説明

膵管腺癌の検出および治療のためのプレクチン−1標的化剤

膵管腺癌(PDAC)細胞バイオマーカーのような癌細胞バイオマーカーならびに癌(例えば、PDAC)の診断および治療用の結合分子のための、組成物および方法が本明細書に記載される。PDACバイオマーカーであるプレクチン−1のような癌バイオマーカー同定のための、「利用可能な」プロテオーム同定法が開示される。さらに、PDAC同定のためのペプチドリガンドとコンジュゲートされた磁性蛍光ナノ粒子を含むイメージング組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本願は、2008年4月14日に出願された米国仮特許出願第61/044,818号の利益を主張するものであり、その内容全体を本明細書に参照により援用する。
【0002】
政府支援
本発明は、助成番号P50−CA86355、PO1−CA117969−01、K01CA104647−03、EB004626、ROI−HL078641、ROI−HL36436、HL080731およびP01−AI054904の下、米国国立衛生研究所(NIH)からの政府支援により成されたものである。米国政府は、本発明に一定の権利を有し得る。
【0003】
本発明は、診断および治療のための、膵管腺癌(PDAC)細胞バイオマーカーのような癌細胞バイオマーカーおよび結合分子を提供するための組成物および方法に関する。具体的には、PDAC同定用のプレクチン−1のようなバイオマーカーを提供するための「利用可能な」プロテオーム同定法が開示される。さらに、ペプチドリガンドとコンジュゲートされた磁性蛍光ナノ粒子を含む、PDAC同定用のイメージング組成物が提供される。最後に、PDACの治療法も論じられる。
【背景技術】
【0004】
膵管腺癌(PDAC)は、米国における癌死亡の主な原因の第4位であり、急速な臨床経過を示して死に至る。一度診断されれば、PDACの平均生存期間は6ヶ月であり、5年生存率はわずか3%である(Liら,Lancet 363:1049−1057(2004))。
【0005】
化学療法および放射線療法はあまり効果的ではなく、手術は患者のわずか20%においてのみ可能であるため、外科的切除を可能にする早期検出が長期生存の望みが最も高い(Yeoら,Ann.Surg.222:580−588(1995);discussion 588−592)。実際、高リスク患者群(例えば、遺伝性癌症候群、慢性膵炎および新規発症糖尿病)におけるPDACまたは高悪性度の前駆の検出が、癌診断ポートフォリオにおいて満たされていない大きな必要性として存在する(Brentnallら,Ann.Intern.Med.131:247−255(1999);Cantoら,Clin.Gastroenterol.Hepatol.2:606−621(2004))。
【0006】
現在のところ、血清CA−19−9が臨床的に使用されているバイオマーカーである。しかし、血清CA−19−9は、早期段階のPDACを検出するために必要な感度が不足している(Goggins,J.Clin.Oncol.23:4524−4531(2005))。さらに、腹部横断画像は、高リスク患者において早期段階のPDACを検出するためには信頼性に欠けることが判明している(Pelaez−Lunaら,Am.J.Gastroenterol 102:2157−2163(2007))。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、当該医学分野における最優先事項は、前腫瘍性/初期浸潤性病変検出用のイメージングプローブのような診断法としての結合リガンド開発のためのおよび治療で使用するためのバイオマーカーの同定である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも部分的には、診断および治療のための、膵管腺癌(PDAC)細胞バイオマーカーのような癌細胞バイオマーカーおよび結合分子を提供するための組成物および方法に関する。具体的には、PDAC同定用のプレクチン−1のようなバイオマーカーを提供するための「利用可能な」プロテオーム同定法が開示される。さらに、ペプチドリガンドとコンジュゲートされた磁性蛍光ナノ粒子を含む、PDAC同定用のイメージング組成物が提供される。
【0009】
診断および治療で使用するため、例えば、ペプチド、小分子、ペプチド模倣物、非ペプチド模倣物、抗体などのような結合パートナー(すなわち、リガンド)を提供するための、非癌細胞に対する癌細胞同定用のバイオマーカーが本明細書に記載されている。
【0010】
一態様において、本発明は癌細胞のバイオマーカーを提供し、ここでこのバイオマーカーは、プレクチン−1フラグメントを含みかつ癌細胞の外膜上に局在する。いくつかの実施形態において、バイオマーカーフラグメントは、配列番号9〜23で記述される配列のいずれか1つを含む。さらに、本発明は、癌細胞の型により制限されない。実際、様々な癌細胞の型が意図され、胃腸管癌細胞、肝胆道癌細胞、胆嚢癌細胞、膵臓癌細胞、肺癌細胞、中皮腫癌細胞、膀胱癌細胞、前立腺癌細胞、乳癌細胞、頭部癌細胞、頸部癌細胞、甲状腺癌細胞、子宮癌細胞、子宮体−頸部癌細胞、血液癌細胞、白血癌細胞、骨髄癌細胞、胸膜癌細胞、胸水癌細胞、前立腺癌細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、癌細胞は、膵臓癌細胞および膵管腺癌細胞(PDAC)からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、バイオマーカーは、配列番号24またはそのアイソフォームを含む。いくつかの実施形態において、バイオマーカーは、GenBankデータベースにおいてアクセッション番号NM_000445.2;同NM_201378.1;同NM_201379.1;同NM_201380.2;同NM_201381.1;同NM_201382.1;同NM_201383.1;および/または同NM_201384.1に記載されているような、ヒトmRNA配列によりコードされるペプチドまたはそのフラグメントを含む。いくつかの実施形態において、バイオマーカーは、ファージディスプレイペプチドと結合する。
【0011】
さらなる態様において、本発明は、検出可能部分または治療剤を含む第二部分と結合したプレクチン−1結合部分を有する第一部分を含む、プレクチン−1リガンドを特徴とする。いくつかの実施形態において、プレクチン−1結合部分は、配列番号1、2、または4〜8からなる群より選択されるアミノ酸配列またはそのペプチド模倣物である。いくつかの実施形態において、プレクチン−1結合部分は、抗プレクチン−1抗体またはその抗原結合フラグメント、小分子あるいはアプタマーである。いくつかの実施形態において、プレクチン−1結合部分は、ナノ粒子、微粒子または固相化試薬と結合している。検出可能部分は、放射性同位元素、磁性化合物、X線吸収剤、化学的化合物、生物学的標識および蛍光分子からなる群より選択され得る。治療剤は、例えば、細胞毒性部分または免疫調節性部分(例えば、腫瘍に対する免疫応答を増強させる化合物、例えば、インターロイキン−1(IL−1)および腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−α))であり得る。
【0012】
いくつかの実施形態において、第一部分と第二部分との間にリンカー、例えば可動性のアミノ酸配列、例えばフォトリンカーが存在し得る。
いくつかの実施形態において、第二部分は、例えば、検出可能部分または治療剤に加えてあるいはそれら自体として生理学的に不活性なナノ粒子を含む。
【0013】
ナノ粒子が、磁性、蛍光性または放射性である、請求項8に記載のペプチドリガンド。ナノ粒子の例として、架橋酸化鉄ナノ粒子(CLIO)、超常磁性酸化鉄ナノ粒子(SP
ION)および架橋超常磁性酸化鉄ナノ粒子が挙げられる。
【0014】
いくつかの実施形態において、第二部分は、例えば、最大励起波長の範囲が500nm〜1000nmである蛍光色素を含む。いくつかの実施形態において、蛍光色素は、例えば、最大励起波長の範囲が650〜680nmである近赤外蛍光色素(例えば、シアニン5.5のようなシアニン誘導体)である。
【0015】
いくつかの実施形態において、第二部分は、NIRF(例えば、シアニン5.5)とコンジュゲートされた架橋酸化鉄ナノ粒子(CLIO−Cy5.5)を含む。
いくつかの実施形態において、本発明は、ナノ粒子と(任意でリンカー、例えば、蛍光標識リンカーにより)結合された配列番号1およびナノ粒子(例えば、磁性蛍光ナノ粒子)を含むかまたは基本的にそれらからなる、ペプチドリガンドを特徴とする。いくつかの実施形態において、リンカーおよび粒子の一方または両方が蛍光性である。いくつかの実施形態において、磁性蛍光ナノ粒子は、近赤外(NIR)蛍光色素(NIRF)を含む。
【0016】
別の態様において、本発明は、バイオマーカーに対するリガンドを提供し、ここではこのリガンドは、ペプチドリガンド、模倣物、小分子および抗体からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、リガンドはペプチドである。したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、配列番号1〜8のアミノ酸のいずれか1つを含む、膵管腺癌細胞と結合するためのペプチドリガンドを提供する。いくつかの実施形態において、ペプチドリガンドは、プレクチン−1のような、膵管腺癌細胞分子に対するバイオマーカーと結合する。したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、配列番号1のアミノ酸を含む、膵管腺癌細胞と結合するためのペプチドリガンドを提供する。いくつかの実施形態において、リガンドは膵臓癌細胞上の受容体と結合する。いくつかの実施形態において、リガンドは膵臓癌細胞のバイオマーカーと結合する。いくつかの実施形態において、バイオマーカーは、癌細胞において非癌細胞とは異なる形で発現する。いくつかの実施形態において、リガンドは、癌細胞の受容体との結合パターンが非癌細胞と異なる。いくつかの実施形態において、リガンドは、癌細胞において非癌細胞内とは異なる位置でバイオマーカーと結合する。いくつかの実施形態において、リガンドは、非癌細胞の受容体よりも多い数の癌細胞の受容体と結合する。いくつかの実施形態において、リガンドは、非癌細胞よりも多い数の癌細胞と結合する。いくつかの実施形態において、リガンドは癌細胞のバイオマーカーを同定する。いくつかの実施形態において、リガンドは癌細胞のバイオマーカーと結合する。いくつかの実施形態において、バイオマーカーはプレクチン−1である。いくつかの実施形態において、リガンドは、ファージディスプレイランダムペプチドライブラリー由来である。いくつかの実施形態において、ペプチドリガンドは、ファージディスプレイランダムペプチドライブラリー由来である。いくつかの実施形態において、リガンドは、ファージディスプレイペプチド由来である。いくつかの実施形態において、リガンドは合成物である。
【0017】
別の態様において、本発明は、膵管腺癌細胞に結合するペプチドリガンドをディスプレイするバクテリオファージを提供する。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、蛍光分子、例えば、フルオレセインイソチオシアナートを含む。
【0018】
さらに別の態様において、本発明は、膵管腺癌細胞から溶出されたペプチドリガンドをディスプレイする単離されたバクテリオファージ、例えば、配列番号1を含むペプチドリガンドをディスプレイする単離されたバクテリオファージを特徴とする。
【0019】
さらなる態様において、本発明は、診断用ペプチド、例えば、配列番号1を含むペプチドを提供する。いくつかの実施形態において、診断用ペプチドは、標識、例えば、放射性同位元素、化学的化合物、生物学的標識および蛍光分子からなる群より選択される標識と
結合している。いくつかの実施形態において、標識は、I125、ビオチン、ヒスタジン(histadine)タグ、蛍光色素−ヒドロスクシンイミドエステル由来の蛍光色素およびフルオレセインイソチオシアナートからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、診断用ペプチドはリンカーをさらに含む。いくつかの実施形態において、リンカーはフォトリンカーである。いくつかの実施形態において、フォトリンカーは、スルホスクシンイミジル−2−[7−アミノ−4−メチルクマリン−3−アセトアミド]エチル−l,3−ジチオプロピオナートである。いくつかの実施形態において、リンカーは標識、例えば、蛍光標識されている。いくつかの実施形態において、蛍光標識リンカーはGGSK(フルオレセインイソチオシアナート(FITC))Cリンカーである。
【0020】
いくつかの実施形態において、ペプチドは、生理学的に不活性なナノ粒子とコンジュゲートされている。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、架橋酸化鉄ナノ粒子(CLIO)、超常磁性酸化鉄ナノ粒子(SPION)、架橋超常磁性酸化鉄ナノ粒子などからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、フルオロフォア、例えば、近赤外(NIR)蛍光色素(例えば、785nm/810nmの最大励起/発光波長または675nm/694nmの最大励起/発光波長を有する)をさらに含む。いくつかの実施形態において、近赤外(NIR)蛍光色素は、シアニン5.5またはその誘導体である。
【0021】
いくつかの実施形態において、診断用ペプチドは、磁性蛍光ナノ粒子、例えば、シアニン5.5(CLIO−Cy5.5)とコンジュゲートされた架橋酸化鉄ナノ粒子と連結されている。
【0022】
別の態様において、本発明は、配列番号1と任意で蛍光標識リンカーおよび磁性蛍光ナノ粒子の一方または両方とを含むペプチドを含有する、診断用組成物を提供する。いくつかの実施形態において、診断用組成物は、架橋酸化鉄ナノ粒子とコンジュゲートされた蛍光標識リンカー分子と結合した配列番号1を含むペプチドリガンドを含有し、ここでは当該ナノ粒子は、近赤外(NIR)蛍光色素(NIRF)とコンジュゲートされている。
【0023】
さらなる態様において、本発明はペプチド、例えば、配列番号2(すなわち、KTLLPTPGGSK)、例えば、架橋酸化鉄ナノ粒子とコンジュゲートされた配列番号2を含むFITC標識ペプチド(すわなち、KTLLPTPGGSK(フルオレセインイソチオシアナート(FITC))C)を含有する診断用組成物を提供し、ここでは当該ナノ粒子は蛍光色素、例えばNIRF、例えばシアニン5.5(CLIO−Cy5.5)のようなシアニン誘導体と、さらにコンジュゲートされている。
【0024】
また、膵管腺癌の診断または治療用のならびに膵管腺癌の診断または治療用の薬剤製造における、本明細書に記載のプレクチン−1結合化合物の使用が本明細書に提供される。
別の態様において、本発明は、被検体における癌細胞の検出のための方法を提供する。これらの方法には、被検体由来の細胞または組織(例えば、生検由来、あるいは血漿または血液由来、すなわち、被検体由来の循環腫瘍細胞)の提供;および細胞または組織におけるプレクチン−1タンパク質の存在または細胞内局在の検出が含まれ、ここでは、プレクチン−1の細胞膜発現が癌細胞の存在を示す。いくつかの実施形態において、プレクチン−1の非存在あるいはプレクチン−1の細胞質および/または核発現のみの存在は、その細胞または組織に癌細胞が存在しないことを示す。
【0025】
いくつかの実施形態において、試料中でのプレクチン−1の細胞内局在の検出には、プレクチン−1タンパク質と結合し任意に検出可能部分を含む薬剤と試料とを接触させること;および薬剤の細胞内局在を検出することが含まれ、ここでは、薬剤の細胞内局在がプレクチン−1発現の細胞内局在を示す。いくつかの実施形態において、プレクチン−1タ
ンパク質と結合する薬剤は、本明細書に記載のようなペプチドリガンドあるいはプレクチン−1に対して特異的な抗体またはその抗原結合部分である。いくつかの実施形態において、細胞内局在は、レーザー走査顕微鏡法、免疫組織化学法、蛍光顕微鏡法および/または放射線写真撮影を用いて検出される。その他の方法として、ラマン分光法、光干渉断層撮影(OCT)、放射線(例えば、X線)散乱または吸収の検出ならびにアイソトープ検出を含めた方法も使用され得る。
【0026】
さらに別の態様において、本発明は、被検体における膵管腺癌(PDAC)または前駆病変膵上皮内新生物(PanIN)をインビボで検出するための方法を提供する。これらの方法には、PDACのリスクがあるかまたはPDACを有する疑いのある被検体を同定すること;被検体に本明細書に記載のような診断用組成物を投与すること;および被検体の膵臓中のペプチドリガンドの存在をインビボイメージング装置を用いて検出することが含まれる。膵臓中のペプチドリガンドの存在は、被検体がPDACを有することを示す。いくつかの実施形態において、ペプチドリガンドは、真皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経口および/または胃経路を介して投与される。いくつかの実施形態において、インビボイメージング装置は、磁気共鳴イメージング装置(MRI)、レーザー走査生体顕微鏡、内視鏡および放射線画像装置からなる群より選択される。
【0027】
また、被検体における膵管腺癌(PDAC)の治療法が本明細書において提供される。これらの方法には、PDACのリスクがあるかまたはPDACを有する疑いのある被検体を同定すること;被検体に本明細書に記載のような診断用組成物を含む診断用組成物を投与すること;被検体の膵臓中のペプチドリガンドの局在をインビボイメージング装置を用いて検出すること(ここでは、ペプチドリガンドの局在がPDAC細胞の局在を示す);およびPDAC細胞を外科的に除去することが含まれる。
【0028】
さらなる態様において、本発明は、被検体における膵管腺癌(PDAC)の治療法を提供する。これらの方法には、PDACのリスクがあるかまたはPDACを有する疑いのある被検体を同定すること;被検体に本明細書に記載のような治療用組成物(例えば、治療剤と結合したプレクチン−1結合部分を含む)の治療有効量を投与することが含まれる。いくつかの実施形態において、組成物は、真皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経口および/または胃経路を介して投与される。
【0029】
いくつかの実施形態において、治療剤は、治療薬、放射性同位元素、植物、真菌または細菌起源の分子ならびに生体タンパク質からなる群より選択される細胞毒性または細胞分裂阻害性部分である。いくつかの実施形態において、治療剤は、光毒性または免疫調節性化合物である。
【0030】
また、配列番号9〜23のいずれかからなる群より選択されるアミノ酸配列で基本的に構成されるペプチドが、本明細書において提供される。
さらに別の態様において、本発明は、膵臓癌細胞ペプチドリガンドの同定法を提供する。これらの方法には、a)i)ファージディスプレイランダムコンビナトリアルペプチドライブラリーであって、当該ペプチドが7〜12merの範囲にあるライブラリー、ii)ペプチドに対する受容体であって、当該受容体が膵臓癌細胞の「利用可能な」プロテオーム由来である受容体およびiii)ファージディスプレイペプチド−受容体結合アッセイの提供;b)ファージディスプレイペプチド−受容体結合アッセイの実施;ならびにc)膵臓癌細胞バイオマーカーの同定が含まれる。いくつかの実施形態において、癌細胞は膵管腺癌細胞である。いくつかの実施形態において、ファージディスプレイランダムコンビナトリアルペプチドライブラリーは、配列番号1のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、ファージは蛍光標識をさらに含む。いくつかの実施形態において、標識は、蛍光色素−ヒドロスクシンイミドエステル、シアニン5.5およびフルオレセインイソチ
オシアナートからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、膵臓癌細胞の「利用可能な」プロテオームは、タンパク質、細胞成分分画、細胞溶解物および全細胞からなる群より選択される成分を含む。いくつかの実施形態において、受容体はプレクチン−1である。いくつかの実施形態において、ペプチド−受容体結合アッセイは、酵素結合免疫測定法(ELISA)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)アッセイ、競合結合アッセイ、免疫蛍光アッセイ、放射アッセイ、インタクト細胞結合アッセイ、SDS/PAGEゲルアッセイ、蛍光顕微鏡アッセイおよびフローサイトメトリーアッセイからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、同定の段階には、差次的遺伝子発現、タンパク質プロセシング、炭水化物プロセシング、輸送、細胞内局在、細胞表面発現、結合パターンおよび結合量の検出が含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
さらなる態様において、本発明は、膵臓癌細胞に対するペプチドリガンドの同定法を提供する。これらの方法には、a)i)受容体を発現する膵臓癌細胞、ii)非癌細胞、iii)ファージディスプレイペプチドリガンドおよびiv)ペプチドリガンド−受容体結合アッセイの提供;b)癌細胞および非癌細胞へのペプチドリガンドの添加;ならびにc)癌細胞と非癌細胞を識別するためのペプチド結合アッセイの実施が含まれる。いくつかの実施形態において、この方法は、受容体からのペプチドの溶離をさらに含む。いくつかの実施形態において、この方法には、ファージディスプレイペプチドの配列決定がさらに含まれる。いくつかの実施形態において、受容体は、固定化受容体結合パートナーである。いくつかの実施形態において、固定化受容体は、生検標本、ビーズ、膜、ゲル、膜およびプラスティックからなる群より選択される支持体材料上に固定化されている。
【0032】
別の態様において、本発明は、被検体における癌の診断法を提供する。これらの方法には、患者由来の試料(例えば、生検試料)およびペプチドリガンド(ここでは当該ペプチドリガンドは、任意に検出可能部分とコンジュゲートされた配列番号1を含む)を含有する診断用組成物の提供、試料へのペプチドの添加ならびに診断用組成物の検出(例えば、試料中の検出可能部分の検出による)が含まれる。いくつかの実施形態において、イメージング法としてレーザー走査顕微鏡法、免疫組織化学法、蛍光顕微鏡法、放射線イメージングなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
さらなる態様において、本発明は、インビボでの癌の診断法を提供する。これらの方法には、膵臓細胞癌のリスクがあるかまたは膵臓細胞癌を有する疑いのある被検体の同定;イメージング分子とコンジュゲートされた配列番号1のペプチドリガンドを含む診断用組成物の被検体への投与;およびインビボイメージングを用いた被検体内のイメージング分子の画像化が含まれる。いくつかの実施形態において、膵臓細胞癌は膵管腺癌である。いくつかの実施形態において、イメージング分子は磁性蛍光ナノ粒子である。いくつかの実施形態において、磁性蛍光粒子は近赤外(NIR)蛍光色素(NIRF)を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、真皮内、皮下、腹腔内、静脈内、動脈内、経口および胃経路からなる群より選択される経路を介して投与される。いくつかの実施形態において、インビボイメージング法として、磁気共鳴イメージング(MRI)、レーザー走査生体顕微鏡法、内視鏡法および放射線イメージングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
別の実施形態において、本発明は、膵臓癌細胞の外科的除去法を提供する。これらの方法には、a)i)膵臓癌細胞と膵臓非癌細胞を識別するためのペプチドを含む組成物であって、当該ペプチドが配列番号1である組成物、ii)膵臓癌を有することが既知である被検体、iii)インビボイメージング装置の提供およびb)組成物の被検体への投与、c)イメージング装置によるインビボでの膵臓癌細胞のイメージングおよびd)被検体からの膵臓癌細胞の除去が含まれる。いくつかの実施形態において、投与は30mgFe/kg(ミリグラム鉄/キログラム)の静脈内注射である。いくつかの実施形態において、投与は2.6mg/kgの静脈内注射である。
【0035】
