説明

膨潤性親水性ポリマーを用いた胃滞留型固体経口投与剤形

本開示は、吸収ウィンドウが狭い活性薬剤を、患者にバイオアベイラビリティを与えるように放出する多微粒子システムを提供する。本開示は、膨潤性親水性ポリマーおよび活性薬剤を含むミクロ粒子を含む組成物であって、膨潤性親水性ポリマーが分子内で実質的に架橋されておらず、ミクロ粒子のサイズが約500μm以下である組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
経口投与される多くの活性薬剤が、「吸収ウィンドウ(window of absorption)」を構成する胃腸管の上部で吸収される。このウィンドウを通る活性薬剤の通過時間は限定されている。結果として、吸収時間それ自体が限定される可能性がある。上部GI管における、製剤それ故活性薬剤の曝露を延長するように設計される活性薬剤の製剤は、活性薬剤の長時間吸収を実現する可能性がある。
【発明の概要】
【0002】
本開示は活性薬剤の経口送達のための多微粒子システムを提供するものであり、この多微粒子システムは、上部GI管の狭い吸収ウィンドウ上での活性薬剤の長時間放出を促進することができる。
【0003】
膨潤性親水性ポリマーを用いる多微粒子システムにより、そのような多微粒子システムを有さない活性薬剤と比較して、上部胃腸(GI)管における活性薬剤の滞留時間の増加を実現することができる。親水性ポリマーを含有する多微粒子システムは、膨潤してゲルを形成することができる。膨潤性親水性ポリマーはまた、膨潤した顆粒内に形成され得るエアポケットを含有することができる。したがって、この微粒子は、胃の環境内で体液中に浮遊し、胃内容排出のうねりを回避する傾向になる。さらに、これらの多微粒子システムにより、小さな微粒子サイズを有する活性薬剤のGI通過時間を延長させることができる。GIでは、微粒子が胃のひだの中および小腸の絨毛の間に捕捉される。膨潤性親水性ポリマーを用いる多微粒子システムからの活性薬剤の放出は、微粒子の拡散および侵食が組み合わさって起こる。
【0004】
本開示はまた、膨潤性親水性ポリマーおよび活性薬剤を含むミクロ粒子を含む組成物であって、膨潤性親水性ポリマーが分子内で実質的に架橋されておらず、ミクロ粒子のサイズが約500μm以下である組成物を提供する。特定の実施形態では、ミクロ粒子のサイズは約300μm以下である。一部の実施形態では、組成物は発泡剤を含まない。
【0005】
組成物の放出プロフィールは、人工胃液(SGF)を用いるパドル法により評価することができる。特定の実施形態では、組成物は約4時間以内に薬物の約40%〜約60%を放出する。特定の実施形態では、組成物は約8時間以内に薬物の約70%〜約90%を放出する。特定の実施形態では、組成物は約12時間以内に薬物の約80%〜約95%を放出する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】様々な量の膨潤性親水性ポリマーとの混合/微粒子化手順を介して得られたバクロフェンおよびHPMCを含む多微粒子システムの溶解プロフィールを示す図である。
【図2】コーティング手順を介して得られた、膨潤性親水性ポリマーを用いるバクロフェン多微粒子システムを含む多微粒子システムの溶解プロフィールを示す図である。
【図3】混合/微粒子化手順またはコーティング手順を介して得られた、バクロフェンおよび膨潤性親水性ポリマーを含む多微粒子システムの溶解プロフィールを示す図である。
【図4】様々な溶解媒体における、バクロフェンおよび膨潤性親水性ポリマーを含む多微粒子システムの溶解プロフィールを示す図である。
【図5】バスケット法およびパドル法による試験における、バクロフェンおよび膨潤性親水性ポリマーを含む多微粒子システムの溶解プロフィールを示す図である。
【図6】混合/微粒子化手順を介して得られた、レボドパおよびHPMCを含む多微粒子システムの溶解プロフィールを示す図である。
【図7】バスケット法およびパドル法による試験における、レボドパおよび膨潤性親水性ポリマーを含む多微粒子システムの溶解プロフィールを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明をさらに詳細に説明する前に、本発明は、記載の特定の実施形態に限定されるものではなく、当然ながら、それ自体当然変動し得るものであることを理解されたい。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものであるので、本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0008】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈上別段の明確な指示がない限り、複数形の対象も含んでいることに留意しなければならない。さらに、特許請求の範囲は任意のいかなる要素でも除外するように書くことができることも留意されたい。
【0009】
数値の範囲が与えられる場合、文脈上別段の明確な指示がない限り、その範囲の上限および下限と、指定範囲の任意のその他の指定値または介在値との間の各介在値は、下限の単位の10分の1まで本発明に包含されることを理解されたい。これらの小範囲の上限および下限は、さらに小さい範囲に独立に含まれてもよく、また指定範囲において任意の限界値が特別に除外されて本発明に包含される。指定範囲がその限界値の1つまたは両方を含む場合、それらに含まれる限界値のいずれかまたは両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0010】
本明細書に記載の刊行物は、本出願の出願日前の開示内容のためにのみ提示するものである。本明細書のいかなる内容も、本発明が先の発明を根拠にそのような刊行物より先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。さらに、提示された発刊日は、実際の発刊日とは異なる可能性があり、別途確認する必要がある場合がある。
【0011】
他に定義されていない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する分野の当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法および材料もまた、本発明の実施または試験に使用することができるが、ここでは好ましい方法および材料を説明する。本明細書に記述したすべての刊行物は、引用されたそれら刊行物が関与する方法および/または材料について開示および説明するために、参照によって本明細書に組み込むものとする。
【0012】
膨潤性親水性ポリマーを用いる多微粒子システムにより、多微粒子システムを有さない活性薬剤と比較して、上部胃腸(GI)管における活性薬剤の滞留時間を増加させることができる。親水性ポリマーを含有する多微粒子システムは膨潤してゲルを形成することができる。膨潤性親水性ポリマーはまた、膨潤した顆粒内に形成され得るエアポケットを含有することができる。したがって、この微粒子は、胃の環境内で体液中に浮遊し、胃内容排出のうねりを回避する傾向になる。さらに、これらの多微粒子システムにより、小さな微粒子サイズを有する活性薬剤のGI通過時間を延長させることができ、GIでは、微粒子が胃のひだの中および小腸の絨毛の間に捕捉される。膨潤性親水性ポリマーを用いる多微粒子システムからの活性薬剤の放出は、微粒子の拡散および侵食が組み合わさって起こる。
