説明

臓器の冷却保存および灌流のための組成物

【課題】臓器、臓器の一部および組織の生存度を維持するための、機械式灌流に適した、新規な臓器保存溶液を提供する。
【解決手段】最小必須培地イーグル(MEM)、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、ウィリアムスE培地等の組織培養培地から成る臓器保存溶液であって、a)pHは7.0から7.8の範囲であること、b)最小緩衝能力(ベータ)はスライク単位で測定して少なくとも20であること、c)浸透圧モル濃度は300-350 mOsmolであること、d)膠質浸透圧は20から30 mmHgであること、e)[Na+]濃度は140 mM未満であり、[K+]濃度は25 mM未満であり、[Na+]/[K+]の比は少なくとも5:1であること、f)アルギニン、アスパラギン、シスチン、ヒスチジン、グルタミン、メチオニン等の濃度はウィリアムスE培地の標準的濃度に比べて高いこと、等を改変した臓器保存溶液。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
[技術分野]
本発明は、医学の分野に関し、特に固体臓器および組織の移植に関する。本発明は、ヒトおよび動物からのドナー臓器および組織、特に肝臓および腎臓を、灌流して低温で保存するための、新規の解決法および方法を提供する。
【0002】
[背景技術]
臓器移植は、現在、心臓、肺、すい臓、腸(大腸)ならびに、特に腎臓および肝臓といった臓器に広く応用されている。臓器の需要の増大、およびドナー臓器の不足が、移植の順番待ちのリストを増大させ、最適以下のドナーを由来とする臓器の使用への関心が生じてきた。
【0003】
ドナー臓器の生存度の保存は、移植法において重要な側面である。死体から得られた移植用の臓器は、貯蔵され、病院間および/または移植センター間を移送されなければならない。ドナーと受取人との組織適合性試験、および受け取る患者側の準備には、時間を要する。ドナーからの回収と受取人への移植の間に、臓器は、保存のための特別な方法を必要とする。臓器および組織の、体外で維持可能な時間の長さは、臓器、ドナーの年齢および健康状態、保存法、保存溶液および温度に依存して異なる。
【0004】
ほとんどのドナー臓器の保存のための、現在に至るまでの標準的な臨床慣行は、低体温虚血性保存法(hypothermic ischemic preservation)である。臓器は、冷却された保存溶液でウォッシュアウト(wash-out)した後、死体のドナーから採取される。それゆえ、臓器は失血しており、血液は好ましくは生理的条件を模した保存溶液で置き換えられる。臓器の血液および酸素供給を置き換えるために、および、臓器の最適条件を維持するために、低体温保存溶液による機械式灌流(machine perfusion)が、時折、腎臓といった臓器に適用される(WO 02/41696、US 5,599,659およびUS 5,843,024)。機械式灌流は、化合物および酸素の供給により臓器の生存度を維持させ、ならびに代謝物といった不要なおよび毒性の化合物を除去する。機械式灌流は、静的な保存に優れていることがわかってきたが、幾つかの考えられる欠点が存在し、それは、特殊化された設備および熟練した従事者の必要性、ならびに、適用する保存溶液に付加される要件といったものである。
【0005】
低体温で静的な条件におけるドナー臓器の保存に最も共通して使用される溶液は、特に肝臓および腎臓に使用されるウィスコンシン大学溶液(University of Wisconsin solution) (UW) (Janssen et al, Transplant International 2003, vol 16, no 7, p515-522)、心臓の保存に使用されるセルシオ(Celsior)、および、肺の保存に使用されるユーロ-コリンズ(Euro-Collins)またはパーファデックス(Perfadex)である。機械式灌流のために、これらは、例えばUW-グルコナート(gluconate)(Belzer MPS)のように、改変されている。
【0006】
本発明は、機械式灌流に適し、臓器、臓器の一部および組織の生存度を維持する、新規な臓器保存溶液を提供する。この溶液は、ドナーの臓器、特に最適以下のドナー(特に心拍動のないドナー)から得られた臓器の低体温機械式灌流に関する、多くの問題を克服するよう設計された。溶液は、移植目的に使用される臓器、および特に最適以下のドナーから得られた臓器において生じる、虚血、低酸素症、エネルギーおよび栄養の欠乏、酸性化、低体温および再灌流ダメージが原因となる有害な影響を、予防しまたは最小化する。本発明による保存溶液は、当該分野の保存溶液の現行の状態よりも優れており、および最適以下のドナーから得られる臓器の保存および灌流に特に有利であるが、それは、アミノ酸、ビタミン、抗酸化剤、高分子量添加剤の濃度の増加およびバランスの最適化、ならびに緩衝能力の増強を提供することによる。さらに、本発明による保存溶液は、最適な物理的および化学的性質と、容易に利用でき、安価であり、および医薬的に試験され許容可能な化合物を使用することとを併用しており、製造コストを下げ、本発明による溶液の医学的な認可を容易なものとするだろう。
【0007】
[発明の詳細な説明]
定義
正常温とは、正常な生理学的環境における、身体、臓器および/または組織の温度のことであり、ヒトではおおよそ34℃から42℃の間であり、好ましくは37℃付近である。低体温とは、生理的温度より低い温度のことであり、つまり、34℃未満の温度のことである。臓器の保存には、0 - 20℃、特に0 - 10℃が、低体温とみなされる。
