説明

膣上皮境界潤滑の治療的調節

本発明は膣の健康の管理に関する。特に、本発明は、膣上皮の境界潤滑低下に関連する疾患を治療するための医薬組成物およびその使用の方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2009年1月13日出願の米国特許仮出願第61/144,344号および2009年11月12日出願の米国特許仮出願第61/260,402号の優先権を主張するものであり、前記出願はそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
技術分野
【0002】
本発明は膣の健康の管理に関する。特に、本発明は、膣表面(例えば上皮)の境界潤滑低下に関連する疾患の治療のためのものを含む、医薬組成物およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
プロテオグリカン4(prg4)遺伝子は、巨核球刺激因子(MSF)、ルブリシンおよび表在層タンパク質(SZP)と称される高度にグリコシル化されたタンパク質をコードする。ルブリシンは最初に滑液から単離され、軟骨−ガラス界面で滑液に類似したインビトロでの潤滑能力を明らかにした。ルブリシンはその後滑液線維芽細胞の生成物として同定された。エクソン6によってコードされる、940アミノ酸の大きなムチン様ドメイン内のO結合型β(l−3)Gal−GalNAcオリゴ糖についても記述されている。SZPは、最初に表在層からの外植片軟骨の表面で局在化され、馴化培地から単離された。これらの分子(ならびにそのO結合型プロテオグリカン)を本明細書ではPRG4と総称する。PRG4は、滑膜、腱および半月の表面に存在することが示されているが、PRG4を膣における潤滑剤として使用することの記述はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、様々な実施形態において、膣上皮における境界潤滑分子の治療的補充および富化を含む、膣潤滑を管理するための医薬組成物およびその使用の方法を提供する。本発明の特定実施形態では、PRG4 mRNAがマウスの膣および子宮頸部上皮細胞において発現され、PRG4タンパク質がこれらの組織によって膣上皮に分泌されることを示唆するという所見を述べる。図1は、膣および子宮頸部組織での増幅後のアガロース電気泳動によって明らかにされる、ヒトPRG4 mRNA発現を示す。配列決定を介してmRNAを確認した。図2は、様々なマウス上皮細胞におけるPRG4 mRNA発現を示す。アガロースゲル電気泳動を使用することにより、増幅した試料をPRG4生成物の存在に関してスクリーニングした。垂直のレーン6〜8は、3匹の異なるマウスの膣組織からの、増幅して確認したPRG4 mRNAを含む。
【0006】
本発明の特定の場合には、PRG4タンパク質が膣上皮で果たす役割が、性交、出産、および他の望ましくない状態の間に生じる強いせん断力に対して膣腔を保護することであるという所見を述べる。さらに、本発明の特定の場合には、動的荷重の存在下でせん断応力を伝達する分泌成分の能力を含む、軟骨において認められる境界潤滑の分子機構が、膣上皮を潤滑化するために利用された場合有用である可能性が高いという所見を述べる。
【0007】
特定実施形態では、本発明は、ゲル、浸透圧平衡塩類水溶液、多相エマルションに懸濁された、または徐放性装置内に封入された治療有効濃度のPRG4タンパク質(例えばPRG4 O結合型プロテオグリカンを含む)の治療量を含有する製剤を患者の膣表面に局所適用するのに適した医薬組成物を提供する。
【0008】
特定実施形態では、本発明の医薬組成物は、治療有効濃度の1またはそれ以上の付加的な治療薬、例えば膣内投与した場合に膣への利益をもたらすおよび/または効果を及ぼす薬剤をさらに含有する。特定実施形態では、付加的な薬剤は、アンドロゲンもしくはアンドロゲン類似体[この場合、アンドロゲンもしくはアンドロゲン類似体は17α−メチル−17β−ヒドロキシ−2−オキサ−5α−アンドロスタン−3−オン誘導体である]、エストロゲンもしくはエストロゲン類似体、窒素置換アンドロゲン、窒素置換エストロゲン、テストステロン誘導体、エストロゲン誘導体、4,5α−ジヒドロテストステロン誘導体、19−ノルテストステロン誘導体、環A不飽和を含む17β−ヒドロキシ−5α−アンドロスタン誘導体を含むが、これらに限定されないか、または異常な構造特徴を有するアンドロゲン化合物を含むアンドロゲンの構造サブクラスからである。または、前記製剤は、アンドロゲン受容体に対する非ステロイド系リガンドのインビボでのアンドロゲン活性および同化活性を有する、アリール−プロピオンアミド(例えばS−3−(4−アセチルアミノフェノキシ)−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(4−ニトロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−プロピオンアミド[S−4]またはS−3−(4−フルオロフェノキシ)−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(4−ニトロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−プロピオンアミド[S−1])、二環式ヒダントイン、キノリンおよびテトラヒドロキノリン類似体である、選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)化合物、受容体における多くの立体配座変化を誘導し、それによって様々な異なる生物学的プロフィールを惹起することができるエストロゲン受容体の非ステロイド系リガンドである選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)化合物、受容体の親和性に関わらないエストロゲンアンタゴニスト(ステロイド系、非ステロイド系)、アロマターゼ阻害剤、アンチプロテアーゼ、炎症性サイトカインアンタゴニスト(例えば抗TNFα抗体、可溶性TNFα受容体、IL−1受容体アンタゴニスト)、サイトカイン放出阻害剤、NF−κB阻害剤、抗炎症性サイトカイン(例えばTGF−β)、他の抗炎症薬(例えばシクロスポリンA、ω3およびω6脂肪酸)、またはプロテアソーム阻害剤を含む。
【0009】
特定実施形態では、本発明の医薬組成物は、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸およびリン脂質を含むがこれらに限定されない、治療有効濃度が1またはそれ以上の付加的な治療薬をさらに含有する。例示的なリン脂質は、L−α−ジパルミトイルホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンおよびスフィンゴミエリンを含むが、これらに限定されない。
【0010】
特定実施形態では、本発明の医薬組成物は、エストロゲン、プロゲステロン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、または上皮増殖を促進する他の分子を含む、上皮増殖および適切な形態を促進する治療有効濃度の化合物をさらに含有する。
【0011】
本発明は、膣潤滑欠損症またはそれに関連する症状を治療するための方法を提供する。そのような方法は、必要とする被験者の膣表面に本発明の医薬組成物を局所投与することを含む。膣潤滑欠損症の症状は、膣乾燥、膣のかゆみまたは灼熱感、性交疼痛、および性交後の軽度の膣出血を含む。
【0012】
特定実施形態では、本発明は、膣潤滑不良または欠損に関連する状態に対処し、治療するための方法をさらに提供する。例示的な状態は、膣萎縮症、性交疼痛症、シェーグレン症候群、更年期障害、アンドロゲン欠損症、エストロゲン欠損症、エストロゲン補充療法、アレルギー、慢性炎症、閉経、早発閉経、化学療法、授乳、閉経前の卵巣の外科的切除、生殖器硬化性萎縮性苔癬、外陰部痛、細菌性膣炎、疱疹、カンジダ症、乾癬、接触皮膚炎、コンジローム、薬剤の副作用および加齢を含むが、これらに限定されない。
【0013】