【0013】
用語「ミクロ粒子」は、室温で固体であってもまたは半固体であってもよく、一般に500μm以下または300μm以下、通常は少なくとも10μmのサイズである離散粒子を指す。
【0014】
用語「多微粒子システム」は、それぞれがいくつかの望ましい特徴を示す多様な個別の単位を含む投与剤形を指す。これらのシステムでは、投薬は複数の単位に分割される。
【0015】
膨潤性親水性ポリマーを用いる多微粒子システム
膨潤性親水性ポリマーを用いる多微粒子システムにより、多微粒子システムを有さない活性薬剤と比較して、上部胃腸(GI)管における活性薬剤の滞留時間を増加させることができる。親水性ポリマーを含有する多微粒子システムは膨潤してゲルを形成することができる。膨潤性親水性ポリマーはまた、膨潤した顆粒内に形成され得るエアポケットを含有することができる。さらに、微粒子が胃のひだの中および小腸の絨毛の間に捕捉されるようになるのに十分なほど小さいサイズの微粒子の場合、これらの多微粒子システムのGI通過時間は延長する可能性がある。膨潤性親水性ポリマーを用いる多微粒子システムからの活性薬剤の放出は、微粒子の拡散および侵食が組み合わさって起こる。
【0016】
組成物の放出プロフィールは、人工胃液(SGF)を用いるパドル法により評価することができる。特定の実施形態では、組成物は約4時間以内に薬物の約40%〜約60%を放出する。特定の実施形態では、組成物は約8時間以内に薬物の約70%〜約90%を放出する。特定の実施形態では、組成物は約12時間以内に薬物の約80%〜約95%を放出する。
【0017】
本明細書に記載したように、本開示の特定の実施形態では、多微粒子システムは発泡剤を含まない。「発泡剤」は、胃液と接触すると二酸化炭素または二酸化硫黄を生成することが知られている物質を指す。二酸化炭素を生成する発泡剤の例としては、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、グリシン炭酸ナトリウム(sodium glycine carbonate)が挙げられる。二酸化硫黄を生成する発泡剤の例としては、亜硫酸硫黄(sulfur sulfite)、亜硫酸水素ナトリウムおよびメタ重亜硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0018】
膨潤性親水性ポリマーおよび活性薬剤の例を以下に記載する。
【0019】
膨潤性親水性ポリマー
実施形態は、膨潤性親水性ポリマーおよび活性薬剤を含むミクロ粒子を含む組成物であって、膨潤性親水性ポリマーが分子内で実質的に架橋されておらず、ミクロ粒子のサイズが約500μm以下である組成物を提供する。特定の実施形態では、ミクロ粒子のサイズは約300μm以下である。
【0020】
膨潤性親水性ポリマーは無毒であり、水を吸収すると広がりが制限されることなく膨潤することができ、取り込まれた活性薬剤に徐放性を付与することができる。
【0021】
好適なポリマーの例としては、例えば、セルロースポリマーおよびその誘導体(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよび結晶セルロースなど)、多糖およびその誘導体、ポリアルキレンオキシド、ポリエチレングリコール、キトサン、ポリ(ビニルアルコール)、キサンタンガム、無水マレイン酸コポリマー、ポリ(ビニルピロリドン)、デンプンおよびデンプンベースポリマー、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリウレタンヒドロゲル、ガム、アルギン酸、レクチン、カーボポール、ならびに前述のポリマーの1つまたは複数を含む組合せが挙げられる。
【0022】
特定の実施形態では、膨潤性親水性ポリマーはセルロースおよびその誘導体である。アルキル基が1〜3個の炭素原子、好ましくは2個の炭素原子を有し、記載した好適な特性を有するアルキル置換セルロース誘導体すべてを意図する。セルロースは、本明細書で使用する場合、アンヒドログルコースの直鎖状ポリマーを意味する。一般に、好適なアルキル置換セルロースの平均粘度は、約1,000〜4,000センチポアズ(1%水溶液で20℃にて)である。他の好適なアルキル置換セルロースの粘度は、約100〜6,500センチポアズ(2%水溶液で20℃にて)の範囲に入り得る。
【0023】
セルロースおよびその誘導体である膨潤性親水性ポリマーの例としては、これらに限定されないが、セルロース(結晶セルロースなど)、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MCまたはMETHOCEL)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、エチルヒドロキシ−エチルセルロース(EHEC)およびカルボキシメチルセルロースが挙げられる。
【0024】
好適なポリアルキレンオキシドは、アルキル置換セルロースポリマーについて上記に記載した特性を有するものである。ポリアルキレンオキシドの一例はポリ(エチレンオキシド)であり、この用語は、非置換エチレンオキシドの直鎖状ポリマーを表すのに本明細書で使用される。約4,000,000以上の分子量を有するポリ(エチレンオキシド)ポリマーが特に適している。約4,500,000〜約10,000,000の分子量を有するものがより好ましく、約5,000,000〜約8,000,000の分子量を有するポリマーがより一層好ましい。好ましいポリ(エチレンオキシド)は、約1×10〜約1×10、例えば約9×10〜約8×10の範囲内にある重量平均分子量を有するものである。ポリ(エチレンオキシド)は、多くの場合、溶液中でのその粘度によって特徴づけられる。特定の粘度は、20℃における2%水溶液に対して、約50〜約2,000,000センチポアズである。ポリ(エチレンオキシド)の2つの例は、POLYOX(商標)NF、グレードWSR Coagulant、分子量500万、およびグレードWSR303、分子量700万であり、両方ともDowから入手可能である。
【0025】
多糖ガムは、天然および修飾(半合成)の両方を用いることができる。例としては、デキストラン、キサンタンガム、ジェランガム、ウェランガム(welan gum)およびラムザンガムがある。
【0026】
任意選択の放出制御コーティング
多微粒子システムは、場合によっては放出制御コーティングを含むことができる。好適な放出制御ポリマーの例は、ポリ(メタ)アクリレートであるEUDRAGIT(登録商標)ポリマーである。特定のEUDRAGIT(登録商標)ポリマーとしては、EUDRAGIT(登録商標)NEグレード、EUDRAGIT(登録商標)NMグレード、EUDRAGIT(登録商標)RLグレードおよびEUDRAGIT(登録商標)RSグレードが挙げられる。
【0027】
特定の他の好適な放出制御ポリマーとしては、エチルセルロースなどの疎水性放出制御ポリマーコーティングが挙げられる。特定の他の好適な放出制御ポリマーとしては、EUDRAGIT(登録商標)L100およびEUDRAGIT(登録商標)L100−55などの腸溶コーティングが挙げられる。特定の他の好適な放出制御ポリマーとしては、EUDRAGIT(登録商標)NE 30DおよびKOLLIDON(登録商標)などの中性放出制御ポリマーコーティングが挙げられる。
