説明

膵がんの治療

水不溶性で水膨張性のポリマーを含んでおり、放出可能な形態でポリマーと結合している微小球と、膵臓の腫瘍又は嚢胞の治療に使用される化学療法剤とを含み、微小球が、37℃で水と平衡状態になったときに、ポリマーと水との総重量に基づいて少なくとも40重量%の水を含み、ポリマーが、pH7でアニオン性に荷電され、そして、化学療法剤が、カチオン的に荷電されて、ポリマーと静電的に結合している組成物が提供される。また、この組成物を使用する膵臓の腫瘍又は嚢胞を治療する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膵がんの治療のための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
膵癌は、米国では男性及び女性の両方において4番目に高い死因の癌である(非特許文献1を参照)。膵癌は、新たな症例の2.5%を占めているに過ぎない一方で、毎年の癌による死亡の6%に該当する(非特許文献2を参照)。その症状を有する患者の5%未満が、5年を超えて生存する(非特許文献1を参照)。局所進行性(悪性腫瘍のTNM分類のステージII、III又はIV)膵臓癌を有する患者が、観察又は併用化学療法のいずれかに無作為化された3つの臨床試験では、生存期間中央値は、観察群において平均3.5か月であり、化学療法群では平均4.5か月であった(非特許文献3−6を参照)。無作為化臨床試験における化学療法と外部ビーム放射線療法の組み合わせは11.5か月までの生存中央値を(関連する毒性を伴って)生じた(非特許文献7−10を参照)。最近、単一の作用物質としてゲムシタビンが5.7か月の生存中央値を示し、対照的に、5−フルオロウラシルは、4.4か月の生存中央値を示した(非特許文献11を参照)。
【0003】
膵癌の治療は、医者にとって依然として問題が多い。患者の15%のみが切除可能な腫瘍を提示し、全身化学療法は、有効性が限定的である。全身治療に匹敵する副作用を引き起こすことなく腫瘍において高い局所薬剤濃度を達成するために、局所化学療法が代替的治療として導入され、検討された(非特許文献12を参照)。近年、幾つかの技術が開発され、これらには、腹腔動脈注入法(CAI)、微小球又は血液濾過法を用いるCAI、大動脈流れ停止法(ASF)及び低酸素潅流分離法(IHP)が含まれる。数人の著者が、反応率の改善及び生存平均期間の延長を報告したが、これらの結果は、他者により確認されていない。加えて、副作用の発生及び技術的合併症の率が、局所化学療法の際に高いことが報告されている。
【0004】
超音波内視鏡(EUS)は、内視鏡により向けられた超音波を使用して、胸部及び腹部の内臓又は腫瘍の画像を得る医学的手法である。薬剤又は物質の注射を、位置する腫瘍の周囲に導くために使用することができる。EUS単独(94%)は、膵臓病巣を検出するために、特に3cmより小さい場合に、CTスキャン(69%)及び磁気共鳴映像法(83%)よりも感受性があることが示されている(非特許文献13を参照)。EUS誘導注射療法は、腫瘍を治療する方法として、化学療法剤、免疫調節物質、遺伝子治療及び放射性核種剤を少人数の患者に送達するために使用されてきた(非特許文献14を参照)。2000年の第1相試験は、EUS誘導細針注射(FNI)を使用して、細胞移植片を膵がんに送達し、4.2〜>36か月の範囲で全体的な生存中央値の13.2か月を示した(非特許文献15を参照)。EUSは、膵臓への5−フルオロウラシルの持続的送達のための腫瘍内乳酸ポリマーの移植を誘導するために使用されてきた。この研究は、イヌの膵臓において、化学療法ポリマーのEUS誘導移植の技術的実現性を実証した(非特許文献22を参照)。
【0005】
膵臓の嚢胞性腫瘍は、頻繁に検出され、良性から悪性にわたる広い病理範囲を包含する。嚢胞性腫瘍の相当な部分は、広範囲な診断評価の後でさえも組織学的に分類することができず、したがって、最終的に外科的な切除が必要になる。近年、EUS誘導エタノール洗浄による嚢胞性腫瘍の完全な分解が、従来の研究において報告された。更なる研究において、膵臓の嚢胞性腫瘍のためのパクリタセキル注射を伴うEUS誘導エタノール洗浄(EUS−EP)の安全性、実現可能性及びその後の反応が評価された(非特許文献16を参照)。この研究によって、EUS−EPは、膵臓の嚢胞性腫瘍を治療する安全で実現可能な効果的方法であると思われる。
【0006】
微小球の腫瘍内注射は、過去数年間知られており、問題が多いと考えられた。Mattssonら(非特許文献14を参照)は、ミクロ炭化微小球を、2つの移植ラット腫瘍、1本の後ろ足の背部に移植した肝細胞癌及び肝臓に移植した腺癌に注射した。微小球は、不均一に分布し、多くの場合に凝集体で見出され、腫瘍内血管を充填するように思われた。この所見は、微小球注射後の腫瘍における血管抵抗の増加により部分的に説明され、微小球の反復注射を用いる技術は議論の余地があると思われた(非特許文献17を参照)。アドリアマイシンを含有するアルブミン微小球による後の研究は、遊離薬剤の腫瘍内注射と比較して、肉腫ラットモデルにおいて有意な腫瘍反応を示した(非特許文献18を参照)。腫瘍内遊離ミトキサントロン又はミトキサントロン担持アルブミン微小球の効能及び毒性は、ネズミ乳癌モデルを使用して別の研究において評価された(非特許文献19を参照)。同じモデルにおいて、これら2つの療法の組み合わせも評価された。結果は、腫瘍内ミトキサントロンは、特に微小球調合剤において、生存の有意な改善及び全身毒性の有意な減少を示した。他の研究は、皮下又は筋肉内に移植された固形腫瘍の増殖を抑制する、注射用生分解性微小球放出カルボプラチン、ドキソルビシン又は5−フルオロウラシルの能力を強化した(非特許文献20を参照)。MATB−III細胞の移植の7〜10日後、ラットは、全身化学療法、腫瘍内ボーラス化学療法又は腫瘍中心若しくは腫瘍の外周界に沿った複数部位に化学療法微小球の注射を受けた。腫瘍の周界に沿ったカルボプラチン、ドキソルビシン又は5−フルオロウラシル微小球による単回治療は、腫瘍中心への直接的な注射に対して、腫瘍増殖の有意な用量関連抑制を生じた。ドキソルビシン担持微小球と5−フルオロウラシル担持微小球とをブレンドすること及びそれらを腫瘍に注射することにより達成された多剤併用は、いずれかの薬剤単独の持続的送達よりもさらに効能があった。
【0007】
Liuらは、ネズミ乳癌モデルにおいて微小球からのドキソルビシン及び化学増感剤ベラパミルの送達の効果を調査した(非特許文献21を参照)。初期インビトロ研究は、EMT6ネズミ乳癌細胞において及びドキソルビシン選択性多剤耐性変種EMT6/AR1.0において、ドキソルビシン及び〔(99m Tc)〕セスタミビの両方の蓄積、その上、P−糖タンパク質基質の蓄積も増強するベラパミルの能力を確認した。処置を受けなかった群又はブランク微小球を受けた群と比較して、腫瘍増殖の小幅(34%まで)の遅延があった。腫瘍内に投与された抗癌剤の制御放出微小球製剤は、高用量の薬剤を腫瘍に送達し、全身毒性がほとんどない効率的な方法であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】http://pancan.org/About/pancreaticCancerStats.html
【非特許文献2】Ahmedin Jemal, DVM, PhD, Rebecca Siegel, MPH, Elizabeth Ward, PhD, Taylor Murray, Jiaquan Xu 及び Michael J. Thun, MD,MS. Cancer Statistics, 2007. CA Cancer J Clin 2007; 57: 43-66
【非特許文献3】Stephens J, Kuhn J, O'Brien J等. Surgical morbidity, mortality, and long-term survival in patients with peripancreatic cancer following pancreaticoduodenectomy. Am J Surg. 1997; 174: 600-604
【非特許文献4】Andersen JR, Friis-Mo"ller A, Hancke S, RO"der O, Steen J, Baden H. A controlled trial of combination chemotherapy with 5-FU and BCNU in pancreatic cancer. Scand J Gastroenterol 1981; 16: 973-5
【非特許文献5】Frey C, Twomey P, Keehn R, Elliott 0, Higgins G. Randomized study of 5-FU and CCNU in pancreatic cancer: report of the Veterans Administration Surgical Adjuvant Cancer Chemotherapy Study Group. Cancer 1981; 47: 27-31
【非特許文献6】Mallinson CN, Rake MO, Cocking JB, Fox CA, Cwynarski MT, Diffey BL等. Chemotherapy in pancreatic cancer: results of a controlled, prospective, randomised, multicentre trial. BMJ 1980; 281: 1589-91
【非特許文献7】Moertel CG, Frytak S, Hahn RG, O'Connell MJ, Reitemeier RJ, Rubin J等. Therapy of locally unresectable pancreatic carcinoma: a randomized comparison of high dose (6000 rads) radiation alone, moderate dose radiation (4000 rads 1 5-fluorouracil), and high dose radiation 1 5-fluorouracil: the Gastrointestinal Tumour Study Group. Cancer 1981; 48: 1705-1O
【非特許文献8】Gastrointestinal Tumour Study Group. Radiation therapy combined with Adriamycin or 5-fluorouracil for the treatment of locally unresectable pancreatic carcinoma. Cancer 1985; 56: 2563-8
【非特許文献9】Klaassen DJ, Maclntyre JM, Catton GE, Engstrom PF, Moertel CG. Treatment of locally unresectable cancer of the stomach and pancreas: a randomized comparison of 5-fluorouracil alone with radiation plus concurrent and maintenance 5-fluorouracil-an Eastern Cooperative Oncology Group study. J Clin Oncol 1985; 3: 373-8
【非特許文献10】Gastrointestinal Tumour Study Group. Treatment of locally unresectable carcinoma of the pancreas: comparison of combined-modality therapy chemotherapy plus radiotherapy to chemotherapy alone. J Natl Cancer Inst 1988; 80: 751-5
【非特許文献11】Burris HA III, Moore MJ, Andersen J, Green MR, Rothenberg ML, Modiano MR等. Improvements in survival and clinical benefit with gemcitabine as first-line therapy for patients with advanced pancreas cancer: cancer: a randomized trial. J Clin Oncol 1997; 15: 2403-13
【非特許文献12】Lorenz M, Heinrich S, Staib-Sebler E, Kohne CH, Wils J, Nordlinger B, Encke A. Regional chemotherapy in the treatment of advanced pancreatic cancer - is it relevant? Eur J Cancer. 2000 May; 36(8): 957-65
【非特許文献13】Nirag C. Jhala, Darshana N. Jhal, David C. Chhieng, Mohamad A. Eloubeidi, Isam A. Eltoum, Isam A. Eltoum, (Am J Clin Pathol 120(3): 351-367, 2003)
【非特許文献14】Anthony J. Dimarino, Jr., Anthony J. DiMarino, Stanley B. Benjamin Gastrointestinal Disease: An Endoscopic Approach, Published 2002: 1078 ISBN 1556425112
【非特許文献15】Kenneth J. Chang, M.D., Phuong T. Nguyen, M.D., James A. Thompson, M.D., Thomas T. Kurosaki, M.S., Linda R. Casey, M.D., Edwin C. Leung, M.A., Gale A. Granger, Ph.D. Phase I clinical trial of allogeneic mixed lymphocyte culture (cytoimplant) delivered by endoscopic ultrasound-guided fine-needle injection in patients with advanced pancreatic carcinoma. Cancer, Volume 88, Issue 6, Pages 1325-1335
【非特許文献16】Oh HC, Seo DW, Lee TY, Kim JY, Lee SS, Lee SS, Kim MH. New treatment for cystic tumours of the pancreas: EUS-guided ethanol lavage with paclitaxel injection. Gastrointest Endosc. 2008 Apr; 67(4): 636-42
【非特許文献17】Mattsson J, Naredi P, Hafstrom L, Peterson HI. Intratumoural distribution of microspheres. Anticancer Res. 1986 Jul-Aug; 6(4): 563-6
【非特許文献18】Gupta PK, Hung, CT, Lam FC, Application of regression analysis in the evaluation of tumour response following the administration of adriamycin as a solution or via albumin microspheres to the rat. J Pharm Sci. 1900; 79(7): 634-7
【非特許文献19】Almond BA, Hadba AR, Freeman ST, Cuevas BJ, York AM, Detrisac CJ, Goldberg EP. Efficacy of mitoxantrone-loaded albumin microspheres for intratumoural chemotherapy of breast cancer. J Control Release. 2003 Aug 28; 91(1-2): 147-55
【非特許文献20】Emerich DF, Snodgrass P, Lafreniere D, Dean RL, Salzberg H, Marsh J, Perdomo B, Arastu M, Winn SR, Bartus RT Sustained release chemotherapeutic microspheres provide superior efficacy over systemic therapy and local bolus infusions. Pharm Res. 2002 Jul; 19(7): 1052-60
【非特許文献21】Liu Z, Ballinger JR, Rauth AM, Bendayan R, Wu XY. Delivery of an anticancer drug and a chemosensitizer to murine breast sarcoma by intratumoural injection of sulfopropyl dextran microspheres. J Pharm Pharmacol. 2003 Aug; 55(8): 1063-73
【非特許文献22】Sun S等. EUS-guided interstitial chemotherapy in the pancreas Endoscopy 2007; 39: 530-534
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
膵がんの治療のための改善された組成物の提供が引き続き望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様によると、水不溶性で水膨張性のポリマーを含んでおり、放出可能な形態でポリマーと結合している微小球と、膵臓の腫瘍又は嚢胞の治療に使用される化学療法剤とを含み、微小球が、37℃で水と平衡状態になったときに、ポリマーと水との総重量に基づいて少なくとも40重量%の水を含み、ポリマーが、pH7でアニオン性に荷電され、そして、化学療法剤が、カチオン的に荷電されて、ポリマーと静電的に結合している組成物が提供される。
【0011】
本発明の第2態様によると、膵臓の腫瘍又は嚢胞を治療する方法であって、本発明の第1態様の組成物をヒト又は動物の身体に投与する工程を含み、治療において、化学療法剤が微小球から放出される方法が提供される。
【0012】
本発明の第3態様によると、作用物質が、腫瘍若しくは嚢胞又はそれらの周囲に直接注射される、膵臓の腫瘍又は嚢胞の治療に使用される一般式I:
【化1】

