説明

膨張床カラムおよび使い捨て可能なクロマトグラフィー

膨張床吸着クロマトグラフィーの分野において、制限されないが、特に使い捨て可能な膨張床クロマトグラフィーカラムに関する。分離されるべき少なくとも1つの成分を含む液体の上方流膨張床吸着クロマトグラフィーを実施する方法であり:カラムに含まれる静止相媒体に、入口を通って液体を供給し、変動し得る量のヘッドスペースの下の静止相媒体の膨張を生じさせること;静止相媒体により流体から少なくとも1つの成分を吸着させること;出口を通ってカラムから液体を回収すること;少なくとも入口を通る液体の流速の調節により静止相媒体の膨張を調節すること;ならびにカラムの外側の圧力に関してヘッドスペースにおける過剰圧力を、外側圧力+0.1bar以下に制限すること、を含む方法、が提供される。さらに、この方法を使用するための装置、特に膨張床クロマトグラフィーにおいて使用されるカラムが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張吸着(EBA)(expanded bed adsorption)システムに関する。それは、特に使い捨て可能なクロマトグラフィーカラムに関連するが、限定されない。
【背景技術】
【0002】
発酵液(fermentation broths)の精製は、それから生物学的製剤を抽出するための、進展中の分野である。特に、モノクローナル抗体の精製は、治療および診断剤として、その開発に重要さが増加している。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ発酵液または微生物発酵液から、マウス、ヒトまたはヒト化された、形態で製造されるのが通常である。従来、その液は選択的な可逆沈殿プロセスにより精製され、そのプロセスは所望のイミュノグロビンを沈殿させることを目的とするが、溶液中の他のタンパクはそのままにするものである。しかしながら、このプロセスは時間がかかり、低純度の抗体を産生し、望ましくないタンパクと沈殿剤を含む上清の廃棄の問題を創り出す。その結果、発酵液を精製するためのクロマトグラフィーの使用が開発されてきている。
【0003】
クロマトグラフィーは、互いに混和しない移動性相(mobile phase)および静止相(stationary phase)の使用を必要とし、それぞれは分離されるべき混合物の成分に対する異なる親和性を有する。2つの相に対して精製されるべき混合物の各成分の相対的親和性は、移動性相の流動の方向に、静止相を通る成分の移行速度を決定する。移動性および静止相の注意深い選定は、成分の移行速度が十分に異なり、各成分を静止相から分離して溶出させることを確かにすることにより、混合物中の成分の分離を可能にし得る。静止相は支持マトリックスであり得、成分に結合し得る官能基を有するリガンドが、それに取り付けられ得る。クロマトグラフィーを実施するために、2つの広い、通常の方法がある:静止相の充填床を用い、それを通って移動相は圧力の使用により強制される;または、膨張床吸着であり、そこでは移動相にかけられるは少なくとも大いに減少され、そして静止相の密度は、移動層の流速のある範囲で、安定な流動床を創り出すように選定される。
【0004】
モノクローナル抗体の単離のために、クロマトグラフィーの最も広く用いられる方法は、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーである。この方法は、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)に関連して使用され得、疎水性マトリックス(静止相)が効率的に抗体に結合するように、発酵液にリオトロピック塩を添加することが必要であり、つづいて固相から抗体を溶出するために減少した濃度のリオトロピック塩溶液を使用する。特に、リオトロピック塩の存在は抗体が消耗される原料の使用を妨げ得るので、リオトロピック塩の使用は廃棄の問題を生じさせる。あるいは、または付加的に、イオンクロマトグラフィーは、追加の精製段階として使用され得る。
【0005】
プロテインAクロマトグラフィーは、プロテインAセファロースカラム上で実行され得る。これらのカラムの静止相は、20回またはそれより多くまで使用可能であるが、再使用の前に水酸化ナトリウム溶液を用いて洗浄されなければならない。これは時間がかかり、精製装置の有意な休止時間(down-time)を必要とする。さらに、プロテインAは、約12を超えるpH値で不安定であり、したがって水酸化ナトリウムを用いる各洗浄サイクルは、吸着剤の操作寿命を短くする。充填床溶出法は、カラムを含む装置が、カラムを通して移動性相の必要な流れを創り出すように、適用される背圧に耐えることができることを要求する。これは静止相を含むように永続的な設置を必要とするのが通常である。カラムは一般的にステンレス鋼または高荷重に耐える(heavy duty)ガラスであり、強度、ならびに静止相およびカラムの繰り返し洗浄に要求される条件に耐性、の点から選ばれる。これらのカラムは処分されるのではなく、何回も再使用される。精製されるべき混合物中の、細胞および細胞片のような粒子は、静止相の詰まり(clogging)を避けるために、カラムに導入する前に、混合物から除去されなければならない。ろ過および遠心分離のような清浄工程は高価で、時間がかかり、生成物の有意な損失をもたらす。さらに、プロテインAリガンド自体も高価である。
【0006】
したがって、抗体および発酵液のもっと安価で、もっと効率的な精製方法を提供しようとする努力がなされてきている。
【0007】
プロテインA静止相に代わる静止相が提案されている。MBI Hypercel(登録商標)は商業的に入手し得る吸着剤であり、抗体との疎水性相互作用およびイオン相互作用の両方を含むと述べられる、メルカプト−ベンズイミダゾール−スルホン酸リガンドを含む。米国特許6,498,236号は、式M-SP1-X-A-SP2-Acidのリガンドを用いる抗体の精製法を記載し、ここでMはマトリックス骨格;SP1はスペーサー;XはO,SまたはNH;Aは単環もしくは二環の置換されていてもよい芳香族または複素環部分;SP2は任意のスペーサー;Acidは酸基である。WO97/10887は、タンパク様物質に対する、増加した選択性の疎水性リガンドを開示し、そこでリガンドの構造は少なくとも1つの環形成原子がNである複素環の実在(entity)を含む。WO03/024588は、疎水性およびイオン相互作用が可能な多型(multimodal)リガンドを開示する。
【0008】
一般的に使用される充填床カラムに代えて膨張床吸着を用いることが開示されている。膨張床吸着は静止相を通る移動性相の上向き流を用いて実行され得、そこでは静止相は安定な流動床を形成するために、移動性相よりも密であることが要求され、あるいは移動性相の下向きの移動性相を用いて実施され得、そこでは静止相は安定な流動床の形成のために移動性相よりも密ではないようにするべきである。静止相は、混合物から目的化合物を吸着すべきであり、目的化合物に対して親和性が低い移動性相を用いて、望ましくない化合物を洗浄除去し、ついで目的化合物はその(それらの)化合物に対し高い親和性を有する溶出液を用いてカラムから溶出され得る。溶出は流動床を用いて生じ得、または圧力を溶出液にかけることにより充填床様式で生じ得る。膨張床移動相を通る移動性相の最大流は、静止相が安定な膨張床を形成するように、使用される粒子の密度および直径により決定される。膨張床吸着システムに使用される、調節された密度と直径を有する静止相媒体粒子は、多孔質複合材料を用いて製造され得、その孔径、粒径および密度が選択され得、所望ならば静止相を用いて精製されるべき化合物に対し親和性を有する被覆材で被覆され得る。この様な媒体の例は、Pharmacia Biotech(スウェーデン)の「Streamline matrix」およびUpFront Chromatography A/S (デンマーク)の「Front Matrix」であり、それらはともに アガロース球の内側の1つ以上の粒子からなる。WO00/57982は膨張床吸着における使用のための静止相を開示し、そこでは粒子の密度は2.5g/mLであり、その平均粒径は5〜75μm、そして粒子の芯は少なくとも3.0g/mLを有する非多孔質材料である。適切な芯材料は鋼ビーズを含む。芯の被覆は荷電し得る基または親和性リガンドを有するポリマーベースマトリックスであり得る。