本発明は、装着期間にわたって境界潤滑を補充するための補足、例えばPRG4被覆した避妊具表面の存在下でのPRG4および/またはヒアルロン酸の補足を用いて、境界潤滑分子を避妊具の表面および/または移植可能な溶出装置内に付着させることを含む、性交の間の境界潤滑を高めるための方法を提供する。
【0014】
一部の実施形態では、治療組成物は、リン酸緩衝食塩水、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、またはそれらの組合せを含む。
【0015】
本発明の他の特徴および利点は、その好ましい実施形態の以下の説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
参照による組込み
【0016】
本明細書の中で言及されるすべての公表文献および特許出願は、引用される目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の新規特徴については、付属の特許請求の範囲において詳細に説明する。本発明の原理を利用した例示的実施形態を述べる以下の詳細な説明および付属の図面を参照することにより、本発明の特徴および利点のより良好な理解が得られる。
【0018】
【図1】膣および子宮頸部組織での増幅後のアガロース電気泳動によって明らかにされる、ヒトPRG4 mRNA発現を示す。配列決定を介してmRNAを確認した。
【図2】様々なマウス上皮細胞におけるPRG4 mRNA発現を示す。アガロースゲル電気泳動を使用することにより、増幅した試料をPRG4生成物の存在に関してスクリーニングした。垂直のレーン6〜8は、3匹の異なるマウスの膣組織からの、増幅して確認したPRG4 mRNAを含む。
【図3】PRG4のアミノ酸配列ならびにPRG4 mRNAのPCR増幅のための核酸プライマー配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好ましい実施形態を本明細書で示し、説明したが、そのような実施形態は単なる例として提供されるものであることは当業者に明白である。数多くの変形、変更および置換が、今や、本発明から逸脱することなく当業者に可能である。本発明を実施するにあたって本明細書で述べる本発明の実施形態の様々な代替手段を用い得ることが了解されるべきである。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲内の方法と構造およびそれらの等価物がそれによってカバーされることが意図されている。
【0020】
prg4の機能的重要性は、ヒトにおいて屈指症−関節症−内反股−心膜炎(CACP)疾患症候群を引き起こす突然変異によって示された。CACPは、内反股変形、心膜炎および胸水と共に、屈指症、非炎症性関節症および肥大滑液膜炎として発現する。また、PRG4ヌルマウスにおいて、軟骨の劣化およびその後の関節障害が認められた。それ故、PRG4発現は健康な滑膜性の連結の必要成分である。
【0021】
PRG4はムチンファミリーの成員であり、ムチンファミリーは一般に上皮内層に豊富に存在し、潤滑および侵入微生物からの保護を含む多くの機能を提供する。ムチンの機能特性は、一般に、特殊なグリコシル化パターンと分子間ジスルフィド結合を介して多量体を形成するそれらの能力によって決定され、慢性疾患(例えば嚢胞性線維症、喘息)ではその両方が変化している。滑液から単離されたPRG4の生化学的特徴づけは、潤滑特性を媒介すると思われる、Oグリコシル化の分子多様性を示した。ウシ滑液からのPRG4に関する予備データは、C末端の非対合システインと共に、N末端およびC末端の両方の保存されたシステインリッチドメインから予測される単量体形態に加えて、ジスルフィド結合の二量体の存在を明らかにした。
【0022】
潤滑の物理化学的モードは、流体膜または境界と分類されてきた。作動潤滑モードは、関節接合する組織への垂直抗力と接線分力、これらの面の間の接線運動の相対速度、および荷重と運動の両方の時間履歴に依存する。摩擦係数μは定量的評価尺度を提供し、接線摩擦力対垂直効力の比と定義される。流体伝達性潤滑モードの1つのタイプは静水圧である。荷重の開始時および典型的には長期間にわたって、組織の二相性のために、間質液が加圧される;流体はまた、浸出機構を介して関節表面の間の凹凸へと推進され得る。加圧された間質液と捕捉された潤滑剤プールは、それ故、せん断力に対する抵抗をほとんど伴わずに垂直荷重の支持に有意に寄与し、非常に低いμを促進し得る。また、荷重および/または運動の開始時に、相対運動における2つの面の間隙からおよび/または間隙を通して粘性潤滑剤を推進するように働く加圧、運動および変形により、スクイーズ膜、流体力学および弾性流体力学型の流体膜潤滑が起こる。
【0023】
一部の場合には、流体圧/流体膜対境界潤滑が起こる適切な度合は多くの因子に依存する。潤滑膜が、弾性的に変形することができる適合摺動面の間を流動できる場合、弾性流体力学的潤滑が起こる。圧、表面粗さおよび相対すべり速度が、完全な流体潤滑が壊れ始め、潤滑が新しいレジームに入る時点を決定する。速度がさらに低下するにつれ、関節接合面に付着した潤滑膜が寄与し始め、混合レジームの潤滑が起こる。速度がさらに一層低下し、数個の分子から成る超薄潤滑層だけが残る場合、境界潤滑が起こる。特定の場合には、境界モードの潤滑は、それ故、相対すべり速度および軸荷重などの流体膜の形成に影響を及ぼす因子と共に、定常すべりが不変である間は、摩擦係数(相対運動の2つの接触面の間で測定された摩擦力対適用された垂直抗力の比)によって指示される。関節軟骨などの身体の特定組織に関しては、境界潤滑が起こり、流体加圧および他の機構によって補完されると結論づけられた。しかし、例えば膣内潤滑の主要モードが流体力学および弾性流体力学的であると推測されていたため、膣内境界潤滑のための薬剤の使用はこれまで追求されていなかった。さらに、膣潤滑能力低下のための治療は、伝統的にポリカルボフィル、ポリエチレングリコールおよびグリセリンなどの長鎖ポリマーによる粘性流体相の潤滑または水和を重視してきた。
【0024】
境界潤滑では、荷重は面と面との接触によって支持され、関連する摩擦特性は潤滑剤表面分子によって決定される。特定の場合には、反対側の組織表面が総面積の10%までにわたって接触し、これはほとんどの摩擦が起こる場合に該当し得るので、このモードは重要であると考えられる。さらに、一部の場合には、荷重時間が上昇し、静水圧が消失すると共に、潤滑剤被覆表面は加圧流体に比べてますます高い割合の荷重を受け、その結果、このモードがますます支配的となり得る。特定の場合には、境界潤滑がスティックスリップ現象を軽減し、それ故、定常運動および運動開始の両方に対する抵抗の低下として現れる。一部の場合には、後者の状況は長期的な圧縮荷重(例えばインビボでの座位または起立位)後の荷重支持面に該当する。軟骨におけるような、関節表面の典型的な損耗パターンも、一部の場合には、境界潤滑が組織構造の保護と維持のために重要であることを示す。一部の場合には、膣上皮の荷重は、表面細胞に強い応力を生じさせる性交により、せん断力を受ける(例えばせん断力に支配される)。さらに、膣内の潤滑剤の産生を下方調節するまたは上皮細胞を萎縮させるように働く疾患状態では、日常的な、性交によるものではないせん断応力も、強い劣化および炎症の危険性を与え得る。重度の萎縮、またはタモキシフェンなどの癌治療、抗ヒスタミン薬、尿路感染症のための治療、抗うつ薬もしくは高血圧薬による医原性の乾燥も、性交とは無関係に、通常レベルのせん断応力を痛みにし得る。
【0025】
一部の場合には、関節接合面の間の流体内でのPRG4の蓄積ならびに自発的に組織マトリックスに結合するその性向が、PRG4の境界潤滑能力に寄与する。
【0026】
