説明

膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクス並びにその製造方法

本発明は、優れた耐久性および膨潤性を有する生分解性ポリマーヒドロゲルマトリクスを提供する。前記マトリクスは、ポリ−α(1→4)グルコピラノースマクロマー、並びに、生体適合性、生体安定性および親水性を有するマクロマーの組み合わせから形成される。前記マトリクスは、医療デバイスと組み合わせて、または単独で使用しうる。いくつかの方法で、前記ポリマーマトリクスは、標的部位に配置され、または標的部位で形成される。前記マトリクスは、膨潤して標的領域を閉塞し、その後、標的部位で分解されうる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は生分解性ヒドロゲル、組成物およびそれらの製造方法に関する。本発明はまた、移植部材または形成部材によって、体の内部を閉塞するためのシステムや方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
ヒドロゲルは、大量の水を吸収する能力を有する親水性架橋ポリマーの不溶性マトリクスとして一般的に知られている。ヒドロゲルは、その物理的特性および生体適合性材料から製造可能であることにより、生体医学の分野でかなり利用されている。例えばヒドロゲルは、医薬品の放出媒体用としてだけではなく、創傷治療のために用いられてきた。ヒドロゲルは医療デバイス表面のコーティングとしても利用されてきた。そして、ヒドロゲルは、医療デバイス表面の親水性、滑らかさを改善するために利用することができる。
【0003】
ヒドロゲルは、一般的に脱水状態から水を吸収すると膨潤する能力によって特徴づけられる。この膨潤度は、ヒドロゲルが置かれた条件、例えば、pH、温度や局所イオン濃度、局所イオンタイプによって影響されうる。変化する条件下における膨潤率、ある種の溶質の浸透率、および、意図した用途の条件下におけるヒドロゲルの機械的作用を含むいくつかのパラメーターを、膨潤状態のヒドロゲルを定義づけ、特徴づけるために利用することができる。
【0004】
相当程度膨潤するヒドロゲルは、体内に配置または形成され、多くの医学的用途に有用でありうる。しかしながら、高い膨潤度を有するヒドロゲルは、構造上、体内での利用に不適であることもありうる。例えば、高い膨潤度は、ヒドロゲルを脆くし、体内組織との接触による破損または断片化の原因となりうる。高い膨潤度は、ヒドロゲル、またはヒドロゲルと組み合わせて用いるデバイスの機能を失わせうる。また、高い膨潤度は、ヒドロゲルの一部が標的部位から取り除かれたとき、体内で合併症を引き起こしうる。
【0005】
〔発明の概要〕
本発明は、膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクス、および前記ポリマーマトリクスを形成するシステムを提供する。本発明は、前記生分解性を有するマトリクスを利用することにより、体内の標的部位を治療する方法を提供する。前記膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスは、生体適合性および生分解性を有するα(1→4)グルコピラノース多糖のマクロマー、並びに、生体適合性および生体安定性を有するマクロマーを含む組成物から形成される。マトリクスを形成するこれら2つの成分を含むことにより、ポリマーマトリクスは、非常に優れた膨潤性および耐久性を有する特定の架橋構造を備えたものとなる。一方、前記ポリマーマトリクスは、体内である時間が経過した後は分解される。
【0006】
前記マトリクスは膨潤性を有し、膨潤状態で提供されうる。例えば、前記マトリクスは膨潤した形状で標的部位に配置されうる。または、乾燥した形状、または部分的に乾燥した形状で標的部位に配置され、その後水分を吸収して膨潤する。あるいは、前記マトリクスは、標的部位において、マクロマー成分のin situポリマー化反応によって形成される。水分吸収中に、前記膨潤は、前記マトリクスに構造上の欠陥を与えることはない。それゆえ、本明細書中に示したように、前記膨潤性を有するポリマーマトリクスを用いることにより、in vivoでさらに良い機能が発揮されうる。例えば、前記ポリマーマトリクスは下記の膨潤体を破損することはほとんどない。このことにより、標的部位において、よりよい閉塞状態または封鎖状態が提供されうる。前記膨潤したマトリクスは、前記マトリクスの実質的な分解が生じるまでの時間、耐久性を有する。
【0007】
本発明のポリマーマトリクスは、体内の標的位置を治療するための多くの利点を提供する。他の多糖から作られたマトリクスと違って、α(1→4)グルコピラノースマクロマーから作られたマトリクスは、例えば体液のような、アミラーゼを含有する液体の存在下において生分解性を有する。前記マトリクスは、体内の標的部分に配置されたり、体内の標的部分で形成されたりしうる。そして、次に、前記マトリクスは、そこを離れ、標的部位を治療する。その後、前記マトリクスは、分解されうる。それゆえ、被験者から前記マトリクスを外植する必要性がない。前記の分解物は、宿主に対して無害であり、代謝され、体から排出されうる。
【0008】
一つの側面として、本発明はマトリクスを形成する組成物を提供する。当該組成物は張り出した重合性基を含むポリ−α(1→4)グルコピラノースを含んでいる。そして、当該組成物は張り出した重合性基を含む、生体適合性、生体安定性および親水性を有するポリマーを含んでいる。その組成物は、生体適合性、生分解性および膨潤性を有するポリマーマトリクスを形成する方法、または生体適合性、生分解性を備え、膨潤したポリマーマトリクスを形成する方法に利用されうる。上記重合性基は、活性化され、ポリ−α(1→4)グルコピラノースと、生体適合性、生体安定性および親水性を有するポリマーとを架橋させ、それによって、生分解性マトリクスを形成する。前記組成物中で用いられうる典型的な重合開始剤は、光開始剤および酸化還元開始剤を含む。
【0009】
他の側面として、本発明は膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクス、または膨潤した生分解性を有するポリマーマトリクスを提供する。そのポリマーマトリクスは、第一のポリマーを含有するセグメントと、第二のポリマーを含有するセグメントとを含む、ポリマーマトリクスの架橋ネットワークから形成される。前記架橋されたネットワークの、前記第一のポリマーを含有するセグメントは、ポリ−α(1→4)グルコピラノースを含む。前記第二のポリマーを含有するセグメントは、生体適合性、および生体安定性を有する親水性ポリマーを含む。部分的脱水形態、または完全脱水形態にて、前記マトリクスは十分に膨潤性を有している。そして、前記マトリクスは、耐久性を有し、体内においてある時間が経過した後に分解しうるヒドロゲルを提供する。
【0010】
いくつかの側面で、前記α(1→4)グルコピラノースと、生体適合性、生体安定性および親水性を有するポリマーとの重量比は、約200:1〜約1:10の範囲、約50:1〜約1:5の範囲、または、約10:1〜約1:2の範囲にある。
【0011】
いくつかの側面で、前記生体安定性を有するポリマーは、前記第二のポリマーを含有するセグメントを形成するために使われる。前記生体安定性を有するポリマーは、例えば酸化アルキレンポリマーのようなオキシアルキレンポリマーを含む。酸化アルキレンポリマーの典型例としては、ポリプロピレングリコール(PPG)およびポリエチレングリコール(PEG)を挙げることができる。
【0012】
いくつかの形態で、前記ポリマーマトリクスは、脱水状態での重量の約1.5倍以上の重量に水中で膨潤することができる。いくつかの形態で、前記マトリクスは、脱水状態から、約100g/cm以上の膨潤力を発揮することができる。いくつかの形態で、前記ポリマーマトリクスは、水中で、脱水状態でのサイズより少なくとも約25%大きいサイズに膨潤することができる。
【0013】
前記ポリマーマトリクスは、標的領域にて単独で、またはデバイスとともに使用されうる。いくつかの側面で、例えば、前記ポリマーマトリクスは、外側を被覆する形態でありうる。または、前記ポリマーマトリクスは、移植式医療デバイスをコーティングすることができる。前記デバイスの、前記ヒドロゲルに覆われていない部分は、標的部位で、生分解性マトリクスの運搬および作用を促進しうる。
【0014】
前記生分解性マトリクスは、膨潤状態で医療行為に利用されうる。当該医療行為とは、体の標的領域の閉塞、密閉、封鎖、空間を満たすことである。前記生分解性のあるマトリクスは、標的部位で、所望の生物学的効果を提供する。一般的に、前記方法は、本発明にかかる膨潤性を有するポリマーマトリクスを含むものを移植する工程を含む。または、前記方法は、体内の標的位置でマトリクスを形成する工程を含む。例えば、前記の膨潤性のあるポリマーマトリクスは、乾燥状態で、または部分的に乾燥した(脱水した)状態で、標的領域に運ばれる。標的領域で、前記マトリクスは、水和し、そして、膨潤し、標的領域を閉塞し、封鎖し、満たし、または密封すること等を行う。前記閉塞または封鎖によって、生体液、生体組織または生物材料が、閉塞領域を横切って動くこと、または閉塞領域内で動くことを回避することができる。
【0015】
〔発明を実施するための形態〕
以下に、本発明の実施形態を示す。この実施形態は網羅的であることを意図しない。また、この実施形態は、以下の発明を実施するための形態中に開示した、明確な形態に本発明を限定するものではない。むしろ、実施形態は、当業者が、本発明の原理と実施内容を認識し理解できるように、選ばれ、記載されている。
【0016】
このように、本明細書中で言及したすべての刊行物および特許は、参考として援用される。本明細書中で示された刊行物と特許は、唯一開示のために提供される。本明細書中の記載は、発明者が、本明細書中で引用した刊行物および/または特許を含むあらゆる刊行物および/または特許よりも先行する権利がないことを自白するものとして解釈されてはならない。
【0017】
本発明は、生体適合性および生分解性を有するポリマーマトリクスを提供する。当該ポリマーマトリクスは体内で用いられ、医療効果を与えうる。このポリマーマトリクスは、未形成状態または膨潤状態で標的部位に供給されうる。当該未形成状態とは、部分的に脱水しているか、全体が脱水している状態のことである。もし前記マトリクスが脱水状態なら、標的部位で膨潤されうる。前記ポリマーマトリクスはまた、標的部位でマトリクスを形成する材料を含む組成物を重合することにより、in situで形成されうる。
【0018】
通常、膨潤したヒドロゲルは、希望した時間、標的部位に放出される。一般的に、この時間は、標的部位で治療を行うのに十分な時間である。例えば、膨潤したヒドロゲルは、標的部位を封鎖または閉塞しうる。体内である時間が経過した後、ヒドロゲルは分解する。当該分解は、ポリ−α(1→4)グルコピラノース部位の酵素分解を引き起こすアミラーゼによって、全体的に、または部分的に引き起こされる。ポリ−α(1→4)グルコピラノース部位の酵素分解はまた、生体適合性を有する親水性ポリマーから作られるポリマー部位を遊離する。血清のアミラーゼ濃度は、およそ50〜100U/Lの範囲であると推定される。
【0019】
ポリマーセグメントへの重合基の結合によって、不飽和エステルの非酵素的加水分解が起こりうる。さらに、その非酵素的加水分解は前記マトリクスの分解を促進する。
【0020】
膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスは、さまざまな形態で用いられる。いくつかの側面で、前記マトリクスは単独で用いられる(すなわち、非マトリクス材料と関係無しに用いられる。)。他の側面で、生分解性ポリマーマトリクスは、移植可能な医療材料と組み合わせて使われる。例えば、いくつかの実施形態において、マトリクスは医療デバイスの外側被覆の形態となりうる。前記マトリクスは、医療デバイスのコーティングの形態にもなりうる。
【0021】
膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスを形成するために利用される一つの成分(すなわち、第一成分)は、張り出している重合性基を有するα(1→4)グルコピラノースポリマーである。他の成分(すなわち、第二成分)は、張り出した重合性基を含む、生体適合性を有する親水性ポリマーである。これらの、ポリマーである試薬の重合性基は、反応し、ポリマーマトリクスを形成しうる。当該ポリマーマトリクスは膨潤性で耐久性のあるヒドロゲルであるが、体内である時間を経過した後、in vivoで生分解性を示すものでもある。
【0022】
