説明

膝用サポーターおよび肘用サポーター

【課題】運動を行なった際でも安定した装着状態を保持可能な膝用サポーターおよび肘用サポーターを提供する。
【解決手段】膝用サポーター1は、運動用に装着可能であり、装着者の膝部に装着可能で、複数の領域を有する生地部分と、生地部分の表面の一部であって、複数の領域内に密着形成された樹脂パターンとを備えており、樹脂パターンは、生地部分の表面における複数の領域に要求される機能に応じて特性を調整している。生地部分の樹脂密着領域3の弾性率を樹脂密着領域4の弾性率よりも高く、樹脂密着領域4の弾性率を樹脂密着領域5の弾性率よりも高くすることが好ましい。また、樹脂密着領域3において、下肢の長手方向の樹脂の量を、下肢の長手方向に交差する方向の樹脂の量よりも少なくすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動時に装着可能であり、膝部や肘部を保護することが可能な膝用サポーターおよび肘用サポーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、膝部や肘部を取り巻くように装着し、膝部や肘部の筋肉や関節を保護するために使用可能な膝用サポーターおよび肘用サポーターが知られている。この膝用サポーターや肘用サポーターを使用することで、たとえば膝部や肘部に存在する筋肉や関節などを身体の外側から締め付けることができる。このため、たとえば水中競技や陸上競技などの運動競技を行なう際に四肢を激しく動かす動作を行なった際における、外力等による膝部や肘部の障害の発生を抑制することができる。このようなサポーターにはたとえば後述の非特許文献1に掲載されているような形態を備えるものが存在する。
【非特許文献1】「SWIM SPRING&SUMMER 08」、ミズノ株式会社、2007年11月、p.115
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
膝部サポーターや肘部サポーターが装着される膝部や肘部の中でも、領域に応じて運動する量や方向が異なる。そこで、非特許文献1に開示されている膝部サポーターおよび肘部サポーターは、弾性率の異なる複数の種類の生地を用いて形成された複数の領域を互いに縫合することにより形成されている。このようにして、当該サポーターを装着した膝部や肘部における領域間の運動方向や筋肉の伸縮量などに応じて、サポーターの身体への締め付けの程度や弾性率を調整している。
【0004】
しかし、上記のように、弾性率の異なる複数の種類の生地を用いて形成された複数の領域を互いに縫合することにより膝部サポーターや肘部サポーターを形成することは、工程を複雑にして、タクトタイムを延長させるという問題がある。また、非特許文献1に掲載される形態を備えるサポーターは、複数種類の生地を用いて変更することによってのみ、当該サポーターにおける領域ごとの弾性率や身体への密着度、伸縮量などを調整している。このため、形成するサポーターの弾性率や密着度、伸縮量などが任意の値を取るように自由に設計することが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、以上の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、領域ごとの弾性率や密着性、伸縮量などの設計の自由度を向上させた膝用サポーターおよび肘用サポーターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る膝用サポーターは、運動用に装着する膝用サポーターであって、装着者の膝部に装着可能で、複数の領域を有する生地部分と、生地部分の表面の一部であって、上記複数の領域内に密着形成された樹脂パターンとを備えている。この樹脂パターンは、上記生地部分の表面における上記複数の領域に要求される機能に応じて特性を調整している。
【0007】
上記生地部分は、第1の領域、第2の領域、および第3の領域を含んでいることが好ましい。より具体的には、上記樹脂パターンは、上記生地の表面のうち、上記膝用サポーターを装着した際に大腿部の前方側の下部に宛がう第1の領域、下腿部の前方側の上部に宛がう第2の領域、および膝関節の後方側に宛がう第3の領域に密着形成されている。ここで、第1の領域の弾性率を第2の領域の弾性率よりも高く、第2の領域の弾性率を第3の領域の弾性率よりも高くすることが好ましい。
【0008】
