リテーナとの間にエアバッグを噛み込むことを防止しつつ、インフレーターをリテーナ内に挿入させる必要があり、挿入時に手間がかかっていた。また、特許文献2に記載の膝保護用エアバッグ装置では、エアバッグをケースに取り付けるリテーナの他に、インフレーターをケースに取り付けるブラケットが必要であって、部品点数が増大していた。また、上記特許文献1,2に記載の膝保護用エアバッグ装置では、いずれも、ケースにインフレーター収納部を設け、インフレーターをインフレーター収納部とリテーナとにより挟持させてケースに取り付ける構成のものではなかった。
【0005】
円柱状のインフレーターを、ケースに形成されるインフレーター収納部に収納させて、インフレーター収納部とリテーナとで挟持させることにより、インフレーターをケースに取り付ける構成のエアバッグ装置としては、インフレーターの一端側に、インフレーターの本体部より小形で、かつ、非円形とされるとともに、外表面にインフレーターの軸方向に沿った凹溝を複数配設させた突出部を設け、この突出部を、ケースと別体としてケース側から突設されるストッパプレートにおいて、突出部の外形形状に対応した開口形状を有するように形成された挿通孔に、挿入させることにより、インフレーターの周方向に沿った回転移動を規制し、また、ストッパプレートをインフレーターの本体部の端面に当接させることにより、インフレーターの軸方向側への移動を規制している構成のものがあった(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−321331公報
【特許文献2】特開2005−271774公報
【特許文献3】特開2009−179156公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献3に記載のエアバッグ装置では、インフレーターに形成される突出部が、非円形として、かつ、外表面に凹溝も有する構成であることから、製造工数及びコストが増大し、また、ケースとは別体のストッパプレートも必要であることから、部品点数も増大して、簡便な構成で製造コストを低減させる点に改善の余地があった。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、インフレーターを、リテーナとインフレーター収納部との間で挟持させてケースに取り付ける構成であっても、簡便な構成として、インフレーターを、ケースに対して位置ずれなく的確に取付可能な膝保護用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る膝保護用エアバッグ装置は、座席に着座した乗員の膝の前方に、配置されるとともに、
内部に膨張用ガスを流入させて乗員の膝を保護可能に膨張するエアバッグと、外形形状を略円柱状とされてエアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、エアバッグとインフレーターとを内部に収納させるケースと、を備える膝保護用エアバッグ装置であって、
ケースが、
略四角筒形状の周壁部と、周壁部の一端側を閉塞するような底壁部と、を有して、エアバッグを突出させるための突出用開口を有した略箱形状とされて、折り畳まれたエアバッグを収納するエアバッグ収納部と、
エアバッグ収納部における底壁部の一部を、インフレーターを収納可能に、略半円弧状に凹ませて形成されるインフレーター収納部と、
を備える構成とされて、
エアバッグとインフレーターとが、エアバッグ内に収納されるリテーナを、固定手段を用いて底壁部に取り付けることにより、ケースに取り付けられる構成とされて、
リテーナが、インフレーターを、インフレーター収納部とリテーナとによって挟持可能に、インフレーターの軸直交方向側の断面形状を、略半円弧状に湾曲させて形成され、
ケースが、突出用開口から、インフレーターを、インフレーター収納部内に収納させる構成として、
インフレーター収納部において、底壁部近傍であって相互に対向する2箇所に、インフレーター側に向かって、部分的に突出する突起部が、形成され、
インフレーターをインフレーター収納部に収納させる際に、突起部を、インフレーターの外周面を部分的に凹ませるように形成される凹部に挿入させることにより、インフレーターが、軸方向に沿った移動と、周方向に沿った回転移動とを規制されて、インフレーター収納部内に収納されることを特徴とする。
【0010】
本発明の膝保護用エアバッグ装置では、インフレーターを、突出用開口からケース内に収納させる際に、インフレーターに形成される凹部を、インフレーター収納部に形成される突起部に位置を合わせて、突起部を凹部に挿入させるようにして、インフレーターをインフレーター収納部に収納させ、その後、エアバッグ内に収納されるリテーナを、固定手段を用いてケースの底壁部に取り付ければ、エアバッグとインフレーターとをケースに取り付けることができる。このとき、インフレーターは、各突起部の凹部への係止状態によって、インフレーター収納部に対して軸方向側に沿って移動することを抑制されることとなる。また、突起部は、インフレーターの周方向に沿って2箇所に形成されていることから、インフレーターが、インフレーター収納部に対して、周方向に沿って回転移動することも、抑制できる。すなわち、本発明の膝保護用エアバッグ装置では、ケースのインフレーター収納部に、一部をケース内方に向かって凹ませるように突起部を形成し、インフレーターの外周面において突起部に対応する位置に、突起部を挿入させて係止するための凹部を形成すれば、インフレーターの軸方向に沿った移動や周方向に沿った回転移動を、的確に抑制できることから、インフレーター側に非円形として外表面に凹溝を形成した突出部を設ける従来のエアバッグ装置と比較して、製造工数及びコストを低減させることができ、かつ、部品点数の増大も招かない。
【0011】
勿論、本発明の膝保護用エアバッグ装置では、インフレーターは、単にケースの突出用開口から、インフレーター収納部に挿入させ、折り畳まれたエアバッグ内に予め収納させた状態のリテーナを、エアバッグをケースに取り付けるように、底壁部に固定させるだけで、ケースに取り付けることができることから、インフレーターのケースへの取付作業性が良好であり、インフレーターを、容易にケースに取り付けることができる。
【0012】
したがって、本発明の膝保護用エアバッグ装置では、インフレーターを、リテーナとインフレーター収納部との間で挟持させてケースに取り付ける構成であっても、簡便な構成として、インフレーターを、ケースに対して周方向や軸方向の位置ずれなく、的確に取り付けることができる。