本明細書で述べる特定実施形態において、発明人は、プロテオグリカン4(PRG4)が膣腔の壁に沿った境界潤滑剤としての役割を果たすことを開示する。一部の実施形態では、この糖タンパク質(PRG4)は、摩擦力、細胞接着および/またはタンパク質沈着から膣表面を保護する。様々な天然および組換えルブリシンタンパク質およびアイソフォームのいずれか1つまたはそれ以上を本明細書で述べる様々な実施形態で利用する。例えば、米国特許第5,326,558号;同第6,433,142号;同第7,030,223号および同第7,361,738号はヒト巨核球刺激因子(MSF)のファミリーを開示しており、前記の各々はそのような開示に関して参照により本明細書に組み込まれる。米国特許第6,960,562号および同第6,743,774号も、MSFの実質的に純粋なフラグメントを含む潤滑ポリペプチド、トリボネクチンを開示しており、前記の各々はそのような開示に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
本明細書の特定実施形態では、それを必要とする個体において膣潤滑欠損症(例えば膣境界潤滑欠損症)を治療する(または膣潤滑を改善する)、またはそれに関連する症状を治療するための方法であって、前記個体の膣表面に治療有効量のPRG4タンパク質を含有する医薬組成物を局所投与することを含む方法が提供される。また、本明細書の一部の実施形態では、例えば膣潤滑欠損症(例えば膣境界潤滑欠損症)を治療する(または膣潤滑を改善する)ための、経膣的に許容される製剤中に(経膣的に許容されるとは、過度の不快、痛み、アレルギー、炎症、または熱を引き起こさない製剤と定義される)PRG4タンパク質を含有する医薬組成物も提供される。一部の実施形態では、経膣的に許容される製剤は、粘滑薬、収斂薬、皮膚軟化薬、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、組成物は、避妊具を処理するもしくは被覆するために使用されるか、または移植可能な溶出装置(例えば溶出リング)を介して投与される。一部の実施形態では、そのような投与は、移植可能な溶出装置を投与し、その後移植可能装置が治療有効量のPRG4を溶出することによって達成される。特定実施形態では、移植可能な溶出装置は長期間の治療を提供するために利用される。
【0028】
本明細書の一部の実施形態では、膣上皮における膣潤滑の欠損症(例えば低いまたは望ましくない膣境界潤滑のような、膣境界潤滑の欠損症)を治療するための医薬組成物およびその使用の方法が提供される。本発明の特定実施形態の医薬組成物は、粘滑薬、賦形剤、収斂薬、血管収縮薬および皮膚軟化薬から成る群より選択される1またはそれ以上の薬剤と組み合わせて単離または精製PRG4タンパク質(例えば経膣的に許容される平衡塩類溶液中に懸濁された)を含有する。一部の実施形態では、本明細書で提供される任意の医薬組成物は、局所投与のための医薬的に許容される担体中に、ヒアルロン酸ナトリウム、表面活性リン脂質および電解質から成る群より選択される1またはそれ以上の付加的な治療薬をさらに含有する。
【0029】
本発明は、特定実施形態では、膣表面における境界潤滑分子の治療的補充および富化を含む、膣潤滑を管理する新規アプローチを提供する。本発明は、PRG4が膣上皮細胞によって合成され、その後膣表面に分泌されることを提供する。さらに、本発明は、PRG4が膣表面上で類似した役割を果たし、性交中もしくは疾患状態において生じる強いせん断力またはその境界潤滑能力を低下させる他の医原性因子から膣上皮表面を保護することを提供する。
【0030】
膣潤滑を管理し、非限定的な例として、膣萎縮症、性交疼痛症、シェーグレン症候群、アンドロゲン欠損症、エストロゲン欠損症、エストロゲン補充療法、アレルギー、慢性炎症、更年期障害、閉経、早発閉経、化学療法、授乳、閉経前の卵巣の外科的切除、生殖器硬化性萎縮性苔癬、外陰部痛、細菌性膣炎、疱疹、カンジダ症、乾癬、接触皮膚炎、コンジローム、薬剤の副作用および加齢を含む、本明細書で述べる望ましくない状態から生じるせん断力(強いせん断力を含む)および不快から膣上皮を保護する必要がある。膣潤滑欠損症の症状または徴候は、非限定的な例として、膣乾燥、膣のかゆみまたは灼熱感、性交疼痛、および性交後の軽度の膣出血を含む。
【0031】
膣潤滑欠損症およびそれに関連する症状は、任意の適切な方法によって判定することができる。一部の場合には、膣潤滑欠損症およびそれに関連する症状は、定性的に(例えば低潤滑の感覚、不快、膣乾燥、膣のかゆみまたは灼熱感、性交疼痛、および性交後の軽度の膣出血等)または定量的に(例えば定量アッセイの機械的、生化学的、電気的、光学的または他の方法を介して測定される)定義される。
【0032】
特定実施形態では、本発明は、適切な境界潤滑のための好ましい状態を促進する膣表面でのPRG4制御の調節のための組成物および方法を提供する。本発明の特定実施形態の医薬組成物は、治療有効量のアンドロゲンもしくはアンドロゲン類似体、エストロゲンもしくはエストロゲン類似体、エストラジオール、選択的アンドロゲン受容体調節剤、選択的エストロゲン受容体調節剤、エストロゲンアンタゴニスト、アロマターゼ阻害剤、アンチプロテアーゼ、炎症性サイトカインアンタゴニスト、サイトカイン放出阻害剤、抗炎症性サイトカイン(例えばTGF−β)、抗炎症薬(例えばシクロスポリンA、ω3およびω6脂肪酸)、NF−κB阻害剤、またはプロテアソーム阻害剤、ヒアルロン酸、中性もしくは極性脂質、脂肪酸、プロゲステロン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、または上皮増殖を促進する他の分子を含む薬剤の1またはそれ以上および局所使用のための医薬的に許容される担体と組み合わせて単離または精製PRG4タンパク質を含有する。
【0033】
1つの実施形態では、アンドロゲンまたはアンドロゲン類似体は、17α−メチル−17β−ヒドロキシ−2−オキサ−5α−アンドロスタン−3−オン誘導体、窒素置換アンドロゲン、テストステロン誘導体(すなわち安定性または溶解度に影響を及ぼすアミノ、ヒドロキシル、水素、メチル、酸素または他の基の付加または除去、ならびに安定性または溶解度を変化させる環構造内の飽和の付加または除去などの、修飾された側鎖を有するテストステロン中央環分子)から成る群より選択され、4,5α−ジヒドロテストステロン誘導体、19−ノルテストステロン誘導体、環A不飽和を含む17β−ヒドロキシ−5α−アンドロスタン誘導体、および異常な構造特徴を有するアンドロゲン化合物を含むアンドロゲンの構造サブクラス、およびリン酸緩衝食塩水または局所使用のためのヒアルロン酸塩などの担体物質である。局所使用に適する任意の医薬的に許容される担体および/または賦形剤は本発明の範囲内である。
【0034】
もう1つの実施形態では、選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)は、アンドロゲン受容体に対する非ステロイド系リガンドのインビボでのアンドロゲン活性および同化活性を有する、アリール−プロピオンアミド(例えばS−3−(4−アセチルアミノフェノキシ)−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(4−ニトロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−プロピオンアミド[S−4]またはS−3−(4−フルオロフェノキシ)−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(4−ニトロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−プロピオンアミド[S−1])、二環式ヒダントイン、キノリン、およびテトラヒドロキノリン類似体から成る群より選択される。
【0035】
さらにもう1つの実施形態では、選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)は、受容体における多くの立体配座変化を誘導し、それによって様々な異なる生物学的プロフィールを惹起することができるエストロゲン受容体の非ステロイド系リガンドである。好ましくは、SERMは、膣表面組織においてエストロゲンが誘導する炎症を防ぐものである。さらなる好ましい特定の実施形態では、エストロゲンアンタゴニストは、受容体の親和性を問わずステロイド系または非ステロイド系化合物である。
【0036】
