説明

膵リパーゼ阻害剤並びにそれを含有する飲食品組成物及び医薬品組成物

【課題】 日常生活のなかで高脂肪食により誘発された肥満、高脂血症や糖尿病などの生活習慣病の改善予防効果及び治療効果に優れた、安全で安定な、安価な、飲食品組成物及び医薬品組成物に配合して好適な膵リパーゼ阻害剤を提供すること。
【解決手段】 カカオポッド外皮の溶媒抽出物を含有する膵リパーゼ阻害剤であり、好ましくは、抽出溶媒が水または水溶性有機溶媒、あるいはこれらの混合溶媒である。また上記膵リパーゼ阻害剤を含有する飲食品組成物及び医薬品組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は膵リパーゼ阻害剤に関し、詳しくは、高脂肪食により誘発される肥満、高脂血症や糖尿病などの生活習慣病の改善予防効果に優れた飲食品組成物、及びそれら疾患の治療効果に優れた医薬品組成物に配合して好適な膵リパーゼ阻害剤に関する。また、その膵リパーゼ阻害剤を含有する飲食品組成物及び医薬品組成物に関する発明も包含する。
【背景技術】
【0002】
近年、食事の欧米化に伴い、肥満、高脂血症や糖尿病などの生活習慣病の発症が著しく増加しており、その対応が急務である。食事による肥満、高脂血症や糖尿病の予防改善には、リパーゼ阻害剤の開発及び応用が盛んに行われている。
【0003】
これに対し、植物の種子、葉や根茎などから抽出した様々なリパーゼ阻害剤などが製造され、化粧品、医薬品や食品などへの配合が試みられているが、植物を原料とする場合、その原料の安全性や調達が問題であるという難点があった。
【0004】
植物原料を由来とするリパーゼ阻害剤としては、ユッカ、高麗人参、ジャスミン茶、山査子、黄杞茶、ルイボス茶、大豆胚芽、生姜、及び杜仲茶などの抽出エキスを有効成分とするリパーゼ阻害剤(特許文献1参照)や、キラヤ(Quillaja saponaria MOLINA)樹皮の抽出物を有効成分とする膵リパーゼ阻害剤(特許文献2参照)や、栗皮抽出物を含有するリパーゼ阻害剤(特許文献3参照)などがある。
【0005】
一方、植物由来の原料としてカカオ豆(Cacao beans または Cacao sheeds)がある。カカオ豆は、カカオ樹の果実であるカカオ果(Cacao Podsまたは Cacao fruits)の中にパルプ(果肉)に包まれて存在する種子である。カカオ豆は、外皮(shell)、内皮(thin skin または husk)、胚乳(Cotyledon)及び胚芽(Germ または germ rootlet)からできている。胚乳部の胚芽を除いたものはニブ(nib)と呼ばれ、チョコレート、ココアなどに用いられる。カカオ豆の外皮及び内皮をあわせて、カカオ豆の殻またはカカオハスクと呼ぶこともある。また内皮を含めてカカオ豆の外皮と呼ぶこともある。
【0006】
カカオ豆を由来とする各種作用を有する剤としては、例えば、カカオ豆の胚乳、外皮、ココアパウダー等から抽出したフェノール性高分子化合物のリグニンを主成分とする血中コレステロール上昇抑制剤(特許文献1参照)やコレステロール胆石形成抑制剤(特許文献2参照)がある。また、カカオ豆及び/またはカカオ豆の外皮を、水及び/または水と相溶性がある有機溶剤で抽出したものが免疫賦活作用を有すること(特許文献3参照)や、アルカリ性水溶液で抽出したものが癌転移抑制作用を有すること(特許文献4参照)が明らかにされている。その他にも、テオブロマ・カカオの種子の殻の水抽出物が細胞賦活作用、紫外線障害緩和作用及びメラニン産生抑制作用を有すること(特許文献5参照)が見い出されている。また、カカオ豆由来の抗酸化作用を応用した胃潰瘍予防飲食品(特許文献6参照)、糖尿病合併症の予防飲食品(特許文献7参照)などがある。
【0007】
しかしながら、いずれの技術においても、カカオ樹の種子であるカカオ豆そのものを由来とするものであり、カカオ樹の果実であるカカオポッド(カカオ果)を用いることは示唆されていない。
【0008】
【特許文献1】特開2002−275077号公報