「膨潤性を有するポリマーマトリクス」とは、少なくとも前記第一成分および第二成分から形成された重合体の架橋されたマトリクスである。前記ポリマーマトリクスは脱水されうる、または、完全に膨潤したマトリクス(明細書中で、「ヒドロゲル」または「膨潤したマトリクス」と称している、完全に水和されたマトリクス)に存在する量未満の量の水を含みうる。本発明はさまざまなレベルの水和状態にあるマトリクスを意図している。いくつかの実施形態において、前記マトリクスが体内の標的部位を閉塞するために該標的部位に運搬される場合、前記マトリクスは完全には水和していない。
【0023】
重合性基は、膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスを形成するポリマーから張り出した反応性基である。生分解性を有するマトリクス(すなわち、マクロマー)を形成するために使われるポリマー成分は、一以上の「重合性基」を含む。前記重合性基は、一般に、フリーラジカルが存在する重合性基中で重合されうる化学基である。重合性基は、一般に、エチレン性不飽和基またはビニル基でありうる炭素−炭素二重結合を含んでいる。前記重合性基の典型例としては、例えば、アクリレート基、メタクリレート基、エタクリレート基、2−フェニルアクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、イタコン酸基およびスチレン基が挙げられる。
【0024】
ポリマーは有機性、極性若しくは無水溶媒、またはマクロマー製造用混合溶媒の中で効果的に誘導体化されうる。一般に、溶媒系は、ポリマーの溶解度を考慮して利用され、重合性基を用いた前記誘導体化を支配する。アクリル酸グリシジルのような重合性基は、簡単な合成工程でポリマー(多糖類を含む)に付加することができる。いくつかの側面において、前記重合性基は、重合性基(例えば、アクリレート基)として1mgのマクロマーあたり0.05μmol以上のモル比でマクロマーに存在する。
【0025】
重合性基は、ポリマー骨格に沿って二以上の位置でマクロマーから「張り出し」うる。いくつかの場合、前記重合性基は、ポリマー骨格の長さに沿って、無作為に配置されている。そのような無作為な配置は、通常、前記マクロマーがポリマーの長さに沿って反応性基を持つポリマーから調製される場合に生じる。そして、前記ポリマーは限られたモル数の、重合性基を持つ化合物と反応する。例えば、本明細書中で開示した多糖類は、多糖類の長さに沿ってヒドロキシル基を持っている。そして、前記ヒドロキシル基の一部は、反応性ヒドロキシル基および重合性基を持つ化合物と反応する。
他の場合、一以上の重合性基は、ポリマー骨格に沿って一以上の決められた位置で、前記マクロマーから張り出している。例えば、前記マクロマーの合成に用いられるポリマーは、ポリマーの一つの末端に一つの反応性基を有しうる。または、ポリマーの複数の末端に複数の反応性基を有しうる。反応性酸素を含む基(例えば、酸化物)を有するモノマーから調製される多くのポリマーは、ヒドロキシル基含有末端を有する。前記ヒドロキシル基含有末端は、ヒドロキシル反応性基を持つ化合物、および、重合性基を持つ化合物と反応することができ、マクロマー末端に重合性基を有するマクロマーを供給する。
【0026】
本発明のマクロマーは生体適合性を有するポリマーに基づいている。一般に「生体適合性」(組織適合性としても呼ばれている)という用語は、成分、組成物または物が、体内において、生体拒絶反応を測定可能なほど誘発しないということを表している。生体適合性を有する成分、組成物または物は、次の複数の特性、無毒性、非突然変異誘発性、非アレルギー性、非発がん性および/または非刺激性を有しうる。生体適合性を有する成分、組成物または物は、まったく無害であり、体に許容されうる。生体適合性を有する成分は、体内で、それ自身によって一以上の機能を改良することもできる。
【0027】
本発明では、一以上の方法で、本発明にかかる、膨潤性および生分解性を有する進歩的なポリマーマトリクスが生体適合性であることを示しうる。例えば、マトリクスを形成する前記組成物は、生体適合性を有しうるとともに、例えば細胞毒性を有する成分のような、組織に悪影響のある成分(または、ある程度の量の成分)を含まない。
【0028】
本発明にかかる、膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスを調製するために用いられるポリマーおよびマクロマーは、分子量の観点から説明できる。本明細書中で使われているように「分子量」は、より明確には、「重量平均分子量」すなわちMを示している。前記「重量平均分子量」またはMは、分子量を測定する確実な方法であり、例えば、マクロマー生成物のようなポリマー(生成物)の分子量を測定するために特に有用である。ポリマーの生成物は、通常、それぞれの分子量にわずかにばらつきがある複数のポリマーを含んでいる。ある場合には、前記ポリマーは、(例えば、より小さい有機化合物に対して)比較的高い分子量を有する。そして前記ポリマー生成物のこのようなわずかなばらつきは、前記ポリマー生成物の全体的な性質には影響しない。重量平均分子量(M)は以下の式によって定義できる。
【0029】
【数1】

【0030】
ここで、Nは、質量Mを有するサンプル中のポリマーのモル数を表す。そして、Σiは、生成物中のすべてのN(種)の合計である。Mは、例えば、光散乱法や超遠心分離法のような一般的な技術を用いて測定することができる。ポリマー生成物の分子量を定義するために用いられる、Mおよび他の用語の議論については、例えば、Allcock, H.R. and Lampe, F.W., Contemporary Polymer Chemistry; pg 271 (1990)を参照のこと。
【0031】
本発明にかかる、膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスは、ポリ−α(1→4)−グルコピラノースをベースとするマクロマーを用いて調製される。α(1→4)−グルコピラノースポリマーは、α(1→4)結合を有するグルコピラノースモノマーの繰り返し単位を含んでおり、当該繰り返し単位は酵素分解可能である。
【0032】
典型的なα(1→4)−グルコピラノースポリマーは、マルトデキストリン、アミロース、サイクロデキストリンおよびポリアルジトールを含んでいる。マルトデキストリンは、一般に、アミロース生成物よりも低い分子量を有するポリマー生成物を指す。サイクロデキストリンは、低い分子量の環状α(1→4)−グルコピラノースポリマーである。
【0033】
マルトデキストリンは、通常、加水分解の程度が所望の程度に到達するまで、85〜90℃で、熱安定性のあるα−アミラーゼを用いてでん粉懸濁液を加水分解することによって生成する。そして、次に、二度目の加熱処理によって、α−アミラーゼを不活性化する。前記マルトデキストリンはろ過によって精製することができる。そして次に、スプレードライを行うことによって最終生成物が得られる。マルトデキストリンは、通常、マルトデキストリンのブドウ糖当量(DE)値によって特徴付けられる。デキストロース当量値は、「DE={(ブドウ糖の分子量)/(でん粉加水分解物の数平均分子量)}×100」として定義される加水分解の程度に関する。一般的に、マルトデキストリンは、アミロース分子より低い分子量を有すると考えられる。
【0034】
ブドウ糖(グルコース)に完全に加水分解されたでん粉生成物のDEは100である。一方、でん粉のDEはほぼゼロである。0より大きく100未満のDEは、でん粉加水分解物の平均分子量の特徴である。そして、マルトデキストリンは、20未満のDEを有すると考えられる。さまざまな分子量のマルトデキストリンが商業的に市販されている。
【0035】
本明細書中で利用されているように、「アミロース」または「アミロースポリマー」は、α−1,4結合によって結合された、グルコピラノースの繰り返し単位を有する直鎖状ポリマーである。いくらかのアミロースポリマーは、α−1,6結合を介したごくわずかな量の分岐(結合の約0.5%未満)を有しているが、直鎖状アミロースポリマー(非分岐アミロースポリマー)と同じ物理的性質を示すことができる。一般に、植物資源由来のアミロースポリマーは約1×10Da以下の分子量を有する。アミロペクチンは、直鎖部を形成するα−1,4結合によって結合されたグルコピラノース繰り返し単位を有する、比較的分岐したポリマーである。前記直鎖部はα−1,6結合を介して互いに結合されている。分岐点を有する結合は、一般に、結合全体の1%より多く、典型的には結合全体の4%〜5%である。一般的に、植物資源由来のアミロペクチンは1×10Da以上の分子量を有している。
【0036】
典型的なマルトデキストリンおよびアミロースポリマーは、約500Da以上、約500,000Da以下、約1000Da以上、約300,000Da以下、および約5000Da以上、約100,000Da以下の範囲の分子量を有する。
【0037】
さまざまな分子量のマルトデキストリンおよびアミロースポリマーが、多くの供給元から販売されている。例えば、Glucidex(登録商標)6(平均分子量:〜95,000Da)およびGlucidex(登録商標)2(平均分子量:〜300,000 Da)は、Roqutte(フランス)から入手できる。そして、MALTRIN(登録商標)のさまざまな分子量のマルトデキストリンは、GPC(アイオワ州マスカティーン)から入手できる。
【0038】
用いるアミロースの特定の分子量範囲は、前記組成物の物理的特性(例えば、粘性)、形成した前記膨潤性を有するマトリクスの所望の分解率、および、例えば生物活性剤のような、マトリクス中の他の任意成分の存在などのファクターによって決定されうる。
【0039】
非還元多糖類は、膨潤性および生分解性を有するマトリクスを形成するための分解性ポリマー材料としても使われている。典型的な非還元多糖類は、GPC(アイオワ州マスカティーン)から入手可能なポリアルジトールを含む。
【0040】
ポリマー成分(例えば、多糖類成分)の分子量の調整は、透析ろ過を用いることによって行われうる。マルトデキストリンなどの多糖類の透析ろ過には、異なった孔径を有する限外ろ過膜を使用しうる。例えば、約1K以上、約500K以下の範囲の分子量分画メンブレンを有する一以上のカセットを、500kDa未満、約5kDa以上、約30kDa以下の範囲、約5kDa以上、約30kDa以下の範囲、約10kDa以上、約30kDa以下の範囲、または約1kDa以上、約10kDa以下の範囲の平均分子量を持つ多糖類成分を供給する透析ろ過工程で用いうる。
【0041】
アミロースやマルトデキストリンのようなα(1→4)グルコピラノースポリマーに、張り出した重合性基を与える修飾は、既知の技術を用いて行うことができる。いくつかの形態の成分では、ヒドロキシル基(α(1→4)グルコピラノースポリマーから自然に張り出している)の部分は、反応性ヒドロキシル基を有する化合物および重合性基を有する化合物と反応する。例えば、米国特許公開2007/0065481号(Chudzikら)として公開された特許出願に、張り出したアクリル酸基およびメタクリル酸基を与えるα(1→4)グルコピラノースポリマーの修飾について説明されている。
【0042】
重合性基を有するα(1→4)グルコピラノースポリマーの修飾は、次の構造として説明される。例えば、張り出した重合性基を有するα(1→4)グルコピラノースの部分は、次の構造を有しうる。
【0043】
[M]−[L]−[X]
ここで、Mは、α(1→4)グルコピラノースポリマーのモノマーユニットである。そして、前記張り出した化学官能基([L]−[X])において、Xは不飽和の重合性基であり、Lは、不飽和の重合性基をグルコピラノースモノマーユニットに結合させる化学基である。
【0044】
いくつかの場合、前記化学結合基Lは、分解可能なエステル結合を含む。例えばアセタール、カルボキシル、無水物、酸ハロゲン化物などのような、重合性基および反応性ヒドロキシル基を有する化合物は、前記重合性基と前記α(1→4)グルコピラノース骨格との間の加水分解性共有結合を形成するのに用いられうる。例えば、前記の方法は、α(1→4)グルコピラノースポリマーに、重合性基を持つ、張り出した官能基を与える。前記重合性基は、分解可能なエステル結合を含む化学構成成分を通じて、多糖類の骨格に結合している。これらの側面において、膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスは、分解性α(1→4)グルコピラノースポリマーセグメントの間に、酵素分解可能なα(1→4)グルコピラノースポリマーセグメント、および、非酵素的に、親水的に分解可能な化学結合を有するポリマーマトリクスを含むであろう。
【0045】