1つの実施形態では、炎症性サイトカインアンタゴニストは、抗TNFα抗体、可溶性TNFα受容体、およびIL−1受容体アンタゴニストから成る群より選択される。
【0037】
さらにもう1つの実施形態では、エストロゲンまたはプロゲステロンは、Estrace、PremarinおよびEstringを含む、市販のホルモン補充療法を包含する。
【0038】
一部の実施形態では、単離または精製PRG4は、例えば経膣的に許容される賦形剤と共に、膣使用のために製剤される。特定実施形態では、本明細書で述べる組成物は、有効量のPRG4を、それを必要とする個体の膣に送達するように製剤される。一部の実施形態では、組成物は、クリーム、軟膏(salve)、溶液、懸濁液、ペースト、軟膏(ointment)等のような局所製剤として製剤される。そのような組成物の投与は、注腸、圧注、手操作、スプレー、坐薬、含浸装置、塗布器等のような任意の適切な方法で達成される。様々な実施形態において、投与は、必要とされる領域、例えば膣の外面、膣の内面、またはその部分および/もしくは組合せにおいて実施される。一部の実施形態では、PRG4は、坐薬または持続放出製剤が組み込まれたタンポンにおけるような、持続放出または長期放出用に製剤される。
被覆避妊具
【0039】
本発明の特定実施形態では、PRG4または任意のPRG4医薬組成物を含有する避妊具を提供する。また、PRG4または本明細書で述べる任意のPRG4医薬組成物を避妊具の表面に沈着させる(例えば付着させる、被覆する等)ことを含む、避妊具を処理する方法も本明細書で述べる。避妊具へのPRG4の沈着は、被覆(例えば適切な組成物中で)、共有結合による付着、疎水性またはイオン性相互作用を介した結合等のような、任意の適切な方法で達成される。また、PRG4をその上に沈着させた他の膣装置(例えばタンポン)も本明細書で提供される。一部の実施形態では、装置へのPRG4の沈着は、特に膣潤滑低下(例えば膣境界潤滑低下)を患っている個体において、そのような装置によって引き起こされる刺激を軽減する。
【0040】
さらにもう1つの実施形態では、有効量のPRG4または本明細書で述べる任意の医薬組成物の局所投与で避妊具を補完することをさらに含む。
【0041】
有効量のPRG4または本明細書で述べる任意の医薬組成物を膣表面、陰茎表面に局所投与することを含む、性交の間の潤滑を提供する方法。
【0042】
PRG4の投与は、局所投与、つまりクリーム、ゲル、溶液または任意の他の塗布可能な組成物による投与などの、任意の適切な方法で達成される。一部の実施形態では、投与は、PRG4またはPRG4組成物を含浸させたタンポンなどの、移植可能な装置で達成される。一部の実施形態では、PRG4を別のパーソナル潤滑剤またはパーソナル潤滑剤組成物、例えばK−Yゼリーのような石油ベースの潤滑剤と組み合わせる。
【0043】
本発明の特定実施形態では、有効量のPRG4または本明細書で述べる任意の医薬組成物を、必要とする患者の膣に適用することから成る、接触する精子の運動性を維持するまたは高めることによって受胎の可能性を上昇させるパーソナル潤滑剤を提供する。グリセリンなどの成分を含有する多くの市販の潤滑剤は殺精子性であり、精子の運動性を妨げる。一部の場合には、膣液の正常成分であるPRG4は、精子の運動性を維持し、受胎を促進する役割を果たし得る。もう1つの実施形態では、パーソナル潤滑剤または本明細書で述べる任意の他の組成物は、添加剤、例えば、アミノ酸、例えばL−アルギニン、シトルリンおよびアスパラギン酸などの天然酸化窒素前駆体のような酸化窒素を放出する添加剤を含有する。そのような添加剤は、膣への潤滑剤の適用後に加温作用を誘導することができ、従って膣の感覚を高め得る。加えて、酸化窒素の放出は、精子の運動性を維持するまたは増強する作用を有し得る。そのため酸化窒素放出化合物の含有は受胎の可能性を高め得るまたは最大化し得る。
【0044】
1つの実施形態では、本明細書で述べる医薬組成物は、2.4〜7.8、5.8〜7.4または6.5〜7.4のpHを有する。
【0045】
本明細書で使用される、「避妊具」という用語は、男性用および女性用コンドームを含む、妊娠の防止のために使用される装置を指す。
【0046】
本明細書で使用される、「PRG4」、「PRG4タンパク質」または「プロテオグリカン4」タンパク質という用語は、「ルブリシン」タンパク質という用語と交換可能に使用される。PRG4は、本明細書ではまた、UCL/HGNC/HUGO Human Gene Nomenclatureデータベースに認められている巨核球刺激因子(MSF)という用語、および表在層タンパク質(SZP)を包含するためにも使用される。本明細書で使用されるPRG4またはルブリシンタンパク質(本明細書ではルブリシンプロテオグリカンと交換可能に使用される)は、任意の単離されたまたは精製された天然または組換えルブリシンタンパク質、そのホモログ、機能的フラグメントもしくはモチーフ、アイソフォーム、および/または変異体を指す。特定実施形態では、単離または精製PRG4タンパク質は、ヒト天然または組換えルブリシンタンパク質についてのアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、単離または精製PRG4タンパク質は、完全長PRG4タンパク質またはアイソフォームの一次構造をコードするprg4遺伝子のエクソンによってコードされるアミノ酸配列を含む。プロテオグリカン4(prg4)遺伝子は12のエクソンを含む。本明細書で使用されるPRG4タンパク質は、prg4遺伝子のエクソン1〜12、より好ましくはエクソン6〜12、最も好ましくはエクソン9〜12によってコードされるアミノ酸配列を含む。
【0047】
本明細書で使用される、PRG4タンパク質は、現在公知のまたは今後記述される任意のPRG4タンパク質を包含する。特定実施形態では、好ましいPRG4タンパク質のアミノ酸配列が配列番号:1で提供される。PRG4タンパク質は、任意の公知のPRG4タンパク質またはアイソフォームの一次アミノ酸構造を、少なくとも60%の相同性、好ましくは75%の相同性、より好ましくは85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の相同性で共有する。特定実施形態では、好ましいPRG4タンパク質は、PRG4タンパク質の1またはそれ以上の生物活性部分、または潤滑性フラグメントのような機能的フラグメント、またはそのホモログを含む、50kDa〜400kDaの平均モル質量を有する。
【0048】
本明細書で使用される、PRG4タンパク質は、該タンパク質の生物活性部分を含む。本明細書で使用される、PRG4タンパク質の「生物学的に活性な部分」は、完全長タンパク質より少ないアミノ酸を含み、完全長タンパク質の少なくとも1つの活性を示す、該タンパク質のアミノ酸配列と十分に相同なまたは前記アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を含むタンパク質の機能的フラグメントを包含する。典型的には、生物学的に活性な部分は、タンパク質の少なくとも1つの活性を有する機能的ドメインまたはモチーフを含む。タンパク質の生物学的に活性な部分は、例えば10、25、50、100、200またはそれ以上のアミノ酸長のポリペプチドであり得る。1つの実施形態では、PRG4タンパク質の生物学的に活性な部分は、単独でまたは他の治療薬と組み合わせて、望ましくないまたは低下した膣境界潤滑を治療するために治療薬として使用することができる。
【0049】
さらにもう1つの実施形態では、PRG4の機能的フラグメント、多量体(例えば二量体、三量体、四量体等)、ホモログまたはオーソログは、口腔ケア組成物において使用される。PRG4の機能的フラグメントおよびホモログは、中央のムチン様KEPAPTT反復ドメイン内により少ない反復を有するもの、該タンパク質のグリコシル化および非グリコシル化形態、スプライス変異体、組換え形態等を包含する。PRG4の潤滑性フラグメントは、定性的に、機械的に、光学的に、電気的に、または生化学アッセイによって測定される、ヒトPRG4の潤滑作用の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%を示す。
