説明

臍帯由来間葉系幹細胞を含む組成物

【課題】安全性及び倫理上の問題を克服できるとともに細胞の供給面でも有利である、組織再生用の組成物を提供すること。
【解決手段】臍帯から採取される幹細胞(臍帯由来間葉系幹細胞)を有効成分として用いた移植用組成物が提供される。このましい一態様では臍帯静脈内皮細胞が併用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織の修復ないし再生(再建)を目的として生体に移植される組成物に関する。詳しくは、臍帯由来の幹細胞を用いた移植用組成物及びその用途(当該組成物を用いた施術等)等に関する。
【背景技術】
【0002】
先天性新生児疾患に対し臓器移植や胚性幹細胞(ES細胞)を用いた細胞移植が検討されているが(例えば特許文献1を参照)、臓器移植は臓器不足問題、ES細胞は安全性や倫理的問題を抱えている。一方、骨髄由来の自己間葉系幹細胞を用いた細胞移植治療が応用されつつあるが、骨髄からの幹細胞採取には激しい生体侵襲を伴う。特に先天性疾患を持つ新生児の骨髄からの細胞採取は現実的には不可能である。また、ヒト臍帯血由来の細胞を再生医療に利用しようとする試みもあるが(例えば特許文献2、非特許文献1を参照)、臍帯血中の幹細胞の存在率は非常に低く、幹細胞の安定供給は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005ー521402号公報
【特許文献2】特開2008−179642号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Mariane secco et al., Stem cells 2008; 26: 146-150
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、安全性及び倫理上の問題を克服でき且つ細胞の供給面でも有利である、組織の修復ないし再生に有用な組成物及びその用途を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の下、本発明者らは「分娩後に医療廃棄物として処分されてしまう臍帯」に注目した。全長約30〜70cmの臍帯は胎児由来の組織であり、経膣分娩および帝王切開にて娩出された臍帯の血管周囲の「ワルトンゼリー(Wharton's jelly)」からは、大量の臍帯由来間葉系幹細胞(umbilical cord matrix stromal cells: UCMSC)が採取でき、同時に臍帯静脈からは、組織再生における血管新生に有用な臍帯静脈内皮細胞(Human Umbilical Vein Endothelial Cells : HUVEC)が採取できる。
【0007】
本発明者らはまず、UCMSCの各種特性を解析することにした。その結果、UCMSCが骨髄由来間葉系幹細胞(Bone Marrow Mesenchymal Stem Cell: BMMSC)よりも有意に高い増殖能を示した。また、UCMSCの特徴として、CD73陽性、CD90陽性、CD105陽性、CD11b陰性、CD34陰性、CD45陰性、HLA-DR陰性であることが確認された。一方、骨細胞、軟骨細胞及び脂肪細胞への分化能を有することが示されるととともに、神経細胞への分化も可能であることが明らかとなった。更なる検討では、培地中への骨形成タンパク質2(Bone Morphogenetic Protein 2: BMP-2)の添加によって、骨細胞への分化誘導を促進できることがわかった。また、HUVECとの共培養或いは低酸素条件下での培養によって、UCMSCの骨分化能が亢進することが示唆された。一方、移植実験の結果、UCMSCが骨再生及び創傷治癒のための細胞源として極めて有用であること、及びHUVECを併用することによって再生ないし治療効果が向上することが判明した。
【0008】
以上の通り、本願発明者らの鋭意検討の結果、UCMSCが再生医療のための細胞源として極めて優秀であることが判明するとともに、UCMSCを臨床応用する際に有益な数々の知見がもたらされた。以上の成果に基づき、以下の発明が提供される。
[1]臍帯由来間葉系幹細胞を含む移植用組成物。
[2]臍帯由来間葉系幹細胞が、ワルトンゼリー(Wharton's jelly)由来である、[1]に記載の移植用組成物。
[3]新生児脳室周囲白質軟化症、先天性心疾患又は先天性唇顎口蓋裂の治療用である、[1]又は[2]に記載の移植用組成物。
[4]臍帯由来間葉系幹細胞が、採取後に分化誘導処理をしていない未分化型臍帯由来間葉系幹細胞であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の移植用組成物。
[5]臍帯由来間葉系幹細胞が、CD73陽性、CD90陽性、CD105陽性、CD11b陰性、CD34陰性、CD45陰性、HLA-DR陰性である、[4]に記載の移植用組成物。
[6]皮膚組織又は神経組織の再生用である、[4]又は[5]に記載の移植用組成物。
[7]臍帯由来間葉系幹細胞が、特定の細胞系譜へと分化誘導した分化誘導型臍帯由来間葉系幹細胞であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の移植用組成物。
[8]骨組織、軟骨組織、神経組織、筋肉組織又は血管組織の再生用である、[7]に記載の移植用組成物。
[9]分化誘導型臍帯由来間葉系幹細胞が、アルカリフォスファターゼ活性を有し、且つI型コラーゲン陽性、RUNX2陽性、オステオカルシン陽性であり、骨組織の再生用である、[7]に記載の移植用組成物。
[10]分化誘導型臍帯由来間葉系幹細胞が、骨形成タンパク質2(BMP-2)の刺激によってアルカリフォスファターゼ活性が亢進した細胞である、[7]に記載の移植用組成物。
[11]分化誘導型臍帯由来間葉系幹細胞が、臍帯静脈内皮細胞との共培養によってアルカリフォスファターゼ活性が亢進した細胞である、[7]に記載の移植用組成物。
[12]分化誘導型臍帯由来間葉系幹細胞が、低酸素環境下での培養によってアルカリフォスファターゼ活性が亢進した細胞である、[7]に記載の移植用組成物。
[13]低酸素環境下での培養が、デフェロキサミンを添加した培地を用いた培養である、[12]に記載の移植用組成物。
[14]臍帯静脈内皮細胞を組み合わせてなる、[1]〜[13]のいずれか一項に記載の移植用組成物。
[15]臍帯由来間葉系幹細胞と臍帯静脈内皮細胞を含有することを特徴とする、[14]に記載の移植用組成物。
[16]臍帯由来間葉系幹細胞を含有する第1構成要素と、臍帯静脈内皮細胞を含有する第2構成要素とからなるキットであることを特徴とする、[14]に記載の移植用組成物。
[17]臍帯由来間葉系幹細胞を含有し、その移植時に臍帯静脈内皮細胞が併用移植されることを特徴とする、[14]に記載の移植用組成物。
[18]臍帯由来間葉系細胞のドナーと、臍帯静脈内皮細胞のドナーが同一である、[14]〜[17]のいずれか一項に記載の移植用組成物。
[19][1]〜[18]のいずれか一項に記載の移植用組成物を、標的部位に注入、埋入、填入、又は塗布することを特徴とする、組織の修復ないし再生方法。