【0008】
虚血とは、肢、臓器または組織への酸素の供給が不十分なことであり、通常、動脈の閉塞により血流が遮断されることを原因とするが、ドナーから臓器が取り出された後、特に酸素の圧力が低下し、すなわちpO2が生理的に維持可能なレベル未満となることも原因となる。そのような結果、臓器または肢の組織にダメージが生じることが予想される。
【0009】
灌流:臓器、その一部もしくは組織を通したまたはそれらの周辺における、好ましくは脈管構造を通した、血液の、または、本発明の範囲内である、血液に取って代わる人工的な臓器保存および灌流溶液の、一定なもしくは拍動する流動。
【0010】
最適以下のドナー、および最適以下のドナーから得た臓器:最適以下の状態のドナー由来の臓器、例えば、心拍動のないドナー、脂肪肝(steatotic liver)のドナー、または高齢者のドナー由来の臓器。心拍動のないドナーでは、心臓が、(正常温において)10分という最低期間、不可逆的に停止しており、それにより医師から死亡が確認されている。脂肪肝とは、30%を超える脂肪性肝細胞(steatotic hepatocytes)から成る肝臓のことであり、すなわち、肝細胞に脂肪酸が蓄積している状態である(全ての潜在的なドナーの30%に生じている)。60歳を超えるドナーは、高齢者のドナーとみなされるが、この年齢の限度は、70歳以上まで延びてもよい。
【0011】
本出願における「臓器、組織およびそれらの一部」という表現は、哺乳類の身体における、現在または未来において移植可能な全ての部分を含む。
【0012】
本明細書を通して使用される、浸透圧モル濃度、温度、膠質浸透圧等といった特定のパラメーターの「生理的濃度」または「生理的値」という表現は、良好な健康状態にある哺乳類の生理的環境における、哺乳類の身体のこれらのパラメーターの生理的値を模倣した濃度を意味する。
【0013】
浸透圧モル濃度とは、完全な半透膜(水を自由に通し、溶質の移動を完全に防ぐもの)を通った溶液によって作用を受ける浸透圧の、純水と比較した場合の尺度である。浸透圧モル濃度は、溶液中の粒子数に依存するが、粒子の性質には依存しない。
【0014】
膠質浸透圧(oncotic ressure):血液の血漿中において、溶解した化合物は浸透圧をもたらす。全浸透圧の一部は、大きなタンパク質分子が原因である;このことは、コロイド性浸透圧、または膠質浸透圧として知れている。大きな血漿タンパク質は、容易に毛細管の壁を通過することができないため、毛細管内部の浸透圧におけるこれらの効果は、ある程度、液体の毛細管から漏出しようとする傾向と釣り合うだろう。例えば尿中での消失(タンパク尿)によってもしくは栄養不良によって、または、臓器が移植のために身体から取り出され液体中に貯蔵されている場合において、血漿タンパク質が減少している状況では、膠質浸透圧が低いことが、浮腫(組織に過剰の液体が蓄積すること)の発生につながり得る。膠質浸透圧は、mmHg(水銀の圧力のミリメーター)で表現される。
【0015】
毛細管の壁は、水に対して透過性があるものの、本質的に大きな血漿タンパク質に対しては不透過であるため、これらの分子が浸透圧を作り出す。さらに、これらのタンパク質は負に帯電しているため、これらは血漿中で付加的な陽イオンを保持する傾向があり(ギブズ-ドナン効果(the Gibbs-Donnan effect))、血漿と間質液(ISF)との間の浸透圧勾配をさらに増強する。組み合わさった効果(浸透圧およびギブズ-ドナン)により、圧力が、間質から血漿中へと水を引き抜くことになる。この圧力は、コロイド浸透圧(colloid oncotic pressure)(しばしば、膠質浸透圧と略される)と定義される。この圧力は、血漿とISFとの間のタンパク質濃度の差に比例する。純粋な生理食塩水と比較して、ヒトの血漿は、約28 mmHgの膠質浸透圧を持ち、一方ISFはわずか約3 mmHgである。正味の膠質浸透圧は、従って、約25 mmHgである。この値は、大部分の毛細管層(capillary beds)にわたって、おおよそ一定である。
【0016】
ここにおける緩衝剤とは、「溶液中にそれが存在することで、pHの単位変化を起こすために添加しなければならない酸またはアルカリの量を増加させる物質」と定義される。緩衝剤は、従って、水素イオンの濃度を生理学的範囲に一定に維持するために、臓器の保存および灌流溶液において非常に重要な構成成分である。哺乳類の血液のpHは、以下のような緩衝系によって、7.38付近に維持される:
H2PO4- <=> HPO42-、CO2 <=> H2CO3
H2CO3 <=> HCO3-
多くの有機酸、有機塩基およびタンパク質。本発明による溶液のための、普遍的に適用可能なおよび生物学的に許容可能な緩衝剤は、以下の性質を持たねばならない:水への溶解性、生物学的作用または金属イオンとの既知の複合体形成の傾向と干渉しない、非毒性である、および生物学的膜(浸透、可溶化、表面での吸着といった性質)と干渉しない。緩衝能力は、温度および組成物中のその他の溶質に影響される。活性および塩の効果は、以下の式に従って、溶液のpH値に著しく影響する:
pH = pKa' + log[B]/[BH] (1)
ここにおいて、pKa' = pKa + 補正因子;
溶液のイオン強度(lonic strength)は、以下のように定義される:
I = 1 / 2 Σ (ci . z2)
ここにおいて、ciは、種iの濃度であり、zは相当する電荷である。これは、実験的パラメーターから非常に容易に算出することができる。
【0017】
緩衝能力は、強塩基または強酸の増加分とpHの変化との割合である:
B = ΔB / ΔpH