【0028】
膨潤性親水性ポリマーを用いる多微粒子システムの微粒子サイズ
膨潤性親水性ポリマーを用いる多微粒子システムは、約500μm以下の微粒子サイズを有する微小粒子を使用する。特定の実施形態では、ミクロ粒子のサイズは約300μm以下である。多微粒子システムが膨潤性親水性ポリマーおよび活性薬剤を含む場合、この微粒子サイズを採用する。
【0029】
特定の実施形態では、本明細書に開示の微粒子サイズの範囲は、薬物樹脂複合体を含む組成物中の微粒子の90%が入る微粒子サイズの範囲を示す。
【0030】
以下の議論では、特に指定がなければ、この範囲の下限は少なくとも10μmであり、約50μmの場合もある。
【0031】
特定の実施形態では、微粒子サイズは約480μm以下である。特定の実施形態では、微粒子サイズは約460μm以下である。特定の実施形態では、微粒子サイズは約450μm以下である。特定の実施形態では、微粒子サイズは約440μm以下である。特定の実施形態では、微粒子サイズは約420μm以下である。特定の実施形態では、微粒子サイズは約400μm以下である。
【0032】
特定の実施形態では、微粒子サイズは約380μm以下である。特定の実施形態では、微粒子サイズは約360μm以下である。特定の実施形態では、微粒子サイズは約350μm以下である。特定の実施形態では、微粒子サイズは約340μm以下である。特定の実施形態では、微粒子サイズは約320μm以下である。特定の実施形態では、微粒子サイズは約300μm以下である。
【0033】
特定の実施形態では、微粒子サイズは約280μm以下である。特定の実施形態では、微粒子サイズは約260μm以下である。特定の実施形態では、微粒子サイズは約250μm以下である。特定の実施形態では、微粒子サイズは約240μm以下である。特定の実施形態では、微粒子サイズは約220μm以下である。特定の実施形態では、微粒子サイズは約200μm以下である。
【0034】
特定の実施形態では、微粒子サイズは約180μm以下である。特定の実施形態では、微粒子サイズは160μm以下である。特定の実施形態では、微粒子サイズは約150μm以下である。特定の実施形態では、微粒子サイズは約140μm以下である。特定の実施形態では、微粒子サイズは約120μm以下である。
【0035】
特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約100μm〜約500μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約100μm〜約475μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約100μm〜約450μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約100μm〜約425μmである。
【0036】
特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約100μm〜約400μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約100μm〜約375μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約100μm〜約350μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約100μm〜約325μmである。
【0037】
特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約100μm〜約300μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約100μm〜約275μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約100μm〜約250μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約100μm〜約225μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約100μm〜約200μmである。
【0038】
特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約475μm〜約500μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約450μm〜約500μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約425μm〜約500μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約400μm〜約500μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約375μm〜約500μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約350μm〜約500μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約325μm〜約500μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約300μm〜約500μmである。
【0039】
特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約375μm〜約400μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約350μm〜約400μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約325μm〜約400μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約300μm〜約400μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約275μm〜約400μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約250μm〜約400μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約225μm〜約400μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約200μm〜約400μmである。
【0040】
