説明

臀部装着用シートを含む美容物品

【課題】臀部装着用シートを用いた美容物品であって、臀部肌への装着感、装着安定性、マッサージ効果およびシェイプアップ効果を具備し、さらに保温効果、及び、美容成分や薬効成分の揮発等を抑制する作用によって、美容成分および薬効成分が肌にもたらす効能や効果を効率よく高めることが可能なシートを提供する。
【解決手段】美容成分及び/または薬効成分を含む臀部装着用シートが美容物品の一部を構成しており、当該シートが臀部を被覆するように配置され、かつ、当該シートを臀部の位置に固定するための係止手段とを備えた美容物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臀部装着用シートを含む美容物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、女性を中心に、美容に対する関心が高まる中、エステサロンなどの施術タイプに比べ、自宅で手軽にできることから、フェイスマスクに代表されるシート型のセルフケア用品の需要が高まっている。このようなセルフケア用品を開示した文献としては、例えば特許文献1や特許文献2が挙げられる。また、ボディケアに対する関心も高く、特定部位の引き締め、マッサージ、リフトアップなどを付与した下着の需要も高まっている。
【0003】
特に、臀部においては、女性が社会進出を果たす中で、いすなどに座る機会が多くなった現代では、血行が悪くなって、リンパの流れが悪くなり、老廃物が溜まりやすく、また、皮膚のターンオーバーがうまく機能しなくなり、にきび、黒ずみ、しみ、そばかす、おでき、吹き出物、床ずれ、ブツブツ、ざらつき、乾燥肌、色素沈着、あせも、ひび等の肌に関するトラブルを抱える人が増加している。
【0004】
しかし、臀部の場合、顔などと違い、衣服や下着に隠れた部位ということもあり、気が付かなかったり、そのまま放置したりする人も多く、美容に対する関心が高まった現在でも、美容液もしくは薬液の乳液、ローション、ジェリー、クリーム、軟膏などによるスキンケアを行うのが一般的であった。
【0005】
また、臀部は加齢や筋肉の衰え、脂肪沈着によるたるみを改善し、シェイプアップされた体形を維持したいというニーズもクローズアップされてきており、スキンケアとともに引き締め効果を兼ね備えた臀部装着用美容シートが要望されている。
【0006】
また、寝たきりの介護者の場合、臀部の血行が悪くなる上に、臀部が尿や便といった排泄物や皮膚常在菌代謝物、垢などの老廃物などにより、皮膚のトラブルが発生しやすく、従来のぬるま湯や石鹸を用いた洗浄によるスキンケアだけでは、皮膚感染病を生じることがあり、上記美容目的と同様に、手軽にできるマッサージ機能も兼ね備えた、臀部のスキンケアシートが要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3944526号公報
【特許文献2】国際公開2009/116118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、臀部装着用シートを用いた美容物品であって、臀部肌への装着感、装着安定性、マッサージ効果およびシェイプアップ効果を具備し、さらに保温効果、及び、美容成分や薬効成分の揮発等を抑制する作用によって、美容成分および薬効成分が肌にもたらす効能や効果を効率よく高めることが可能なシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、以下の構成を有する。
(1)美容成分及び/または薬効成分を含む臀部装着用シートが美容物品の一部を構成しており、当該シートが臀部を被覆するように配置され、かつ、当該シートを臀部の位置に固定するための係止手段とを備えた美容物品。
(2)更に、前記臀部装着用シートを臀部に密着させるための密着強化手段を備えた、前記(1)に記載の美容物品。
(3)係止手段として、腰周りを一周する伸縮部と、密着強化手段として、臀部にフィットする被覆部とを有するパンツ型の形態を有する、前記(2)に記載の美容物品。
(4)臀部装着用シートが、少なくとも一方向における30%伸長時の伸長回復率が30〜100%の範囲であることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の美容物品。
【発明の効果】
【0011】