[20]臍帯由来間葉系幹細胞と臍帯静脈内皮細胞とを共培養するステップを含む、アルカリフォスファターゼ活性が亢進した細胞の調製法。
[21]臍帯由来間葉系幹細胞を低酸素環境下で培養するステップを含む、アルカリフォスファターゼ活性が亢進した細胞の調製法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、UCMSCの増殖能を示すグラフである。経膣分娩で得られた臍帯由来のUCMSC(●)、帝王切開で得られた臍帯由来のUCMSC(▲)及び骨髄間葉系幹細胞(■)の間で増殖率を比較した。*有意差あり。
【図2】図2は、UCMSCの細胞表面マーカーを解析した結果である。各表面抗原についてのフローサイトメトリーのチャートを示す。
【図3】図3は、骨細胞への分化誘導後のUCMSCのアリザリンレッド染色像(左下)、軟骨細胞への分化誘導後のUCMSCのアルシアンブルー染色像(中央上)、脂肪細胞への分化誘導後のUCMSCのOil-red-o染色像(中央下)、神経細胞への分化誘導後のUCMSCの染色像(右上:抗ネスチン抗体/DAPI染色、右下:抗βIII−チューブリン抗体/DAPI)を示す。左上は拡大培養後のUCMSCの顕微鏡像。
【図4】図4は、臍帯由来のHUVECの特性を解析した結果である。上段左は拡大培養後のHUVECの顕微鏡像、上段中央(抗vWF抗体/DAPI)及び上段右(抗CD31抗体/DAPI)はHUVECの蛍光免疫染色像である。下段はフローサイトメトリーの結果である。
【図5】図5は、BMP-2を添加した培地で培養したUCMSCのアルカリフォスファターゼ活性を示すグラフ(上)と、骨前駆細胞系譜マーカーの遺伝子発現を解析した結果(下)である。*有意差あり。
【図6】図6は、UCMSC単独で培養した群(UCMSC)と、UCMSCをHUVECと共培養した群(UCMSC & HUVEC)の間でアルカリフォスファターゼ活性(14日目)を比較したグラフである。
【図7】図7は、通常の骨分化誘導培地で培養したUCMSC(Dex(+))と、通常の骨分化誘導培地にBMP-2を添加して培養したUCMSC(Dex(+)-DFO(+))との間でアルカリフォスファターゼ活性(7日目)を比較したグラフ(上)と、低酸素応答因子や血管新生因子の遺伝子発現を解析した結果(下)である。ネガティブコントロールとして、デキサメタゾンを添加しない骨分化誘導培地で培養したUCMSC(Dex(-))を用いた。
【図8】図8は、異所性骨化検討モデルを用いたUCMSC移植実験の結果(移植6週後のヘマトキシリン・エオジン染色像)である。ヌードマウスの背部皮下にポケットを形成し細胞調整物を移植し、6週後に組織学的評価を行った。左はSHAM群、中央はUCMSCとハイドロキシアパタイトの混和物移植群、右はUCMSC、HUVEC及びハイドロキシアパタイトの混和物移植群である。
【図9】図9は、創傷治癒検討モデルを用いたUCMSC移植実験の結果(創部縮小率のグラフ)である。生検用パンチにて表皮真皮層を全層で切除し創傷を作製したヌードマウスにI型コラーゲンゲルに懸濁した細胞を移植した。UCMSCのみを使用した群(▲)とUCMSCとHUVECを併用した群(●)の間で創部縮小率を比較した。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(臍帯由来の幹細胞を用いた組成物)
本発明の第1の局面は臍帯由来の幹細胞を用いた移植用組成物に関する。本明細書において用語「移植用組成物」とは、生体外で調製される組成物であって、欠損や奇形或いは機能不全などの障害を認める組織や臓器などの修復ないし再生を目的として生体に移植されるものをいう。本発明の組成物は例えば骨組織、軟骨組織、脂肪組織、神経組織、皮膚組織、筋肉組織、血管組織の修復ないし再生に利用される。本発明の組成物は、組織の再生が治療効果をもたらすことになる各種疾病の治療、例えば先天性神経疾患である新生児脳室周囲白質軟化症、先天性心疾患で出産後手術が必要となるものや先天性唇顎口蓋裂の治療、骨欠損や骨変形の治療、各種神経疾患(脊髄損傷、末梢神経麻痺等の外傷性疾患、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、進行性核上清麻痺、ハンチントン病、多系統萎縮症、脊髄小脳変性症等の神経変性疾患、脳虚血、脳内出血等に伴う脳梗塞よる神経細胞の変性・脱落、神経細胞の障害を伴う網膜疾患など)、創傷治癒(創傷治癒促進、ケロイド予防、瘢痕予防、及び/又は皮膚質改善)等へ適用され得る。
【0011】
本発明の組成物は臍帯由来間葉系幹細胞(以下、説明の便宜上、「UCMSC」と称することがある)を含むことを特徴とする。臍帯は胎児と胎盤を繋ぐ管状組織であり、2本の動脈及び1本の静脈を内包する。これらの血管の周囲にはワルトンゼリー(Wharton's jelly)と呼ばれる組織が存在する。本発明の組成物を構成する細胞は好ましくは当該組織に由来する。
【0012】
UCMSCの採取・調製法の一例を以下に示す。この採取・調製法では(1)臍帯の採取、(2)酵素処理、(3)細胞培養、(4)細胞の回収、を順に行う。
【0013】
(1)臍帯の採取
経膣分娩および帝王切開にて娩出された臍帯を回収する。臍帯血を除去した後、無菌処理を行う。無菌処理にはポピドンヨードなどを用いることができる。臍帯をメスで切開し開き、臍帯静脈・臍帯動脈を周囲のWharton's jellyとともに分離する。
【0014】
(2)酵素処理
分離・回収した組織をコラゲナーゼで処理した後、臍帯動静脈を取り除く。続いて5分間の遠心操作(5000回転/分)により細胞(UCMSC)を回収する。
【0015】
(3)細胞培養
細胞を4ccの間葉系幹細胞用培地に懸濁し、直径6cmの付着性細胞培養用ディッシュに播種する。5%CO2、37℃に調整したインキュベーターで培養する。サブコンフルエント(培養容器の表面の約70%を細胞が占める状態)又はコンフルエントに達したときに細胞を0.05%トリプシン・EDTAにて5分間、37℃で処理する。ディッシュから剥離したUCMSCを直径10cmの付着性細胞培養用ディッシュに播種し拡大培養を行う。継代培養を繰り返し行ってもよい。例えば継代培養を1〜8回行い、必要な細胞数(例えば約1×107個/ml)まで増殖させる。以上の培養の後、細胞を回収して保存することにしてもよい(保存条件は例えば-198℃)。このように保存し、将来の骨・軟骨・神経などの疾患(特に難治性疾患)の治療に適用すれば、安全で且つ低侵襲な自己細胞による再生医療が提供できる。尚、様々なドナーから回収した細胞をUCMSCバンクの形態で保存することにしてもよい。
【0016】
(4)細胞の回収
次に、細胞を回収する。トリプシン処理等で培養容器から細胞を剥離した後、遠心処理を施すことによって細胞を回収することができる。このようにして回収した細胞を用いて本発明の組成物を調製する。
【0017】