本発明は、癌を有する患者の治療法を提供し、この方法は、a)i)治療を必要とする癌患者、ii)リガンドを含む医薬組成物であって、当該リガンドが本発明のバイオマーカーと結合する医薬組成物の提供およびb)治療用組成物の患者への投与を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は治療剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、治療剤は、融合タンパク質、毒素、薬剤からなる群より選択される。本発明は、癌の種類により制限されない。実際、本発明の検出方法が使用される様々な種類の癌が意図され、肺癌、膀胱癌、頭部および/または頸部癌、乳癌、食道癌、口腔癌、舌癌、歯肉癌、皮膚癌(例えば、黒色腫、基底細胞癌、カポジ肉腫など)、筋肉癌、心臓癌、肝臓癌、気管支癌、軟骨癌、骨癌、胃癌、前立腺癌、精巣癌、卵巣癌;子宮頸癌、子宮内膜癌、子宮癌、膵臓癌、大腸癌、結腸直腸、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、リンパ腫癌、脾臓癌、胸腺癌、甲状腺癌、脳癌、神経癌、中皮腫、胆嚢癌、眼癌(例えば、角膜の癌、ブドウ膜の癌、脈絡膜の癌、黄斑の癌、硝子体液の癌など)、関節癌(滑膜癌など)、膠芽腫、白血球癌(例えば、リンパ腫、白血病など)、遺伝性非ポリポーシス癌、大腸炎関連癌などが挙げられるが、これらに限定されない。癌の例として、さらに肉腫(骨肉腫およびカポジ肉腫など)がある。
【0036】
本発明は、膵臓癌を有する患者の治療法を提供し、この方法は、a)治療を必要とする癌患者、ii)リガンドを含む医薬組成物であって、当該リガンドがプレクチン−1またはそのフラグメントと結合する医薬組成物の提供およびb)治療用組成物の患者への投与を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は治療剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、治療剤は、融合タンパク質、毒素、薬剤からなる群より選択される。
【0037】
さらなる態様において、本発明は、膵臓癌を有する被検体の治療法を提供する。これらの方法には、治療を必要とする被検体の同定(例えば、膵臓癌を有することに基づく)および細胞毒性剤(例えば、毒素または薬剤)と連結された配列番号1を含むペプチドを含有する医薬組成物の治療有効量の投与が含まれる。
【0038】
別の態様において、本発明は、ペプチドリガンドに対して選択的親和性を有する癌細胞結合パートナー(受容体)の同定法を提供する。これらの方法には、多様な結合分子群を固体支持体へ選択的に固定化すること、固体支持体上に固定化された多様な集団を1つまたは複数のペプチドリガンドと接触させること(例えば、同時に接触させること)ならびにバクテリオファージにより発現されたものを含めた1つまたは複数のペプチドリガンドと選択的に結合する結合分子を少なくとも1つ決定することが含まれる。また、腫瘍抗原(結合分子)に対する選択的親和性を有するペプチドリガンドの同定法が提供される。これらの方法には、腫瘍抗原を固体支持体へ選択的に固定化すること、固体支持体上に固定化された腫瘍抗原を1つまたは複数のペプチドリガンドと接触させること(例えば、同時に接触させること)ならびに1つまたは複数の腫瘍抗原と選択的に結合するペプチドリガンドを少なくとも1つ同定することが含まれる。また、腫瘍抗原に対して選択的である単離された結合ペプチド(「ペプチドリガンド」)、具体的には、プレクチン−1に対するペプチドリガンドが提供される。
【0039】
また、対象とする1つまたは複数のペプチドリガンドに対して選択的親和性を示す結合分子同定のための迅速かつ効率的な方法が、本明細書に記載されている。これらの方法は、対象とする複数のペプチドリガンドに対する複数の結合分子を同時にスクリーニングすることを可能にするという点で有利である。さらに、本発明で使用するための結合分子またはリガンドの独自性または機能に関して必要とされる情報が非常に少ない。例えば、多様なペプチドリガンド集団に対して多様な結合分子群を同時にスクリーニングして、所望の結合特異性を示す多数の分子を迅速に同定することができる。したがって、本明細書に記載の方法は、ペプチドリガンドおよびバイオマーカーのような、ヒト疾患の診断および
治療用の特異的試薬の発見に有利に応用することができる。
【0040】
定義
本発明の理解を容易にするために、数多くの用語および語句を以下に定義する。
冠詞「a(1つの)」または「an(1つの)」の使用は、1つまたは複数を包含するものとする。本願で使用される単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」及び「the(その)」は、文脈から明らかにそうでないことが示されない限り、複数形の指示対象を包含するものとする。例えば、「an agent(1つの薬剤)」という用語は、複数の薬剤およびそれらの混合物を包含する。
【0041】
本明細書で使用される「患者」または「被検体」という用語は、膵臓癌またはその他の悪性腫瘍の症状を有するかまたはそのリスクのある個体のことである。患者は、ヒトまたは非ヒトであってもよく、例えば、本明細書に記載されているマウスモデルのような研究目的で「モデル系」として使用される動物系統または種を包含し得る。患者は、成体または幼若体(例えば、子供)のいずれも包含し得る。「患者」という用語は、本明細書で意図される組成物の投与が有効であり得る任意の生物、好ましくは哺乳動物(例えば、ヒトまたは非ヒト)をさらに指す。
【0042】
本明細書で使用される「動物」という用語は、任意の動物、好ましくは哺乳動物を指し、より好ましくは、哺乳動物は、ヒトおよび非ヒト動物、例えばサル類、齧歯類、ヒツジ類、ウシ類、反芻動物類、ウサギ類、ブタ類、ヤギ類、ウマ類、イヌ類、ネコ類、鳥類などのような動物を非限定的に包含する。好ましい非ヒト動物は、齧歯目(例えば、マウスおよびラット)、ヒツジ、ブタ、ウサギまたはウシの仲間である。
【0043】
本明細書で使用される「利益」という用語は、診断分析法、診断法、手術道具などを非限定的に指す。
本明細書で使用される「癌を有する疑いのある被検体」という用語は、癌を示唆する1つまたは複数の症状(例えば、顕著なしこりまたは腫瘤)を示すかあるいは癌検診が行われている(例えば、通常健診中の)被検体を指す。癌を有する疑いのある被検体は、1つまたは複数の危険因子も有し得る。癌を有する疑いのある被検体は、一般に癌の検査を受けていない。しかし、「癌を有する疑いのある被検体」は、初期診断を受けているが、癌の段階が未知の個体を包含する。この用語は、かつて癌を有した人(例えば、寛解期の個人)をさらに含む。
【0044】
本明細書で使用される「癌のリスクがある被検体」という用語は、特定の癌を生じる1つまたは複数の危険因子を有する被検体を指す。危険因子として、性別、年齢、遺伝的素因、環境曝露および癌の病歴、既存の非癌疾患および生活様式が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
本明細書で使用される「疾患に罹患している」という用語は、特定の疾患を経験している被検体(例えば、ヒト)を指す。本発明は、いかなる特定の徴候または症状あるいは疾患にも限定されないものとする。したがって、本発明は、潜在的な疾患から末期の疾患までの任意の範囲の疾患を経験している被検体を包含し、ここでは当該被検体は、特定の疾患と関連した兆候(例えば、徴候および症状)の少なくとも一部を示すものとする。
【0046】
本明細書で使用される「試料」および「標本」という用語は、それらの広義において使用され、緩衝液、生理食塩水、細胞培養液などを含めた任意の供給源から得られた試料または標本を包含する。
【0047】
本明細書で使用される「生体試料」という用語は、動物(ヒト、家畜ならびに有蹄類、
クマ、サカナ、ウサギ類、齧歯類のような野生化したまたは野生種の動物を包含する)から得られた試料または標本を指し、細胞、液体、固体、組織および気体を包含する。本発明の好適な実施形態において、生体試料は、組織(例えば、生検材料)、細胞株、組織から単離された細胞(組織から単離後に培養されたか否かは問わない)、固定された(例えば、組織学的および/または免疫組織化学的解析用に固定された)細胞、脳脊髄液(CSF)、漿液、血液および血漿、血清などの血液産物を包含する。しかし、これらの例は、本発明での使用が見出される試料の種類を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0048】
本明細書で使用される「生検組織」という用語は、その試料が癌性組織を含むか否かを判定する目的で被検体から取り出された組織試料を指す。ある実施形態において、被検体が癌を有する疑いがあるという理由で生検組織を採取する。次いでこの生検組織を、癌の存在または非存在について検査する。
【0049】
本明細書で使用される「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語はすべて、共有結合である「ペプチド結合」により連結されたアミノ酸の一次配列を指す。一般に、ペプチドは、完全長のタンパク質よりも少ないアミノ酸、通常は2〜50個のアミノ酸からなる。
【0050】
本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語は、ペプチドおよびタンパク質の両方を包含し得る。ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、合成、組換えまたは天然のものであり得る。合成ペプチドは、人工的な方法によりインビトロで製造される(例えば、インビボで産生されなかった)ペプチドである。「タンパク質」、「ペプチド」または「ポリペプチド」のアミノ酸配列は、化学的化合物も含み得る。
【0051】
本明細書で使用される「ファージ」または「φ」は、「バクテリオファージ」と同義であり、大腸菌(E.coli)のような細菌に感染する、例えば、M13、T4などのウイルスを指す。ファージは、個々のウイルス粒子も指し得る。
【0052】
本明細書で使用される「ファージディスプレイペプチド(phage displayed peptide)」または「バクテリオファージディスプレイペプチド」または「ファージディスプレイペプチド(phage−displayed peptide)」という用語は、1つのペプチド核酸配列を発現し、当該ペプチドがウイルス粒子の外表面上にあるバクテリオファージ粒子を指す。1つのウイルス粒子は、1つのペプチドまたはそのペプチドの複数コピー、例えば5コピー、7コピーなどをディスプレイし得る。
【0053】
本明細書で使用される、ライブラリーに関連した「ファージディスプレイ」という用語は、ペプチドまたはタンパク質あるいはそれらのバリアントのライブラリーがファージ粒子の外面上に発現され、それに対し、各バリアントをコードする遺伝物質が内側のバリアント上に存在する選択手法を指し、例えば、市販のPh.D.(商標)−7Phage Display Peptide Library(New England Biolabs)は、20億を超える独立したクローンの7merペプチドを提供し、Ph.D.−12Phage Display Peptide Library(New England Biolabs)は、12merペプチドを提供し、非市販のファージディスプレイペプチドライブラリーは、特定の細胞型またはリガンドなどに対するような、複数の供給源由来のランダムに生成または選択された様々なペプチドサイズを提供する。
【0054】
「ペプチド配列」に関連した「単離(された)」および「精製(された)」という用語は、非所望のペプチド配列およびその他の夾雑物(例えば、所望のペプチド配列を発現していないファージ粒子、不完全なまたは歪んだ合成ペプチド、脂質、炭水化物、核酸など)から,所望の1つまたは複数のペプチド配列を分離することを指す。「単離(された)
」および「精製(された)」という用語は、100%の均質性まで単離および精製されていることも意図されるが、必ずしもそのことを意味するわけではない。むしろ、これらの用語は、少なくとも50%の均質性まで単離または精製されていることを意味する。好適な一実施形態においては、ペプチド配列は、少なくとも75%の均質性まで単離または精製されている。より好適な一実施形態においては、ペプチド配列は、少なくとも90%の均質性まで単離または精製されている。単離および/または精製後、ペプチド配列は、他の化合物または分子とコンジュゲートされるか、混合されるか、またはそれらに添加される。
【0055】
本明細書で使用される、「ファージ」または「ファージ粒子」に関連した「単離(された)」という用語は、本発明のペプチド−受容体スクリーニングアッセイのような1つまたは複数のスクリーニングアッセイの後に得られるペプチドをディスプレイするファージを指し、このアッセイでは、ファージディスプレイライブラリーのファージディスプレイペプチド群を癌細胞受容体との結合に関してスクリーニングし、その結果、結合したファージは癌細胞分子との結合に関してファージライブラリーから「単離」される。「単離ファージ」は、結合したファージから溶出されるファージ粒子も指す。
【0056】
本明細書で使用される、ペプチドリガンドに関連した「単離(された)」という用語は、そのペプチドを発現する単離ファージによりコードされるペプチドリガンドを指し、したがってこの用語は、表される通りのペプチドリガンドならびにファージディスプレイペプチド、単離ペプチドの核酸配列、単離ペプチドのアミノ酸配列、天然および合成形態の単離ペプチドリガンドなどを含めたペプチドリガンドを非限定的に包含する。したがって、本発明の典型的な「単離ペプチドリガンド」は、クローン4、15および27のいずれか1つにより発現されるペプチドを非限定的に包含する。
【0057】
本明細書で使用される、ペプチドリガンド、特に単離ペプチドリガンドに関連した「由来する」または「由来の」という用語は、そのペプチドをディスプレイする単離ファージ粒子から得られるペプチドリガンド配列を指す。しかし、ペプチド、ペプチド誘導体またはペプチド模倣物、アナログおよび模倣化合物もこの用語の定義内に包含されるものとする。
【0058】
本明細書で使用される「模倣物」という用語は、リガンドのバイオマーカー(受容体)との結合を模倣する分子を指し、ペプチド、非ペプチド模倣物、小分子模倣物などを包含する。
【0059】
本明細書で使用される「有機小分子」という用語は、本明細書で使用される場合、医薬品において一般に使用される有機分子と同等の大きさの任意の分子を指す。この用語は、生体高分子(例えば、タンパク質、核酸など)は除外する。好ましい有機小分子の大きさの範囲は、約10Daから約5000Daまで、より好ましくは2000Daまで、そして最も好ましくは約1000Daまでである。
【0060】
本明細書で使用される、ペプチドリガンドに関連した「所望の」という用語は、癌細胞の同定が可能なペプチドリガンドを指す。本明細書で使用される、ペプチドリガンドに対する結合パートナーに関連した「所望の」という用語は、癌細胞バイオマーカーを非限定的に含めたバイオマーカーを指す。
【0061】
本明細書で使用される蛍光色素に関連した「由来の蛍光色素」という用語は、類似の構造を有する任意の蛍光色素、例えば、エステル基を有する蛍光色素およびペプチドとの共有結合中に荷電エステル基を遊離した後の蛍光色素、フルオレセイン(IUPAC:3’,6’−ジヒドロキシスピロ[2−ベンゾフラン−3,9’−キサンテン]−1−オン)
化合物のファミリーのような任意の蛍光色素化合物のファミリーを指し、非限定的にフルオレセインイソチオシアナート、フルオレセインイソチオシアナート異性体Iなど、関連したおよび類似の化合物を包含する。
【0062】
本明細書で使用される「バイオマーカー」という用語は、一般に生物学的状態の指標である分子または物質、例えば、特定の発生段階を識別する(例えば、多能性細胞、幹細胞、分化した細胞(神経細胞など)を他の細胞から識別する)ためのタンパク質または化学物質などを指す。バイオマーカーは、成熟のような通常の生物学的過程、癌細胞発生のような発病過程または治療的介入に対する薬理学的反応の指標となるものであり、例えば、バイオマーカーが減少または増加した可能性がある場合、疾患の消散または癌細胞の消失を示すものとなる。具体的には、本発明のバイオマーカーは、同系列の非癌細胞に比べて癌細胞において発現の増加のような発現の変化、位置の変化が見られる分子を指す。「癌細胞を識別すること」、特に、非癌細胞から癌細胞をという場合、識別とは、各細胞型における1つまたは複数のタンパク質、ペプチドまたは遺伝子の発現を検出するために使用される試薬およびアッセイ(例えば、本発明の癌マーカーを非限定的に含む)を指す。適切な試薬の例として、ペプチドリガンド、対象とする遺伝子と特異的にハイブリダイズすることができる核酸プローブ、アプタマー、対象とする遺伝子を特異的に増幅することができるPCRプライマーおよび対象とする遺伝子により発現されるタンパク質(バイオマーカーを非限定的に含む)と特異的に結合できる抗体が挙げられるが、これらに限定されない。その他の非限定的な例は、以下の説明および実施例において見出すことができる。細胞分子に関連した「バイオマーカー」という用語は、細胞のサブセットを同定するための本発明の分子、例えば、プレクチン−1のような、膵臓非癌細胞から膵臓癌を同定するためのバイオマーカーを指す。
【0063】
本明細書で使用される「プレクチン−1」という用語は、プレクチン−1のフラグメントまたは一部分を含む任意の分子、例えば、プレクチン−1アミノ酸配列のフラグメント、例えば、配列番号8〜23または24のいずれか1つならびにそのフラグメントのみならず、これらのアミノ酸配列をコードする単離された核酸なども指す。
【0064】
本明細書で使用される「ペプチドリガンド」(またはペプチドに関連した「リガンド」という語)は、タンパク質、炭水化物などのような分子と特異的に結合するタンパク質フラグメントを指す。受容体は基本的に、ポリペプチド、核酸、炭水化物、脂質または任意の有機化合物のような任意の分子種であり得る。リガンドの具体的な例は、本発明のペプチドリガンドである。
【0065】
本明細書で使用される「選択的な」または「選択的に」という用語は、受容体分子とリガンドとの結合に言及する場合、所望でないまたは非特異的な相互作用から識別される相互作用を指す。識別には、例えば、ファージディスプレイペプチドリガンド−細胞結合アッセイのようなリガンド−受容体結合アッセイにより判定される、受容体分子に対するリガンドの親和性、ファージディスプレイペプチドリガンドの生検スクリーニング、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などのようなアフィニティー精製、競合結合アッセイ、パニングアッセイ、アフィニティーアッセイ、結合活性アッセイ、ELISAアッセイなど、定性的または定量的なものが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、親和性は、ヒートマップにより示されるように、パニングアッセイ、ELISAなどにより定性的に測定され得る。ヒートマップでは、ELISAアッセイにおける表示のクローンの平均吸光度値として親和性が描写され)、クローンの腫瘍細胞に対する親和性と正常導管細胞に対する親和性との比により特異性が判定される。例えば、特異的なペプチドリガンド結合相互作用では、PDAC細胞対正常導管細胞に関して2倍高い吸光度の比を示した。
【0066】
さらに、親和性は、複合体中の構成要素の結合力を測定することにより、親和性定数(結合定数)(Kα)を以下のように計算して定量的に測定され得る:結合平衡がA(リガンド)+B(受容体分子)=ABで表される構成要素AおよびBにおいて、結合定数が[AB]/[A][B]で与えられ、この値は、A−B間の結合が強くなるほど大きくなり、A−B間の結合が弱くなるほど小さくなる。これとは対照的に、解離定数(Kd)は、複合体が解離する傾向の尺度を示すものであり、解離定数は[A][B]/[AB]で表され、強い結合ほどKdは小さくなるのに対し、弱い結合ほどKdは大きくなる。例えば、結合分子とリガンドとの選択的相互作用に対する結合定数Kdは、10−3Mからピコモルの値までの範囲であり得、例えば、選択的結合相互作用に対する結合定数Kdは、一般に10−3Mよりも大きく、好ましくは10−4Mより大きく、より好ましくは10−5Mよりも大きく、さらにより好ましくは10−6Mよりも大きい。高親和性相互作用では、一般に10−8M〜10−9Mよりも大きく、より好ましくは10−9Mよりも大きい。
【0067】
本明細書で使用される「結合活性」という用語は、リガンドと受容体分子との結合力の合計を指し、したがって相互作用の強さは、複数の低親和性相互作用または少数の高親和性相互作用から生じ得る、パートナー間の複数の独立した結合相互作用を含む。
【0068】
本明細書で使用される「付着する/させる」または「付着」または「付着させた」または「付着している」という用語は、「結合する/させる(bind)」または「結合」または「結合する/させる(binds)」または「結合した」と互換的に使用され、安定な複合体の形成を生じる分子間の任意の物理的関係、例えば、ペプチドまたは小分子のようなリガンドと「結合パートナー」または「受容体分子」との間の物理的関係などを指す。この関係は、選択的非共有結合、イオン結合、水素結合、共有結合、ファンデルワールス力または疎水結合を非限定的に含む、物理化学的相互作用により媒介される。
【0069】
ペプチド(リガンド)と受容体(分子)との相互作用に関連した「特異的結合」または「特異的に結合する」という用語は、特定の構造(すなわち、リガンドのアミノ酸配列またはタンパク質内のリガンド結合ドメイン)に依存する相互作用も指す;言い換えれば、ペプチドは、結合パートナー内の特定のタンパク質構造を認識し、一般の分子ではなく前者と結合することを可能にする構造を含む。例えば、リガンドが結合ポケット「A」に対して特異的である場合、標識ペプチドリガンド「A」(単離されたファージディスプレイペプチドまたは単離合成ペプチドなど)および非標識ペプチドリガンドを含み、結合ポケット「A」を含むタンパク質が存在する反応において、非標識ペプチドリガンドは、結合パートナーと結合する標識ペプチドリガンドの量を減少させることになる(つまり、競合結合アッセイのこと)。
【0070】
「特異的に結合する」は、結合部分(例えば、オリゴヌクレオチドまたは抗体)のような分子が、試料中に他の分子が存在する中で、標的分子(例えば、核酸またはタンパク質)のような別の分子と優先的に結合することを意味する。
【0071】
本明細書で使用される「アミノ酸配列」という用語は、本明細書で使用される場合、タンパク質、ペプチドまたはポリペプチドの一次(すなわち、直線状の)構造を指し、ここでは個々のアミノ酸は、ペプチド結合により連結されている。
【0072】
本明細書で使用される「受容体」という用語は、本明細書で使用される場合、任意の「結合分子」または「結合パートナー」(例えば、癌細胞タンパク質に「認識される」または「結合する」あるいはペプチドリガンド「から溶出される」)を指し、本発明のアミノ酸ペプチド配列が相互作用するまたは特異的に結合すると考えられるペプチド、タンパク質または糖タンパク質を非限定的に含む。例えば、結合分子は、細胞表面上または細胞内
に存在し得る。結合分子の一例は、本発明の配列番号1と相互作用するプレクチン−1分子である。本明細書で使用される「結合分子」という用語は、癌細胞または腫瘍細胞により発現されペプチドリガンドと選択的に結合することができる、十分な大きさおよび複雑性を有する分子を指す。このような分子は、一般にはポリペプチドのような高分子であるが、核酸、炭水化物および脂質を包含する。結合分子の大きさは、その分子がペプチドリガンドとの結合活性を示すかまたは示させることができる限り重要ではない。
【0073】
本明細書で使用される、「癌細胞」または「細胞」または「宿主細胞」に関連した「標的細胞」という用語は、本発明の任意のアッセイにおいてペプチドリガンドの標的として使用される任意の細胞または分子を指す。「標的細胞」は、対象とする特定のバイオマーカーを天然に発現するか、あるいは通常のまたは変異したバイオマーカーを産生するように遺伝的に変化させた、任意の細胞も指す。
【0074】
本明細書で使用される「標的結合分子」または「標的受容体」という用語は、単離ペプチドリガンドのような対象とするペプチドリガンドの結合パートナー分子である、既知および未知の両方の分子を指す。
【0075】