精製すべき混合物および移動性相の、静止相への導入は、流動床の安定な形成を可能にするが、従来技術において向けられていた課題である。その混合物および/または移動性相の導入による静止相でのチャンネル形成は、床の膨張の安定性を低下させ(たとえば逆混合および望ましくない乱流による)、そして分離効率を低下させることが知られている。この課題は、使用されるカラムの直径とともに増大し、したがって特に商業的規模の精製を意図されたカラムで激しい。WO99/65586およびWO01/85329は、混合物および/または移動性相がカラムに導入される分配器(distributor)を設けることにより、この課題を解決しようとする。WO01/85329において、その分配器は多数の出口を含み、それを通って液体はカラムに達するように進む。上昇流カラムの場合に、分配器はカラムの基部に設けられ、出口は、カラムに入る液体流から生じる静止相での乱流を最小とするために、カラムの底部方向に向けられるのが好ましい(すなわち、移動性相の移動方向に反対の方向)。分配器は、カラムの底部を越えて液体の分配を確実にするために十分速く回転され、しかし静止相で形成される「撹拌帯域」を最小にするために十分にゆっくりと撹拌され、そこでは安定な膨張が達成され得ない。非回転分配器の使用は、静止相にチャンネル形成、したがって比較的安定でない膨張を導く、ことは例に示される。WO99/65586において、流体の分配は、カラムの底部で静止相の磁気撹拌を用いて達成される。さらに、撹拌帯域の高さを最小にするのが好適である。
【0009】
精製されるべき混合物中の粒子および不溶物によるカラムの部分的詰まりの課題は、従来技術において取り組まれてきた。WO2006/001867において、Pharmaciaにより開発され、商標Streamlineで販売されているシステムが検討されている。カラム底部で流動分配器プレートおよび静止相媒体の間に約20μmの孔径を有するスクリーンの設置することは、細胞および細胞破片の通過を許すが、静止相媒体がスクリーンから流動分配器プレートを通過するのを妨げると述べられている。その出願では、そのような配置は、ケーキブロックとして知られる、スクリーン入口の孔を塞ぐ粘着層を形成する粒子の固まり(clumps)の形成は防止しないと述べられている。WO2006/001867により提案されている、この課題の解決は、スクリーン入口の下のカラムの底部に入口および出口を用いることであり、その結果、流体の流れは「ケーキ」を洗い流すようにスクリーン入口底部を越えていく流れに循環され得る。あるいは、脈流またはカラムの振動の使用は、スクリーン入口から詰まりを除去するように提案される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許6,498,236号
【特許文献2】WO97/10887
【特許文献3】WO03/024588
【特許文献4】WO00/57982
【特許文献5】WO99/65586
【特許文献6】WO01/85329は
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように、広く使用されているプロテインAカラムを清浄にし、その清浄さを確かめる必要性は時間がかかる不利を有しており、有意の時間を要し、その間に精製装置は使用され得ない。抗体の製造のための全体プロセスは、単一使用の振動(rocking)タンクにおいて実行されるが、発酵段階、単一使用フィルターとろ過による清澄、つづいて上述の生成物を獲得するクロマトグラフィー段階、および不純物を除去するための任意に1つまたは数個のクロマトグラフィーによる精製段階、つづいて使い捨て可能な膜を用いて実行される精製された生成物の膜ろ過である。したがって、単一使用の使い捨て可能な装置を用いて実行されない、操作の唯一の段階はクロマトグラフィー段階であることは明らかである。WO99/65586は、そこに記載されているカラムの使い捨て可能な態様を提供することが望ましいことを開示する。これらのカラムは機械的駆動撹拌ブレードまたは磁気撹拌棒を含む。
【0012】
本発明者らは、使い捨て可能なカラムの使用は、システムの最小限の休止時間で使用した後に、交換され得る無菌カラムの供給を可能にすることがわかった。しかし、入口の上流に位置されt単一ポンプを用いて移動性相にカラムを通過させる通常の方法は、カラムのヘッドスペース(すなわち、移動相の上方で、その頂部の下方であるカラム空間)に圧力を創出し、その圧力は静止相媒体を通過した後に移動性相に出口を通過させるのに必要であり、したがって、WO99/65586に記載されているカラムは、このような圧力に安全に耐えることができなければならない。移動性相を出口に動かすように創り出される圧力に加えて、カラムは出口の意図しないブロック(たとえば閉じられたバルブ)に対して保護するために入口ポンプにより供給される最大圧力と評価される圧力であること必要とし、その間、入口ポンプはなお作動している。このようなポンプは設置に高価であり、輸送に重く、したがって使用者に高コストのために使い捨て用途に適用されることは少ない。カラムの圧力評価の必要性を無視しない空気ベントは、WO99/65586にカラムの任意の特徴として開示され、そして、空気ベントは、(a)静止相が膨張し、移動性相が出口を通って出ないように、安定な膨張床を確立する間、ヘッドスペースに負圧を与えるために;ならびに(b)安定な膨張床の後に吸着相が形成される間、移動性相が出口を通って出るのを助けるようにヘッドスペースに正圧をあたえるために、使用される。したがって、WO99/65586におけるカラムは、たとえカラムが充填床溶出よりも膨張床溶出のために使用されるつもりであっても、ヘッドスペースに加えられる負圧と正圧に耐えることができなければならないことは明らかである。
【0013】
もし最小限の背圧を必要とする膨張床吸着システムがクロマトグラフィー段階で用いられても、加圧された装置のための抑制(containment)を設けることは必要ではなく、カラムは上昇圧力に耐えることができる必要のない、軽く、使い捨て可能な材料から作られていてもよいこと、を本発明者は認識した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、第1の態様において、本発明は分離されるべき少なくとも1つの成分を含む液体の上方流膨張床吸着クロマトグラフィーを実施する方法を提供し:カラムに含まれる静止相媒体に、入口を通って液体を供給し、変動し得る量のヘッドスペースの下の静止相媒体の膨張を生じさせること;静止相媒体により流体から少なくとも1つの成分を吸着させること;出口を通ってカラムから液体を回収すること;少なくとも入口を通る液体の流速の調節により静止相媒体の膨張を調節すること;ならびにカラムの外側の圧力に関してヘッドスペースにおける過剰圧力を、外側圧力+0.1bar以下に制限すること、を含む。
好ましくは、過剰圧力は0.08bar以下、もっと好ましくは、0.05bar以下、たとえば0.01bar以下、または0.005bar以下である。
第2の態様において、本発明は、第1の態様に関連して用いられる装置を提供する。
第3の態様において、本発明は、第1の態様の方法および/または第2の態様の装置に関連して用いられるカラムを提供する。この態様によるカラムは:カラムへの液体の通路のための入口を含む下方部分;液体のための出口を含む上方部分;ならびにカラムに含まれる静止相媒体からなり、さらにカラムの上方部分はカラムの内部と外部の間に流体の接続を与えるベントを含む。
第4の態様において、本発明は、膨張床クロマトグラフィーで用いられるカラムを提供し:カラムへの液体の通路のための入口を含む下方部分;液体のための出口を含む上方部分;ならびにカラムに含まれる静止相媒体からなり、その入口は静止相媒体の動かされる撹拌には適合されない、を含む。
第5の態様において、本発明は、膨張床クロマトグラフィーを実施するための装置を提供し、本発明の第4の態様のカラムを含む。好ましくは、その装置は少なくともカラム入口上流の第1ポンプおよびカラム出口下流の第2ポンプをさらに含む。
第6の態様において、本発明は、分離すべき少なくとも1つの成分を含む液体の膨張床クロマトグラフィーを実施する方法を提供し:カラムに含まれる静止相媒体に、入口上流の第1ポンプにより入口を通って液体を供給し、変動し得る量のヘッドスペースの下の静止相媒体の膨張を生じさせること;静止相媒体により流体から少なくとも1つの成分を吸着させること;ならびに出口下流の第2ポンプにより出口を通ってカラムから液体を回収すること、からなる。好適には、その方法は、本発明の第4の態様によるカラムを用いて実施される。
【0015】
以下に述べる好適な特徴は、本発明のすべての態様に適用し得、いかなる適切な方法でも組み合わせ得る。
適切には、ベントは保護フィルター、適切にはマイクロフィルター、を含み得、そしてフィルターは汚染物がカラムに入るのを防止し、および/または微生物がカラムを出、または入るのを防止する。
好適には、ベントはカラムにおける単純な開口である。あるいは、ベントは圧力開放バルブであってもよい。あるいは、ベントはカラムの外側圧力より低いヘッドスペースにおける圧力を保持するための手段を含み得る。