〔式中、
は、H、ハロゲン、ヒドロキシル、並びに、任意にヒドロキシル、アミン、アルコキシ、ハロゲン、アシル及びアシルオキシ基で置換されている低級(C1−6)アルキルから選択され;
Aは、C(O)O又はCHであり;そして
Rは、NRであり、式中、R及びRは、同一又は異なっていて、それぞれ、水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基、又は、置換若しくは非置換の炭素環式若しくは複素環式基を表すか、或いはR及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、−O−、−S−若しくは>NRが挿入されていてもよい、任意に置換されている複素環を形成し、ここで、Rは、水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基、又は、置換若しくは非置換フェニル基であり;
そして、式中、−A−R基は、カンプトテシン化合物のA環の任意の位置に位置する炭素原子と結合しており、かつ、Rは、A又はB環において置換されている〕で示される化学療法剤、または、その塩である化学療法剤を含む、組成物が提供される。
【0013】
本発明の第4態様によると、膵臓の腫瘍又は嚢胞を治療する方法であって、本発明の第3態様の組成物を、腫瘍若しくは嚢胞又はそれらの周囲に注射する工程を含む方法が提供される。
【0014】
本発明の第5態様によると、一般式I:
【化2】

〔式中、
は、H、ハロゲン、ヒドロキシル、並びに、任意にヒドロキシル、アミン、アルコキシ、ハロゲン、アシル及びアシルオキシ基で置換されている低級(C1−6)アルキルから選択され;
Aは、C(O)O又はCHであり;そして
Rは、NRであり、式中、R及びRは、同一又は異なっていて、それぞれ、水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基、又は、置換若しくは非置換の炭素環式若しくは複素環式基を表すか、或いはR及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、−O−、−S−若しくは>NRが挿入されていてもよい、任意に置換されている複素環を形成し、ここで、Rは、水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基又は置換若しくは非置換フェニル基であり;
そして、式中、−A−R基は、カンプトテシン化合物のA環の任意の位置に位置する炭素原子と結合しており、かつ、Rは、A又はB環において置換されている〕で示される化学療法剤、または、その塩である化学療法剤を含む、
ポリマーマトリックスを含む組成物であって、膵臓の腫瘍又は嚢胞の治療における使用のための組成物が提供される。
【0015】
本発明の第6態様によると、膵臓の腫瘍又は嚢胞を治療する方法であって、本発明の第5態様の組成物を、腫瘍若しくは嚢胞又はそれらの周囲に注射する工程を含む方法が提供される。
【0016】
膵癌の治療は極めて困難であり、それは、この疾患が重要な構造に既に直接侵入している場合があり、多くの場合に化学療法及び放射線療法に耐性を示すか又は大部分の患者において診断時には転移しているからである。管理の選択肢は、外科的介入、放射線、化学療法、並びに疼痛及び栄養管理のような緩和ケア処置からなる。手術は、治癒的であると考慮される唯一の選択肢であるが、小型の腫瘍が膵臓に限定されている僅か15〜20%の患者において可能である。手術の選択肢それ自体は複雑であり、それは、膵臓が他の臓器に囲まれて到達するのを困難にし、更には、この臓器が非常に傷つきやすく、高度の注意を払って取り扱わなければならないからである。
【0017】
本発明は、薬剤溶出系から化学療法剤の局所送達を提供する。本発明は、全身毒性を有意に低減しながら、高レベルの薬剤を腫瘍又は嚢胞の部位に局所的に送達することを可能にする。
【0018】
超音波内視鏡誘導療法を本発明と組み合わせて使用することができる。これは、膵臓に到達する安全で正確な方法を提供する。持続時間にわたって病巣における高い局所薬剤濃度の利益を享受する(耐性機構を克服する可能性を提供する)潜在性を伴って、膵臓病巣を治療する化学療法ビーズの送達を誘導するために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】25mg/mLでトポテカンを担持したPVAヒドロゲルビーズである。
【図2】300〜500mmのPVAヒドロゲルビーズから200mLのPBSへのトポテカン及びイリノテカンの溶出である。
【図3】全担持量に対する割合としてのトポテカン及びイリノテカンの溶出である−300〜500mmのPVAヒドロゲルビーズ、200mLのPBS、周囲温度。
【図4】多様な濃度のイリノテカン及びトポテカンへの24時間作用後のPSN1細胞の生存率である(n=7;±SD)。
【図5】多様な濃度のイリノテカン及びトポテカンへの48時間作用後のPSN1細胞の生存率である(n=7;±SD)。
【図6】多様な濃度のイリノテカン及びトポテカンへの72時間作用後のPSN1細胞の生存率である(n=7;±SD)。
【図7】i)アルギン酸塩中のイリノテカンビーズ及びii)アルギン酸塩のみの直接注射の後の25日間にわたる、PSN1腫瘍移植片を有するヌードマウスの腫瘍サイズの変化である(平均±SD、n=3)。
【図8】i)アルギン酸塩中のイリノテカンビーズ及びii)アルギン酸塩のみの直接注射の後の25日間にわたる、PSN1腫瘍移植片を有するヌードマウスの平均体重の変化である(平均±SD、n=3)。
【図9】1、2又は3つのイリノテカン担持ビーズへの24、48及び72時間作用後のPSN1細胞の生存率である(平均±SD、n=7)。
【図10】1つのラパマイシン、1つのイリノテカン、及び、1つのラパマイシンと1つのイリノテカンとの組み合わせのビーズへの、24、48及び72時間作用後のPSN1細胞の生存率である(平均±SD、n=7)。
【図11】i)アルギン酸塩中のイリノテカンビーズ及びii)アルギン酸塩のみの直接注射の後の25日間にわたる、PSN1腫瘍移植片を有するヌードマウスの腫瘍サイズの変化である(平均±SD、n=3)。
【図12】i)アルギン酸塩中のイリノテカンビーズ及びii)アルギン酸塩のみの直接注射の後の25日間にわたる、PSN1腫瘍移植片を有するヌードマウスの平均体重の変化である(平均±SD、n=3)。
【図13】A)イリノテカン(−・3.3mg;−6.6mg)、B)トポテカン(−・・0.2mg;・・・0.4mg)で処置された雌ヌードマウスのPSN1皮下移植の腫瘍容量の変化である。
【図14】アルギン酸塩中のイリノテカン又はトポテカンビーズの直接注射の後の60日間にわたる、PSN1腫瘍移植片を有するヌードマウスの平均体重の変化である(平均±SD、n=3)。
【図15】実施例9の注射後のCTスキャンである。
【図16】注射の周囲の膵臓組織における炎症の病理学的等級付けである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
==微小球==
本発明に使用される微小球は、出願者の以前の出願−例えば、WO04/071495、WO06/027567及びWO08/128580を参照すること(特に参照例を参照すること)−に記載されている。しかし、直接の注射による、膵がんの治療における使用については、以前に記載されたことはない。
【0021】
本発明の第1及び第2態様において、水膨張性ポリマーは、pH7でアニオン的に荷電されており、化学療法剤は、カチオン的に荷電されて、ポリマーと静電的に結合している。これらは、本発明の他の全ての態様の好ましい実施態様を形成する。
【0022】
微小球を含むポリマーの変形可能な性質は、微小球を所望の部位へ直接注入する針による送達を可能にする。微小球は、分解性、非分解性でありうるか又は放射線治療と組み合わせた微小球治療を可能にする、放射線増感剤と組み合わせることもできる。
【0023】
ポリマーは水不溶性物質である。活性剤がポリマーマトリックスの表面の浸食により実質的されうるように生分解性であることができるが、好ましくは、ポリマーは実質的に生安定性(すなわち、非生分解性)である。
【0024】
ポリマーは水膨張性である。本発明における水膨張性ポリマーは、37℃で水により膨張したとき、重量分析により測定すると、少なくとも40重量%、好ましくは40〜99重量%、最も好ましくは75〜95重量%の範囲の平衡含水量を有する。
【0025】
本発明の好ましい実施態様において、組成物は、液体担体中の水膨張性の水不溶性ポリマーの微小球の懸濁液の形態である。典型的には、微小球は、37℃で水と平衡状態になったときに、1〜1000μmの範囲、より好ましくは50〜500μmの範囲、最も好ましくは100〜300μmの範囲のサイズを有する。好ましくは、微小球は、形状が実質的に球形である。直径は、好ましくは、カチオン性荷電化学療法剤を担持させる前に、微小球のサイズを測定することによって決定される。微小球は、好ましくは実質的に球形であるが、回転楕円又は規則性のさらに低い形状であることができる。非球形微小球の直径は、その最大直径である。
【0026】
一般に、ポリマーは共有架橋されているが、少なくとも部分的にイオン架橋されていることが、ポリマーにとって適している場合がある。
【0027】
アルブミン、アルギン酸塩、ゼラチン、デンプン、キトサン又はコラーゲンのような天然供給源由来のポリマーを、本発明の一つの実施態様において使用することができる。アルギン酸塩が特に好ましい。アルギン酸塩微小球は、典型的には、高G又は高M含有量の超純粋アルギン酸塩から、特定の濃度のアルギン酸塩溶液を金属(例えば、カルシウム又はバリウム)イオンのゲル化浴の中に押し出すことにより調製される。本発明の使用に適したアルギン酸塩微小球を作製する方法は、WO08/128580、特に実施例8〜11に記載されている。
【0028】
別の実施態様において、ポリマーは、エチレン性不飽和モノマーを二官能又はより多官能の架橋モノマーの存在下で重合することにより形成される。エチレン性不飽和モノマーには、イオン性(双性イオン性を含む)モノマーが含まれうる。
【0029】
エタフィルコンAに基づくコンタクトレンズに使用される、エチレングリコールジメタクリレート又はメチレンビスアクリルアミドのようなヒドロキシエチルメタクリレート、アクリル酸及び架橋モノマーのコポリマーを使用することができる。N−アクロイル−2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−プロパン−1,3−ジオール及びN,N−ビスアクリルアミドのコポリマーも使用することができる。
【0030】
他のポリマーは、例えば、分離媒体又はイオン交換媒体として使用される種類の、イオン置換基との架橋スチレンポリマーである。
【0031】
水膨張性の水不溶性マトリックスの形成に使用することができる別の種類のポリマーは、架橋ポリビニルアルコールである。ポリマーを、例えば、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド型架橋剤を使用して架橋することができる。そのような生成物では、ポリビニルアルコール(PVA)を、イオン性官能基含有化合物とヒドロキシル基との反応によりイオン性ペンダント基をもたらすことによって、イオン性にすることができる。ヒドロキシル基との反応に適した官能基の例は、カルボン酸若しくはその誘導体又はエステルを形成することができる他の酸性基のようなアクリル化剤である。
【0032】
ポリビニルアルコールは、代替的には、高吸収性ポリマーとして使用される種類の、ビニルアルコールと、アルリル酸のようなアニオン性アクリルモノマーとのコポリマーであることができる。
【0033】
本発明は、ポリマーマトリックスが、エチレン性基のラジカル重合により、1分子あたり1より多いエチレン性不飽和ペンダント基を有するポリビニルアルコールマクロマーから形成されるので、特に価値がある。好ましくは、PVAマクロマーは、例えば非イオン性モノマー及び/又はアニオン性モノマーを含むイオン性モノマーが含まれる、エチレン性不飽和モノマーと共重合される。
【0034】
PVAマクロマーは、例えば、1000〜500,000D、好ましくは10,000〜100,000Dの範囲のような適切な分子量のPVAポリマーに、ビニルペンダント基又はアクリルペンダント基をもたらすことによって形成することができる。アクリルペンダント基は、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸とPVAとを反応させて、幾つかのヒドロキシル基の間にエステル結合を形成することによってもたらすことができる。ポリビニルアルコールと重合することができるビニル基を付与する他の方法は、例えば、US4,978,713、並びに好ましくはUS5,508,317及び5,583,163に記載されている。したがって、好ましいマクロマーは、(アルク)アクリルアミノアルキル部分が環状アセタール結合を介して結合しているポリビニルアルコールの主鎖を含む。実施例1は、一般名ネルフィコンBとして知られているようなマクロマーの合成例を記載している。好ましくは、PVAマクロマーは、1分子あたり、約2〜20個、例えば5〜10個のエチレン性ペンダント基を有する。
【0035】
PVAマクロマーが、イオン性モノマーを含むエチレン性不飽和モノマーと共重合される場合、イオン性モノマーは、好ましくは、一般式III:
BQ III
〔式中、Yは、
【化3】

CH=C(R10)−CH−O−、CH=C(R10)−CHOC(O)−、CH=C(R10)OC(O)−、CH=C(R10)−O−、CH=C(R10)CHOC(O)N(R11)−、R12OOCCR10=CR10C(O)−O−、R10CH=CHC(O)O−、R10CH=C(COOR12)CH−C(O)−O−、
【化4】