=ΔpHのpH変化を生じさせるために緩衝溶液に添加される強塩基(または酸)のグラム当量/リッターの小増加分
B = (2.3 x C x Ka [H+] ) / (Ka + [H+])2
B = 2.3 C a (1 - a)
C = [酸] + [塩]
または
C = [塩基] + [塩]
一価化学種の最大緩衝能力ベータ-マックス(Beta-max)は、pH = pKa'、実用的pK値の場合にみられる。pHの範囲が3 - 11の場合のベータマックスは、以下の式に従って算出される:
ベータマックス = 0.576 c
ここにおいて、cは、緩衝物質の全濃度である。従って、有用な緩衝能力は、pKa±1単位のpHの範囲に存在する。最大緩衝能力の50%超を現実化しなければならない場合、相当する範囲は、pKa' + 0.75単位の場合のみである。
【0018】
溶液の緩衝能力はまた、スライク(Slykes)単位で表すこともできる。スライクで測定される緩衝能力は、1 g湿質量の筋/組織のpHを、6から7のpHの範囲にわたって、1 pH単位、滴定するのに必要な塩基(mmole)として定義される(Van Slyke, . Biol. Chem. 52, 525-570, 1922)。この適用において、ベータは、組織1グラムのpHを、1単位変化させるために、すなわち、6から7へまたは6.5から7.5へ変化させるために必要となる、水酸化ナトリウムまたは塩化水素のμモルとして定義される。
【0019】
組織培養培地は、in vitro培養における哺乳類細胞の成長および保存を維持できる液体を含み、生物学的に許容可能な緩衝剤、塩、栄養分(炭素源、アミノ酸、栄養素、ビタミン等)を含み、pH、浸透圧モル濃度および膠質浸透圧に関する身体の生理的状態を模倣している。当該分野において使用され容易に商業的に得ることができる、標準的組織培養培地の例は、少なくとも、以下の広く使用される培地の非網羅的なリストを含む:最小必須培地イーグル(MEM)、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、RPMI 1640培地、DMEM/F-12培地、ハムF-10、ハムF12、イスコブ(Iscove's)変法ダルベッコ培地、レイボビッツ(Leibovitz's)L-15培地およびアール(Earle)塩添加最小必須培地およびウィリアムスE培地。
【0020】
実施態様
第一の実施態様において、本発明は、十分平衡のとれた方法で、臓器に十分な量のビタミンおよび栄養素を提供するために、組織培養培地に基づく臓器保存および灌流溶液を提供する。多くの組織培養培地が当該分野において知られており、十分実証され、様々な供給元から商業的に利用することができる。最小必須培地イーグル(MEM)、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、RPMI 1640培地、DMEM/F-12培地、ハムF-10、ハムF12、イスコブ(Iscove's)変法ダルベッコ培地、レイボビッツ(Leibovitz's)L-15培地およびアール(Earle)塩添加最小必須培地およびウィリアムスE培地(Current Protocols in cell biology, www.interscience.wiley.com)を、本発明による臓器保存溶液の基礎として使用してよいが、当該分野において既知のその他の細胞または組織培養培地もまた使用してよい。特にウィリアムスEが、本発明による臓器保存および灌流溶液によく適しており、および好ましい。組織培養培地は、生理的塩および緩衝化合物を含み、浸透圧モル濃度およびpHは生理的条件に保たれ、すなわち、300-350 mOsmol周辺およびpH 7.0からpH 7.8の範囲のpHに保たれる。また、栄養素(糖、ビタミン、アミノ酸)が、ほとんどの定義された組織培養培地および定義されていない組織培養培地において提供される。本願発明者らは、組織培養培地を、低温での臓器の保存および灌流の両方に適した臓器保存溶液としての使用に最適化するために、様々な調整および付加を、溶液に対して行うべきであることを発見した。これらの調整は、普通はあまり好ましくない最適以下のドナーから得られた臓器の保存および灌流に特に有用であることが証明された。
【0021】
本発明による臓器保存および灌流溶液は、0℃付近から20℃付近、好ましくは4℃から10℃の間の範囲の生理学的温度未満に最適化され、好ましくはそのような温度で使用される。相対的に低い温度で保存される臓器は、酸素および栄養素の要求性が低くなり、それは、18℃における代謝は、37℃付近の生理学的温度の代謝率のわずか10から15%であるためである。しかしながら、発明者らは、相対的に低い代謝活性であっても、グルコース、アミノ酸およびビタミンといった栄養素は、なお利用され、十分な量で提供されるべきであることを発見した。発明者らは、アミノ酸およびその他の栄養素の用量/濃度の増加は、低温においてでさえ、および、体外で、本発明による保存および灌流溶液といった人工的な培地における低下した灌流または流動条件においてでさえ、十分な細胞の取り込みを促進するだろうということを発見した。アミノ酸およびビタミンの濃度の増大は、心拍動のないドナーから得た臓器の保存に特に適していることが証明された。好ましい実施態様において、以下のアミノ酸の群は、ウィリアムスE培地の標準的アミノ酸濃度に比べて濃度が高い:アルギニン、アスパラギン、シスチン、ヒスチジン、グルタミン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリンおよびトリプトファン。本発明による溶液の、高度に最適されているが、非限定的な例は、比較実施例1に示されている。