出口は管の形態であってもよい。管は移動可能であるので、管の上流端はカラム内の選定された位置に設けられ得る。たとえば、管の上流端はカラム内の移動性相の液面より下方であるか、静止相の高さより上方に位置される。適切には、このような位置取りは、管の上流端近くの、浮力のあるサポートの使用により達成され得、このサポートは移動性相の表面に浮き、移動性相の表面で、またはその下方で、管の上流端の位置を維持する。あるいは、このような位置は電気もしくは空気アクチュエーターのような機械的手段により達成され得る。好ましくは、電気もしくは空気リニアアクチュエーターは、カラム頂部の位置に環状シールされた開口により、上下に出口管を動かすためにカラムの外側に設けられる。好ましくは、1つの統合ユニットとして出口管を備える。あるいは、カラムは2つの部分、シールされたカラムおよび出口管、を備え、それらはカラム頂部のシールされた開口を通して管の挿入により使用される前に組み立てられる。いずれの場合も、出口管は、ついでポンプ管に接続され、カラムの最終的な使用に続き、カラムと出口管はカラムスタンド、アクチュエーターおよびポンプ(これらは生成物との接触はない)から分離され、そして処分される。
【0016】
適切には、カラムは入口、出口および、ベントが含まれるときは、シールされ閉じられたベント、を備え得る。媒体の無菌性は製造者により検討され、使用者に保証され得るからである。これは、カラムが無菌静止相媒体で予備充填されるときに、特に好適である。入口、出口およびベント上のシールは、カラムの使用前に破壊される。適切には、入口、出口およびベントは、再びシールされ得る。この特徴は、カラムが使い捨てを意図されるときに特に好適である。したがって、シールされたカラムは無菌静止相含むように用意され、シールは使用前に破壊され、そして使用後にカラムは、好ましくは静止相媒体を含むユニット全体の処分前に再びシールされ得る。好適には、カラムは懸濁相ならびに静止相媒体を含み得る。好適には、その懸濁相は、使用前にカラムの輸送および/または貯蔵の間に静止相媒体の凝集を防止し得る物質を含む。これは、カラムが使用されるときに、膨張床の形成を容易にする利点がある。適切な物質は、グリセロール、ショ糖、デキストラン、PEG,PVPおよび洗浄剤(中性、負に帯電、正に帯電、または両性イオン)を含む。
懸濁相は、凝集防止物質の2つ以上の組み合わせを含み得る。適切には、懸濁相における物質の濃度は、低分子量に対して、少なくとも1%、好ましくは5%、好ましくは少なくとも10%、たとえば少なくとも30%、または50%;ポリマーに対して、少なくとも0.1%、たとえば少なくとも0.5%、1%、2%、5%または10%;そして洗浄剤に対して、少なくとも0.01%、たとえば少なくとも0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、または5%である。
【0017】
適切には、入口は静止相の駆動された撹拌を与えるために適用される、公知の種類の入口であってもよい。しかし、駆動された撹拌を与えない入口は、ある環境に、特にカラムが一回の使用および使い捨て可能に意図される場合に、好適であり得る。これは、カラム製造の複雑さとコストを最小にし、ハンドリング特性を向上するからである。単一回使用のために用意されるカラムは、できるかぎり簡単に必要なラインに位置され接続され得ることが必要である。さらに、カラムはハンドリング上の制限なしに輸送に耐えることができなければならない。
【0018】
十分な密度を有する静止相媒体を用いるとき、静止相でチャンネルおよび乱流の形成を防止するために静止相媒体を撹拌することは不要であることがわかった。さらに、静止相媒体を支持するためのスクリーン入口の設置は不要であり、このようなスクリーンの詰まりの問題を除去するものである。膨張床吸着クロマトグラフィーに要求される装置への、このような簡素化は、使い捨て可能な装置を、上述の理由のために実施可能にし得る。
【0019】
したがって、本発明者は、静止相の間に移動性相を均一に分配する駆動された撹拌を使用しないで、安定な膨張床を驚くべきことに提供する入口を発明した。このような入口は、本発明の第3の態様のベント付きカラムに関連して、ならびに本発明の第1および第2の態様の方法および装置において使用され得る。しかし、このような入口には、本発明の第4の態様の入口のような、孔を開けられていないカラム、ならびに膨張床クロマトグラフィーの方法、たとえば本発明の第6の態様のような、孔を開けられていないカラムを用いる方法においても使用され得ると当業者により認識され得る。
【0020】
このような入口は、開放端管として形成され得る。管の開放端は、そこからの液体の流れはいかなる所望の方向、たとえば水平に、垂直に上方に、または垂直に下方に、設けられ得る。しかし、好適には、入口は少なくとも1つの開口を有する液体分配器で終わる入口導管を含む。好ましくは、少なくとも1つの開口は水平もしくは下方に傾斜した方向、すなわちその水平下方に0度より大きく、カラムの下方端の方向に向けられている。もっと好適には、その少なくとも1つの開口は、水平下方に少なくとも45度、たとえば水平下方に90度、向けられている。適切には、その少なくとも1つの開口は、実質的に円形の孔の形状であり得る。あるいはその開口は細長い小さな孔(slot)の形状であってもよい。適切には、少なくとも1つのドーム状または円錐状のカバー(cowl)が入口の上方に設けられていてもよく、カラムの上方端に向けられた頂点を有する。そのようなカバーは部分的に入口を囲んでいてもよい。適切には、水平方向のバッフル表面は入口の上方または入口と実質的に同じ高さに設けられていてもよく、そのような表面はカバーの底部を形成し得る。
【0021】
あるいは、入口は、液体の分岐した流れを創り出す手段を含んでいてもよい、少なくとも1つの管からなっていてもよい。適切には、このような分岐流は、流体の実質的に円錐状の分配を形成し得、そのような円錐状の分配は60度のような、少なくとも45度の半角を有する。適切には、入口は少なくとも1つのノズルを含む。適切には、管は管壁を横断し、内面であるプレートを含み得、そのプレートは液体のらせん流を創り出すように配置されている。適切には、そのようなプレートは入口を通って静止相媒体の通路を妨げるように適合され得る。適切には、そのような管は、カラムの内部下方端がカラムの下方端の方向に半径を減少するカップを形成する、カラムに関連して使用され得る。要求される内部形状にカラムを成形することにより、またはカラムの下方部分への適切な形状のインサートを差し込むことにより、そのような形状が形成され得る。いくつかの管を含む入口の場合には、カラムの下方部分の内部表面は、各管に集中された、減少する半径のカップを与えるように形成されるのが好適である。
【0022】
あるいは、入口は、カラムを越えて伸び、かつ少なくとも1つの開口をその中に備える、少なくとも1つの管を含み得る。適切には、少なくとも1つの開口は、水平にまたは下向きに面しており、たとえば水平に少なくとも0°、たとえば水平に45°、好ましくは水平に90°である。適切には、少なくとも1つの開口は、そこから液体の分岐流を供給するように適合され得る。適切には、入口は、少なくとも1つの管に液体を接続する、中心部の空チャンバーを含む。
【0023】
好適には、少なくとも1つの開口の大きさは、汚染物(たとえば、処理されるべき液体に含まれる粒子および不溶物)の大きさに比べて大きい。しかし、少なくとも1つの開口は、所定の流速で意図された流動分布を与えるのになお十分に小さくなければならない。
【0024】
好適には、少なくとも1つの開口は、最小大きさが0.05mm、たとえば少なくとも0.1mm、および最大大きさ2mm、たとえば最大大きさ1mm、または最大大きさ0.75mmである。
【0025】
カラムの底部を通る横方向の液体流れはないのが好ましい。入口の上方に開口プレートが備えられていないのが好ましい。
【0026】
上述の流動分布デバイスについて、チャンネル形成なしに、意図された流動分布を得るために、EBAカラムに適用される線流速は少なくとも3cm/分、たとえば少なくとも4cm/分、少なくとも5cm/分、すなわち6,7,8,9もしくは10cm/分である。
【0027】
適切には、静止相媒体は少なくとも1.5g/mLの密度を有し、たとえば少なくとも1.8g/mL、たとえば2.0g/mLである。特に好ましくは、静止相媒体は2.5〜4.0g/mLの密度を有する。好ましくは、静止相媒体は20〜200μmの平均粒径、もっと好ましくは40〜160μmの範囲、なおもっと好ましくは60〜120μmの範囲、さらには70〜110μmの範囲、さらにもっと好ましくは80〜100μmの範囲である。
【0028】