上記樹脂パターンは、上記第1の領域においては上記膝用サポーターを装着した際の下肢の長手方向の樹脂の量を、下肢の長手方向に交差する方向の樹脂の量より少なくすることが好ましい。また、上記第2の領域においては上記膝用サポーターを装着した際の下肢の長手方向の樹脂の量を、下肢の長手方向に交差する方向の樹脂の量より少なくすることが好ましい。上記第3の領域においては上記膝用サポーターを装着した際の下肢の長手方向に交差する方向の樹脂の量を、下肢の長手方向よりも少なくすることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る肘用サポーターは、運動用に装着する肘用サポーターであって、装着者の肘部に装着可能で、複数の領域を有する生地部分と、生地部分の表面の一部であって、上記複数の領域内に密着形成された樹脂パターンとを備えている。この樹脂パターンは、上記生地部分の表面における上記複数の領域に要求される機能に応じて特性を調整している。
【0010】
上記生地部分は、第4の領域および第5の領域を含んでいることが好ましい。より具体的には、上記樹脂パターンは、上記生地の表面のうち、上記肘用サポーターを装着した際に肘関節の上部の内側に宛がう第4の領域、および肘関節近傍の側部に宛がう第5の領域に密着形成されており、第4の領域の弾性率を第5の領域の弾性率よりも高くすることが好ましい。
【0011】
上記樹脂パターンは、上記第4の領域においては上記肘用サポーターを装着した際の上肢の長手方向に交差する方向の樹脂の量を、上肢の長手方向の樹脂の量よりも少なくすることが好ましい。また、上記第5の領域においては上記肘用サポーターを装着した際の上肢の長手方向の樹脂の量を、上肢の長手方向に交差する方向の樹脂の量よりも少なくすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る膝用サポーターおよび肘用サポーターは、生地部分が複数の領域に分かれており、各領域に対して樹脂パターンを密着形成している。この樹脂パターンを構成する個々のパターンの配置、密度、厚み、硬度などの条件を領域ごとに任意の条件に変化させる。このようにすれば、領域ごとに要求される身体を締め付ける力(密着性)や弾性率、変形のしやすさ(伸縮量)などを任意の値となるように自由に調整することができる。したがって、当該サポーターの各領域の密着性や弾性率、伸縮量などの設計の自由度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の各実施の形態について説明する。なお、各実施の形態において、同一の機能を果たす要素には同一の参照符号を付し、その説明は、特に必要がなければ繰り返さない。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る膝用サポーター1の正面図である。図2は、本発明の実施の形態1に係る膝用サポーター1の側面図である。図3は、本発明の実施の形態1に係る膝用サポーター1の背面図である。図4は、図1中の領域100の拡大図である。なお、図1の正面図は完全な正面ではなく、正面よりやや側面よりに角度を有する方向から見た概略図である。
【0015】
本発明の実施の形態1の膝用サポーター1は、たとえば水中や陸上でのウォーキングのような比較的軽い運動のみならず、水中競技や陸上競技などの激しい運動用にも使用可能なサポーターである。
【0016】
図1〜図4に示すように、膝用サポーター1は、装着者の膝部に装着可能な生地部分99と、生地部分99の表面の一部に密着形成された樹脂パターン10とを備えている。生地部分99は、複数の領域を有している。これら複数の領域とは具体的にはおおよそ以下の各領域である。まず生地部分99の表面のうち、膝用サポーター1を装着した際に膝部の上側、特に大腿部の前方側の下部に宛がう領域である樹脂密着領域3である。また、同じく膝用サポーター1を装着した際に膝部の下側、特に下腿部の前方側の上部に宛がう領域である樹脂密着領域4である。同じく膝用サポーター1を装着した際に膝部の後ろ側、すなわち膝関節の後方側に宛がう樹脂密着領域5である。また、樹脂パターン10が密着形成されない領域としては、膝用サポーター1を装着した際に前方側の膝関節部分に宛がう領域である樹脂非密着領域2がある。また、同じく膝用サポーター1を装着した際に後方側の膝関節の下部に宛がう樹脂非密着領域6がある。
【0017】