【0050】
いくつかの天然および組換えPRG4またはルブリシンタンパク質の核酸およびアミノ酸配列、ならびにPRG4タンパク質および様々なアイソフォームの特徴づけは、例えば、Turner et al.への米国特許第5,326,558号;同第6,433,142号;同第7,030,223号;同第7,361,738号およびJay et al.への米国特許第6,743,774号および同第6,960,562号に開示されている。Flannery et al.への米国特許出願公開第20070191268号も、本発明において有用な組換えPRG4またはルブリシン分子を開示する。
【0051】
PRG4タンパク質の単離、精製および組換え発現のための方法は当技術分野において周知である。特定実施形態では、その方法は、PCRまたはRT−PCRなどの標準的な分子生物学技術を使用してPRG4タンパク質またはアイソフォームをコードするmRNAおよびcDNAをクローニングし、単離することから始まる。次に、PRG4タンパク質またはアイソフォームをコードする単離されたcDNAを発現ベクターにクローニングし、組換えPRG4タンパク質を生産するためにさらに形質転換し、宿主細胞において発現させる。
【0052】
本明細書で使用される、「組換え」は、合成されたもしくはインビトロで操作されたポリヌクレオチド(例えば「組換えポリヌクレオチド」)、細胞もしくは他の生物系において遺伝子産物を生産するために組換えポリヌクレオチドを使用する方法、または組換えポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド(「組換えタンパク質」)を指す。「組換え」はまた、異なるソースからの様々なコード領域またはドメインまたはプロモーター配列を有する核酸を発現カセットまたは発現のためのベクター、例えばPRG4遺伝子の活性ドメインと本発明のプライマーを使用して増幅された核酸配列を含む融合タンパク質の誘導的または構成的発現のためのベクターに連結することを包含する。
【0053】
特定実施形態では、PRG4タンパク質をコードする核酸は、1またはそれ以上の変異、欠失または挿入を含み得る。そのような実施形態では、PRG4タンパク質をコードする核酸は、野生型PRG4タンパク質をコードする核酸に少なくとも60%相同、好ましくは75%相同、より好ましくは85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上相同である。
【0054】
本明細書で使用される、「cDNA」という用語は、逆転写酵素などの酵素でcDNAに変換され得る、細胞または生物mRNA中に存在するmRNA分子に相補的なDNAを包含する。特定実施形態では、PRG4タンパク質をコードするcDNAは、当技術分野で周知のRT−PCR法を用いてヒト角膜または結膜上皮細胞において発現されるPRG4 mRNAから単離される。
【0055】
本明細書で使用される、「ポリヌクレオチド」、「核酸/ヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は、交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのいずれかの、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態、またはその類似体を包含する。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有してよく、公知または非公知の任意の機能を果たし得る。以下はポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子フラグメント、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、リボザイム、DNA、cDNA、ゲノムDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、およびプライマー。ポリヌクレオチドは、天然に生じ得るか、合成、組換えまたはそれらの任意の組合せであり得る。
【0056】
ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体などの修飾ヌクレオチドを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーの構築の前または後に行われ得る。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分によって中断され得る。ポリヌクレオチドは、標識成分との抱合などにより、重合後にさらに修飾され得る。この用語はまた、二本鎖および一本鎖分子の両方を包含する。特に指定されないまたは必要でない限り、ポリヌクレオチドである本発明の任意の実施形態は、二本鎖形態および二本鎖形態を形成することが公知であるかまたは予測される2つの相補的な一本鎖形態の各々の両方を包含する。
【0057】
本明細書で使用される、「ポリヌクレオチド配列」という用語は、ポリヌクレオチド分子のアルファベット表記である。ポリヌクレオチドは、4つのヌクレオチド塩基:アデニン(A);シトシン(C);グアニン(G);チミン(T);およびポリヌクレオチドがDNAではなくRNAである場合は、チミンの代わりにウラシル(U)、の特定配列から成る。このアルファベット表記はコンピュータのデータベースに入力することができ、例えば機能的ゲノム学および相同性検索などのバイオインフォマティクス適用のために使用できる。
【0058】
本明細書で使用される、「単離ポリヌクレオチド/cDNA」という用語は、ポリヌクレオチドの天然ソース中に存在する他のポリヌクレオチド分子から分離されたポリヌクレオチド分子を包含する。例えば、ゲノムDNAに関しては、「単離」という用語は、ゲノムDNAが天然に結合している染色体から分離されたポリヌクレオチド分子を包含する。好ましくは、「単離」ポリヌクレオチドは、該ポリヌクレオチドが由来する生物のゲノムDNA中で該ポリヌクレオチドに天然に隣接する配列(すなわち対象とするポリヌクレオチドの5’および3’末端に位置する配列)を含まない。例えば、様々な実施形態において、本発明で使用されるPRG4タンパク質をコードする単離ポリヌクレオチド分子は、該ポリヌクレオチドが由来する細胞のゲノムDNA中で該ポリヌクレオチド分子に天然に隣接するヌクレオチド配列の約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kbまたは0.1kb未満を含み得る。さらに、cDNA分子などの「単離」ポリヌクレオチド分子は、組換え技術によって生産された場合は他の細胞物質または培地を実質的に含まず、または化学合成された場合は化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない。
【0059】
本明細書で使用される、「遺伝子」は、転写され、翻訳された後、特定のポリペプチドまたはタンパク質をコードすることができる少なくとも1つのオープン・リーディング・フレームを含むポリヌクレオチドを包含する。本明細書で述べるポリヌクレオチド配列のいずれもが、それらが結合している遺伝子のより大きなフラグメントまたは完全長コード配列を同定するためにも使用され得る。より大きなフラグメント配列を単離する方法は当業者に公知である。本明細書で使用される、「天然または天然に生じる」ポリヌクレオチド分子は、例えば、天然に生じる(例えば天然タンパク質をコードする)ヌクレオチド配列を有するRNAまたはDNA分子を包含する。
【0060】