膨張床カラムに適用される原材料が、高い濃度の全細胞または細胞片を含む粗発酵液であるとき、操作時に許容し得る床膨張を生じさせるとともに高密度を有する静止相媒体を使用するのが特に有利である。したがって、原料が5%vol/volを超える細胞および/または細胞片、たとえば10%vol/vol超、たとえば15%vol/vol超、たとえば20%vol/vol超、たとえば25%vol/vol超、を含むとき、静止相媒体の密度は少なくとも2.8g/mL、たとえば少なくとも3.0g/mL、たとえば少なくとも3.5g/mL、たとえば少なくとも4.0g/mL、たとえば少なくとも4.5g/mLであり、そして平均粒径サイズは50〜110μmの範囲、たとえば70〜90μmである。
【0029】
好ましくは、静止相媒体は鋼鉄ビーズもしくは粒子、または炭化ケイ素ビーズもしくは粒子である。
【0030】
流速、粒子サイズおよび粒子の密度は、流動床の膨張にすべて影響し、カラム内に粒子を保持するように膨張の程度を調節することが重要である。膨張の程度はH/HOとして決定され得、ここでHOは充填床モードにおける床高さであり、Hは膨張モードにおける床高さである。
【0031】
好ましくは、静止相媒体の使用での膨張H/HOの程度は3.0〜1.2の範囲、たとえば2.5〜1.3、2.2〜1.4または2.0〜1.5である。好ましくは、H/HOの最大値は3.0、もっと好ましくは2.5、たとえば最大2.2、2.0、1.8、または1.6である。好ましくは、膨張の程度は少なくとも1.2、たとえば少なくとも1.3、たとえば少なくとも1.4、たとえば少なくとも1.5である。
【0032】
好ましくは、カラムが保持するように適合される最大圧力は0.35atmであり、たとえば最大0.30atm、0.25atm、0.20atm、0.15atm、0.10atm、0.05atmである。
【0033】
EBAカラムは好ましくは低コストのプラスチックス材料から製造され得、好ましくは透明または半透明のプラスチックス材料である。好ましくは、プラスチックス材料は、毒性化合物の最小の漏れで医薬生成物の製造に用いる、安全性の要求にさらに合致する。適切なプラスチックス材料の例は、ポリプロピレン、ポリエチレン、TPX(メチルペンテンコポリマー)、ポリカーボネート、プレキシガラス(plexi-glass)およびPVCである。好ましくは、カラムは射出成形または押出しで製造され得る。
【0034】
いくつかの状況下で、EBAカラムはガラスから製造するのが好適であり得る。
【0035】
適切には、本発明の第3または第4の態様によるEBAカラムは、2つのポンプに接続して供給され得、1つは入口の上流に位置され、1つは出口の下流に位置される。
【0036】
クロマトグラフカラムの分離効率は、所定のカラムにおける理論段数Nの用語で表現され、充填床の1mあたりの理論段数N/nとして標準化される。その数字が大きければ大きいほど、カラムが持つクロマトグラフ分離効率は良くなる。
【0037】
膨張床カラムに関して、理論段数の数は滞留時間分布試験(ハンドブック「Expanded Bed Adsorption」14〜16頁、Edition AA, ISBN 91-630-5519-8, Amersham Pharmacia Biotech, スウェーデン )により決定され得、それはトレーサー刺激法であり、膨張床における長軸方向混合(分散)の程度を評価するのに用いられ得る。高理論段数は長軸方向混合(または望ましくない乱流およびチャンネル形成)の低い度合い、それによる高い分離効率の度合い、を示す。さらに、上記ハンドブックに記載されるように、もし膨張床カラムがカラム中の理論段数N=25〜30または沈降した吸着剤の1mあたりのN/m=170〜200段、を有するならば、単純な結合および放出(捕捉および放出)を含むいくつかの適用について、N/m=170〜200の数で示されるような高い分離効率を有する必要はなく、そこでは理論段数50〜75N/mを有するカラムを作用させるので十分であり得る場合である。
【0038】
充填床カラムについて、流速が増加するとき、理論段数および分布効率が減少することは一般的に知られており、このことは、線流速が吸着剤ビーズの終端沈降速度(terminal settling velocity)に近づくとき、または物質移動運動学(mass transfer kinetics)が制限因子になるときには、膨張床カラムについても予測されよう。
【0039】
驚くべきことに、本発明によるカラム入口が、非常に高密度の吸着剤ビーズを含む膨張床において使用されるとき、理論段数は高くとどまり、非常に幅広い範囲の流速内で(タンパクおよび他のバイオ分子を高生産性で製造するのに特に適している)、流速の増加とともに理論段数はなお増加することを見出した。
【0040】
本発明によるカラム入口、吸着剤密度、粒径および高流速の特定の組み合わせは、従来法と異なり、いくつかの重要な課題を同時に達成する、非常に魅力的な膨張床システムをもたらすことを見出した。特に、カラムにおける過剰圧力の回避を含む、本発明の組み合わされた特徴は、低コスト材料から製造されるシール可能なカラムにおいて、高流速で(すなわち吸着剤の単位体積あたりの高生産性)、高い分離効率(高理論段数)を有する膨張床カラムの製造と使用を可能にする。
【0041】
したがって、線流速少なくとも5cm/分、たとえば少なくとも6cm/分、7,8,9,10または15cm/分で試験されるとき、理論段数少なくとも25、たとえば少なくとも50、75、100、125、150または200を有する、本発明による膨張床カラムを使用することは特に好適である。
【0042】
同様に、線流速少なくとも5cm/分、たとえば少なくとも6cm/分、7,8,9,10または15cm/分で試験されるとき、理論段数少なくとも50N/n、たとえば少なくとも75、100、125、150、175または200N/nを有する、沈降吸着剤1mあたりの理論段数を有する、本発明による膨張床カラムを使用することは特に好適である。
【0043】
好ましくは、カラム入口が静止相媒体の駆動撹拌に適用されないとき、本発明による方法においては、少なくとも2.5g/mLの密度、たとえば少なくとも3.0g/mL、そして少なくとも5cm/分の入口を通る液体の流速、たとえば少なくとも7.5もしくは少なくとも10cm/分、が用いられる。
【0044】
好ましくは、本発明の第2または第4の態様による装置は、少なくとも入口上流の第1ポンプおよび出口下流の第2ポンプを含む。好ましくは、ポンプはぺリスタルチック(ぜん動)ポンプである。
【0045】
入口上流の第1ポンプおよび出口下流の第2ポンプの使用は、ベントのある、またはベントのないカラムに関して、そしてベントのある、またはベントのないカラムを使用して膨張床吸着を実施する方法において、用いられ得ると理解されよう。
【0046】
好適には、装置は液レベル用のモニターおよび/またはカラム中の静止相媒体のレベル用のモニターをさらに含む。適切には、モニターは超音波モニターまたは光学的モニターであり得る。好適には、そのようなモニターは超音波モニターである。
【0047】
適切には、装置は、出口管の上流端の位置を調節するためのコントローラー(適切にはリニアアクチュエーターの形態である)をさらに含み、出口の形状は前述のとおりに用いられる。カラム内側に出口管を位置させるアクチュエーターの調節は、液レベルおよび/またはカラム中の静止相媒体のレベルを測定するモニターに結合され得るのが好適である。
【0048】
適切には、装置はさらに発酵液を含み得る。適切には、装置は消費された発酵液のための容器を含み得る。適切には、装置は溶出物源をさらに含み得る。適切には、装置は発酵液の少なくとも1成分のさらなる精製のための手段、たとえばメンブレンフィルター装置をさらに含み得る。
【0049】
好適には、静止相媒体の膨張の調節は、液体をカラムに送るための、入口上流の第1ポンプの使用により達成される。
【0050】
好適には、膨張された静止相媒体上方の液体レベルはカラムから液体を送るための出口下流の第2ポンプにより調節される。
【0051】
好適には、静止相媒体の膨張は液体レベルおよび/またはカラム内の静止相媒体レベルを超音波モニタリングすることにより決定される。このようなモニタリング法はこの分野で知られている。
【0052】
好適には、過剰圧力の制限はベントを用いて達成される。
【0053】
好適には、出口は適用される管を含み、その管の上流端はカラム内で選定される位置に移動され得、さらに方法はカラム内の所望の位置に管の上流端を移動させる段階を含む。
【0054】
好適には、本発明の第1の態様による方法は、さらに次の段階を含む:
シールされた入口を含む下方部分とシールされた出口を含む上方部分とを有するカラムに含まれる静止相媒体を用意すること、シールされていないとき、それらがカラムの内部と外部の間の流体接続を与えること;ならびに液体を静止相媒体に供給する前に入口、出口およびベントからシールを除去すること。
【0055】