生地部分99は、様々な動作が容易に行なえるように主として伸縮性生地で構成することが好ましい。一種類の伸縮性生地で生地部分99を構成してもよいが、複数の種類の伸縮性生地を組み合わせて生地部分99を構成してもよい。また、伸縮性生地をベースとする一方で、一部に非伸縮性生地を使用することもできる。生地部分99の生地としては、たとえばポリウレタン繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維などから選ばれる繊維を組み合わせた編地もしくは織物などを用いることができる。
【0018】
樹脂パターン10は、たとえばウレタン樹脂のような弾性を有する樹脂材料で構成することができる。また、ラバー、シリコン、PVC(ポリ塩化ビニル)、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ゴム系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等の樹脂材料も樹脂パターン10の材料として使用することができる。
【0019】
上記のように、樹脂パターン10を形成する樹脂材料は弾性を有する。このため、当該樹脂材料は、生地部分99を構成する生地に比べて剛性が高い。したがって、膝用サポーター1の生地部分99の表面の一部に樹脂パターン10を形成することにより、樹脂パターン10の装着時に装着者の膝部に適度な締め付け力を付与することができる。この樹脂パターン10の締め付け力により、たとえば水中や陸上でのウォーキングのような比較的軽い運動のみならず、水中競技や陸上競技などの下肢を激しく動かす動作を行なう際においても、膝部の筋肉や関節を保護し、外力等による膝部の障害の発生を抑制することができる。
【0020】
ここで、たとえば図1〜図3に示すように、外縁部が楕円形をなす多数の楕円形パターンにより樹脂パターン10を構成してもよいが、任意形状の面状パターンと上記の楕円形パターンとを組み合わせて樹脂パターン10を構成してもよい。また、多数の線状パターンを網目状に配置することにより樹脂パターン10を構成してもよい。樹脂パターン10を構成する各パターン等の材質、形状等は任意に選択可能である。
【0021】
図4の拡大図に示すように、図1〜図3の例では、樹脂パターン10は、生地部分99の表面上に整然と配列された複数個の、外縁部が楕円形をなす楕円状パターン10aで構成されている。たとえば図4に示す領域内では、樹脂パターン10は、樹脂材料で構成する楕円状パターン10aと、各楕円状パターン10aの内部に存在する、樹脂材料が密着形成されていない領域である空洞領域10bとが複数個整然と配列されることにより構成されている。
【0022】
図4に示す部分の樹脂パターン10は、複数個の、外縁部が楕円形をなす楕円状パターン10aを整然と配列することで形成されているが、個々のパターンの形状、材質、数、幅などを適切に調節することで、樹脂パターン10による締め付け力を多段階に調整することができる。すなわち、樹脂パターン10を構成する個々のパターンの形状、材質、数、幅などを適切に調節することにより、生地部分99の表面における上記複数の領域のそれぞれに要求される機能を発揮することができる構成にすることができる。
【0023】
たとえば大きな締め付け力が必要な箇所においては、楕円状パターン10aの数を多くして生地部分99の本体部の露出面積を少なくし、小さな締め付け力でよい箇所については、楕円状パターン10aの数を少なくして生地部分99の本体部の露出面積を多くすればよい。生地部分99を構成する生地は、樹脂パターン10を構成する樹脂に比べて変形が容易となることから、上記のように楕円状パターン10aの数を調節することで、樹脂パターン10による締め付け力を容易に調節することができる。
【0024】
具体的には、たとえば図1に示す樹脂密着領域3は、膝用サポーター1を装着した際に大腿部の前方側のうち、膝関節に近い部分(大腿部の下部付近、大腿四頭筋の下部)に宛がう領域である。樹脂密着領域3は、膝用サポーター1を宛がう身体の部分のうち、最も筋肉が多く、長軸に交差する断面が最も大きい部分に宛がう領域である。したがって、装着時に膝部の屈伸などの状態や運動状態にかかわらず膝用サポーター1が着用される位置を安定に保つ役割を担うために、膝用サポーター1を構成する複数の領域の中でも最も大きな締め付け力を有することが好ましい。また、樹脂密着領域4は、膝用サポーター1を装着した際に下腿部のうち、膝部に近い部分(下腿部の上部付近、前脛骨筋の上部)に宛がう領域である。この領域は、大腿部に次いで長軸に交差する断面が大きい部分に宛がう領域に相当する。また、膝関節の屈曲時に膝用サポーター1の着用位置を安定に保つために重要な役割を担う領域である。このため、樹脂密着領域3に次いで大きな締め付け力を有することが好ましい。また、樹脂密着領域5は、膝用サポーター1を装着した際に膝関節の後方(ハムストリングの下部)を密着することにより保護するために、上記の樹脂密着領域3、4に次ぐ大きな締め付け力を有することが好ましい。