【0013】
また、本発明の膝保護用エアバッグ装置において、リテーナを、板金製として、インフレーターの軸方向に沿った両端側を、それぞれ、インフレーターの軸直交方向に沿い、かつ、インフレーターの軸心を間にして2つ配設される固定手段としてのボルトによって、底壁部に取り付けられる構成とするとともに、インフレーターにおける突出用開口側の面を覆うカバー部を有する構成として、
カバー部におけるインフレーターの軸方向に沿った2箇所において、それぞれ、インフレーターの周方向側の略中央となる1箇所ずつに、インフレーター側に突出するように形成されるとともに、周囲に肉盗み部を設けて、インフレーターをケースに取り付けた際に、撓みつつ、インフレーターの外周面に圧接される変形当接部を、配設させる構成とすることが好ましい。
【0014】
上記構成の膝保護用エアバッグ装置では、リテーナが、インフレーターの軸方向に沿った両端側を、インフレーターの軸心を跨ぐような2箇所ずつでボルト止めして、ケースの底壁部に取り付けられる構成であることから、エアバッグとインフレーターとを、リテーナにより、安定してケースに取り付けることができる。また、リテーナにおいて、インフレーターの突出用開口側の面を覆うカバー部には、インフレーターの軸方向側で離れた2箇所に、それぞれ、1つずつ、インフレーター側に突出する変形当接部が、形成され、この変形当接部が、周囲に肉盗み部を配置させて、インフレーターをケースに取り付けた際に、撓みつつ、インフレーターの外周面に圧接される構成であることから、インフレーターを、インフレーター収納部に対して、ガタツキを抑制された状態で、取り付けることができる。これらの変形当接部は、カバー部において、インフレーターの周方向の略中央となる位置、換言すれば、インフレーターの軸直交方向側におけるボルト間の略中央となる位置に配置されていることから、底壁部から突出するボルトにナットを締結させる際に、円滑に撓ませることができる。さらに、上記構成の膝保護用エアバッグ装置では、ケースではなく、リテーナの変形当接部を撓ませるようにして、インフレーターをケースに取り付ける構成であることから、ケースの強度を低下させることなく、エアバッグ装置を安定して車両に搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態である膝保護用エアバッグ装置の使用状態を示す車両前後方向の概略縦断面図である。
【図2】実施形態の膝保護用エアバッグ装置の車両前後方向の概略拡大縦断面図である。
【図3】実施形態の膝保護用エアバッグ装置の車両左右方向の概略横断面図である。
【図4】実施形態の膝保護用エアバッグ装置の使用状態を示す車両後方側から見た概略正面図である。
【図5】実施形態の膝保護用エアバッグ装置に使用するケース、インフレーター、及び、リテーナを、車両後方側から見た斜視図である。
【図6】実施形態の膝保護用エアバッグ装置に使用するケースの正面図である。
【図7】図6のケースの横断面図である。
【図8】実施形態の膝保護用エアバッグ装置に使用するリテーナの正面図である。
【図9】図8のリテーナの横断面図である。
【図10】実施形態の膝保護用エアバッグ装置に使用するエアバッグの背面図である。
【図11】図10のエアバッグの縦断面図であり、図10のXI−XI部位に対応する。
【図12】図3のXII−XII部位の部分拡大概略断面図である。
【図13】図12のXIII−XIII部位の断面図である。
【図14】実施形態の膝保護用エアバッグ装置において、インフレーターのガス吐出部付近を示す左右方向に沿った部分拡大概略断面図である。
【図15】図14のXV-XV部位の断面図である。
【図16】図14のXVI−XVI部位の断面図である。
【図17】図3のXVII−XVII部位の部分拡大概略断面図である。
【図18】図14のXVIII−XVIII部位の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の膝保護用エアバッグ装置(以下「エアバッグ装置」と省略する)Sは、図1〜4に示すように、乗員としての運転者Dの膝K(KL,KR)を保護可能に、運転者Dの車両前方側であるステアリングコラム6の下方に配設されている。なお、本明細書における上下、左右、及び、前後の方向は、エアバッグ装置Sを車両に搭載させた際の車両の上下・左右・前後の方向に対応するものである。
【0017】
ステアリングコラム6は、図1,4に示すように、コラム本体7と、コラム本体7の外周側を覆う合成樹脂製のコラムカバー10と、を備えている。コラム本体7は、図1に示すように、メインシャフト8と、メインシャフト8の周囲を覆うコラムチューブ9と、から構成されている。
【0018】
エアバッグ装置Sは、折り畳まれたエアバッグ69と、エアバッグ69に膨張用ガスを供給するインフレーター25と、エアバッグ69とインフレーター25とを内部に収納させるケース34と、エアバッグ69とインフレーター25とをケース34に取り付けるリテーナ51と、ケース34の車両後方側を覆うエアバッグカバー15と、を備えて構成されている。
【0019】
エアバッグカバー15は、オレフィン系等の熱可塑性エラストマーから形成されて、ケース34の車両後方側を覆い可能に、構成されている。このエアバッグカバー15は、図2〜4に示すように、アッパパネル11aとロアパネル11bとから構成されるインストルメントパネル(以下「インパネ」と省略する)11のロアパネル11b側に配設されている。エアバッグカバー15は、実施形態の場合、ケース34の突出用開口35a付近に配置される扉配設部16と、扉配設部16の周囲に延びる周縁部23と、を備えて構成されている。
【0020】
扉配設部16は、ケース34の突出用開口35aを覆う扉部17と、扉部17の上下両側から前方に向かって延びて、エアバッグカバー15をケース34に取り付けるための取付片部20,21と、を備えている。扉部17は、ケース34の突出用開口35aより僅かに大きく形成されて、突出用開口35aの車両後方側(実施形態の場合、後下側)を覆う略長方形板状とされている。そして、扉部17は、実施形態では、周囲に、車両後方側から見て扁平な略逆U字形状とされる薄肉の破断予定部18と、下縁側に配置されて開き時の回転中心となるヒンジ部19と、を配設させて、開き時に、下開きに開く構成とされている(図1,2の二点鎖線参照)。取付片部20,21は、ケース34におけるエアバッグ収納部35の後述する上側壁37と下側壁38との外周側に、それぞれ、隣接して、車両前方側(前上側)に突出するように配置されるもので、前端側に、ケース34の各上側壁37,下側壁38に形成される係止爪37a,38aを係止させるための長方形状に開口した係止穴20a,21aを、係止爪37a,38aに対応して、それぞれ、左右方向に沿った5箇所ずつに、配設させている。