特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約275μm〜約300μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約250μm〜約300μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約225μm〜約300μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約200μm〜約300μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約175μm〜約300μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約150μm〜約300μmである。特定の実施形態では、微粒子サイズの範囲は約125μm〜約300μmである。
【0041】
組合せの例
本開示が膨潤性親水性ポリマーおよび活性薬剤を含む多微粒子システムを提供することは以上から理解されよう。膨潤性親水性ポリマーおよび活性薬剤を含有する多微粒子システムの例を以下に記載する。
【0042】
特定の実施形態では、多微粒子システムは活性薬剤およびHPMCを含む。
【0043】
特定の実施形態では、多微粒子システムは活性薬剤および結晶セルロースを含む。
【0044】
特定の実施形態では、多微粒子システムは活性薬剤およびエチルセルロースを含む。
【0045】
特定の実施形態では、多微粒子システムは活性薬剤およびカーボポールポリマーを含む。
【0046】
特定の実施形態では、多微粒子システムは活性薬剤およびカルボキシメチルセルロースを含む。
【0047】
活性薬剤
用語「活性薬剤」または「活性医薬品」は、投与後に予防効果もしくは治療効果をもたらすことを目的とした医薬物質、または2種以上のこのタイプの物質の組合せのいずれかを指す。
【0048】
特定の実施形態では、活性薬剤は、胃腸管の上部で主として吸収が起こる。これらの活性薬剤では吸収ウィンドウが限定されている。
【0049】
FDAによる溶解性および腸管透過性に関しての薬物の生物医薬品分類によれば、薬物は4つのクラスに分類される。クラスI化合物は、高い溶解性および高い透過性を有するものと定義され、経口投与された場合、良好な吸収が予測されるものである。他のクラスであるクラスII〜IVは、低い溶解性、低い透過性またはその両方を示してGI管の異なる領域で吸収が変動し、結果として、その経口バイオアベイラビリティが、限定された吸収ウィンドウにより影響を受ける可能性がある。
【0050】
特定の実施形態では、活性薬剤は、FDAによる溶解性および腸管透過性に関しての薬物の生物医薬品分類によるクラスII〜IVの化合物である。特定の実施形態では、活性薬剤は、FDAによる溶解性および腸管透過性に関しての薬物の生物医薬品分類によるクラスIの化合物である。
【0051】
活性薬剤の吸収は、活性薬剤の溶解性が低いかまたは欠如していることによって制限されることがある。特定の実施形態では、活性薬剤は、胃液または水の中での溶解性が低いかまたは欠如している。
【0052】
活性薬剤の吸収はまた、上部GI管における吸収に対する能動輸送機構により制限される可能性がある。特定の活性薬剤は、上部GI管の能動輸送機構を利用することができるが、大腸(または結腸)では吸収が悪い。結果として、その経口バイオアベイラビリティは吸収部位が限定されることにより影響を受ける場合がある。特定の実施形態では、活性薬剤は、上部GI管で能動輸送機構を利用する化合物である。
【0053】
活性薬剤は様々な物理的形態として存在することができる。活性薬剤の様々な物理的形態の例としては、これらに限定されないが、活性薬剤の薬学的に許容される塩、溶媒和物、共結晶、多形、水和物、塩の溶媒和物、塩の共結晶、無晶形および遊離形態が挙げられる。
【0054】
特定の実施形態では、活性薬剤はバクロフェンである。バクロフェンに言及する場合、この活性薬剤は、塩形態であってもまたは塩基形態(例えば遊離塩基)であってもよい。さらに、バクロフェンは塩形態であってもよく、バクロフェンについて周知の市販塩の1つは塩酸塩である。薬学的に許容される可能性のある塩の他の例の中には、ナトリウム塩およびテトラブチルアンモニウム塩などの塩基性塩形態が含まれる。
【0055】
特定の実施形態では、活性薬剤はレボドパまたはその塩である。レボドパに言及する場合、この活性薬剤は、塩形態であってもまたは遊離形態であってもよい。レボドパは遊離形態の市販品を入手可能である。
【0056】
吸収ウィンドウが限定されている特定の活性薬剤としては、これらに限定されないが、アシクロビル、ビスホスホネート、カプトプリル、フロセミド、メトホルミン、ギャバペンチン、シプロフロキサシン、シクロスポリン、アロプリノール、クロルジアゼポキシド、シンナリジンおよびミソプロストールが挙げられる。
【0057】
膨潤性親水性ポリマーを含むミクロ粒子の調製
膨潤性親水性ポリマーを含むミクロ粒子は、混合法、コーティング法および湿式顆粒化法を含む、以下に議論される方法により調製することができる。
【0058】
任意選択の微粒子化を含む混合法
特定の混合法の場合、固体膨潤性親水性ポリマーと固体活性薬剤を一緒に混合する。この混合物に追加の添加物を加えることができる。混合物をカプセルに詰めることができる。
【0059】
したがって、本開示は、膨潤性親水性ポリマーおよび活性薬剤を含むミクロ粒子を含む組成物を調製する方法であって、膨潤性親水性ポリマーが分子内で実質的に架橋されておらず、ミクロ粒子のサイズが約500μm以下であり、固体膨潤性親水性ポリマーと固体活性薬剤を混合するステップを含む方法を提供する。
【0060】
特定の実施形態の場合、活性薬剤および/または膨潤性親水性ポリマーは、この成分を一緒に混合する前に微粒子化またはサイズ縮減することができる。特定の実施形態では、活性薬剤は、この成分を一緒に混合する前に微粒子化またはサイズ縮減することができる。特定の実施形態では、膨潤性親水性ポリマーは、この成分を一緒に混合する前に微粒子化またはサイズ縮減することができる。例えば、活性薬剤および/または膨潤性親水性ポリマーを粉砕することができる。その後に、活性薬剤および膨潤性親水性ポリマーを一緒に混合する。この混合物に追加の添加物を加えることができる。
【0061】
活性薬剤と膨潤性親水性ポリマーの混合物を顆粒化して、この成分をブレンドしやすくすることができる。顆粒化は、例えば高剪断造粒機、ツインシェルブレンダー(twin shell blender)もしくはダブルコーンブレンダー(double-cone blender)または単純な遊星形ミキサーを用いて実施することができる。顆粒化された混合物は、適当なサイズのメッシュスクリーンを通して選別することができる。フィッツミル(Fitzmill)もしくはコミル(Co-mill)または振動粉砕機を用いて、顆粒サイズを制御することができる。V−ブレンダーまたはダブルコーンブレンダーを最終的なブレンドのために用いることができる。この混合物をカプセルに詰めることができる。
【0062】
コーティング法
特定のコーティング法の場合、固体膨潤性親水性ポリマーに活性薬剤をコーティングする。活性薬剤を溶解し溶液または懸濁液にして、固体膨潤性親水性ポリマー上にコーティングする。特定の実施形態では、固体膨潤性親水性ポリマーはビーズ形態になっている。コーティング工程に、例えば流動層顆粒化を利用することができる。
【0063】