ポリペプチドと関連した「バリアント」および「変異体」という用語は、別のポリペプチド、通常は関連するポリペプチドと1つまたは複数のアミノ酸が異なっているアミノ酸配列を指す。バリアントは、置換アミノ酸が類似の構造的または化学的特性を有するような、「保存的」変化を有し得る。1つのタイプの保存的アミノ酸置換は、類似の側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸のグループは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンであり;脂肪族−ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸のグループは、セリンおよびスレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、アスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸のグループは、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸のグループは、リジン、アルギニンおよびヒスチジンであり;ならびに硫黄含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、システインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換のグループは:バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリンおよびアスパラギン−グルタミンである。より稀には、バリアントは、「非保存的」変化(例えば、グリシンとトリプトファンの置換)を有し得る。同様な少数のバリアントはまた、アミノ酸の欠失または挿入(すなわち、追加)あるいはその両方を有し得る。いずれのおよび何個のアミノ酸残基が生物学的活性を失うことなく置換、挿入または欠失され得るかを決定する際の手引きは、当該分野で公知のコンピュータプログラム、例えば、DNAStarソフトウェアを用いて見出し得る。バリアントは、機能アッセイにおいて試験し得る。好ましいバリアントは、10%未満、好ましくは5%未満、さらにより好ましくは2%未満の変化を(置換、欠失などを問わず)有する。
【0076】
本明細書で使用される「核酸分子」という用語は、核酸を含有する任意の分子を指し、DNAまたはRNAを非限定的に包含するが、これらに限定されない。この用語は、DNAおよびRNAの任意の既知の塩基類似体を含む配列を包含し、既知の塩基類似体としては、4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N−6−メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、プソイドイソシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルプソイドウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメ
チル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルキュエオシン、5’−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N−6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン、プソイドウラシル、キュエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、プソイドウラシル、キュエオシン、2−チオシトシンおよび2,6−ジアミノプリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
本明細書で使用される「遺伝子」という用語は、ポリペプチド、前駆体またはRNA(例えば、rRNA、tRNAなど)の産生に必要なコード配列を含む核酸(例えば、DNA)配列を指す。ポリペプチドは、完全長またはフラグメントの所望の活性または機能的特性(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達、免疫原性など)が保持される限り、完全長のコード配列によりまたはコード配列の任意の部分によりコードされ得る。この用語は、構造遺伝子のコード領域ならびにこのコード領域の5’および3’両末端側に隣接して位置し両端約1kbまたはそれを超える距離にわたる配列も包含し、したがってこの遺伝子は完全長のmRNAの長さに相当する。コード領域の5’側に位置しかつmRNA上に存在する配列は、5’非翻訳配列と呼ばれる。コード領域の3’側または下流に位置しかつmRNA上に存在する配列は、3’非翻訳配列と呼ばれる。
【0078】
本明細書で使用される「遺伝子」という用語は、cDNAおよびゲノム両形態の遺伝子を包含する。ゲノム形態またはクローンの遺伝子は、「イントロン」または「介在領域」または「介在配列」と呼ばれる非コード配列で隔てられたコード領域を含む。イントロンは、核RNA(hnRNA)に転写される遺伝子のセグメントであり;イントロンは、エンハンサーのような調節エレメントを含み得る。イントロンは、核または一次転写産物から除去または「スプライスアウト」され;したがってイントロンは、メッセンジャーRNA(mRNA)転写産物中に存在しない。mRNAは、翻訳中に新生ポリペプチド中のアミノ酸の配列または順序を指定するよう機能する。
【0079】
本明細書で使用される「遺伝子発現」という用語は、遺伝子中にコードされている遺伝情報を、遺伝子の「転写」により(例えば、RNAポリメラーゼの酵素作用を介して)RNA(例えば、mRNA、rRNA、tRNAまたはsnRNA)に変換する、およびタンパク質をコードする遺伝子に関してはmRNAの「翻訳」によりタンパク質へ変換する過程を指す。遺伝子発現は、この過程において多くの段階で制御される。「上方制御」または「活性化」は、遺伝子発現産物(例えば、RNAまたはタンパク質)の産生を増加させる制御を指すのに対し、「下方制御」または「抑制」は、産生を減少させる制御を指す。上方制御または下方制御に関与する分子(例えば、転写因子)は、それぞれ「アクチベーター」および「レプレッサー」と呼ばれることが多い。
【0080】
本明細書で使用される「標識」という用語は、本明細書で使用される場合、検出可能な(好ましくは定量化できる)シグナルをもたらすために使用され得る、および核酸またはタンパク質に付着させ得る、任意の原子または分子を指す。標識は、蛍光、放射活性、比色分析、重量分析、X線回折または吸収、磁性、酵素活性などにより検出可能なシグナルをもたらし得る。標識は、荷電部分(正または負荷電)であり得るか、あるいは荷電中性であり得る。標識は、その標識を含む配列が検出可能である限り、核酸またはタンパク質配列を含むかまたはこれらから構成され得る。
【0081】
本明細書で使用される「リンカー」という用語は、架橋という形で1つの分子または配列と別の分子または配列とを付着させる、分子またはアミノ酸配列のような配列を指す。「架橋された」、「コンジュゲートされた」または「結合された」は、共有結合または非
共有結合またはファンデルワールス力のようなその他の結合により付着または結合されていることを意味する。
【0082】
本明細書で使用される「細胞培養」という用語は、細胞の任意のインビトロ培養を指す。この用語には、連続細胞株(例えば、不死化表現型)、初代細胞培養物、有限細胞株(例えば、非形質転換細胞)およびインビトロで維持されるその他の任意の細胞集団が包含される。
【0083】
本明細書で使用される「上皮細胞」という用語は、膵管細胞のような、立方形で一般に組織表面上に位置する有核細胞を指す。上皮細胞層は一般に、輸送過程にも関与し得る保護的な内層および/または表面を形成するよう機能する。上皮細胞は、当該分野で公知の組織学的方法を用いて非上皮細胞(例えば、筋細胞、神経細胞、分泌細胞など)と容易に区別される。
【0084】
本明細書で使用される「内皮細胞」という用語は、本明細書で使用される場合、管腔を含む身体器官(例えば、血管、腸管、リンパ管または導管など)の内層を形成し得る任意の細胞を指す。通常、内皮細胞は、物理的および化学的保護をもたらし、さらに栄養分またはその他の代謝的に活性な化合物の選択的吸収ももたらす。
【0085】
本明細書で使用される、膵臓に関連した「導管細胞」は、膵臓内のまたは膵臓から出る導管の導管内層を形成する能力を有するかまたは導管内層に由来する任意の細胞を指す。
本明細書で使用される、器官に関連した「膵臓」は、結合組織により結び付いた複数の細胞型の集まりを指し、これら複数の細胞には、腺房細胞、導管細胞および島細胞が包含されるが、これらに限定されない。「腺房」は、十二指腸内の食物を消化するのに必要とされる、リパーゼのような多くの酵素を産生する。腺房により産生された酵素は、導管と呼ばれる細い管により十二指腸へ運ばれる。通常、導管細胞は、結合組織により血管細胞および神経細胞に近接した位置に保持されている。ランゲルハンス島は通常、膵臓の外分泌腺房単位の間に埋め込まれている。内分泌細胞の例は、インスリンの働きを抑えるグルカゴンを分泌するアルファ細胞であり、これに対してベータ細胞は、糖質代謝の調節を助けるインスリンを分泌する。
【0086】
本明細書で使用される「膵臓癌」は、膵臓を含む組織内で発生する、膵管腺癌細胞のような癌を指す。
本明細書で使用される「腺癌」は、腺(空間を取り囲む細胞の集まり)を形成する細胞からなる良性(非癌性)腫瘍を指す「腺腫」に対して、癌性腫瘍を指す。
【0087】
本明細書で使用される「膵管腺癌細胞」は、膵臓の導管内層を形成する能力を有していたまたは導管内層に由来する癌性細胞を指す。膵管腺癌細胞は、腺を形成する膵臓内に見られるか、またはあらゆる転移細胞として器官内に見られるか、またはリンパ系の血流中に見られ得る。
【0088】
本明細書で使用される「被検体中の癌の特徴付け」という用語は、良性、前癌性または癌性の組織の存在、癌の段階および被検体の予後を非限定的に含む、被検体中の癌試料の1つまたは複数の特性の同定を指す。癌は、本明細書に開示される癌マーカーを非限定的に含めた1つまたは複数の癌マーカー遺伝子の発現を同定することにより特徴付けられ得る。
【0089】
本明細書で使用される「幹細胞癌マーカー」という用語は、単独または他の遺伝子と組み合わせた発現レベルが腫瘍化癌細胞の存在と相関している遺伝子またはその遺伝子により発現されるペプチドを指す。その相関関係は、その遺伝子発現の減少または増加(例え
ば、mRNAレベルまたはその遺伝子にコードされるペプチドレベルの増加または減少)と関連し得る。
【0090】
本明細書で使用される「被検体中の癌検出用キット使用のための説明書」という用語は、被検体由来の試料中における癌の検出および特徴付け用キットに含まれる試薬を使用するための説明書を包含する。
【0091】
本明細書で使用される「予後診断を提供する」という用語は、癌の存在(例えば、本発明の診断法により判定されるような)が被検体の将来の健康状態に与える影響に関する情報(例えば、予想される罹患率または死亡率、癌に罹患する可能性および転移のリスク)を提供することを指す。
【0092】
本明細書で使用される「術後腫瘍組織」という用語は、(例えば手術中に)被検体から除去された癌性組織(例えば生検組織)を指す。
本明細書で使用される「癌を有すると診断された被検体」という用語は、検査され癌性細胞を有することが判明した被検体を指す。癌は、生検、X線、血液検査および本発明の診断法を非限定的に含めた適切な任意の方法を用いて診断され得る。
【0093】
本明細書で使用される、膵臓細胞に関連した「非癌性」という用語は、その発生段階および活性に応じた制御可能な細胞増殖および機能的生理を示す細胞を指す。
本明細書で使用される「腫瘍」という用語は、無制御かつ進行性である過剰な細胞分裂により生じる異常な組織の塊を指す。腫瘍は新生物とも呼ばれる。腫瘍は、良性(癌性でない)または悪性であり得る。
【0094】
本明細書で使用される「腫瘍細胞」という用語は、本明細書で使用される場合、任意の無制御な増殖パターンまたは変化した生理機能を示す任意の細胞の塊を指す。腫瘍細胞は、生物体内のあらゆる組織に由来し得る(例えば、膵管腫瘍細胞)。
【0095】
本明細書で使用される「癌」という用語は、無制御で異常な細胞増殖により特徴付けられる100を超える疾患の総称である。癌細胞は、局所的に拡散し得るか、または血管内に侵入し血流およびリンパ系を経て体の他の部分へ拡散し転移を形成し得る。拡散する癌細胞は「悪性」と呼ばれる。
【0096】
本明細書で使用される、哺乳動物における生理的状態に関連した「癌」および「癌性」という用語は、通常、無制御な細胞増殖により特徴付けられる。癌の例として、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫および白血病が挙げられるが、これらに限定されない。このような癌のより詳細な例として、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌腫、肺扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、消化管癌、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝臓癌腫ならびに様々な型の頭部および頸部癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
本明細書で使用される「悪性」という用語は、退形成、近接領域または血管系などへの浸透ならびに転移という特性を有することを指す。
本明細書で使用される「浸潤性」または「転移」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞、特に浸潤性の癌細胞または腫瘍細胞の任意の移動を指す。この用語は、創傷治癒線維芽細胞のような正常な浸潤性の細胞および異常に移動する細胞にも適用される。この用語は、いかなる機構原理にも制限されるべきではないが、このような細胞は、体がそれらを正常に機能するよう十分に「適切な位置に」保つ手段を打ち破ることにより移動すると考えられている。このような細胞が組織または腫瘍内を異常に移動するか、あるい
は組織から逸脱するか、あるいは他の組織に浸潤する場合、それらは「浸潤性」である。
【0098】
本明細書で使用される「細胞の移動」という用語は、ある細胞集団が1つの場所から別の場所へ移動することを指す。このような細胞の移動は、形態形成中の神経冠細胞の移動のような場合は正常であり得、あるいは原発部位から近接領域、血管系へ、そしてそこから元のまたは他の器官の新たなまたは二次部位へ悪性癌細胞が移動する場合は正常であり得ない。
【0099】
本明細書で使用される「インビトロ」という用語は、人工環境ならびに人工環境内で起こる過程または反応を指す。インビトロ環境は、制御された実験室環境からなるが、これに限定されない。
【0100】
本明細書で使用される「インビボ」という用語は、天然環境(例えば、生体内または細胞内)ならびに天然環境内で起こる過程または反応を指す。あるいは、「インビトロ」という用語は、実験用ペトリ皿内での実験のような、所与の実験を生体外の制御された環境内で行うことを指す。
【0101】
本明細書で使用される、ペプチドリガンドに関連した「阻害する」という用語、例えば「悪性細胞の移動を阻害するペプチドリガンド」または「癌細胞の増殖を阻害するペプチドリガンド」は、それぞれ移動または増殖の部分的または全体的な阻害を指す。
【0102】
本明細書で使用される、治療に関連した「患者における癌の縮小」という用語は、患者における癌細胞数の減少、患者における癌細胞増殖の低下、患者における癌細胞転移の減少のための任意の治療を指し、癌症状の軽減または患者の寿命延長のための任意の対応形式を包含する。
【0103】
本明細書で使用される「ELISA」という用語は、酵素結合免疫測定法を指す。ELISAを行うための数多くの方法および応用法が当該分野で公知であり、多くの情報源にて提供されている(例えば、Crowther,「Enzyme−Linked Immunosorbent Assay(ELISA)」,in Molecular Biomethods Handbook,Rapleyら,[eds.],pp.595−617,Humana Press,Inc.,Totowa,N.J.[1998];HarlowおよびLane(eds.),Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory
Press[1988];ならびにAusubelら(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,Ch.11,John Wiley & Sons,Inc.,New York[1994];ならびにNewtonら,(2006)Neoplasia.8:772−780を参照されたい)。本発明のいくつかの実施形態において、「直接ELISA」のプロトコールが提供され、ここでは、最初に細胞、細胞溶解物または単離されたタンパク質のような標的結合分子を、マイクロタイタープレートウェルに結合させて固定化しておく。別の実施形態において、「サンドイッチELISA」が提供され、ここでは、予めマイクロタイタープレートウェルに結合させておいた抗体で標的結合分子を捕捉することにより、これを基質を付着させる。ELISA法では、蛍光標識したリガンドまたは抗体−酵素コンジュゲートの蛍光検出を用いて固定化されたリガンド−受容体複合体(結合)を検出し、ここでは、抗体がファージ粒子のような対象とする抗原に対して特異的であり、一方、酵素部分が、呈色したまたは蛍光を発する反応産物の生成により可視化および定量化を可能にする。ELISAで一般に用いられるコンジュゲートされた酵素として、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコアミラーゼまたはO−ガラクトシダーゼが挙げられる。発色強度は、反応ウェルに存在する抗原の量に比例する。
【0104】
本明細書で使用される「医薬組成物」は、ある配列または本発明の配列を含む組成物である。医薬組成物は、担体、薬学的に許容される添加剤などをさらに含み得る。「医薬組成物」および「治療用組成物」という用語は、本明細書において互換的に使用される。医薬組成物は、いかなる特定の担体または添加剤またはその他の成分にも限定されないものとする。
【0105】
本明細書で使用される「治療剤」という用語は、細胞機能を阻害する、細胞複製を阻害する、または哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞を殺すことができる、化学物質または薬物またはタンパク質を指す。
【0106】
本明細書で使用される、「キット」という用語は、試薬、特に本発明のペプチドリガンドとその他の材料との組合せに関して使用される。キットは、試薬、例えばファージディスプレイペプチド、単離ペプチドリガンド、任意の1つの蛍光マーカーとコンジュゲートされたペプチドリガンド、ナノ粒子、MRI用コンジュゲート、治療用コンジュゲート、抗体、対照タンパク質などおよび検査容器(例えば、マイクロタイタープレートなど)を含み得ることが意図される。「キット」という用語は、試薬および/またはその他の材料の特定の組み合わせに限定されないものとする。
【0107】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明の属する分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本発明で使用するために、方法および材料が本明細書に記載されているが、当該分野で公知である他の適切な方法および材料も使用され得る。材料、方法および実施例は、単に例示的なものであって、限定することを意図したものではない。本明細書で言及される刊行物、特許出願、特許、配列、データベース登録物およびその他の参照物は、その内容全体が参照により援用される。矛盾が生じた場合は、定義を含めた本明細書が統制する。
【0108】
本発明のその他の特長および利点は、以下の詳細な説明および図からならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1A】選択されたクローンの親和性(表示のクローンのELISAアッセイにおける平均吸光度値)および特異性(クローンの腫瘍細胞に対する親和性と正常導管細胞に対する親和性との比)を表すヒートマップである。データは、高順位(緑色)から低順位(赤色)へと表示されている。
【図1B】フローサイトメトリー(FACS)により検証された、クローン27の膵管腺癌細胞に対する特異性を表すヒストグラムである。FITC−標識クローン27がマウスPDAC細胞と特異的に結合したことを示している(FITC−27をPDACまたは正常マウス導管細胞と共にインキュベートし、次いでFACSにより解析した)。
【図1C】FITC−27またはFITC−無関係ファージクローン(ネガティブ対照)と表示の細胞との結合のFACS解析を表す棒グラフである。プロットされているデータは、FACS解析から得られた平均蛍光単位である。
【図2】ヒトおよびマウス膵管腺癌細胞(PDAC)のクローン27によるインビボ検出の例を表す一連の15枚のパネルである。フルオレセインイソチオシアナート(FITC)標識クローン27または野生型ファージ(非ペプチド挿入)を表示の組織(マウスおよびヒト)の凍結切片と共にインキュベートし、膵臓切片をヘマトキシリン/エオシン(H&E)クローン27(PDAC−27)で染色した。
【図3】(A)−(C)それぞれクローン−27のインビボ検証の例を表す4枚のパネルである。野生型(3A);29週齢のKras/p16+/−(3B);および12週齢のKras/p53L/+(3C)のマウスにシアニン5.5標識ファージクローン27およびSYTOXグリーン(非特異的な細胞標識剤)を注射し、次いで共焦点生体顕微鏡法によりイメージングを行った。相関的組織学:生体内イメージング実験からの膵臓を最適切削温度(O.C.T.)コンパウンドで包埋して、凍結し、抗M13抗体(3列目)ヘマトキシリン/エオシン(H&E)(4列目)で染色した。黒枠は、PanIN(3B)またはPDAC(3C)に相当し、抗M13の顕微鏡写真では拡大されている。3Bおよび3C(HE)中の上方の枠および抗M13抗体顕微鏡写真中の挿入図(3列目および4列目)は、健常な隣接部位に相当する。
【図4A】2枚のパネルである。左のパネルが表すのは、スルホ−SAEDコンジュゲートファージクローン27およびビオチン修飾ファージクローン27あるいは対照ファージとインキュベートしたマウスPDAC細胞の銀染色ゲルであり、光に当て、溶解物をストレプトアビジンコーティングしたビーズと共にインキュベートしたものである。沈降したタンパク質を(ジチオスレイトール)DTTで溶出し、次いでSDS−PAGEゲル上で泳動した。右のパネルはファーウェスタンであり、PDAC溶解物をSDS−PAGEゲル上に負荷し、次いで転写して、クローン−27または対照(非挿入)ビオチン化ファージで解析したものである。
【図4B】トリプシン消化産物の一覧表である。4Aからクローン27でアフィニティー精製されたタンパク質に対応するバンドをゲルから切り出し、トリプシンで消化して、質量分析法により解析した(配列番号9〜23)。
【図4C】4Aからアフィニティー精製されたタンパク質のブロットである。タンパク質を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミド(SDS)PAGEゲル上で泳動し、PVDF膜に転写して、プレクチン−1の存在に関して解析した。
【図4D】293T細胞、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、マウスPDAC細胞、マウス正常導管細胞、Paca−2細胞(ヒトPDAC)および正常ヒト導管細胞の一連の6つのブロットである。これらの細胞の細胞成分分画を行い、その成分をプレクチン−1の存在に関してプローブした。
【図4E】野生型(左)、29週齢のKras/p16+/−マウス(中央)および12週齢のKras/p53(右)マウスからの膵臓組織の一連の3枚の顕微鏡写真である。組織をOCTで包埋し、凍結して、抗プレクチン−1抗体で染色した。
【図4F】競合実験の結果を表すヒストグラムである。マウスPDAC細胞をFITC標識クローン27ならびにプレクチン−1またはビークルと共にインキュベートし、次いでFACSによる解析を行った。
【図5A】PTPとNPとのコンジュゲーションの模式図である。対照−NPは、対照ペプチドのPTPへの置換と同じ方法で合成した。
【図5B】PTP−NP(上)または対照−NP(下)ならびにAF750−標識血液プール剤を用いてイメージングを行った、初期膵臓病変の共焦点生体顕微鏡画像の一連の4つの例である。
【図5C】膵臓の異なる領域におけるPTP−NPの分布を表す膵臓蛍光の一対の低倍率写真である。白色光オーバーレイは解剖学的相関を表す(左)。点線は膵臓の輪郭を描いたものである。
【図5D】PTP−NPおよび対照−NPの生体内分布を表したヒストグラムである。
【図6A】注射された9週齢のKras/p53L/+動物の腹腔の解剖学的詳細を表す白色光画像である。
【図6B】血管系とは異なる局所的取込みを表した、PTP−NP(濃灰色)およびAF750−標識血液プール剤(淡灰色)を用いた膵臓初期病変の共焦点生体顕微鏡画像である。
【図6C】膵臓の異なる領域におけるPTP−NPの分布を表わす膵臓蛍光の低倍率写真である。
【図6D】解剖学的相関を表す白色光オーバーレイである。点線は膵臓の輪郭を描いたものである。