【0022】
本発明による臓器保存および灌流溶液はまた、明確で最適化された[Na+]と[K+]との濃度のバランスを有している。正常な生理的環境において、[K+]の細胞内濃度は、[Na+]の細胞内濃度よりも顕著に高いが、間質内腔の状況では逆である。本発明による臓器保存および灌流溶液は、臓器、組織および細胞に、とりわけナトリウムポンプによって行われるイオン輸送を駆動するのに必要な生理学的な[Na+]/[K+]バランスの維持を促進させる目的で、生理学的な細胞外濃度を模倣するよう設計されている。細胞内および細胞外の[Na+]および[K+]濃度の不均衡は、原形質膜を介した電気的および化学的勾配の両方を作り出す。このことは、細胞に対してだけでなく、多くの場合、方向性の流動(directional fluid)および上皮性シートを介した電解質の移動に対しても、重大な意味を持つ。Na+-K+-ATPアーゼは、実質的に高等生物の全ての細胞で発現する、高度に保存された必須膜タンパク質である。これは、グルコース、アミノ酸およびその他の栄養素を細胞中に移入する、幾つかの促進性トランスポーターの駆動力を提供する。本発明者らによる実験により、この移入は、臓器の、特に心拍動のないドナーからの臓器の低温貯蔵および灌流に重要であることが実証された。上皮の一側面からもう一方の側面へのナトリウムの移行は、水の吸収を駆動する浸透圧の勾配を作り出す。この減少の重要な事例は、例えば小腸内腔からの水の吸収および腎臓における水の吸収においてみることができる。それゆえ、本発明による組成物が、少なくとも2:1、より好ましくは3:1および最も好ましくは5:1である生理的な細胞外[Na+]/[K+]バランスを模倣していることは重要なことである。
【0023】
本発明による臓器保存および灌流溶液における非常に好ましい添加物は、要求される膠質浸透圧を提供する高分子量化合物である。臓器保存および灌流溶液に好都合に使用することができる、幾つかの高分子量添加物は、当該分野において既知のものであり、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)およびその修飾体(US 4,938,961およびUS 5,599,659)、デキストラン、アルブミンといった血清タンパク質、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、および高分子量糖および中性pH溶液中で正味に負の電荷を持つ生体適合性ポリマーである。大きな血漿タンパク質は、毛細管の壁を容易に通過することができないため、毛細管内部の浸透圧におけるそれらの効果は、ある程度、液体が毛細管から漏出しようとする傾向と釣り合うだろう。例えば、移植目的のために身体から取り出され、保存液体中に貯蔵される臓器の場合といったような、血漿タンパク質が減少している状態において、低すぎる膠質浸透圧は、結果的に、組織中に過剰の液体が蓄積された状態の浮腫をもたらす。この問題は、しばしばわずかに悪化した条件にある、心拍動のないドナーから得られた臓器のために、特に取り組む必要がある。それゆえ、負に帯電した高分子量分子が、mmHg(水銀の圧力のミリメーター)で表される、生理的な膠質浸透圧を維持するために添加される。好ましくは、本発明による臓器保存および灌流溶液は、20から30 mmHgの膠質浸透圧を持ち、好ましくは、25 mmHgに近い、生理的レベル周辺の膠質浸透圧を持つ。好ましい実施態様において、PEGは、本発明による臓器保存溶液における高分子量添加物として使用される。最も好ましい実施態様において、分子量25,000から50,000ダルトンのPEGは、好ましくは10から50グラム/リッターの範囲の濃度で、最も好ましくは20から35グラム/リッターの間で使用される。しかしながら、HES、アルブミンおよびデキストランといったその他の高分子量化合物を、膠質浸透圧を作るために、任意にPEGsとの組み合わせによって、好都合に使用してよい。
【0024】
pHの調整および細胞内pHの増大の予防は、臓器保存および貯蔵用溶液の重要な性質である。虚血、低酸素、エネルギー欠乏は、pHレベルの低下をもたらすことが知られる要因であり、移植しようとする細胞、組織および臓器の酸性化を引き起こす。酸性度は、細胞および組織に対する広く認識された危険であり、移植しようとする臓器の条件をすばやく悪化させるだろう(Baicu and Taylor, 2002 Cryobiology 45 p. 33-48)。酸性度は、特に、既に虚血、低酸素および栄養素の欠乏を経験した心拍動のないドナーから得られる臓器にとって取り組む必要のある問題である。本発明による保存溶液は、これらの問題を取り組み克服することに最適化されている。
【0025】
低温で貯蔵され、人工的な灌流がない状態または低下した状態の臓器の酸性化を予防するため、付加的な緩衝能力を提供することは、本発明による臓器保存および灌流溶液の別の鍵となる特徴である。組織培養培地は、37℃周辺の生理的な温度においてpH 7.0からpH 7.8の間、好ましくはpH 7.4周辺の生理的なpHに最適化された生物学的に許容可能な緩衝剤を有するものの、上記の理由のために付加的な緩衝能力が必要である。本発明による、0℃から20℃の低温のための、臓器保存および灌流溶液は、スライク単位(スライク単位 = (pHの単位変化当りの添加された酸のミリモル))で測定して少なくとも20、より好ましくは25、30、35、40、50、100から250、および最も好ましくは30から35の最小能力(ベータ)を有する緩衝システムが備えられる。スライクで表される緩衝能力(β)は、pH 7からpH 6の範囲にわたって1 pH単位だけ、1 gの筋または組織のpHを変化させる、強酸のミリモル数で定義される(van Slykeによって定義された、JBC, 1922)。強酸はHClであってよく、pHを6から7に変化させるための強塩基としてNaOHを使用してよい。