【0025】
以上より、樹脂密着領域3の弾性率を樹脂密着領域4の弾性率よりも高く、また樹脂密着領域4の弾性率を樹脂密着領域5の弾性率よりも高くすることが好ましい。このためには、たとえば樹脂密着領域3における楕円状パターン10aのパターン密度を、樹脂密着領域4における楕円状パターン10aのパターン密度よりも高くすることが好ましい。同様に、樹脂密着領域4における楕円状パターン10aのパターン密度を、樹脂密着領域5における楕円状パターン10aのパターン密度よりも高くすることが好ましい。
【0026】
上記のように樹脂パターン10に密度の差を設けることにより、膝用サポーター1の領域ごとに、樹脂パターン10による締め付け力を変化させることができる。また、このように樹脂パターン10による締め付け力を変化させることにより、所望の箇所での生地部分99と装着者の身体との密着性をも高めることができる。膝用サポーター1の領域ごとに装着者の身体との密着性を調整することにより、装着時の装着者のフィット感を向上させることができるとともに、運動の際の動きやすさをも追及することができ、着用時に様々な動作を容易に行なうことも可能である。
【0027】
なお、図1〜図3に示す上端部7、すなわち膝用サポーター1を装着した際に樹脂密着領域3、5の上部の大腿部を取り巻く領域については、長軸方向の断面が最も大きい領域
であることから、装着者との高い密着性を確保することが好ましい。また以上より、樹脂密着領域3および樹脂密着領域5の樹脂パターン10が上端部7の下部を1周分(全周)取り巻く構成となっていることが好ましい。このようにすれば、膝用サポーター1を装着した際に、激しく下肢を動かしたとしても、膝用サポーター1と装着者の下肢との密着性を確保することができる。
【0028】
次に、膝用サポーター1を着用した際に、膝関節の屈伸などの運動により膝用サポーター1の各領域が伸縮すべき方向について考える。樹脂密着領域3が宛がう、大腿部の前方側の下部の領域については、膝関節の運動により、主に下肢の長手方向に伸縮する。また、樹脂密着領域4が宛がう、下腿部の前方側の上部の領域についても、膝関節の運動により、主に下肢の長手方向に伸縮する。一方、樹脂密着領域5が宛がう、膝関節の後方側の領域については、膝関節の運動により、主に下肢の長手方向に交差する方向に伸縮する。
【0029】
したがって、膝用サポーター1の各領域についても上記のように、当該各領域が宛がう下肢の各領域が主に伸縮する方向に対して変形が容易な構成とすることが好ましい。
【0030】
具体的には、たとえば膝用サポーター1の樹脂密着領域5は、装着した際の下肢の長手方向に交差する方向(図1〜図3の左右方向)に対する伸縮性が、下肢の長手方向(図1〜図3の上下方向)に対する伸縮性よりも優れていることが好ましい。このため、図1〜図3の例における樹脂密着領域5においては、図4の拡大図に示すように、個々の楕円状パターン10aの長軸方向が図1〜図3の左右方向を向くよう配置されることが好ましい。
【0031】
上記のように、樹脂密着領域5において、個々の楕円状パターン10aの長軸方向が伸縮性を向上させたい方向を向くように配置すれば、伸縮性を向上させたい方向における樹脂の量が、伸縮性を向上させたい方向に交差する方向における樹脂の量よりも少なくなる。したがって、伸縮性を向上させたい方向における生地部分99の本体部の露出面積(空洞領域10bの面積)は、伸縮性を向上させたい方向に交差する方向における生地部分99の本体部の露出面積よりも多くなる。したがって、樹脂密着領域5においては、伸縮性を向上させたい方向である、下肢の長手方向に交差する方向(図1〜図3の左右方向)の方が、下肢の長手方向(図1〜図3の上下方向)よりも変形が容易となる。
【0032】