【図7】(A)−(C)磁気共鳴イメージング(MRI)および相関的組織学の例を表す図である。7A:9週齢のKras/p53L/+マウス由来の膵臓のエキソビボMRIから得られた3つの隣接する切片は、病巣のナノ粒子取込み(黄色矢印)を示し、これは関連するヘマトキシリン/エオシン(H&E)切片に見られる腫瘍(7B)と対応するが、導管化生または正常な膵臓部位(ラベル部分)とは対応しない。(7C)隣接切片の蛍光顕微鏡法により、Cy5.5−標識プレクチン−1標的化ペプチドコンジュゲートナノ粒子(PTP−NP)の取込みが、腫瘍部位(左)においては示されたが、隣接組織(右)においては示されなかった。
【図8A】Cy5.5/ナノ粒子値の定量に用いたCLIO−Cy5.5の吸光度分光法を表す線グラフである。
【図8B】光散乱法によるCLIOのサイズ分布の点グラフである。
【図8C】ペプチド/ナノ粒子値の定量に用いたPTP−NP−Cy5.5の吸光度分光法の結果を表す線グラフである。その寄与分を未反応CLIOを基準として差し引いた、500nm未満のナノ粒子によるバックグラウンド吸光度に注目されたい。
【図9】ELISAによるファージクローン検証の例を表す棒グラフである。選択および除去後、30の個々のファージクローンを採取して増幅し、ELISAにより親和性および特異性に関して解析した。
【図10A】Kras/p53L/L内に同時に注射し、腫瘍結合性を共焦点生体顕微鏡法により解析した、Cy5.5−標識ファージクローン27およびRITC−標識ファージクローン15の一連の3枚の顕微鏡写真である。
【図10B】Kras/p53L/ 内に注射し、共焦点生体顕微鏡法により解析した、無関係ファージクローンの顕微鏡写真である。
【図10C】野生型マウス内に注射し、共焦点生体顕微鏡法により解析した、Cy5.5−標識ファージクローン27の顕微鏡写真である。
【図11A】ヒトプレクチン−1のアミノ酸配列の例である、配列番号24を表した図である。
【図11B】ヒトプレクチン−1のアミノ酸配列の例である、配列番号24を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0110】
本発明は、少なくとも部分的には、癌の診断および治療のための、膵管腺癌(PDAC)細胞バイオマーカーのような癌細胞バイオマーカーおよび結合分子を提供するための組成物および方法に関する。「利用可能な」プロテオームおよびPDAC同定用のプレクチン−1のようなバイオマーカーを選択するためのその使用法が開示される。ペプチドリガンドとコンジュゲートされた磁性蛍光ナノ粒子を含むイメージング組成物およびPDAC同定のためのその使用法が記載されている。最後に、細胞毒性剤と結合したプレクチン−1と結合する抗体およびペプチドリガンドを含む治療用組成物ならびに癌(例えば、PDAC)治療のためのその使用法も本明細書に記載されている。
【0111】
具体的には、本明細書に記載のように、ファージディスプレイスクリーニング法およびマウスモデルから単離された初期継代PDAC細胞株を使用して、ヒトおよびマウス両方のPDAC細胞を正常膵管細胞から区別するペプチドを同定した。
【0112】
ファージディスプレイペプチドを用いて同定されたペプチドリガンド、そして単離ペプチドと磁性蛍光ナノ粒子とのコンジュゲートにより開発された標的化イメージング剤が本明細書に記載され、本明細書に記載の結果は、これらの薬剤が、新生腫瘍をインビボおよびインビトロにおいて効率的に検出することが可能であることを実証する。このアプローチでは、ファージディスプレイペプチドの結合パートナーが、過剰発現された細胞タンパク質の広範なリストではなく、「利用可能な」プロテオームのスナップショットを示す。これらの方法を用いて、本発明者らは、新規なPDACバイオマーカーとしてプレクチン
−1を同定した。つまり、プレクチン−1の発現レベルは、癌細胞において正常な細胞に比べやや上方制御されており、さらにこのタンパク質は癌性細胞の細胞膜に異常に分布しているため、本明細書に記載のようなイメージング剤でのプローブに利用できる。
【0113】
本明細書に記載のように、膵臓導管の正常な粘液性化生のバックグラウンド中のPDAC細胞を同定することが可能である、マルチモーダルナノ粒子ベースの標的化イメージング剤(本明細書では「PTP−NP」に言及する)が開発された。いくつかの実施形態において、これらのイメージング剤は、高リスク患者におけるMRIおよび内視鏡法の両方での使用が意図される。
【0114】
I.膵臓癌細胞の同定法
膵臓癌は、米国における癌に関連した死亡の1つの主な原因である。膵臓癌が初期に発見された場合、腫瘍の外科的除去により治癒がもたらされる場合がある。残念ながら、この癌は、その初期段階において何らかの症状を引き起こすことは稀であり、それが最終的に引き起こす症状としては、黄疸、腹痛、背部痛および体重減少が挙げられるが、これらは他の病気においても見られるため、早期診断は困難である。
【0115】
膵臓の検査には磁気共鳴イメージング(MRI)およびその他の非侵襲性イメージング技術が用いられるが、膵臓腫瘍がMRIスキャンに現れる大きさに達するまでには、腫瘍がすでに拡散してしまっている場合が多い。その結果、ほとんどの患者において、診断が下されるまでには膵臓癌が進行しているため、手術はもはや有効ではない。こうした患者は放射線療法および化学療法を受けるが、これらの治療で治癒することは稀であり、ほとんどの患者が診断から1年以内に死亡する。
【0116】
したがって、膵管腺癌(PDAC)は困難な臨床的問題と考えられることが多く、通常、診断時には転移を伴った状態で見つかり、既存の治療法に対する強い抵抗性を示す。現在の検出法は信頼性がないため、新規なPDAC検出バイオマーカーの同定を目標として、血清プロテオミクス、腫瘍組織の発現プロファイリング、膵液の遺伝子解析およびコンビナトリアルケミストリーを用いた方法を含む様々なアプローチを用いた多くの継続的な努力が現在行われている(例えば、Goggins,J.Clin.Oncol.23:4524−4531(2005);Misekら,Methods Mol.Med.103:175−187(2005);Bloomstonら,Cancer Res.66:2592−2599(2006);Yatesら,Anal.Chem.67:1426−1436(1995);およびJoyceら,Cancer Cell 4:393−403(2003)を参照されたい)。
【0117】
より優れた診断用および治療用分子を開発するための初期研究では、腫瘍認識および薬物送達のための抗体使用に焦点が当てられていた(例えば、Folliら,Cancer
Res.54:2643−2649(1994);Neriら,Nat.Biotechnol.15:1271−1275(1997)を参照されたい)。しかし、分子イメージングの場合の抗体標的化は、多くの場合、望ましい薬物動態をもたず、標的対バックグラウンド比に制限があり、さらに、大幅に改変しない限り磁気共鳴(MR)検出が可能なイメージング剤を保持する能力が低い。ペプチドは標的化部分として有用であり、望ましい特異性、親和性および薬物動態を選択するために、様々なハイスループットスクリーニング法が用いられている。イメージング剤として損なわれるのは、ペプチドは一般に血中半減期が非常に短く(約5分)、その多価の相当物よりも親和性が低い点である。したがって、マルチモーダルナノ粒子と標的化ペプチドとの組合せは、最適化された薬物動態を有するプラットフォームとして設計することができ、薬物動態は、多価ペプチドの付着を可能にし、標的化可能なほど小さく、さらに細胞内に取り込まれて細胞内トラップによるシグナル増幅を生じさせることが可能であるため、こうした問題を回避し得る(例えば
、Kellyら,Circ.Res.96:327−336(2005)を参照されたい)。
【0118】
さらに、PDACが通常は進行期に見つかることおよびそれに付随して適切な組織標本が不足していることにより、PDACにおける初期の分子的変化の研究には大きな課題がある。したがって、今ある発見は、Kras活性化ならびにp53またはInk4a/Arf腫瘍抑制因子の欠失を含めたヒト疾患の特徴遺伝子の変異を有する、一連の関連する遺伝子操作されたPDACマウスモデルを使用したものである(Bardeesyら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.103:5947−5952(2006);およびAguirreら,Genes Dev.17:3112−3126(2003)を参照されたい)。これらのモデルにおける腫瘍は、ヒトにおけるPDACを明確にする、特徴的な多段階の病理組織学的進行度(前駆病変膵上皮内新生物(PanIN)(Hanselら,Annu.Rev.Genomics Hum.Genet.4:237−256(2003))から転移性癌まで)を示し、生物学的および前臨床的研究の両方にとって扱い易いモデル系を提供する(Bardeesyら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.103:5947−5952(2006))。これらのマウスモデルにより、初代細胞株が新生PDACから得られた。これら初期段階の癌細胞株は、野生型マウス由来の正常膵管細胞(Schreiberら,Gastroenterology 127:250−260(2004)に記載)とともに、コンビナトリアルケミストリーに基づくアプローチを用いたバイオマーカーおよびイメージング剤のスクリーニングを容易にした(本明細書の実施例を参照されたい)。
【0119】
これらの制限を克服するために、本発明の方法は、より早期の検出を可能にして介入的治療の開発を導く、初期PDACに対する新規な分子マーカーおよびイメージングプローブの使用を含む。ヒトおよびマウス両方のPDAC細胞を正常膵管細胞からインビトロで区別するペプチドを同定するための、ペプチドファージディスプレイおよびマウスモデルから単離された初期継代PDAC細胞株の使用が本明細書に記載されている。イメージング剤の作成に加え、このアプローチで同定された表面タンパク質の結合パートナーは、異常な細胞中のプロテオームのスナップショットを示し、疾患進行に重要な土台となるシグナル伝達経路の描写に有用であり得る。さらに、こうしたイメージングプローブは、膵臓癌およびその他の癌の効率的治療を提供するものと考えられる。本明細書に記載の方法は、拡散する前に初期段階を含めた任意の段階にある腫瘍および膵臓癌細胞の検出に使用し得る。
【0120】
PDAC細胞に対するバイオマーカーが報告されたが、これらのマーカーは、他の細胞型と広範囲にわたり重複すると思われる点、ナノ粒子とコンジュゲートされない点、またはプレクチン−1ではないという点が問題であった。PDAC同定のための数多くの試みが刊行物、例えば、膵臓癌の検出法および診断法において記載され、インビボおよびインビトロ両方において癌性細胞と正常細胞を区別する膵臓関連遺伝子の発現レベルの判定、膵臓癌治療用の治療剤のスクリーニング法ならびに膵臓癌の治療法(Nakamuraら,「Method For Diagnosing Pancreatic Cancer,」米国特許出願公開第2005/0260639号)、少なくとも1つのバイオマーカーの測定およびその測定値と癌の状態との相関による被検体における膵臓癌の状態の認定方法(Chanら,「Identification Of Biomarkers For Detecting Pancreatic Cancer,」米国特許出願公開第2005/0095611号)が含まれるが、これらに限定されない。これらの参考文献はいずれもプレクチン−1を記載していない。さらに、異常な細胞増殖、具体的には、膵臓癌の存在または膵臓癌に対する罹病性の同定のための方法およびシステムにおいては、Affymetrix GeneChip解析により膵臓癌治療のための候補作用物質が同定される(Hrubanら,「Pancreatic Cancer Diagn
osis And Therapies,」米国特許出願公開第2003/0180747号)。この最後の参考文献では、膵臓癌細胞において正常な膵臓細胞と比べ特異的に過剰発現される97個の遺伝子の1つとしてプレクチン−1が同定されたが、この参考文献では、プレクチン−1の異常な細胞膜分布またはペプチドによるプレクチン−1の検出については論じられていない。さらに、膵臓腺癌細胞同定のためにペプチドマーカーを用いるこれまでの試みが公開されたが、そこでは、PYY3−36およびYPIKPEAPGEDASPEELNRYYASLRHYLNLVTRQRY(配列番号25)を含む36アミノ酸残基のペプチドアミドおよびそのフラグメントである、ペプチドチロシンチロシン(「YY」または「PYY」または膵ペプチド「PP」)の合成ペプチド、特にペプチドYY14−36(米国特許第5,574,010号)が膵臓癌細胞への高い特異的結合を示し、癌細胞に蛍光色素を送達した。ビオチン化ペプチドを用いてアビジン−色素複合体を癌細胞に送達する方法により、膵臓腫瘍のイメージングおよび治療剤の送達が可能になるであろうと考えられてはいたが、示されなかった。しかし、神経細胞同定のためのこれらのおよび類似のペプチドの使用が、さらなる刊行物に記載されており、肥満症の診断および治療(国際公開第2004/056314号)ならびに癌(例えば、結腸腺癌、膵臓腺癌または乳癌)治療の両方に使用された。さらに、Y2受容体としてPYYに対する受容体が報告されており(例えば、米国特許第5,574,010号;同第5,604,203号;同第5,696,093;同第6,046,167号;Gehlertら,Proc.Soc.Exp.Biol.Med.218:7−22(1998);Sheikhら,Am.J.Physiol,261:701〜15(1991);Fournierら,Mol.Pharmacol.45:93−101(1994);Kirbyら,J.Med.Chem.38:4579−4586(1995);Ristら,Eur.J.Biochena 247:1019−1028(1997);Kirbyら,J.Med.ClzeTn.36:3802−3808(1993);Grundemarら,Regulatory Peptides 62:131−136(1996);米国特許第5,696,093号(PYYアゴニストの例)および米国特許第6,046,167号;これらはすべてその内容全体が参照により本明細書に援用される)。しかし、これら参考文献はいずれも、膵臓癌細胞同定のためのプレクチン−1を認識したペプチドリガンドの使用は開示していない。
【0121】
本明細書に記載のように、ファージディスプレイを用いて、マウスおよびヒトPDAC細胞を正常膵管細胞からインビトロで区別するペプチドを同定した。次いで本発明者らは、PDACに対する高い親和性および特異性を有する2つのペプチドを磁性蛍光ナノ粒子(CLIO−VT680)とコンジュゲートし、そして、これらの薬剤が、関連するトランスジェニックマウスモデル中の新生腫瘍および前腫瘍性病変を、共焦点生体顕微鏡法(Olympus IV100)および光学/MRイメージング(OV−100,Bruker Pharmascan)により効率的に検出することができることを実証する。相関的な組織学により、PDAC標的化剤の特異的な時間的局在が確認された。さらに、このアプローチにより同定されたペプチド結合パートナーは、異常な細胞におけるプロテオームのスナップショットおよび潜在的なPDACバイオマーカーも示した。アフィニティクロマトグラフィーを用いて、いくつかのファージディスプレイペプチドに対する結合パートナーを同定し、具体的にはクローン27および15に対するそれらのバイオマーカーとしての有効性を実証した。これら特異的かつ高感度なプローブは、ヒトにおけるPDACの診断および管理において臨床的有用性を有するものと考えられる。
【0122】
II.膵臓癌細胞プロテオーム中の「利用可能な」受容体同定のためのペプチドリガンド
差次的なタンパク質のプロセシングおよび/または輸送は、プロテオミクスアプローチを用いて同定することが可能であり、cDNA発現データのみ調べるかまたは細胞全体のプロテオミクス法を用いた場合には見逃す可能性のある潜在的なクラスのバイオマーカー
を示す。例えば、本明細書に記載の方法により同定された結合パートナーのクローン27およびクローン15は、癌バイオマーカーを示し、PDAC発病の一因である異常な分子経路の解明に役立ち得る。
【0123】
クローン27により、PDACの潜在的な新規バイオマーカーとして膜局在プレクチン−1の同定が可能となった。本明細書に記載のように、プレクチン−1レベルは正常膵管細胞では低いが、PanINではプレクチン−1の発現が上方制御され、PDACでは高い状態が続く。プレクチン−1は、正常な線維芽細胞においては明確な細胞質内および核内局在性を示したのに対し、PDACにおいては細胞膜上での異常な発現が観察された。いくつかの実施形態において、タンパク質上方制御、差次的輸送の機構およびバイオマーカーが疾患進行の一因であるか否かが、癌細胞のバイオマーカー診断および治療においてさらに使用されることが考えられる。この点に関して注目すべきことに、最近の刊行物により、プレクチン−1が上皮細胞の形質転換中に膜へリクルートされる可能性があることが明らかにされている(Raymondら,Mol.Biol.Cell 18:4210−4221(2007))。プレクチン−1の細胞内局在の変化は、自己免疫状態である腫瘍随伴性天疱瘡において、およびそれに関連したリンパ増殖性新生物であるキャッスルマン病においても観察される(Ahoら,J.Invest.Dermatol.113:422−423(1999))。プレクチン−1は、シグナル伝達における多くの重要な役割もち、Rho活性に影響を与え(Andraら,Genes Dev.12:3442−3451(1998))、タンパク質キナーゼC(PKC)(Osmanagic−Myersら,J.Biol.Chem.279:18701−18710(2004))およびAMP活性化タンパク質キナーゼシグナル伝達経路(Gregorら,J.Cell Sci.119:1864−1875(2006))に関与するタンパク質のための足場の役割をする。したがって、PDACにおけるプレクチン−1は、細胞の移動、極性およびエネルギー代謝を調節するシグナル伝達経路に影響を与えている可能性がある。
【0124】
膵臓におけるプレクチン−1発現
プレクチン−1は、高分子量のタンパク質(500kDa)であり、細胞骨格を細胞膜および核膜に固定することに加え、中間径フィラメントを微小管およびマイクロフィラメントと結びつけている(Sonnenbergら,Exp.Cell.Res.313:2189−2203(2007)で概説されている)。
【0125】
本明細書に記載のように、プレクチン−1レベルは、正常膵管細胞では低いが、PanINではプレクチン−1の発現が上方制御され、PDACでは高い状態が続く。プレクチン−1は、正常な線維芽細胞においては明確な細胞質内および核内局在性を示したのに対し、PDACにおいては細胞膜上での異常な発現が観察された。プレクチン−1の細胞内局在の変化は、自己免疫状態である腫瘍随伴性天疱瘡において、およびそれに関連したリンパ増殖性新生物であるキャッスルマン病においても観察された(Ahoら,J.Invest.Dermatol.113:422−423(1999))。
【0126】
プレクチン−1タンパク質の上方制御、差次的輸送および疾患進行への関与の機構の研究が、考えられる重要な実験である。上述のように、プレクチン−1は、シグナル伝達において重要な役割をもつ。したがって、PDACにおけるプレクチン−1は、発癌に関連した細胞の移動、極性およびエネルギー代謝を調節するシグナル伝達経路に影響を与えている可能性がある。
【0127】
さらに、非癌性の対応物と比較した様々な膵臓癌の組織および細胞におけるプレクチン−1の有意な過剰発現が刊行物に記載されおり(Hrubanら,「Pancreatic Cancer Diagnosis And Therapies,」米国特許出願
公開第2003/0180747号など)、そこでは、異常な細胞増殖、具体的には膵臓癌または膵臓癌感受性の存在を同定するための方法およびシステムが記載されている。この参考文献では、膵臓癌治療のための候補作用物質の同定法がさらに開示されている。Affymetrix GeneChip解析により、膵臓癌細胞において正常な膵臓細胞と比べ特異的に過剰発現される97個の遺伝子の1つとして、プレクチン−1が同定された。Iacobuzio−Donahueら(Am.J.Pathol.160(4)1239−1249(2002))は、摘出された膵臓癌組織および膵臓癌細胞株において正常な膵臓および胃腸管粘膜細胞に比べ特異的に発現される遺伝子を同定するための、Affymetrix GeneChipアレイを開示している。表1では、膵臓癌において少なくとも5倍(6.69倍)発現される97個の既知の遺伝子の1つとして、プレクチン−1が同定されている。Satoら(Am.J.Pathol.164(3):903−914(2004))は、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMNs)のAffymetrix GeneChip解析を開示しており、そこでは、非腫瘍性膵管上皮に比べ有意に過剰発現される673個の転写産物の1つとしてプレクチン−1が同定されている。最後に、Johnsonら(Molecular Carcinogenesis 45:814−827(2006))は、DNAアレイ技術を用いて、膵臓腫瘍(11のPDAC)において非悪性膵臓組織(14の悪性巨大膵管標本)と比べ特異的に発現される遺伝子を同定している。Satoら(同上)の表2に掲載されている結果により、非癌性組織と比較したPDAC組織におけるプレクチン−1過剰発現(4.5倍)に関するこれまでの知見が裏付けられた。さらに、プレクチンに対する潜在的な天然のリガンドが、プレクチン−ペリプラキン複合体の免疫沈降に抗プレクチン抗体を用いて同定された(Boczonadiら,Experimental Cell Research 313(16):3579−3591(2007))。しかし、これらの参考文献では、プレクチン−1の異常な細胞膜分布あるいは新生PDAC検出のためのペプチドによるまたはプレクチン−1に特異的な蛍光標識ペプチドプローブ(例えば、ナノ粒子コンジュゲート)を使用したプレクチン−1の検出については論じられていない。
【0128】
III.癌細胞バイオマーカー源としての「利用可能な」プロテオーム
本明細書に記載のように、ファージディスプレイ法を用いて、PDAC細胞上の細胞表面抗原と特異的に結合するペプチドのスクリーニングを行った。これらのスクリーニングにより、正常膵管細胞からPDAC細胞をインビトロで区別するモチーフが得られ、これによりプロテオーム解析においてPDACの新規バイオマーカーとしてのプレクチン−1が同定された。インビボイメージングに対するこれらの有用性を評価するために、プレクチン−1標的化ペプチド(PTP)を磁性蛍光ナノ粒子とコンジュゲートした。共焦点生体顕微鏡法およびMRIと共にこれらのナノ粒子により、遺伝子操作されたマウスモデル中の小型のPDACおよび前駆病変を検出することができた。本発明者らは、ペプチドリガンドであるクローン27に基づく特異的イメージングプローブを開発し、ヒトにおけるPDACの診断、管理および治療での臨床的有用性が考えられる膵臓癌細胞のバイオマーカーとして、プレクチン−1を発見した。
【0129】
ファージディスプレイを用いて、マウスおよびヒトPDAC細胞を正常膵管細胞からインビトロで区別するペプチドを同定した。高い親和性および特異性を有する2つのペプチドを磁性蛍光ナノ粒子(CLIO−VT680)とコンジュゲートし、これらが、関連するトランスジェニックマウスモデル中の新生腫瘍および前腫瘍性病変を、共焦点生体顕微鏡法(Olympus IV100)および光学/MRイメージング(OV−100,Bruker Pharmascan)により効率的に検出することができることを実証した。相関的な組織学により、PDAC標的化剤の特異的な時間的局在が確認された。さらに、このアプローチにより同定されたペプチド結合パートナーは、異常な細胞におけるプロテオームのスナップショットおよび潜在的なPDACバイオマーカーも示した。アフィニティクロマトグラフィーを用いて、いくつかのペプチドに対する結合パートナーを同定
し、それらのバイオマーカーとしての有効性を実証した。これら特異的かつ高感度なプローブは、例えば、ヒトでのPDAC診断および管理において有用である。
【0130】
同定された結合分子の配列を決定する方法も本明細書に記載さている。例えば、結合分子が発現ライブラリー中で産生された場合、リガンド−標的受容体結合アッセイのようなスクリーニングで同定された結合分子を発現する選択されたクローンから、コード核酸を単離し得る。次いで、標的と結合したウイルス粒子のコード核酸を、当業者に公知の方法を用いて配列決定し得る。
【0131】
また、ペプチドリガンドのような結合分子により選択的に結合されるバイオマーカーの特徴付けのための方法も本明細書に記載されている。バイオマーカーに対して選択的な結合パートナー(例えば、ペプチドリガンド)が一度同定されれば、次いでそのバイオマーカーを、例えば、当該分野で公知のアフィニティー法により単離して特徴付け得る。この特徴付けは、スクリーニングで使用されるバイオマーカーが十分に特徴付けられていない場合に有用であり得る。バイオマーカーの特徴付けには、ゲル電気泳動による見かけの分子量の測定のような技術が含まれる。バイオマーカーの特徴付けに適用可能なその他の方法として、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、質量分析法あるいはバイオマーカーの物理的、生化学的または機能的特性に関する情報、例えば、配列および独自性を提供するその他の方法が挙げられる。このようなバイオマーカーの特徴付けのための数多くの方法が利用可能である。