から選択され、ここで、
10は、水素又はC〜Cアルキル基であり;
11は、水素又はC〜Cアルキル基であり;
12は、水素又はC1−4アルキル基、又はBQであり、ここでB及びQは、下記に定義されているとおりであり;
は、−O−又は−NR11−であり;
は、これらの基(−(CHOC(O)−、−(CHC(O)O−、−(CHOC(O)O−、−(CHNR13−、−(CHNR13C(O)−、−(CHC(O)NR13−、−(CHNR13C(O)O−、−(CHOC(O)NR13−、−(CHNR13C(O)NR13−(ここで基R13は同一又は異なっている)、−(CHO−、若しくは、−(CHSO−)、又は、任意にBと組み合わされて、原子価結合であり、ここで、rは、1〜12であり、R13は、水素又はC〜Cアルキル基であり;
Bは、任意に、パーフルオロ化鎖までを含む1個以上のフッ素原子を含有する、直鎖若しくは分岐鎖のアルカンジイル、オキサアルキレン、アルカンジイルオキサアルカンジイル若しくはアルカンジイルオリゴ(オキサアルカンジイル)鎖であるか、又はQ若しくはYが、Bに結合している末端炭素原子を含有する場合、原子価結合であり;そして
は、イオン性基である〕
を有する。
【0036】
アニオン性基Qを含むような化合物が、好ましく含まれる。
【0037】
アニオン性基Qは、例えば、カルボン酸塩、炭酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、ホスホン酸塩又はリン酸塩基であることができる。モノマーを遊離酸として又は塩形態で重合することができる。好ましくは、共役酸のpKは5未満である。
【0038】
適切なカチオン性基Qは、好ましくは基N14、P15又はS15であり、ここで、基R14は、同一又は異なっていて、それぞれ水素、C1−4アルキル又はアリール(好ましくはフェニル)であるか、或いは2つの基R14は、それらが結合しているヘテロ原子と一緒になって、5〜7個の原子を含有する飽和又は不飽和複素環を形成する。基R15は、それぞれ、OR14又はR14である。好ましくは、カチオン性基は、永久的にカチオン性であり、すなわちR14は、それぞれ水素以外である。好ましくは、カチオン性基QはN14であり、ここでR14は、それぞれC1−4アルキル、好ましくはメチルである。
【0039】
双性イオン性基Qは、例えばアニオン性電荷の1つの二価中心及びカチオン性電荷の1つの一価中心を有する若しくはその逆を有することによるか、又はカチオン性電荷の2つの中心及びアニオン性電荷の1つの中心を有する若しくはその逆を有することによって、全体的な電荷を有することができる。しかし、好ましくは、双性イオンは、全体的な電荷を有さず、最も好ましくは、一価カチオン性電荷の1つの中心及び一価アニオン性電荷の1つの中心を有する。
【0040】
本発明においてQとして使用することができる双性イオン性基の例は、WO−A−0029481に開示されている。
【0041】
例えば、エチレン性不飽和モノマーが双性イオン性モノマーを含む場合、このことは、粒子の親水性、潤滑性、生体適合性及び/又は血液適合性を増大することができる。適切な双性イオン性モノマーは、本発明者の先行公報WO−A−9207885、WO−A−9416748、WO−A−9416749及びWO−A−9520407に記載されている。好ましくは、双性イオン性モノマーは、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)である。
【0042】
一般式Iのモノマーにおいて、好ましくは、YはCH=CR10COA−基であり、ここで、R10は、H又はメチル、好ましくはメチルであり、そしてAは、好ましくはNHである。Bは、好ましくは、炭素原子1〜12個、好ましくは2〜6個のアルカンジイル基である。そのようなモノマーは、アクリルモノマーである。
【0043】
エチレン性不飽和モノマーに、希釈剤モノマー、例えば非イオン性モノマーを含めることができる。そのようなモノマーを酸性基のpKを制御するため、生成物の親水性又は疎水性を制御するため、ポリマーに疎水性領域をもたらすため、又は単に不活性希釈剤として作用するために有用でありうる。非イオン性希釈剤モノマーの例は、例えば、アルキル(アルク)アクリレート及び(アルク)アクリルアミドであり、特に、炭素原子1〜12個のアルキル基を有するような化合物、ヒドロキシ及びジ−ヒドロキシ置換アルキル(アルク)アクリレート及び−(アルク)アクリルアミド、ビニルラクタム、スチレン、並びに他の芳香族モノマーである。
【0044】
ポリマーマトリックスにおいて、アニオンのレベルは、好ましくは0.1〜10meq g−1の範囲、好ましくは少なくとも1.0meq g−1である。好ましいアニオンは、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩及びホスホン酸塩のように、強酸から誘導される。
【0045】
PVAマクロマーを他のエチレン性不飽和モノマーと共重合する場合、PVAマクロマーと他のモノマーの重量比は、好ましくは50:1〜1:5の範囲、より好ましくは20:1〜1:2の範囲である。エチレン性不飽和モノマーにおいて、アニオン性モノマーは、好ましくは、10〜100mol%の範囲、好ましくは少なくとも25mol%の量で存在する。
【0046】
架橋ポリマーは、例えば、連続不混和性担体の分散相においてエチレン性不飽和モノマーの液滴を重合することによって、微粒子形態のままで形成することができる。このことは、ポリビニルアルコールマクロマーに基づく重合にとって特に適している。膨張しているときに、所望のサイズを有する微小球を生成するのに適している油中水重合の例は、知られている。例えば、US4,224,427は、水溶性モノマーを、懸濁剤の存在下で連続溶媒相に分散することによる、直径が5mmまでの均一球形ビーズ(微小球)を形成する方法を記載する。予め形成された分散体重合液滴の架橋を使用することもできる。予め形成された分散体液滴ポリマーの架橋を使用することもできる。安定剤及び界面活性剤が存在して、分散相粒子のサイズに制御をもたらすことができる。重合及び/又は架橋した後、架橋微小球を、既知の方法で回収し、洗浄し、場合により滅菌する。好ましくは、微小球は、水性液体で膨張し、サイズに従って分類される。
【0047】
カチオン性荷電化学療法剤(本明細書以降、「活性剤」又は「薬剤」とも呼ぶ)は、活性剤の制御放出を一定期間にわたって可能にするように、好ましくはポリマーと結合している。この期間は、数分間から数週間、好ましくは少なくとも数日間まで、好ましくは72時間までであることができる。活性剤は、ポリマーに静電結合している。ポリマーにおけるアニオン性基の存在は、カチオン性荷電活性剤の放出の制御を可能にする。
【0048】
本発明において、薬剤はポリマーマトリックスに共有結合していないことが重要である。
【0049】
活性剤を、多様な技術によりポリマーマトリックスに組み込むことができる。一つの方法において、活性剤をポリマーの前駆体と、例えばモノマー若しくはマクロマー混合物、又は架橋性ポリマー及び架橋剤の混合物と、重合又は架橋の前に混合することができる。あるいは、活性剤を架橋した後にポリマーに担持させることができる。例えば、乾燥微粒子ポリマーを、好ましくは水又はエタノールのようなアルコール中の活性剤の溶液で膨張させ、続いて任意に非吸収作用物質を除去する及び/又は溶媒を蒸発することができる。アルコールのような有機溶媒又はより好ましくは水中の活性剤の溶液を、微小球の移動床に噴霧し、それによって薬剤を微小球の本体に吸収させ、同時に溶媒を除去する。最も好都合には、水のような連続液体ビヒクル中に懸濁した膨張微小球を、薬剤のアルコール水溶液と、一定期間にわたって単に接触させ、それにより薬剤を微小球の本体に吸収させることが可能であることが見出された。微小球に薬剤を固着させる技術は、担持レベルを増大することができ、例えば、担持懸濁液のpHを活性剤が比較的不溶性の形態になる値にシフトすることによる沈殿である。続いて膨張ビヒクルを除去することができるか、又は都合良くは生成物の一部として微小球に保持させることができる。膨張微小球を、スラリーの形態の、すなわち膨張微小球の外側に水を全く又はあまり有することなく、膨張形態で使用することができる。あるいは、微小球の懸濁液を残留薬剤担持溶液から取り出し、乾燥医薬系生成物に用いる伝統的な技術のいずれかにより微小球を乾燥することができる。これには、室温若しくは高温又は減圧下若しくは真空下での空気乾燥、伝統的な凍結乾燥、大気圧凍結乾燥、超臨界液の溶液促進分散(SEDS)が含まれるが、これらに限定されない。あるいは、薬剤担持微小球は、一連の工程において水と入れ替えるために有機溶媒を使用し、続いてより揮発性の有機溶媒を蒸発させて脱水することができる。薬剤にとって非溶解性である溶媒を選択するべきである。
【0050】
簡潔には、典型的な伝統的凍結乾燥方法は、以下のように進行する:試料を等分して、部分共栓ガラスバイアルに入れ、凍結乾燥機の冷却した温度制御棚に置く。棚の温度を下げ、試料を凍結して、均一の規定温度にした。完全に凍結した後、乾燥機の圧力を規定圧力に下げて、一次乾燥を開始する。一次乾燥の間に、水蒸気が昇華により凍結物質から漸進的に除去され、一方、棚温度は、一定の低温に制御されている。二次乾燥を、棚温度の増加及びチャンバ圧の更なる低減により開始し、これにより、半乾燥物質に吸収されていた水を、残留含水量が所望のレベルに減少するまで除去できる。バイアルを、必要であれば保護環境下、その場で密閉することができる。