他の、分解性化学結合は、ペルオキシエステル基、ジスルフィド基、および、ヒドラゾン基を含むα(1→4)グルコピラノースポリマーに、重合性基を結合させるために使われうる。
【0046】
いくつかの場合、反応性ヒドロキシル基は、イソシアン酸塩や、エポキシのような基を含む。以上の基は、前記張り出した重合性基と、前記多糖類の骨格との間で、非分解性の共有結合を形成するのに用いられる。以上の側面において、前記膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスは、酵素分解性のα(1→4)グルコピラノースポリマーセグメント、および、前記α(1→4)グルコピラノースポリマーのモノマーユニットと前記不飽和重合性基との間の非分解性化学結合を含むであろう。
【0047】
典型的な合成工程では、例えばマルトデキストリンのようなα(1→4)グルコピラノースポリマーを用いる。前記α(1→4)グルコピラノースポリマーをジメチルスルホキシドに溶解し、メタクリレート基またはアクリレート基、および、反応性ヒドロキシル基を有する化合物と反応させる。前記反応性ヒドロキシル基は、カルボン酸塩、酸塩化物、無水物、アジド、およびシアン酸基から選ばれる。典型的な化合物は、(アクリロイルオキシ)プロパン酸、アクリル酸3−クロロ−3−オキソプロピル、アクリル酸3−アジド−3−オキソプロピル、アクリル酸2−イソシアナトエチル、メタクリル酸無水物、メタクリル酸、アクリル酸を含む。
【0048】
前記α(1→4)グルコピラノースポリマーは、本発明にかかる膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスを形成するために好適な、張り出した重合性基(例えば、アクリル酸塩、メタクリル酸塩など)を所望の数用いて作られうる。例えば、アクリル化またはメタクリル化のレベルは、反応混合物中のα(1→4)グルコピラノースポリマーの量に対する、反応性化合物の量を制御することによって行うことができる。いくつかの側面で、前記重合性基は、ポリマー1gあたり、重合性基(例えば、アクリレート基)0.05mmol以上のモル量でα(1→4)グルコピラノースマクロマー上に存在する(μmol/mgの測定値で表すこともできる)。いくつかの側面で、前記α(1→4)グルコピラノースは、ポリマー1gあたり約0.05mmol以上、約0.7mmol以下の量の重合性基を用いて誘導される。実施の好ましい形態として、前記生体適合性および生分解性を有するマトリクスは、α(1→4)グルコピラノースポリマーを用いることによって形成される。前記α(1→4)グルコピラノースポリマーは、多糖類1gあたり重合性基(例えば、アクリル酸塩、メタクリル酸塩)約0.1mmol以上、約0.4mmol以下の重合性基誘導体化のレベルを有する。
【0049】
前記α(1→4)グルコピラノースポリマーは、前記重合性基によって与えられる化学修飾とは異なる一以上の他の化学修飾も含む。前記α(1→4)グルコピラノースポリマーは、該ポリマーの化学的性質を変化させる方法で修飾されうる。一般的に、もし、前記ような修飾が行われても、その修飾は、生分解性マトリクス形成において有用なα(1→4)グルコピラノースの能力に悪影響を与えない。
【0050】
例えば、前記α(1→4)グルコピラノースポリマーは、疎水性基を用いて誘導体化されうる。この誘導体化は、マトリクスの親水性を減少させるのに有用である。そして、この誘導体化は、次々に、組織または体液に接触したときにマトリクスが分解する割合を減少させうる。疎水性基は、重合性基を添加する方法と同等な方法で、多糖類に添加されうる。例えば、脂肪酸のアルキル鎖のような疎水性基、および、前記多糖類のヒドロキシル基と反応する基を有する化合物は、α(1→4)グルコピラノースポリマーを誘導体化するために用いられる。典型的な化合物、および疎水性官能基を添加する方法は、米国特許公開2007/0065481号(supra)の例えば実施例46に記載されている。もし、疎水性基を加える場合、誘導体化されたα(1→4)グルコピラノースポリマーは、生体適合性を有する応用組成物において溶解性を維持していることが望ましく、膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクス中に重合されうることが望ましい。
【0051】
前記α(1→4)グルコピラノースを基にしたマクロマーは、耐久性を有するヒドロゲルマトリクスになるまで膨潤することができるマトリクスを提供するのに十分な最終濃度で、前記マトリクス形成組成物中で用いられうる。前記耐久性を有するヒドロゲルマトリクスは、体内で、ある時間の経過後に分解することができる。
【0052】
多くの実施の形態で、前記α(1→4)グルコピラノースを基にしたマクロマーは、下記の濃度範囲で、膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスを形成するために用いられる組成物中に存在する。前記濃度範囲は、約50mg/mL以上、約600mg/mL以下、約100mg/mL以上、約500mg/mL以下、約150mg/mL以上、約450mg/mL以下、または約200mg/mL以上、約400mg/mL以下である。いくつかの実施形態において、前記α(1→4)グルコピラノースを基にしたマクロマーは、約300mg/mLの量で用いられる。
【0053】
上記の濃度範囲は、前記組成物(上記第二マクロマーも含む組成物)中に存在している、α(1→4)グルコピラノースを基にしたマクロマーの総量を表している。いくつかの実施の形態において、前記膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスは、レドックス重合によって形成され、該レドックス重合においては二つの独立した液体組成物が混合されると、前記マクロマーは、前記マトリクスを形成するために重合するということが認識されるべきである。そう考えると、混合前に、前記α(1→4)グルコピラノースを基にしたマクロマーは、上述の範囲より多い量(例えば、二倍の濃度)で前記組成物の一つに存在しうるが、混合されると、前記α(1→4)グルコピラノースを基にしたマクロマーは(重合によって前記マトリクス内に取り込まれる前に)、上述した範囲の濃度を有する。
【0054】
前記膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスを生成する組成物は、一以上の張り出した重合性基を備えた、親水性および生体適合性を有するマクロマーをも含んでいる。議論のために、この付加的なマクロマーを「第二マクロマー」と呼ぶ。生体安定性および生体適合性を有するポリマーは、本発明の方法によって組織と接触した場合に、モノマーユニットに分解されないポリマーを指す。しかしこの生体安定性および生体適合性を有するポリマーは、生体適合性を有しており、体内で悪影響の要因にはならない。このような生体安定性および生体適合性を有するポリマーは、排尿または排泄によって体外に排出されうる。
【0055】
例えば他のマクロマーのような他の材料を、膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスを形成するために任意に用いうる。このようなマクロマーは、「第三マクロマー」,「第四マクロマー」などと称することができる。もし、付加的なマクロマーが、マトリクスを形成するために用いられる場合、これらのマクロマーは、生分解性または生体安定性を有しうる。
【0056】
前記第二マクロマーを形成するために用いられうる典型的なポリマーは、下記に示す、親水性および生体適合性を有する一以上のポリマーを基にすることができる:ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(メタ)アクリルアミド(PAA)、および、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(エチレングリコール)(PEG)(例えば、米国特許第5,410,016号、米国特許第5,626,863号、米国特許第5,252,714号、米国特許第5,739,208号、および米国特許第5,672,662号参照)、PEG−PPO(ポリエチレングリコールとポリプロピレンオキシドとの共重合体)、親水性セグメント化ウレタン(例えば、米国特許第5,100,992号、米国特許第6,784,273号参照)、およびポリビニルアルコール(例えば、米国特許第6,676,971号、米国特許第6,710,126号参照)。
【0057】
いくつかの側面において、前記生分解性マトリクスを形成するために用いられる前記第二マクロマーは、100Da以上、約40kDa以下、約200Da以上、約20kDa以下、約200Da以上、約10kDa以下、約200Da以上、約5kDa以下、または、約200Da以上、約2,500Da以下の範囲の分子量を有する。
【0058】
いくつかの側面において、前記第二マクロマーは、オキシアルキレンポリマーから作られる。オキシアルキレンポリマーは、化学式成分−(R−O)−の繰り返し単位を含むポリマーを指す。ここで、Rは、炭素原子を1個以上、約8個以下有する、置換された、または置換されていない二価の炭化水素基である。いくつかの実施の形態において、Rは、2,3または4個の炭素原子を有する炭化水素基である。前記オキシアルキレンポリマーは、Rが異なるモノマーユニットから形成されうる。例えば、前記オキシアルキレンポリマーは、Rがそれぞれ、2個の炭素原子および3個の炭素原子を有するモノマーユニットの組み合わせから形成されうる。
【0059】
前記オキシアルキレンポリマーは、−(R−O)−以外のモノマーユニットからも形成されうる。いくつかの実施形態において、前記オキシアルキレンポリマーにおいて、−(R−O)−のモノマーユニットは、前記ポリマーに対して50重量%以上を占めている。
【0060】
前記オキシアルキレンポリマーは、エチレングリコールポリマーやプロピレングリコールポリマー(例えば、それぞれ、ポリ(エチレングリコール)、および、ポリ(プロピレングリコール))のようなオキシアルキレンポリマーでありうる。いくつかの場合、HO−(CH−CH−O)−Hの構造を有する、エチレングリコールポリマー、または、エチレングリコールオリゴマーは、前記生分解性マトリクスのための前記第二マクロマーを形成するために使われる。nの範囲は、例えば約3以上、約150以下である。そして、ポリ(エチレングリコール)の数平均分子量(M)の範囲は、約100Da以上、約5000Da以下、より典型的には、約200Da以上、約3500Da以下、約250Da以上、約2000Da以下、約250Da以上、約1500Da以下、または、約400Da以上、約1000Da以下である。
【0061】
ポリエーテルエステル共重合体も、前記第二マクロマー形成のために使われうる。概して、ポリエーテルエステル共重合体は、親水性ブロック(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)のようなポリアルキレングリコール)および疎水性ブロック(例えば、ポリエチレンテレフタレート)を含む、両親媒性のブロック共重合体である。ブロック共重合体の例としては、ポリ(エチレングリコール)を基にしたブロック、および、ポリ(ブチレンテレフタレート)を基にしたブロック(PEG/PBTポリマー)を含む共重合体である。この種のマルチブロック共重合体の例は、例えば、米国特許第5,980,948号に記載されている。PEG/PBTポリマーは、Octoplus BV(オランダ、ライデン)から商品名PolyActive(登録商標)として入手できる。
【0062】
他のPEGを含むブロック共重合体、例えば、ポリ(ヒドロキシ酪酸)(PHB)、ポリ(オキシエチレン)(POE)、ポリ(カプロラクトン)(PCL)、および、ポリ(ラクチド)(PLA)から選ばれる一以上の重合性ブロックを含むブロック共重合体のようなブロック共重合体は、Advanced Polymer Materials,Inc(カナダ、ケベック州、ラシーヌ)から入手できる。
【0063】
反応性酸素を含む基(例えば、酸化物)を有するモノマーから生成される多くのポリマーは、ヒドロキシル基含有末端を持っている。前記ヒドロキシル基含有末端は、反応性ヒドロキシル基および重合性基を有する化合物と反応し、前記マクロマーの末端に重合性基を与える。
【0064】