本発明の一態様では、上記の如き調製法によって調製したUCMSCを特定の細胞へ分化誘導することなく、本発明の組成物に使用する。即ち、採取後に分化誘導をしていないUCMSC(本明細書において「未分化型臍帯由来間葉系幹細胞」又は「未分化型UCMSC」とも呼ぶ)を有効成分として用いる。この態様の組成物は例えば創傷治癒(後述の実施例を参照)や神経組織再生に有効である。この態様で使用するUCMSCはCD73陽性、CD90陽性、CD105陽性、CD11b陰性、CD34陰性、CD45陰性、HLA-DR陰性である。これらの細胞表面マーカーの発現の有無は常法で調べればよい。例えば、フローサイトメトリーや蛍光免疫組織染色法を利用することによって、特定の細胞表面マーカーの発現の有無を容易に調べることができる。フローサイトメトリー解析には例えばFACS Calibur(ベクトンディッキンソン)を用いることができる。DAPIで核染色後の多重染色標本の解析には例えば共焦点レーザー顕微鏡A1Rsi(ニコン社)を用いることができる。
【0018】
別の一態様では、調製したUCMSCを特定の細胞系譜へと分化誘導した後に本発明の組成物に使用する。分化誘導処理を施したUCMSCのことを本明細書では「分化誘導型臍帯由来間葉系幹細胞」又は「分化誘導型UCMSC」と呼ぶ。使用目的に応じて、特定の細胞(例えば骨系細胞(骨芽細胞、骨細胞、破骨細胞、軟骨細胞等)、神経系細胞(ドーパミン産生細胞等の各種中枢神経細胞、末梢神経細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、シュワン細胞)、筋芽細胞、筋細胞、心筋細胞、脂肪細胞)へと分化誘導した分化誘導型UCMSCが用意される。
【0019】
例えば、骨系細胞へと分化誘導した分化誘導型UCMSCは骨組織や軟骨組織の再生に有効であり、先天性唇顎口蓋裂、骨欠損や骨変形等の治療に適する。同様に、神経系細胞へと分化誘導した分化誘導型UCMSCは神経組織の再生に有効であり、慢性脊髄損傷、慢性末梢神経麻痺、慢性脳梗塞等の外傷性疾患(好ましくは成熟型神経細胞やオリゴデンドロサイト・シュワン細胞に分化誘導させた細胞の混合物を用いる)、筋萎縮性側索硬化症(好ましくは脊髄、脳幹の運動ニューロンに分化誘導させた細胞を用いる)、パーキンソン病(好ましくはドーパミン産生細胞に分化誘導させた細胞を用いる)、脊髄小脳変性症(好ましくは小脳プルキンエ細胞や顆粒細胞に分化誘導させた細胞を用いる)等の治療に適する。
【0020】
特定の細胞への分化誘導は常法で行うことができる。一例を示すと、骨芽細胞又は骨細胞への分化誘導のための典型的な手法では、培養液中に3種類の添加剤、即ちデキサメタゾン(Dex)、β−グリセロリン酸ナトリウム(β−GP)、及びL−アスコルビン酸二リン酸塩(AsAP)を添加することによって(又はこれらの添加剤を含有する培地(骨誘導培地)に交換することによって)、骨系細胞への分化を促す。これらの添加剤の添加量は例えば、デキサメタゾンについては約10-7M、β−グリセロリン酸ナトリウムについては約10mM、L−アスコルビン酸二リン酸塩については約0.2mMとする。好ましくは、骨形成タンパク質2(Bone Morphogenetic Protein 2; BMP-2)も併用し、骨系細胞への分化を促進させる。BMP-2の添加濃度は好ましくは50 ng/ml〜100 ng/mlとする。分化誘導中は適宜培地交換を行う。例えば3日に一度の頻度で培地交換を行う。分化誘導のための培養は例えば1日間〜14日間継続する。
【0021】
一方、神経細胞の一種であるドーパミン産生神経細胞への分化誘導には以下の2工程からなる方法を利用できる。第1工程では、ポリ-L-リジンでコートされたディッシュを用い、例えば12.5 U/ml Nystatin、N2 supplement、20ng/ml bFGF及び20ng/ml EGFを含んだDMED培地にて歯髄幹細胞を2〜3日間培養する。この工程により、歯髄幹細胞は神経幹細胞へと分化誘導される。第2工程では、第1工程後の細胞を例えばB27 supplement、1mM db-cAMP、0.5mM IBMX、200μMアスコルビン酸及び50ng/ml BDNFを含むNeurobasalTM培地にて6〜7日間培養する。誘導されたドーパミン産生神経細胞は、チロシンヒドロキシラーゼに対する抗体を用いて免疫染色にて確認することができる。以上の方法の他、bFGF存在下で培養した後に浮遊凝集培養系で培養する方法(Studer, L. et al.: Nat. Neurosci., 1: 290-295, 1998)、bFGF及びグリア細胞株の培養上清の存在下で培養する方法(Daadi, M. M. and Weiss, S. J.: Neuroscience, 19: 4484-4497, 1999.)、FGF8、Shh、bFGF及びアスコルビン酸等を利用した方法(Lee, S. H. et al.: Nat. Biotechnol., 18 : 675-679, 2000.)、骨髄間質細胞と共培養する方法(Kawasaki, H. et al.: Neuron, 28 : 31-40, 2000.)等、神経幹細胞又は胚性幹細胞をドーパミン産生神経細胞へ分化誘導させる方法として報告された各種方法を必要に応じて適宜修正した上で利用してもよい。
【0022】
また、アストロサイトへの分化誘導には以下の2工程からなる方法を利用できる。第1工程では、ポリ-L-オルニチンとフィブロネクチンを二重コートしたディッシュを用い、例えばN2 supplement及び10ng/ml bFGFを含むDMEM/F12培地にて歯髄幹細胞を4日間培養する。第2工程では、更に80ng/ml LIF、80ng/ml BMP2を加えた培地で3日間培養する。分化誘導されたアストロサイトは、GFAPに対する抗体を用いた免疫染色にて確認することができる。
【0023】
オリゴデンドロサイトへの分化誘導には以下の2工程からなる方法を利用できる。アストロサイトへの分化誘導と同様に第1工程では、ポリ-L-オルニチンとフィブロネクチンを二重コートしたディッシュを用い、例えばN2 supplement、10ng/ml bFGF及び0.5%FCSを含むDMEM/F12培地にて歯髄幹細胞を4日間培養する。この工程により歯髄幹細胞はオリゴデンドロサイト前駆細胞へと誘導される。続く第2工程では20ng/ml T3 (Triiodothyronine)、20ng/ml T4 (Thyroxine)及びN2 supplementを含むDMEM/F12培地にて4日間培養する。分化誘導されたオリゴデンドロサイトはO4に対する抗体を用いて確認することができる。
【0024】
後述の実施例に示す通り、UCMSCをHUVECと共培養することによって、驚くべきことに、骨系細胞への分化の指標となるアルカリフォスファターゼ(ALP)活性の有意な上昇を認めた。このことは、HUVECと共培養すればUCMSCのアルカリフォスファターゼ活性が亢進すること、換言すればUCMSCの骨分化能を亢進できることを示唆する。この知見に基づき本発明の一態様では、HUVECとの共培養によってアルカリフォスファターゼ活性が亢進した細胞を使用する。当該態様の組成物によれば、より高い骨組織再生効果を期待できる。尚、上記知見は、UCMSCをHUVECと共培養すればアルカリフォスファターゼ活性が亢進した細胞が得られることを意味するものであり、それ自体が重要な価値を有する。