【0021】
周縁部23は、扉配設部16の左右両側の部位において、扉部17より一段車両前方側に凹むような段差状として構成され、ロアパネル11bにおける扉部17の左右両側に配置される部位を支持して、扉部17とロアパネル11bとの車両後方側の面を略面一とするように、構成されている(図3参照)。
【0022】
インフレーター25は、図3,5に示すように、軸方向を左右方向に略沿わせて配置される略円柱状とされて、大径の本体部26と、本体部26の左右方向の一端側から突設される小径のガス吐出部28と、を備えて構成されている。ガス吐出部28には、膨張用ガスを吐出可能なガス吐出口28aが、周方向に沿って多数放射状に形成されている。実施形態の場合、ガス吐出部28は、本体部26の左端26d側に、配設されている。本体部26における右端26a側には、作動信号入力用のリード線32を結線させたコネクタ31を接続させるための接続口部29が、形成されている(図3,5,17参照)。
【0023】
インフレーター25の本体部26において、実施形態の場合、接続口部29側の端部(右端26a)近傍となる位置には、図5に示すように、ケース34における後述するインフレーター収納部41に形成される突起部47を挿入させて係止可能な凹部27が、外周面26cを凹ませるようにして、形成されている。凹部27は、図12に示すように、本体部26の軸心C1を中心として対称となる2箇所に配置されるもので、実施形態の場合、本体部26の外周面26cの一部を、インフレーター25の軸直交方向(インフレーター25のケース34内への収納方向)に略沿って切り欠くようにして、形成されている。詳細に説明すれば、各凹部27は、本体部26の半径と同程度の長さ分、底面27aを略平面状とするように、切り欠いて形成されている。また、実施形態のインフレーター25では、本体部26に、外周面26cを全周にわたって切り欠いて構成される凹溝26eが、配設されており、実施形態では、凹部27は、図3,5,13に示すように、凹溝26eの右側(接続口部29側)に隣接して、凹溝26eから連なるように、形成されている。そして、凹部27は、突起部47を係止させる右側面27b(接続口部29側の面)を、底面27aと略直交させるように、形成されている。
【0024】
ケース34は、実施形態の場合、車両後方側を開口させて構成されるもので、図3,5〜7に示すように、折り畳まれたエアバッグ69を収納するためのエアバッグ収納部35と、インフレーター25を収納するためのインフレーター収納部41と、を備えている。実施形態の場合、ケース34は板金製とされて、エアバッグ収納部35とインフレーター収納部41とは、プレス加工により一体的に形成されている。また、実施形態の場合、ケース34は、エアバッグ収納部35における周壁部36の軸方向を、前後方向に対して後下がりに傾斜させるようにして、車両に搭載されている(図1,2参照)。
【0025】
エアバッグ収納部35は、略四角筒形状の周壁部36と、周壁部36の前端側を閉塞するような底壁部39と、を有して、後端側に、エアバッグ69を突出させるための突出用開口35aを有した略箱形状とされている。実施形態の場合、エアバッグ収納部35は、図3に示すように、左右方向側(インフレーター25の軸方向側)の幅寸法を、インフレーター25の長さ寸法より大きく設定されている。周壁部36は、上述したように、軸方向を、前後方向に対して後下がりに傾斜させて配置されるもので、周壁部36において上下方向で対向する上側壁37,下側壁38の後縁側には、エアバッグカバー15の取付片部20,21に形成される係止穴20a,21a周縁を係止するための係止爪37a,38aが、配置されている。係止爪37a,38aは、上下の外方へ突出し、先端を車両前方側に向けて反転させるように断面略L字形状に屈曲して、形成されるもので、実施形態の場合、上側壁37,下側壁38に、それぞれ、左右方向に沿って5箇所ずつ、形成されている(図5参照)。
【0026】
底壁部39は、実施形態の場合、図3,5,6に示すように、周壁部36の前端側の一部を閉塞し、周壁部36の前縁側の全域から内方に向かって延びるような略四角環状の領域から、構成されている。底壁部39における四隅付近には、リテーナ51の後述する固定手段としてのボルト65を挿通させるための挿通孔39aが、形成されている(図6参照)。また、底壁部39は、エアバッグ69を取り付ける取付座として、リテーナ51の後述する押え部53に対応して平面状に、形成されている。
【0027】
インフレーター収納部41は、エアバッグ収納部35における底壁部39の一部である中央側の領域を前上側に凹ませるようにして、形成されるもので、インフレーター25の前上側半分程度の領域を収納可能に、底壁部39を略半円弧状に凹ませて形成されている。インフレーター収納部41において、インフレーター25のガス吐出部28が収納される左端側の領域は、インフレーター25の軸方向(左右方向)に沿った断面において、エアバッグ収納部35の底壁部39にかけてなだらかに収束するように傾斜して、構成されている(図3,7参照)。また、インフレーター収納部41において、インフレーター25の接続口部29が配置される右側の領域は、インフレーター25収納時に接続口部29を露出可能に、切り欠いて構成されている。すなわち、インフレーター収納部41は、右端側の領域に、インフレーター25の接続口部29を露出させて接続口部29にコネクタ31を接続するための開口41bを、配設させている(図5,7参照)。この開口41bの配置される領域は、底壁部39も大きく切り欠かれて構成されている(図5〜7参照)。そして、実施形態の場合、インフレーター25は、図3及び図7の二点鎖線に示すように、本体部26における接続口部29側の端部(右端26a)側の前上側半分の部位を、開口41bから大きく突出(露出)させるようにして、インフレーター収納部41内に収納されている。
【0028】