特定の他のコーティング法の場合、ノンパレイルシード(nonpareil seed)に活性薬剤をコーティングする。ノンパレイルシードはセルロースベースであってもまたは糖ベースであってもよい。特定の実施形態では、ノンパレイルシードは固体結晶セルロースビーズである。活性薬剤を溶液に溶解または懸濁し、ノンパレイルシード上にコーティングする。コーティング工程に、例えば流動層顆粒化を利用することができる。次いで、固体膨潤性親水性ポリマーを活性薬剤でコーティングしたノンパレイルシードと混合する。
【0064】
したがって、本開示は、膨潤性親水性ポリマーおよび活性薬剤を含むミクロ粒子を含む組成物を調製する方法であって、膨潤性親水性ポリマーが分子内で実質的に架橋されておらず、ミクロ粒子のサイズが約500μm以下であり、活性薬剤を溶解して溶液または懸濁液にするステップと、活性薬剤を含む溶液または懸濁液でノンパレイルシードをコーティングするステップと、固体膨潤性親水性ポリマーを活性薬剤でコーティングしたノンパレイルシードと混合するステップとを含む方法を提供する。
【0065】
湿式顆粒化法
特定の湿式顆粒化法では、活性薬剤を膨潤性親水性ポリマーと混合する。活性薬剤と膨潤性親水性ポリマーの混合物を湿式顆粒化する。湿式顆粒化では、混合物を湿潤剤と混合して、湿潤した塊にし、混合物中の物質密度を高める。湿式顆粒化はミキサー/造粒機で実施することができる。湿潤剤は不活性の液体である。次に、湿潤した塊を押出す。この押出しは押出し造粒機によって実施することができる。押出物を球状化して微粒子を得る。
【0066】
したがって、本開示は、膨潤性親水性ポリマーおよび活性薬剤を含むミクロ粒子を含む組成物を調製する方法であって、膨潤性親水性ポリマーが分子内で実質的に架橋されておらず、ミクロ粒子のサイズが約500μm以下であり、活性薬剤を膨潤性親水性ポリマーと混合するステップと、活性薬剤と膨潤性親水性ポリマーの混合物を湿式顆粒化するステップと、活性薬剤と膨潤性親水性ポリマーの混合物を押出すステップと、活性薬剤と膨潤性親水性ポリマーの混合物を球状化して、微粒子を得るステップとを含む方法を提供する。
【0067】
別の湿式顆粒化法では、活性薬剤を不活性ポリマーと混合して、湿式顆粒化する。特定の不活性ポリマーとしては、結晶セルロースおよび糖類(ラクトースなど)が挙げられる。次に、湿潤した塊を押出す。この押出しは押出し造粒機によって実施することができる。押出物を球状化して微粒子を得る。次いで、活性薬剤と不活性ポリマーとの微粒子を膨潤性親水性ポリマーとブレンドする。
【0068】
したがって、本開示は、膨潤性親水性ポリマーおよび活性薬剤を含むミクロ粒子を含む組成物を調製する方法であって、膨潤性親水性ポリマーが分子内で実質的に架橋されておらず、ミクロ粒子のサイズが約500μm以下であり、活性薬剤を不活性ポリマーと混合するステップと、活性薬剤と不活性ポリマーの混合物を湿式顆粒化するステップと、活性薬剤と不活性ポリマーの混合物を押出すステップと、活性薬剤と不活性ポリマーの混合物を球状化して、微粒子を得るステップと、微粒子を膨潤性親水性ポリマーと混合するステップとを含む方法を提供する。
【0069】
上記の方法によって生成した多微粒子システムは、場合によっては放出制御コーティングを含むことができる。放出制御コーティングを、例えば流動層顆粒化により多微粒子システムに付加する。
【0070】
さらなる膨潤性親水性ポリマーを、上記の方法により生成した多微粒子システムに加えることもできる。さらなる膨潤性親水性ポリマーを多微粒子システムに加え、これらの成分をブレンドしやすくするために顆粒化することができる。顆粒化は、例えば高剪断造粒機、ツインシェルブレンダーもしくはダブルコーンブレンダーまたは単純な遊星形ミキサーを用いて実施することができる。顆粒化された混合物は、適当なサイズのメッシュスクリーンを通して選別することができる。フィッツミルもしくはコミルまたは振動粉砕機を用いて、顆粒サイズを制御することができる。V−ブレンダーまたはダブルコーンブレンダーを最終的なブレンドのために用いることができる。
【0071】
投与方法
組成物は、医薬組成物として使用することができる。組成物は、経腸投与、主として経口投与のために使用することができる。調製物は、固体形態、例えばカプセル、粉末もしくは顆粒、または錠剤の形態とすることができる。
【0072】
錠剤形態の組成物は、固体組成物の調製のために通常用いられる従来の適切な任意の医薬添加物を用いて調製することができる。そのような添加物の例としては、例えば、追加の担体、結合剤、防腐剤、潤滑剤、流動促進剤、崩壊剤、フレーバー剤(flavorant)、色素、および類似物質が挙げられ、これらはすべて当技術分野で公知である。
【0073】
カプセル形態の組成物は、通常のカプセル化手順を用いて、例えば多微粒子システムおよび賦形剤をゼラチンカプセルの中に詰め込むことによって調製することができる。
【0074】
従来の任意の担体または賦形剤を医薬組成物において使用することができる。特定の担体または賦形剤あるいは担体もしくは賦形剤の組合せは、医学的症状または疾患状態の特定の患者またはタイプを治療するために用いられている投与方法に応じて選択することになる。この点に関して、特定の投与方法に適した医薬組成物の調製は、医薬技術分野における当業者の十分範囲内である。加えて、このような組成物のための成分は、例えばSigma、P.O.Box 14508、St.Louis、Mo.63178から市販されている。さらに詳細な実例として、従来の製剤技術が、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Lippincott Williams & White、Baltimore、Md.(2000);およびH.C.Anselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第7版、Lippincott Williams & White、Baltimore、Md.(1999)に記載されている。
【0075】
薬学的に許容される担体として有用となり得る材料の代表的な例として、これらに限定されないが、下記のものが挙げられる:(1)糖、例えばラクトース、グルコースおよびスクロース;(2)デンプン、例えばコーンスターチおよびジャガイモデンプン;(3)セルロース、例えば結晶セルロース、およびセルロース誘導体、例えばカルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;(4)トラガント末;(5)麦芽;(6)タルク;(7)賦形剤、例えばココアバターおよび坐薬ワックス;(8)油、例えば落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブオイル、トウモロコシ油および大豆油;(9)グリコール、例えばプロピレングリコール;(10)多価アルコール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;(11)エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;(12)寒天;(13)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;(14)パイロジェンフリー水;(15)等張生理食塩水;(16)リンゲル液;(17)エチルアルコール;(18)リン酸緩衝液;および(19)医薬組成物において使用される無毒な他の適合物質。
【0076】
活性薬剤の放出用組成物の試験法