好適には、本発明の第6の態様による方法は、さらに次の段階を含む:
シールされた入口を含む下方部分とシールされた出口およびシールされたベントを含む上方部分とを有するカラムに含まれる静止相媒体を用意すること、シールされていないとき、それらがカラムの内部と外部の間の流体接続を与えること;ならびに液体を静止相媒体に供給する前に入口および出口からシールを除去すること。
このことは、カラムがベンダーから予備充填されて供給されることを可能にし、静止相媒体のみならず、上述のように懸濁相、たとえば凝集阻害剤を含む、も含むであろう。
【0056】
好ましくは、本発明の第1または第6態様による方法は、少なくとも1つの成分の吸着を可能にした後に、さらに次の段階を含む:
静止相媒体が少なくとも1成分を溶出させること;そして吸着および溶出段階の少なくとも1つの反復の後に、カラムを処分すること、好ましくはカラムは、カラムが最初に使用されたのと同一の静止相媒体をなお含む。
【0057】
しかし、適切には、本発明方法は、静止相媒体を清浄化すること、静止相媒体の清浄度を検査すること、および少なくとも1つの成分の溶出後に膨張床装置を再使用すること、の段階を含み得る。好ましくは、清浄化および再使用は撹拌段階なしで行われる。しかし、清浄度の検査は、カラムおよびその接続の内側の異なる部位で細菌テストのための検査用標本(swabs)を採取することにより、および/または吸着剤サンプルを採取し、細菌混入に関して試験し、および/またはビーズ表面の異物の存在を試験することにより、実施され得る。
【0058】
好適には、静止相媒体が少なくとも1つの成分を溶出した後に、そしてカラムの廃棄の前に、方法は、カラムのベント(もし適用可能であれば)、出口および入口を再シールする、段階を含む。
【0059】
好適には、液体の少なくとも1つの成分はタンパクである。
【0060】
好適には、チャンバーの内容物は、液体、溶出物または入口を通る他の液体の導入、以外の手段により撹拌されない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の用いるカラムの模式図。
【図2】本発明の代替的な液体供給手段を示す図。
【図3】本発明の代替的な液体供給手段を示す図。
【図4】本発明の代替的な液体供給手段を示す図。
【図5】本発明の代替的な液体供給手段を示す図。
【図6】本発明の代替的な液体供給手段を示す図。
【図7】本発明の代替的な液体供給手段を示す図。
【図8】本発明の代替的な液体供給手段を示す図。
【図9】本発明の代替的な液体供給手段を示す図。
【図10】本発明の代替的な液体供給手段を示す図。
【図11】本発明の代替的な液体供給手段を示す図。
【図12】本発明の代替的な液体供給手段を示す図。
【図13】本発明装置の模式図。
【図14】例1の実験結果を示す図。
【図15】例2の実験結果を示す図。
【図16】例3の実験結果を示す図。
【図17】例4の実験結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1に関して、カラム10は、静止相媒体2を含む。それは、前述のように従来の態様で、プラスチックス材料またはガラスで形成され得る。たとえば、カラム10はポリエチレンのようなプラスチックス材料から成形され得る。この材料は、強くて、軽くて、使い捨て可能であり、安価であるので、カラム10が単一の使用を予定されているときに特に好適である。カラム10は、実質的に
円筒形状であるのが通常であり、下方部分4に下端を、そして上方部分8に上端、を有する。下方部分4は入口20を備える。入口20は、バルブ6または他の適切なシール手段を備え、静止相2または輸送中にそれを囲み得る液体の流出を防止し、そしてカラムが使用のために必要な装置に接続されるときに開けられ得る。同様に、上方部分8を通って、出口14とベント12が設けられ、その両方または一方はバルブ6または他の適切なシール手段を備えていてもよい。好適な態様において、カラム10は単一用途のために意図される単一シールユニットとして供給され得る。好ましくは、カラムの上方閉鎖はカラムに損傷を生じさせることなく取り外し可能ではなく、カラムの再使用または静止相媒体の取替えを防止する。しかし、上方部分8は、静止相が取替えられ得るように、および/または静止相が洗浄され得るように、取り外し可能であってもよく、カラム10は再使用され得る。
【0063】
ベント12の好適な形状は、カラムの頂部の簡単な開口であり、下記のような保護フィルターを含んでいてもよい。しかし、ベントはバネまたは重力バイアスのボールバルブまたはニードルバルブのような、圧力開放バルブの形態でもよく、そこではヘッドスペースの圧力はバルブがヘッドスペースの圧力を開放するのに適用される圧力に依存する、カラム外側の圧力を超える、選ばれた量であり、あるいはベントはチャンバー外側の圧力より低い圧力にヘッドスペースを維持するポンプの形態をとり得る。
【0064】
適切には、静止相媒体はベントまたは出口により少量を除去することにより試料採取され得る。しかし、カラムが限定された使用を意図され、続いて廃棄さるときは静止相媒体の試料採取が必要ということはない。
【0065】
図2Aは、カラムを上方から示す図2Cにおける線X-Xに沿って切り取られた、カラム10の断面図である。図2Bは斜視図における断面2Aを示す。図3〜12A〜Cは同様に配置される。
【0066】
図2は、図1に示されるカラム10の下部を示す。入口20は、垂直表面における小さな開口30を有する、閉じられた管としてここに示される。入口20の閉鎖端は円錐形状を有するように示される;他の閉鎖端形状も置換され得ることが当業者には理解され得るであろう。開口30は、好ましくは粒子または処理される液体中に存在する他の不溶性物質の大きさよりも大きいのが好ましい。これはカラム10に液体を導入する前に予備的なろ過または清澄化段階を要求しない利点があり、精製プロセスを簡素化し、短縮する。さらに、開口30は下向きの角度を有するのが好ましく、その結果、入口20を囲む静止相粒子(図示せず)によりブロックされず、さらに噴出を制限することにより、静止相中の液体の噴出により生成される乱流をカラム10の底部に向ける。さらに、これは静止相媒体が開口を塞ぎ、または開口30を通って入口20を通過するという問題を生じさせないで、流体中の予期された大きさの粒子よりも有意に大きい開口30を可能にする。このように、液体中の粒子または静止相媒体により生じる開口30の詰まりの可能性は最小にされる。
【0067】
図3は入口20の代替的な態様を示し、そこでは開口30は溝の形状である。さらに開口の大きさは液体中の不溶性物質に比べて大きいのが好ましく、そして開口は好ましくは下向きである。
【0068】
図4および5は、図2の入口を示すが、さらに円錐カバー40を有する。円錐カバー40は、開口30を出た後に、下向きの液をカラム10の底部に向けるように作用し、液体が円錐の基部まわりを均一に流れ、カラムの頂部に静止相を上昇させることを可能にする。さらに、静止相2の乱流およびチャンネル形成は、開口30の近くの静止相部分が円錐カバー40の水平(下方)隔壁表面により静止相の大部分が分離されるので、最小化される。
【0069】
カバー40は入口20を形成する管のエンドキャップとして作用し得、そしてカバーは開口30を囲み得(図4に示されるように)、または開口の上方に位置され得る(図5に示されるように)ことが図面からわかる。
【0070】
図6は、図3に示される入口とともに図5に示されるように円錐カバー40を示す。
【0071】
図7は、下方端でカラム10の容積、したがって入口20を囲む静止相の容積、を減少させる、円錐インサート50とともに図2の入口を示す。円錐体積で創り出される静止相乱流は、液体と接触しない静止相の存在による、カラムの「デッドスペース」を形成し、膨張床の部分を形成しない可能性を低下させる。インサート50の使用により達成されるカラム10の下方部分の内部形状は、内部表面に要求テーパー形状を有する、カラム下方部分を形成することによっても達成され得ることが期待される。
【0072】
図8は、円錐インサート50とともに図3の入口を示す。
【0073】
図9は、入口20の代替的態様を示し、そこでは開口30は拡散、分岐した噴出を供給するように適合されたノズルの形態である。適切には液体噴出により記載されるコーンの半角は少なくとも45°、たとえば60°であり得る。好適には、そのようなノズルは、図に示される円錐インサート50とともに使用され、カラム中のデッドスペースが最小化される。円錐インサート50の傾斜面により記載される半角は、液体の噴出により記載されるのと実質的に同じであるのが適切であり、静止相2の最大可能量が液体と接触される。
【0074】