【特許文献2】特開2006−182722号公報
【特許文献3】特開2007−145802号公報
【特許文献4】特開平3−181494号公報
【特許文献5】特開平3−181496号公報
【特許文献6】特開2000−86526号公報
【特許文献7】特開2002−128685号公報
【特許文献8】特開2006−342120号公報
【特許文献9】特開平7−274894号公報
【特許文献10】特開平9−234018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、日常生活のなかで高脂肪食により誘発された肥満、高脂血症や糖尿病などの生活習慣病の改善予防効果及び治療効果に優れた、安全で安定な、安価な、飲食品組成物及び医薬品組成物に配合して好適な膵リパーゼ阻害剤を提供することにある。また、その膵リパーゼ阻害剤を含有する飲食品組成物及び医薬品組成物を提供することも副次的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記事情に鑑み鋭意研究を行った結果、通常廃棄されているカカオポッド外皮から得られる抽出物に、抗高脂血症作用を有する有効成分が含有されており、この抽出物を飲食品組成物や医薬品組成物に配合したところ、日常生活の中で引き起こされた生活習慣病の改善に関して、顕著な作用を及ぼすことを見出した。またカカオポッド外皮の抽出物は天然由来物質であって安全性に問題はなく、安定性においても優れていた。
【0011】
すなわち、本発明の膵リパーゼ阻害剤はカカオポッド外皮の溶媒抽出物を含有することを特徴とするものである。そして、上記抽出溶媒としては水または水溶性有機溶媒、あるいはこれらの混合溶媒が好適である。さらに、本発明は上記膵リパーゼ阻害剤を含有する飲食品組成物及び医薬品組成物でもある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、日常生活のなかで高脂肪食により誘発された肥満、高脂血症や糖尿病などの生活習慣病の改善予防効果及び治療効果に優れた、安全で安定な、安価な膵リパーゼ阻害剤が提供できる。そして、この膵リパーゼ阻害剤は飲食品組成物及び医薬品組成物に配合して好適であり、この飲食品組成物は日常生活のなかで高脂肪食により誘発された肥満、高脂血症や糖尿病などの生活習慣病の改善予防効果に優れ、この医薬品組成物は日常生活のなかで高脂肪食により誘発された肥満、高脂血症や糖尿病などの生活習慣病の治療効果に優れる。
【0013】
さらに、本発明の膵リパーゼ阻害剤に使用するカカオポッド外皮は、生産地で収穫時に大量に廃棄されるカカオ果(Cacao PodsまたはCacao fruits)の外皮であり、原料として入手するための新たな設備も必要なく、容易に入手できる。また、カカオ豆(Cacao beans または Cacao sheeds)自体を由来とする従来の各種剤や、それを含有する飲食品組成物及び医薬品組成物に比べ、大量にかつ低コストで入手できるだけでなく、廃棄物を活用するため環境にも配慮したものとなる。そして、食用のカカオ豆を得るためにカカオ樹は安全性に留意されて栽培されており、その外皮も安全性に問題はなく使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の膵リパーゼ阻害剤に使用するカカオポッド外皮とは、カカオ樹の果実であるカカオ果(Cacao Podsまたは Cacao fruits)の外皮である。以下、本発明の説明において単
に「外皮」と記載した場合は、カカオポッド(カカオ果)の外皮のことである。一方、カカオ豆(Cacao beans)の外皮(shell)については「外皮(shell)」と記載する。
【0016】