いくつかの側面で、膨潤性および分解性を有するポリマーマトリクスは、少なくとも、α(1→4)グルコピラノースを基にしたマクロマーおよび直鎖状オキシアルキレンマクロマーから形成される。直鎖状オキシアルキレンポリマーは、本明細書中に説明されている。いくつかの側面で、前記膨潤性および分解性を有するポリマーマトリクスは、少なくとも、α(1→4)グルコピラノースを基にしたマクロマーおよびオキシアルキレンポリマー領域を含む分岐化合物から形成される。いくつかの側面で、前記膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスは、少なくとも、α(1→4)グルコピラノースを基にしたマクロマー、親水性および生体適合性を有する直鎖状ポリマーを基にした第二マクロマー、並びに、親水性および生体適合性を有するポリマーの腕を含む分岐化合物を基にした第三マクロマーから形成される。オキシアルキレンポリマー領域を有する分岐化合物は、明細書中に記載されている。
【0065】
オキシアルキレンポリマーは、オキシアルキレンを基にしたマクロマーを生成する重合性基を加えることにより、効果的に誘導体化しうる。アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸またはメタクリル酸のような重合性基は、これらのポリマーの末端ヒドロキシル基と反応し、末端重合性基を与えることができる。アクリル酸塩およびメタクリル酸塩を含む、ポリ(エチレングリコール)またはポリ(プロピレングリコール)は、例えば、Aldrich Chemicalsから入手可能である。誘導体化の典型的なレベルは、オキシアルキレンポリマー1グラムあたり、約0.001mol以上、約0.01mol以下の重合性基の範囲である。
【0066】
酸化アルキレンポリマーを基にしたマクロマーのいくつかの特定の例としては、ポリ(プロピレングリコール)540−ジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)475−ジメタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)900−ジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)250−ジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)575−ジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)550−ジメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)750−ジメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)700−ジアクリレート、および、ポリ(エチレングリコール)1000−ジアクリレートである。
【0067】
重合部位を有する「非直鎖状」または「分岐」化合物は、直鎖状ポリマーとは異なった構造を有する化合物を指す(前記直鎖状ポリマーとは、その分子が、分岐も架橋構造も持たず、長い鎖状構造を形成したポリマーである。)。そのような化合物は、この化合物の一般的な結合部位に結合している多重重合「腕」を有しうる。非直鎖状の化合物または分岐化合物としては、次の一般的な構造を有する化合物が例示される。ただし、これに限定されるものではない。
【0068】
【化1】

【0069】
ここで、Xは、例えばC若しくはSから選ばれる結合原子、または、例えば単素環若しくは複素環のような結合構造である。Y〜Yは、それぞれ独立した架橋原子団である。前記架橋原子団としては、例えば、−C−O−が挙げられる。ここで、nは0または1以上の整数である。R〜Rは、それぞれ独立した親水性重合部位である。これらの重合部位は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。そして、これらの重合部位は、一以上の張り出した重合性基を有している。Zは、短鎖アルキル基のような非重合基である。
【0070】
【化2】

【0071】
ここで、Xは、例えばC若しくはSから選ばれる結合原子、または、例えば単素環若しくは複素環のような結合構造である。Y〜Yは、それぞれ独立した架橋原子団である。前記架橋原子団としては、例えば、−C−O−が挙げられる。ここで、nは0または1以上の整数である。R〜R4は、それぞれ独立した親水性重合部位である。これらの重合部位は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。そして、これらの重合部位は、一以上の張り出した重合性基を有している。
【0072】
【化3】

【0073】
ここで、Xは、例えばN、C−H若しくはS−Hから選ばれる結合原子または基、または、例えば単素環若しくは複素環のような結合構造である。YおよびYは、それぞれ独立した架橋原子団である。前記架橋原子団としては、例えば、−C−O−が挙げられる。ここで、nは0または1以上の整数である。R〜Rは、それぞれ独立した親水性重合部位である。これらの重合部位は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。そして、これらの重合部位は、一以上の張り出した重合性基を有している。
【0074】
多くの側面において、前記分岐化合物は、この化合物の重合分岐部位(R)に対して一つの重合性基を有している。多くの側面において、前記重合性基は、重合部位Rの末端に位置している。
【0075】
分岐化合物は、低分子量のポリオール(例えば、200Da以下の分子量を有するポリオール)のようなポリオールから調製しうる。いくつかの側面において、前記分岐化合物は、トリオール、テトラオールまたは他の多官能アルコール由来である。通常、ポリオール誘導体は、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンおよびグリセロールの誘導体を含む。
【0076】
前記分岐化合物の重合部位は、本明細書中に記載されているような、PVP、PEO、ポリ(エチルオキサゾリン)、PPO、PAAおよびポリ(メタ)アクリル酸、PEG、および、PEG−PPO、親水性セグメント化ウレタン、およびポリビニルアルコールから選ばれうる。
【0077】
いくつかの側面において、前記分岐成分は、エチレングリコールポリマーのような、オキシアルキレンポリマーである一以上の重合部位を含む。
【0078】
例えば、生分解性マトリクスを形成する成分として用いうる、PEG−トリアクリル酸マクロマー(エトキシルトリメチロールプロパン(20/3 EO/OH)トリアクリル酸マクロマー)の生成物は、米国特許出願公報第2004/0202774A1号(Chudzikら)の実施例5に記載されている。
【0079】
前記第二マクロマーは、膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスを形成するのに十分な最終濃度で、前記α(1→4)グルコピラノースを基にしたマクロマーと組み合わせて用いられうる。多くの実施形態において、前記第二マクロマーは、膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスを形成するための組成物中に、約5mg/mL以上、約350mg/mL以下、約10mg/mL以上、約300mg/mL以下、約20mg/L以上、約250mg/mL以下、または、約50mg/L以上、約200mg/mL以下の濃度範囲で存在する。いくつかの実施形態において、前記α(1→4)グルコピラノースを基にしたマクロマーは、約150mg/mLの量で用いられている。
【0080】
前記濃度範囲は、組成物(前記α(1→4)グルコピラノースを基にしたマクロマーをも含む組成物)中の前記第二マクロマーの総量を示している。上述のように、いくつかの実施形態において、前記膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスは、レドックス重合によって形成されるということが認識されるべきである。レドックス重合は、二種の独立した液体組成物が混合され、混合されるとマクロマーが即時重合しマトリクスを形成するというものである。このことから、前記第二マクロマーは、混合前に、上述の濃度範囲より多い量(例えば二倍の濃度)で前記組成物の一つに存在しうる。しかし、前記第二マクロマーは、混合されると(重合によって前記マトリクス内に取り込まれる前に)、上述した範囲の濃度を有する。
【0081】
前記の、マトリクスを形成する組成物中における、マクロマーマトリクスの量は、前記α(1→4)グルコピラノースを基にしたマクロマーの量と、第二マクロマー(例えば、酸化アルキレンポリマーを基にしたマクロマー)の量との重量比で記載されうる。
【0082】
いくつかの実施形態において、前記α(1→4)グルコピラノースを基にしたマクロマーの量と、第二マクロマーの量との重量比は、約200:1〜約1:10の範囲内、約50:1〜約1:5の範囲内、そしてより好ましくは約10:1〜約1:2の範囲内である。典型的な一つの側面において、前記比は、約3:1である。
【0083】
したがって、膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスは、酵素分解性ポリマーセグメントおよび非分解性ポリマーセグメントを有する。それらのポリマーセグメントは、重合基を通じて架橋されている。状況に応じて、前記重合部位と、前記重合された官能基との結合によっては、前記ポリマーマトリクスは、酵素分解されうる他、非酵素加水分解もされうる。
【0084】
前記膨潤性および生分解性ポリマーマトリクスは、脱水状態で標的部位に配置され、そこで膨潤する。または、前記ポリマーマトリクスは膨潤状態で標的部位に配置されうる。次に、前記膨潤したポリマーマトリクスは、標的部位で、例えば標的領域の閉塞のような効果を生む。ある時間の経過後、前記膨潤したポリマーマトリクスは、分解される。その分解は、前記ポリ−α(1→4)グルコピラノースセグメントの酵素分解を引き起こすアミラーゼによって、完全にまたは部分的に起こる。また、前記ポリ−α(1→4)グルコピラノースセグメントの分解により、前記第二マクロマーから形成された前記ポリマーセグメントが遊離し、体外に排出される。
【0085】
また、前記重合性基(例えば、アクリル酸塩またはメタクリル酸塩)の結合によっては、不飽和エステルの非酵素的加水分解も起こりうる。該非酵素的加水分解は、さらに、前記マトリクスの分解を促進する。
【0086】
一般的に、前記膨潤性および分解性を有するポリマーマトリクスは、少なくとも前記ポリ−α(1→4)グルコピラノースを基としたマクロマー、第二マクロマーおよび重合開始剤を含む組成物から形成される。他の任意の成分が、前記マトリクスを形成するための組成物中に含まれていてもよい。以上の任意成分のいくつかは、本明細書中に記載されている。
【0087】
おおむね、前記組成物は、好適な液体中に、前記マトリクスを形成する成分を溶解または懸濁することによって調製される。好適な液体には、水、および、アルコールのようなその他の生体適合性極性液体が含まれる。極性液体の組み合わせも用いうる。前記マトリクスを形成する組成物は、実行されるマトリクス形成工程の形態に適した粘性を有しうる。
【0088】
前記マトリクスを形成する組成物について説明する他の方法として、前記組成物中の、マトリクス形成材料の総量が挙げられる。多くの実施形態において、マトリクス形成材料(前記α(1→4)グルコピラノースを基としたマクロマーおよび前記第二マクロマーを含む)の総量は、約100mg/mL以上、約600mg/mL以下、約150mg/mL以上、約500mg/mL以下、約200mg/mL以上、約450mg/mL以下、または、約250mg/mL以上、約400mg/mL以下の範囲内にある。いくつかの実施形態において、前記組成物中のマトリクス形成材料の総量は、約350mg/mLである。
【0089】
通常、前記組成物は、重合性基からの反応性種の形成を促進しうる開始剤を含む。例えば、前記開始剤は、前記組成物中に存在する前記マクロマーのフリーラジカル反応を促進しうる。一つの具体例において、前記開始剤は、光反応性基を含む化合物(光開始剤)である。例えば、前記光反応性基は、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン、アントロン様の複素環類、および、それらの誘導体から選ばれるアリルケトン光官能基を含みうる。
【0090】
いくつかの側面において、前記光開始剤は、一以上の荷電された基を有している。該荷電された基の存在は、水系中で光開始剤(アリルケトンのような光反応性基を含みうる光開始剤)の溶解度を増加しうる。好適な荷電された基としては、例えば、スルホン酸塩、ホスホン酸塩、カルボン酸塩等の有機酸塩、第四級アンモニウム、スルホニウム、ホスホニウム、プロトン化されたアミン等のオニウム基を挙げることができる。したがって、例えば、好適な光開始剤は、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン、アントロン様の複素環類、および、それらの誘導体から選ばれる一以上のアリルケトン光官能基を含みうる。このタイプの水溶性光開始剤の例は、米国特許公開第6,278,018号に記載されている。