【0026】
適したpKa範囲を有し、本発明による溶液に好都合に使用してよい、生物学的におよび生理学的に許容可能な緩衝剤は、HEPES、PIPES、MOPS、TES、BES、ビシン(Bicine)、トリシン、トリス、クエン酸塩、ヒスチジン、KH2PO4、K2HPO4、NaHCO3およびその他のリン酸-、クエン酸-および炭酸-緩衝剤から成る群から選択され、当該分野において既知であり十分実証されている(Current Protocols, Wiley Interscience, 2004)。HEPESは、望ましい(付加的な)緩衝能力、好ましくは1000から10000 mg/L、最も好ましくは2500から7500 mg/Lの間の濃度を提供するための、本発明による溶液における最も好ましい緩衝剤である。
【0027】
臓器保存のpHは、Mg(OH)2、NaOH、KOH、Ca(OH)2またはそれらの組み合わせを用いて、室温で最終的に7から8のpH、好ましくは7.5周辺のpHに調整してよい。
【0028】
酸素含有ガス混合物による、臓器保存溶液の酸素化は、臓器の保存および/または灌流の前および使用中の両方において非常に好ましい。CO2による、および、貯蔵されたまたは還流された臓器におけるその他の酸性化の原因による、臓器貯蔵用溶液の酸性化の予防をさらに促進するため、好ましくは、高度なまたは純粋でさえある酸素によるガス混合物を使用してよい。
【0029】
本発明による臓器保存および灌流溶液は、300から400 mOsmの浸透圧モル濃度、より好ましくは320から350 mOsmの生理的範囲の浸透圧モル濃度、最も好ましくは340 mOsm周辺の浸透圧モル濃度を有する。
【0030】
本発明による別の好ましい実施態様において、付加的な不透過剤(impermeant)が、臓器保存および灌流溶液に添加される。不透過剤は、膜を透過できない、または低い割合でしか膜を透過できない、相対的に高分子量の物質であり、例えば塩の付加により、溶液の電解組成を著しく変化させることなく浸透圧モル濃度を増大させるために添加される。本発明による溶液において使用してよい不透過剤は、ラフィノース、トレハロース、マンニトール、スクロース、グルコース、キシリトール、ラクトビオン酸塩(lactobionate)およびグルコン酸(マグネシウム、カリウムまたはナトリウム結合)から成る群から選択される。好ましい実施態様において、ラフィノースおよびトレハロースを、不透過剤として使用してよく、トレハロースおよびラフィノースそれぞれにおいて、好ましくは1000から5000 mg/Lの範囲で、最も好ましくは1200から2500 mg/Lの範囲の濃度で使用してよい。グルコン酸は、好ましくは1000から5000 mg/Lの範囲の濃度で、最も好ましくは1200から2500 mg/Lで使用される。
【0031】
本発明のさらに別の好ましい実施態様において、臓器保存および灌流溶液は、酸化的ストレス、特に酸素およびその他の遊離基の活性による結果を阻害または予防することのできる化合物を含む。臓器における再灌流の損傷は、遊離酸素基の形成をもたらす虚血の間に、生化学的事象とともに始まる。再灌流の損傷は、一般に全ての移植臓器にとって問題となるが、特に、虚血、低酸素および栄養素欠乏による持続的なダメージを受けた心拍動のないドナーから得られた臓器にとって大きな問題である。細胞中で正常に作られた遊離基は、捕捉剤(scavenger)、遊離基を中和することのできる化合物により除去され、および、スーパーオキシドジスムターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、トコフェロールといった酵素によって除去される。好ましくは本発明による溶液に添加される酸化的ストレスを制限する化合物は:ヒポキサンチン、グルタチオン、アロプリノール、トロロクス、ビタミンE、メチレンブルー、アスコルビン酸を含むが、これらに限定されない。好ましくはグルタチオン、ビタミンEおよびアスコルビン酸が本発明による溶液に使用され、好ましくは、それぞれ0,7から1.8 g/lのグルタチオン、0.00001から0,001のビタミンEおよび0,01から0,1 g/lのアスコルビン酸の濃度で使用される。
【0032】
セレンは、主に抗酸化性の酵素に関与する必須元素である。3つのセレン含有酵素(three selenium-containing enzymes)は抗酸化ペルオキシダーゼであり、および第4のセレン含有酵素(fourth selenium-containing enzyme)は、甲状腺ホルモン生成に関する。ビタミンEとの組み合わせで、セレンは、抗体の生成を促進し、健康な心臓の維持を助ける。また、すい臓、肝臓および腎臓の機能を促進し、組織に弾性を提供し、細胞が酸化のダメージから自己を守るよう助ける。ビタミンEは、必須脂溶性ビタミンである。これは、抗酸化物として、破壊性の酸化から細胞膜、リポタンパク質、脂肪およびビタミンAを保護することを助ける。これはまた、赤血球の保護を助け、神経および筋の適切な機能にとって重要である。セレンは、ビタミンEと密接に関係してはたらく、必須ミネラルである。本発明による臓器保存および灌流溶液の好ましい実施態様において、酸化的ストレスおよび灌流の損傷からの付加的な保護を提供するために、セレンの供給源が提供される。このことは、心拍動のないドナーから得た臓器および持続性の虚血および低酸素状態の臓器にとって特に有利であることが証明された。毒性は、ほとんどの栄養素よりもセレンに関しての方が問題となり、セレンの濃度は、0.00001から0.001 g/lの範囲に、好ましくは0.00003から0.0001 g/lの範囲に、慎重に調節される。セレンの有機および無機の形態が、異なる性質を有してよい。有機の形態は、セレノメチオニン、セレノシステイン、アミノ酸キレート化合物を含み、および本発明による溶液に取り込んでよい。無機の形態は、亜セレン酸ナトリウムおよびセレン酸ナトリウムを含み、これらは本発明による臓器保存および灌流溶液において、セレンの好ましい供給源である。