カカオ樹はアオギリ科テオブロマ属の常緑樹であり、学名をテオブロマ・カカオ(Stercurliaceae Theobroma Cacao (Linnaeus))という。カカオ樹の主な産地は西アフリカ(コートジボアール、ガーナ等)、東南アジア(インドネシア等)、中南米(ドミニカ共和国、ベネズエラ、エクアドル等)である。カカオ樹は大別して原種に近いクリオロ種(Criollo)と改良種のフォラステロ種(Forastero)の2種であるが、交雑種であるトリニタリオ種(Trinitario)を合わせた3種が現在の主流である。本発明の膵リパーゼ阻害剤には上記3種以外の派生種を含めたいずれの品種のカカオポッドも使用できる。
【0017】
図1にカカオポッド(カカオ果)の構造を示す。カカオポッド1はカカオポッド外皮2に覆われている。外皮2の内部には果肉である白色のパルプ3が30〜40個ほどに分かれて存在している。カカオ豆4はパルプ3のそれぞれに包まれている。カカオ豆4は硬くもろい外皮(shell)5に周囲を覆われている。外皮(shell)5のさらに内側には、非常に薄い白色の内皮6が存在している。内皮6はカカオ豆4の内部を幾つかの部分に区分けするようにして胚乳7及び胚芽8を覆っている。
【0018】
カカオポッドは収穫期になると、カカオ樹から切り落とされる。切り落とされたカカオポッドは切り開かれ、パルプごとカカオ豆が取り出される。この段階でカカオポッド外皮は不要となり廃棄物となる。本発明の膵リパーゼ阻害剤においては、通常廃棄物となるこの外皮を使用する。
【0019】
なお、パルプごと取り出されたカカオ豆は発酵、水洗(行わない場合もある)、乾燥の各処理が施された後ジュート袋に入れられる。検査に合格したカカオ豆は産地から出荷され、消費地で焙炒、冷却、破砕、風簸の各処理が施されてカカオニブが得られる。異なる産地のカカオ豆から得られた複数のカカオニブは混合、挽潰、仕上げの各処理が施されてカカオマスが得られる。カカオマスからチョコレート、ココアなどが加工される。カカオ豆を由来とする各種作用を有する上記従来の剤や飲食品は、破砕、風簸工程で取り除かれた外皮(shell)、内皮、胚芽など(カカオ豆の殻またはカカオハスクともいう)を使用したものである。
【0020】
本発明におけるカカオポッド外皮の溶媒抽出物は、上記カカオポッド外皮を溶媒で抽出したものである。カカオポッド外皮の溶媒抽出物を得るための抽出方法としては特に限定されない。溶媒で抽出するに際しては、カカオポッド外皮を乾燥させてから用いても、乾燥させることなく用いてもよい。さらに乾燥に関係なく、カカオポッド外皮をそのまま用いても、切断または粉砕などにより細かくしてから用いてもよい。抽出効率の面から、カカオポッド外皮を乾燥後、粉末化したものを用いて溶媒抽出するのが好適である。
【0021】
使用する溶媒は、水または水溶性有機溶媒、あるいはこれらの混合溶媒が好ましい。水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、1,3−ブチレングリコール等の低級アルコール、ベンゼン、エチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトンなどが挙げられる。これらのなかではエタノールが好ましく、特に水との混合溶媒である含水エタノールが特に好ましい。一方、メタノール、アセトンなどを使用して抽出した場合、膵リパーゼ阻害作用の効果が少なくなる。
【0022】
溶媒抽出時に用いる装置は特に限定されず、通常のタンクやミキサーを用いてもよく、またソックスレー抽出器などの抽出器を用いてもよい。抽出時の温度や抽出時間も特に限定されない。溶媒抽出後に、濾過、吸着樹脂による処理、活性炭処理等によって不純物を除去してもよい。
【0023】
本発明の膵リパーゼ阻害剤の剤型としては、溶媒抽出によって得られた液状抽出物の他に、液状抽出物を減圧乾燥や凍結乾燥等の通常の乾燥方法や濃縮方法等により乾固または濃縮したものであってもよい。また、必要に応じてその効力に影響がない範囲で脱臭、脱色等の精製処理をしてから用いても良く、また適宜賦形剤を用いて顆粒状にする等、使用し易い状態に製剤化されたものを用いればよい。
【0024】