【0091】
水溶性重合開始剤は、前記マクロマー成分の重合および前記マトリクスの形成を開始するのに十分な濃度で用いられうる。例えば、明細書中に記載されている水溶性光開始剤は、約0.5mg/mL以上の濃度で用いられうる。いくつかの実施形態において、前記光開始剤は、前記マトリクスを形成する成分と共に、約1.0mg/mLの濃度で用いられる。
【0092】
熱反応開始剤も、張り出したカップリング官能基を有する親水性ポリマーの重合を促進するために用いうる。熱反応開始剤の例としては、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、および、過酸化ベンゾイルの類似物が含まれる。レドックス開始剤は、張り出したカップリング官能基を有する前記親水性ポリマーの重合を促進するためにも用いられうる。一般に、有機酸化剤と無機酸化剤との組み合わせ、並びに有機還元剤と無機還元剤との組み合わせは、重合反応に必要なラジカルを発生させるために用いられる。レドックス開始剤に関する記載は、Principles of Polymerization, 2ndEdition, Odian G., John Wiley and Sons, pgs 201-204, (1981)に見出される。
【0093】
あるいはまた、膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスの形成は、対になった酸化剤/還元剤、つまり「レドックスペア」の組み合わせによって、前記マトリクスを形成する材料の存在下において起こりうる。
【0094】
典型的な開始剤は過酸化物を含んでいる。当該過酸化物は、過酸化水素、金属酸化物、および、グルコースオキシダーゼのような酸化酵素を含んでいる。典型的な活性化剤は、Li、Na、Mg、Fe、Zn、Alなどの陽電荷を帯びた金属元素の塩およびその誘導体、並びに還元酵素を含んでいる。金属または過硫酸のアンモニウム塩のような他の試薬は、前記マトリクスを形成する組成物の重合を促進する組成物中に存在しうる。
【0095】
前記レドックスペアは、適切な方法で、前記マトリクスを形成する材料の存在下で、混合されうる。例えば、前記第一成分および前記酸化剤を含む第一組成物、並びに、前記還元剤および前記第二成分を含む第二組成物が生成されうる。前記第一組成物および前記第二組成物が混合されると、重合反応が開始し、膨潤性ポリマーマトリクスが形成され始める。
【0096】
前記マトリクス調製の一形態において、第一組成物および第二組成物は、二元シリンジ混合装置の別々のチャンバーに置かれる。マトリクス形成が求められるとき、前記装置中の両方のシリンジプランジャーを手の圧力で同時に押し込むと、前記第一組成物および第二組成物が、それぞれのシリンジから、固定混合装置(例えば「分離流動型」ミキサー)に流れる。そしてそこで、前記組成物は、規定の比率でお互いに混合される。混合された後、混合された組成物は、単一の排出口を通じて前記装置から出る。前記排出口は、必要に応じて適当な場所に配置されうる。有用な二元シリンジ混合装置は、Mixpac Systems AG(Rotkreuz, CH)製の商品名MIXPAC(登録商標)として入手可能である。
【0097】
前記マトリクスを形成する組成物は、一以上の他の補助剤をも含んでいてもよい。前記補助剤は、前記マトリクスの形成の促進を補助する。これらの補助剤は、公知の重合共開始剤、還元剤、および/または、ポリマー化促進剤を含みうる。これらの補助剤は、有用な濃度で前記組成物中に含まれうる。
【0098】
典型的な共開始剤は、例えば、過酸化水素(H)の誘導体である有機過酸化物を含んでいる。その有機過酸化物は、水素原子の一つまたは両方が有機官能基によって置換されている。有機過酸化物は、分子構造中に−O−O−結合を含んでいる。そして、前記過酸化物の化学的特性は、この結合に由来する。前記過酸化物重合共開始剤は、アルキルヒドロペルオキシドのように、安定した有機過酸化物でありうる。典型的なアルキルヒドロペルオキシドは、t−ブチルヒドロペルオキシド、p−ジイソプロピルベンゼンペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、アセチルペルオキシド、t−アミル過酸化水素、およびクミル過酸化水素である。
【0099】
他の重合共開始剤は、2−アゾビス(イソブチロニトリル)のようなアゾ化合物、過硫酸アンモニウム、および過硫酸カリウムを含む。
【0100】
前記マトリクスを形成する組成物は、第三級アミンのような還元剤を含みうる。多くの場合、第三級アミンのような還元剤は、フリーラジカルの発生を改善しうる。前記アミン化合物の例としては、n−ブチルアミンのような第一級アミン;ジフェニルアミンのような第二級アミン;トリエチルアミンのような脂肪族第三級アミン;および、p−ジメチルアミノ安息香酸のような芳香族第三級アミンが含まれる。本発明の他の側面として、前記これらの成分の他に、前記膨潤性を有するポリマーマトリクスを形成するために用いられる組成物として、一以上の重合促進剤を含みうる。重合促進剤としては、例えばn−ビニルピロリドンなどを用いることができる。いくつかの側面において、生体適合性官能基(例えば、生体適合性重合促進剤)を有する重合促進剤が、本発明の組成物中に含まれる。また、前記生体適合性重合促進剤は、N−ビニルアミド基のようなN−ビニル基をも含みうる。生体適合性重合促進剤は、米国特許出願公報第2005/0112086号に記載されている。
【0101】
一般的に、マトリクス形成は重合開始剤を活性化することによって起こる。前記活性化は、前記組成物中の前記マクロマー成分のフリーラジカル重合を引き起こす。UV源および短波長可視光源を含む光源は、光開始剤を活性化するために使われうる。そして、適切な光源は、用いる光開始剤が活性化される波長を基に選択することができる。前記重合組成物の活性化は、体から離れたところで、または体内の標的部位で行いうる(例えば、in situ重合反応)。
【0102】
いくつかの側面で、「あらかじめ形成された」膨潤性ポリマーマトリクスが調製される。前記「あらかじめ形成された」膨潤性ポリマーマトリクスは、in situで形成されないが、組織部位からかなり離れた場所で形成されるマトリクスを指す。あらかじめ形成された膨潤性マトリクスは、明確な構造を有しうる。あらかじめ形成されたマトリクスは、当該マトリクスを特定の形にすることができるように、モールドまたはキャスティングを用いて作られうる。あるいはまた、あらかじめ形成されたマトリクスは、作られ、そして、次に、切断のような工程によって、希望する形に形成される。組織治療に有用な典型的な形は、特に限定されるわけではないが、球状の、円筒状の、貝殻状の、平らな、長方形の、正方形の、および曲面状の形を含む。
【0103】
本発明のいくつかの側面で、前記膨潤性を有するポリマーマトリクスは、医療デバイスと組み合わせて形成される。例えば、前記マトリクスは、デバイスの部分または全体の、外側被覆またはコーティングとして形成されうる。
【0104】
「コーティング」とは、一以上の層状のマトリクス材料を示す。そのコーティングは、従来公知のコーティング技術によって、部材表面の全体または一部分に、前記マトリクス形成材料を適合させることによって形成される。
【0105】
「外側被覆」とは、部材表面の全体または一部分に形成したマトリクス材料をいう。マトリクス材料の外側被覆は、一般的に、コーティングより厚く、そして、通常、コーティング工程よりむしろ成形過程を用いることによって形成される。
【0106】
「医療デバイス」とは、医療で使用される部材をいう。通常、マトリクスは移植可能な医療デバイスの表面上に形成される。
【0107】
構造的な見地からは、移植可能医療デバイスは、棒状、ペレット状、球状、またはワイヤー状などのように簡単な物でありうる。その移植可能医療デバイス上に、膨潤性および生分解性を有するマトリクスを形成することができる。また、前記移植可能医療デバイスは、例えばステントのような腔内人工器官に見られるように、より複雑な構造、すなわち幾何学的構造も取りうる。
【0108】
(前記α(1→4)グルコピラノースを基にしたマクロマーおよび前記第二マクロマーの組み合わせを用いて形成される)膨潤可能な生分解性ポリマーマトリクスまたはそのマトリクスの一部を有する移植可能デバイスは、例えば、動脈、静脈、瘻管、または、動脈瘤のような血管系(移植可能な血管デバイス)内に配置され構成されうる。いくつかの場合、前記移植可能デバイスは、血管閉塞コイル、ワイヤー、または、動脈瘤に挿入できるストリングから選ばれる閉塞デバイスである。いくつかの特定の血管閉塞デバイスは、取り外し可能な塞栓コイルを含む。いくつかの場合、前記移植可能なデバイスはステントである。
【0109】
前記膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスがその上に形成されうる他の医療部材は、特に限定されるわけではないが、以下のものを含む。それは、小径の移植片、腹部大動脈瘤移植片;創傷被覆材および創傷処置デバイス;止血障壁;メッシュおよびヘルニアプラグ;子宮出血パッチ、心房敗血性欠損(ASD)パッチ、卵円孔開存(PFO)パッチ、心室中隔欠損(VSD)パッチ、および、その他一般的な心臓のためのパッチ、などのパッチ;ASD、PFOおよびVSDの閉塞;経皮閉塞デバイス;避妊具;乳房インプラント;整形外科用の接合インプラントのような整形外科用デバイス、骨の修復/増大のためのデバイス、軟骨修復デバイス;泌尿器デバイス、および、泌尿器インプラントのような尿道デバイス、および、膀胱デバイスである。
【0110】
移植可能医療デバイスは、レニウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、チタン、ニッケル、およびこれらの金属の合金、例えばステンレス、チタン/ニッケル、および、ニチノール合金なども用いうるが、白金、金またはタングステンなどの金属から調製されうる。
【0111】
前記の金属を含む医療デバイスの表面は、必要に応じて、生体材料の表面特性を変えるために、(例えば、Parylene(登録商標)を含むコーティング組成物を用いて)前処理されうる。金属表面は、ヒドロキシシランまたはクロロシランのようなシラン試薬によっても処理されうる。
【0112】
移植可能医療デバイスは、部分的にまたは全体的に、可塑性ポリマーからも製造されうる。この点において、前記膨潤性ポリマーマトリクスは、プラスチック表面上に形成されうる。プラスチックポリマーは、付加重合または縮合重合のどちらかによって生成されるオリゴマー、ホモポリマーおよび共重合体を含む合成ポリマーから形成されたポリマーを含む。特に限定されるものではないが、好適な付加重合体の例として、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸グリセリル、メタクリル酸グリセリル、メタクリルアミド、および、アクリルアミドから重合されたポリマーのようなアクリルポリマー;、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、二フッ化ビニリデン、およびスチレンなどのビニルポリマーを挙げることができる。特に限定されるものではないが、縮合ポリマーの例として、例えばポリカプロラクタムのようなナイロン、ポリラウリルラクタム、ポリヘキサメチレンアジポアミド、および、ポリヘキサメチレンドデカンジアミド、および、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリジメチルシロキサン、および、ポリエーテルケトンである。
【0113】
膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスの「外側被覆」を有する医療デバイスは、鋳型、前記マトリクスを形成する材料を含む組成物、および医療装置を用いる工程で形成されうる。前記医療デバイスは、前記組成物が前記医療デバイスの表面の全体または一部と接触して配置されうるように、前記鋳型の一部に配置されうる。例えば、棒状またはコイル状の形をしたデバイスは、前記組成物が前記デバイスの表面全体と接触しうるように、鋳型内に固定される。次に、前記組成物が鋳型に添加され、前記組成物は、マトリクスの形成を促進するために処理されうる。いくつかの場合において、前記鋳型は、UV光を通過できる材料で作られている。そして、前記組成物は、前記UVによって活性化され、マトリクス形成を行う光開始剤を含んでいてもよい。
【0114】