図10は、入口20の代替的態様を示し、その入口は管を通る液体に回転を生じさせるように適合された内部壁上にプレート60を備える管である。開口30は、カラム10の下方部分4と同じレベルであり、管20と同じ径を有するが、これに制限されない。このように回転液体は開口30に達する際に、分岐した噴出を形成し、カラム10内に広く分散される。好ましくは、この入口は開口30と同じ径の、比較的小さな開口を有する円錐インサート50とともに用いられる。それによって、分岐した噴出は開口30の近くで実質的にすべての静止相と接触することができ、カラムにデッドスペースが形成されるのを避ける。円錐インサート50なしに、開口30により製造される分岐噴出は図10Aの網状陰影領域を占める静止相と接触するように十分に分岐したものになりにくい。入口20により製造される液体噴出は噴出により静止相にチャネル形成が生成されないように、十分に分散されるべきである。
【0075】
図11は、図10に示される、4つの入口20を持つカラム10を示す。この配置は少なくとも径20cmのような、大きい径のカラムに適している。さらに、この4つの入口への液体竜の分割は、液体がカラム10の下方部分にわたってもっと均一に分散されるのを可能にする。複数の入口の、このような配置は上述の入口の態様も使用し得る。
【0076】
図12は、代替的な入口20を示し、カラム10内に放射状に伸びる管70を含む。開口30は管70に設けられている。処理されるべき液体は、中央の管80を通って放射状管70に供給され、開口30を通過する。好ましくは、開口は上述の理由から、下方に向けられる。多数の開口は管70のそれぞれに設けられ得、多数の管70が設けられ得る。さらに、開口は処理されるべき液体中の粒状物または不溶物に比べて大きいのが好ましい。
【0077】
静止相2は、少なくとも1.5g/Lの密度を有するので、本発明の供給装置は静止相膨張床に静止相の比較的低い性能をもたらす、不安定および乱流を生じさせない。静止相媒体の平均粒径は20〜200μmの範囲であり得る。適切な静止相はWO92/00799およびWO00/57982に記載のものを含む。
【0078】
図13は、本発明の第2の態様による膨張床クロマトグラフィを実施するための装置の模式図である。その装置は、入口20、出口14およびベント12を有し、静止相媒体を含むカラム10を含む。
【0079】
この図において、ベント12はその開口にわたって備えられたフィルター16を有する。このようなフィルターは、埃および細菌のような汚染物のカラム10への、および/または、からの、入口および/または出口を防止するのに用いられる。適切なフィルターはPall Corp.からの一般用ガスフィルターのようなマイクロフィルターであり得る[製品No.9004500Pallflex media,4.8-3.2mm(3/16-1/8インチ)HBまたはPall Corp.からのIntervene(商標)Intervene High-Flow filter] 。
【0080】
入口20は図2〜12に関して述べられたように、カラム内容物の撹拌に適用されない入口であってもよく、あるいは機械的に駆動される回転入口または磁気駆動回転入口のような、公知の種類の入口であってもよい。この種の入口は、WO99/65586に記載されている。
【0081】
入口20、出口14およびベント12がそれぞれ示され、カラムの使用前および使用後に入口、出口およびベントを閉じ、シールし得るバルブ6を有する。このように、カラム内容物はカラムの使用前に殺菌を保持され得る。そして、カラムが単一使用または限定された数の使用に続いて廃棄されるために静止相で予備充填されて供給されるように意図される場合には、カラムはサプライヤーにより、確かな殺菌状態で供給され得、そして内容物の安全な廃棄を促進するように使用後に閉じられ得る。
【0082】
出口14は、カラム内で所定のレベルに移動され得る管の形態でここに示される。この管は出口14を一体的に備え、または図1に示されるように出口14を通って導かれる別個のものであってもよい。管と出口14との界面は、カラムに入り、もしくはカラムを離れる微小汚染物なしに管が上下にすべるのを可能にするリップシールでシールされ得る。管の外側部(しかし、カラムの外側に位置する管の部分は管の位置が下方に調節されるとき、内側に入り得る)は、固定されたフレキシブル管により被覆され得、細菌または化学的汚染を防止するために任意に殺菌ガスでフラッシュされ得る。出口の上流側は、カラムの使用時に、液体18のレベルの下方に置かれ、そして静止相2の上方レベルの上方に置かれるのが望ましい。したがって、手段(図示されていない)は、カラム内の適切な位置への出口14の上流端の移動を可能にするように備えられる。これは、モーター駆動の使用者が操作する手段により;液体18レベルで、もしくは少し下に出口14の上流端を保持する浮力ある支持体の使用により;または好ましくは液体18のレベルおよび/または静止相2のレベルを監視するモニター26からのフィードバックに応ずるモーター駆動手段により、達成される。このようなモーター駆動手段は気力アクチュエーターまたはエレクトリックアクチュエーターであり得る、リニアクチュエーターであり得る。
【0083】
モニター26は、カラム内で液体および/または静止相レベルを監視できる、いかなる形のモニターであってもよい。たとえば、モニターは光学モニターであり得る。しかし、液体18、静止相2および/またはカラム10が組み立てられる材料は個別にまたは一緒に不透明であるので、モニター26として超音波モニターを用いるのが好ましい。モニターは、入口20の上流のポンプ22;出口14の下流のポンプ24;および出口14の上流端に位置するコントローラー(図示せず)、のいずれか、または全部にフィードバックを提供する。
【0084】
入口20の上流および出口14の下流は、入口を通ってカラムに液体を供給し、出口を通ってカラムから液体を押し流すためのポンプを備える。これらのポンプは、この分野で知られている、いかなる適切なポンプであってもよい、しかし、液体がポンプ自体の部分と接触しないぜん動ポンプを用いるのが好適である。適切なぜん動ポンプの例は、Cole-Parmer からのWatson-Marlow Bredel サニタリポンプまたはMasterflex ぜん動ポンプを含む。ポンプの清浄化の必要なしに、ポンプを通過する配管およびカラムの入口、出口への接続は一度用いられ、そして廃棄され得るので、ぜん動ポンプの使用は、液体の精製のための単一使用装置お提供する目的にかなう。
【0085】
使用において、カラム10は装置の間に置かれ、ポンプ22に導く配管に入口で接続され、そしてポンプ24に導く配管に出口で接続される。ついで、入口20、出口14およびベント12のシールが解かれる。処理される液体は、ポンプ22により入口20を通って駆動されてカラム10の下方端で静止相2の間に均一に分配される。ついで液体は静止相2を通って上方に流動し、静止相の膨張を生じさせ、そしてポンプ24により出口から追われる。液体の流速は静止相の密度および粒径とバランスされるべきであり、その結果静止相2は十分に膨張し、安定な膨張床を形成するが、カラム10の頂部からオーバーフローしない。要求される流速は、2つのポンプ、すなわちカラム10の入口20の上流の1つのポンプ22およびカラム10の出口24の下流の1つのポンプ24、の使用により維持される。静止相の膨張および静止相のレベル上方の液体レベルはモニター26を用いて監視される。モニター26は、2つのポンプ22および24にフィードバックを与えるので、これらのポンプの流速は個別に制御され、望ましい度合いの静止相の膨張および静止相のレベル上方の液体レベルが達成される。さらに、入口への、そして出口からの流速を測定するために、マスフローメーターのような正確なフローメーターの使用は、系の独立したマニュアル制御を促進する。膨張の程度はカラムへの流速により支配されるので、入口ポンプに本質的に制御される。膨張された媒体上方の液体の高さは、液体レベルを上昇させるために出口ポンプにより流速を一時的に低下させることにより、そして液体レベルを低下させるために出口ポンプにより流速を一時的に増加させることにより、制御され得る。さらに、モニター26は、出口14の上流端の位置を決定するコントローラー(図示せず)にフィードバックを提供し得るので、静止相の膨張および使用時に、出口の上流端は液体レベルの下方であるが静止相のレベルの上方、のような所望の位置に維持される。
【0086】
しかし、あるいは、出口14の上流端の位置はカラムの操作者により決定され得、または液体表面の下の小さな距離のような、液体表面に関し選定された位置に出口14の上流端を維持する浮き支持体の使用により決定され得る。
【0087】
静止相の膨張、およびカラム10内の液体および/または静止相のレベルの続く調節の間、カラムにおける液体レベル上方の空気の圧力はベント12によりカラム外側の圧力と平衡になることが可能である。このように、カラムは有意の圧力増強なしに操作され得る。カラム10の上方部分が大気圧より有意に高い圧力に耐える必要がないので、このことはカラム10の組み立てのために、この分野で通常しようされてきたものよりも比較的軽い材料の使用を可能にする。