【0132】
好適な実施形態において、バイオマーカーは、腫瘍細胞の細胞表面に由来する。細胞表面分子は、例えば、放射性同位元素またはビオチンのような検出可能部分あるいは蛍光標識により標識され得る。この標識により、知る必要のある唯一の特徴が、それが細胞表面上に存在することであるような、バイオマーカー源が提供される。実施例に記載のように、癌細胞ペプチドリガンドを、細胞表面ペプチドを発現するバクテリオファージをFITCで標識して調製し、癌細胞表面ポリペプチドに対して選択的な結合分子を同定するために使用した。他の細胞または細胞内区画由来のバイオマーカー群を、同様に本発明の方法で使用して、最初の群内の少なくとも1つのバイオマーカーに対して選択的親和性を示す結合パートナーペプチドリガンドを得ることができる。したがって、本発明の方法は、疾患の治療または診断用に選択的結合親和性が必要とされる多種多様なバイオマーカー群に適用可能である。
【0133】
本発明の方法は、多様な結合分子群を固体支持体に選択的に固定化することを含む。選択的固定化のために、分子群を構成する結合分子に固有の特徴を利用して選択的固定化を提供するか、あるいは特異的特徴を含むように分子を操作して選択的固定化に使用する。例えば、結合パートナー自体が疎水性の化学基またはドメインを含んでいてもよく、あるいは結合パートナーを、それをプラスティックのような疎水性の固体支持体に固定化する疎水性の化学基またはドメインと融合していてもよい。別の例では、固体支持体を、結合パートナー群を構成する結合分子のみと結合するおよびそれらのみを選択的に固定化することができるように、化学的部分または生体分子でコーティングし得る。例えば、固体支持体を、結合分子に共通なドメインまたは配列と選択的に結合する生体分子でコーティングし得る。リンカーまたはテザーとしてのこのような生体分子の使用は、それらがバイオマーカーとペプチドリガンドとの結合を阻害しないように選択されるべきである。
【0134】
IV.遺伝子操作PDACマウスモデル
PDACが通常は進行期に見つかることおよびそれに付随して適切な組織標本が不足していることにより、PDACにおける初期の分子的変化の研究には大きな課題がある。したがって、本発明者らは、Kras活性化ならびにp53またはInk4a/Arf腫瘍抑制因子の欠失を含めたヒト疾患の特徴遺伝子の変異を有する、一連の関連した遺伝子操
作PDACマウスモデルを利用することにした(Bardeesyら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.103:5947−5952(2006);およびAguirreら,Genes Dev.17:3112−3126(2003))。これらのモデルにおける腫瘍は、ヒトにおけるPDACを明確にする、特徴的な多段階の病理組織学的進行度(前駆病変膵上皮内新生物(PanIN)(Hanselら,Annu.Rev.Genomics Hum.Genet.4:237−256(2003))から転移性癌まで)を示し、生物学的および前臨床的研究の両方にとって扱い易いモデル系を提供する(Bardeesyら,同上)。本発明者らは、これらのマウスモデルから、新生PDAC由来の初代細胞株を作出することができた。これら初期段階の癌細胞株は、野生型マウス由来の正常膵管細胞(Schreiberら,Gastroenterology 127:250−260(2004)に記載)とともに、コンビナトリアルケミストリーに基づくアプローチを用いたバイオマーカーおよびイメージング剤のスクリーニングを容易にする。
【0135】
遺伝子操作ヒト癌マウスモデルは、ヒト疾患の多くの分子的、生物学的および臨床的特性を効果的に再現する(Bardeesyら,(2006)同上;Aguirreら,(2003)同上)。
【0136】
マウスおよびヒト癌に関する最近のゲノム研究では、黒色腫およびリンパ腫傾向のあるマウスの転移可能性に関連した再発性染色体異常の同定における効率的なフィルターとして、異種間でのインビボ解析が役立ち得ることが立証されている(Kimら,Cell 125:1269−1281(2006);Maserら,Nature 447:966−971(2007))。このようなアプローチを用いて、ヒト前立腺癌細胞同定のために15−mer結合プチドリガンドが、インビボスクリーニングにより得られた(Newtonら,Neoplasia 8:772−780(2006))。具体的には、Newtonは、15アミノ酸ペプチドをディスプレイするファージクローンを記載しており、そこでは、ファージクローンを近赤外フルオロフォア(NIRF)であるAlexaFluor680(AF680)で標識し、このファージ10TU/ml(形質導入/形質移入単位)をマウスに注射して、マウス中のヒト前立腺癌の光学イメージングに使用した。
【0137】
本明細書に記載の研究は、特定の発達段階の癌細胞を提供するためにさらに開発されたマウス−ヒト癌モデルの有用性を示す。さらに、ファージクローンスクリーニング法を改変して、より小型の7−merペプチドをディスプレイするファージに関するアッセイの開発ならびに特定段階の癌細胞により発現される分子と結合するペプチドリガンドの配列決定および単離のための前述ファージの使用にまで拡張した。7−merペプチドをディスプレイするこれらのファージおよびファージ由来の単離7−merペプチドリガンドを分子標的化イメージング剤として使用して、対応する結合パートナーを膵管腺癌のバイオマーカーとして同定および評価した。
【0138】
これらの拡張されたマウスモデルおよびファージディスプレイペプチド結合スクリーニング法を用いて、本発明者らは、癌発達の初期段階および初代膵管細胞由来のマウス細胞株の利点を活用したスクリーニングにおいて、初期疾患の保存されたバイオマーカーを同定した。さらに、これらマウスモデルの腫瘍進行の既知の動態が、腫瘍形成の限定された段階でのイメージングプローブ検査を容易にした。本明細書に記載のアプローチは、疾患の段階、予後ならびに癌細胞の発達および予後に関連した特定の遺伝子異常の存在を予測する癌バイオマーカーの発見に広く適用可能であると考えられる。
【0139】
V.ナノ粒子ベースのイメージング標識およびPDACの診断法
非侵襲性イメージングは、膵臓癌スクリーニングの候補である高リスク群、例えば、家
族性PDAC家系および新規発症糖尿病患者において特に適用される。こうした人たちにおける癌のリスクが高いにもかかわらず、実際の膵臓癌罹患率は約0.4%〜0.6%に過ぎないと推定される(Chari,Semin.Oncol.34:284−294(2007)ため、実質的な罹患率および死亡率に関係する予防的手術は通常行われていない。CTスキャンまたはMRIのような従来のイメージング法では、多くの腫瘍がすでに転移した大きさに達してからでないとPDAC病変が検出されないことが多いため、手術が効果的でなくなる。したがって、PDACの存在を、手術が効果的であるその初期の発達段階で正確に同定するような新規イメージング様式が大いに必要とされている。
【0140】
初期癌の非侵襲性イメージングに関するその他の状況として、嚢胞性腫瘍、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)および粘液性嚢胞腫瘍(MCN)を有する患者が挙げられる。したがって、いくつかの実施形態において、本発明者らは、初期癌細胞のバイオマーカーに対するペプチドプローブの同定を意図する。これらの腫瘍は、多くの場合良性であるが、それらの一部はPDACまで進行する。したがって、いくつかの実施形態において、本発明者らは、PDACまで進行する腫瘍性細胞のバイオマーカーに対するペプチドプローブの同定法および使用法を意図する。術後の再発スクリーニングにおいてより正確なイメージング分子を使用しかつ術前にスクリーニングを行って正確な腫瘍拡張をより的確に判定する、新規アプローチが意図される。本明細書に提供される新規イメージング分子は、鑑別診断、すなわち、膵炎、黄疸または上腹部痛を有する患者の鑑別診断において、臨床的価値を有するであろう。さらに、高リスク群のスクリーニングにおいて、本発明者は、高悪性度のPanINおよび癌腫から、多くの健康な人に存在する低悪性度のPanINをインサイチュで区別するためのイメージング分子を意図する。PanIN−3以上の病変は、浸潤性PDACまで進行する可能性が非常に高いと考えられるため、これらを認識するプローブが意図される。トランスレーショナルな研究を含む実施形態は、本明細書に記載の分子の腫瘍への迅速なホーミングおよびそれに続く体内からの排除により技術的に可能となるため、切除術を受けている患者においてこれらを実施することが意図される。
【0141】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のペプチドリガンドは、ナノ粒子ベースのイメージング標識と連結されている。数多くのタイプの磁性ナノ粒子およびそれらの磁気蛍光類似体のようなこれらのナノ粒子は、癌細胞のイメージングのために開発および使用され(例えば、Weisslederら,Nat.Biotechnol.,19:316−317(2001);McCarthyら,Nanomedicine,2:153−167(2007);Hogemannら,Bioconjug.Chem.,11:941−946(2000)およびJosephsonら,Bioconjug.Chem.,10:186−191(1999)を参照されたい)、これらナノ粒子の、単離ペプチドリガンドおよびファージディスプレイペプチドとの使用が意図される。マルチモーダルナノ粒子は、同一分子内に磁性分子および蛍光分子の両方を組み込むことが知られ(例えば、本明細書に記載のような粒子、すなわち、PTP−NP)、蛍光顕微鏡法(この非常に小さな粒子の蛍光部分を検出する)およびMRI(粒子の磁性部分を検出する)に使用される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のイメージングプローブ/リガンドには、NanoSPARKS(商標)(VisEn Medical)などのような光学イメージングプローブが含まれる。
【0142】
いくつかの実施形態において、粒子は、例えば、米国特許第5,492,814号;Hogemannら,Bioconjug.Chem.,11:941−946(2000)に記載のように、蛍光部分とコンジュゲートされている。
【0143】
粒子は、任意の適切な形態、例えば、凍結乾燥状態でまたは液体中、例えば、インビボ投与に適した滅菌担体(例えば、滅菌生理食塩水)中で提供される。凍結乾燥させた粒子は、例えば、通常の滅菌生理食塩水中または液体担体中で復元され得る。いくつかの実施
形態において、これらの方法では、Advanced Magnetics,Inc.(Cambridge,MA)より入手可能な、酸化鉄ナノ粒子からなる分子イメージング剤であるCombidex(登録商標)(ferumoxtran−10)を使用する。
【0144】
本明細書に記載のマルチモーダルナノ粒子イメージングプローブは、新生物にホーミングする一方で、近接領域または腺房管化生との感知可能な共局在性は示さない。この高レベルの特異性は、診断検査における偽陽性を減少させることが期待される。さらに、これらの新規イメージングプローブは、進行癌細胞のみならずPanINとも結合した。このような前癌病変を検出する能力により、この疾患の管理における新規アプローチの開発が可能となる。このプローブと共に使用される断層撮影イメージング技術(例えば、MRI、単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)/CT、光学など)は、肝臓および腎臓の取込みは高いが、両器官との間の区別を可能にしつつ、それらと関連させた膵臓の解像を可能にするであろう。
【0145】
コントラスト剤は、例えば、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、実質内、腔内、局所、眼内、経口または直腸内投与により、被検体に投与されるが、静脈内注射が好ましい。
新規分子標的化イメージング剤の開発に加え、癌細胞により発現される分子との結合に関するファージディスプレイペプチドスクリーニングおよび改変免疫沈降により、PDACの新規特異的バイオマーカーとしての膜局在プレクチン−1の同定が可能となった。意義深いことに、プロテオミクスアプローチを用いて同定されるプレクチン−1の差次的タンパク質プロセシングおよび/または輸送は、cDNA発現データのみ調べるかまたは細胞全体のプロテオミクス法を用いた場合には見逃される、潜在的なクラスのバイオマーカーを示す。具体的には、プレクチン−1の過剰発現が遺伝子チップ解析により観察されたが、それは97個の過剰発現遺伝子の1つであったため、その癌細胞バイオマーカーとしての関係または用途はわからなかった(Iacobuzio−Donahueら,Am.J.Pathol.160:1239−1249(2002);および米国特許出願公開第2003/0180747号を参照されたい)。スクリーニング法による本明細書のさらなる結合パートナーのクローンは、PDAC発病の一因である異常な分子経路の解明に加えて診断法および治療法における使用が考えられる、さらなるバイオマーカーを示す。
【0146】
したがって、本明細書に記載のペプチドリガンドは、プレクチン−1と特異的に結合するプレクチン−1結合部分、例えば、配列番号1、2または4〜8から基本的になるペプチドと連結されている、1つまたは複数の検出可能部分を含み得る。検出可能部分は、フルオロフォア、例えば、近赤外フルオロフォア(NIRF)であり得るかまたはそれを含み得る。本明細書に記載の方法および組成物において有用な数多くのNIRFが当該分野で公知であり、例えば、Cy5.5、Cy5およびCy7(Amersham,Arlington Hts.,IL);IRD41およびIRD700(LI−COR,Lincoln,Nebr.);NIR−1(Dejindo,Kumamoto,Japan);LaJolla Blue(Diatron,Miami,Fla.);インドシアニングリーン(ICG)およびその類似体(Lichaら,1996,SPIE 2927:192−198;Itoら,米国特許第5,968,479号);インドトリカルボシアニン(ITC;国際公開第98/47538号);ならびにキレート化ランタニド化合物が挙げられる。蛍光ランタニド金属としては、ユウロピウムおよびテルビウムが挙げられる。ランタニド類の蛍光特性は、「Principles of Fluorescence Spectroscopy Lackowicz(1999)第2版」(Kluwar Academic,New York)に記載されている。フルオロフォアは、例えば、蛍光色素上の任意の適切な反応基ならびに蛍光色素付着部分、主鎖またはスペーサー部分上の適合する官能基を用いて、蛍光色素付着部分、主鎖またはスペーサーを介してプレクチン−1結合部分またはナノ粒子と共有結合され得る。例えば、蛍光色素上のカルボキシル基(または活性エステル)を用いて、ポリリジン上のリジル側鎖のイプシロ
ン−アミノ基のような一級アミンとアミド結合を形成させ得る。あるいは、またはさらに、フルオロフォアを、主鎖と直接連結させるかまたは非生物分解性のスペーサーを介して主鎖と連結させ得る。米国付与前公開第2006/0275775号を参照されたい。
【0147】
ペプチドリガンドは、例えば、タンパク質またはペプチド検出可能部分との融合タンパク質(任意の連結配列、例えば、可動性リンカー配列を有するか有しない)としてあるいは化学的結合部分を介して、検出可能部分と直接連結され得る。数多くのこのような結合部分、例えば国際特許出願公開第2009/036092号に記載の、例えばペプチドリンカーまたは化学的リンカーが当該分野で公知である。
【0148】
VI.治療ペイロード送達のための標的化部分としてのリガンド
ペプチドリガンドのような治療法として用いられるリガンド組成物は、他のタイプの治療法よりも有利な点、例えば、特定タイプのペイロードの付加、膜貫透過性因子の付加のような新規な追加的要素の設計における柔軟性に加え、迅速な拡散能の保持、低免疫原性および標的細胞に対する高特異性などを有する。したがって、本明細書に記載のペプチドリガンドをディスプレイするファージおよび単離ペプチドリガンドは、放射性核種、サイトカイン、化学薬品、化学療法薬および治療遺伝子のような治療ペイロードの癌細胞への選択的送達のための標的部分として使用することが意図される。本発明の目的のために、「治療ペイロード」または「治療カーゴ」は、「治療剤」を包含し、かつ患者において、癌細胞数を減少させる、または癌細胞の増殖を低下させる、または癌細胞の転移を減少させるための細胞外または細胞内送達用の任意の化合物を包含するものとする。ペイロードのタイプの例は、薬剤、小分子、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、RNAおよびDNAであり、つまり、患者において癌を減少させる任意のペイロードである。
【0149】
本明細書に記載のペプチドリガンドは、ジフテリア毒素(DTA)のような毒素に付着させ得る(例えば、DTフラグメントに関する米国特許出願第5827934号およびMishraら(2003,Expert Opinion on Biological
Therapy 3:1173−1180)の例示的な融合タンパク質DAB389EGFを参照されたい)。
【0150】
本発明のペプチドに付着させる薬物はまた、宿主の生物学的過程に由来するか、またはそれを有益に調節し得る作用物質、例えば、インターフェロン、腫瘍増殖因子、腫瘍壊死因子、増殖因子(GM−CSFおよびG−CSFなど)ならびにインターロイキン(例えば、インターロイキン−2、インターロイキン−6、インターロイキン−7およびインターロイキン−12など)を包含し得る。本発明のペプチドと付着させる薬剤は、遺伝毒性物質のような、DNAを損傷するおよび/または細胞の増殖を妨げる作用物質を含み得る。遺伝毒性物質として、アルキル化剤、抗代謝剤、DNA切断剤、DNA結合剤、トポイソメラーゼ毒および紡錘体毒が挙げられるが、これらに限定されない。アルキル化剤の例には、ロムスチン、カルムスチン、ストレプトゾシン、メクロレタミン、メルファラン、ウラシルナイトロジェンマスタード、クロラムブシル、シクロスファミド、イホスファミド、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、チオテパ、ダカルバジン、プロカルバジン、ヘキサメチルメラミン、トリエチレンメラミン、ブスルファン、ピポブロマン、ミトタンおよびその他のプラチン誘導体がある。
【0151】
本明細書に記載のペプチドリガンドは、様々な治療剤、例えば、細胞毒性部分、例えば、治療薬、放射性同位元素、植物、真菌もしくは細菌起源の分子または生体タンパク質(例えば、タンパク質毒素)もしくは粒子(例えば、組換えウイルス粒子、例えば、ウイルスコートタンパク質を介した)あるいはそれらの混合物を送達するために使用され得る。治療剤は、細胞内で活性な薬物またはその他の薬剤、例えば、本明細書に記載のような短距離高エネルギーα放射体を含めた短距離放射線放射体などであり得る。いくつかの実施
形態において、ペプチドリガンドは、植物または細菌起源の分子(またはその誘導体)、例えば、マイタンシノイド(例えば、マイタンシノールまたはDM1マイタンシノイド)と結合され得る。DM1は、マイタンシンのスルフィドリル含有誘導体であり、例えば、標的細胞内でDM1を解離するジスルフィドリンカーを介してペプチドと連結され得る。ジスルフィドリンカーは、貯蔵中および血清中において他のリンカーよりも高い安定性を示す。マイタンシンは、微小管形成および現存する微小管の脱重合を妨げることにより、殺細胞作用をもたらす細胞毒性薬である。これは、現在臨床使用されているドキソルビシン、メソトレキセートおよびビンカアルキロイド(vinca alkyloid)のような抗癌剤の100〜1000倍の細胞毒性である。あるいは、本明細書に記載のペプチドリガンドは、タキサン、カリケアマイシン、プロテオソーム阻害剤またはトポイソメラーゼ阻害剤と結合され得る。[(1R)−3−メチル−1−[[(2S)−1−オキソ−3−フェニル−2−[(3−メルカプトアセチル)アミノ]プロピル]アミノ]ブチル]ボロン酸が適切なプロテオソーム阻害剤である。N,N’−ビス[2−(9−メチルフェナジン−1−カルボキサミド)エチル]−1,2−エタンジアミンが適切なトポイソメラーゼ阻害剤である。
【0152】
酵素的に活性な毒素およびそのフラグメントの例には、ジフテリア毒素Aフラグメント、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、エクソトキシンA(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデッシンA鎖、α−サルシン、ある種のシナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ある種のジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca americana)タンパク質(PAP、PAPIIおよびPAP−S)、ツルレイシ(Moorodica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(Saponaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトギリン、レストリクトシン、フェノマイシンおよびエノマイシンがある。いくつかの実施形態において、ペプチドリガンドは、マイタンシノイド、例えば、マイタンシノール(米国特許第5,208,020号を参照されたい)、CC−1065(米国特許第5,475,092号、同5,585,499号、同5,846,545号を参照されたい)とコンジュゲートされる。免疫毒素の酵素的に活性なポリペプチドの調製法は、国際公開第84/03508号および同85/03508号に記載されており、これらはその内容が参照により本明細書に援用される。抗体とコンジュゲートされ得る細胞毒性部分として、アドリアマイシン、クロラムブシル、ダウノマイシン、メソトレキセート、ネオカルチノスタチンおよび白金が挙げられる。
【0153】
癌性細胞を殺すまたは除去するために、ペプチドリガンドを、プロドラッグ活性化因子に極めて接近した場合にのみ活性化されるプロドラッグとコンジュゲートさせ得る。プロドラッグ活性化因子は、第2のペプチドリガンド、例えば、本発明による第2のペプチドリガンド、好ましくは、同じ受容体(例えば、プレクチン−1)または細胞上の非競合部位と結合する第2のペプチドリガンドとコンジュゲートされる。2つのペプチドリガンドが競合結合部位または非競合結合部位のいずれと結合するかは、従来の競合結合アッセイにより判定され得る。使用に適した薬物−プロドラッグ対は当該分野で公知であり、例えば、Blakelyら,Cancer Research 56:3287−3292(1996)において参照されたい。
【0154】
あるいは、ペプチドリガンドを高エネルギー放射線放射体、例えば、γ放射体である131Iのような放射性同位元素と結合させることができ、その結果、腫瘍部位に局在する場合に細胞径をいくらか消滅させる。例えば、Order,「Analysis,Results,and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy」,in Monoclonal Antibodies
for Cancer Detection and Therapy,R.W.Baldwinら(eds.),pp303−316(Academic Press 1985)を参照されたい。その他の適切な放射性同位元素として、212Bi、213Biおよび211Atのようなα放射体ならびに186Reおよび90Yのようなβ放射体が挙げられる。Lu117もイメージングおよび細胞毒性剤の両方として使用され得る。
【0155】
131I、90Yおよび177Luで標識されたペプチドリガンドを使用する放射免疫療法(RIT)は、盛んに臨床研究が行われている。これら3つの核種の物理的特性には大きな相違点があり、その結果、腫瘍へ最大放射線量を送達するためには、放射性核種の選択が重要となり得る。大型の腫瘍には、より高いベータエネルギー粒子の90Yがよいかもしれないが、小型の腫瘍および特に骨転移(例えば、前立腺癌に共通のもの)にはそれは必要ないであろう。比較的低エネルギーのベータ粒子である131Iが望ましいが、放射ヨウ素標識分子のインビボでの脱ハロゲン化が、ペプチドリガンドの内部取込みに対して大きな不利点である。これに対して177Luは、わずか0.2〜0.3mmの範囲の低エネルギーベータ粒子を有し、90Yに比べかなり低い放射線量を骨髄に送達する。さらに、より長い物理的半減期(90Yに比べ)により、腫瘍滞留時間が長い。その結果、より高活性(より多いmCi量の)177Luで標識された薬剤を比較的少ない放射線量で、骨髄に対して投与することができる。様々な癌治療における177Lu標識抗体の使用について調べた臨床研究がいくつかある(例えば、Mulliganら,Clin.Cancer Res.1:1447−1454(1995);Meredithら,J.Nucl.Med.37:1491−1496(1996);Alvarezら,Gynecologic Oncology 65:94−101(1997)を参照されたい)。