同様に考えて、たとえば膝用サポーター1の樹脂密着領域3については、装着した際の下肢の長手方向(図1〜図3の上下方向)に対する伸縮性が、下肢の長手方向に交差する方向に対する伸縮性よりも優れていることが好ましい。このため、図1〜図3の例における樹脂密着領域3においては、個々の楕円状パターン10aの長手方向が図1〜図3の上下方向を向くように配置されることが好ましい。樹脂密着領域4についても同様に、個々の楕円状パターン10aの長手方向が図1〜図3の上下方向を向くように配置されることが好ましい。
【0033】
なお、図1〜図3に示す、膝関節の後方側の下部にあたる樹脂非密着領域6、および膝関節の前方側にあたる樹脂非密着領域2については、装着した際に下肢の運動に応じて絶えず伸縮することが好ましい領域である。このため、装着した際には装着者の身体に対する密着性よりも、装着者の運動状態に応じて柔軟に伸縮する伸縮性が要求される。このため、これらの領域に対しては樹脂パターン10を密着形成しないことが好ましい。
【0034】
以上に示した本発明の実施の形態1の膝用サポーター1は、複数の領域に分けられた生地部分99の表面の一部に樹脂パターン10が密着形成された構成となっている。当該樹脂パターン10は、たとえば膝用サポーター1を装着した際に装着者の身体との密着性を向上させたい領域において密度を高くし、伸縮性を向上させたい方向が長手方向となるように楕円状パターン10aを配置する。このようにして、膝用サポーター1の複数の領域ごとに要求される機能を果たすことができる。したがって、膝用サポーター1は、樹脂パターン10の態様を調整することにより、膝用サポーター1の領域ごとの締め付け力(密着性)や伸縮量などが任意の値を取るように自由に調整することができる。以上より、膝用サポーター1の各領域の密着性や弾性率、伸縮量などの設計の自由度を向上することができる。
【0035】
なお、上に詳述した樹脂パターン10が形成される密度や配置される方向に限らず、たとえば樹脂パターン10を構成する楕円状パターン10aの厚みや形状、材質や硬度を変更(調整)することによっても、膝用サポーター1の領域ごとの機能を自由に設計することが可能である。
【0036】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2に係る肘用サポーター11の正面図である。図6は、本発明の実施の形態2に係る肘用サポーター11の側面図である。図7は、本発明の実施の形態2に係る肘用サポーター11の背面図である。なお、図5の正面図は完全な正面ではなく、正面よりやや側面よりに角度を有する方向から見た概略図である。
【0037】
本発明の実施の形態2の肘用サポーター11は、たとえば水中や陸上でのウォーキングのような比較的軽い運動のみならず、水中競技や陸上競技などの激しい運動用にも使用可能なサポーターである。
【0038】
図5〜図7に示すように、肘用サポーター11は、装着者の肘部に装着可能な生地部分98と、生地部分98の表面の一部に密着形成された樹脂パターン10とを備えている。生地部分98は、複数の領域を有している。これら複数の領域とは具体的にはおおよそ以下の各領域である。まず生地部分98の表面のうち、肘用サポーター11を装着した際に肘関節の上部の内側、すなわち上腕骨の下側(関節側)の、関節が内側に曲がる側に宛がう領域である樹脂密着領域12である。また、同じく肘用サポーター11を装着した際に肘関節近傍の両側部に宛がう領域である樹脂密着領域13である。また、樹脂パターン10が密着形成されない領域としては、肘用サポーター11を装着した際に肘関節のうち外側に曲がる部分に宛がう領域である樹脂非密着領域14がある。また、同じく肘用サポーター11を装着した際に肘関節のうち内側に曲がる側の下側(手のひらが存在する側)に宛がう樹脂非密着領域15がある。樹脂密着領域12、13の表面には樹脂パターン10が密着形成されているが、樹脂非密着領域14、15の表面には樹脂パターン10が密着形成されていない。
【0039】
肘用サポーター11についても、上記の膝用サポーター1と同様に、肘用サポーター11の生地部分98の表面の一部に樹脂パターン10を形成することにより、樹脂パターン10の装着時に装着者の肘部に適度な締め付け力を付与することができる。この樹脂パターン10の締め付け力により、たとえば水中や陸上でのウォーキングのような比較的軽い運動のみならず、陸上球技などの上肢を激しく動かす動作を行なう際においても、肘部の筋肉や関節を保護し、外力等による肘部の障害の発生を抑制することができる。
【0040】