他の代表的な調製法では、マトリクス外側被覆は、前記組成物を前記鋳型に添加し、次に前記組成物の粘性を増加させるために、前記マトリクスを部分的に重合することによって形成することができる。次に、前記医療デバイスは、前記の部分的に重合された組成物中に配置されうる。前記組成物は粘性が増加しているので、所望するように、前記組成物中に前記デバイスを浮遊させる。次に、前記組成物は、前記組成物の材料を凝固させるために、十分に重合されうる。これによって、前記デバイス上の外側被覆として前記膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスが形成される。前記膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスが外側被覆として形成された後、前記デバイスは前記鋳型から除去されうる。
【0115】
前記ポリマーマトリクスの重量は、デバイス全体の重量に対してかなりの割合でありうる。前記マトリクスが、部分的に完全な水和状態となっているとき、前記マトリクスは、前記マトリクスが外側被覆する前記デバイスよりもかなり大きい重量を有しうる。
【0116】
前記外側被覆は、所望の医療デバイス上に形成することができ、体内の標的部位を閉塞するのに適した大きさを有しうる。外側被覆中の前記膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスは、通常、コーティングを形成する前記マトリクスよりも厚いものとなっており、標的部位を閉塞するために有利である。
【0117】
いくつかの側面において、前記マトリクスは、約50μm以上、約500μm以下の範囲の厚み、より好ましくは、約100μm以上、約300μm以下の範囲の厚みを有する。次に、前記マトリクスは、乾燥されると、各々、約25μm以上、約400μm以下の厚み、より好ましくは、各々、約75μm以上、約250μm以下の厚みを有しうる。前記マトリクスは、(例えば、in vivoで)水和すると、各々、約100μm以上、約2500μm以下の厚み、より好ましくは、各々、約750μm以上、約1500μm以下の厚みに膨潤しうる。
【0118】
具体例として、約0.5mmの直径を有する移植可能なデバイスの場合、外側被覆の形状の膨潤性ポリマーマトリクスが前記デバイス上に形成される。前記外側被覆は、乾燥状態において、約100μm以上、約450μm以下の厚み、または約100μm以上、約300μm以下の厚みを有している。前記標的部位への部材の輸送中および/または輸送後、前記コーティングは、膨潤して、約750μm以上、約1500μm以下の範囲の厚さを有する。それによって、標的部位を閉塞することになる。
【0119】
外側被覆を有するデバイスは、体内の標的部位に輸送されうる。そして、標的部位中でヒドロゲルに水和する。前記デバイスの輸送は、カテーテル、および/またはガイドワイヤーのような他の誘導器具を用いて行われうる。
【0120】
前記膨潤性ポリマーマトリクスは、約30分以上、約2時間以下、または、約1時間という、比較的短時間で水和しうる。前記ポリマーマトリクスの膨潤は、前記ヒドロゲルが、希望するように前記標的部位を閉塞するかどうかを決定するため、観察されうる。
【0121】
他の側面において、前記膨潤性ポリマーマトリクスは、医療デバイス上をコーティングする形態として存在する。前記第一マクロマーおよび前記第二マクロマーを含むマトリクスによるコーティングは、さまざまな方法で形成されうる。
【0122】
一実施形態においては、前記第一マクロマーおよび前記第二マクロマーを含む組成物で、コーティングを形成する基質の表面上を浸漬コーティングする。次に、前記表面上の前記組成物は、マトリクスを形成するために処理されうる。例えば、前記第一マクロマーおよび前記第二マクロマーを含む組成物、および、光活性重合開始剤によって、前記デバイス表面上を浸漬コーティングする。浸漬コーティング段階中および/または浸漬コーティング段階後、前記浸漬コーティングに用いた材料に照射することにより、前記第一成分および前記第二成分の重合、およびマトリクスの形成を促進することができる。
【0123】
前記組成物へのブラッシングまたはスプレーのような他の技術も、前記コーティングを形成するために用いうる。スプレーコーティング法は、前記デバイス表面上に組成物をスプレーし、次に、コーティングを形成するための組成物を処理することによって行われうる。
【0124】
本発明の他の側面において、前記α(1→4)グルコピラノースを基にしたマクロマーおよび前記第二マクロマーは、移植可能な部材を形成するために用いられうる。その場合、前記マトリクスと関連する非ヒドロゲル材料の存在は不要である。言い換えれば、前記膨潤性マトリクスは、それ自身で、前記移植可能な部材を形成するということである。
【0125】
そのような、移植可能なマトリクス部材は、単純なまたは複雑な立体形を有しうる。単純な立体形は、フィラメント(例えば、細線、糸、ロッドなど)の形をしたデバイスによって例示される。単純な立体形を有するマトリクス部材は、さまざまな方法で調製されうる。前記マトリクス部材を形成する一つの方法では、前記の外側被覆されたデバイスを形成するために用いたのと同じ工程を用いるが、鋳型中にデバイスを含まない。一方、例えば、前記鋳型は、身体器官の第一の形態に対応する内部領域を有する、一片の管材料でありうる。次に前記組成物は、前記管材料を満たすため、前記管材料に注入されうる。次に、前記管材料中の前記組成物は、(例えば光による重合開始のように)前記重合開始剤を活性化するために処理されうる。重合反応は、前記α(1→4)グルコピラノースを基にしたマクロマーおよび前記第二マクロマーの架橋反応を促進し、前記鋳型の形態にポリマーマトリクスを形成する。
【0126】
多くの場合において、前記マトリクス部材は、前記外側被覆されたデバイスと同様に用いられうる。
【0127】
本発明の重合性を有する材料も、体内の標的部位でin situ重合された集合体を形成するために用いられうる。一般的に、前記α(1→4)グルコピラノースを基にしたマクロマーおよび前記第二マクロマーを含む組成物は、標的部位へ輸送され、使用されうる。そして、次に、前記組成物は、重合反応、および、前記膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスの形成を促進するために処理される。いくつかの場合において、二つの別々の溶液(例えば、互いにレドックスペアの一方を有する溶液)は、輸送され、そして、標的部位においてin situで混合される。前記溶液の混合によって、標的部位で、重合反応が起こり、前記膨潤性および生分解性ポリマーマトリクスが形成される。いくつかの処理法において、標的部位において形成された前記マトリクスは、水和し、標的部位を閉塞する。
【0128】
いくつかの実施形態において、重合可能な材料を含む組成物は、小さなゲージ配送導管によって標的部位に送られ、標的部位に前記組成物が配置されうる。重合反応およびマトリクス形成は、in situで起こりうる。標的部位(例えば、神経動脈瘤(neuroaneurysm))へのポリマー化可能な組成物の輸送は、マイクロカテーテルを使用することで実行されうる。マイクロカテーテルは、一般的に、非常に小さな直径を有している。当該小さな直径とは、例えば、およそ5french(fr)以下である(「フレンチサイズ」(fr)は、一般的に、カテーテルユニットの外径の単位であり、(Frサイズ)×0.33=(mmで表したカテーテルの外径))。約1.7french以上、約2.3french以下のように、約2.3french以下のサイズを有する典型的なマイクロカテーテルは、例えば、Boston Scientificから入手可能(例えば、Excdlsior(登録商標)SL−10)である。
【0129】
例えば、前記生分解性マトリクスは、次の二つの方法のどちらか一方でin situで形成される。第一の方法は、マトリクス形成組成物を調製し、次に、マイクロカテーテルを通じてマトリクス形成組成物を標的部位に輸送する方法である。第二の方法は、二つの組成物を独立して標的部位に輸送し、そこで混合し、前記マクロマーの重合およびマトリクスの形成を行う方法である。例えば、組成物は、マイクロカテーテルを通じて輸送する前に、混合されうる。本明細書中に記載されているように、多くの側面において、マクロマー含有組成物のポリマー化反応は、レドックスポリマー化開始剤を用いることによって開始する。本明細書中で議論されているように、混合組成物は、MIXPAC(登録商標)(Mixpac SystemsAG)のような混合装置を用いることによって。単腔カテーテルへ導入する前に調製される。
【0130】
もし、二つの組成物が、別々に標的部位に輸送される場合は、二元的内腔マイクロカテーテルを用いうる。
【0131】
本発明における前記膨潤性を有するポリマーマトリクスは、ポリマーマトリクス中に生物活性剤をも含みうる。いくつかの生成物において、前記生物活性剤は、前記マトリクスの分解中に放出されうる。特に限定されるものではないが、前記マトリクスに含まれうるる生物活性剤の例としては、以下に示すものがある。ACE阻害剤、アクチン阻害剤、鎮痛剤、麻酔薬、抗高血圧薬、抗ポリメラーゼ剤、分泌抑制剤、抗エイズ剤、抗生物質、抗がん剤、抗コリン剤、抗凝固剤、抗痙攣剤、抗うつ剤、抗嘔吐剤、抗真菌剤、抗緑内障剤、抗ヒスタミン剤、降圧剤、抗炎症剤(例えば、非ステロイド系抗炎症剤)、抗代謝物、抗分裂剤、抗酸化剤、抗寄生虫薬および/または抗パーキンソン薬、抗増殖性物質(抗血管新生剤を含む)、抗原虫剤、抗精神病薬、解熱剤、防腐剤、抗痙攣薬、抗ウイルス剤、カルシウム拮抗剤、細胞応答修飾因子、キレート剤、化学療法剤、ドーパミンアゴニスト、細胞外マトリクス成分、線維素溶解剤、フリーラジカル捕捉剤、成長ホルモン拮抗剤、催眠薬、免疫抑制剤、イムノトキシン、表面糖タンパク受容体の阻害剤、微小管阻害剤、縮瞳薬、筋萎縮剤、筋弛緩剤、神経毒、神経伝達物質、ポリヌクレオチドおよびその誘導体、オピオイド、光線力学的療法剤、プロスタグランジン、変形阻害剤、スタチン系薬剤、ステロイド、血栓溶解剤、精神安定剤、血管拡張剤、成長因子、および血管痙攣阻害剤。一以上の生物活性剤は、所望の生物学的応答を与えるのに十分な量をともなって、前記ポリマーマトリクス中に存在しうる。
【0132】
本発明のいくつかの側面において、前記マトリクスは、高分子の生物活性剤を含む。典型的な高分子は、ポリヌクレオチド、多糖類、およびポリペプチドからなる群から選ばれうる。いくつかの側面において、前記生物活性剤は、約1000Da以上の分子量を有する。
【0133】
前記マトリクスから放出されうる生物活性剤の一種は、ポリヌクレオチドを含む。本明細書中で、「ポリヌクレオチド」は、二以上の単量体ヌクレオチドの重合体を含んでいる。ヌクレオチドは、DNA(アデニン、チミン、グアニン、およびシトシンを基にしたデオキシリボヌクレオチド)、および、RNA(アデニン、ウラシル、グアニン、およびシトシンを基にしたリボヌクレオチド)の中で見出される、天然に生じるヌクレオチドから選ばれうる。また、同様に、非天然ヌクレオチドまたは合成ヌクレオチドからも選ばれる。
【0134】
前記マトリクスから放出されうるポリヌクレオチドのタイプは、以下のタイプを含む。プラスミド、ファージ、コスミド、エピソーム、結合可能なDNA断片、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスDNA、アンチセンスRNA、アプタマー、修飾されたDNA、修飾されたRNA、iRNA(免疫リボ核酸)、リボザイム、siRNA(small interfering RNA)、miRNA(マイクロRNA)、固定された核酸、およびshRNA(短ヘアピンRNA)。
【0135】
もし、前記マトリクス中に生物活性剤を含ませたい場合、生物活性剤を含むマトリクスを形成し、供給するために、種々の方法を利用しうる。例えば、いくつかの実施の形態において、前記生物活性剤を、マトリクスを形成する組成物中に溶解させ、次に、前記組成物のマクロマーを重合して、前記マトリクス中の生物活性剤を取り込む。体内の標的部位での配置に続いて、前記生物活性剤は、前記マトリクスの分解、および/または前記マトリクス外への生物活性剤の拡散によって放出されうる。
【0136】
他の実施形態において、前記生物活性剤は、前記マトリクスを形成する組成物中に浮遊しており、前記組成物のマクロマーが重合されると、結果として、生物活性剤は前記マトリクス中に取り込まれる。
【0137】
いくつかの場合において、前記生物活性剤は、微粒子の形態でマトリクス中に存在しうる。「微粒子の形態」は、一般に、生物活性剤の小さな粒子をいう。生物活性剤の小さな粒子は、生物活性剤の固形塊の微粉末化、製粉化、研磨、圧搾および打撃などの工程によって形成されうる。