【0156】
本発明のペプチドリガンドはまた、ウイルス粒子上に存在するウイルス表面タンパク質とコンジュゲートまたは融合され得る。例えば、ペプチドリガンドを(例えば、融合タンパク質を形成するために)、ウイルス表面タンパク質と融合させ得る。あるいは、ペプチドリガンドを(例えば、化学的リンカーを介して)、ウイルス表面タンパク質と化学的にコンジュゲートさせ得る。好ましくは、ウイルスは、エンドサイトーシス膜と融合するウイルス、例えば、インフルエンザウイルスであり、したがってウイルスは、ペプチドリガンドと共に、そしてそれにより癌細胞内部に取り込まれる。ウイルスは、細胞毒素として遺伝子操作され得る。例えば、ウイルスは、細胞毒性のある遺伝子、例えば、細胞死促進遺伝子を発現するか、またはその発現を誘導し得る。好ましくは、このようなウイルスはウイルス複製が不可能である。
【0157】
ペプチドリガンドは、タンパク質毒素またはペプチド毒素との融合タンパク質(任意の連結配列、例えば、可動性リンカー配列を有するか有しない)としてあるいは化学的結合部分を介して、治療剤と直接連結され得る。数多くのこのような結合部分、例えば、国際特許出願公開第2009/036092号に記載の、例えば、ペプチドリンカーまたは化学的リンカーが当該分野で公知である。
【0158】
本明細書に記載のペプチドリガンド(例えば、イメージング部分または治療剤と連結されている)は、医薬組成物に組み入れられ得る。このような組成物は通常、化合物(例えば、活性な薬剤)および薬学的に許容される担体を含有する。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」には、薬剤投与に適合する、生理食塩水、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などが包含される。
【0159】
医薬組成物は通常、その所望の投与経路に適合するように製剤化される。投与経路の例として、非経口(例えば、静脈内、真皮内、皮下)、経口(例えば、吸入)、経皮(局所的)、経粘膜および直腸内投与が挙げられる。非経口、真皮内または皮下適用に使用され
る液剤または懸濁剤は、以下の成分を含有し得る:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたその他の合成溶媒など;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムのような抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸のようなキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩のような緩衝剤ならびに塩化ナトリウムまたはブドウ糖のような浸透圧調整剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムのような酸または塩基により調整され得る。
【0160】
経口組成物は一般に、不活性希釈剤または食用担体を含有する。経口による薬剤投与目的で、活性な化合物を賦形剤と混合して、錠剤、トローチ剤またはカプセル剤(例えば、ゼラチンカプセル剤)の形態で使用し得る。経口組成物はまた、口腔洗浄剤として使用するために液体担体を用いて調製され得る。薬学的に適合する結合剤および/またはアジュバント物質を、組成物の一部として含有し得る。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、任意の以下の成分または類似の性質をもつ化合物を含有し得る:微結晶性セルロース、トラガカントまたはゼラチンのような結合剤;デンプンまたはラクトースのような賦形剤;アルギン酸、プリモゲル(Primogel)またはコーンスターチのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはステローツ(Sterotes)のような滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素のような流動促進剤;ショ糖またはサッカリンのような甘味剤;あるいはハッカ油、サリチル酸メチルまたはオレンジ香味料のような着香剤。
【0161】
本明細書に記載の治療用化合物の全身投与は、経粘膜的または経皮的であり得る。経粘膜または経皮投与のために、透過すべき障壁に適した浸透剤が製剤において使用される。このような浸透剤は、一般に当該分野で公知であり、例えば、経粘膜投与用として、界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻腔用スプレーまたは坐剤により行い得る。経皮投与のために、活性な化合物が、一般に当該分野で公知の軟膏剤、塗布剤、ゲルまたはクリームに製剤化される。
【0162】
吸入投与のために、化合物は通常、適切な噴霧剤、例えば、二酸化炭素のようなガスを含む加圧容器またはディスペンサあるいは噴霧器からエアロゾルスプレーの形態で送達される。このような方法には、米国特許第6,468,798号に記載の方法が含まれる。
【0163】
治療用化合物はまた、坐剤(例えば、カカオバターおよびその他のグリセリドのような従来の坐剤基剤を用いた)または直腸内送達用の停留浣腸の形態に調製され得る。
一実施形態において、治療用化合物は、インプラントおよびマイクロカプセル送達システムを含めた徐放製剤のように、体内からの迅速な排出に対して治療用化合物を保護する担体と共に調製される。生物分解性の生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などが使用され得る。このような製剤は、標準的な方法により調製されるか、または例えば、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.より購入され得る。リポソーム懸濁液(細胞抗原に対するモノクローナル抗体で選択された細胞に対して標的化されたリポソームを含む)も薬学的に許容される担体として使用され得る。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載の当業者に公知の方法により調製され得る。
【0164】
治療用化合物の用量、毒性および治療効果は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順(例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な量)およびED50(集団の50%で治療的に有効な量)を決定するための)により決定され得る。毒性と治療効果との間の用量比が治療指数であり、LD50/ED50の比として表し得る。高い治療指数を示す化合物が好ましい。
【0165】
細胞培養アッセイおよび動物実験から得られたデータを、ヒトで使用する用量範囲を定式化するために用い得る。このような化合物の用量は、好ましくは、毒性がほとんどまたは全くないED50を包含する循環血中濃度の範囲内にある。用量は、採用する剤形および利用する投与経路によりこの範囲内で変動し得る。本発明の方法で使用される任意の化合物に関しては、治療有効量をまず細胞培養アッセイから推定し得る。動物モデルにおける用量を定式化して、細胞培養で決定されたIC50(すなわち、最大半値の症状阻害が得られる試験化合物の濃度)を包含する循環血漿濃度を得てもよい。このような情報を用いて、ヒトにおける有効量をより正確に決定し得る。血漿中レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより測定され得る。
【0166】
治療用化合物の治療有効量(すなわち、有効な用量)は、選択される治療用化合物による。組成物は、隔日1回を含め、1日に1回または複数回〜1週間に1回または複数回、1つ投与され得る。疾患または障害の重症度、治療歴、被検体の全般的健康状態および/または年齢ならびに罹患中の他の疾患を非限定的に含めた特定の因子が、被検体を効果的に治療するために必要とされる用量およびタイミングに影響し得ることを、当業者は理解するであろう。さらに、本明細書に記載されている治療用化合物の治療有効量による被検体の治療には、単回治療または一連の治療が含まれ得る。
【0167】
ペプチドリガンド標的化が、薬物の癌細胞を選択的に殺す能力を増強し得るインビトロでの薬物濃度の範囲は通常、使用される薬物による。例えば、遺伝毒性物質は通常、0.1〜100μMの間、好ましくは0.15〜30μM/kgの間インビトロ濃度で使用される。
【0168】
癌細胞に薬物を送達するペプチドリガンドの治療用組成物は、さらなる抗癌治療に対する癌細胞の感受性を増加させることができ、例えば、パクリタキセルとコンジュゲートされたペプチドリガンドは、150mg/m(体表面)の範囲において、特定の薬物に対する癌細胞の感受性を増加させ、これに対してシスプラチンは、20mg/m/日の範囲で、放射線に対する癌細胞の感受性を増加させる。
【0169】
細胞外表面に結合するペプチドリガンドは、細胞内へのペイロード輸送を促進するドメインまたは分子を含むことが意図される「膜融合成分」を含み得る。膜融合成分は、膜透過性モチーフを含み得る。膜融合成分は、天然に存在するタンパク質から単離され得るか、あるいは全体または部分的に天然に存在するドメインに基づく合成分子であり得、例えば、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)糖タンパク質−120(GP120)、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)糖タンパク質−42(GP41)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)(転写トランスアクチベーター(Tat))タンパク質、ヒトパラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルス(HA2と呼ばれる)の赤血球凝集素(HA)、エボラウイルス膜貫通融合配列(Ebola virus transmembrane fusion sequence)、へリックスコイルコイル(helical coil−coils)、α溶血素、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、メリチン(ハチ毒の活性成分)、疎水性セグメント、合成膜輸送体などである。適切な膜融合成分は、当該分野で公知の、例えば、HIV由来TATペプチド、ペネトラチン、トランスポータンまたはhCT由来細胞貫通ペプチドであり、例えば、Caronら,(2001)Mol.Ther.3(3):310−8;Langel,Cell−Penetrating Peptides:Processes and Applications(CRC Press,Boca Raton FL 2002);El−Andaloussiら,(2005)Curr.Pharm.Des.11(28):3597−611;およびDeshayesら,(2005)Cell Mol.Life Sci.62(16):1839−49を参照されたい。
【0170】
医薬組成物は、投与のための説明書と共に容器、パックまたはディスペンサ中に含まれ得る。
VIII.抗体
本発明は、癌バイオマーカーに対する親和性を有する単離抗体(例えば、ポリクローナルまたはモノクローナル)を提供する。いくつかの実施形態において、癌は膵臓癌を包含する。他の実施形態において、癌は、肺癌、乳癌、前立腺癌、皮膚癌、脳癌、肝臓癌、骨癌または腎臓癌を包含するが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明は、プレクチンバイオマーカー(例えば、配列番号1)の少なくとも5個のアミノ酸残基からなる単離ポリペプチドと特異的に結合するモノクローナル抗体を提供する。これらの抗体は、本明細書に記載のイメージング法において使用される。
【0171】
本発明のタンパク質に対する抗体は、それがタンパク質を認識できる限り、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれでもあり得る。抗体は、本発明のタンパク質を抗原として用いて、従来の抗体または抗血清の調製手順に従って産生され得る。
【0172】
本発明は、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の両方の使用を意図する。本発明の方法および組成物において使用される抗体を作成するために、本明細書に開示されるものを非限定的に含めた任意の適切な方法を用い得る。例えば、モノクローナル抗体の調製のために、タンパク質それのみをあるいは適切な担体または希釈剤と共に、抗体産生が可能な条件下で動物(例えば、哺乳動物)に投与する。抗体産生能を増強するために、完全または不完全フロイントアジュバントを投与し得る。通常、タンパク質を2週間〜6週間に1回、合計約2回〜約10回投与する。このような方法での使用に適した動物として、霊長類、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0173】
モノクローナル抗体産生細胞調製のために、抗体価が確定されている動物個体(例えば、マウス)を選択して、最後の免疫化後2日〜5日目に、その脾臓またはリンパ節を摘出し、そこに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合して、所望のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作成する。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後述の標識タンパク質と抗血清とを反応させ、次いで、抗体と結合した標識薬剤の活性を測定することにより行い得る。細胞融合は、既知の方法、例えば、KoehlerおよびMilstein(Nature 256:495(1975))により記載されている方法に従って行い得る。融合促進剤として、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはセンダイウイルス(HVJ)、好ましくはPEGを使用する。
【0174】
骨髄腫細胞の例としては、NS−1、P3U1、SP2/0、AP−1などが挙げられる。使用される抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数の比は、好ましくは、約1:1〜約20:1である。PEG(好ましくは、PEG1000〜PEG6000)を、好ましくは、約10%〜約80%の濃度で添加する。細胞融合は、両細胞の混合物を約20℃〜約40℃、好ましくは、約30℃〜約37℃で、約1分〜10分間インキュベートすることにより行い得る。
【0175】
様々な方法が、抗体(例えば、本発明の腫瘍抗原または自己抗体に対する)を産生するハイブリドーマのスクリーニングに使用され得る。例えば、抗体が直接または担体と共に吸着される固相(例えば、マイクロプレート)にハイブリドーマの上清を添加する場合、放射性物質または酵素で標識された抗免疫グロブリン抗体(細胞融合にマウス細胞が使用される場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が使用される)またはプロテインAを添加して、固相に結合した、タンパク質に対するモノクローナル抗体を検出する。あるいは、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAが吸着された固相にハイブリドーマの上清を添加し、次いで、放射性物質または酵素で標識されたタンパク質を添加して、固相と結合した、
タンパク質に対するモノクローナル抗体を検出する。
【0176】
モノクローナル抗体の選択は、任意の既知の方法またはその改変に従って行い得る。通常、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用の培地を使用する。ハイブリドーマが増殖できる限り、任意の選択/増殖培地を使用し得る。例えば、1%〜20%、好ましくは、10%〜20%のウシ胎仔血清を含むRPMI1640培地、1%〜10%のウシ胎仔血清を含むGIT培地、ハイブリドーマ培養用の無血清培地(SFM−101,Nissui Seiyaku)などを使用し得る。通常、培養は、20℃〜40℃、好ましくは、37℃で約5日〜3週間、好ましくは、1週間〜2週間、約5%COガスの下で行う。ハイブリドーマ培養物上清の抗体価は、抗血清中の抗タンパク質の抗体価に関して上記のものと同様の方法に従って測定し得る。
【0177】
VIII.模倣物の設計
プレクチン−1のようなバイオマーカーの認識およびそれとの結合に必要なコンホメーションを模倣する化合物は、本発明の範囲内にあることが意図される。例えば、いくつかの実施形態において、配列番号1〜8および本発明のすべてのペプチドの模倣物が意図される。このような模倣物の様々な設計が可能である。Loblらに対する米国特許出願第5,192,746号、Burke,Jr.らに対する同5,169,862号、Bischoffらに対する同5,539,085号、Aversaらに対する同5,576,423号、Shashouaに対する同5,051,448号およびGaetaらに対する同5,559,103号(すべてその内容が参照により本明細書に援用される)に、このような化合物の作出方法が複数記載されている。
【0178】
ペプチド配列を模倣する非ペプチド化合物も当該分野で公知である。Eldredら(J.Med.Chem.37:3882(1994))は、Arg−Gly−Asp配列を模倣する非ペプチドアンタゴニストを記載している。同様に、Kuら(J.Med.Chem.38:9(1995))は、一連のこのような化合物の合成をさらに明らかにしている。例えば、KTLLPTP(配列番号1)ペプチド(または本発明の任意の1つまたは複数のポリペプチド)を模倣する非ペプチド化合物が、本発明により特に意図される。
【0179】
本発明はまた、関連するペプチド配列を反復する多量体化合物である合成模倣化合物を意図する。当該分野で公知のように、ペプチドは、アミノ基を、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)のようなカップリング剤との反応により活性化されたカルボキシル基と連結させることにより合成され得る。遊離アミノ基の活性化カルボキシルへの攻撃により、ペプチド結合が形成され、ジシクロヘキシル尿素が放出される。反応させようとするアミノ基およびカルボキシル基以外の、反応する可能性のある基を保護する必要があり得る。例えば、活性化カルボキシル基を含む構成要素のα−アミノ基を、tert−ブチルオキシカルボニル基でブロックし得る。次いで、ペプチドを希酸に曝露することによりこの保護基を除去し、ペプチド結合をインタクトで残し得る。

この方法を用いれば、ポリスチレンビーズのような不溶性マトリックスと連結されている伸長中のペプチド鎖への段階的なアミノ酸付加による固相法により、ペプチドを簡便に合成し得る。最初に所望のペプチド配列のカルボキシル末端アミノ酸(アミノ保護基を有する)をポリスチレンビーズに固定する。次いで、アミノ酸の保護基を除去する。次のアミノ酸(保護基を有する)を、カップリング剤と共に添加する。続いて洗浄サイクルを行う。このサイクルを必要に応じて繰り返す。
【0180】
いくつかの実施形態において、本発明の模倣物は、上記プレクチンタンパク質リガンドと配列相同性を有するペプチドである。配列相同性およびさらに重要な統計的に有意な類
似性を評価するための1つの一般的な方法論は、LipmanおよびPearsonにより書かれたアルゴリズムを使用したモンテカルロ解析を用いて、Z値を得ることである。この解析によれば、6よりも大きいZ値は可能性の高い有意性を示し、10よりも大きいZ値は統計的に有意であると考えられる。例えば、PearsonおよびLipman,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)85:2444−2448(1988);LipmanおよびPearson,Science 227:1435−1441(1985)を参照されたい。本発明では、腫瘍治療においておよび浸潤阻止において有用な合成ポリペプチドは、統計的に有意な配列相同性および類似性を有する(モンテカルロ解析でのLipman/PearsonアルゴリズムのZ値が6を超える)ペプチドである。
【0181】
本発明はまた、アミノ酸対合技術(amino acid pairing technique)により同定された配列番号1〜8(または本発明の任意の1つまたは複数のポリペプチド配列)のペプチド配列誘導体を意図する。例えば、Root−Bernstein,J.Theor.Biol.94:885−859(1982);およびStefanowiczら,Letters in Peptide Science 5:329−331(1998)を参照されたい。本発明において有用なペプチド配列誘導体を同定するために、この方法論を用いて、セプラーゼといくらか相補的であるが、同時にそれ自体が細胞移動を増強することなくセプラーゼ活性を特異的に阻害する配列を同定する。
【0182】
本発明に記載のペプチドリガンドは、プロテアーゼ耐性であり得、かつ保護基、例えばアシル基、アミド基、ベンジルまたはベンゾイル基あるいはポリエチレングリコールなどを1つまたは複数含有し得る。より具体的には、上記修飾ペプチドを含めたペプチドは、N末端アセチル化および/またはC末端アミド化されていてもよい。
【0183】
非天然のまたは修飾されたアミノ酸残基が含まれる場合、それらは、当該技術分野において利用可能な以下のまたは他の多くのものから選択され得る:4−ヒドロキシプロリン、ガンマ−カルボキシグルタミン酸、O−リン酸化セリン、O−リン酸化チロシンまたはデルタ−ヒドロキシリジン。その他の例として、ナフチルアラニン(トリトファン(trytophan)と置換されて合成を促進し得る)、L−ヒドロキシプロピル、L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニル、アルファ−アミノ酸(L−アルファ−ヒドロキシリシルおよびD−アルファ−メチルアラニル、L−アルファ−メチルアラニルなど)、ベータ−アミノ酸およびイソキノリルが挙げられる。非天然アミノ酸残基を有するペプチドは、合成ペプチドと呼ばれる場合があり、本明細書に記載のバリアントの1種を構成する。その他のバリアントとして、アミノ酸残基(L−型またはD−型の)の天然の側鎖が非天然の側鎖で置換されているペプチドが挙げられる。
【0184】
いくつかの実施形態において、ペプチドは、一方(または両方)の末端に(例えば、N末端に)3個の追加のアミノ酸(Met−Gly−Ser)および一方(または両方)の末端に(例えば、C末端に)7〜8個の追加のアミノ酸(例えば、Thr−Ser−His−His−His−His−His−His−Cys(配列番号26))を有し得る。
【0185】
いくつかの実施形態において、ペプチドを当該分野で公知の方法によりペグ化し得る。
還元/アルキル化および/またはアシル化によるペプチド修飾に関する手引きとして、Tarr,Methods of Protein Microcharacterization,Silver ed.,Humana Press,Clifton N.J.(1986)155〜194を;適切な担体への化学的結合に関する手引きとして、MishellおよびShiigi,eds,Selected Methods in
Cellular Immunology,W.H.Freeman,San Fra
ncisco,Calif.(1980)ならびに米国特許第4,939,239号を;弱いホルマリン処理に関する手引きとして、Marsh,Int.Arch.Allergy Appl.Immunol.,(1971)41:199〜215を、それぞれ参照することができる。
【0186】