【0033】
本発明のさらなる側面において、血液供給がない状態の細胞、組織および臓器の保存のための、本出願にて開示される保存および灌流溶液の使用を含み、ならびに、貯蔵の間、臓器、生組織および生細胞へのダメージを防ぎまたは最小化するための、臓器の保存、洗浄(flushing)および/または灌流のための方法が提供される。溶液は、心臓、肺、すい臓および腸を含む、全ての移植可能な哺乳類の臓器の使用に適している。最も好ましい実施態様において、臓器の保存のための方法は、腎臓および肝臓の臓器の冷却(cold)灌流および保存に向けられている。本発明による溶液は、心拍動のあるドナーおよび特に最適以下のドナー由来の臓器のための移植方法に使用してよい。好ましくは、保存溶液および保存しようとする臓器は、0℃から20℃の範囲内、最も好ましくは2℃から10℃の間の温度に保たれる。
【0034】
好ましくは、溶液は、臓器の連続的なまたは拍動性の灌流に用いられ、最も好ましくは機械式灌流に用いられる。好ましくは、臓器は、臓器移植、特にヒトの肝臓および腎臓移植の分野の当業者に周知の方法および装置を用いて、臓器の血管系を通して還流される。
【0035】
本発明による臓器保存方法および冷却保存および灌流溶液のその他の利点は、容易に利用可能で、安価で、および医薬的に試験されおよび利用可能な化合物の使用(これは、製造のコストを低減し、本発明による溶液の医薬的な許可を促進する)および、病院におけるそれらの使用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】24時間のMPならびに60分間の再灌流のための、二重性(double)灌流システム。該システムは、貯蔵器から成り、そこから、灌流溶液が、ガラス酸素供給器を通してローラーポンプにより送られる。酸素化および空気塞栓の除去の後、溶液は、門脈カニューレを介して肝臓を灌流し、大静脈血管を介して灌流液貯蔵器に自由に流れる。貯蔵器に入る前に、サンプルは、肝臓のダメージおよび機能の評価のために採取することができる。
【図2】60分間のKHBによる常温再灌流の間の、灌流液ATLレベル。CSに対して、MPにおけるALTの減少が、全ての時点にてみられる。UWによるCSに対する、ポリソルを用いたMP肝臓におけるALTの減少は、RPのt=10-20-30-40-60分においてみられ、UWによるCSに対する、UW-Gを用いたMP肝臓におけるALTの減少は、RPのt=0-10分においてみられた。値(N=5)は、平均値±SEMで表される。
【図3】60分間のKHBによる常温再灌流の間の、灌流液LDHレベル。CSに対して、MPにおけるLDHレベルの低下がみられる。UWによるCSに対して、ポリソルを用いたMPの値のほうが、RPのt=10において低い。値(N=5) は、平均値±SEMで表される。
【図4】60分間のKHBによる常温再灌流の間の、灌流液ASTレベル。UWによるCSに対して、24時間のMP後の場合にASTの放出が減少している。t=10において、UWによるCSに対する、UW-Gを用いたMP後の場合にAST放出の有意な減少がみられる。ASTレベルの有意な減少は、RPのt=40-50-60分において、UW-Gを用いたMPに対して、ポリソルを用いたMP後にみられる。値(N=5) は、平均値±SEMで表される。
【図5】60分間のKHBによる正常温RPの間の、灌流液のアルファ-GSTレベル。UW-Gを用いたMPに対して、ポリソルを用いた24時間のMP後におけるアルファ-GSTの有意な減少が実証される。値(N=5) は、平均値±SEMで表される。
【図6】60分間のKHBによる常温再灌流の間の、胆汁生成。胆汁生成は、UWによるCSおよびUW-Gを用いたMPと比較した場合に、ポリソルを用いたMP後において増加している。値(N=5) は、平均値±SEMで表される。
【図7a】60分間のKHBによる常温再灌流の後の、肝臓の組織病理学的外観:a)24時間のCS後:類洞の拡大(矢印)、ゾーン1-3における空胞化(丸囲み)、核濃縮および壊死の領域;b) 24時間のUW-Gを用いたMPの後:類洞空間の減少(矢印)、ゾーン3における空胞化(丸囲み)、壊死はみられない;c)24時間のポリソルを用いたMP後:正常な類洞構造および肝細胞、空胞化または壊死はみられない。
【図7b】60分間のKHBによる常温再灌流の後の、肝臓の組織病理学的外観:a)24時間のCS後:類洞の拡大(矢印)、ゾーン1-3における空胞化(丸囲み)、核濃縮および壊死の領域;b) 24時間のUW-Gを用いたMPの後:類洞空間の減少(矢印)、ゾーン3における空胞化(丸囲み)、壊死はみられない;c)24時間のポリソルを用いたMP後:正常な類洞構造および肝細胞、空胞化または壊死はみられない。
【図7c】60分間のKHBによる常温再灌流の後の、肝臓の組織病理学的外観:a)24時間のCS後:類洞の拡大(矢印)、ゾーン1-3における空胞化(丸囲み)、核濃縮および壊死の領域;b) 24時間のUW-Gを用いたMPの後:類洞空間の減少(矢印)、ゾーン3における空胞化(丸囲み)、壊死はみられない;c)24時間のポリソルを用いたMP後:正常な類洞構造および肝細胞、空胞化または壊死はみられない。