【0138】
生物活性剤の微粒子は、前記生物活性剤の粉末組成物に由来しうる。いくつかの場合において、生物活性剤の粉末は、析出および/または結晶化、並びにスプレー乾燥を含む工程から形成されうる。生物活性剤の微粒子は、マイクロ粒子または小球体の形体でありうる。前記生物活性剤のマイクロ粒子は、任意の三次元構造を有しうる。当該任意の三次元構造は、本明細書中に記載された前記マクロマーによって形成された前記マトリクス中に固定されうる。小球体は、球状または実質的に球状のマイクロ粒子である。
【0139】
生物活性剤を含むマイクロ粒子は、実質的に、または完全に、生物活性剤から形成されうる。または、前記マイクロ粒子は、生物活性剤と、賦形用の化合物または高分子材料のような不活性剤との組み合わせを含みうる。
【0140】
一以上の生物活性剤だけから形成されたマイクロ粒子は、従来技術に記載されている。例えば、パクリタキセルのマイクロ粒子の生成体が、米国特許第6,610,317号に記載されている。したがって、前記生物活性剤は、低分子量化合物でありうる。他の例として、前記マイクロ粒子は、ポリペプチドのような高分子化合物から形成されうる。ポリペプチドマイクロ粒子は、米国特許出願第12/215,504号(2008年6月27日出願)(Slagerら)に記載されている。
【0141】
いくつかの側面において、前記膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスは、向繊維形成剤をも含みうる。向繊維形成剤は、前記ヒドロゲルの周囲で、高速かつ局所的な繊維形成反応を促進しうる。このことは、凝固因子の集積、および、前記ヒドロゲルとともにフィブリンの凝塊を形成することを導きうる。いくつかの側面において、前記の向繊維形成剤はポリマーである。当該ポリマーは、コラーゲンのような天然ポリマーまたは合成高分子に基づきうる。
【0142】
任意に、前記生物活性剤に、前記マトリクスを形成するポリマーセグメントを結合しうる。例えば、生物活性剤は、重合性基を含んでいてもよく、α(1→4)グルコピラノースを基にしたマクロマーおよび前記第二マクロマーと反応し、前記マトリクス中に共有結合されうる。マトリクスタンパク質を基にしたマクロマーの例として、米国特許出願公開2006/0105012A1号の実施例12において記載されているコラーゲンマクロマーがある。
【0143】
あるいはまた、生物活性剤は、光反応性基によってポリマーセグメントに共有結合しうる。例えば、光コラーゲン(米国特許第5,744,515号参照)のような光官能基由来のマトリクスタンパク質は、活性化されることにより、前記マトリクスを形成する前記ポリマー材料にコラーゲンを結合させる。
【0144】
前記膨潤性および生分解性を有するポリマーマトリクスは、イメージング材料をも含みうる。イメージング材料は、体内に移植されたポリマーマトリクスまたは体内に形成されたポリマーマトリクスの可視化を容易にしうる。医療用イメージング材料は、よく知られている。典型的なイメージング材料は、ナノ粒子酸化鉄、Gd、もしくはMn、放射線同位体、および、非毒性放射線不透マーカー(例えば、かご型硫酸バリウム、および、三酸化ビスマス)のような、常磁性材料を含んでいる。放射線不透剤(例えば、放射線不透材料)は、前記マトリクスを生成するために用いられる組成物中に含まれうる。放射線不透性の程度は、前記マトリクス中の放射線不透剤の濃度を調整することによって変化しうる。一般的な放射線不透材料は、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、および、二酸化ジルコニウムである。他の放射線不透材料の例としては、カドミウム、タングステン、金、タンタル、ビスマス、白金、イリジウム、および、ロジウムが挙げられる。
【0145】
常時性共鳴イメージング、超音波イメージング、エックス線手段、透視性診断法、または、他の適切な検出技術により、前記材料を含む膨潤性マトリクスまたは膨潤したマトリクスを検出しうる。他の実施例として、気相化学物質を含むマイクロ粒子が、前記マトリクス中に含まれていてもよく、超音波イメージングに用いられうる。有用な気相化学物質には、ペルフルオロペンタン、および、ペルフルオロヘキサンのようなペルフルオロ炭化水素が含まれる。それらは、米国特許第5,558,854号に記載されている。超音波イメージングに有用な他の気相化学物質は、米国特許第6,261,537号に見出すことができる。
【0146】
前記マトリクスの機械的性質を決定するために試験を行いうる。動的な機械的加熱試験は、前記マトリクスが変形するような圧力下での前記マトリクスの機械的応答を計測することによって、前記マトリクスの粘弾性および流動性に関する情報を得ることができる。計測には、圧縮率、および、剪断弾性率の決定を含みうる。主要な粘性パラメーター(圧縮率および剪断弾性率を含む)は、応力、歪、振動数、温度、または時間の関数としての変動中に測定されうる。商業的に、市販されているレオメーター(例えば、ニューカッスル、デラウェアのTA Instruments製)が、前記の計測に使われうる。ヒドロゲルの機械的性質を測定するための試験は、Anseth et al. (1996) Mechanical properties of hydrogels and their experimental determination, Biomaterials, 17:1647にも記載されている。
【0147】
前記マトリクスは、複素動的弾性率(G):G=G’+iG’’=σ*/γ*を決定するために測定されうる。ここで、G’は実数(弾性率または貯蔵弾性率)であり、G’’は虚数(粘性率または損失率)である。これらの定義は、剪断形態での試験に適合する。その中で、Gは剪断弾性率を示す。σは剪断応力を示す。γは剪断歪を示す。
【0148】
前記ヒドロゲルの膨潤圧(または浸透圧)も計測されうる。商業的に、市販されているテクスチャーアナライザ(例えば、Stable Micro Systems製、Texture Technologies販売(ニューヨーク州スカースデール))は、これらの計測に用いうる。テクスチャーアナライザは、引っ張りまたは圧縮における力および距離を計測することができる。
【0149】
いくつかの実施形態において、前記ヒドロゲルは、例えば約10kPa以上、約750kPa(約7600g/cm)以下、または、約10kPa以上、196kPa(2000g/cm)以下のような、約10kPa(約100g/cm)以上の膨潤圧を有するものが用いられる。言い換えれば、前記マトリクスは、脱水形態または部分的水和形態から水和すると、上記範囲の膨潤力を発揮することができる。
【0150】
他の形態において、前記ポリマーマトリクスは、脱水形態での重量の約1.5倍以上の重量、例えば、脱水形態での重量の約1.5倍以上、約10倍以下の重量に水中で膨潤することができる。
【0151】
いくつかの形態において、前記ポリマーマトリクスは、脱水形態でのサイズよりも少なくとも25%大きいサイズ、例えば、脱水形態でのサイズよりも約25%大きいサイズ以上、約150%大きいサイズ以下、または、脱水形態でのサイズよりも約45%大きいサイズ以上、約80%大きいサイズ以下に、水中で膨潤することができる。
【0152】
〔実施例1〜12〕
<メタクリル酸マルトデキストリン並びに様々な生体適合性および生体安定性を有するマクロマーから形成される膨潤性および生分解性を有するマトリクス>
光開始剤としての4,5−ビス(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1,3−ジスルホン酸(5mg)(DBDS)1mg/mLの溶液(米国特許第6,278,018号(実施例1)に記載。SurModics, Inc.(ミネソタ州エデンプレーリー)より入手可能)を調製した。〜0.18(0.18mmol/g(メタクリル酸/マルトデキストリン))のメタクリル酸塩負荷を有するメタクリル酸マルトデキストリン(MD−MA)を、350mg/mLの濃度で、DBDS溶液に溶解した。次に、PPGまたはPEGを基にした生体適合性および生体安定性を有するマクロマー(表1、実施例1〜10に記載)を、350mg/mLの濃度でDBDS溶液に溶解した。photo−PA−PEG−AMPSおよびphoto−PA(以下記載)を、それぞれ、200mg/mLおよび100mg/mLでDBDS溶液に溶解した。
【0153】
マトリクスを形成する溶液は、MD−MA/DBDS溶液400μLを、生体適合性ポリマー/DBDS溶液100μLと個別に混合することによって、調製した。前記マクロマー/ポリマーの最終濃度を表1に示す。次に、前記マトリクスを形成する溶液を、30秒間攪拌した。各々のマトリクスを形成する溶液約50μLを、1.58mmIDのシリコーン管にピペットにて添加した。残った前記マトリクスを形成する溶液を、24−wellのプレート上の窪み中へピペットで移した。前記プレートおよびシリコーン管の両方を、120秒間、UV光下に配置し硬化した。
【0154】
フィラメントをシリコーン管から除去し、48時間、湿度制御室内で乾燥し、直径を計測した。前記ポリマーフィラメントの直径は、Techniquip(登録商標)lightingおよびImagePro(登録商標)−Plus software version 6.1を有する、Leica MZ12立体顕微鏡を用いて測定した。前記フィラメントは、それぞれの膨潤データを入手するため、23℃の滅菌水中で2時間膨潤させた。
【0155】
前記ゲルの物理特性を、圧縮力試験および膨潤性試験によって決定した。前記ゲルの圧縮力は、直径5mmのボールプローブを有するTAXT2(登録商標)テクスチャーアナライザを用いることによって試験した。前記ボールプローブは、耐圧強度を決定するために用いられる。前記方法では、試験速度は0.5mm/秒、引金作用は4gである。前記プローブは、基準深度と比較して、前記材料の深さの25%に圧縮した。
【0156】
ポリ(プロピレングリコール)540−ジアクリレート(PPG540−DA)、ポリ(プロピレングリコール)900−ジアクリレート(PPG900−DA)、ポリ(エチレングリコール)250−ジアクリレート(PEG250−DA)、ポリ(エチレングリコール)575−ジアクリレート(PEG575−DA)、ポリ(エチレングリコール)550−ジメタクリレート(PEG550−DMA)、ポリ(エチレングリコール)1000−ジメタクリレート(PEG1000−DMA)、ポリ(エチレングリコール)750−ジメタクリレート(PEG750−DMA)、ポリ(エチレングリコール)700−ジアクリレート(PEG700−DA)、ポリ(エチレングリコール)450−モノエーテルアクリレート(PEG450−MEA)は、Sigma−Aldrich(ミズーリ州セントルイス)、または、Polysciences(ペンシルベニア州ウォーリントン)から入手できる。
【0157】
光官能基により誘導体化したポリマーである、photo−PA−PEG−AMPS(SurModics, Inc.,ミネソタ州エデンプレーリー)は、アクリルアミド、メトキシポリ(エチレングリコール)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、および、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミド(APMA)を、溶媒として水を用いて共重合することによって調製した。この工程の後、透析して精製した。次に、ショッテン−バウマン条件下で、水性/有機混合溶媒中でBBA(塩化4−ベンゾイルベンゾイル)を用いることにより、光ローディングを行った。光誘導体化の後、残りのアミンは、無水酢酸を使いアセチル化した。最終精製は、透析を用いて行い、凍結乾燥することによって乾燥した。前記結果として得られる単量体は、アセチル化PA−(10%w/w)メトキシ−PEG1000−MMA−(5%)AMPS−(1%)APMA−(0.015)BBAである。
【0158】
光官能基により誘導体化したポリマーであるフォト−ポリアクリルアミド(photo−PA)を、以下のように調製した。光誘導体化アクリルアミドモノマー(BBA−APMA)は、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミド(APMA)と塩化ベンゾイルベンゾイル(BBA−Cl)との反応によって調製した。そして、得られた光誘導体化アクリルアミドモノマーを、再結晶により精製した。次に、BBA−APMAモノマーを、テトラヒドロフラン(THF)中で、アクリルアミドと共重合させ、白色沈殿を形成した。固形分をろ過し、透析し、凍結乾燥することによって最終生成物を得た。得られたポリマーは、ポリアクリルアミド−(3.5%)BBA−APMA−(0.4)BBA(photo−PA)である。