ペプチドリガンドのペプチド模倣物も使用され得る。ペプチド模倣物作成のために、当該分野で公知の方法に従って、本明細書に開示されるペプチドリガンドを修飾し得る。例えば、Kazmierski,W.M.,ed.,Peptidomimetics Protocols,Human Press(Totowa NJ 1998);Goodmanら,eds.,Houben−Weyl Methods of Organic Chemistry:Synthesis of Peptides and Peptidomimetics,Thiele Verlag(New York 2003);およびMayoら,J.Biol.Chem.,278:45746,(2003)を参照されたい。いくつかの場合において、本明細書に開示されるペプチドおよびフラグメントのこれら修飾されたペプチド模倣物型は、非ペプチド模倣物のペプチドよりも増強されたインビボでの安定性を示す。ペプチド模倣物を作出するための方法として、D−アミノ酸鏡像異性体を有するペプチド配列の1つまたは複数、例えば、すべてを置換することが挙げられる。このような配列を、本明細書では「retro」配列と呼ぶ。別の方法では、アミノ酸残基のN末端からC末端へ向かう順序を逆にすることにより、元のペプチドのN末端からC末端へ向かうアミノ酸残基の順序が、修飾ペプチド模倣物ではC末端からN末端に向かうアミノ酸残基の順序になる。このような配列を、「inverso」配列と呼ぶことができる。ペプチド模倣物は、本明細書に開示されるペプチドのretro型およびinverso型の両方、すなわち、「retro−inverso」型となり得る。新規ペプチド模倣物は、ペプチド模倣物でのN末端からC末端に向かうアミノ酸配列の順序が、元のペプチドでのC末端からN末端に向かうアミノ酸配列の順序に対応するように配列された、D−アミノ酸から構成され得る。
【0187】
ペプチド模倣物を作成するための他の方法として、ペプチド中の1つまたは複数のアミノ酸残基を、化学的には異なるが、機能的であると認められるアミノ酸の類似体、すなわち、人工のアミノ酸類似体に置換することが挙げられる。人工のアミノ酸類似体として、β−アミノ酸、β−置換β−アミノ酸(「β−アミノ酸」)、アミノ酸の亜リン酸類似体(α−アミノホスホン酸およびα−アミノホスフィン酸など)ならびに非ペプチド結合を有するアミノ酸が挙げられる。人工アミノ酸を用いて、ペプチド模倣物、例えばペプトイドオリゴマー(例えば、ペプトイドアミドまたはエステル類似体)、β−ペプチド、環状ペプチド、オリゴウレアまたはオリゴカルバマートペプチド;または複素環分子などを作出し得る。これらの配列は、例えば、アミノ末端のビオチン化およびカルボキシ末端のアミド化により修飾され得る。
【0188】
本明細書に記載のバリアント形態を含めた、本明細書に記載の任意のペプチドは、異種ポリペプチドをさらに含み得る。異種ポリペプチドは、それが付着している(例えば、融合タンパク質中のように融合している)ペプチドの循環血中半減期を増加させるポリペプチドであり得る。異種ポリペプチドは、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミンまたはその一部分)あるいは免疫グロブリンの一部分(例えば、IgGのFc領域)であり得る。異種ポリペプチドは、ミトコンドリアの貫通部分であり得る。
【0189】
本明細書に記載のペプチドの必要とされるコンホメーションを模倣する化合物は、本発明の範囲内にあるものとして意図される。このような模倣物の様々な設計が可能である。米国特許第5,192,746号;同第5,169,862号;同第5,539,085号;同第5,576,423号;同第5,051,448;および同第5,559,103号(すべてその内容が参照により本明細書に援用される)には、このような化合物を設
計するための複数の方法が記載されている。ペプチド配列を模倣する非ペプチド化合物が当該分野で公知である(例えば、シェファーディンの非ペプチド小分子模倣体の同定法を記載している、Meliら,J.Med.Chem.,49:7721−7730(2006)を参照されたい)。ペプチド配列を模倣する非ペプチド化合物の合成も当該分野で公知である(例えば、Eldredら,J.Med.Chem.,37:3882(1994);Kuら,J.Med.Chem.,38:9(1995);Meliら,J.Med.Chem.,49:7721−7730(2006)を参照されたい)。プレクチン−1と結合する本明細書に記載の配列を模倣するこのような非ペプチド化合物が、本発明により特に意図される。
【0190】
本発明はまた、合成模倣化合物を意図する。当該分野で公知のように、ペプチドは、アミノ基を、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)のようなカップリング剤との反応により活性化されたカルボキシル基と連結させることにより合成され得る。遊離アミノ基の活性化カルボキシルへの攻撃により、ペプチド結合が形成され、ジシクロヘキシル尿素が放出される。反応させようとするアミノ基およびカルボキシル基以外の、反応する可能性のある基を保護する必要があり得る。例えば、活性化カルボキシル基を含む構成要素のα−アミノ基を、tert−ブチルオキシカルボニル基でブロックし得る。次いで、ペプチドを希酸に曝露することによりこの保護基を除去し、ペプチド結合をインタクトで残し得る。この方法を用いれば、ポリスチレンビーズのような不溶性マトリックスと連結されている伸長中のペプチド鎖への段階的なアミノ酸付加による固相法により、ペプチドを簡便に合成し得る。最初に所望のペプチド配列のカルボキシル末端アミノ酸(アミノ保護基を有する)をポリスチレンビーズに固定する。次いで、アミノ酸の保護基を除去する。次のアミノ酸(保護基を有する)を、カップリング剤と共に添加する。続いて洗浄サイクルを行う。このサイクルを必要に応じて繰り返す。
【0191】
いくつかの実施形態において、本発明の模倣物は、本明細書に記載のシャペロン阻害剤ペプチドと配列相同性を有するペプチドである。これらの模倣物は、L−アミノ酸がそれらのD−異性体で置換されているペプチドを非限定的に含む。配列相同性およびさらに重要な統計的に有意な類似性を評価するための1つの一般的な方法は、LipmanおよびPearsonにより書かれたアルゴリズムを使用したモンテカルロ解析を用いて、Z値を得ることである。この解析によれば、6よりも大きいZ値は可能性の高い有意性を示し、10よりも大きいZ値は統計的に有意であると考えられる(PearsonおよびLipman,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)85:2444−2448(1988);LipmanおよびPearson,Science 227:1435−1441(1985))。より一般的には、本明細書に記載のペプチドリガンドおよび上記模倣物は、Merrifieldら,Biochemistry,21:5020−5031(1982);Houghten Wellings,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),82:5131−5135(1985);Atherton,Methods in Enzymology,289:44−66,(1997)あるいはGuyおよびFields,Methods in Enzymology,289:67−83(1997)に記載されている、ティーバッグ法または固相ペプチド合成法を含めた、任意の既知の方法を用いて、あるいは市販の自動合成装置を用いて合成され得る。
【0192】
IX.小分子薬物
いくつかの実施形態において、本発明は、癌バイオマーカー(例えば、プレクチン)と結合することにより癌を縮小させるかまたは除去する薬物(例えば、小分子薬物)を提供する。いくつかの実施形態において、小分子薬物は、本明細書に記載の薬剤スクリーニング法を用いて同定される。好適な実施形態において、本発明の小分子薬物は、癌細胞は殺すが正常な細胞は殺さない。いくつかの実施形態において、小分子薬物は、本明細書に(
例えば、上記III節に)記載の薬物スクリーニングを用いて同定される。
【0193】
いくつかの実施形態において、本発明は、薬剤スクリーニングアッセイ(例えば、抗癌剤をスクリーニングするための)を提供する。本発明は特定の機構に限定されない。実際、本発明を実施するために機構の理解は必要ではない。本発明は、細胞表面膜(例えば、腫瘍組織)上で発現される癌バイオマーカーと結合する化合物の同定のための薬剤スクリーニング法を提供する。本発明は、プレクチン−1を発現する癌において活性な化学療法剤の同定法をさらに提供する。いくつかの実施形態において、小分子のような候補化合物は、プレクチン−1に対するものである。
【0194】
いくつかの実施形態において、本発明は、癌バイオマーカー(例えば、プレクチン)を阻止する/抑制する/妨げる/破壊する効果的な非ペプチド小分子阻害因子の同定法を意図する。これらの分子は、いくつかあるハイスループットスクリーニング法のいずれを用いても発見され得る。例えば、Stockwell,Nature 432:846−854(2004);Kayら,Mol.Diversity 1:139−140(1996);Pflegerら,Cell Signaling 18:1664〜1670(2006);Jungら,Proteomics 5:4427〜4431(2005);Nieuwenhuijsenら,J.Biomol.Screen 8:676〜684(2003);およびBerg,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.42:2462〜2481(2003)を参照されたい。
【実施例】
【0195】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態および態様を説明するためのものであり、それらの範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
以下の実験の開示において、次の略語が適用される:N(正常な);M(モラー);mM(ミリモラー);μM(マイクロモラー);mol(モル);mmol(ミリモル);μmol(マイクロモル);nmol(ナノモル);pmol(ピコモル);g(グラム);mg(ミリグラム);μg(マイクログラム);ng(ナノグラム);pg(ピコグラム);Lおよびl(リットル);ml(ミリリットル);μl(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);nm(ナノメートル);U(単位);min(分);sおよびsec(秒);k(キロメートル);deg(度);℃(セ氏/セルシウス度)、コロニー形成単位(cfu)、プラーク形成単位(PFU)、吸光度(OD;o.d.)、内径(i.d.)およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)。
【0196】
実施例I
この実施例では、本発明の開発中に用いられたアッセイの典型的な材料および方法を説明する。
【0197】
細胞培養
野生型マウス由来の初代マウス膵管細胞を、公開されている方法(Schreiberら,(2004)Gastroenterology 127:250〜260)を用いて単離および培養した。Pdxl−Cre LSL−KrasG12D p53L/Lマウス(Kras/p53L/Lと呼ぶ)で発生する腫瘍から、初期継代PDAC細胞株を単離した(Bardeesyら,(2006)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.103:5947〜5952)。ファージディスプレイ実験用に、最初にPDAC細胞を初代導管細胞培地(D−グルコース(Sigma)5mg/mL 、ダイズトリプシンインヒビター・タイプI(Sigma)0.1mg/mL、インスリン−トラ
ンスフェリン−セレン(ITS+;BD Biosciences,Palo Alto,CA)5mL/L、ウシ下垂体抽出物(BD Biosciences)25μg/m
L、上皮成長因子(BD Biosciences)20ng/mL 、3,3’,5−トリヨード−L−チロニン(Sigma)5nmol/L、デキサメタゾン(Sigma)1μmol/L、コレラ毒素(Sigma)100ng/mL、ニコチンアミド(Sigma)10mmol/L、5%Nu−血清IV培養添加物(Collaborative
Biomedical Products)および抗生物質(ペニシリンG100U/mL、ストレプトマイシン100g/mL、アンホテリシンB0.25μg/mL;Gibco−BRL,Grand Island,N.Y.)を添加したF12培地)中で増殖させた。ヒトPDAC細胞株(MNA,8988,SW1990,MIA−PaCa−2,ASPC)をATCCより購入し、確立されているプロトコールに従って培養した。NIH−3T3細胞(マウス線維芽細胞)はATCCより購入する。マウス心内皮細胞(MHEC)を、すでに公開されているプロトコール(Allportら,J.Leukoc.Biol.71:821−828(2002))に従ってマウスから単離し、2次継代培養後に使用した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を、Cloneticsより購入し、製造者のプロトコールに従って培養した。
【0198】
マウスコホート
Pdxl−Cre LSL−KrasG12Dp53L/+(Kras/p53L/+)、Pdxl−Cre LSL−KrasG12D pl6+/−(Kras/pl6+/−)、Pdxl−Cre LSL−KrasG12D(Kras)および野生型マウスにおけるイメージング研究を行った(Bardeesyら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.103:5947−5952(2006))。育種、遺伝子型同定および解析を、すでに公開されている通りに行った(Bardeesyら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.103:5947−5952(2006);およびAguirreら,Genes Dev.17:3112−3126(2003))。マウスをマサチューセッツ総合病院(MGH)において無菌環境中で飼育した。マウスは、実験動物福祉部門(Office of Laboratory Animal
Welfare)の定める動物管理基準(good animal practice)に厳密に従って管理し、動物研究はすべて動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)の承認を受けて行った。
【0199】
ファージ選択
Kras/p53マウスから単離されたマウスPDAC細胞を、ランダム化された直鎖状7アミノ酸ペプチドライブラリー(phD7,New England Biolabs,Beverly,MA)をディスプレイするファージと共に、ファージがPDAC細胞内に取り込まれる時間を考慮して、37℃で1時間インキュベートすることにより、ファージのポジティブ選択およびネガティブ選択を達成した。細胞に取り込まれたファージのスクリーニングでは、イメージング剤を細胞内に濃縮させることによる一種のシグナル増幅と共に、薬剤がkoff(オフ速度)に影響されず、さらに、有効な親和性を増加させるという追加的効用が得られる(Kellyら,Circ.Res.96:327−336(2005))。非結合ファージおよび非特異的結合ファージを除去するために、1%BSAおよび0.05%Tween−20を添加したDPBSで最初に細胞を洗浄した。0.1Mグリシン(pH2)で8分間洗浄することにより、細胞表面に結合したファージを除去した。2回目のグリシン洗浄に続き、細胞を、0.1%トリエタノールアミン(Sigma,St.Louis,MO)を含むPBS(pH 7.6)で5分間、室温で溶解させることにより、取り込まれたファージを回収した。取り込まれたファージのプールを、100μLの0.5MTris−HCl(pH7)で中和した。取り込まれたファージのプールを正常な膵臓細胞と共に30分間のインキュベートを3サイクル行うことで対抗選択を行い、正常膵管細胞およびPDACの両方と結合する全てのクローンを効率的に取り去った(Kellyら,Neoplasia 5:437−444(2003))
。取り込まれたファージを大腸菌(Escherichia coli)内で増幅し、力価を測定し、PDAC細胞について計4回のラウンドになるようさらに3回のラウンドのポジティブ選択にかけた。この選択から、30クローンを配列決定のために選択して、ELISAにより解析した(以下を参照)。
【0200】
酵素結合免疫測定法(ELISA)および多次元解析
さらなる研究に適したクローンの選択を容易にするために、ELISAおよび多次元解析を用いた(Kellyら,Mol.Imaging 5:24−30(2006))。具体的には、膵管腺癌(PDAC)および正常な細胞(非癌性)を、96ウェルプレート中で100%のコンフルエンスまで増殖させ、順次、三重反復で30のファージクローンと共に37℃でインキュベート(10および1010PFU、1時間)を行い、0.1%Tween−20を含むPBSで洗浄し、ビオチン化抗M13抗体と共にインキュベート(1:40、1時間)して、ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(1:500)で検出を行い、テトラ−メチル−ベンジジンで発色させて、650nmでの吸光度を測定した(Emax,Molecular Devices)。
【0201】
PDACまたは正常な導管細胞に対応するプレートリーダーの未処理の結果を非ピボット化して値の非正規化表を作成し、次いで各ウェルの位置をメタデータラベルの類似した配列と関連付けた。各ウェルからの値を、各アッセイプレートからの偽処理ウェル(野生型ファージ)の中央値を用いてバックグラウンドを差し引いた。バックグランドを差し引いた(Bsub)偽処理ウェルに対する値を複数のアッセイプレートにわたって累算し、1つがPDAC細胞に対応し、1つが正常OLE_LINK1導OLE_LINK1管細胞に対応する、アッセイノイズを反映した2つの偽処理分布を得て、Chauvenetの基準(Chauvenet’s criterion)により、すでに記載されている通りに調整した(Kellyら,Circ.Res.96:327−336(2005))。これらの偽処理分布を用いて、ファージ処理ウェルに対応する各値を独立に正規化し、各ウェルに対するZ正規化(Znorm)値を得た。全データの初期化、操作および正規化は、Pipeline Pilot(Scitegic)を用いて行い、データ可視化(ヒートマップ)は、DecisionSite(Spotfire)を用いて行った。
【0202】
ファージ標識
インビトロおよびインビボでの検証実験のために、すでに記載されている通りにファージを蛍光色素標識した(Kellyら,Neoplasia 8:1011−1018(2006))。簡潔に述べれば、約1×1012PFUのファージを0.3MNaHCO(pH8.6)100μL中に懸濁し、次いで、実験に応じて、NaHCO溶液に以下の色素のうちの1つを加えた:1mg/mLの蛍光色素−ヒドロスクシンイミドエステル(Cy5.5またはAF750とコンジュゲートされている)、0.25mg/mLのFITC、0.25mg/mLのRITC(ローダミンイソチオシアナート)。穏やかに攪拌しながら、室温(RT)下、暗黒中で標識反応を続けた。1時間後、反応混合物をDPBS中で1mLまで希釈し、標識ファージをPEG沈殿(3回)により精製した。蛍光色素標識ファージを200μLのDPBS中で再懸濁した。力価分析によりプラーク形成単位を測定し、分光測光により(Varian Cary 11,Varian,Palo Alto,C.A.)蛍光色素濃度を測定した。
【0203】
蛍光顕微鏡法およびフローサイトメトリーによるファージ検出
マウス膵管腺癌(PDAC)細胞、ヒトPDAC細胞(すなわち、MNA、8988、SW1990、PaCa−2、ASPC)、正常ヒト導管細胞および正常な膵臓細胞を、1mM(FITC)FITC−標識ファージクローン27または無関係ファージクローン(アミノ酸配列SNLHPSD、ネガティブ対照(配列番号XX))と共に37℃で1時間インキュベートし、DPBSで3回洗浄し、蛍光顕微鏡(Nikon Eclipse
TE2000−S,Insight QE,40×対物レンズ)により可視化した。次いで、トリプシンとのインキュベーションにより細胞を回収して、遠心分離し、Beckton Dickinson FACSCalibur(San Jose,CA)でのフローサイトメトリーにより解析した(10,000細胞/試料)。PDAC細胞の試料は、正常な細胞由来の試料よりも高い、狭い単一ピークの蛍光強度を示した(例えば、図1B)。細胞数に対する平均蛍光度をプロットして、細胞型間の相対的取込みを表した。
【0204】
エキソビボ生検標本
ファージ試験により同定された膵管腺癌(PDAC)特異的ペプチドを、組織切片上で結合について検査した。具体的には、生検標本からのマウスおよびヒトのエキソビボ組織切片を急速凍結して、OCTで包埋し、5μmの切片を切削し、次いでスライドに付着させた。組織の付着したスライドを、1μMのFITC標識ファージクローン27またはFITC標識対照ファージ(無挿入)と共に37℃で1時間インキュベートし、PBSで3回洗浄して、2%パラホルムアルデヒドで固定し、次いで蛍光顕微鏡(Nikon Eclipse TE2000−S,Insight QE,40×対物レンズ)により可視化した。
【0205】
ファージ発現ペプチドに対する結合パートナー同定
蛍光色素とファージとをコンジュゲートするために使用したものと同じNHS化学を使用して、ファージをフォトリンカー(スルホ−SAED(スルホスクシンイミジル2−[7−アミノ−4−メチルクマリン−3−アセトアミド]エチル−1,3ジチオプロピオナート);Pierce,Waltham,MA)およびビオチンタグで標識した(Kellyら,Neoplasia 8:1011−1018(2006))。2つのペトリ皿(10cm、Fisher scientific,Waltham,MA)で標的細胞株を平板培養し、細胞がプレートを覆う培養密度になるまで増殖させた。1つのコンフルエントなプレートを、1mLの改変ファージ(およそ1010PFU/uL)と共にインキュベートした。ネガティブ対照用に、2つ目のプレートを、対照(無挿入)ファージと共にインキュベートとした。両プレートを4℃で1時間、暗黒中でインキュベートした。次いで、細胞をDPBSで数回、再び洗浄して、氷上に置き、15ワット365nmのUVランプ(Spectroline,Westbury,NY)を用いて30分間光分解し、哺乳動物プロテアーゼインヒビターカクテル(Sigma,St.Louis,MO)を添加したPBS中の1%tritonX−100を用いて溶解させた。細胞溶解物を、PBS中の5%BSAで予めブロックしたDynal Strepavidinビーズ(Invitrogen,Carlsbad,CA)100μLと共に1時間インキュベートした。ビーズを10×PBS中の1%tritonX−100で2回洗浄し、次いで、DTTを含む緩衝液で4℃で一晩インキュベートして、化学的架橋を分解し、沈降したタンパク質を解離させた。溶出物の半分をPVDF膜に転写し、プレクチン−1抗体(Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)でプローブした。別の半分の溶出物をSDS/PAGEゲル(Biorad Criterion system,Hercules,CA)に負荷し、マススペクトル用銀染色試薬(mass spectroscopic compatible silver stain)(Invitrogen,Carlesbad,CA)を用いて染色した。
【0206】
次に、銀染色したバンドを切り出し、トリプシン消化/マススペック解析(Tufts
Peptide Core Facility)に供した。カラム先端が15mmの開口部に向かって先細りになる、外径360mm、内径75mmのフューズドシリカキャピラリーから、ナノボアエレクトロスプレーカラムを作製した。カラムに、逆相充填材である200A°Å 5um C18ビーズ(Michrom Bioresearches,Auburn,CA.)を、10cmの長さまで充填した。カラム内の流れは、流速350nL/分を得るためにカラムの前でスプリットにした。勾配溶離のために使用した移
動相は、(A)酢酸0.3%水99.7%および(B)酢酸0.3%アセトニトリル99.7%で構成された。Thermo LTQイオントラップ質量分析器(Thermo Corp.,San Jose,CA)によりタンデム質量スペクトルを得た。ニードル電圧は3kVに設定した。イオンシグナルが所定の閾値を超えると、機器が質量分析(MS)モードからタンデム質量分析(MS/MS)モードへと自動的に切り替わり、断片化スペクトルが生成された。MS/MSスペクトルを、SEQUESTコンピュータアルゴリズム(Yatesら,Anal.Chem.67:1426−1436(1995))を用いて、NCBI非冗長タンパク質配列データベースに対して検索した。
【0207】
プレクチン−1と結合するクローン27(Panc27)の検証