【0088】
好ましくは、カラム10および静止相2は、関心のある化合物の吸着とその溶出のために、膨張床形態で使用される。
【実施例】
【0089】
例1 本発明による膨張床カラムにおいて理論段数の測定
膨張床吸着カラムが図13に示すように(しかし図9による入口(コーン高さは15cm)を有する)、組み立てられ、2つのぜん動ポンプ(Watson Marlow)に接続された。それは沈殿床高さ25cmに等しい吸着剤量を含んでいた。吸着剤はアガロース−タングステンカーバイド複合ビーズからなり、平均径(体積)(d(0.5))149μmで密度3.1g/mLであった。吸着剤はクランピングと密充填を避けるために25%グリセロール溶液に懸濁された。使用直前に、カラムは30床容量の脱イオン水で洗浄された。
【0090】
カラムは流速の関数として1mあたりの理論段数の測定(滞留時間分布測定、RTD)により試験された。
【0091】
ハンドブック「Expanded Bed Adsorption」14〜16頁、Edition AA, ISBN 91-630-5519-8, Amersham Pharmacia Biotech, スウェーデンに記載され、膨張床吸着の分野の当業者に一般的に使用されている、ネガティブ ステップ インプット法がシステムの性能を評価するのに使用された。
【0092】
アセトン溶液(0.5%水溶液)が所定の流速でカラムにポンプで送られ、カラムの出口で送り出され、波長280nm(UV光)で流体の吸収が測定され、記録された。アセトンがUV信号によって一定濃度でカラムから出るとき、流動溶液はアセトンから水に変更された。水での洗浄はアセトン溶液がある間、同一流速で実施された。水でのカラム洗浄は、記録されたUV信号によりすべてのアセトンが洗い出されるまで、継続され、実験が停止され、そして1mあたりの理論段数が、記録されたUV信号から流速の関数として計算/測定され、プロットされた。
【0093】
実験は、表1により異なる流速の範囲を用いて繰り返され、そして流速と観察された理論段数の関係が表1および図14に示されるように記録された。
【0094】
【表1】

【0095】
実験の結果は、静的分配器および流動床システムが測定された流速にわたって増加する固体相支持体の1m沈殿床あたりの理論段数(N)を持つことを示す。さらに、5cm/分を超える流速が少なくとも100N/mの理論段数を得るのに必要であることを示す。
例2 本発明による膨張床カラムにおいて理論段数の測定
膨張床吸着カラムが例1のように(しかし図8による入口(コーン高さは15cm)を有する)、組み立てられた。それは沈殿床高さ25cmに等しい吸着剤量を含んでいた。吸着剤はアガロース−タングステンカーバイド複合ビーズからなり、平均径(体積)(d(0.5))130μmで密度2.8g/mLであった。吸着剤はクランピングと密充填を避けるために25%グリセロール溶液に懸濁された。使用直前に、カラムは30床容量の脱イオン水で洗浄された。
【0096】
カラムは、例1に述べるように、流速の関数として1mあたりの理論段数の測定(滞留時間分布測定、RTD)により試験された。
【0097】
実験は、表2により異なる流速の範囲を用いて繰り返され、そして流速と観察された理論段数の関係が表2および図15に示されるように記録された。
【0098】
【表2】

【0099】
実験の結果は、静的分配器および流動床システムが測定された流速にわたって増加する固体相支持体の1m沈殿床あたりの理論段数(N)を持つことを示す。さらに、5cm/分を超える流速が少なくとも100N/mの理論段数を得るのに必要であることを示す。
例3 本発明による膨張床カラムにおいて理論段数の測定
膨張床吸着カラムが例1のように(しかし図3(コーンなし)による入口を取り付けられた。それは沈殿床高さ25cmに等しい吸着剤量を含んでいた。吸着剤はアガロース−タングステンカーバイド複合ビーズからなり、平均径(体積)(d(0.5))149μmで密度3.1g/mLであった。吸着剤はクランピングと密充填を避けるために25%グリセロール溶液に懸濁された。使用直前に、カラムは30床容量の脱イオン水で洗浄された。
【0100】
カラムは、例1にのべるように、流速の関数として1mあたりの理論段数の測定(滞留時間分布測定、RTD)により試験された。
【0101】
実験は、表3により異なる流速の範囲を用いて繰り返され、そして流速と観察された理論段数の関係が表3および図に示されるように記録された。実験はさらに沈殿床高さ50cmに等しい吸着剤量を用いて繰り返された。
【0102】
【表3】

【0103】
実験の結果は、静的分配器および流動床システムが測定された流速にわたって増加する固体相支持体の1m沈殿床あたりの理論段数(N)を持つことを示す。さらに、吸着剤の沈殿床高さが25cmのとき、7cm/分を超える流速が少なくとも100N/mの理論段数を得るのに必要であり、一方吸着剤の沈殿床高さが50cmのとき、13cm/分を超える流速が少なくとも100N/mの理論段数を得るのに必要であることを示す。
例4 本発明による膨張床カラムにおいて理論段数の測定
膨張床吸着カラム(10cm径)が例3のように組み立てられた。それは沈殿床高さ25cmに等しい吸着剤量を含んでいた。吸着剤はアガロース−タングステンカーバイド複合ビーズからなり、平均径(体積)(d(0.5))130μmで密度2.8g/mLであった。吸着剤はクランピングと密充填を避けるために25%グリセロール溶液に懸濁された。使用直前に、カラムは30床容量の脱イオン水で洗浄された。
【0104】
カラムは、例1に述べるように、流速の関数として1mあたりの理論段数の測定(滞留時間分布測定、RTD)により試験された。
【0105】
実験は、表4により異なる流速の範囲を用いて繰り返され、そして流速と観察された理論段数の関係が表4および図に示されるように記録された。実験はさらに沈殿床高さ50cmに等しい吸着剤量を用いて繰り返された。
【0106】
【表4】

【0107】
実験の結果は、静的分配器および流動床システムが測定された流速にわたって増加する固体相支持体の1m沈殿床あたりの理論段数(N)を持つことを示す。さらに、吸着剤の沈殿床高さが25cmのとき、5cm/分を超える流速が少なくとも100N/mの理論段数を得るのに必要であり、一方吸着剤の沈殿床高さが50cmのとき、10cm/分を超える流速が少なくとも100N/mの理論段数を得るのに必要であることを示す。
例5 ヒト血漿からヒトIgGの吸着
膨張床吸着カラム(10cm径)が例2のように組み立てられ、沈殿床高さ50cmに等しい吸着剤量を含んでいた。吸着剤は、リガンドとして4−アミノ−安息香酸と結合された、アガロース−タングステンカーバイド複合ビーズからなり、平均径(体積)(d(0.5))95μmで密度2.9g/mLであった(UpFront Chromatography A/S, コペンハーゲン、デンマーク、製品No.CS118,バッチ45818 WV)。吸着剤はク
25%グリセロール溶液(リン酸カリウム緩衝液、pH7.2)に懸濁された。使用直前に、カラムは30床容量の脱イオン水で洗浄された。
【0108】
カラムは、例1に述べるように、線流速10cm/分で、1mあたりの理論段数の測定(滞留時間分布測定、RTD)により試験され、1mあたり100N/mの段数を有することがわかった(185N/m)。
【0109】
カラムは、pH6.2に塩酸滴定された0.1Mイミダゾール20Lで、ついで線流速10cm/分で、pH6.2に塩酸滴定された0.002Mイミダゾール50Lで洗浄された。カラムに、線流速10cm/分で、0.002Mイミダゾール/HClpH6.2で透析されたヒト血漿40Lを充填された。血漿充填に続いて、カラムはイミダゾール/HCl40LでpH6.2で洗浄され、ついでカラムに残る結合材料は、カラムを0.1Mリン酸カリウム40L+0.5M塩化ナトリウムpH7.5で洗浄することにより溶出された。カラムからの溶出物はUVモニターで監視され、そしてカラムから溶出されたタンパクはUV信号により捕集された。結合され、ついで溶出されたタンパクは、溶出体積13Lで捕集された。結合されたタンパクの溶出に続いて、カラム(なお入口配管および出口配管に接続されている)は、スタンドから取り外され、閉鎖ループ状に入口配管および出口配管の接続によりシールされ、ついでカラム全体は生物学的廃棄物質を指定する領域に廃棄された。
【0110】
カラム内を動く未結合画分および続いて溶出された生成物が、タンパク含量を分析され、正常なヒト血漿プールに存在する、免疫グロブリンGの90%超が吸着剤に結合され、ついでリン酸カリウム緩衝液中に溶出されたことがわかった。アルブミンのような、他の主要タンパク画分は、これらの条件下では吸着剤に結合しなかった。