【0051】
大気圧凍結乾燥は、非常に乾燥した空気を、凍結生成物を覆って急速に循環することにより達成される。伝導的な凍結乾燥方法と比較して、真空を用いない凍結乾燥は、幾つかの利点を有する。循環乾燥ガスは、風の強い日に洗濯物が素早く乾くのと同じ方法で、凍結試料からの改善された熱伝達及び物質移動を提供する。この領域の作用は、大部分、食品生産に関し、揮発性芳香族化合物の保持の増加が観察されており、生物学的製剤の乾燥におけるこの潜在的な利益は、未だに特定されていない。特に興味深いことは、大気噴霧乾燥方法を使用することによって、ケーキの代わりに微細の自由流動粉末が得られるという事実である。サブミクロンの直径を有する粒子を得ることができ、これは、摩砕によって一般的に得ることができるものよりも10倍小さい。高表面積を有する粒状の性質は、容易に再水和されうる生成物をもたらし、現在、吸入及び経皮用途に必要とされる微小球のサイズに対する微調整は不可能であるが、この領域において潜在性がある。
【0052】
組成物を、投与の直前に、ポリマー及び化学療法剤(活性剤)から作製することができるが、組成物は予め形成されていることが好ましい。乾燥ポリマー活性剤微小球を、使用直前に水和することができる。あるいは、提供される組成物は完全に配合されていることができ、好ましくは吸収又は吸着活性化合物と、吸収水、例えば生理食塩水及び超粒子状液、例えば食塩水とを有するポリマー微小球を含む。
【0053】
本発明の第3態様において、直接注射による膵がんの治療のための一般式Iの化学療法剤を含む組成物が提供される。好ましくは、作用物質は、本発明の第5態様のように、ポリマーマトリックスの中にある。ポリマーマトリックスのポリマーは、好ましくは水不溶性物質である。表面から薬剤を放出するポリマーマトリックスの浸食により薬剤を実質的に放出できるように、生分解性でありうるが、好ましくは、ポリマーは実質的に生安定性(すなわち、非生分解性)である。好ましくは、ポリマーマトリックスは、本発明の第5態様のように、微小球の形態である。
【0054】
ポリマーは水膨張性である。本発明に有用な水膨張性ポリマーは、37℃で水により膨張したとき、重量分析により測定すると、40〜99重量%、好ましくは75〜95重量%の範囲の平衡含水量を有する。
【0055】
一般に、ポリマーは共有架橋されているが、少なくとも部分的にイオン架橋されている又は疎水的に架橋されていることが、ポリマーにとって適している場合がある。幾つかの実施態様において、アルブミン、アルギン酸塩、ゼラチン、デンプン、キトサン又はコラーゲンのような天然供給源から誘導されるポリマーを使用することが適している場合があり、これらは全て塞栓性作用物質として使用されてきた。他の実施態様において、ポリマーは、天然に生じるポリマー又はその誘導体を実質的に含有しない。好ましくは、エチレン性不飽和モノマーを二官能又はより多官能の架橋モノマーの存在下で重合することにより形成される。エチレン性不飽和モノマーには、イオン性(双性イオン性を含む)モノマーが含まれうる。
【0056】
投与される組成物中の活性剤のレベルは、好ましくは、組成物1mlあたり0.1〜500mg、好ましくは、1mlあたり10〜100mgの範囲である。好ましくは、治療は、1〜5回繰り返され、それぞれの用量において、投与される活性剤の量は、1mlあたり0.1〜100mg、好ましくは1mlあたり10〜100mgの範囲である。通常の治療において投与される組成物の量は、1〜6mlの範囲である。投与される活性剤の1用量あたりの総量は、好ましくは10〜100mg、より好ましくは50〜250mgの範囲である。下記の実施例で示される放出データに基づいて、本発明者は、これは腫瘍に対する治療有効濃度を示し、有意なレベルの細胞内送達が生じるはずであり、それにより治療効果が達成されると考える。活性剤投与に関する有害な副作用は回避されるはずである。
【0057】
そのような薬剤を微小球に組み込む方法は、WO2007/090897に詳細に説明されている。
【0058】
化学療法剤
本発明の第1態様において、任意のカチオン性荷電化学療法剤を使用することができる。作用物質は、細胞毒性であることができる。細胞毒性剤は、細胞に対して直接的に毒性があるものであり、その生殖又は増殖を防止する。適切な細胞毒性剤は、例えば、ドキソルビシン及ミトキサントロン、並びにWO04071495に開示されている他の化合物のようなアントラサイクリン化合物、トポテカン及びイリノテカン、並びにWO2006027567に記載されている誘導体のようなカンプトテシン化合物である。
【0059】
本発明の第1態様において使用される化学療法剤(活性剤)は、カチオン的に荷電され、膵がんに対して治療上活性である任意の化合物であることができる。 上記に定義された微小球は、カチオン性荷電化学療法剤を、イオン交換機構を介して放出し、それにより、膵がんへカチオン性荷電化学療法剤を制御送達するデポー剤として作用する。
【0060】
化学療法剤は、プロドラッグであることができ、すなわち、インビボで活性化されて活性剤を形成する化合物であることができる。化学療法剤は、代替的には放射線増感剤であることができる。例えば、ドキソルビシンは放射線増感剤である。放射線増感剤は、組織、特に腫瘍細胞の放射線感受性を増加する化合物である。
【0061】
適切なカチオン的に荷電されている化合物は、ドキソルビシン及びWO04071495に開示されているアミン基を有する他のアントラサイクリン化合物又はミトキサントロン、WO2006027567に記載されているイリノテカンのようなカチオン性カンプトテシン誘導体(これらの内容は参照として本明細書に組み込まれる)又はトポテカンである。
【0062】
本発明の一つの実施態様において、2つ以上の化学療法剤が膵がんの治療に使用される。この場合、試験される薬剤の組み合わせは、個別の粒子を含み、それぞれ薬剤のうちの1つが担持されているか又はそれぞれの粒子には両方の薬剤を一緒に担持することができる。微小球に共担持する方法は、出願者の同時係属出願PCT/GB2008/050722に提示されている。
【0063】
第1作用物質はカチオン的に荷電されているが、第2作用物質は、その必要がない。一方の作用物質は細胞毒性であるべきであり、他方は、腫瘍治療において細胞毒性化合物に対して相補的な活性を有するべきである。そのような組み合わせは、PCT/GB2008/050722に詳細に記載されている。
【0064】
第2作用物質として組み合わせに使用されるのに適した薬剤には、タキサン、白金に基づいた新生物作用物質、5−FUのような代謝拮抗物質、メルカプトプリン、カペシタビン、アクチノマイシンDのような他の細胞毒性抗生物質、並びにビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン及びビノレルビンを含むビンカアルカロイドである。化学療法薬の例には、シタラビン、ゲムシタビン、シクロホスファミド、フルダラビン、クロラムブシル、ブスルファン、ミトキサントロン、レチノイド、アナグレリドなども挙げられる。
【0065】
第2作用物質として組み合わせに使用することができる細胞毒性又は細胞増殖抑制化合物の一つの部類は、mTORを標的にするラパマイシン及びラパマイシン類似体を含む。そのような化合物には、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、バイオリムス、ABT−578及びAP23573が含まれる。WO−A−2003022807(この内容は参照として本明細書に組み込まれる)に記載されているラパマイシン類似体の範囲内に包含される化合物のいずれかを、ラパマイシン類似体として使用することができる。
【0066】
組み合わせに使用される化学療法剤は、疎水性であることができる。本発明は、抗腫瘍特性及び水において低い溶解性を有する薬剤と、水混和性有機溶媒において高い水溶性を有する薬剤とを含む組み合わせを配合することに有用性が見出されている。パクリタセキルと、10g/l未満の室温での水における溶解性を有する誘導体とを含む組み合わせ、ラパマイシンと、10g/l未満の室温での水における溶解性を有する誘導体とを含む組み合わせ、メトトレキセートと、10g/l未満の水溶性の幾つかのテカンとを含む組み合わせを、本発明において使用することができる。これらの化合物は、全て、水混和性溶媒と水の室温での溶解度比の少なくとも10:1、好ましくは少なくとも100:1、106:1まで、さらには例えば103:1超を有する。
【0067】
ベラパミル及びPGPインヒビターは、多くの場合、カチオン性荷電化学療法剤と一緒に本発明において併用療法に使用される。
【0068】
細胞毒性剤がラパマイシン又はラパマイシン誘導体/類似体である場合、他の作用物質は、一つの好ましい実施態様では、ドキソルビシン又はWO04071495に記載されているアミン基を有する他のアントラサイクリン化合物である。
【0069】
作用質がカンプトテシン誘導体を含む場合、上記に記載された一般式Iの化合物のようなカチオン性置換基を有する誘導体の使用が特に効果的である。好ましくは、−A−R基は、カンプトテシン化合物のA環の9、10又は11位のいずれかに位置する炭素原子と結合している。
【0070】
一つの実施態様において、カンプトテシン誘導体は、式IA:
【化5】