そして、実施形態の場合、インフレーター収納部41は、軽量化のために、左右の中央側に、長手方向をインフレーター25の軸方向に略沿わせた略長方形状の開口41aを、配置させている(図6,7参照)。すなわち、インフレーター収納部41は、インフレーター25のガス吐出部28から本体部26の左端26d側(ガス吐出部28側)にかけての領域の前上側半分の領域を左側も含めて覆う吐出部側部位42と、インフレーター25の本体部26において接続口部29の左側の領域の前上側半分の領域を覆う本体側部位46と、を備えている。
【0029】
吐出部側部位42は、インフレーター25の前上側半分の外周側を覆うように、右側の領域を、半円筒形状として、ガス吐出部28の左側に配置される左側の領域を、エアバッグ収納部35の底壁部39に向かってなだらかに傾斜させて、底壁部39に連なるように構成されている。そして、吐出部側部位42は、図5〜7に示すように、インフレーター25における本体部26の左端26d近傍に配置される部位に、インフレーター25側(本体部26側)に向かって略台形状に突出し、先端43aを本体部26の外周面26cに当接させてシールするケース側シール部43を、インフレーター25の周方向に沿った全域にわたって、配置させている。詳細には、ケース側シール部43は、底壁部39間の領域において、インフレーター25の周方向に沿った全域にわたって、連続的に形成されている(図16参照)。このケース側シール部43は、吐出部側部位42の一部を凹ませて形成されるもので、インフレーター25の作動時に、ガス吐出口28aから吐出される膨張用ガスの、ケース34(インフレーター収納部41)とインフレーター25の本体部26との間からの抜けを防止するために、配置されている。ケース側シール部43は、図14,16に示すように、リテーナ51に形成される後述するリテーナ側シール部56と、インフレーター25の軸直交方向側で対向する位置に、形成されている。
【0030】
また、吐出部側部位42の右縁42a側において、周方向の略中央となる位置には、図6,7に示すように、周囲の部位より、若干、ケース34内方(インフレーター25側)に位置しつつ部分的に平板状として、リテーナ51によるインフレーター25のケース34への取付時に、本体部26を受け止める支持部44が、形成されている。この支持部44は、図3,14に示すように、インフレーター25の軸直交方向側で、リテーナ51における後述する変形当接部57と対向する位置に、形成されるもので、リテーナ51のボルト65をナット66止めさせてインフレーター25をケース34へ取り付ける際に、インフレーター25の本体部26を受け止めて、リテーナ51に形成される変形当接部57を容易に撓ませるための部位である。
【0031】
本体側部位46は、開口41a,41b間に配置されて、インフレーター25の本体部26において、左右の中央より右側であって右端26a近傍を除いた部位の前上側半分の領域の外周側を覆い可能な、略半円筒形状とされている。本体側部位46におけるインフレーター25の軸方向に沿った方向側の中央付近であって、底壁部39近傍となる相互に対向する2箇所には、本体側部位46を部分的に凹ませるようにして、インフレーター25側に向かって部分的に突出させる突起部47が、形成されている(図5〜7参照)。実施形態の場合、各突起部47は、図12に示すように、底壁部39から連なるように形成されるもので、インフレーター25の軸方向に沿った方向側(左右方向側)の断面形状を、略長方形状として(図13参照)、左右の側面を、インフレーター25の軸直交方向(インフレーター25のケース34内への収納方向)に沿わせるように本体側部位46と略直交させるとともに、平面状の先端面47aを、底壁部39と略直交させるように、構成されている。これらの突起部47は、インフレーター25を、突出用開口35aからケース34のインフレーター収納部41内に収納させる際に、インフレーター25における本体部26の外周面26cを部分的に凹ませて形成される凹部27に挿入されつつ、右側面47b(接続口部29側の面)と先端面47aとを、それぞれ、凹部27の右側面27b(接続口部29側の面)と底面27aとに当接させるようにして、凹部27に係止されるもので、右側面47bを凹部27の右側面27bに当接させることにより、インフレーター25をインフレーター収納部41内に収納させた際の、インフレーター収納部41に対するガス吐出部28の位置決めをしている。そして、インフレーター25は、図12,13に示すように、インフレーター収納部41に形成される突起部47を凹部27に挿入させた状態で、インフレーター収納部41内に収納されて、ケース34に取り付けられることとなる。
【0032】
また、本体側部位46の右縁46a側において、周方向の略中央となる位置には、図6,7に示すように、吐出部側部位42に形成される支持部44と同様に、周囲の領域より、若干、ケース34内方(インフレーター25側)に位置しつつ部分的に平板状として、リテーナ51によるインフレーター25のケース34への取付時に、本体部26を受け止める支持部48が、配置されている。この支持部48は、インフレーター25の軸直交方向側で、リテーナ51の変形当接部60と対向する位置に、形成されている(図3参照)。
【0033】
リテーナ51は、図5,8,9に示すように、板金製のリテーナ本体52と、リテーナ本体52から突設される固定手段としてのボルト65と、を備えて構成されている。リテーナ本体52は、ケース34におけるエアバッグ収納部35内に収納可能に、外形形状を、エアバッグ収納部35の底壁部39より僅かに小さくした長尺状とされている。すなわち、リテーナ本体52は、図3に示すように、左右方向側(インフレーター25の軸方向側)の幅寸法を、インフレーター25の長さ寸法より大きく設定されている。そして、リテーナ本体52は、実施形態の場合、後述する押え部53の四隅に、エアバッグ収納部35に取り付けるための固定手段としてのボルト65を突設させている。すなわち、ボルト65は、リテーナ本体52における長手方向(インフレーター25の軸方向に沿った方向)の両端側において、それぞれ、インフレーター25の軸直交方向に沿って、かつ、インフレーター25(本体部26)の軸心C1を間にする2箇所ずつに、配置されている(図8参照)。そして、実施形態のエアバッグ装置Sでは、ボルト65を外部に突出させるようにしてリテーナ本体52をエアバッグ69の内部に収納させた状態のリテーナ51を、エアバッグ69とともにエアバッグ収納部35内に挿入させ、インフレーター収納部41内にインフレーター25を収納させた状態のケース34の底壁部39に形成される挿通孔39aに、ボルト65を挿通させて、リテーナ本体52を底壁部39上に載せ、底壁部39から突出するボルト65にナット66を締結させることにより、エアバッグ69とインフレーター25とをケース34に取り付けている。また、実施形態のエアバッグ装置Sでは、このリテーナ51のボルト65を利用して、ケース34を車両のボディ1側に取り付ける別体のブラケット81,81を、共止めしている(図3参照)。このブラケット81,81は、図4に示すように、ボディ1側のインパネリインフォースメント2から延びるブラケット3,3に連結される構成である。