米国薬局方のパドル法またはバスケット法は、例えば、参照によって本明細書に組み込まれる、米国薬局方XXII(1990)に記載のパドル法およびバスケット法である。
【0077】
以下の方法では、SGFは人工胃液である。SGFは以下のように調製することができる。塩化ナトリウム2.0gおよびタンパク質1mg当たり800〜2500単位の活性を有する、ブタ胃粘膜由来の精製ペプシン3.2gを塩酸7.0mlおよび十分な水の中に溶解し、水で1000mlにする。試験液のpHは約1.2になる。
【0078】
パドル法
多微粒子システムからの活性薬剤の放出は、例えばパドル法による試験により測定することができる。パドル法では、米国薬局方タイプ1またはタイプ2溶解試験装置を用いて、人工胃液(SGF)pH1.2の中、37±5℃にて、所定のパドル速度で溶解試験を実施した。適切な時間間隔で試料を取り出し、HPLCにより分析した。
【0079】
バスケット法
多微粒子システムからの活性薬剤の放出は、例えばバスケット法による試験により測定することができる。バスケット法では、メッシュで被覆した円筒状バスケットを用いて溶解試験を実施した。バスケットを、人工胃液(SGF)pH1.2の中に37±5℃にて浸し、所定の速度で回転させた。適切な時間間隔で試料を取り出し、HPLCにより分析した。
【0080】
代表的なプロフィール
組成物の放出プロフィールは、人工胃液(SGF)を用いるパドル法により評価することができる。特定の実施形態では、組成物は約4時間以内に薬物の約40%〜約60%を放出する。特定の実施形態では、組成物は約8時間以内に薬物の約70%〜約90%を放出する。特定の実施形態では、組成物は約12時間以内に薬物の約80%〜約95%を放出する。
【実施例】
【0081】
以下の実施例は、実施形態の構成方法および使用方法についての完全な開示および説明を当業者に提供するために記述するものであり、本発明者らが自身の発明と見なすものの範囲を限定することを意図するものでも、以下の試験が実施されるすべての実験または唯一の実験であることを示すことを意図するものでもない。用いられる数値(例えば量、温度等)に関して正確さを期すための努力をしたが、若干の実験誤差および偏差は考慮されるべきである。他に指示されていない限り、部は重量部、分子量は重量平均分子量、温度は摂氏温度、圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。標準的な略語を使用する。
【実施例1】
【0082】
微粒子化されたバクロフェン/HPMC多微粒子システムの調製
材料
バクロフェン(Heumann)、Methocel K100M CR(Colorcon)、Prosolv SMCC、コハク酸、アビセル102、EUDRAGIT(登録商標)NE 30D(Degussaから購入)、Celsphere(登録商標)CP−102、Pharmacoat 606、Syloid(登録商標)244 FP、Ethocel 10 FP(Colorcon)、ポリビニルピロリドン(PVP)(Sigma Aldrich)、セバシン酸ジブチル、アセトン(Fisher Scientific)、イソプロピルアルコール(Lab Safety)、エチルアルコール(Fisher Scientific)
【0083】
手順
バクロフェン、コハク酸およびProsolv SMCCを、ブレンダーの中で一緒にブレンドした。ブレンドした混合物をジェットミルに通して、微粒子サイズ約28μmの微粒子を得た。この混合物を、Methocel K100M CR、アビセル102およびSyloid 244 FPと、顆粒外(extra-granularly)でブレンドした。次いで、混合物をサイズ00カプセルの中に詰めた。カプセルの成分を以下に示す。
【0084】
【表1】

【実施例2】
【0085】
微粒子化されたHPMC/バクロフェン多微粒子システムの溶解プロフィール
米国薬局方タイプ2溶解試験装置を用いて、人工胃液(SGF)pH1.2の中、37±5℃にて、パドル速度100RPMで溶解試験を実施した。適切な時間間隔で試料を取り出し、Waters Symmetry C18カラム、4.6×150mm、UV検出(265nm)および注入量50μLを用いるHPLCにより分析した。
【0086】
様々な量の膨潤性親水性ポリマーとの混合/微粒子化手順を介して得られたバクロフェンおよびHPMCを含む多微粒子システムの溶解プロフィールを図1に示す。
【0087】
この溶解試験では、以下のことが観察された。カプセルシェルが崩壊し、製剤が溶解媒体と接触すると直ちに、HPMCは膨潤し、ゲル様の粘着性の塊を形成した。微粒子が溶解媒体との接触から1分以内に浮遊し始めた。HPMCの膨潤により、製剤の内部に、組成物に浮力を与えるエアポケットが含有されることになった。ポリマーのグレードおよび粘度によっては、ポリマーを長時間かけて溶解させることができる。したがって、この製剤をほぼ12時間浮遊させることができる。徐放性がin vitro溶解試験の間に観察された。
【実施例3】
【0088】
コーティングされた結晶セルロース/バクロフェン多微粒子システムの調製
バクロフェン、Pharmacoat 606、Syloid 244 FPのコーティング溶液をアセトンとイソプロピルアルコールの混合液で調製した。結晶セルロース(Celphere CP−102)スフィア(sphere)を、このコーティング溶液を用いて、流動層造粒機の中でコーティングした。バクロフェン層のあるスフィアを、EUDRAGIT(登録商標)NE 30Dを用いてさらにコーティングした。次いで、コーティングしたスフィアをサイズ00カプセルの中に詰めた。
【0089】
カプセルの成分を以下に示す。
【0090】
【表2】

【実施例4】
【0091】
コーティングされたエチルセルロース/バクロフェン多微粒子システムの調製
バクロフェン、Pharmacoat 606、Syloid 244 FPのコーティング溶液をアセトンとイソプロピルアルコールの混合液で調製した。可塑剤としてのセバシン酸ジブチルを一緒に含むエチルセルロースとポリビニルピロリドン(PVP)のスフィア形態の混合物を、このコーティング溶液を用いて、流動層造粒機の中でコーティングした。
【0092】
このコーティングしたスフィアを、Methocel K100M CR、アビセル102およびSyloid 244 FPと、顆粒外(extra-granularly)でブレンドした。次いで、混合物をサイズ00カプセルの中に詰めた。
【実施例5】
【0093】
コーティングされたバクロフェン多微粒子システムの溶解プロフィール
米国薬局方タイプ2溶解試験装置を用いて、人工胃液(SGF)pH1.2の中、37±5℃にて、パドル速度100RPMで溶解試験を実施した。適切な時間間隔で試料を取り出し、Waters Symmetry C18カラム、4.6×150mm、UV検出(265nm)および注入量50μLを用いるHPLCにより分析した。
【0094】
コーティング手順を介して得られたバクロフェン多微粒子システムを含む多微粒子システムの溶解プロフィールを図2に示す。図2の試験組成物は、放出制御コーティングが異なる。
【0095】