【0111】
操作時には、カラムは目視検査により観察されたが、吸着剤において、チャンネル形成または望ましくない乱流は、カラムの底部から約10cm上方で観察されなかった。底部近くでは、いくらかの混合および乱流が観察され得たが、分配器の設計された作用によるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離されるべき少なくとも1つの成分を含む液体の上方流膨張床吸着クロマトグラフィーを実施する方法であり:カラムに含まれる静止相媒体に、入口を通って液体を供給し、変動し得る量のヘッドスペースの下の静止相媒体の膨張を生じさせること;静止相媒体により流体から少なくとも1つの成分を吸着させること;出口を通ってカラムから液体を回収すること;少なくとも入口を通る液体の流速の調節により静止相媒体の膨張を調節すること;ならびにカラムの外側の圧力に関してヘッドスペースにおける過剰圧力を、外側圧力+0.1bar以下に制限すること、を含む方法。
【請求項2】
過剰圧力が0.05bar以下である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
過剰圧力が0.01bar以下である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
静止相媒体の膨張の調節が、液体をカラムにポンプで送るための入口上流の第1ポンプの使用により達成される請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
第1ポンプが、少なくとも3cm/分の、カラムへの液体流速を与える請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第1ポンプが、少なくとも5cm/分の、カラムへの液体流速を与える請求項4に記載の方法。
【請求項7】
第1ポンプが、少なくとも7cm/分の、カラムへの液体流速を与える請求項4に記載の方法。
【請求項8】
膨張静止相媒体上方の液体の高さが、カラムから液体をポンプで送るための出口下流の第2ポンプにより調節される請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
過剰圧力の制限がベントにより達成される請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の方法であり、出口は、管の上流端がカラム内の選定された位置に移動され得るように適合された管を含み、さらに該方法は管の
上流端をカラム内の所望の位置に移動する段階を含む方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の方法であり:
シールされた入口を含む下方部分とシールされた出口およびシールされたベントを含む上方部分とを有するカラムに含まれる静止相媒体を用意すること、シールされていないとき、それらがカラムの内部と外部の間の流体接続を与えること;ならびに液体を静止相媒体に供給する前に入口、出口およびベントからシールを破壊すること、を含む方法。
【請求項12】
少なくとも1つの成分の吸着を可能とした後に、静止相媒体から少なくとも1つの成分を溶出させること;ならびに吸着および溶出の少なくとも1つの反復の後に、該カラムを廃棄すること、の段階をさらに含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
吸着および溶出の反復の最大反復数が20である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
吸着および溶出の反復の最大反復数が15である請求項12に記載の方法。
【請求項15】
吸着および溶出の反復の最大反復数が10である請求項12に記載の方法。
【請求項16】
吸着および溶出の反復の最大反復数が5である請求項12に記載の方法。
【請求項17】
カラムの廃棄が、カラムから静止相媒体を除去しないで実施される請求項12〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
溶出段階後に、静止相媒体が清浄化され、カラムが再使用される請求項12〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
静止相媒体から少なくとも1つの成分溶出後に、そしてカラムの廃棄前に、カラムのベント、出口および入口が再シールされる請求項12〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載の方法により、膨張床吸着クロマトグラフィーを実施するための装置。
【請求項21】
少なくとも入口上流の第1ポンプおよび出口下流の第2ポンプをさらに含む請求項20に記載の装置。
【請求項22】
ポンプがぜん動ポンプである請求項21に記載の装置。
【請求項23】
出口が、管の上流端がカラム内の選定された位置に移動され得るように適合された管を含み、装置は、管の上流端の位置を調節するためのコントローラーをさらに含む請求項20〜22のいずれかに記載の装置。
【請求項24】
コントローラーがリニアアクチュエーターである請求項23に記載の装置。
【請求項25】
リニアアクチュエーターが気力アクチュエーターである請求項24に記載の装置。
【請求項26】
リニアアクチュエーターがエレクトリックアクチュエーターである請求項24に記載の装置。
【請求項27】
カラムにおける液体および/または静止相媒体レベルのモニターをさらに含む請求項20〜26のいずれかに記載の装置。
【請求項28】
モニターが超音波モニターである請求項27に記載の装置。
【請求項29】
請求項20〜28のいずれかに記載の装置であり、さらに次の少なくとも1つを含む装置:
発酵液;消費された液のための容器;溶出源;メンブレンフィルターのような発酵液の少なくとも1成分を精製するための手段。
【請求項30】
膨張床クロマトグラフィーに使用するためのカラムであり:
カラムへの液体の通路のための入口を含む下方部分;
液体のための出口を含む上方部分;ならびに
カラム内に含まれる静止相媒体;
ここで、カラムの上方部分は、カラムの内部と外部の間の流体接続を与えるベントをさらに含む。
【請求項31】
膨張床クロマトグラフィーに使用するためのカラムであり:
カラムへの液体の通路のための入口を含む下方部分;液体のための出口を含む上方部分;ならびにカラムに含まれる静止相媒体からなり、その入口は静止相媒体の動かされる撹拌には適合されない。
【請求項32】
請求項31に記載されるカラムを含む、膨張床クロマトグラフィーを実施するための装置。
【請求項33】
少なくともカラムの入口上流の第1ポンプおよびカラムの出口下流の第2ポンプをさらに含む請求項32に記載の装置。
【請求項34】
静止相媒体が少なくとも1.5g/mLの密度を有する請求項31〜33のいずれかに記載の装置。
【請求項35】
静止相媒体が少なくとも2.5〜4.0g/mLの密度を有する請求項31〜33のいずれかに記載の装置。
【請求項36】
静止相媒体が20〜200μmの平均粒径を有する請求項31〜35のいずれかに記載の装置。
【請求項37】
静止相媒体が60〜120μmの平均粒径を有する請求項31〜35のいずれかに記載の装置。
【請求項38】
カラムが少なくとも25の理論段数を有する請求項31〜37のいずれかに記載の装置。
【請求項39】
分離すべき少なくとも1つの成分を含む液体の膨張床クロマトグラフィーを実施する方法であり:カラムに含まれる静止相媒体に、入口上流の第1ポンプにより入口を通って液体を供給し、変動し得る量のヘッドスペースの下の静止相媒体の膨張を生じさせること;静止相媒体により流体から少なくとも1つの成分を吸着させること;ならびに出口下流の第2ポンプにより出口を通ってカラムから液体を回収すること、からなる方法。
【請求項40】
請求項31に記載のカラム用いて実施される、請求項39に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2010−522873(P2010−522873A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500292(P2010−500292)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053732
【国際公開番号】WO2008/116935
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(509268691)ウプフロント クロマトグラフィー アクティーゼルスカブ (1)
【Fターム(参考)】