【0025】
HUVECとの共培養は、単独で、或いは上記の分化誘導操作(即ち、デキサメタゾン、β−グリセロリン酸ナトリウム及びL−アスコルビン酸二リン酸塩を添加した培地、或いはこれら3成分に加えてBMP-2を添加した培地等を使用した、骨細胞への分化誘導操作)と組み合わせて用いられる。後者の場合(上記の分化誘導操作との組み合わせ)には、例えば、上記の分化誘導操作の後にHUVECとの共培養を行うという培養工程、HUVECとの共培養の後に上記の分化誘導操作を行うという培養工程、及び上記の分化誘導操作をHUVECの共存下で行うという培養工程のいずれを採用してもよい。
【0026】
一方、疑似低酸素状態を形成する試薬として知られるデフェロキサミン(DFO)を添加した培地で培養することによって、驚くべきことに、骨系細胞への分化の指標となるアルカリフォスファターゼ(ALP)活性の有意な上昇を認めた(後述の実施例を参照)。このことは、低酸素環境下での培養によれば、UCMSCのアルカリフォスファターゼ活性が亢進すること、換言すればUCMSCの骨分化能を亢進できることを示唆する。この知見に基づき本発明の一態様では低酸素環境下での培養によってアルカリフォスファターゼ活性が亢進した細胞を使用する。当該態様の組成物によれば、より高い骨組織再生効果を期待できる。尚、上記知見は、UCMSCを低酸素環境下で培養すればアルカリフォスファターゼ活性が亢進した細胞が得られることを意味するものであり、それ自体が重要な価値を有する。
【0027】
本明細書において用語「低酸素環境下」は、低酸素雰囲気下(即ち実際に酸素が少ない環境下)と、酸素濃度は低くないものの、低酸素状態の場合と同等の刺激、影響を細胞に与える環境下(即ち疑似低酸素環境下)を包含する。ここでの「低酸素」とは、常酸素濃度(21%)を下回る酸素濃度をいう。低酸素状態における酸素の濃度は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。培養に供する細胞の生存を維持するため、最小限度の酸素濃度は必要である。従って、酸素濃度の下限値は例えば0.01%、好ましくは0.1%、より好ましくは0.5%、更に好ましくは1.0%である。
【0028】
疑似低酸素環境はデフェロキサミン(DFO)やCoCl2、ピコリン酸などの低酸素状態誘導剤によって形成することができる。好ましくは、培地中にデフェロキサミン(DFO)を添加することによって低酸素状態が形成される。
【0029】
低酸素環境下での培養は、単独で、或いは上記の分化誘導操作(即ち、デキサメタゾン、β−グリセロリン酸ナトリウム及びL−アスコルビン酸二リン酸塩を添加した培地、或いはこれら3成分に加えてBMP-2を添加した培地等を使用した、骨細胞への分化誘導操作)及び/又はHUVECとの共培養と組み合わせて用いられる。後者の場合(上記の分化誘導操作及び/又はHUVECとの共培養との組み合わせ)の培養工程の具体例を示せば、上記の分化誘導操作の後に低酸素環境下での培養を行うという培養工程、低酸素環境下での培養の後に上記の分化誘導操作を行うという培養工程、上記の分化誘導操作を低酸素環境下で行うという培養工程、低酸素環境下での培養の後にHUVECとの共培養を行い、続いて上記の分化誘導操作を行うという培養工程、低酸素環境下での培養の後に上記の分化誘導操作を行い、続いてHUVECとの共培養を行うという培養工程である。尚、上記知見は、HUVECと共培養すればUCMSCのアルカリフォスファターゼ活性が亢進した細胞が得られることを意味するものであり、それ自体が重要な価値を有する。
【0030】
本発明の一態様では、臍帯由来間葉系幹細胞(UCMSC)と臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を組み合わせて用いる。本明細書において「臍帯由来間葉系幹細胞(UCMSC)と臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を組み合わせて用いる」又は「臍帯由来間葉系幹細胞(UCMSC)と臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を組み合わせてなる」とは、臍帯由来間葉系幹細胞(UCMSC)と臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)が併用されることと同義である。併用の具体的な態様については後述する。
【0031】
好ましくは、UCMSCのドナーとHUVECのドナーを同一にする。換言すれば、特定の臍帯から得られるUCMSC及びHUVECを組み合わせて用いることが好ましい。より良好な相互作用を期待できるとともに、両細胞のドナーと移植を受けるレシピエントを同一にした適用(即ち完全な自家移植)も可能になるからである。尚、HUVECは成熟内皮細胞マーカーであるCD31陽性、内皮前駆細胞マーカーであるCD34陽性、血球系細胞マーカーであるCD45陰性という特徴を備える(後述の実施例の欄を参照)。
【0032】
後述の実施例に示す通り、本発明者らの検討の結果、UCMSCとHUVECを併用することによって、驚くべきことに、骨系細胞への分化の指標となるアルカリフォスファターゼ(ALP)活性の有意な上昇を認めた。この事実は、骨組織の再生を目的とした場合にUCMSCとHUVECの併用が特に有効であることを示すとともに、このような適用形態が有利な効果をもたらすことを意味する。
【0033】
一方、UCMSCとHUVECを併用すると創傷に対する高い治療効果が奏されることも明らかとなった。従って、UCMSCとHUVECの併用は創傷治癒への適用にも好適であり、優れた治療効果をもたらす。
【0034】
UCMSCとHUVECを組み合わせて用いる当該態様の場合、例えばUCMSC(未分化型UCMSC又は分化誘導型UCMSC)とHUVECを混合した配合剤として本発明の移植用組成物が提供される。このような配合剤型の移植用組成物は、予め調製したUCMSCと同じく予め調製したHUVECを生理食塩水や適当な緩衝液(例えばリン酸系緩衝液)等を溶媒として混合すればよい。
【0035】
一方、例えば、UCMSCを含有する第1構成要素と、HUVECを含有する第2構成要素とからなるキットの形態で本発明の移植用組成物を提供することもできる。この場合、レシピエントに対して同時又は所定の時間的間隔を置いて両要素が移植されることになる。好ましくは、両要素を同時に移植することにする。UCMSCとHUVECの相互作用による効果の最大化を図るためである。ここでの「同時」は厳密な同時性を要求するものではない。従って、両要素を混合した後に対象へ移植する等、両要素の移植が時間差のない条件下で実施される場合は勿論のこと、片方の移植後、速やかに他方を移植する等、両要素の移植が実質的な時間差のない条件下で実施される場合もここでの「同時」の概念に含まれる。一方、片方の移植後、所定の時間差で他方を移植する場合は、両要素の相互作用が良好に奏されるよう、時間差を可及的に短く設定することが好ましい。例えば、片方の移植後3時間以内、好ましくは1時間以内、更に好ましくは30分以内に他方を移植する。