【0034】
リテーナ本体52は、エアバッグ69の後述する流入用開口71の周縁を底壁部39との間で押え可能に、外周縁側の領域を、全周にわたって略平板状として、インフレーター25の後下側を覆う中央側の領域を、後下側に突出させるように湾曲させて、構成されている。詳細には、リテーナ本体52は、外周縁側に配置される略平板状で略四角環状の押え部53と、押え部53の内周側の領域に配置される2つのカバー部(吐出部カバー部54,本体部カバー部59)と、押え板部63と、を備えている(図8,9,12,15参照)。また、実施形態のリテーナ51では、軽量化のために、吐出部カバー部54,本体部カバー部59間と、本体部カバー部59,押え板部63間と、に、それぞれ、長手方向をインフレーター25の軸方向に略沿わせた略長方形状の開口52a,52bを、配置させている(図8,9参照)。押え部53は、強度保持のために、外周縁側に、全周にわたって、突出用開口35a側に向かって突出するリブ53aを、配置させている(図5,9参照)。
【0035】
吐出部カバー部54と本体部カバー部59とは、押え部53の内周縁側から延設されて、インフレーター25(本体部26)を、インフレーター収納部41とリテーナ51とによって挟持可能に、インフレーター25の軸直交方向側の断面形状を、略半円弧状に湾曲させて構成される(図12,15参照)。吐出部カバー部54は、インフレーター25のガス吐出部28から本体部26の左端26d側(ガス吐出部28側)にかけての領域の後下側半分の領域を左側も含めて覆うように構成され、本体部カバー部59は、インフレーター25の本体部26において接続口部29の左側の領域の後下側半分の領域を覆うように構成されている。
【0036】
吐出部カバー部54は、図3に示すように、ケース34におけるインフレーター収納部41の吐出部側部位42と、インフレーター25の軸直交方向側で対向する位置に、配置されるもので、インフレーター25の後下側半分(突出用開口35a側)の外周側を覆うように、後下側に向かって半円筒形状に突出するように形成され、左端近傍も、後下側に向かって突出するように、略球面状に湾曲させて構成されている。吐出部カバー部54において、ガス吐出部28の突出用開口35a側(後下側)の領域には、ガス吐出口28aから吐出される膨張用ガスをエアバッグ69内に流出可能な流出用開口55が、略長方形状に開口して形成されている(図8参照)。この流出用開口55は、ケース34におけるインフレーター収納部41への取付時に、インフレーター収納部41に位置決めされて配置されたインフレーター25のガス吐出口28aに対応して配置され、かつ、エアバッグ69の流入用開口71を連通するように、流入用開口71と対応した位置に、形成されている(図3,14参照)。なお、実施形態のエアバッグ装置Sでは、インフレーター25におけるガス吐出部28の軸直交方向側の周囲は、図18に示すように、リテーナ51の吐出部カバー部54における流出用開口55の周縁の部位と、インフレーター収納部41における吐出部側部位42と、からなる略円筒状の部材により覆われていることから、ガス吐出部28に放射状に設けられるガス吐出口28aから吐出される膨張用ガスGは、吐出部側部位42と吐出部カバー部54との内周面により、円滑に、流出用開口55を経てエアバッグ69内に案内されることとなる。
【0037】
吐出部カバー部54において、インフレーター25における本体部26の左端26d近傍に配置される部位には、図8,9に示すように、インフレーター25側(本体部26側)に向かって略台形状に突出し、先端56aを本体部26の外周面26c側に当接させてシールするリテーナ側シール部56が、インフレーター25の周方向に沿った全域にわたって、配置されている。詳細には、リテーナ側シール部56は、押え部53間の領域において、インフレーター25の周方向に沿った全域にわたって、連続的に形成されている(図16参照)。このリテーナ側シール部56は、吐出部カバー部54の一部を凹ませて形成されるもので、インフレーター25の作動時に、ガス吐出口28aから吐出される膨張用ガスの、エアバッグ69とインフレーター25の本体部26との間からの抜けを防止するために配置されている。
【0038】
リテーナ側シール部56は、上述したごとく、ケース34におけるインフレーター収納部41に形成されるケース側シール部43と、インフレーター25の軸直交方向側で対向する位置に、形成されている(図14,16参照)。すなわち、実施形態のエアバッグ装置Sでは、インフレーター25は、図14,16に示すように、ガス吐出部28近傍となる本体部26の左端26d近傍の領域の外周側を、周方向の略全域にわたって、ケース側シール部43とリテーナ側シール部56とによりシールされることとなり、作動時に、膨張用ガスがケース34外に漏れることを極力防止できる。なお、実施形態の場合、このリテーナ側シール部56と本体部26との間には、図14に示すように、エアバッグ69の流入用開口71の周縁部位(右縁71a側の部位)が、介在されている。
【0039】
また、吐出部カバー部54の右縁54a(開口52aの左縁)側において、周方向の略中央となる位置には、吐出部カバー部54を部分的に凹ませるようにして、インフレーター収納部41側(インフレーター25側)に突出させる変形当接部57が、形成されている(図8,9参照)。この変形当接部57は、図3,14に示すように、ケース34におけるインフレーター収納部41の吐出部側部位42に形成される支持部44と、インフレーター25の軸直交方向側で対向する位置に、形成されるもので、先端側に、略平板状の押え面57aを、有している。また、吐出部カバー部54における変形当接部57の周囲には、インフレーター25の本体部26に圧接された際に、変形当接部57を撓ませ可能に、吐出部カバー部54を切り欠いて形成される肉盗み部58が、配設されている。肉盗み部58は、実施形態の場合、図8,9に示すように、変形当接部57の左側の周囲を囲むように、略コ字形の溝状とされている。変形当接部57は、ケース34に取り付けられる前の状態では、周囲の吐出部カバー部54からの突出量h1を、リテーナ51を利用してケース34にインフレーター25を取り付けた状態での本体部26の外周面26cと吐出部カバー部54との間の隙間t1より大きく設定されている(図14参照)。