たとえば図6、7に示す樹脂密着領域12は、肘用サポーター11を装着した際に上腕二頭筋のうち、肘部に近い部分(上腕二頭筋の下部)に宛がう領域である。樹脂密着領域12は、肘用サポーター11を宛がう身体の部分のうち、最も筋肉が多く、長軸に交差する断面が最も大きい部分に宛がう領域である。したがって、装着時に肘部の屈伸などの状態や運動状態にかかわらず肘用サポーター11が着用される位置を安定に保つ役割を担うために、肘用サポーター11を構成する複数の領域の中でも最も大きな締め付け力を有することが好ましい。また、樹脂密着領域13は、肘用サポーター11を装着した際に肘関節の両側部の全面を宛がう領域であり、肘関節の屈曲時に肘用サポーター11の着用位置を安定に保つために重要な役割を担う領域である。このため、樹脂密着領域12に次いで大きな締め付け力を有することが好ましい。
【0041】
以上より、樹脂密着領域12の弾性率を樹脂密着領域13の弾性率よりも高くすることが好ましい。このためには、たとえば樹脂密着領域12における楕円状パターン10aのパターン密度を、樹脂密着領域13における楕円状パターン10aのパターン密度よりも高くすることが好ましい。同様に、樹脂密着領域12における楕円状パターン10aのパターン密度を、樹脂密着領域13における楕円状パターン10aのパターン密度よりも高くすることが好ましい。
【0042】
以上のように肘用サポーター11についても、膝用サポーター1の場合と同様に、樹脂パターン10の密度を調整することにより各領域の弾性率を調整すれば、装着した際の装着者の身体との密着性を調整することができる。
【0043】
なお、図5〜図7に示す上端部16、すなわち肘用サポーター11を装着した際に樹脂密着領域12、13の上部の上腕部を取り巻く領域については、長軸方向の断面が最も大きい領域であることから、装着者との高い密着性を確保させることが好ましい。このため、上端部16には、肘用サポーター11を装着した際に装着者の上腕部の外周を締め付けることが可能な構成とすることが好ましい。しかし、腕の断面は大腿部の断面よりも小さいことから、樹脂密着領域12および樹脂密着領域13の樹脂パターン10が上端部16の下部を1周分(全周)取り巻く構成となっていなくてもよい。具体的には、図5、6に示すように、上端部16直下に樹脂非密着領域14が存在する構成となっていても、肘用サポーター11を装着した際に、激しく上肢を動かしたとしても、肘用サポーター11と装着者の腕部との密着性を確保することができる。
【0044】
次に、肘用サポーター11を着用した際に、肘関節の屈伸などの運動により肘用サポーター11の各領域が伸縮すべき方向について考える。樹脂密着領域12が宛がう、肘関節の上部の内側(上腕二頭筋の肘関節側付近)の領域については、肘関節の運動により、主に上肢の長手方向に交差する方向に伸縮する。また、樹脂密着領域13が宛がう、肘関節の両側部については、肘関節の運動により、主に上肢の長手方向に伸縮する。
【0045】
したがって、膝用サポーター1の場合と同様に、当該各領域が宛がう上肢の各領域が主に伸縮する方向に対して変形が容易な構成とすることが好ましい。具体的には、肘用サポーター11の樹脂密着領域12は、装着した際の上肢の長手方向に交差する方向(図5〜図7の左右方向)に対する伸縮性が、上肢の長手方向(図5〜図7の上下方向)に対する伸縮性よりも優れていることが好ましい。このため、図5〜図7の例における樹脂密着領域12においては、個々の楕円状パターン10aの長軸方向が図5〜図7の左右方向を向くよう配置されることが好ましい。同様に、樹脂密着領域13においては、個々の楕円状パターン10aの長軸方向が図5〜図7の上下方向を向くよう配置されることが好ましい。
【0046】
このようにすれば、肘用サポーター11においても、膝用サポーター1の場合と同様に、楕円状パターン10aの長軸方向における樹脂の量は、当該長軸方向に交差する方向における樹脂の量よりも少なくなる。したがって、楕円状パターン10aの長軸方向においては、当該長軸方向に交差する方向よりも、生地部分98が伸縮性に優れたものとなる。
【0047】
本発明の実施の形態2は、以上に述べた各点についてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。すなわち、本発明の実施の形態2について、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、全て本発明の実施の形態1に順ずる。