〔式中、
は、H、任意にヒドロキシル、アミン、アルコキシ、ハロゲン、アシル若しくはアシルオキシ基で置換されている低級(C1−6)アルキル、又はハロゲンであり;そして
Rは、NRであり、式中、R及びRは、同一又は異なっていて、それぞれ、水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基、又は、置換若しくは非置換の炭素環式若しくは複素環式基を表すか、或いはR及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、−O−、−S−若しくは>NRが挿入されていてもよい、任意に置換されている複素環を形成し、ここで、Rは、水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基又は置換若しくは非置換フェニル基であり;
そして、式中、−O−CO−R基は、カンプトテシン化合物のA環の9、10又は11位のいずれかに位置する炭素原子と結合している〕を有し、その塩が含まれる。
【0071】
−O−CO−R基は、10位で結合していることが好ましい。
【0072】
は、好ましくはC1−4アルキル、最も好ましくはエチルであり、そしてmは、好ましくは1である。
【0073】
ハロゲン原子Rは、例えば、F、Cl、Br又はI、好ましくはF又はClである。R〜Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル及びt−ブチル、好ましくはメチルであることができる。
【0074】
R及びRの置換基は、好ましくは、ハロゲン原子、ヒドロキシ、C1−4アルコキシ、フェノキシ、COOR、SO及びPO(R、アリール、下記:
【化6】

NR及びCONR、QAOR、QANR及びQAQRから選択され、ここで、Rは、C1−4アルキル又はアリールであり;Rは、水素、ハロゲン、C1−4アルキル又はC1−4アルコキシであり;Rは、水素、ハロゲン又はC1−4アルキルであり;R及びRは、同一又は異なっていて、それぞれH又はC1−4アルキルであるか、或いはR及びRは、共にC3−6アルカンジイルを表し;
Qは、OCO又は−COO−であり、そしてAは、C2−4アルカンジイルである。
【0075】
好ましくは、Rは、NRであり、ここでR及びRは、窒素原子と一緒になって、5又は6員環、好ましくは任意に置換基を有する飽和環を形成する。置換基は、好ましくは−NRである。そのような置換基において、R及びRは好ましくは共にC4−5アルカンジイルである。そのような基は、塩基性であり、pH7でカチオン的に荷電される傾向がある。最も好ましくは、Rは、下記:
【化7】