本発明の臀部装着用シートを用いた美容物品は、臀部ケアに関して優れた装着感と装着安定性をもたらす。また、本発明の美容物品を用いることで、マッサージ効果およびシェイプアップ効果を具備し、さらに美容成分や薬効成分が臀部にもたらす効能や効果を効率よく高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の臀部装着用シートを用いたパンツ(ショーツ型)の例(前面より見た図)。
【図2】本発明の臀部装着用シートを用いたパンツ(ショーツ型)の例(後面より見た図)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を発明の実施の形態に則して詳細に説明する。
本発明の臀部装着用シートを用いた美容物品は、当該シートが臀部を被覆することを特徴とする。美容物品の形状としては、当該美容物品、ひいては、その美容物品の一部を構成する美容シートを臀部の所定の位置に固定するための係止手段を有するオープン型パンツタイプ、あるいは、係止手段と、臀部に密着させるための密着強化手段とを併せ持つショーツ型であってもよい。
【0014】
係止手段および密着強化手段は、複数部位が別々にその機能を果たしていてもよいし、ひとつの部位がそれらの機能を併せ持つものであってもよい。例えば、伸縮性の生地で構成されて体に良くフィットする美容物品は、少なくとも、一つの部位が、係止手段と密着強化手段とを併せもっていると考えることができる。
係止手段としては、当該美容物品、ひいては、その美容物品の一部を構成する美容シートを臀部の所定の位置に固定できるものであればよく、腰周りを一周する伸縮部を設けることが好ましいが、粘着テープ、マジックテープ(登録商標)など(あるいはこれらと伸縮部を併用する態様)も挙げることができ、これらに限定されるものではない。
【0015】
以下、係止手段と、密着強化手段とを兼ね備えたパンツ(ショーツ型)を例に具体的な説明をするが、これらの説明によって、本発明の美容物品を限定するものではない。
伸縮部としては、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)、等のスチレン系熱可塑性エラストマー、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−エチレン共重合体、エチレンとC4以上のαオレフィンの共重合体、プロピレンとC4以上のαオレフィンの共重合体、3種類以上のオレフィンを重合させた共重合体等のオレフィン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマーを用いた繊維、織物、編み物、不織布、フィルム、あるいはこれらの伸縮素材を他の繊維素材と混合した繊維、織物、編み物、不織布、フィルムとの複合体としたものを挙げることができる。
【0016】
臀部にフィットする被覆部としては、上記伸縮部と同様のものが使用できる。臀部に装着することを目的とすることから、臀部の形状に追随し、引き締め効果やマッサージ効果を付与するために、伸縮性を有するものが好ましい。
不織布を製造する場合は、上述の熱可塑性エラストマー樹脂を公知のスパンボンド法、メルトブローン法等の直接不織布にする方法が挙げられる。また、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂から選ばれる偏芯タイプの鞘芯型複合繊維、またはサイドバイサイド型の複合繊維を、公知のスルーエアー法、ポイントボンド法、スパンレース法、ニードルパンチ法を用いて不織布とする方法も挙げることができ、これらの方法で不織布を製造する場合は、繊維をカードウェッブにした後、熱風処理をするか、ニードルパンチ法やスパンレース法等により交絡させるか、またはエンボスによる接着を行った後、熱風処理により熱収縮させて、不織布に構造伸縮を発現させる方法が挙げられ、また、これらを伸縮素材と複合体とする方法を挙げることができる。本発明において、「被覆部」とは、臀部装着用シートの上から、該シート、または、該シートと周囲の肌部を覆う部位を言う場合がある。
また、一方で、被覆部が、当該臀部装着用シート自体で構成されていてもよい。
いずれの場合も、臀部を覆う部位(仮に後身部という)が、前身部、及び、股当部などと一体化されてパンツが構成されている場合においては、これら部位を総称して被覆部という。