【0036】
UCMSCを含有する移植用組成物とし、その移植時にHUVECが併用移植されるようにしてもよい。この場合の移植用組成物とHUVECの移植のタイミングは、上記のキットの形態の場合と同様である。即ち、好ましくは同時に両者が移植されることになるが、所定の時間差で両者を移植することにしてもよい。また、上記の態様とは逆に、HUVECを含有する移植用組成物とし、その移植時にUCMSCが併用移植されるようにしてもよい。この場合の移植のタイミングは上記の態様の場合に準ずる。
【0037】
所望の再生効果が発揮されるように、一回分の量として例えば0.5×106個〜2×107のUCMSCを移植用組成物に含有させるとよいHUVECも例えば、0.5×106個〜2×107個の細胞(一回分)が用いられる。UCMSC及びHUVECの量は、使用目的、適用部位(特に欠損部の大きさや患部の状態)、細胞の状態などを考慮して適宜調整することができる。
【0038】
一態様では、本発明の組成物は、操作性の向上や治療効果の向上等を理由として、ゲル状に調製される。本明細書での「ゲル状」とは、医療用に使用されるフィブリンゲル又はフィブリン糊のように、適度な粘性を有し、移植部での保持性の高い状態をいう。例えば、ゲル化剤や増粘剤の添加、或いはフィブリノーゲンとトロンビンの添加によって、ゲル状の組成物が形成される。
【0039】
本発明の組成物に期待される治療効果が維持されることを条件として、他の成分を追加的に使用することを妨げない。ゲル状に調製するための材料を含め、本発明において追加的に使用され得る成分を以下に列挙する。
(1)無機系生体吸収性材料及び有機系生体吸収性材料
無機系生体吸収性材料の種類は特に限定されないが、β−リン酸三カルシウム(「β-TCP)、α−リン酸三カルシウム(α-TCP)、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム、及び非結晶質リン酸カルシウムからなる群から選択される材料を用いることができる。これらの材料は単独で用いることができることはもちろんのこと、任意に選択した2種以上を組み合わせて用いても良い。好ましくは、β-TCP又はα-TCPのいずれか、又はこれらを任意の割合で組み合わせて用いる。さらに好ましくはβ-TCPを無機系生体吸収性材料として用いる。
【0040】
無機系生体吸収性材料は公知の方法により得ることができる。また、市販される無機系生体吸収性材料を用いることもできる。β-TCPとしては、例えば、オリンパス光学工業株式会社製のものを利用できる。
【0041】
無機系生体吸収性材料は、本発明の組成物が使用時において流動性となるような粒子径を有する粉末状であることが好ましい。粉末状の無機系生体吸収性材料は、適当な大きさに加工された無機系生体吸収性材料を、所望の粒子径となるまで破砕、粉砕することにより調製することができる。無機系生体吸収性材料の平均粒子径を、0.5μm〜50μmとすることが好ましい。さらに好ましくは、平均粒子径0.5μm〜10μmの無機系生体吸収性材料を用いる。さらにさらに好ましくは、平均粒子径1μm〜5μmの無機系生体吸収性材料を用いる。粒子径の異なる複数種類の無機系生体吸収性材料を組み合わせて用いることも可能である。無機系生体吸収性材料は本発明の組成物全体に対して30重量%〜75重量%含有することが好ましい。
【0042】
尚、本発明の組成物の流動性は、無機系生体吸収性材料の粒子径、及び含有率で調製することができ、両者を適宜調整することにより所望の流動性を得ることができる。また、後述の増粘剤を添加する場合には、増粘剤の添加量によっても流動性の調整を行うことができる。
【0043】
有機系生体吸収性材料としては、ヒアルロン酸、コラーゲン、フィブリノーゲン(例えばボルヒール(登録商標))等を使用することができる。
【0044】
(2)ゲル化材料
ゲル化材料は、生体親和性が高いものを用いることが好ましく、ヒアルロン酸、コラーゲン又はフィブリン糊等を用いることができる。ヒアルロン酸、コラーゲンとしては種々のものを選択して用いることができるが、本発明の組成物の適用目的(適用組織)に適したものを採用することが好ましい。用いるコラーゲンは可溶性(酸可溶性コラーゲン、アルカリ可溶性コラーゲン、酵素可溶性コラーゲン等)であることが好ましい。
【0045】
(3)溶媒
本発明の組成物は、水系の溶媒を含むものであってもよい。水系の溶媒としては、滅菌水、生理食塩水、リン酸塩溶液等の緩衝液等を用いることができる。尚、調製した細胞を生理食塩水やPBS(リン酸緩衝生理食塩水)に懸濁して本発明の組成物とし(他の成分を含有しない)、患部に適用することもできる。
【0046】
(4)その他
本発明の組成物は、上記の成分の他、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、細胞保護剤(例えばジメチルスルフォキシド(DMSO)や血清アルブミン)、抗生物質、pH調整剤、細胞の活性化や増殖又は分化誘導などを目的とした各種の成分(ビタミン類、サイトカイン、成長因子、ステロイド等)を含んでいても良い。
【0047】
(適用方法)
本発明の組成物は、例えば、注入、埋入、填入、又は塗布等によって組織欠損部や損傷部位に移植される。適度な流動性を有するゲル状に調製すれば、填入、注入、又は塗布等、簡便な手技で適用することができる。また、ゲル状であれば注射針等を用いて適用部位に容易に填入でき(患部を開放することなく適用することも可能である)。また、組織欠損部の形状に合わせて予め成型することを要せず、その汎用性が高い。
【実施例】
【0048】
1.臍帯組織からのUCMSCとHUVECの同時分離調製法
<方法>
a.臍帯静脈からの血管内皮細胞の分離
臍帯は経膣分娩および帝王切開にて娩出された臍帯を用いることが可能である。臍帯血が除去された10cm〜20cmの臍帯を10%イソジン(イソジン(登録商標)液10%、明治製菓)液に1分間浸漬し無菌処理を行う。その後PBSにて2回洗浄を行う。臍帯両断片の臍帯静脈を確認後、洗浄針を挿入しクランプにて固定する。洗浄針に20mlシリンジを装着し、20mlのPBSで血液の残留がなくなるまで2〜3回洗浄する。片方の断片をクランプで固定し、0.05%トリプシンを臍帯静脈に5ml注入する。臍帯をU字にして37℃のPBSの入った500mlビーカー内で15〜20分間インキュベートする。その後、臍帯を軽くマッサージする。片方の洗浄針から、基本培地(10%ウシ血清・抗生物質含有ダルベッコ変法イーグル培地を10ml注入し50ccコニカルチューブに回収する。200×gで10分間遠心分離を行う。細胞ペレットを4ccの血管内皮細胞専用培地(EBM-2, Lonza社)にて再懸濁し、6cmの付着性細胞培養用ディッシュに播種する。5%CO2・37℃に調整したインキュベーターにて培養する。培養後、80%コンフルエントになれば、0.05%トリプシン・EDTAにて5分間・37℃で処理する。ディッシュから剥離した血管内皮細胞を10cmの付着性細胞培養用ディッシュに播種し拡大培養を行う。
【0049】
b.臍帯動静脈血管周囲Wharton's jellyからのUCMSCの分離