この溶解試験では、以下のことが観察された。カプセルシェルが崩壊し、製剤が溶解媒体と接触すると直ちに、HPMCは膨潤し、ゲル様の粘着性の塊を形成した。微粒子が溶解媒体との接触から1分以内に浮遊し始めた。HPMCの膨潤により、製剤に浮力を与えるエアポケットが形成された。さらに、HPMCが水を吸収して形成した粘着性ゲルの塊により、活性薬剤を含有するコーティングされたシードが、この製剤に粘着する傾向を示し、塊の残部と共に浮遊するようになった。図2に示した溶解プロフィールの製剤間の相違は、バクロフェン層のあるシード上に塗布したコーティング材料およびコーティング量の相違によるものである。EUDRAGIT(登録商標)NE 30Dによるコーティングは、その比のEC:PVPより強力であるので、SGF中での溶解は遅い。
【実施例6】
【0096】
微粒子化およびコーティングされた多微粒子システムの溶解プロフィールの比較
米国薬局方タイプ2溶解試験装置を用いて、人工胃液(SGF)pH1.2の中、37±5℃にて、パドル速度100RPMで溶解試験を実施した。適切な時間間隔で試料を取り出し、Waters Symmetry C18カラム、4.6×150mm、UV検出(265nm)および注入量50μLを用いるHPLCにより分析した。
【0097】
微粒子化手順またはコーティング手順を介して得られたバクロフェン多微粒子システムを含む多微粒子システムの溶解プロフィールを図3に示す。
【0098】
この溶解試験では、以下のことが観察された。HPMCブレンド中に微粒子化薬物のみを含む場合よりもその顆粒がコーティングされている方が、相対標準偏差の小さい良好な放出制御がなされることを図3に示す。
【実施例7】
【0099】
SGF中およびpH4.5中における、微粒子化およびコーティングされた多微粒子システムの溶解プロフィールの比較
米国薬局方タイプ2溶解試験装置を用いて、人工胃液(SGF)pH1.2の中またはpH4.5の溶液の中、37±5℃にて、パドル速度100RPMで溶解試験を実施した。適切な時間間隔で試料を取り出し、Waters Symmetry C18カラム、4.6×150mm、UV検出(265nm)および注入量50μLを用いるHPLCにより分析した。
【0100】
異なる溶解媒体中における、バクロフェン多微粒子システムを含む多微粒子システムの溶解プロフィールを図4に示す。
【0101】
この溶解試験では、以下のことが観察された。製剤の溶解をSGFとpH4.5で比較すると、薬物のin vitro放出はpH4.5の方が遅いことが観察された。これは、pHが上昇するにつれて、バクロフェンの固有溶解度が低下する結果である可能性がある。膨潤性親水性ポリマーおよび放出制御コーティング材料の溶解性はpHに依存しないので、この溶解は膨潤性親水性ポリマーの拡散および侵食により制御され、バクロフェンの溶解性に依存する。
【実施例8】
【0102】
バスケット法またパドル法における、微粒子化およびコーティングされた多微粒子システムの溶解プロフィールの比較
パドル法では、米国薬局方タイプ2溶解試験装置を用いて、人工胃液(SGF)pH1.2の中、37±5℃にて、パドル速度100RPMで溶解試験を実施した。適切な時間間隔で試料を取り出し、Waters Symmetry C18カラム、4.6×150mm、UV検出(265nm)および注入量50μLを用いるHPLCにより分析した。
【0103】
バスケット法では、メッシュで被覆した円筒状バスケットを用いて溶解試験を実施した。バスケットを、人工胃液(SGF)pH1.2の中に37±5℃にて浸し、所定の速度で回転させた。適切な時間間隔で試料を取り出し、HPLCにより分析した。
【0104】
バスケット法およびパドル法による試験における、バクロフェン多微粒子システムを含む多微粒子システムの溶解プロフィールを図5に示す。
【0105】
この溶解試験では、以下のことが観察された。溶解装置におけるin vitro放出をパドル法とバスケット法で比較すると、パドル装置で用いられたシングルコイルの性質により、ゲル化した製剤は、壊れていくつかの片となる傾向があり、したがって、製剤の比較的迅速な溶解がもたらされることが観察された。バスケット法では、製剤は、膨潤して相互に粘着する傾向があり、そのため、薬物は長時間捕捉された。しかしながら、パドル法とバスケット法の間に顕著な相違はなかった。
【実施例9】
【0106】
微粒子化されたHPMC/レボドパ多微粒子システムの溶解プロフィール
米国薬局方タイプ2溶解試験装置を用いて、人工胃液(SGF)pH1.2の中、37±5℃にて、パドル速度100RPMで溶解試験を実施した。適切な時間間隔で試料を取り出し、Waters Symmetry C18カラム、4.6×150mm、UV検出(265nm)および注入量50μLを用いるHPLCにより分析した。
【0107】
膨潤性親水性ポリマーを50%含む、混合/微粒子化手順を介して得られたレボドパおよびHPMCを含む多微粒子システムの溶解プロフィールを図6に示す。
【0108】
この溶解試験では、以下のことが観察された。カプセルシェルが崩壊し、製剤が溶解媒体と接触すると直ちに、HPMCは膨潤し、ゲル様の粘着性の塊を形成した。微粒子が溶解媒体との接触から1分以内に浮遊し始めた。HPMCの膨潤により、製剤の内部に、組成物に浮力を与えるエアポケットが含有されることになった。ポリマーのグレードおよび粘度によっては、ポリマーを長時間かけて溶解させることができる。したがって、この製剤をほぼ12時間浮遊させることができる。徐放性がin vitro溶解試験の間に観察された。
【実施例10】
【0109】
バスケット法またはパドル法における、微粒子化およびコーティングされた多微粒子システムの溶解プロフィールの比較
パドル法では、米国薬局方タイプ2溶解試験装置を用いて、人工胃液(SGF)pH1.2の中、37±5℃にて、パドル速度100RPMで溶解試験を実施した。適切な時間間隔で試料を取り出し、Waters Symmetry C18カラム、4.6×150mm、UV検出(265nm)および注入量50μLを用いるHPLCにより分析した。
【0110】
バスケット法では、メッシュで被覆した円筒状バスケットを用いて溶解試験を実施した。バスケットを、人工胃液(SGF)pH1.2の中に37±5℃にて浸し、所定の速度で回転させた。適切な時間間隔で試料を取り出し、HPLCにより分析した。
【0111】
バスケット法およびパドル法による試験における、レボドパを含む多微粒子システムの溶解プロフィールを図7に示す。
【0112】
この溶解試験では、以下のことが観察された。溶解装置におけるin vitro放出をパドル法とバスケット法で比較すると、パドル装置で用いられたシングルコイルの性質により、ゲル化した製剤は、壊れていくつかの片となる傾向があり、したがって、製剤の比較的迅速な溶解がもたらされることが観察された。バスケット法では、製剤は、膨潤して相互に粘着する傾向があり、そのため、薬物は長時間捕捉された。しかしながら、パドル法とバスケット法の間に顕著な相違はなかった。
【0113】
本発明をその特定の実施形態に関連して説明してきたが、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えることができ、また等価物で置換することができることは当業者ならば理解されよう。さらに、本発明の目的、精神および範囲に対して、特定の状況、材料、物質組成、工程、工程ステップまたはステップに適合するように多くの修正を加えることができる。このような修正はすべて、本明細書に添付した特許請求の範囲内であることを意図するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨潤性親水性ポリマーおよび活性薬剤を含むミクロ粒子を含む組成物であって、前記膨潤性親水性ポリマーが分子内で実質的に架橋されておらず、前記ミクロ粒子のサイズが約500μm以下である組成物。