美容成分もしくは薬効成分は、臀部装着用シートの全面に含まれていてもよいし、臀部に接する一部の領域に含まれていてもよい。
さらに、この被覆部の外表面(肌と接する面と反対側の面)が、他の層で覆われていてもよい。
【0017】
また、不織布を構成する繊維は極細繊維であってもよい。極細繊維である場合、臀部との摩擦が向上し、身体の燃焼効果が高まり、痩身効果やデトックス効果を高めることができる。
【0018】
臀部装着用シートは、予め、美容物品に一体化されていてもよく、美容物品使用時に、美容物品と一体化して使用する形態であってもよい。
臀部装着用シートは、美容成分及び/または薬効成分を含んでいる。例えば、美容成分としては、保湿成分、クレンジング成分、制汗成分、香り成分、美白成分、血行促進成分、紫外線防止成分、痩身成分などを含んだ化粧水、乳液および美容液を例示することができる。又、薬効成分としては、清涼剤、消臭剤、抗菌剤、角質柔軟剤、皮脂排出抑制剤、角質溶解剤、殺菌剤、鎮痛剤、消炎剤、消毒剤、光沢剤、除光剤、治癒剤、たんぱく質除去剤、抑毛剤、保温剤、発汗剤などが挙げられる。
本発明の臀部装着用シートに用いられる美容成分や薬効成分として、ポリペプチド、例えばコラーゲン様ポリペプチドなども挙げられる。ポリペプチドの例として、特開2003−321500号公報および特開2005−60314号公報などに開示されているものが挙げられる。
美容成分及び薬効成分は、臀部装着用シートに含まれている状態で、液状であってもよく、固形状であってもよく、ゲル状であってもよい。固形状やゲル状である場合、当該成分は、体温や、美容物品装着時の臀部への押し付け効果(体温、圧力)等によって、溶融し、肌表面を当該成分で濡らすものであればよい。このようなものとして、例えば、体温付近で溶け出すマイクロカプセルが例示でき、マイクロカプセル内部に美容成分及び薬効成分が包含されて、臀部に装着した時に体温で美容成分及び薬効成分が臀部に付着するような態様を例示することができる。
このような固形状の成分は、臀部装着用シート表面に接着剤等の接着手段で固定されていてもよいし、一旦、液状で臀部被覆シート中に浸漬させたのちに固化処理を施すことによって、当該シート中に固定するなどしたものであってもよい。
【0019】
臀部装着用シートは、美容成分や薬効成分を含まない状態で、少なくとも一方向における30%伸長時の伸長回復率が、好適には30〜100%の範囲である。特に好適には50〜100%であり、臀部装着用シートがこの範囲にあると、臀部への装着感、装着安定性、マッサージ効果およびシェイプアップ効果及び、美容成分および薬効成分が肌にもたらす効能や効果を効率よく高めることができる。
【0020】
なお、伸縮性や変形性は、全方向に等方的でもよく、特定方向に異方的であってもよい。
【0021】
本発明の臀部装着用シートとしては、熱可塑性エラストマー樹脂、例えば、既に公知で市販されているポリウレタンからなる不織布が挙げられる。
また、特開2007−9403号に例示される、同一ダイに配設された異なるノズルから、ポリオレフィン類とエラストマーからなる異種の溶融ポリマーを同時に押し出して溶融紡糸を行い、ポリオレフィン類からなる繊維とエラストマーからなる繊維が混合された混合繊維からなる不織布が挙げられる。
特開2008−291418号に例示されるエラストマー長繊維と非エラストマー長繊維を含有する不織布が挙げられる。
また、特開2005−171456号に例示される第一成分がエチレンと炭素数が3〜20のα−オレフィンとからなるエチレン・α−オレフィン共重合体であり、第二成分が熱可塑性エラストマーである不織布が挙げられる。
また、特開2009−228147号に例示される、少なくとも一方向に伸長性を有する親水性短繊維層と、エラストマー長繊維を含む極細繊維層とが部分的に熱圧着処理されることによって一体化されてなる伸縮性積層シートが例示される。
また、特許3944526号に例示される親水性繊維層の一方または両面に、極細繊維層が位置し、親水性繊維層と極細繊維層とが一体化されてなるシートが挙げられる。
また、PCT/JP2008−000656号に例示される一方向に伸張する綿素材主体の不織シートと、前記不織シートの片面側に配置され弾性を有する繊維状体を用いて形成された不織伸縮シートを加熱圧着することにより接合された不織複合シートが挙げられる。
【0022】