本発明におけるカカオポッド外皮の溶媒抽出物の製造方法の一例を説明する。カカオポッドを切り開き、中身のカカオ豆をパルプごと取り出す。中身を取り除いた後の新鮮なカカオポッド外皮を細かく切断する。切断した外皮をミキサーに投入し、水または含水有機溶媒(好ましくは含水エタノール)を加えて所定時間攪拌する。その後メッシュにて濾過する。得られたろ液は液状のカカオポッド外皮の溶媒抽出物であり、そのまま本発明の膵リパーゼ阻害剤として使用できる。さらに、ろ液を減圧凍結乾燥し、得られた乾燥物もカカオポッド外皮の溶媒抽出物であるので、この状態で本発明の膵リパーゼ阻害剤として使用してもよい。
【0025】
本発明の膵リパーゼ阻害剤には、上記カカオポッド外皮の溶媒抽出物以外に、目的に応じて飲食品組成物または医薬品組成物に通常使用されている成分または使用が許容されている成分を、本発明の効果を損なわない範囲内で適宜配合することができる。
【0026】
本発明の膵リパーゼ阻害剤を含有する飲食品組成物または医薬品組成物におけるカカオポッド外皮の溶媒抽出物の配合量は、飲食品組成物または医薬品組成物の総量を基準として、乾燥固形分換算で0.005wt%(質量%の略称)以上、10wt%以下が効果の発現性や原価の点から考えて好ましい。特に0.005wt%以上、5wt%以下が製品の配合応用する際に好ましい。
【0027】
本発明の飲食品組成物の形態としては特に限定されず、例えば、ジェル、粉末、液体、顆粒、クリーム状、ペースト状、固形等を挙げることができる。また、本発明の飲食品組成物の種類としても特に限定されず、例えば、菓子類(チューインガム、キャンディ、グミ、タブレット、チョコレート、ゼリー等)、氷菓(アイスキャンディー、アイスクリーム、シャーベット等)、冷菓(ゼリー、プリン、水ようかん等)、麺類をはじめとする澱粉系食品、粉末飲食品、飲料(スープ、コーヒー、茶類、ジュース、炭酸飲料、ココア、アルコール飲料、ゼリー状ドリンク等)、ベーカリー食品(クッキー、ビスケット、パン、パイ、ケーキ等)、油脂食品(マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド等)、乳製品(牛乳、ヨーグルト、乳清飲料、乳酸菌飲料、バター、クリーム、チーズ等)等を挙げることができる。
【0028】
本発明の上記飲食品組成物はそれぞれ常法により製造することができ、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で下記の成分を適宜選択してカカオポッド外皮の溶媒抽出物を含有する膵リパーゼ阻害剤とともに配合できる。例えば、糖質甘味料(果糖、ブドウ糖、タガトース、アラビノース等の単糖類、乳糖、オリゴ糖、麦芽糖、トレハロース等の少糖類、粉末水あめ、デキストリン、糖アルコール等)、高甘味度甘味料(スクラロース、アセスルファムK、ステビア等)、でん粉等の多糖類、油脂類、乳製品、安定剤、乳化剤、香料(バニリン、リナロール、天然香料等)、色素、着色料、酸味料、風味原料(卵、コーヒー、茶類、ココア、果汁果肉、ヨーグルト、酒類等)、香味料(ラズベリーフレーバー、アップルフレーバー、コーヒーフレーバー等)、湿化防止剤、電解質、抗酸化剤、保存料、湿潤剤、蛋白質、アミノ酸、ペプチド、食物繊維、有機酸(クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸等)、ビタミン類(L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェロール、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビオチン、イノシトール等)、ミネラル(亜鉛