【0040】
この変形当接部57は、ケース34の底壁部39から突出させたボルト65にナット66を締結させる際に、押え面57aをインフレーター25における本体部26の外周面26cに当接された状態で、押え面57aの周囲の部位を撓ませるように、本体部26の外周面26cに圧接されることとなる(図14,15参照)。そして、実施形態のエアバッグ装置Sでは、ケース34におけるインフレーター収納部41の変形当接部57に対応する位置に、支持部44を配設させていることから、この支持部44により、変形当接部57に押圧されるインフレーター25の本体部26を受け止めることができて、変形当接部57を本体部26の外周面26cに強固に圧接させることができ、支持部44と変形当接部57とによって、インフレーター25を強固に挟持させることができる。
【0041】
本体部カバー部59は、図3に示すように、ケース34におけるインフレーター収納部41の本体側部位46と、インフレーター25の軸直交方向側で対向する位置に、配置されるもので、インフレーター25の後下側半分(突出用開口35a側)の外周側を覆うように、後下側に向かって半円筒形状に突出するように形成されている。本体部カバー部59の右縁59a(開口52bの左縁)側において、周方向の略中央となる位置にも、吐出部カバー部54と同様に、周囲に肉盗み部61を配置させて、変形当接部60が、形成されている(図8,9参照)。この変形当接部60は、上述の変形当接部57と同様に、本体部カバー部59を部分的に凹ませるようにして、インフレーター収納部41側(インフレーター25側)に突出させて形成されて、先端側に、略平板状の押え面60aを有する構成とされるもので、ケース34におけるインフレーター収納部41の本体側部位46に形成される支持部48と、インフレーター25の軸直交方向側で対向する位置に、形成されている(図3参照)。
【0042】
押え板部63は、リテーナ本体52において、本体部カバー部59の右方(開口52bの右側)であって、車両搭載時にインフレーター25の右方となる領域(インフレーター25における接続口部29側となる右端26aとボルト65との間の領域)には、本体部カバー部59よりも後方側への突出量を小さくして、かつ、押え部53と略平行となるように、形成されている(図8,9参照)。この押え板部63は、図17に示すように、インフレーター25の軸方向側から見て、インフレーター25の本体部26と重なる領域に配置されるもので、作動時において、インフレーター25が接続口部29側(右端26a側)を先頭として軸方向に沿って移動しようとする場合に、本体部26の右端面26bと当接して、インフレーター25のインフレーター収納部41からの抜けを規制するために、形成されている。
【0043】
エアバッグ69は、実施形態の場合、可撓性を有したポリエステルやポリアミド糸等からなる織布から形成されるもので、膨張完了時の形状を、図1,4の二点鎖線に示すように、略長方形板状として、運転者Dの左右の膝K(KL,KR)を保護可能に構成されている。実施形態の場合、エアバッグ69は、図10,11に示すように、膨張完了時に乗員側(運転者D側)に配置される乗員側壁部69aと、車体側に配置される車体側壁部69bと、の周縁相互を結合させて袋状に構成されるもので、前端側の部位であって膨張完了時にケース34のエアバッグ収納部35内に配置される取付部70と、取付部70より左右に幅広とされて膨張完了時に運転者Dの膝K(KL,KR)を保護する保護膨張部75と、を備えて構成されている。
【0044】
車体側壁部69bにおける取付部70の領域には、図10に示すように、略長方形状に開口した流入用開口71と、4つの挿通孔72と、2つの貫通孔73と、が、形成されている。流入用開口71は、リテーナ51における流出用開口55と対応した位置に配置されるもので、インフレーター25のガス吐出口28aから吐出される膨張用ガスを、エアバッグ69の内部に流入させるための部位である。実施形態の場合、流入用開口71の左縁71bは、リテーナ51における吐出部カバー部54に形成される流出用開口55の左縁55bよりも左方に配置され、右縁71aは、流出用開口55の右縁55aと略一致した位置に配置されている。また、流入用開口71は、前後の縁も、流出用開口55の前後の縁よりも僅かに前後の外方に位置させるように、構成されている(図18参照)。4つの挿通孔72は、リテーナ51の各ボルト65を挿通させるためのものである。2つの貫通孔73は、リテーナ本体52に形成される変形当接部57,60を挿通させて、変形当接部57,60を、インフレーター25の本体部26の外周面26cに直接当接させるためのものである。そして、実施形態のエアバッグ69は、取付部70の領域における車体側壁部69bにおいて、流入用開口71及び貫通孔73の外周側であって、挿通孔72を含んだ略四角環状の領域を、ケース34におけるエアバッグ収納部35の底壁部39と、リテーナ51の押え部53と、の間に挟持させて、底壁部39に取り付けられる取付部位としている。
【0045】
実施形態のエアバッグ69では、エアバッグ69内に、車体側壁部69bと乗員側壁部69aとを連結する2つのテザー77,78が、上下で離隔されて、それぞれ、左右方向に略沿って配設されている。テザー78は、取付部70と保護膨張部75とを区画するように配置され、テザー77は、保護膨張部75の領域を上下で区画するように配置されている。また、実施形態の場合、各テザー77,78は、図11に示すように、車体側壁部69bとの結合部位を、乗員側壁部69aとの結合部位よりも前方側(取付部70側)に位置させるように、傾斜して配置されている。これらのテザー77,78は、エアバッグ69の膨張完了時に、図1の二点鎖線に示すように、略前後方向に沿って、配置されることとなる。
【0046】