図1、図2は本発明の臀部装着用シートを用いたパンツ(ショーツ型)を例示している。当該パンツは、腰周りの伸縮部、被覆部(前身部1、後伸部2、股当部3からなる)で形成されている。臀部装着用シートが、美容物品の被覆部を構成している。これら各部材は、縫製または超音波溶着もしくは熱溶着で接合されている。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の内容について実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
臀部装着用シートとしては、2種類の熱可塑性エラストマーを用いた伸縮性を有する混繊メルトブローン不織布「EL Fino EL5000((商品名)、チッソ株式会社製)」で、目付けが100g/mを使用した。
使用した不織布の伸長回復率をJIS L1096「一般織物試験方法」に準拠して測定した。試験片としては、同じ材質、目付けで、幅25mm、長さ200mmの不織布を別途作製し、不織布機械方向および機械垂直方向について測定した。この試験片を引張試験機オートグラフAG-X(商品名、(株)島津製作所製)を用いて、チャック間を100mmに設定し試験片を固定した。引張速度300mm/分で130mmまで伸長させた後、同じ速度で100mmに戻し、試験片に掛かる負荷を0とした。その直後、再び同じ速度で130mmまで伸長させ、負荷が再び始まる時の伸びた長さをLmmとした。伸長回復率は下記式に従って求めた結果、98%と充分に高い値を示した。
30%伸長時の伸長回復率(%)={(30※1−L)/30※1}×100
※1:試験片を伸長させた長さ(mm)
【0025】
この臀部装着用シートに、当該シートの質量基準で、美容成分として、何れも液状の、コラーゲン様ペプチド「ピュアコラ((商品名)、チッソ株式会社製)」0.05質量%、ヒアルロン酸ナトリウム「ヒアルロン酸ナトリウム(CHA)((商品名)、チッソ株式会社製)」0.10質量%、イソプロピルアルコール0.5質量%をディップ方式にて含浸させた後、70℃で乾燥させた。
【0026】
この美容成分を含む臀部装着用シートを用いてパンツ(ショーツ型)を作成した。臀部装着用シートが、被覆部をはじめ伸縮部を含む美容物品全体を構成しており、各部材は超音波溶着で一体化した。美容物品は、伸縮性を有し、臀部にフィットするものであった。女性の被験者10人に対して、12時間装着してもらい、美容効果および装着感について評価結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の臀部装着用シートを含む美容物品は、臀部ケアに関して優れた装着感と装着安定性をもたらす。また、本発明の美容物品を用いることで、マッサージ効果およびシェイプアップ効果を具備し、さらに、保温効果、及び、美容成分や薬効成分の揮発等を抑制する作用によって、美容成分および薬効成分が臀部にもたらす効能や効果を効率よく高めることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
美容成分及び/または薬効成分を含む臀部装着用シートが美容物品の一部を構成しており、当該シートが臀部を被覆するように配置され、かつ、当該シートを臀部の位置に固定するための係止手段とを備えた美容物品。
【請求項2】
更に、前記臀部装着用シートを臀部に密着させるための密着強化手段を備えた、請求項1記載の美容物品。
【請求項3】
係止手段として、腰周りを一周する伸縮部と、密着強化手段として、臀部にフィットする被覆部とを有するパンツ型の形態を有する、請求項2記載の美容物品。
【請求項4】
臀部装着用シートが、少なくとも一方向における30%伸長時の伸長回復率が30〜100%の範囲であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の美容物品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−184516(P2012−184516A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46358(P2011−46358)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【出願人】(399120660)JNCファイバーズ株式会社 (41)
【Fターム(参考)】