【請求項2】
前記膨潤性親水性ポリマーが、セルロースポリマーおよびその誘導体、多糖およびその誘導体、ポリアルキレンオキシド、ポリエチレングリコール、キトサン、ポリ(ビニルアルコール)、キサンタンガム、無水マレイン酸コポリマー、ポリ(ビニルピロリドン)、デンプンおよびデンプンベースポリマー、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリウレタンヒドロゲル、ならびに前述のポリマーの1つまたは複数を含む組合せから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記膨潤性親水性ポリマーが、セルロースおよびその誘導体から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記膨潤性親水性ポリマーが、セルロース(結晶セルロースなど)、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MCまたはMETHOCEL)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、エチルヒドロキシ−エチルセルロース(EHEC)およびカルボキシメチルセルロースから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記膨潤性親水性ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記膨潤性親水性ポリマーが、結晶セルロースまたはエチルセルロース(EC)である、組成物1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ミクロ粒子のサイズが、約300μm以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ミクロ粒子のサイズが、約250μm以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ミクロ粒子のサイズが、約200μm以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記活性薬剤が、FDAによる溶解性および腸管透過性に関しての薬物の生物医薬品分類によるクラスII、またはクラスIIIもしくはクラスIVの化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記活性薬剤が、バクロフェンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記活性薬剤が、レボドパである、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
放出制御コーティングをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記放出制御コーティングが、EUDRAGIT(登録商標)ポリマーである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
膨潤性親水性ポリマーおよび活性薬剤を含むミクロ粒子を含む組成物であって、前記膨潤性親水性ポリマーが分子内で実質的に架橋されていないHPMCであり、前記ミクロ粒子のサイズが約500μm以下である組成物。
【請求項16】
膨潤性親水性ポリマーおよび活性薬剤を含むミクロ粒子を含む組成物を調製する方法であって、前記膨潤性親水性ポリマーが分子内で実質的に架橋されておらず、前記ミクロ粒子のサイズが約500μm以下であり、
固体膨潤性親水性ポリマーと固体活性薬剤を混合するステップ
を含む方法。
【請求項17】
前記固体活性薬剤を微粒子化するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項16および17のいずれか一項に記載の方法によって製造される組成物。
【請求項19】
膨潤性親水性ポリマーおよび活性薬剤を含むミクロ粒子を含む組成物を調製する方法であって、前記膨潤性親水性ポリマーが分子内で実質的に架橋されておらず、前記ミクロ粒子のサイズが約500μm以下であり、
活性薬剤を溶解して溶液または懸濁液にするステップと、
前記活性薬剤を含む溶液または懸濁液でノンパレイルシードをコーティングするステップと、
固体膨潤性親水性ポリマーを活性薬剤でコーティングした前記ノンパレイルシードと混合するステップと
を含む方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法によって製造される組成物。
【請求項21】
膨潤性親水性ポリマーおよび活性薬剤を含むミクロ粒子を含む組成物を調製する方法であって、前記膨潤性親水性ポリマーが分子内で実質的に架橋されておらず、前記ミクロ粒子のサイズが約500μm以下であり、
活性薬剤を膨潤性親水性ポリマーと混合するステップと、
活性薬剤と膨潤性親水性ポリマーの前記混合物を湿式顆粒化するステップと、
活性薬剤と膨潤性親水性ポリマーの前記混合物を押出すステップと、
活性薬剤と膨潤性親水性ポリマーの前記混合物を球状化して、微粒子を得るステップと
を含む方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法によって製造される組成物。
【請求項23】
膨潤性親水性ポリマーおよび活性薬剤を含むミクロ粒子を含む組成物を調製する方法であって、前記膨潤性親水性ポリマーが分子内で実質的に架橋されておらず、前記ミクロ粒子のサイズが約500μm以下であり、
活性薬剤を不活性ポリマーと混合するステップと、
活性薬剤と不活性ポリマーの前記混合物を湿式顆粒化するステップと、
活性薬剤と不活性ポリマーの前記混合物を押出すステップと、
活性薬剤と不活性ポリマーの前記混合物を球状化して、微粒子を得るステップと、
前記微粒子を膨潤性親水性ポリマーと混合するステップと
を含む方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法によって製造される組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−515783(P2013−515783A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547245(P2012−547245)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/062262
【国際公開番号】WO2011/090725
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(508096736)インパックス ラボラトリーズ,インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】