【0159】
【表1】

【0160】
〔実施例13〕
<In Situ形成用のレドックス開始剤を備えた、分解性および膨潤性を有するマトリクス>
6mM過酸化水素溶液および6mM乳酸鉄溶液を、別々の滅菌コニカルチューブ中で新たに調製した。2本のガラスバイアルのそれぞれに、メタクリル酸マルトデキストリン(MD−MA)350mgを量り入れた。次に、ポリ(エチレングリコール)700−ジアクリレート70mgを、MD−MAが入っている前記バイアルのそれぞれに加えた。一つ目のバイアルに、過酸化水素溶液1mLを加えた。二つ目のバイアルに、乳酸鉄溶液1mLを加えた。両方のバイアルを、30秒間攪拌し、試薬を完全に溶解させた。各々の溶液は、3mLのシリンジ中に移し、気泡を除去した。Micromedics FibriJet(登録商標)混合コネクターを二つのシリンジに取り付けた。21ゲージ針を混合コネクターの端に取り付け、Micromedicsハウジングキットを、混合する際、材料が確実に分布するように取り付けた。前記溶液を、内径1.99mmのシリコーン管内に同時に放出した。前記シリコーン管は、体内の血管内または管内への使用を模したものである。マクロマー成分は5秒未満で重合し、ヒドロゲルとなった。
【0161】
〔実施例14〜16〕
<MD−MA/PEG700−DAマトリクスのアミラーゼによる分解>
アミラーゼによる分解の検討を、メタクリル酸マルトデキストリンおよびポリ(エチレングリコール)700−ジアクリレート(PEG700−DA)から調製したマトリクス上で行った。DBDS溶液を、実施例1〜12で述べた方法で調製した。そして、MD−MAを、1mg/mLのDBDS溶液に溶解し、350mg/mLの濃度とした。それとは別に、ポリ(エチレングリコール)700−ジアクリレート(PEG700−DA)を、1mg/mLのDBDS溶液に溶解し、350mg/mLの濃度とした。
【0162】
マトリクスを形成する溶液を、様々な量のMD−MA/DBDS溶液をPEG700−DA/DBDS溶液と混合することによって調製した。それにより、表2に記載されている(実施例14:90%MD/10%PEG; 実施例15: 70%MD/30%PEG、および実施例16: 50%MD/50%PEG)最終濃度のMD−MAおよびPEG700−DAを有する、マトリクスを形成する溶液を得た。すべての調製溶液は使用前に攪拌した。
【0163】
1.47mmI.D.のシリコーン管(HelixMark)に、各調製溶液を注入し、液体でシリコーン管を満たした。次に、溶液を含む前記シリコーン管を、2分間UV光の下に置き、硬化した。硬化が完了した後、重合されたヒドロゲルを前記シリコーン管から除去し、1cmの長さに切断した。そのフィラメントを、湿度を制御した雰囲気下で、3日間以上かけ完全に乾燥させ、初期重量を測定した。次に、対照溶液(30mMの塩化カルシウムを含む1mMのPBS)またはアミラーゼ溶液(30mMの塩化カルシウムを含む1mMのPBS中の16Xアミラーゼ)で満たした個別のバイアル中に、前記フィラメントを置いた。分解に関する検討は、37℃で28日間にわたって行われた。前記アミラーゼ溶液は、毎週新しく作り、週二回交換した。所定の時間に、前記フィラメントを対照溶液およびアミラーゼ溶液から取り出し、重量を測定した。次に、これらの所定の時間における、フィラメントの残存質量パーセントを計算した。図1は、前記分解に関する検討中における、前記対象溶液およびアミラーゼ溶液中の、90%MD/10%PEGフィラメントおよび70%MD/30%PEGフィラメントの分解を示す図である。図2は、前記分解に関する検討中における、前記アミラーゼ溶液中の90%MD/10%PEGフィラメント,70%MD/30%PEGフィラメントおよび50%MD/50%PEGフィラメントの分解を示す図である。
【0164】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】時間に対する、対照およびアミラーゼ溶液中の、マルトデキストリン−ポリ(エチレングリコール)フィラメントの分解を示すグラフである。
【図2】時間に対する、アミラーゼ溶液中の、マルトデキストリン−ポリ(エチレングリコール)フィラメントの分解を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性および生分解性を有し、かつ、膨潤性を有する、もしくは、膨潤したポリマーマトリクスであって、
前記ポリマーマトリクスは、第一のポリマーを含有するセグメントおよび第二のポリマーを含有するセグメントを含み、
前記第一のポリマーを含有するセグメントおよび第二のポリマーを含有するセグメントは、重合基によって架橋されており、
前記第一のポリマーを含有するセグメントは、ポリ−α(1→4)グルコピラノースを含み、
前記第二のポリマーを含有するセグメントは、生体適合性および生体安定性を有する親水性ポリマーを含むことを特徴とする、ポリマーマトリクス。
【請求項2】
前記重合基が、0.05mmol/g以上、0.7mmol/g以下(重合基/ポリ−α(1→4)グルコピラノース)の範囲内の量で、前記ポリ−α(1→4)グルコピラノースから張り出していることを特徴とする、請求項1に記載のポリマーマトリクス。
【請求項3】
前記重合基が、0.1mmol/g以上、0.4mmol/g以下(重合基/ポリ−α(1→4)グルコピラノース)の範囲内の量で、前記ポリ−α(1→4)グルコピラノースから張り出していることを特徴とする、請求項2に記載のポリマーマトリクス。
【請求項4】
前記第一のポリマーを含有するセグメントが、500,000Da以下の分子量を有するポリ−α(1→4)グルコピラノースを含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリマーマトリクス。
【請求項5】
前記第二のポリマーを含有するセグメントが、オキシアルキレンポリマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリマーマトリクス。
【請求項6】
前記第二のポリマーを含有するセグメントが、酸化アルキレンポリマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリマーマトリクス。
【請求項7】
前記第二のポリマーを含有するセグメントが、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、および、ポリエチレングリコールとポリプロピレンオキシドとの共重合体(PEG−PPO)からなる群から選ばれるポリマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリマーマトリクス。
【請求項8】
前記第二のポリマーを含有するセグメントが、ポリ(エチレングリコール)を含むことを特徴とする、請求項7に記載のポリマーマトリクス。
【請求項9】
前記第二のポリマーを含有するセグメントが、末端を有しており、前記重合基が、前記末端に存在していることを特徴とする、請求項1に記載のポリマーマトリクス。
【請求項10】
前記第二のポリマーを含有するセグメントが、100Da以上、40kDa以下の範囲内の分子量を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリマーマトリクス。
【請求項11】
前記第二のポリマーを含有するセグメントが、直鎖構造を有し、かつ、200Da以上、5,000Da以下の範囲内の分子量を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリマーマトリクス。
【請求項12】
前記第一のポリマーを含有するセグメント、および、前記第二のポリマーを含有するセグメントが、それぞれ、200:1〜1:10の範囲内の重量比で、前記マトリクス内に存在していることを特徴とする、請求項1に記載のポリマーマトリクス。
【請求項13】
前記第一のポリマーを含有するセグメント、および、前記第二のポリマーを含有するセグメントが、それぞれ、50:1〜1:5の範囲内の重量比で、前記マトリクス内に存在していることを特徴とする、請求項11に記載のポリマーマトリクス。
【請求項14】
脱水状態での前記マトリクスの重量の1.5倍以上の重量に、水中で膨潤することができることを特徴とする、請求項1に記載のポリマーマトリクス。
【請求項15】
脱水状態から水和すると100g/cm以上の膨潤力を発揮することを特徴とする、請求項1に記載のポリマーマトリクス。
【請求項16】
脱水状態でのサイズよりも少なくとも25%大きいサイズに、水中で膨潤することができることを特徴とする、請求項1に記載のポリマーマトリクス。
【請求項17】
移植可能な医療デバイスと組み合わせて用いられることを特徴とする、請求項1に記載のポリマーマトリクス。
【請求項18】
生物活性剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリマーマトリクス。
【請求項19】
前記マトリクスと共有結合する生物活性剤を含むことを特徴とする、請求項18に記載のポリマーマトリクス。
【請求項20】
前記生物活性剤が、重合基または光反応性基を介して前記マトリクスと共有結合するマトリクスポリペプチドであることを特徴とする、請求項19に記載のポリマーマトリクス。
【請求項21】
生体適合性および生分解性を有し、かつ、膨潤性を有する、もしくは、膨潤したポリマーマトリクスの製造方法であって、以下の工程(a)および工程(b)を含むことを特徴とする方法。
(a)(i)複数の張り出した重合性基を含むポリ−α(1→4)グルコピラノース、および、(ii)1つの張り出した重合性基を含む、生体適合性および生体安定性を有する親水性ポリマーを含有する組成物を提供する工程、
(b)前記ポリ−α(1→4)グルコピラノースと、生体適合性および生体安定性を有する親水性ポリマーとの架橋、および、マトリクスの形成を行うために、前記重合性基を活性化する工程。
【請求項22】
前記組成物が、50mg/mL以上、約600mg/mL以下の範囲内の量で、ポリ−α(1→4)グルコピラノースを含むことを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が、約200mg/mL以上、約400mg/mL以下の範囲内の量で、ポリ−α(1→4)グルコピラノースを含むことを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が、5mg/mL以上、約350mg/mL以下の範囲内の量で、前記生体適合性および生体安定性を有する親水性ポリマーを含むことを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が、約50mg/mL以上、約200mg/mL以下の範囲内の量で、前記生体適合性および生体安定性を有する親水性ポリマーを含むことを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
工程(a)において、前記組成物を被験者の標的部位に供給し、工程(b)において、架橋およびin situマトリクス形成を行うために前記重合性基を活性化することを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
被験者の標的部位に、請求項1に記載の、生体適合性および生分解性を有し、かつ、膨潤性を有する、もしくは、膨潤したポリマーマトリクスを配置する工程を含むことを特徴とする、被験者を治療する方法。
【請求項28】
前記標的部位を閉塞する膨潤したポリマーマトリクスをもたらすことを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ポリマーマトリクスが、標的部位で膨潤し、または、膨潤され、かつ、前記マトリクスが、アミラーゼとしばらくの間接触し、前記アミラーゼが、前記マトリクスの少なくとも一部の分解を促進することを特徴とする、請求項26に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−506478(P2012−506478A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533176(P2011−533176)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/005739
【国際公開番号】WO2010/047799
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(506112683)サーモディクス,インコーポレイティド (50)
【Fターム(参考)】