本明細書で使用される、「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は交換可能であり、2またはそれ以上のサブユニットのアミノ酸、アミノ酸類似体、またはペプチドミメティックの化合物を包含する。サブユニットはペプチド結合によって連結され得る。もう1つの実施形態では、サブユニットは他の結合、例えばエステル、エーテル結合等によって連結され得る。本明細書で使用される、「アミノ酸」という用語は、グリシンおよびDまたはLの両光学異性体を含む、天然および/または非天然または合成アミノ酸、ならびにアミノ酸類似体およびペプチドミメティックを包含する。3またはそれ以上のアミノ酸のペプチドは一般にオリゴペプチドと称される。3またはそれ以上のアミノ酸のペプチド鎖はポリペプチドまたはタンパク質と称される。
【0061】
特定実施形態では、本明細書で使用されるPRG4タンパク質は、ヒトまたは他の宿主細胞において天然にまたは組換えによって発現される、PRG4タンパク質またはその様々なホモログもしくはアイソフォームを指す。本明細書で使用される、「発現する」または「発現」は、ポリヌクレオチドがRNAに転写されるおよび/またはポリペプチドに翻訳されるプロセスを包含する。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現は、適切な真核生物宿主が選択された場合は、RNAのスプライシングを含み得る。発現に必要な調節エレメントは、RNAポリメラーゼに結合するプロモーター配列およびリボソーム結合のための転写開始配列を含む。例えば、細菌発現ベクターは、lacプロモーターなどのプロモーターならびに転写開始のためのシャイン−ダルガーノ配列および開始コドンAUGを含む。同様に、真核生物発現ベクターは、RNAポリメラーゼIIのための異種または同種プロモーター、下流のポリアデニル化シグナル、開始コドンAUG、およびリボソームの分離のための終止コドンを含む。そのようなベクターは、商業的に入手できるかまたは当技術分野で周知の方法、例えば一般にベクターを構築するための以下で述べる方法において説明される配列によって構築することができる。本明細書で使用される、「ベクター」という用語は、挿入されたポリヌクレオチドを宿主細胞内におよび/または宿主細胞の間に転移する自己複製核酸分子を包含する。この用語は、主として核酸分子の細胞への挿入のために機能するベクター、主として核酸の複製のために機能する複製ベクター、ならびにDNAまたはRNAの転写および/または翻訳のために機能する発現ベクターを包含することが意図されている。また、上記機能の2以上を提供するベクターも意図されている。
【0062】
本明細書で使用される、「宿主細胞」は、ベクターのためのまたは外因性ポリヌクレオチドおよび/もしくはポリペプチドの組込みのためのレシピエントとなり得るまたはレシピエントであった任意の個別細胞または細胞培養物を包含することが意図されている。また、単一細胞の子孫を包含することも意図されている。子孫は、天然、偶発的または意図的な変異に起因して元の親細胞と必ずしも完全に同一でなくてもよい(形態においてまたはゲノムもしくは全DNA相補物において)。細胞は原核または真核であり得、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、動物細胞、およびマウス、ラット、サルまたはヒト細胞を含むがこれらに限定されない哺乳動物細胞を包含するが、これらに限定されない。本明細書で使用される、「宿主細胞」はまた、遺伝的に修飾された細胞を包含する。「遺伝的に修飾された細胞」という用語は、その後細胞またはその子孫の遺伝子型または表現型を修飾する、外来性もしくは外因性遺伝子またはポリヌクレオチド配列を含むおよび/または発現する細胞を包含する。「遺伝的に修飾された」はまた、細胞に導入された遺伝子またはポリヌクレオチド配列を含むまたは発現する細胞も包含する。例えば、この実施形態では、遺伝的に修飾された細胞は導入された遺伝子を有しており、前記遺伝子は同時に細胞に対して内因性でもある。「遺伝的に修飾された」という用語はまた、細胞の内因性ヌクレオチドに対する任意の付加、欠失または分断を包含する。本明細書で使用される、「宿主細胞」は、ヒトPRG4タンパク質を発現する任意の細胞であり得る。
【0063】
本明細書で使用される、「ホモログ」は、本明細書では、それぞれ類似のまたは実質的に同一の核酸またはアミノ酸配列を有する2つの核酸またはペプチドと定義される。「ホモログ」という用語は、遺伝暗号の縮重に起因してヌクレオチド配列の1つと異なる核酸分子をさらに包含し、従って同じアミノ酸配列をコードする。好ましい実施形態の1つでは、ホモログは、PRG4タンパク質をコードする核酸(例えば配列番号:1、例えば図3参照)の対立遺伝子変異体、オーソログ、パラログ、アゴニスト、およびアンタゴニストを含む。
【0064】
本明細書で使用される、「オーソログ」という用語は、異なる種からであるが、種分化によって共通の祖先遺伝子から進化した2つの核酸を指す。通常、オーソログは同じかまたは類似の機能を有するペプチドをコードする。特に、本発明のオーソログは、一般に、任意の公知のPRG4タンパク質のアミノ酸配列(例えば配列番号:1)、そのアイソフォームまたは類似体の全部または一部と少なくとも80〜85%、より好ましくは85〜90%または90〜95%、最も好ましくは95%、96%、97%、98%、さらには99%の同一性、または100%の配列同一性を示し、これらのペプチドと類似の機能を示す。同じく本明細書で使用される、「パラログ」という用語は、ゲノム内の重複によって関連する2つの核酸を指す。パラログは通常異なる機能を有するが、これらの機能は関連し得る。
【0065】
2つのアミノ酸配列の配列同一性パーセントを決定するためには、配列を最適比較のために整列させる(例えば、一方のポリペプチドの配列内に、他方のポリペプチドまたは核酸との最適アラインメントのためにギャップを導入することができる)。次に対応するアミノ酸位置のアミノ酸残基を比較する。一方の配列内のある位置が他方の配列における対応する位置と同じアミノ酸によって占有されている場合、分子はその位置で同一である。同じタイプの比較を2つの核酸配列の間で行うことができる。2つの配列間の配列同一性パーセントは、配列によって共有される同一位置の数の関数である(すなわち、配列同一性パーセント=同一位置の数/位置の総数×100)。好ましくは、本発明に含まれる単離アミノ酸ホモログは、任意の公知のPRG4タンパク質のアミノ酸配列全体(例えば配列番号:1)と少なくとも約50〜60%、好ましくは少なくとも約60〜70%、より好ましくは少なくとも約70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%または90〜95%、最も好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一である。
【0066】
特定実施形態では、PRG4タンパク質をコードする単離核酸ホモログは、そのようなPRG4タンパク質のアミノ酸配列(例えば配列番号:1)をコードするヌクレオチド配列と少なくとも約40〜60%、好ましくは少なくとも約60〜70%、より好ましくは少なくとも約70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%または90〜95%、さらに一層好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0067】
2つの核酸またはペプチドの配列間の配列同一性パーセントの決定は当技術分野において周知である。例えば、2つの核酸またはペプチドの配列間の配列同一性パーセントを決定するためにVector NTI 6.0(PC)ソフトウエアパッケージ(InforMax,Bethesda,MD)が使用できる。この方法では、2つの核酸の同一性パーセントを決定するためにギャップ・オープン・ペナルティ15およびギャップ伸長ペナルティ6.66を使用する。2つのポリペプチドの同一性パーセントを決定するためにはギャップ・オープン・ペナルティ10およびギャップ伸長ペナルティ0.1を使用する。他のすべてのパラメータはデフォルト設定にする。多重アラインメント(Clustal Wアルゴリズム)に関しては、blosum62マトリックスでギャップ・オープン・ペナルティは10、ギャップ伸長ペナルティは0.05である。DNA配列をRNA配列に比較する場合の配列同一性の決定に関しては、チミジンヌクレオチドはウラシルヌクレオチドと等価であることが了解されるべきである。