血管内皮細胞を採取し終わった臍帯を再度10%イソジン液に1分間浸漬し無菌処理を行う。その後PBSにて2回洗浄を行う。臍帯をメスで切開し開いたのち、1本の臍帯静脈と2本の臍帯動脈を明示する。臍帯静脈・臍帯動脈を周囲のWharton's jellyとともに分離する。血管内皮細胞とのコンタミネーションを防ぐために断端を絹糸にて結紮する。結紮した3本の臍帯動静脈を1mg/mlのコラゲナーゼで37℃・3時間酵素処理を行う。臍帯動静脈を撤去し5分間の遠心操作(5000回転/分)によりUCMSCを回収する。細胞ペレットを4ccの間葉系幹細胞専用培地(MSCBM, Lonza社)にて再懸濁し、6cmの付着性細胞培養用ディッシュに播種する。5%CO2・37℃に調整したインキュベーターにて培養する。培養後、80%コンフルエントになれば、0.05%トリプシン・EDTAにて5分間・37℃で処理する。ディッシュから剥離したUCMSCを10cmの付着性細胞培養用ディッシュに播種し拡大培養を行う。
【0050】
<結果>
経膣分娩もしくは帝王切開にて娩出されたものの如何にかかわらず、初代培養を行ったUCMSCは3〜5日でコロニーの出現を認めた。培養開始から15〜21日目にはコンフルエントな状態になり、継代することのより拡大培養が可能であった(図3)。初代培養を行ったHUVECは開始から約5日でコンフルエントな状態になり、継代により拡大培養が可能であった(図4)。
【0051】
従来は帝王切開にて無菌的に娩出された臍帯のみが細胞採取の適応だったが、10%イソジン(イソジン(登録商標)液10%、明治製菓)液に1分間浸漬し無菌処理を行うという新しい工程を加えることにより、正常経膣分娩で娩出された検体からも細菌感染無しに細胞を採取する方法を見出した。本方法により無菌処理を行っても採取された幹細胞の増殖能や分化能に影響しないことを実験的に確認している。
【0052】
2.UCMSCの特性解析
<方法>
a.増殖試験
UCMSCの細胞増殖能の検討を行う。なお比較対象としてヒト骨髄間葉系幹細胞(BMMSC, Lonza社)を用いる。細胞を12穴付着性細胞培養用ディッシュの各ウェルに2×104個ずつ播種する。培地にはMSCBMを用い、播種3日後に培地交換を行う。播種1日後、3日後、6日後に0.05%トリプシン・EDTAにて5分間・37℃で処理し、ディッシュから剥離した細胞を回収し、トリパンブルーにて染色後、生細胞数の計測を行う。
【0053】
b.フローサイトメトリー
細胞表面マーカーをフローサイトメトリーによって解析する。解析にはFACS Calibur(ベクトンディッキンソン)を用いた。
【0054】
c.多分化能解析
c-1.骨細胞への分化能の確認
細胞を3.1×103個/cm2で付着性細胞培養ディッシュに播種する。骨分化誘導培地(10-7Mデキサメタゾン(dexamethasone), 10mM β-グリセロリン酸(β-glycerophosphate), 0.2mM L−アスコルビン酸二リン酸塩(L-ascorbic acid-2-phosphate)を含んだMSCBM)にて培養する。分化誘導中は2〜3日に一度培地交換を行う。約4週間分化誘導を行い、誘導された骨芽細胞はアリザリンレッド染色を行い石灰化沈着とともに確認する。
【0055】
c-2.軟骨細胞への分化能の確認
15mlポリプロピレンチューブに2.5×105個の細胞を50μg/ml L−アスコルビン酸二リン酸塩(L-ascorbic acid-2-phosphate), 40μg/ml L-プロリン(L-proline), 100μg/ml ピルビン酸ナトリウム(sodium pyruvate), 0.1μMデキサメタゾン(dexamethasone), 6.25μg/mlインスリン(insuline), 6.25μg/mlトランスフェリン(transferrin), 6.25μg/mlセレン酸(selenous acid), 10ng/mlヒトTGF-β3(human TGF-β3)を添加したMSCBMで播種し5分間の遠心操作(5000回転/分)を行いペレット状にして培養を行う。分化誘導中は2〜3日に一度培地交換を行い、約4週間ペレット培養を行う。誘導された軟骨組織は組織切片を作製し、アルシアンブルー染色を行い確認する。
【0056】
c-3.脂肪細胞への分化能の確認
細胞を2.1×104個/cm2で付着性細胞培養ディッシュに播種しコンフルエントになるまで培養する。1μM デキサメタゾン(dexamethasone), 1μg/ml インスリン(insuline), 0.5mM 3-イソブチル-1-メチルキサンチン(3-isobutyl-1-methylxanthine)を添加したMSCBMにて約3週間培養する。誘導された脂肪細胞はOil-red-o染色にて確認する。
c-4.神経細胞への分化能の確認
神経細胞に分化誘導するために、0.5% BSA , 25μg/ml FGF8 , 25μg/ml SHH , 25μg/ml b-FGFを添加した培地で12日間培養する。誘導された神経細胞は、ネスチン(Nestin), βIII-チューブリンに対する抗体を用いた免疫染色にて確認する。
【0057】
<結果>
a.増殖試験
経膣分娩もしくは帝王切開にて娩出されたものの如何にかかわらず、UCMSCは良好な増殖能を示した。UCMSCの増殖能は高く、BMMSCよりも有意に高い。また、10%イソジン(イソジン(登録商標)液10%、明治製菓)液による無菌処理は細胞増殖に影響しないことがわかる(図1)。
【0058】
b.フローサイトメトリー
UCMSCはCD73陽性、CD90陽性、CD105陽性、CD11b陰性、CD34陰性、CD45陰性、HLA-DR陰性であることがわかった(図2)。
【0059】
c.多分化能解析
UCMSCを骨分化誘導培地にて28日間培養したものをアリザリンレッドで染色した結果、石灰化物の沈着を認め骨芽細胞に分化したことを確認できた(図3)。また、UCMSCを脂肪分化誘導培地にて32日間培養したものをOil-red-O染色した結果、油滴を含んだ細胞が認められ、脂肪細胞に分化したことがわかった(図3)。一方、UCMSCを軟骨分化誘導培地にて21日間ペレット培養したものから組織切片を作成しアルシアンブルー染色した結果、陽性に染まる組織を認め、軟骨組織の形成が行われたことがわかった(図3)。さらには、UCMSCを12日間神経分化誘導を行い、蛍光免疫染色した結果、神経前駆細胞マーカー陽性細胞を認め、神経前駆細胞に分化していることがわかる(図3)。以上の通り、UCMSCは間葉系組織に分化可能である間葉系幹細胞であり、胚葉を超えて神経にも分化できることを確認できた。
【0060】
3.HUVECの特性解析
<方法>
a.フローサイトメトリー
血管内皮細胞表面マーカーをフローサイトメトリーによって解析する。解析にはFACS Calibur(ベクトンディッキンソン)を用いた。
【0061】
b.蛍光免疫染色
血管内皮細胞をI型コラーゲンにてコーティングしたディッシュを用いて培養する。細胞はCD31, vWFに対する抗体を用いた免疫染色により血管内皮細胞特異的なマーカーを確認する。
【0062】
<結果>