、鉄、カルシウム、マグネシウム、クロム、セレン、カリウム、ナトリウム等)、グルコサミン、酵母、卵殻膜、リコピン、アスタキサンチン、その他カロテノイド、シルク、コンドロイチン、セラミド、プラセンタエキス、フカヒレエキス、深海鮫エキス、スクワレン、γ−アミノ酪酸、カゼインドデカペプチド、生栗皮抽出物、栗の葉抽出物、栗のいが抽出物、栗果肉抽出物、栗樹皮抽出物、キャベツ発酵エキス、バラの花びら抽出物、ブドウ葉抽出物、ブドウ種子抽出物、りんごポリフェノール、カミツレエキス、ライチ種子エキス、ゴツコラエキス、月桃葉エキス、ハス胚芽エキス、スターフルーツ葉エキス、桑葉抽出物、グァバ茶抽出物、赤ワイン、緑茶、紅茶、ウーロン茶、コーヒー、ココア、チョコレート、黒ゴマ、豆類、豆乳、ナッツ類、きのこ類、緑黄食野菜類、ヨード卵等の卵由来原料、カテキン類、その他ポリフェノール類、ラズベリーケトン、低分子アルギン酸、サイリウム種皮、イチョウ葉抽出物、松樹皮抽出物、ナットウキナーゼ、植物ステロール、ジアシルグリセロール、キトサン、ヒアルロン酸、メチルスルフォニルメタン、コウジ酸、エラグ酸、アルブチン、ルシノール、マグノリグナン、リン酸L−アスコルビン酸マグネシウム、CoQ10、α−リポ酸等が挙げられる。
【0029】
本発明の医薬品組成物の剤型としては特に限定されず、経口投与製剤でも非経口投与製剤のいずれであっても構わない。具体的には、エアゾール剤、液剤、エキス剤、エリキシル剤、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル、マイクロカプセル)、顆粒剤、丸剤、眼軟膏剤、経皮吸収型製剤、懸濁剤、乳剤、坐剤(含膣剤)、散剤、酒精剤、錠剤(素錠、コーティング錠、特殊錠)、シロップ剤、浸剤・煎剤、注射剤(水溶性注射剤、非水溶性注射剤)、貼付剤、チンキ剤、点眼剤、トローチ剤、軟膏剤、パップ剤、芳香水剤、リニメント剤、リモナーデ剤、流エキス剤、ローション剤などが挙げられる。これらの製剤は、製剤技術分野における慣用方法にて製造でき、例えば日本薬局方記載の方法で製造することができる。これらの製剤は、ヒトを含む哺乳動物に対して安全に投与することができるものである。
【0030】
本発明のカカオポッド外皮の溶媒抽出物を含有する膵リパーゼ阻害剤は、生物に対する毒性が低い化合物であることから、そのまま、または薬理学的に許容される無毒性かつ不活性の担体等を併用して、ヒトを含む哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サルなど)、魚類等に対して、医薬品組成物(動物薬含む)として適用することができる。
【0031】
上記薬理学的に許容される担体としては特に限定されず、製剤素材として公知である各種担体物質を使用することができる。上記担体物質としては特に限定されず、例えば、固形製剤においては、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等を挙げることができる。上記担体物質に加えて、更に、防腐剤、着色剤、天然色素、甘味剤等の製剤添加物も必要に応じて用いることができる。これらの物質として、乳糖、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、カルメロースカルシウム、無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク等が具体的に例示できるが、これらに限られるものではない。
【0032】
液状製剤における上記担体物質としては特に限定されず、例えば、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤等として配合されるもの等を挙げることができる。更に、防腐剤、着色剤、水不溶性レーキ色素、甘味剤等の製剤添加物も必要に応じて用いることができる。これらの物質として、マンニトール、塩化ナトリウム、グルコース、ソルビトール、グリセロール、キシリトール、フルクトース、マルトース、マンノース等の等張化剤、亜硫酸ナトリウム等の安定化剤、ベンジルアルコール、パラヒドロキシ安息香酸メチル等の保存剤等の他、溶解補助剤、無痛化剤やpH調整剤等が具体的に例示できるが、これらに限られるものではない。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例を例示することにより、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0034】