である。
【0076】
適切な化合物の別のファミリーは、一般式II:
【化8】

〔式中、
20及びR23は、それぞれヒドロキシ若しくは水素であるか、又は一緒になってCHOCHであり;
21及びR22のうちの一方はHであり、他方はCHNR2425であり、ここで、R23及びR24は、同一又は異なっていて、それぞれ水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基又は置換若しくは非置換の炭素環式若しくは複素環式基を表すか、或いはR23及びR24は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、−O−、−S−若しくは>NRが挿入されていてもよい、任意に置換されている複素環を形成し、Rは、水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基又は置換若しくは非置換フェニル基である〕を有し、その塩及び第四級誘導体が含まれる。この主張に適した化合物の一つの例は、トポテカンであり、ここで、R20はヒドロキシであり、R22及びR23は水素であり、R21はCHNR2425であり、そしてR24及びR25は両方ともメチルである。
【0077】
組成物は、従来の放射線不透剤又は染料のような画像化剤を含むことができる。導入される組成物は、他の治療活性剤と混合することもできる、又は他の活性剤と組み合わせるが、別々に導入することができる。
【0078】
膵がんの治療に使用される組成物は、典型的には、吸収された活性剤を含有する膨張微小球の水性懸濁液である。上記に考察された追加の作用物質のいずれかを送達する前に、懸濁液を混合することが望ましい。あるいは又は追加的に、微小球をこれらの追加の作用物質のいずれかで予め担持させることができる。
【0079】
==治療==
本発明を、膵臓の腫瘍(膵がん)又は嚢胞を治療するために使用することができる。腫瘍は、癌性又は良性であってもよい。嚢胞は、膵臓の頭部、体部及び尾部内の液体の集合である。幾つかの嚢胞は良性である。しかし、他は、癌性又は前癌性であり、本発明は両方を治療するために使用することができる。
【0080】
腫瘍又は嚢胞を治療するために、組成物は、典型的には、腫瘍又は嚢胞の近辺に注射される。近辺とは、腫瘍若しくは嚢胞に直接注射すること又は腫瘍若しくは嚢胞の周辺/周界に注射することを意味する。注射部位は、代替的には、腫瘍又は嚢胞の周界の外側にあってもよいが、化学療法剤が腫瘍又は嚢胞の増殖に影響を及ぼすことができるように十分に近接しているべきである。
【0081】
通常、組成物は膵臓に直接注射されるだろう。しかし、状況によって、組成物を、膵臓の外側であるが、化学療法剤が腫瘍又は嚢胞の増殖を妨げることができるように十分に近くに注射してもよい。
【0082】
好ましくは、膵臓の腫瘍又は嚢胞を治療するために、組成物は膵臓に注射され、典型的には、針を使用して膵臓に直接注射される。典型的には、組成物は、腫瘍又は嚢胞の周辺の辺縁の周りに注射される。
【0083】
このように組成物を注射することによって、化学療法剤が標的の位置において制御された方法で放出される。このことは、より少ない用量を使用することができ、それにより全身毒性に関連する問題が限定的になることを意味する。
【0084】
超音波内視鏡(EUS)は、腫瘍を可視化し、化学療法剤の注射を腫瘍に導くために、治療において使用することができる。EUSは、通常、エコー内視鏡をヒト又は動物の被験者の食道に挿入し、これを近位胃まで通すことを伴う。その後、典型的には、本発明の組成物を、適当なゲージを有する針の内腔に挿入し、これを内視鏡装置に装着する。針は、連続超音波誘導によって胃壁を貫通し、膵臓の中まで押し通してもよい。それから組成物を針から押し出して、組織に注入する。そして装置を身体から取り外す。
【0085】
組織に注射したとき、微小球は組織内圧により押し出される傾向がある。この問題を克服するために、導入される組成物は、付加的に粘度調整剤を含んでもよい。粘度調整剤は、組成物の粘度を増加させるだろう。粘度調整剤は、例えば、アルギン酸塩、カルボキシセルロース又はPVPのような生分解性ポリマーであってもよい。アルギン酸塩が粘度調整剤として使用される場合、アルギン酸塩は、好都合なことに、いったん注入されると、周囲組織に拡散しているカルシウムイオンとの架橋によりゲルを形成する。
【0086】
粘度調整剤として、超高純度で高分子量のアルギン酸塩を使用するのが好ましい。膵臓への異物の注射は炎症を引き起こし、膵炎につながる可能性がある。アルギン酸塩は、良好な生体適合性を示すため、炎症性反応は限定的である。
【0087】
典型的には、アルギン酸塩は、300kDaを超える、より典型的には500kDaを超える、最も典型的には800kDaを超える分子量を有する。Phycomer E01は、粘度調整剤として作用し得るルギン酸塩の適切な例である。
【0088】
本発明において治療される被験者は、一般に哺乳類であり、好ましくはヒトである。
【実施例】
【0089】
以下の実施例において本発明を更に説明する。幾つかの結果を、添付の図面で示し、実施例においてより詳細に記載している。
【0090】
参照例:微小球の調製方法の概説
微小球は、WO2004/071495に記載されている方法により、「低AMPS」又は「高AMPS」生成物として合成する。「高AMPS」生成物を以下の実施例に使用する。簡潔には、アセタール結合エチレン性不飽和基を有するポリビニルアルコールマクロマーと2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホネートとの重量比約1:1の水性混合物を、酢酸酪酸セルロース安定剤を含有する酢酸ブチルの連続相に撹拌機を用いて懸濁し、レドックス開始剤を使用してラジカル重合して、ビーズを形成し、それを洗浄し、乾燥し、後の実施例で使用する100〜300μmの画分を含むサイズ画分にふるい分けする。微小球の平衡含水量は、94〜95重量%である。
【0091】
実施例1:イリノテカン担持PVAヒドロゲルビーズの調製
イリノテカン担持スルホン酸修飾PVAヒドロゲル微小球は、WO2006/027567に詳述されているように調製した(イリノテカンの担持及び塞栓形成ビーズからの溶出については実施例1を参照すること)。薬剤担持ビーズを、凍結乾燥して(WO2006/027567の実施例5を参照すること)水を除去し、ガンマ線照射を使用して滅菌した。
【0092】
実施例2:トポテカン担持PVAヒドロゲルビーズの調製
トポテカン担持スルホン酸変性PVAヒドロゲル微小球は、22.73mgのトポテカン(Dabur Pharma Ltdの黄色粉末)を用意し、5mLの水に溶解して、4.55mg/mLの溶液を作製することによって調製した。4.39mLのこの溶液を1mLのPVAヒドロゲルビーズスラリー(サイズ範囲500〜700μm)と混合すると、溶液は黄色から無色に変わり、青色ビーズは1時間以内に緑色に変わった。図1は、緑色である担持PVAヒドロゲルビーズの画像を示す。担持溶液における残留薬剤の涸渇測定によると、推定薬剤担持は19.8mgであり、担持効率は99.2%である。担持ビーズのサイズは492±42μmであり、500〜700μm範囲の未担持PVAヒドロゲルビーズの約600μmと比較して、減少している。
【0093】
実施例3:イリノテカンPVAヒドロゲルビーズ及びトポテカンPVAヒドロゲルビーズの溶出の比較
1mLのPVAヒドロゲルビーズを、3mLの15.46mg/mLトポテカン溶液と3時間ローラー混合した。担持量は、PE Lamda 25 UVを384nmで使用する涸渇法によりビーズ1MLあたり38.7mg(2度実施の平均)と測定した。担持ビーズを、担持溶液から分離し、200mLのPBSと周囲温度でローラー混合した。特定の時点で、少量の溶液を取り、濃度決定するための384nmにおけるUV測定のために希釈した。溶出プロフィールを図2及び3に示し、実施例1に概説された同様の方法を使用して調製されたイリノテカン担持ビーズと比較した。
【0094】
実施例4:PSN1(悪性ヒト膵癌)細胞株に対するイリノテカン及びトポテカンの細胞毒性
20,000個のPSN1細胞を96ウエルプレートに播種し、一晩放置してウエル表面に接着させた。薬剤溶液を、細胞培地により1000μg/mlから1×10−8μg/mlまで連続的に希釈した。培地を細胞から除去し、各濃度200μlを細胞に加え(n=7)、ブランクの対照には200μlの培地を加えた(n=12)。24、48及び72時間後、細胞をPBS(×3)で洗浄し、100μlの培地を加えた。MTSアッセイは、20μlのMTS溶液を各ウエルに加え、2時間インキュベートする(37℃、5%CO)ことにより行なった。各ウエルの490nmでの吸光度は、Biotekプレート読み取り機を使用して決定した。細胞生存率は、対照群に対する割合として計算した(全ての試料から、培地及びMTS溶液ブランク吸光度値を差し引いた)。
【0095】
イリノテカン及びトポテカンは、両方とも、PSN1細胞の生存率を低減した。イリノテカンは、細胞生存率の50%減少に達するのに、全ての時点においてトポテカンよりも高い用量を必要とした(表1)。
【0096】
【表1】