【0048】
次に、図8を用いて、上述の樹脂パターン10を構成する線状パターンの構造例について説明する。図8は、樹脂パターン10を構成する楕円状パターン10aの構造例を示す断面図である。
【0049】
図8に示す例では、楕円状パターン10aの断面形状は略矩形である。より詳しくは、楕円状パターン10aは、生地部分98、99の表面から略垂直に立ち上がる側面8を有し、上端角部9が尖ったような形状を有する。図8に点線で示すように、楕円状パターン10aの上端角部9を丸めてもよい。
【0050】
楕円状パターン10aを伸縮させるのに必要な力が楕円状パターン10aによる締付け力に対応する力となるが、当該力は楕円状パターン10aの体積に比例する。ここで、上記のように楕円状パターン10aが生地部分98、99の表面から略垂直に立ち上がる側面8を有することで、上における楕円状パターン10aの形成領域を小さく抑えながら、楕円状パターン10aの充分な体積を確保することができる。つまり、楕円状パターン10aの形成領域を小さく抑えながら、楕円状パターン10aによる所望の締付け力を得ることができる。
【0051】
楕円状パターン10aの高さ(厚み)や幅は任意に調節可能であるが、これらを適切に調節することによっても楕円状パターン10aの体積を調節することができ、楕円状パターン10aによる締付け力を調節することができる。
【0052】
たとえば装着者の体格や好み等の違い等より、樹脂パターン10による各部の締付け力を異ならせることを要求される場合もあると考えられるが、上記のように樹脂パターン10を構成する楕円状パターン10aの高さ(厚み)、幅、密度等を適切に調節することにより樹脂パターン10の各部の締付け力を容易に変化させることができるので、上記のような要求にも応えることができる。
【0053】
次に、本発明の実施の形態に係る膝用サポーター1および肘用サポーター11の製造方法について図9を用いて説明する。図9は、本発明の実施の形態に係る膝用サポーター1および肘用サポーター11の製造方法を示すフローチャートである。
【0054】
図9に示すように、まず、樹脂パターン10を形成するための樹脂を準備する(S10)。たとえば、所定の弾性を有し、成型性も良好であると考えられるウレタン樹脂を準備する。
【0055】
次に、上記樹脂を金型に導入する(S20)。この金型は、樹脂パターン10の形状に対応した凹部(キャビティ)を有し、この凹部に樹脂を導入する。樹脂を金型に導入するに際しては、たとえば樹脂を流動可能な状態(たとえば液状)として金型に導入すればよい。その後、金型内で樹脂を加熱する(S30)。たとえば上記樹脂の硬化温度以上の温度で加熱する。それにより、樹脂の一部(金型と接する部分およびその近傍)を硬化あるいは樹脂全体を半硬化状態とする。
【0056】
次に、上記のような状態の樹脂を、生地部分98、99の作製用の生地(たとえば伸縮性生地)に密着させる(S40)。具体的には、金型内で加熱状態にある樹脂材料上に上記生地部分98、99を被せ、該生地に圧力を加えて樹脂に生地部分98、99を接触させる。この状態で樹脂を硬化させることにより、生地部分98、99の表面上に所望の樹脂パターンを形成することができる。なお、金型を用いて樹脂パターン10を形成した後に、接着剤等を用いて該樹脂パターンを生地部分98、99上に密着形成することも可能である。
【0057】
上記のように金型を用いて生地部分98、99の表面に樹脂パターン10を形成することにより、たとえば図8に示すように側面8が生地部分98、99の表面にほぼ垂直な方向に延びるような楕円状パターン10aを形成することができる。
【0058】
上記のようにして生地部分98、99の表面に樹脂パターン10を形成した後、生地部分98、99同士を縫着することにより、たとえば図1〜図3に示すような膝用サポーター1や、図5〜図7に示すような肘用サポーター11を作製することができる。
【0059】
以上のように本発明の各実施の形態について説明を行なったが、今回開示した各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態1に係る膝用サポーター1の正面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る膝用サポーター1の側面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る膝用サポーター1の背面図である。