実施例に用いたカカオポッド外皮の溶媒抽出物には、ドミニカ共和国産のカカオ果を使用した。このカカオポッド外皮はカカオ果の果肉(パルプ質)を取り除いた後の新鮮なものである。この外皮を乾燥し細かく切断した後、ミキサー(ファイバーミキサーMX−X107)に20g投入し、水500mlを加えて25℃で約10分間攪拌した。その後、寸法500mmの分析用ろ紙にて濾過し、得られたろ液を真空凍結乾燥機器(EYELA FDU−1200)にて減圧凍結乾燥した。得られた乾燥物が以下の実施例に用いたカカオポッド外皮の溶媒抽出物である。なお、以下の各実施例において単に「カカオポッド外皮抽出物」と記したものは、特に断りのない限りこの乾燥物のことである。
【0035】
実施例1〜3、比較例1
<膵リパーゼ阻害作用の測定>
膵リパーゼ活性はトリオレインからのオレイン酸遊離量を測定することによって算出した。トリオレイン(SIGMA Chemical Co.(米国製))80mg、レシチン 10mg(和光純薬工業株式会社製)、胆汁酸(SIGMA Chemical Co.(米国製))5mgを9mlの0.1mol(M)TES緩衝液(pH 7.0)中で10分間超音波処理を行うことで均一な懸濁液とし、これを基質液として用いた。基質液0.1mlに豚由来の膵リパーゼ液(SIGMA Chemical Co.(米国製))0.05ml(最終濃度1μg/ml)及び被検物質0.1mlを加え、37℃、30分間反応させ、遊離した脂肪酸を銅試薬法で定量測定した。活性値は検体無添加の値を100%として各検体の活性値を算出した。実施例1はカカオポッド外皮抽出物を4mg/mlとなるように精製水に溶解したものを用いた。実施例2及び3については、これをさらに分画して、分子量1000以上のものを実施例2、分子量1000未満のものを実施例3とした。比較例1は精製水のみとした。測定結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1に示した結果から明らかなように、カカオポッド外皮抽出物には膵リパーゼ活性を阻害する効果があり、特に分画分子量1000以上のものについては特に優れた阻害効果がある。
【0038】
<脂質負荷後ラット血中脂質の変動の測定>
a.大豆オイルのエマルジョンの調製
大豆オイル(純正化学株式会社製)3mlをコール酸(SIGMA Chemical Co.(米国製))40mg、コレステロールオリエート(東京化成工業株式会社製)1g及び純水3mlと共に10分間超音波処理し、この超音波処理した溶液を大豆オイルのエマルジョンとした。
b.カカオポッド外皮抽出物投与の試験方法
ラットを1群4匹としてコントロール群とカカオポッド外皮抽出物170mg/kg体重
の投与群の2群に分け、一晩絶食し脂質エマルジョン負荷試験を行った。コントロール群では大豆オイルのエマルジョンのみを非麻酔下でラットに経口投与した。カカオポッド外皮抽出物170mg/kg体重の投与群ではカカオポッド外皮抽出物を含有する大豆オイルのエマルジョンを投与した。大豆オイルのエマルジョン投与前、投与後60、120、180分まで非麻酔下でラットの尾静脈より採血した。血清中の中性脂肪含量の測定は和光純薬工業株式会社製のトリグリセライド−E−テストキットを用いて測定した。結果は図2に示した。
【0039】
この結果から、カカオポッド外皮抽出物は優れた膵リパーゼ阻害効果を有し、脂質の腸管吸収を遅らせることができることが明らかになった。これによってカカオポッド外皮抽出物を含有する組成物が、脂肪の蓄積を抑制し、各種疾患の予防、改善、治療効果を有するものであることが明らかになった。
【0040】
以下に、本発明の膵リパーゼ阻害剤を含有する飲食品組成物の処方例を示す。
【0041】
処方例1 チューインガム
下記組成のチューインガムを常法により調製した。
(成分) (質量部)
(1) ガムベース 20.0
(2) マルチトール 73.5
(3) 還元水あめ 4.0