【0068】
さらに、本明細書で使用されるPRG4タンパク質は、ストリンジェントな条件下でPRG4タンパク質をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるPRG4タンパク質を包含する。本明細書で使用される、「ハイブリダイゼーション」は、1またはそれ以上のポリヌクレオチドが反応して、ヌクレオチド残基の塩基間の水素結合によって安定化された複合体を形成する反応を含む。水素結合は、ワトソン−クリック塩基対合、フーグスティーン結合によって、または任意の他の配列特異的方式で起こり得る。複合体は、二重鎖構造を形成する2本鎖、多重鎖複合体を形成する3本またはそれ以上の鎖、1本の自己ハイブリダイズ鎖、またはこれらの任意の組合せを含み得る。ハイブリダイゼーション反応は、PCR反応の開始、またはリボザイムによるポリヌクレオチドの酵素的切断などの、より広範囲のプロセスにおける工程を構成し得る。
【0069】
ハイブリダイゼーション反応は種々のストリンジェント条件下で実施され得る。本発明は、本明細書で述べるPRG4タンパク質をコードするポリヌクレオチドに低ストリンジェントな条件下で、より好ましくはストリンジェントな条件下で、最も好ましくは高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドを含む。本明細書で使用される、「ストリンジェントな条件」という用語は、10×デンハート液、6×SSC、0.5%SDSおよび100mg/ml変性サケ精子DNA中60℃における一晩のハイブリダイゼーションを指す。ブロットを、3×SSC/0.1%SDS、次いでl×SSC/0.1%SDS、最後に0.1×SSC/0.1%SDS中にて62℃で連続的に各々30分間洗浄する。また本明細書で使用される場合、特定実施形態では、「ストリンジェントな条件」という語句は、65℃で6×SSC溶液中でのハイブリダイゼーションを指す。他の実施形態では、「高ストリンジェントな条件」は、10×デンハート液、6×SSC、0.5%SDSおよび100mg/ml変性サケ精子DNA中65℃における一晩のハイブリダイゼーションを指す。ブロットを、3×SSC/0.1%SDS、次いでl×SSC/0.1%SDS、最後に0.1×SSC/0.1%SDS中にて65℃で連続的に各々30分間洗浄する。核酸ハイブリダイゼーションのための方法は当技術分野において周知である。従って、本明細書で使用される核酸によってコードされるPRG4タンパク質は、ヒトPRG4タンパク質またはその特定アイソフォームもしくはホモログをコードするポリヌクレオチド配列(例えば配列番号:1)に少なくとも60%の相同性、好ましくは75%の相同性、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%、96%、97%、98%、99%の相同性を有する核酸を含む。
【0070】
さらに、本明細書で使用されるPRG4タンパク質はまた、キメラタンパク質または融合タンパク質であり得る。本明細書で使用される、「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」は、第二ポリペプチドに作動可能に連結された第一ポリペプチドを含む。キメラタンパク質は、場合により第一または第二ポリペプチドに作動可能に連結された第三、第四または第五または他のポリペプチドを含み得る。キメラタンパク質は、2またはそれ以上の異なるポリペプチドを含み得る。キメラタンパク質は、同じポリペプチドの複数のコピーを含み得る。キメラタンパク質はまた、ポリペプチドの1またはそれ以上の中に1またはそれ以上の突然変異を含み得る。キメラタンパク質を作製するための方法は当技術分野において周知である。本発明の特定実施形態では、キメラタンパク質は、PRG4タンパク質と他のPRG4タンパク質アイソフォームとのキメラである。
【0071】
本明細書で使用される、「単離」または「精製」タンパク質、ポリヌクレオチドまたは分子は、それらが天然に生じる環境から取り出されている、または該タンパク質、ポリヌクレオチドもしくは分子が由来する細胞もしくは組織からの他の夾雑タンパク質などの細胞物質を実質的に含まない、または化学合成された場合は化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まないことを意味する。「細胞物質を実質的に含まない」という語は、それが単離されたまたは組換え生産されたまたは合成された細胞の細胞成分から分離された試料を包含する。特定実施形態では、「細胞物質を実質的に含まない」という語は、約30%(乾燥重量比)未満の他のタンパク質(本明細書では「夾雑タンパク質」とも称される)、より好ましくは約20%未満、さらに一層好ましくは約10%未満、最も好ましくは約5%未満の他のタンパク質を有するPRG4タンパク質の試料を包含する。タンパク質またはポリヌクレオチドが組換えによって生産される場合、該タンパク質またはポリヌクレオチドも、好ましくは培地を実質的に含まない、すなわち、培地は対象タンパク質の試料の約20%未満、より好ましくは約10%未満、最も好ましくは約5%未満の容積を占める。
実施例
【実施例1】
【0072】
インビボでの膣境界潤滑欠損の治療
65歳の閉経後患者が、膣表面の刺激、排尿の際の灼熱感、性交疼痛症、性交後の間欠的な軽度の出血を訴えたため、定期的な膣分泌物を検査したところ、急性感染症を有する可能性は除外されたが、萎縮性膣炎を有すると判定された。特に、骨盤検査では、膣壁の外観が薄くて淡色であることが示されている。
【0073】
患者に、100μg/mLのPRG4および1μgの17β−エストラジオールの用量を与える週に1回の膣内PRG4/17β−エストラジオール坐薬を投与した。これは、典型的なエストラジオール療法よりもはるかに低い総濃度であるが、PRG4共輸送によって膣壁に直接送達される。年に1回の追跡調査来院の際の子宮内膜の組織病理学検査では、特定の場合には、陰唇および外陰部肥大、尿道および膣上皮の潮紅、ならびに/または症状の改善(例えば症状が残らない)が見られるであろう。
【実施例2】
【0074】
癌患者における膣境界潤滑欠損の治療
最近タモキシフェン化学療法を終えた60歳の閉経期乳癌患者は、小さな外陰部病変に加えて、膣上皮の炎症、発赤斑、点状出血、および脆弱性上昇を呈している。さらに、膣の超音波検査では、子宮内膜が幅約4mmと薄いことが明らかになる。トリコモナス、カンジダまたは他の細菌の証拠は認められない。パパニコラウスミアにより、無定形の好塩基性顆粒状デブリおよび炎症性滲出物のバックグラウンドに、拡大した核を有する未熟な傍基底扁平上皮細胞が示される。
【0075】
該患者に、200μg/mLの緩衝PRG4ゲルの1日用量を膣投与する。6ヶ月目の追跡調査時に、膣上皮の表在層および中間層からの扁平上皮細胞を明らかにするためにパパニコラウスミアを実施する。一部の場合には、最初の来院時と異なり、細胞の多くは豊富な細胞質と低い核/細胞質比を示す。特定の場合には、大部分の核が凝縮し、適切に角質化した桃色の細胞質の証拠が存在する。一部の場合には、患者は組織の弾性の改善と炎症の軽減を示す。特定の場合には、症状は完全に緩和されるか、または重症から許容される程度へと改善される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル、浸透圧平衡塩類水溶液、多相エマルション、または徐放性もしくは持続放出性装置に製剤された有効量および有効濃度の単離または精製PRG4を含有する膣境界潤滑を改善するための医薬組成物であって、単離または精製PRG4の有効量および有効濃度が膣境界潤滑を改善するために十分である医薬組成物。
【請求項2】