【図8】再灌流後における、肝臓生検材料の乾/湿重量比(N=5)。乾/湿重量比(%)は、MP-UW-GおよびMP-ポリソルの両方と比較して、CS群において最も高い。値は、平均値±SEMで表される。
【図9a】24時間のラット肝臓の低体温MPの間の、肝臓酵素の放出。ASTおよびALTの両レベルに関して、ポリソルと比較して、UW-Gを用いたMPの間のほうが、より大きなダメージが観察された。
【図9b】24時間のラット肝臓の低体温MPの間の、肝臓酵素の放出。ASTおよびALTの両レベルに関して、ポリソルと比較して、UW-Gを用いたMPの間のほうが、より大きなダメージが観察された。
【図10】24時間のラット肝臓の低体温MPの間の、灌流液の流動。初期の時間には、全く差が見られなかったが、t=20時間において、UW-Gで灌流した肝臓は、ポリソルの場合と比較して、有意に低い流動がみられた。
【図11a】クレブス-ヘンスレイ緩衝液を用いた場合の、60分間のラット肝臓の正常温再灌流の間の肝臓酵素の放出。有意に低い酵素の放出が、MP群にて見られた。これらの差は、ALTと比較してASTを測定した場合に、より顕著であった。UW-Gとポリソルの間では、有意な差はみられなかった。
【図11b】クレブス-ヘンスレイ緩衝液を用いた場合の、60分間のラット肝臓の正常温再灌流の間の肝臓酵素の放出。有意に低い酵素の放出が、MP群にて見られた。これらの差は、ALTと比較して、ASTを測定した場合により顕著であった。UW-Gとポリソルの間では、有意な差はみられなかった。
【図12】60分間のラット肝臓の正常温再灌流の間の、灌流液の流動。流動は、CS-UWおよびMP-ポリソルの両方と比較して、MP-UW-G群において有意に低かった。さらに、ポリソル群における灌流液流動は、t=45および60分において、CS群と比較して有意に高かった。
【図13】再灌流の間の胆汁生成。CSおよびMP-UW-Gの両方と比較して、ポリソルを用いたMP後のほうが、有意に高い量の胆汁が生成された。CSとMP-UW-Gとの間の差は、有意ではなかった。
【図14a】再灌流の間における、アンモニアクリアランスおよび尿素生成。機能を、灌流液に添加した5 mMの塩化アンモニウムに肝臓をさらした後に測定した。アンモニアクリアランスおよび尿素生成は、ポリソルの場合と比較して、MP-UW-G後のほうが、有意に低かった。
【図14b】再灌流の間における、アンモニアクリアランスおよび尿素生成。機能を、灌流液に添加した5 mMの塩化アンモニウムに肝臓をさらした後に測定した。アンモニアクリアランスおよび尿素生成は、ポリソルの場合と比較して、MP-UW-G後のほうが、有意に低かった。
【図15】再灌流の間の、乳酸塩生成。
【図16】クレブス-ヘンスレイ緩衝液を用いた再灌流後のATP含量。ATPの量は、CSおよびMP-UW-Gの両方の場合と比較して、ポリソルを用いたMP後において最も高かった。
【図17】肝臓の生検材料の組織学的スコア。H&E染色した切片の半定量的評価により、ポリソルを用いて保存された肝臓では、中央値スコアが、2.4±0.3となった。これは、CSおよびUW-Gを用いたMPの両方と比べて、有意によいスコアであった。
【図18】再灌流後に採取された、生検材料の乾/湿重量比。UWによるCSおよびUW-Gを用いたMPと比較して、ポリソルを用いたMP後において、有意に低い乾/湿重量比がみられた。
【実施例】
【0037】
比較実施例1(Comparative example 1)
本発明による臓器保存および灌流溶液のための好ましい実施態様の典型例は、広く利用される組織培養培地と比較して、以下のように表される:
ウィリアムス培地 E ポリソル(Polysol)1 ポリソル2
液体 液体 液体
mg/L mg/L mg/L
組成
無機塩
CaCl2 (無水物) 200.00 30.00 22.5
CuSO4・5H2O 0.00 x
Fe(NO3)3・9H2O 0.00 x
KCl 400.00 x
MgSO4 (無水物) 400.00 100.00 75.00
MgSO4・7H2O 200.00 100.00 75.00
MnCl2・4H2O 0.0001 0.0001 0.000075
NaCl 6800.00 x 720.00
NaHCO3 2200.00 x
NaH2PO4・H2O 140.00 1400.00
ZnSO4・7H2O 0.0002 0.0006
NaOH 10N 2.65 ml
HCl 1N 2.55 ml
その他の化合物
グルコース 2000.00 2000.00 1500.00
グルタチオン(還元型) 0.05 900.00 1500.00
リノール(Linoeic)酸メチルエステル 0.03 0.03 0.0225
フェノールレッドNa 10.00 10.00 x
ピルビン酸ナトリウム 25.00 25.00 18.75
ツイーン80 1.84 x x
アミノ酸
L-アラニン 90.00 90.00 67.5
L-アルギニン 50.00 250.00 187.5
L-アスパラギンH2O 20.00 120.00 90
L-アスパラギン酸 30.00 30.00 22.50
L-システイン 40.00 40.00 30
L-シスチン 20.00 60.00 45
L-グルタミン酸 50.00 50.00 37.50
グリシン 50.00 50.00 37.50
ヒスチジン 15.00 980.00 735.00
L-イソロイシン 50.00 50.00 37.50
L-ロイシン 75.00 75.00 56.25