【図4】図1中の領域100の拡大図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る肘用サポーター11の正面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る肘用サポーター11の側面図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る肘用サポーター11の背面図である。
【図8】樹脂パターン10を構成する楕円状パターン10aの構造例を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る膝用サポーター1および肘用サポーター11の製造方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
1 膝用サポーター、2,6,14,15 樹脂非密着領域、3,4,5,12,13 樹脂密着領域、7,16 上端部、8 側面、9 上端角部、10 樹脂パターン、10a 楕円状パターン、10b 空洞領域、11 肘用サポーター、98,99 生地部分、100 領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動用に装着する膝用サポーターであって、
装着者の膝部に装着可能で、複数の領域を有する生地部分と、
前記生地部分の表面の一部であって、前記複数の領域内に密着形成された樹脂パターンとを備えており、
前記樹脂パターンは、前記生地部分の表面における前記複数の領域に要求される機能に応じて特性を調整している、膝用サポーター。
【請求項2】
前記生地部分は、第1の領域、第2の領域、および第3の領域を含み、
前記樹脂パターンは、前記生地の表面のうち、前記膝用サポーターを装着した際に大腿部の前方側の下部に宛がう前記第1の領域、下腿部の前方側の上部に宛がう前記第2の領域、および膝関節の後方側に宛がう前記第3の領域に密着形成されており、
前記第1の領域の弾性率を前記第2の領域の弾性率よりも高く、前記第2の領域の弾性率を前記第3の領域の弾性率よりも高くした、請求項1に記載の膝用サポーター。
【請求項3】
前記樹脂パターンは、前記第1の領域においては前記膝用サポーターを装着した際の下肢の長手方向の樹脂の量を、前記下肢の長手方向に交差する方向の樹脂の量より少なくしており、前記第2の領域においては前記膝用サポーターを装着した際の下肢の長手方向の樹脂の量を、前記下肢の長手方向に交差する方向の樹脂の量より少なくしており、前記第3の領域においては前記膝用サポーターを装着した際の下肢の長手方向に交差する方向の樹脂の量を、下肢の長手方向よりも少なくした、請求項1または2に記載の膝用サポーター。
【請求項4】
運動用に装着する肘用サポーターであって、
装着者の肘部に装着可能で、複数の領域を有する生地部分と、
前記生地部分の表面の一部であって、前記複数の領域内に密着形成された樹脂パターンとを備えており、
前記樹脂パターンは、前記生地部分の表面における前記複数の領域に要求される機能に応じて特性を調整している、肘用サポーター。
【請求項5】
前記生地部分は、第4の領域および第5の領域を含み、
前記樹脂パターンは、前記生地の表面のうち、前記肘用サポーターを装着した際に肘関節の上部の内側に宛がう前記第4の領域、および肘関節近傍の側部に宛がう前記第5の領域に密着形成されており、
前記第4の領域の弾性率を前記第5の領域の弾性率よりも高くした、請求項4に記載の肘用サポーター。
【請求項6】
前記樹脂パターンは、前記第4の領域においては前記肘用サポーターを装着した際の上肢の長手方向に交差する方向の樹脂の量を、前記上肢の長手方向の樹脂の量よりも少なくしており、前記第5の領域においては前記肘用サポーターを装着した際の上肢の長手方向の樹脂の量を、前記上肢の長手方向に交差する方向の樹脂の量よりも少なくした、請求項4または5に記載の肘用サポーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−111956(P2010−111956A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283413(P2008−283413)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【Fターム(参考)】