以下のもの、つまりアンドロゲンもしくはアンドロゲン類似体、選択的アンドロゲン受容体調節剤、選択的エストロゲン受容体調節剤、エストロゲンアンタゴニスト、アロマターゼ阻害剤、アンチプロテアーゼ、炎症性サイトカインアンタゴニスト、サイトカイン放出阻害剤、抗炎症性サイトカイン、抗炎症薬、NF−κB阻害剤、またはプロテアソーム阻害剤、ヒアルロン酸、中性もしくは極性脂質、脂肪酸、エストロゲンもしくはエストロゲン類似体、エストラジオール、プロゲステロン、卵胞刺激ホルモン、または黄体形成ホルモンから選択される治療薬をさらに含有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記治療薬が、アンドロゲンもしくはその類似体、17α−メチル−17β−ヒドロキシ−2−オキサ−5α−アンドロスタン−3−オン誘導体、テストステロン誘導体、4,5α−ジヒドロテストステロン誘導体、環A不飽和を含む17β−ヒドロキシ−5α−アンドロスタン誘導体、19−ノルテストステロン誘導体、窒素置換アンドロゲン、異常な構造特徴を有するアンドロゲン化合物を含むアンドロゲンの構造サブクラス、またはそれらの組合せである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記選択的アンドロゲン受容体調節剤がアリール−プロピオンアミド化合物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記選択的アンドロゲン受容体調節剤が、二環式ヒダントイン類似体、キノリン類似体、またはテトラヒドロキノリン類似体である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記治療薬が選択的エストロゲン受容体調節剤である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記治療薬がエストロゲンアンタゴニストである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記治療薬がアロマターゼ阻害剤である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記治療薬がアンチプロテアーゼである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記治療薬が炎症性サイトカインアンタゴニストである、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記炎症性サイトカインアンタゴニストが、抗TNFα抗体、可溶性TNFα受容体、およびIL−1受容体アンタゴニストから成る群より選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記治療薬がサイトカイン放出阻害剤である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記治療薬がNF−κB阻害剤である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記治療薬が抗炎症性サイトカインである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記治療薬が抗炎症薬である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記抗炎症薬が、シクロスポリンA、ならびにω3およびω6脂肪酸から成る群より選択される、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記治療薬がプロテアソーム阻害剤である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記治療薬が中性または極性脂質、ならびにそのような成分の組合せである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記治療薬がヒアルロン酸ナトリウムまたはヒアルロン酸である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項20】
組成物が10〜100,000μg/mLの濃度のヒアルロン酸ナトリウムまたはヒアルロン酸を含有する、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
組成物が500〜5,000μg/mLの濃度のヒアルロン酸ナトリウムまたはヒアルロン酸を含有する、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項22】
組成物が10〜10,000μg/mLの濃度のPRG4を含有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項23】
PRG4が50kDa〜400kDaの平均モル質量を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項24】
PRG4が、その潤滑性フラグメント、多量体またはホモログを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項25】
PRG4が、組換えPRG4タンパク質またはその機能的フラグメントである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項26】
PRG4が、精製された天然に生じるPRG4タンパク質である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項27】
アミノ酸、例えばL−アルギニン、シトルリンおよびアスパラギン酸などの天然酸化窒素前駆体のような酸化窒素をさらに含有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項28】
膣境界潤滑の低下を治療するまたは膣境界潤滑を改善する方法であって、それを必要とする被験者の膣表面に治療有効量の単離または精製PRG4を局所投与することを含む方法。
【請求項29】
単離または精製PRG4が請求項1〜27のいずれか一項に記載の医薬組成物中に存在する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
膣萎縮症、性交疼痛症、シェーグレン症候群、更年期障害、アンドロゲン欠損症、エストロゲン欠損症、エストロゲン補充療法、アレルギー、慢性炎症、閉経、早発閉経、化学療法、授乳、閉経前の卵巣の外科的切除、生殖器硬化性萎縮性苔癬、外陰部痛、細菌性膣炎、疱疹、カンジダ症、乾癬、接触皮膚炎、コンジローム、薬剤の副作用および加齢を含む、膣境界潤滑の低下に関連する症状を有する疾患を治療する方法であって、それを必要とする被験者の膣表面に請求項1〜27のいずれか一項に記載の医薬組成物の治療有効量を局所投与することを含む方法。
【請求項31】
避妊具に付着した有効量の単離または精製PRG4を含有する避妊具。
【請求項32】
有効量の単離または精製PRG4の局所投与で避妊具を補完する方法。
【請求項33】
有効量の単離または精製PRG4を膣表面、陰茎表面またはその組合せに局所投与することを含む、性交の間の潤滑を提供する方法。
【請求項34】
単離または精製PRG4が請求項1〜27のいずれか一項に記載の医薬組成物中に存在する、請求項31〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
請求項1〜27のいずれか一項に記載の医薬組成物を、それを必要とする患者の膣に適用することを含む、受胎を促進する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−515170(P2012−515170A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545542(P2011−545542)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/020929
【国際公開番号】WO2010/083239
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(511169841)シンギュラリス,インク. (1)
【出願人】(511169852)シェペンズ アイ リサーチ インスティテュート (2)
【Fターム(参考)】