次に、実施形態のエアバッグ装置Sの車両への搭載について説明をする。まず、流入用開口71から、リテーナ51をエアバッグ69内に挿入して、ボルト65を挿通孔72から突出させるようにして、リテーナ本体52をエアバッグ69内に収納させた後、エアバッグ69を、ケース34のエアバッグ収納部35内に収納可能とするように折り畳み、折り崩れ防止用の破断可能な図示しないラッピング材により、周囲をくるんでおく。このとき、リテーナ51のボルト65はラッピング材から突出させ、流入用開口71と貫通孔73とは、ラッピング材から露出させておく。次いで、インフレーター25を、突出用開口35aからケース34の内部に挿入させ、本体部26に形成される凹部27に、本体側部位46に形成される突起部47を挿入させるようにして、インフレーター25をケース34におけるインフレーター収納部41内に収納させる。その後、折り畳まれたエアバッグ69を、底壁部39の挿通孔39aにボルト65を挿通させるようにして、ケース34のエアバッグ収納部35内に収納させ、底壁部39から突出しているボルト65に、図示しないスプリングワッシャを嵌めておく。
【0047】
次いで、各係止爪37a,38aを係止穴20a,21a周縁に係止させるようにして、エアバッグカバー15をケース34に組み付け、ブラケット81,81にボルト65を挿通させて、各ボルト65にナット66を締結させれば、エアバッグ組付体を組み立てることができる。このボルト65へのナット66の締結時に、リテーナ51がケース34に連結されることとなって、インフレーター25とエアバッグ69とをケース34に取り付けることができる。詳細には、実施形態のエアバッグ装置Sでは、ボルト65にナット66を締結させる際に、リテーナ本体52に形成される変形当接部57,60が、周囲の部位を撓ませつつ、先端側の押え面57a,60aを、インフレーター25における本体部26の外周面26cに圧接されることとなり、インフレーター25は、本体部26を、変形当接部57,60と、ケース34におけるインフレーター収納部41の対応する位置に配置される支持部44,48と、によって挟持されるようにして、ケース34に取り付けられることとなる。
【0048】
そして、エアバッグ組付体のブラケット81,81を、ブラケット3を利用して、ボディ1側のインパネリインフォースメント2に取付固定し、ケース34のインフレーター収納部41から露出しているインフレーター25の接続口部29に、エアバッグ作動回路から延びるリード線32を結線させたコネクタ31を接続させる。その後、インパネ11やアンダーカバー12(図1,2参照)を取り付ければ、エアバッグ装置Sを車両に搭載することができる。
【0049】
エアバッグ装置Sの車両への搭載後、リード線32を経て、インフレーター25に作動信号が入力されれば、インフレーター25のガス吐出口28aから膨張用ガスが吐出されて、エアバッグ69内に流入することとなる。そして、エアバッグ69は、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、図示しないラッピング材を破断するとともに、エアバッグカバー15の扉部17を押圧し、扉部17が、周囲の破断予定部18を破断させつつ、ヒンジ部19を回転中心として下方に開くこととなる。そして、エアバッグ69が、ケース34の突出用開口35aから車両後方側に向かって突出し、図1,4の二点鎖線に示すように、膨張を完了させることとなる。
【0050】
そして、実施形態のエアバッグ装置Sでは、インフレーター25を、突出用開口35aからケース34内に収納させる際に、インフレーター25に形成される凹部27を、インフレーター収納部41に形成される突起部47に位置を合わせて、突起部47を凹部27に挿入させるようにして、インフレーター25をインフレーター収納部41に収納させ、その後、エアバッグ69内に収納されるリテーナ51を、固定手段としてのボルト65とナット66とを用いてケース34の底壁部39に取り付ければ、エアバッグ69とインフレーター25とをケース34に取り付けることができる。このとき、図12,13に示すように、各突起部47の接続口部29側となる右側面47bが、各凹部27における右側面27bに当接されることから、インフレーター25は、インフレーター収納部41に対して、軸方向側に沿った右方に移動することを抑制されることとなる。また、突起部47は、インフレーター25の周方向に沿って2箇所に形成されており、それぞれ、先端面47aを、凹部27の底面27aに当接させていることから、インフレーター25が、インフレーター収納部41に対して、周方向に沿って回転移動することも、抑制できる。すなわち、実施形態のエアバッグ装置Sでは、ケース34のインフレーター収納部41に、一部をケース34内方に向かって凹ませるように突起部47を形成し、インフレーター25(本体部26)の外周面26cにおいて突起部47に対応する位置に、突起部47を挿入して係止させるための凹部27を形成すれば、インフレーター25の軸方向に沿った移動や周方向に沿った回転移動を、的確に抑制できることから、インフレーター側に非円形として外表面に凹溝を形成した突出部を設ける従来のエアバッグ装置と比較して、製造工数及びコストを低減させることができ、かつ、部品点数の増大も招かない。
【0051】
勿論、実施形態のエアバッグ装置Sでは、インフレーター25は、単にケース34の突出用開口35aを経て、インフレーター収納部41に挿入させ、折り畳まれたエアバッグ69内に予め収納させた状態のリテーナ51を、エアバッグ69をケース34に取り付けるように、底壁部39に固定させるだけで、ケース34に取り付けることができることから、インフレーター25のケース34への取付作業性が良好であり、インフレーター25を、容易にケース34に取り付けることができる。
【0052】
したがって、実施形態のエアバッグ装置Sでは、インフレーター25を、リテーナ51とインフレーター収納部41との間で挟持させてケース34に取り付ける構成であっても、簡便な構成として、インフレーター25を、ケース34に対して周方向や軸方向の位置ずれなく、的確に取り付けることができる。
【0053】