表1:24、48及び72時間でのトポテカンとイリノテカンの推定IC50値
【0097】
24時間作用させた後、トポテカンは、1μg/mlで細胞生存率が低減し始めたが、一方、イリノテカンは、濃度が100μg/mlになるまで低減しなかった(図4)。48時間後、トポテカンは0.1μg/mlで活性(約80%の細胞生存率)を示し始めたが、一方、イリノテカンは、10μg/mlで細胞生存率が低下した(図5)。72時間後、イリノテカンは、およそ50μg/mlで効果を示し始めた(図6)。対照的にトポテカンは1×10−7μg/mlの低さで活性を示したが、80%を下回る細胞生存率の低下は、細胞が0.01μg/mlの濃度にされるまで達成されなかった(図6)。トポテカンは、PSN1細胞生存率を、イリノテカンより強力に低下させた。より低い濃度(<1μg/ml)では、イリノテカンは、72時間後さえ、細胞生存率に対して有害な作用を示さなかった。トポテカンは、24及び48時間後に細胞毒性効果を示さなかった幾つかの濃度において、72時間ではその効果を示した。
【0098】
実施例5:ヌードマウスのヒト悪性膵癌異種移植片へのイリノテカン担持ビーズのインビボ直接注射
前処置:10個のPSN−1細胞(細胞株)を、皮下移植のために、インビトロでの継代から調製した。マウスを予定された処置に対して無作為化した。
麻酔:なし
臨床手順:腫瘍が触知可能(2〜3mm)になったとき、イリノテカンビーズ/アルギン酸塩混合物を皮下で増殖している腫瘍(これは腫瘍細胞注射の5日後に生じた)の近くに注射した。
【0099】
注射の前に、凍結乾燥した滅菌イリノテカンビーズを、3mlのアルギン酸塩溶液(AS−021)を添加することにより水和した。アルギン酸塩中で確実にビーズを均一に分布させるため、試料をvortex mixerで混合した。送達される総容量は、マウス1匹あたり100μl(アルギン酸塩溶液及びビーズ)であった。イリノテカンビーズは、3.2mgのイリノテカンを含有した。毒性を測るものとして、各マウスの体重を、毎週2回決定した。
【0100】
イリノテカン担持ビーズを注射したマウスは、対照群と比較したとき、全ての時点で腫瘍容量の低減効果を示した(図7)。腫瘍サイズは14日目まで減少し続け、それから腫瘍容量は(おそらく、全ての薬剤がビーズから溶出したために)増加し始めた。イリノテカン処置マウスの体重は、20gから25gに増加した。このことは毒性がない指標として使用することができる(図8)。体重の減少は21〜25日目に生じた(毒性の指標)。このことは、体重減少がイリノテカンによる処置の11日後には生じていないので、腫瘍増殖に起因するようである。イリノテカン処置マウスを、腫瘍がマウスの総体重の10%を超えたので25日の時点後に安楽死させた。
【0101】
実施例6:イリノテカン及びラパマイシ薬剤溶出ビーズのインビトロにおける細胞毒性
PSN1細胞を、適切な細胞培地により100,000細胞ml−1の濃度に希釈した。8チャンネルマルチウエルピペットを使用して、200μlの細胞溶液を、滅菌平底96ウエルプレート(Cellstar(登録商標)、655180)の各ウエルに加え、20,000個の細胞を200の培地に播種し、インキュベーター(37℃、5%CO)の中に20時間静置した。20時間後、細胞培地を除去し、新たな培地に代えた。
【0102】
新たな培地(200μl)をウエルに加えた。予め担持させたイリノテカン(30mg/ml)又はラパマイシン(20mg/ml)微小球を、5μlに設定したピペットを使用して、滅菌HO中の微小球のプールから注意深く数えてウエルに入れた。ラパマイシンビーズは、WO2007/090897の実施例2に詳述されたように調製した。分析した試料は、ウエル1つあたり1〜3個のイリノテカンビーズであった(図9を参照すること)。組み合わせ処理では、ウエルは、1個のラパマイシンと1個のイリノテカンのビーズを一緒に含有し、これをイリノテカン単独及びラパマイシンビーズ単独と比較した。微小球のピペット操作は、ウエル中の培地の量を確かに増加したので、対応する量を後で除去した。例えば、3個の微小球をピペットにより1つのウエルに移動した場合、終了時に15μlを除去した。微小球を添加すると、ウエルを必要に応じて24、48又は72時間インキュベートした。
【0103】
所定の時点で、培地(微小球を有する又は有さない)を除去し、細胞を200μlのPBSで3回洗浄して、あらゆる残留薬剤又は微小球を除去した。細胞培地(100μl)をウエルに加え、続いて20μlのMTS溶液(Promega, UK)を加えた。細胞を2時間インキュベート(37℃、5%CO)し、穏やかに撹拌した後でBiotekプレートリーダーを使用して490nmで吸光度を記録した。培地のみ及び未処置細胞の吸光度を対照とした。
【0104】
細胞生存率を以下の式を使用して計算した:

式1:細胞生存率の計算
【0105】
イリノテカン担持ビーズは、48及び72時間の溶出後にPSN1細胞の生存率を減少させた(図9)。ウエル1つあたりのビーズの数は、生存細胞の量に影響を与え、より多くのビーズは細胞死の増加に繋がった。24時間後に細胞毒性は見られず、代わりに、細胞数は(存在するビーズの数によって)5〜30%増加した。24時間後の細胞増殖は、ストレス誘導性細胞生存機構に起因する可能性がある。
【0106】
組み合わせて使用した場合、イリノテカン及びラパマイシンは、48又は72時間後でいずれかの薬剤単独と比較して、有意に(t−検定p<0.01)細胞生存率を減少させた。(図10)。
【0107】
実施例7:ヌードマウスのヒト悪性膵癌異種移植片へのドキソルビシン担持ビーズのインビボにおける直接注射
前処置:10個のPSN−1細胞(細胞株)を、皮下移植のためにインビトロでの継代から調製した。マウスを予定された処置に対して無作為化した。
麻酔:なし
臨床手順:腫瘍が触知可能(2〜3mm)になったとき、ドキソルビシンビーズ/アルギン酸塩混合物を皮下増殖腫瘍(これは腫瘍細胞注射の5日後に生じた)の近くに注射した。
【0108】
注射の前に、凍結乾燥した滅菌ドキソルビシンPVAヒドロゲルビーズ(Dox PVA)を、3mlのアルギン酸塩溶液(AS−021)の添加により水和した。微小球へのドキソルビシンの担持については、WO2004/071495の実施例2を、高AMPS担持についての実施例5と合わせて参照すること。アルギン酸塩中で確実にビーズを均一に分布させるため、試料をvortex mixerで混合した。送達される総容量は、マウス1匹あたり100μl(アルギン酸塩溶液及びビーズ)であった。ドキソルビシンビーズは、2.5mgのドキソルビシンを含有した。毒性を測るものとして、各マウスの体重を、毎週2回決定した。アルギン酸塩ビーズにもまた、ドキソルビシンを担持させ(Dox−Alg)、希釈して、PVAヒドロゲルの例と同じ容量のビーズを得た。ビーズは、WO08/128580の実施例8〜11に記載された手順に従って調製した。これらのビーズを、未担持アルギン酸塩ビーズと一緒にDOX担持アルギン酸塩ビーズのスラリーに注入した。未担持ビーズは、確実に希釈がアルギン酸塩溶液中のDOX担持DCビーズと同じになるように、混合物に加えた。
【0109】
両方の種類のドキソルビシン担持ビーズを注射したマウスは、対照群と比較したとき、全ての時点で腫瘍容量の低減効果を示した(図11)。腫瘍サイズは18日目まで減少し続け、その後、腫瘍容量は(おそらく、全ての薬剤がビーズから溶出したために)増加し始めた。ドキソルビシン処置マウスの体重は、20gから25gに増加した。このことは毒性がない指標として使用できる(図12)。体重の減少は21〜25日目に生じた(毒性の指標)。このことは、体重減少がドキソルビシンによる処置の11日後に起こっていないことから、腫瘍増殖のためであるようだ。ドキソルビシンビーズで処置したマウスは、25日後の時点で、腫瘍がマウスの総体重の10%を超えたのでに安楽死させた。
【0110】
実施例8:ヌードマウスのヒト悪性膵癌異種移植片へのイリノテカン又はトポテカン担持ビーズのインビボにおける直接(反復)注射
前処置:PSN−1腫瘍片(ヒト悪性膵癌)を皮下移植のためにインビボでの継代から調製した。マウスを予定された処置に対して無作為化した。
麻酔:なし
臨床手順:6日後、腫瘍は触知可能(2〜3mm)になり、DEB/アルギン酸塩混合物を、皮下増殖腫瘍の近くに注射した。注射の前に、全ての凍結乾燥した滅菌薬剤溶出ビーズ(DEB)を、3mlのアルギン酸塩溶液の添加により、投与日に水和した。
【0111】
注射量及び薬剤の担持量を表2に示す。反復注射は、平均腫瘍サイズが前の時点よりも20%以上大きくなった時に行った。反復注射は、B群では22及び36日、C群では19日、D群では19及び27日、E群では19、27及び36日に実施した。
【0112】
1週間に2回、各マウスの体重及び腫瘍サイズを決定し、記録した。
【0113】
【表2】

表2:マウス異種移植片実験における群の情報
【0114】
結果:PSN1腫瘍の増殖は、ヌードマウスにおいて、アルギン酸塩と共に皮下投与したトポテカン及びイリノテカンDEBにより阻害された(図13)。両方の場合における対照(−−)は、アルギン酸塩溶液中の未担持ビーズであった。反復注射は、3.3mgのイリノテカン(22及び36日)、6.6mgのイリノテカン(19日)、0.4mgのトポテカン(19及び27日)及び0.2mgのトポテカン(19、27及び36日)で行った。(n=3平均±最大/最小)。
【0115】
各濃度(0.4及び0.2mg)のトポテカンは、腫瘍容量の低減効果を示した。イリノテカン処置は、腫瘍サイズの低減について、試験したトポテカン処置と同等か又はより良好であった。
【0116】
対照マウスは、腫瘍が大きな腫瘍容量に達した時に、腫瘍誘発性悪液質に起因して、重篤な体重減少を示した。この毒性の測定に基づいて、全ての群は、有意な体重減少を示さなかった。このことは、処置に対して十分耐性があることを示している(図14)。
【0117】
イリノテカンと比較して、トポテカンが細胞毒性効果を誘発するために必要である用量は、はるかに低い。ここで試験した全ての試料では、イリノテカン用量が高い群は、腫瘍移植後の57日間の最大の生存能力を示した。この群の2匹のマウスは、有意な腫瘍縮小を示し、1匹は47日後に>99%の縮小を示し、57日後でも再増殖の兆候を示さなかった。群の中でのゆらぎは、注射部位の不統一のためなのかもしれない。高用量イリノテカン処置において、19日後に腫瘍サイズの増加を観察することができる。これは、薬剤耐性又は不十分な薬剤に起因する可能性がある。2回目の注射後の腫瘍サイズの低減は、増殖がビーズからイリノテカンが完全に溶出してしまったためであり、薬剤耐性のためではないことを示している(図13)。
【0118】
実施例9:ブタモデルにおけるアルギン酸塩中のイリノテカン担持ビーズの超音波内視鏡誘導注射
超音波内視鏡検査(EUS):EUSは、内視鏡により方向付けられる超音波を使用して、胸部及び腹部の内臓又は腫瘍の画像を得る医学的手法である。
手順:全てのブタにおいて、EUSスコープ(直径13mm)を、麻酔をかけたブタの食道に口腔を介して挿入し、近位胃まで通した。イリノテカンDEB/アルギン酸塩混合物を、膵臓への直接注射のために調製した。異なる用量のイリノテカンを注射するため、より量の多い複数量のイリノテカンビーズを、アルギン酸塩溶液に混合し、懸濁した。イリノテカン濃度は、50〜300mgの範囲であった(n=1〜2)。対照ブタには、2mlのアルギン酸塩溶液に懸濁した2mLの未担持DEBを注射した。膵臓に、EUSとカテーテル(食塩水で湿潤済)の誘導下で19ケージ針を刺入した。必要量のイリノテカンDEBを含有するアルギン酸塩溶液の4mLの容量を、膵臓に注射した。CTスキャンを、処置の後に実施した。全てのブタを処置後7日間モニターした。動物は、7日目の終わりに屍検を受けた。膵臓組織を、組織病理学検査及び肉眼病変により分析した。屍検では、注射部位の平均直径は、25.4±4.2(20〜30)mmであった。
【0119】
微小球の注射の後、EUSによって、膵臓内高エコー域病巣をはっきりと可視化した。CT走査において、注射部位は、膵臓の尾部の低密度領域として現れた(図15を参照すること)。
【0120】
ブタは、イリノテカンの300mgの用量まで、臨床、放射線又は肉眼病理学によって膵炎又は腹内感染の臨床兆候を示さなかった。
【0121】
組織病理学検査によって、異物巨細胞反応及びビーズ周辺の肉芽組織の存在が確認された。対照及び薬剤溶出ビーズ群の両方において、これらの領域を囲む軽度の炎症が存在した。炎症の程度は、ビーズがイリノテカンを含有する又は含有しないにかかわらず同様であった(図16)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水不溶性で水膨張性のポリマーを含んでおり、放出可能な形態で前記ポリマーと結合している微小球と、膵臓の腫瘍又は嚢胞の治療に使用される化学療法剤とを含み、
前記微小球が、37℃で水と平衡状態になったときに、ポリマーと水との総重量に基づいて少なくとも40重量%の水を含み、
前記ポリマーが、pH7でアニオン性に荷電され、そして、前記化学療法剤が、カチオン的に荷電されて、前記ポリマーと静電的に結合している、組成物。
【請求項2】
前記化学療法剤が、ミトキサントロン、又は、一般式IV:
【化1】