採取された細胞はCD31陽性、CD34陽性、CD45陰性であり、蛍光免疫染色の結果、CD31陽性、vWF陽性に染色されていた。即ち、血管内皮細胞が採取されていることを確認できた(図4)。
【0063】
4.UCMSCの骨前駆細胞への分化誘導
<方法>
a.アルカリフォスファターゼ活性試験
UCMSCを3.1×103個/cm2で24穴付着性細胞培養ディッシュに播種する。細胞を強力にかつ短期間で骨前駆細胞に分化誘導させるために骨分化誘導培地に50〜300ng/ml BMP-2を添加し培養する。分化誘導中は3日に一度培地交換を行う。1週間分化誘導を行い、誘導された骨前駆細胞のアルカリフォスファターゼ活性をアルカリフォスファターゼ活性測定キット(FAST p-Nitrophenyl phosphate tablet sets , Sigma社)を用いて解析する。マイクロプレートリーダーで測定された405nmでの吸光度の値は各ウェルを水溶性テトラゾリウム塩WST-8 (Cell counting kit-8 , 同人化学)を用いて測定された450nmでの吸光度の値によって除することによって、細胞数の補正を行う。なお対照としてヒト骨髄間葉系幹細胞(BMMSC, Lonza社)を用いる。
【0064】
b.骨前駆細胞系譜マーカー解析
UCMSCを骨分化誘導培地に100ng/ml BMP-2を添加し1〜2週間分化誘導させてRNAを抽出し、逆転写酵素を用いてcDNAを調製する。これを鋳型として、ALP(Alkaline phosphatase), COLI(collagen typeI), runx2, オステオカルシン(OSTEOCALCIN)を増幅するオリゴプライマーを用いて定性的PCR法にて骨前駆細胞系譜マーカーの遺伝子発現を解析する。対照としてヒト骨髄間葉系幹細胞(BMMSC, Lonza社)を用いて同様に解析を行う。
【0065】
<結果>
UCMSCを骨分化誘導培地に50〜100ng/mlのBMP-2を添加して1週間培養した結果、アルカリフォスファターゼ活性の有意な上昇を認めた(図5)。また骨分化誘導培地に100ng/ml のBMP-2を添加して培養した結果、UCMSCの骨前駆細胞系譜マーカーが発現することがわかった(図5)。よって骨分化誘導培地にBMP-2を添加することによってUCMSCを短期間で骨前駆細胞に分化誘導させることができることがわかった。
【0066】
5.UCMSCとHUVEC共培養試験
<方法>
UCMSC, HUVECそれぞれ1×104個を混合し24穴付着性細胞培養ディッシュに播種する。MSCBM、EBM-2を1:1にて混合したものを培地として各ウェルに1mlずつ注入し、5%CO2・37℃に調整したインキュベーターにて培養する。共培養中は3日に一度上記の培地交換を行う。1週間共培養を行い、アルカリフォスファターゼ活性を同上のキットを用いて解析する。
【0067】
<結果>
UCMSCとHUVECを共培養して1週間培養することによって、アルカリフォスファターゼ活性が上昇することがわかった(図6)。HUVECによりUCMSCの骨分化能が亢進したものと考えられる。このように、HUVECとの共培養が骨分化能の亢進に有効であることが見出された。
【0068】
6.UCMSCの低酸素応答の応用による骨分化誘導
<方法>
HIF-1をユビキチン化させるVHLを阻害するDFO(Deferoxamine)を用いることによってHIF-1を安定化させ、人為的に低酸素状態を作り出すことができる。UCMSCを3.1×103個/cm2で24穴付着性細胞培養ディッシュに播種する。10〜50μM DFOを添加した基本培地で24時間培養し前処理を行う。DFOにて前処理ののち培地を骨分化誘導培地に交換し骨分化誘導を行う。分化誘導中は3日に一度培地交換を行う。1週間分化誘導を行い、誘導されたUCMSCのアルカリフォスファターゼ活性を同上のキットを用いて解析する。なおネガティブコントロールとしては、骨分化誘導培地でデキサメタゾンを添加していないものを用いる。また1週間分化誘導を行ったUCMSCのRNAを抽出し、逆転写酵素を用いてcDNAを調製する。これを鋳型として、HIF-1α, VEGF-A, BMP-2, VEGFR-1, VEGFR-2を増幅するオリゴプライマーを用いて定性的PCR法にて低酸素応答因子や血管新生因子の遺伝子発現を解析する。
【0069】
<結果>
DFOによる前処理を行いHIF-1の発現が誘導された低酸素処理UCMSCは高いアルカリフォスファターゼ活性を示すことから、骨分化能が亢進したものと考えられる(図7)。このように、低酸素処理が骨分化能の亢進に有効であることが見出された。尚、DFO前処理により低酸素応答因子HIF-1αや血管新生因子の遺伝子発現が認められた(図7)。
【0070】
7.細胞移植試験1(ヌードマウス異所性骨化検討モデルを用いた骨形成能の検討)
<方法>
a.細胞移植物の調整
1×106個のUCMSCを骨分化誘導培地に100ng/ml BMP-2を添加した培地で懸濁する。15ml ポリプロピレンチューブ内にて50mgのハイドロキシアパタイト顆粒(Calcitite, ZIMMER社)とUCMSC細胞懸濁液を混和する。5分間の遠心操作(800rpm)の後、5%CO2・37℃に調整したインキュベーターにて培養する。3日に一度BMP-2添加骨分化誘導培地にて培地交換を行い1週間培養する。UCMSCとHUVEC混合細胞移植物は、0.5×106個のUCMSCと0.5×106個のHUVECをMSCBM、EBM-2を1:1にて混合したものを混合培地で懸濁する。15ml ポリプロピレンチューブ内にて50mgのハイドロキシアパタイト顆粒とUCMSC・HUVEC細胞懸濁液を混和する。5分間の遠心操作(800rpm)の後、5%CO2・37℃に調整したインキュベーターにて培養する。3日に一度混合培地にて培地交換を行い1週間培養する。
【0071】
b.ヌードマウス異所性骨化検討モデルへの移植
ヌードマウス(Balb/C、5週齢、雌、体重18〜20g)をネンブタール(Nembutal)にて麻酔する。背部にメスを用いて切開を入れ、背部皮下にポケットを形成し細胞調製物を移植し、吸収性縫合糸にて縫合し終了する。6週後に屠殺し移植物を取り出し組織学的に評価を行う。
【0072】
<結果>
移植6週後のヘマトキシリン・エオジン染色像を示す(図8)。コントロール(左)では十分な骨再生は認められていないが、UCMSC移植物(中央)と、UCMSCとHUVEC混合細胞移植物(右)では骨再生が認められる。また、UCMSCとHUVEC混合細胞移植物では骨組織の増大を認めた。このように、UCMSCが骨再生に有効であることが実証された。また、HUVECの併用が再生効果を高めることが示された。
【0073】
8.細胞移植試験2(ヌードマウス創傷治癒検討モデルを用いた治療効果の検討)
a.細胞移植物の調整
1×106個の細胞(UCMSC又はUCMSC・HUVECの1:1混合)の移植を行う。皮下注入用細胞移植物は0.7×106個の細胞を遠心操作にて沈殿させ、上清を吸引し、ペレットを80μlのPBSにて懸濁する。創面被覆用細胞移植物は0.3×106個の細胞を上記同様にペレット状にしたものを20μlのI型コラーゲンゲル(Cellmatrix, 新田ゼラチン)にて懸濁する。