また、実施形態のエアバッグ装置Sでは、リテーナ51が、インフレーター25の軸方向に沿った両端側を、インフレーター25の軸心C1を跨ぐような2箇所ずつでボルト65止めして、ケース34の底壁部39に取り付けられる構成であることから、エアバッグ69とインフレーター25とを、リテーナ51により、安定してケース34に取り付けることができる。また、リテーナ51において、インフレーター25の突出用開口35a側の面(後下方側の面)を覆う吐出部カバー部54,本体部カバー部59には、インフレーター25の軸方向側で離れた2箇所に、それぞれ、1つずつ、インフレーター25側に突出する変形当接部57,60が、形成され、この変形当接部57,60が、周囲に肉盗み部58,61を配置させて、インフレーター25をケース34に取り付けた際に、撓みつつ、インフレーター25(本体部26)の外周面26cに圧接される構成であることから、インフレーター25を、インフレーター収納部41に対して、ガタツキを抑制された状態で、取り付けることができる。これらの変形当接部57,60は、吐出部カバー部54,本体部カバー部59において、インフレーター25の周方向の略中央となる位置、換言すれば、インフレーター25の軸直交方向側におけるボルト65,65間の略中央となる位置に配置されていることから、底壁部39から突出するボルト65にナット66を締結させる際に、円滑に撓ませることができる。さらに、実施形態のエアバッグ装置Sでは、ケース34ではなく、リテーナ51の変形当接部57,60を撓ませるようにして、インフレーター25をケース34に取り付ける構成であることから、ケース34の強度を低下させることなく、エアバッグ装置Sを安定して車両に搭載することができる。
【0054】
勿論、このような点を考慮しなければ、リテーナとして、インフレーターの軸方向に沿った両端側(長手方向の両端側)を、1箇所ずつボルト止めして、ケースに取り付けるような構成のものを使用してもよく、また、リテーナに形成される変形予定部の数も、適宜変更してもよい。
【0055】
さらに、実施形態のエアバッグ装置Sでは、予めリテーナ51のみを内部に挿入させた状態で、エアバッグ69を折り畳み、折り畳まれたエアバッグ69を、インフレーター収納部41内にインフレーター25を収納させた状態のケース34のエアバッグ収納部35内に収納させて、固定手段としてのボルト65を用いてリテーナ51をエアバッグ収納部35の底壁部39に取り付けることにより、インフレーター25とエアバッグ69とをケース34に取り付ける構成であることから、エアバッグ69の折畳作業と、エアバッグ69とインフレーター25とのケース34への取付作業と、を別の場所で行なうことができる。そのため、実施形態のエアバッグ装置Sでは、インフレーター取扱用の設備を備えていない場所でも、エアバッグ69の折畳作業を行なうことができ、また、折り畳まれたエアバッグ69の運搬も容易であることから、エアバッグ装置Sの製造工程の自由度を増大させることができる。
【符号の説明】
【0056】
15…エアバッグカバー、
25…インフレーター、
26…本体部、
26c…外周面、
27…凹部、
34…ケース、
35…エアバッグ収納部、
35a…突出用開口、
39…底壁部、
41…インフレーター収納部、
51…リテーナ、
54…吐出部カバー部、
57…変形当接部、
58…肉盗み部、
59…本体部カバー部、
60…変形当接部、
61…肉盗み部、
65…ボルト(固定手段)、
69…エアバッグ、
D…運転者(乗員)、
K(KL,KR)…膝、
S…膝保護用エアバッグ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席に着座した乗員の膝の前方に、配置されるとともに、
内部に膨張用ガスを流入させて前記乗員の膝を保護可能に膨張するエアバッグと、外形形状を略円柱状とされて該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、前記エアバッグと前記インフレーターとを内部に収納させるケースと、を備える膝保護用エアバッグ装置であって、
前記ケースが、
略四角筒形状の周壁部と、該周壁部の一端側を閉塞するような底壁部と、を有して、前記エアバッグを突出させるための突出用開口を有した略箱形状とされて、折り畳まれた前記エアバッグを収納するエアバッグ収納部と、
該エアバッグ収納部における前記底壁部の一部を、前記インフレーターを収納可能に、略半円弧状に凹ませて形成されるインフレーター収納部と、
を備える構成とされて、
前記エアバッグと前記インフレーターとが、前記エアバッグ内に収納されるリテーナを、固定手段を用いて前記底壁部に取り付けることにより、前記ケースに取り付けられる構成とされて、
前記リテーナが、前記インフレーターを、前記インフレーター収納部と前記リテーナとによって挟持可能に、前記インフレーターの軸直交方向側の断面形状を、略半円弧状に湾曲させて形成され、
前記ケースが、前記突出用開口から、前記インフレーターを、前記インフレーター収納部内に収納させる構成として、
前記インフレーター収納部において、前記底壁部近傍であって相互に対向する2箇所に、前記インフレーター側に向かって、部分的に突出する突起部が、形成され、
前記インフレーターを前記インフレーター収納部に収納させる際に、前記突起部を、前記インフレーターの外周面を部分的に凹ませるように形成される凹部に挿入させることにより、前記インフレーターが、軸方向に沿った移動と、周方向に沿った回転移動とを規制されて、前記インフレーター収納部内に収納されることを特徴とする膝保護用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記リテーナが、板金製として、前記インフレーターの軸方向に沿った両端側を、それぞれ、前記インフレーターの軸直交方向に沿い、かつ、前記インフレーターの軸心を間にして2つ配設される前記固定手段としてのボルトによって、前記底壁部に取り付けられる構成とされるとともに、前記インフレーターにおける前記突出用開口側の面を覆うカバー部を有する構成とされ、
該カバー部における前記インフレーターの軸方向に沿った2箇所において、それぞれ、前記インフレーターの周方向側の略中央となる1箇所ずつに、前記インフレーター側に突出するように形成されるとともに、周囲に肉盗み部を設けて、前記インフレーターを前記ケースに取り付けた際に、撓みつつ、前記インフレーターの外周面に圧接される変形当接部が、形成されていることを特徴とする請求項1に記載の膝保護用エアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−71706(P2013−71706A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214126(P2011−214126)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】