で示されるアミン基を有するアントラサイクリン化合物である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記アントラサイクリンがドキソルビシンである、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記化学療法剤が、一般式I:
【化2】

〔式中、
は、H、ハロゲン、ヒドロキシル、並びに、任意にヒドロキシル、アミン、アルコキシ、ハロゲン、アシル及びアシルオキシ基で置換されている低級(C1−6)アルキルから選択され;
Aは、C(O)O又はCHであり;そして
Rは、NRであり、式中、R及びRは、同一又は異なっていて、それぞれ、水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基、又は、置換若しくは非置換の炭素環式若しくは複素環式基を表すか、或いはR及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、−O−、−S−若しくは>NRが挿入されていてもよい、任意に置換されている複素環を形成し、ここで、Rは、水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基、又は、置換若しくは非置換フェニル基であり;
そして、式中、−A−R基は、前記カンプトテシン化合物のA環の任意の位置に位置する炭素原子と結合しており、かつ、Rは、A又はB環において置換されている〕
で示される化合物、または、その塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記化学療法剤がイリノテカン、トポテカン又はそれらの誘導体の1つである、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記化学療法剤が、一般式II:
【化3】

〔式中、
20及びR23は、それぞれヒドロキシ若しくは水素であるか、又は一緒になってCHOCHであり;
21及びR22のうちの一方はHであり、他方はCHNR2425であって、ここで、R23及びR24は、同一又は異なっていて、それぞれ水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基、又は、置換若しくは非置換の炭素環式若しくは複素環式基を表すか、或いはR23及びR24は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、−O−、−S−若しくは>NRが挿入されていてもよい、任意に置換されている複素環を形成し、ここで、Rは、水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基、又は、置換若しくは非置換フェニル基である〕を有し、または、その塩若しくは第四級誘導体である、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記化学療法剤が、0.1g/l未満の水溶性を有するラパマイシン類似体、そのエステル及び塩、並びに0.1g/l未満の水溶性を有するパクリタキセル類似体、そのエステル及び塩から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも2つの異なる化学療法剤を含む、請求項1〜7のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリマーが、アルギン酸塩、ポリビニルアルコール又は架橋ポリビニルアルコールである、請求項1〜8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリマーが、エチレン性基のラジカル重合によって、1分子あたり1より多いエチレン性不飽和ペンダント基を有するポリビニルアルコール(PVA)マクロモノマーから形成される、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
前記マクロマーが、例えば、非イオン性モノマー、及び/又は、アニオン性モノマーを含むイオン性モノマーを含む、エチレン性不飽和モノマーと共重合される、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
前記エチレン性不飽和モノマーが、一般式III:
BQ III
〔式中、Yは、
【化4】

CH=C(R10)−CH−O−、CH=C(R10)−CHOC(O)−、CH=C(R10)OC(O)−、CH=C(R10)−O−、CH=C(R10)CHOC(O)N(R11)−、R12OOCCR10=CR10C(O)−O−、R10CH=CHC(O)O−、R10CH=C(COOR12)CH−C(O)−O−、
【化5】

から選択され、ここで、
10は、水素又はC〜Cアルキル基であり;
11は、水素又はC〜Cアルキル基であり;
12は、水素又はC1−4アルキル基、又はBQであり、ここでB及びQは、下記に定義されているとおりであり;
は、−O−又は−NR11−であり;
は、これらの基(−(CHOC(O)−、−(CHC(O)O−、−(CHOC(O)O−、−(CHNR13−、−(CHNR13C(O)−、−(CHC(O)NR13−、−(CHNR13C(O)O−、−(CHOC(O)NR13−、−(CHNR13C(O)NR13−(式中、基R13は同一又は異なっている)、−(CHO−、若しくは、−(CHSO−)、又は、任意にBと組み合わされて、原子価結合であり、ここで、rは、1〜12であり、R13は、水素又はC〜Cアルキル基であり;
Bは、任意に、パーフルオロ化鎖までを含む1個以上のフッ素原子を含有する、直鎖若しくは分岐鎖のアルカンジイル、オキサアルキレン、アルカンジイルオキサアルカンジイル若しくはアルカンジイルオリゴ(オキサアルカンジイル)鎖であるか、又は、Q若しくはYが、Bに結合している末端炭素原子を含有する場合、原子価結合であり;そして
は、アニオン性基である〕
を有するイオン性モノマーを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
粘度調整剤、好ましくはアルギン酸塩を含む、請求項1〜12のいずれか1項記載の組成物。
【請求項14】
医薬組成物であり、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を更に含む、請求項1〜13のいずれか1項記載の組成物。
【請求項15】
膵臓の腫瘍又は嚢胞の治療方法であって、請求項1〜14のいずれか1項記載の微小球を含む組成物をヒト又は動物の身体に投与する工程を含み、前記治療において、前記化学療法剤が前記微小球から放出される方法。
【請求項16】
前記治療において、前記組成物が、好ましくは超音波内視鏡(EUS)の誘導下で、前記膵臓の腫瘍若しくは嚢胞の中に又はその周囲に注射される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
一般式I:
【化5】

〔式中、
は、H、ハロゲン、ヒドロキシル、並びに、任意にヒドロキシル、アミン、アルコキシ、ハロゲン、アシル及びアシルオキシ基で置換されている低級(C1−6)アルキルから選択され;
Aは、C(O)O又はCHであり;そして
Rは、NRであり、式中、R及びRは、同一又は異なっていて、それぞれ、水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基、又は、置換若しくは非置換の炭素環式若しくは複素環式基を表すか、或いはR及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、−O−、−S−若しくは>NRが挿入されていてもよい、任意に置換されている複素環を形成し、ここで、Rは、水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基又は置換若しくは非置換フェニル基であり;
そして、式中、−A−R基は、前記カンプトテシン化合物のA環の任意の位置に位置する炭素原子と結合しており、かつ、Rは、A又はB環において置換されている〕
で示される化学療法剤、または、その塩を含む、
膵臓の腫瘍又は嚢胞の治療に使用される組成物であって、
作用物質が、好ましくは超音波内視鏡(EUS)の誘導下で、前記膵臓の腫瘍若しくは嚢胞の中に又はその周囲に注射される、組成物。
【請求項18】
前記化学療法剤を含むアニオン性ポリマーマトリックスを含有する、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
前記ポリマーマトリックスが、請求項1及び10〜13のいずれか1項に定義された特徴のいずれかを有する、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
粘度調整剤を更に含む、請求項17〜19のいずれか1項記載の組成物。
【請求項21】
医薬組成物であり、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を更に含む、請求項17〜20のいずれか1項記載の組成物。
【請求項22】
膵臓の腫瘍又は嚢胞の治療方法であって、請求項17〜21のいずれか1項記載の組成物を、好ましくは超音波内視鏡(EUS)の誘導下で、前記腫瘍若しくは嚢胞の中に又はその周囲に注射する工程を含む方法。
【請求項23】
一般式I:
【化6】

〔式中、
は、H、ハロゲン、ヒドロキシル、並びに、任意にヒドロキシル、アミン、アルコキシ、ハロゲン、アシル及びアシルオキシ基で置換されている低級(C1−6)アルキルから選択され;
Aは、C(O)O又はCHであり;そして
Rは、NRであり、式中、R及びRは、同一又は異なっていて、それぞれ水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基又は置換若しくは非置換の炭素環式若しくは複素環式基を表すか、或いはR及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、−O−、−S−若しくは>NRが挿入されていてもよい、任意に置換されている複素環を形成し、ここで、Rは、水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基又は置換若しくは非置換フェニル基であり;
そして、式中、−A−R基は、カンプトテシン化合物のA環の任意の位置に位置する炭素原子と結合しており、かつ、Rは、A又はB環において置換されている〕
で示される化学療法剤、または、その塩を含む、
ポリマーマトリックスを含む組成物であって、
膵臓の腫瘍又は嚢胞の治療に使用される組成物。
【請求項24】
膵臓の腫瘍又は嚢胞の治療方法であって、請求項23項記載の組成物を、好ましくは超音波内視鏡の誘導下で、前記腫瘍若しくは嚢胞の中に又はその周囲に注射する工程を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2012−510489(P2012−510489A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538957(P2011−538957)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065857
【国際公開番号】WO2010/063630
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(303039785)バイオコンパティブルズ ユーケー リミテッド (23)
【Fターム(参考)】