細胞成分分画:PDAC、PaCa−2、NIH−293Tおよび正常導管細胞を、6ウェルプレートの2つのウェルで一晩培養した。細胞溶解緩衝液(CLB;10mM HEPES/10mM NaCl/1mM KHPOJ 5mM NaHCO/1mM CaCl/0.5mM MgCl)/5mM EDTA/10μg/mlアプロチニン+10μg/mlロイペプチン+1ug/mlペプスタチン500μLで掻爬して回収した。回収した細胞を、5分間膨潤させて、50回ホモジナイズし、次いで7500rpmで5分間遠心分離した。沈殿物を1mlのTSE/0.1%NP40/PI中で懸濁して、30分間ホモジナイズし、次いで5000rpmで5分間遠心分離した。沈殿物を2回洗浄し、TSE/0.1%/NP40/PI50μl中で懸濁して、純粋な核を残した。細胞膜と共に細胞質ゾルを含む上清を、SWT0ローター中で、70,000rpmで1時間遠心分離した。沈殿物を再懸濁し、CLBで2回洗浄して夾雑物である細胞質タンパク質を除去した。各画分のタンパク質濃度を、BCAアッセイ(PIERCE Biotechnology)により測定し、各画分からの等量のタンパク質を、SDS−PAGEによりサイズ分離した。ウェスタンブロット法により、プレクチン−1発現に関して画分を解析した。
【0208】
競合実験:マウスPDAC細胞を、FITC標識ファージクローン27ならびに抗プレクチン−1抗体またはビークルと共に37℃で1時間インキュベートし、洗浄、剥離を行い、次いで、フローサイトメトリー(Becton Dickinson FACsCalibur(San Jose,CA))により解析した。
【0209】
ペプチド合成
プレクチン−1標的化ペプチド(PTP)(アミノ酸配列:KTLLPTP(配列番号1))および対照ペプチド(上記参照)を、ペプチドとモデル蛍光ナノ粒子(架橋化酸化鉄[CLIO]−Cy5.5)とのコンジュゲーションにGGSK(FITC)Cリンカーを用いて合成した。
【0210】
確立された手順を用いてCLIO−Cy5.5を大量に合成し(Montetら,Bioconjug.Chem.17:905−911(2006);Reynoldsら,Bioconjug.Chem.16:1240−1245(2005);Wunderbaldingerら,Acad.Radiol.9 Suppl.2:S304−S306(2002);およびSchellenbergerら,Bioconjug.Chem.15:1062−1067(2004)を参照されたい)、様々なナノ粒子コンジュゲートの合成に一定分量を使用した。簡潔には、塩化第二鉄を混合した水にT−10デキストランを溶かし、窒素パージにより脱気した。塩化第二鉄溶液を混合物に加え、水酸化アンモニウムによりpHを10にした。得られた粒子をエピクロロヒドリンおよびアンモニアで架橋し、安定性ならびに蛍光色素およびペプチドとのコンジュゲーションのためのアミン基を与えた。NHS−Cy5.5をPBS中でアミノ−CLIOと4℃で一晩反応させ、サイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。CLIOのCy5.5担持の判定を、未反応CLIOを基準として用いた、680nmでの吸光分光測定により行った(
図8A)。CLIO−Cy5.5は、以下の物理的特性を有していた:(a)大きさ38.7nm(図8B)、(b)緩和時定数R1−21.1およびR2−62.6mM/sならびに(c)CLIOナノ粒子当たり平均2.3Cy5.5。
【0211】
プレクチン−1標的化または対照ナノ粒子を作成するために、ヨード酢酸スクシンイミジルをCLIO−Cy5.5と15分間反応させ、サイズ排除クロマトグラフィーにより精製し、次いでペプチジル−システインと1時間反応させた。ペプチドコンジュゲートナノ粒子(PTP−NP)または対照(対照NP)をサイズ排除クロマトグラフィーを用いて再び精製し、ナノ粒子に対するペプチドの比を、未反応CLIOを基準として用いた497nmでの吸光分光測定により定量化した(図8C)。
【0212】
レーザー走査生体顕微鏡法
遠赤色および近赤外イメージング性能を有するレーザー走査顕微鏡(IV100,Olympus,Tokyo)が他所に詳細に記載されている(例えば、Alencarら,Int.J.Cancer 117:335−339(2005)を参照されたい)。すべてのイメージングセッションの間、マウスを麻酔し(2%イソフルランを2l/分Oで)、小さな正中切開を行い膵臓を露出させた。インビボスクリーニング法として、本発明者らは、ファージコートタンパク質を近赤外蛍光色素で標識することにより、ファージをイメージング用の標的化ナノ粒子として使用した(Kellyら,Neoplasia
8:1011−1018(2006);およびNewtonら,Neoplasia 8:772−780(2006))。Cy5.5標識ファージを、分布および腫瘍の両イメージング試験の4時間前に静脈内注射した。イメージングの10分前にSYTOXグリーンを注射した(図3)。イメージングの後に、組織学的解析のために腫瘍を除去した。ヘマトキシリン/エオシン(H&E)で連続凍結切片を染色し、M13ファージの存在に対する染色も行った。PTP−NPイメージング(図5および6)のために、IV100によるイメージングの24時間前に薬剤を注射した。イメージングの10分前にAngiosense(Visen Medical,Woburn,MA)を注射して、毛細血管系を可視化した。適当な二重励起(RITCに対しては561nm、Cy5.5に対しては633nmおよびAngiosense−750に対しては748nm)を用いて画像を得た。蛍光イメージングの後、膵臓を除去し、後のMRIイメージングでの感受性相互作用を防止するために、PBS中の1%低融点寒天で包埋した。
【0213】
生体内分布
イメージング前の3日間、マウスを無蛍光飼料(Harlen−Teklad)で維持し、生体内分布試験を実施する24時間前に、蛍光イメージング用にCy5.5と結合させたPTP−NPまたは対照プローブ(15mgFe/kg体重)の静脈内注射をマウスに行った。摘出組織をPBS中で洗浄し、Cy5.5フィルターを用いて、Siemens BonsaiシステムおよびOlympus OV100でイメージングを行った。組織中のプローブ集積を遊離プローブと比較し、生体内分布データを注入量の百分率として表した。プローブを注射していない動物からの組織/器官をイメージングし、次いでこのバックグラウンドを総シグナルから差し引くことにより、組織間の蛍光差を補正した。
【0214】
磁気共鳴イメージング(MRI)
次に、インビボで光学的にイメージングされた膵臓を包埋し、エキソビボでのMRI試験を行い、膵臓内でのシグナル強度変化を組織学と直接相関させた。直径38mmの送受信高周波コイルを有するBruker 4.7T Pharmascan magnetを用いて、摘出標本および寒天包埋標本のイメージングを行った。スカウトおよびローカライザー画像を得た後、高解像度の高速スピンエコー(FSE)およびグラディエントエコーシーケンス(GE)を行った。具体的には、T2強調FSEシーケンスに対しては、以下のパラメーターを使用した:FOVが4.94×5.46cm、マトリックスサイズ
が512×512、スライス厚が0.5mm、RAREファクターが8、TE(有効)が40ms、TRが2811ms、全収集時間2時間29分に対するNEXが50。T2強調GEシーケンスに対するパラメーターは:FOVが3×3cm、マトリックスサイズが512×512、スライス厚が0.5mm、TEが6.8ms、TRが398ms、フリップ角が30度、全収集時間2時間49分に対するNEXが50であった。次いで、基準マーカーを含めて高解像度のMRIデータのセットと組織切片とを共記載した。
【0215】
組織学および免疫組織化学
すでに記載されている通りに(Bardeesyら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 103:5947−5952(2006))、膵臓およびPDACの標本を単離して、10%パラホルムアルデヒドで固定するか、または最適切削温度(O.C.T.)コンパウンド中で凍結させた。組織学的および免疫組織化学的解析を、すでに記載されている通りに行った(Bardeesyら,(2006)同上)。
【0216】
連続凍結切片を、H&EであるいはM13(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)(図3)およびプレクチン−1(図4)の存在の有無に関して染色した。Insightカラーカメラを装着したNikon Eclipse
E400正立顕微鏡(×20および×43対物レンズ)を用いてデジタル画像を撮影した。連続凍結切片をHEで染色するか、または512 Photometrics Cascade CCDカメラ(Nikon)を装着したNikon Eclipse 80i倒立顕微鏡(203対物レンズ)を用いてPTPNP−Cy5.5の存在の有無に関して蛍光顕微鏡でイメージングした。
【0217】
実施例II
PDAC特異的ペプチドのインビトロでの選択および検証
ヒト疾患の多くの病理組織学的、ゲノム的および分子的な特徴を再現する遺伝子操作PDACマウスモデルを使用した(Carri閧窒・轣CProc.Natl.Acad.
Sci.USA.104(11):4437〜42(2007);およびBardeesyら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 103:5947−5952(2006))。Kras/p53 L/Lモデル(Bardeesyら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 103:5947−5952(2006))および野生型対照はそれぞれ、PDAC細胞に特異的なファージペプチドプールを同定するためのファージディスプレイ選択および除去手順での使用のための、明確な初期継代PDAC細胞および正常膵管細胞の供給源として役立った。選択手順に続いて、本発明者らは、30の個々のファージプラークを単離し、ELISAを行ってPDAC細胞に対して最も選択的なファージを同定した。三重反復で行われた2つの実験の結果を、図1Aで示されるヒートマップおよび図9で示される棒グラフで表す。ヒートマップは、親和性(表示のクローンのELISAアッセイによる平均吸光度値)および特異性(PDAC細胞対正常導管細胞の吸光度比)を表す。解析した30個のファージクローンのうち、16個のファージクローン(53%)がPDAC細胞に対して2倍を超える特異性を有した。ELISAおよび多次元解析に基づき、7個のクローン(番号1、5、9、15、17、22および27)が配列決定用に選択された。ELISAおよび配列決定法の例に関しては、例えば、Kellyら,Circ.Res.96:327−336(2005);Kellyら,Neoplasia 8:1011−1018(2006)を参照されたい。配列決定の結果により、クローン27および5が同一のペプチド配列(KTLLPTP、配列番号1)を共有することが示され、かつ標的PDAC細胞に対する望ましい高い親和性および特異性が実証された。
【0218】
クローン1(SGVEFLH、配列番号4)、9(SKKDTHH、配列番号5)、15(TMAPSIK、配列番号6)、17(TQHQVTA、配列番号7)および22(
VNDRNVK、配列番号8)の試験に加え、PDACマーカーとしてのクローン27の検証(図1B)を本明細書に記載の実験において行った。ファージコートタンパク質をフルオレセイン標識し、次いでフローサイトメトリーによりマウスPDACおよび正常導管細胞に対するファージクローンの結合および特異性の程度を定量化した(図1B)。この結果により、クローン27がマウスPDAC細胞に対して高度に特異的であり、正常導管細胞よりも112倍高い特異性を有することが示された(図1C)。このように、クローン27(配列番号1−KTLLPTP)は、標的PDAC細胞に対する望ましい親和性および特異性を明確に示した(Kellyら,(2006)Neoplasia 8:1011−1018;Kellyら,(2005)Circ.Res.96:327−336、これらは、すべてその内容が参照により本明細書に援用される)。ファージクローン15は2番目に高い親和性であり、残りはほぼ同じ特異性を有していた。
【0219】
同時に、これらのデータは、本明細書に記載の癌モデルに基づくファージスクリーニングが、マウスPDACのような癌細胞に高い親和性および特異性を有するファージクローンの同定および検証に有用であることを実証している。
【0220】
実施例III
ペプチドのヒトPDACに対する特異性の判定
クローン27のヒトPDAC細胞に対する特異性を、この実施例に記載されている通りに評価した。クローン27および無関係ファージクローンをFITCで標識して、FITC−27およびFITC−無関係ファージクローン(ネガティブ対照)を作成した。5つのヒトPDAC細胞株および正常ヒト導管細胞に加え、ポジティブ対照としてのマウスPDAC細胞を、各タイプのクローンと共にインキュベートし、次いで、クローンの取込みを蛍光活性化セルソーター(FACS)により解析した。FITC−27(クローン27)は、無関係ファージと比べた場合、PDAC細胞株に対して平均141(平均蛍光度のクローン27/無関係クローン比)の特異性を有していた。さらに、この2つのファージクローン(FITC−27およびFITC−無関係)は、正常ヒト導管細胞に対してほぼ同じ弱い結合(特異性=0.85)を示した(図1C)。
【0221】
実施例IV
ヒトPDAC同定のためのペプチドの使用
マウスおよびヒトPDACの検出に対する同定されたファージの有用性を以下のように実証した。蛍光色素で標識したファージ27をプローブとして用いて、正常な膵臓、局所性PanINを含む膵臓およびPDACを有する膵臓の凍結切片との結合を試験した。野生型マウス膵臓においてまたは病変に隣接する正常な領域においては結合が全く見られなかったのに対し、PanINおよびPDAC病変においては顕著な結合が見られた。対照ファージは病変を全く検出できなかった(図2、最下列)。意義深いことに、ファージクローン27がヒトPDACを特異的に検出できたのに対し、対照ファージはヒトPDAC標本を染色することができなかった(図2、右端)。これらの結果は、ファージプローブが、発達中のマウスおよびヒトPDACと結合することを実証し、PDAC特異的診断の候補剤を作成するための本発明者らのマウスモデルに基づくスクリーニング法の有用性を支持するものである。
【0222】
実施例V
PDAC標的化ファージの腫瘍局在性
ファージクローン27および15は、インビトロにおいて最も好ましい結合特性を有したため、野生型動物、PanINを有する動物および触知可能な膵臓腫瘍を有する動物におけるインビボでの結合に関して、これらのクローンをさらに試験した。蛍光標識したファージクローン27およびファージクローン15(単独または組み合わせたもの)1ナノモルを、上記動物に尾部から注射し、注射の4時間後に共焦点生体顕微鏡によりイメージ
ングを行った(図10A)。クローン27は、PanINおよびPDACで強い蛍光シグナルを発して、ファージと腫瘍細胞との結合を示唆したのに対し、野生型マウスの膵臓においては、散在する弱いシグナルのみ見られた(図3A、3Bおよび図10C)。新生および進展したPDACを有する動物に対照ファージを注射した場合、蛍光シグナルは実質的に存在しなかった(図10B)。クローン15および27は、明確に異なる膵臓内分布をまた異なるペプチド配列を示し(図10A)、これらが固有のタンパク質を標的にすることを示唆していた。しかし、クローン15が確かに膵臓に局在したのにもかかわらず、総シグナルはクローン27のものよりも少なかったため、さらなる実験ではクローン27に焦点を当てた。
【0223】
インビボでのファージクローン27の結合特異性をさらに考証するために、クローン27を注射した動物からの膵臓を固定し、ファージコートタンパク質に特異的な抗体を用いた免疫組織化学による解析を行った(図3)。PanINまたはPDACを有する領域(図3Bおよび3Cの黒枠)では、顕著なファージの取込みがあったのに対し、導管化生または正常な膵臓部位(図3Bおよび3Cの赤枠)では、ファージは検出されなかった。これらの実験は、クローン27の癌細胞に対する特異性を支持するものであり、ファージクローン27がPanINおよびPDACに局在するのに対し、正常な膵臓組織あるいは低悪性度の新生物または膵臓損傷と関連した反応性病変である導管化生部位には存在しないことを示していた(図3)(Murtaughら,Cancer Cell 11:211−213(2007))。
【0224】
実施例VI
ペプチド27に対する結合パートナーとしてのプレクチン−1同定
クローン27がインビトロおよびインビボでのヒトおよびマウスPDACに対する特異性を示したため、次の段階はその細胞結合パートナーを決定することであった。ファージをアフィニティーリガンドとして用いて、プルダウンアッセイによりマウスPDAC細胞溶解物中に固有の500kDaバンドを同定した(図4A、左パネル)。さらに、ビオチン化ファージをプローブとしたPDAC溶解物のファーウェスタン解析では、対照ファージでは認識されなかったものと同程度の分子量のバンドが同定された(図4A、右パネル)。単離したバンドの質量分光分析では、細胞骨格の、介在する、線維状の重要な架橋の要素である、プレクチン−1が明らかとなった。(図4B)(Sonnenbergら,(2007)Exp.Cell.Res.313:2189〜2203)。ファージプルダウンからの溶解物を用いたウェスタンブロットにより、プレクチン−1抗体と交差反応するバンドの存在が確認された(図4C)。プレクチン−1は、マウスおよびヒトPDAC細胞両方の核および細胞質のみならず、細胞膜中にも存在することがわかった(図4D)。正常マウス膵管細胞が低レベルのプレクチン−1発現を示したのに対し、正常ヒト膵管細胞は、細胞質および核においてプレクチン−1発現を示したが、膜上では示さなかった(図4D)。これに対し、HUVECは核において非常に低レベルのプレクチン−1発現を示した。NIH−3T3細胞は、プレクチン−1を細胞質および核内に有するが、細胞表面には有しないことが知られている(Sonnenbergら,Exp.Cell.Res.313:2189−2203(2007))ため、これらをプレクチン−1発現の細胞内位置の対照として使用した。予期されたように、対照細胞において、プレクチン−1は線維芽細胞の膜の画分には存在しなかったが、細胞質および核の画分には存在していた(図4D)。
【0225】
正常マウス、PanINを有するマウスおよびPDACを有するマウスからの切片の免疫組織化学的解析は、ウエスタン解析の所見を裏付けるものであった。正常な動物が散在性のプレクチン−1染色を有したのに対し、PanINおよびPDACでは、プレクチン−1は病変部においては発現されたが、周囲の組織では発現されなかった(図4E)。プレクチン−1の染色パターンは、図3および図4Eで示されるPDAC標的化ファージに
よる観察とほぼ同じであった。最後に、競合実験である、抗プレクチン−1抗体およびFITC標識ファージクローン27のPDAC細胞との共インキュベーションでは、96.9%の結合阻害という結果が得られた(図4F)。
【0226】
実施例VII
プレクチン−1標的化PDACイメージング剤の開発
トランスレーショナルな可能性を有する非生物学的な合成イメージング剤を開発するために、本発明者らは、PTPを化学的に合成して、磁性蛍光ナノ粒子に付着させた(PTP−NP)(図5A、模式図)。
【0227】
得られたMRI/光学的に検出可能な薬剤を、9週齢のKras/p53L/ マウス
において試験した(図6A)。この週齢では、これらのマウスは疾患の外的徴候を示さないが、通常、正常な膵臓、導管化生および線維症の部位のみならず、小型の病巣PDACも有する。標的化ナノ粒子静注投与の24時間後、これらのマウスの腹部領域において、薬剤取り込みを示唆する分散した蛍光領域が共焦点生体顕微鏡により検出された(図5B左上および図6B左)。薬剤は腫瘍組織に特異的に存在していたが、注射の10分前に投与された血管系薬剤は共存できなかった(図5B右上および図6B右)。インビボでの蛍光は、分散した病巣シグナルが見られる摘出膵臓の表面反射イメージングと相関していた(図5C、6Cおよび6D)。これに対し、対照−NPは、これらの腫瘍が同様に血管新生されていたにもかかわらず(図5B、右下)、膵臓のどの部位も表示できなかった(図5B、左下)。
【0228】
生体内分布試験により、腫瘍内に特異的に取り込まれ、プレクチン−1発現が報告されている2つの組織である筋肉または皮膚内には取込みが極わずかであることが明らかとなった(図5D)。さらに、腫瘍の取込みは、正常な膵臓に比べ10.1倍高かった。
【0229】
同様に、MRIでは、膵臓の病巣部位での薬剤の存在を示す共鳴(MR)シグナルの減少が見られた(図7A)。生体内分布データから、物質注入量の3.13%が腫瘍内に存在していた。すでに確立されている直接MRI感度の閾値である10ng(鉄)/g(組織)(Weisslederら,(1997)J,Magn.Reson.Imaging 7:258−263(1997))を用いて、得られたシグナルを検出閾値の20倍で計算した。さらに、現在の感度は、利用可能な運動補正およびマルチエコーによる化学的シーケンスを考慮すれば、以前公開されたものよりも高いと考えられる。
【0230】
組織学的解析により、PTP−NP取込みに関連したシグナル減少が、主としてPDAC部位に存在するが、正常部位または導管化生部位には存在しないことが確認された(図7B)。切片の蛍光顕微鏡法により、PTP−NP集積がPDAC領域で示されたが(図7C、左)、正常な膵臓領域では示されなかった(図7C、右)。
【0231】
その他の実施形態
上記明細書で挙げられたすべての刊行物および特許は、その内容全体が参照により本明細書に援用される。記載されている本発明の方法およびシステムの様々な修正および変更が、本発明の範囲および精神を逸脱することなく当業者には明白であろう。本発明は、特定の好適な実施形態と関連して記載されているが、特許請求される本発明は、このような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないということを理解するべきである。実際、医学、治療学、製薬、MRI、インビボイメージング、分子生物学、生化学、化学および細胞生物学あるいは関連分野の当業者には明らかである、本発明を実施するための記載された様式の様々な修正は、以下の特許請求の範囲内にあるものとする。本明細書に引用されるすべての参考文献は、その内容全体が本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出可能部分または治療剤を含む第二部分と結合された、プレクチン−1結合部分を含む第一部分を含む、ペプチドリガンド。
【請求項2】
前記プレクチン−1結合部分が、配列番号1、2または4〜8からなる群より選択されるアミノ酸配列あるいはそのペプチド模倣物である、請求項1に記載のペプチドリガンド。
【請求項3】
前記検出可能部分が、放射性同位元素、磁性化合物、X線吸収剤、化学的化合物、生物学的標識および蛍光分子からなる群より選択される、請求項1に記載のペプチドリガンド。
【請求項4】
前記治療剤が、細胞毒性部分または免疫調節性部分である、請求項1に記載のペプチドリガンド。
【請求項5】
前記第一部分と前記第二部分との間にリンカーをさらに含む、請求項1に記載のペプチドリガンド。
【請求項6】
前記リンカーが、可動性のアミノ酸配列である、請求項5に記載のペプチドリガンド。
【請求項7】
前記リンカーが、フォトリンカーである、請求項4に記載のペプチドリガンド。
【請求項8】
前記第二部分が、生理学的に不活性なナノ粒子をさらに含む、請求項1に記載のペプチドリガンド。
【請求項9】
前記ナノ粒子が、磁性、蛍光性または放射性である、請求項8に記載のペプチドリガンド。
【請求項10】
前記第二部分が、蛍光色素を含む、請求項1に記載のペプチドリガンド。
【請求項11】
前記蛍光色素が、近赤外蛍光色素である、請求項10に記載のペプチドリガンド。
【請求項12】
前記第二部分が、NIRFとコンジュゲートされた架橋酸化鉄ナノ粒子を含む、請求項1に記載のペプチドリガンド。
【請求項13】
ナノ粒子と結合された配列番号1を含む、ペプチドリガンド。
【請求項14】
前記磁性蛍光ナノ粒子が、近赤外(NIR)蛍光色素(NIRF)を含む、請求項16に記載のペプチドリガンド。
【請求項15】
膵管腺癌の診断または治療のためのあるいは膵管腺癌の診断または治療用の薬剤製造における、請求項1〜14のいずれか1項に記載のペプチドリガンドの使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【公表番号】特表2011−521897(P2011−521897A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505127(P2011−505127)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/040480
【国際公開番号】WO2009/129220
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【Fターム(参考)】