【0074】
b.ヌードマウス創傷治癒検討モデルへの移植
ヌードマウス(Balb/C、8週齢、雌、体重18〜25g)をネンブタール(Nembutal)にて麻酔する。背部左右1カ所ずつ計2カ所に直径6mm生検用パンチにて表皮真皮層を全層で切除し創傷を作製する。シリコンプレート(厚み0.5mm、外径14mm、内径6mm)を創傷に合わせて瞬間接着剤で接着固定させ、4-0ナイロン縫合糸でシリコンプレートと周囲の皮膚を縫合する。皮下注入用細胞移植物を20μlずつハミルトンシリンジにて計4カ所に注入する。さらに20μlの創面被覆用細胞移植物で創面を被覆する。最後に創部保護の目的でテガダーム(TegadermTM、3M)を貼付し終了する。コントロールとしてPBSを移植する。
【0075】
c.創部形態計測
移植後の創部を経日的にカメラにて撮影し、創部面積を計測する。(術直後創部面積−経日的創部面積)/術直後創部面積×100(%)にて創部縮小率を算出する。
【0076】
<結果>
UCMSC移植群、及びUCMSCとHUVEC共移植群では術後の創部縮小率の上昇を認め、コントロール群との差を認めた(図9)。またUCMSCとHUVEC共移植群においては創部縮小率の上昇を認めた。このように、UCMSCの移植が創傷治癒に有効であることが実証されるとともに、その効果がHUVECの共移植によって高められることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0077】
近年、胎児エコーによる出生前診断技術の進歩により、出生前に新生児の先天性疾患の診断が可能となってきた。臍帯からの細胞採取は出生時に無侵襲に行うことが可能であり、細胞培養には臍帯血から精製した自己血清を用いることもできる。臍帯由来間葉系幹細胞を有効成分とする本発明の組成物は、先天性神経疾患である新生児脳室周囲白質軟化症、先天性心疾患で出産後手術が必要となるものや先天性唇顎口蓋裂の治療に応用が可能である。本発明によれば、臍帯を利用した安全で無侵襲な自己幹細胞による先天性疾患に対する新生児再生医療システムが開発できる。本発明の利用可能性はこれらの疾患に限定されるものではなく、本発明の組成物の適用症例の例として骨疾患(歯周病、骨欠損(インプラントのための骨増生、顎裂部、腫瘍切除部などを含む)、骨粗鬆症、骨折、じん帯断裂、スポーツ外傷など)、軟骨疾患(膝関節、顎関節など)、神経疾患(神経再生:アルツハイマー病、パーキンソン病など)、皮膚疾患(ケロイド、瘢痕への応用)、加齢疾患(しわ、あざなどのアンチエイジング疾患)、血管障害(血管の再生など)も想定される。
【0078】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臍帯由来間葉系幹細胞を含む移植用組成物。
【請求項2】
臍帯由来間葉系幹細胞が、ワルトンゼリー(Wharton's jelly)由来である、請求項1に記載の移植用組成物。
【請求項3】
新生児脳室周囲白質軟化症、先天性心疾患又は先天性唇顎口蓋裂の治療用である、請求項1又は2に記載の移植用組成物。
【請求項4】
臍帯由来間葉系幹細胞が、採取後に分化誘導処理をしていない未分化型臍帯由来間葉系幹細胞であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の移植用組成物。
【請求項5】
臍帯由来間葉系幹細胞が、CD73陽性、CD90陽性、CD105陽性、CD11b陰性、CD34陰性、CD45陰性、HLA-DR陰性である、請求項4に記載の移植用組成物。
【請求項6】
皮膚組織又は神経組織の再生用である、請求項4又は5に記載の移植用組成物。
【請求項7】
臍帯由来間葉系幹細胞が、特定の細胞系譜へと分化誘導した分化誘導型臍帯由来間葉系幹細胞であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の移植用組成物。
【請求項8】
骨組織、軟骨組織、神経組織、筋肉組織又は血管組織の再生用である、請求項7に記載の移植用組成物。
【請求項9】
分化誘導型臍帯由来間葉系幹細胞が、アルカリフォスファターゼ活性を有し、且つI型コラーゲン陽性、RUNX2陽性、オステオカルシン陽性であり、骨組織の再生用である、請求項7に記載の移植用組成物。
【請求項10】
分化誘導型臍帯由来間葉系幹細胞が、骨形成タンパク質2(BMP-2)の刺激によってアルカリフォスファターゼ活性が亢進した細胞である、請求項7に記載の移植用組成物。
【請求項11】
分化誘導型臍帯由来間葉系幹細胞が、臍帯静脈内皮細胞との共培養によってアルカリフォスファターゼ活性が亢進した細胞である、請求項7に記載の移植用組成物。
【請求項12】
分化誘導型臍帯由来間葉系幹細胞が、低酸素環境下での培養によってアルカリフォスファターゼ活性が亢進した細胞である、請求項7に記載の移植用組成物。
【請求項13】
低酸素環境下での培養が、デフェロキサミンを添加した培地を用いた培養である、請求項12に記載の移植用組成物。
【請求項14】
臍帯静脈内皮細胞を組み合わせてなる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の移植用組成物。
【請求項15】
臍帯由来間葉系幹細胞と臍帯静脈内皮細胞を含有することを特徴とする、請求項14に記載の移植用組成物。
【請求項16】
臍帯由来間葉系幹細胞を含有する第1構成要素と、臍帯静脈内皮細胞を含有する第2構成要素とからなるキットであることを特徴とする、請求項14に記載の移植用組成物。
【請求項17】
臍帯由来間葉系幹細胞を含有し、その移植時に臍帯静脈内皮細胞が併用移植されることを特徴とする、請求項14に記載の移植用組成物。
【請求項18】
臍帯由来間葉系細胞のドナーと、臍帯静脈内皮細胞のドナーが同一である、請求項14〜17のいずれか一項に記載の移植用組成物。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の移植用組成物を、標的部位に注入、埋入、填入、又は塗布することを特徴とする、組織の修復ないし再生方法。
【請求項20】
臍帯由来間葉系幹細胞と臍帯静脈内皮細胞とを共培養するステップを含む、アルカリフォスファターゼ活性が亢進した細胞の調製法。
【請求項21】
臍帯由来間葉系幹細胞を低酸素環境下で培養するステップを含む、アルカリフォスファターゼ活性が亢進した細胞の調製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−31127(P2012−31127A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174161(P2010−174161)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行所:日本再生医療学会総会、刊行物名:再生医療増刊号 第9回 日本再生医療学会総会 プログラム・抄録、発行日:平成22年2月5日
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】