(4) アップル香料 0.5
(5) カカオポッド外皮抽出物 2.0
【0042】
体重の増加に悩むモニターが、1粒1500mgとした上記チューインガムを1回1粒、1日3回、3ヶ月摂取したところ、それまでに比べ体重の増加が抑制された。
【0043】
処方例2 錠菓
下記組成の錠菓を常法により調製した。
(成分) (質量部)
(1) ソルビトール 72.9
(2) ショ糖脂肪酸エステル 4.0
(3) ラズベリー香料 0.1
(4) カカオポッド外皮抽出物 13.0
【0044】
体重の増加に悩むモニターが、1錠2000mgとした上記錠菓を1回1錠、1日3回、3ヶ月間摂取したところ、それまでに比べ体重の増加が抑制された。
【0045】
以下に、本発明の膵リパーゼ阻害剤を含有する医薬品組成物の処方例を示す。
【0046】
処方例4 錠剤(医薬品組成物)
(成分) (質量部)
(1) カカオポッド外皮抽出物 10.0
(2) ビタミンC 20.0
(3) ビタミンB1 0.5
(4) ビタミンB2 0.5
(5) 乳糖 40.0
(6) デキストリン 23.0
(7) 合成ケイ酸アルミニウム 5.0
(8) ステアリン酸マグネシウム 1.0
【0047】
(操作)
上記の各成分を混合し、その混合物を打錠機で1錠500mgに打錠して1錠中にカカオポッド抽出物50mgを含む錠剤を得た。
【0048】
高脂血症の患者が、上記錠剤を1回1錠、1日3回3ヶ月服用したところ、血中脂肪量が減少した。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の膵リパーゼ阻害剤は、脂肪分解抑制剤として作用することによって、体内での脂肪の消化吸収を抑制し、体内での脂肪の蓄積を予防・治療・改善することができるものである。これによって、本発明の膵リパーゼ阻害剤を配合した飲食品組成物及び医薬品組成物は、肥満、高脂血症、脂肪肝の予防・治療・改善に使用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】カカオポッド(カカオ果)の構造を示す参考模式図である。
【図2】脂質負荷後血中中性脂肪の上昇に及ぼす影響を示す測定結果である。
【符号の説明】
【0051】
1 カカオポッド(カカオ果)
2 カカオポッド外皮
3 果肉(パルプ質)
4 カカオ豆
5 カカオ豆の外皮(shell)
6 カカオ豆の内皮(thin skin)
7 カカオ豆の胚乳(Cotyledon)
8 カカオ豆の胚芽(Germ)
11 脂質(大豆オイル)エマルジョンのみを単独(コントロール群)
12 脂質エマルジョン及びカカオポッド外皮抽出物170mg/kgの投与群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カカオポッド外皮の溶媒抽出物を含有することを特徴とする膵リパーゼ阻害剤。
【請求項2】
抽出溶媒が水または水溶性有機溶媒、あるいはこれらの混合溶媒である請求項1に記載の膵リパーゼ阻害剤。
【請求項3】
カカオポッド外皮の溶媒抽出物の分画分子量が1000以上である請求項1または2のいずれかに記載のリパーゼ阻害剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の膵リパーゼ阻害剤を含有する飲食品組成物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の膵リパーゼ阻害剤を含有する医薬品組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−263276(P2009−263276A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114927(P2008−114927)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(306018365)クラシエホームプロダクツ株式会社 (188)
【Fターム(参考)】