L-リジンHCl 87.50 87.50 65,625
L-メチオニン 15.00 45.00 33,75
L-フェニルアラニン 25.00 50.00 37.50
L-プロリン 30.00 90.00 67.50
L-セリン 10.00 30.00 22.50
L-スレオニン 40.00 40.00 30.00
L-トリプトファン 10.00 180.00 135.00
L-チロシン 35.00 35.00 26.25
L-バリン 50.00 50.00 37.50
ビタミン
アスコルビン酸 2.00 20.00 15.00
d-ビオチン 0.50 0.50 0.375
D-Caパントテン酸塩 1.00 1.00 0.75
塩化コリン 1.50 1.50 1.125
エルゴカルシフェロール 0.10 0.10 0.075
葉酸 1.00 1.00 0.75
i-イノシトール 2.00 12.00 9.00
メナジオン重亜硫酸ナトリウム 0.01 0.01 0.0075
ニコチンアミド 1.00 1.00 0.75
ピリドキサールHCl 1.00 1.00 0.75
DL-トコフェロールリン酸Na 0.01 0.03 0.0225
リボフラビン 0.10 1.00 0.75
チアミンHCl 1.00 10.00 7.50
ビタミンAアセテート 0.10 0.10 0.075
ビタミンB12 0.20 0.20 0.15
添加物
NaSeO3.5H2O 0.05 0.0375
MgCl2.6H2) 731.88 548.91
HEPES 4766.00 4766.00
KH2PO4.H2O 1360.90 1020.67
L-オルニチン 337.00 252.75
グルタミン 10 ml/L 7.5 ml/l
ニコチン酸 0.50 0.375
アデノシン 1340.00 1005
アデニン 680.00 510.00
アロプリノール 163.20 122.40
ラフィノース 1600.00 1200.00
トレハロース2H2O 2000.00 1500.00
D-グルコン酸ナトリウム 16358.00 12268.50
D-グルコン酸カリウム 4684.00 3513.00
マクロゴールPEG 30 25000.00 20000.00
Na+ 含量 < 120 mM
K+ 含量 < 25 mM
C- 含量 < 50 mM
浸透圧モル濃度 < 340 mosmol
膠質浸透圧 25 mmHg
pH 7.4
実施例2
この実施例の狙いは、ポリソルおよびUW-Gを用いた機械式灌流による結果と、UWを用いた最高の基準(gold standard)である冷却貯蔵(cold storage)(CS)法とを比較するため、本発明による臓器保存溶液であり実施例1に記載されるポリソル-1を用いて、ラットの肝臓の機械式灌流(machine perfusion)(MP)を評価することであった。この目的のため、保存方法およびMP溶液の両方を、心拍動のあるドナー由来とする、単離され還流されたラットの肝臓モデル(the isolated perfused rat liver model)(IPRL)にて評価した。
【0038】
材料および方法
動物および手術:
体重350 g(+/−50 g)のオスのウィスターラット(Harlan、オランダ)を、肝臓のドナーとして使用した。動物は、実験の直前まで、標準化された条件のもと、12/12時間の暗/明周期で、水および標準的固形飼料(Hope Farms、ウールデン、オランダ)を自由に摂取できる状況で飼った。全ての動物は、アムステルダム大学の動物倫理委員会の承認の下、動物へのケアにおけるオランダの規則および原則に従って取り扱われた。ラットを、O2/空気/イソフルラン(1 L/min: 1 L/min: 3 %)で麻痺させ、0.1 ml/100 g体重のFFM(ハイプノーム(Hypnorm)/ドルミカム/アクアデスト(aquadest): 1:1:2)を腹腔内注射した。手術の間、O2/空気/イソフルランを、マスクを通して吸入させることで、麻痺状態を維持した。正中切開術続いて両側性肋骨下切開の後、肝臓を周囲から分離(mobilize)し、胆管に0.9 mmカテーテル(B-Braun、メルスンゲン、ドイツ)でカニューレ処置した。門脈のカニューレ処置の前に、動物に、大静脈血管を介して0.1 mlのヘパリン(5000 IU/ml、Leo Pharma、マルメ、デンマーク)でヘパリン処置した。肝臓を、門脈のカニューレ(0.8 fr、腸内栄養管、Vygon、ファルケンスワルト、オランダ)を介して、50 mlのリンガー乳酸(Ringer Lactate)(37℃、10 cm H2O、Baxter、ユトレヒト、オランダ)でウォッシュアウト(wash out)した。ウォッシュアウトの間、動物は、腹部の大静脈血管の切れ目から出血した。肝上の大静脈血管は、0.6 frカニューレ(Vygon)でカニューレ処置し、肝臓下の大静脈血管を連結し、周辺組織の手入れの後、肝臓を切除し重量を測定した。
【0039】
機械式灌流システム:
二重性機械式灌流システムは、学術医療センターの医療工学開発学部(the Medical Technical Development Department of the Academic Medical Center)(AMC、アムステルダム、オランダ)により開発され、単一の装置においてMPおよび再灌流(RP)段階の両方が可能である(図1)。切除された肝臓をつなぐ前に、回路を、200 mlの無菌アクアデストで、続いて50 mlの保存溶液ですすいだ。圧力調節性灌流システムは、400 mlの無菌MP溶液を含む貯蔵器(reservoir)から成る。肝臓をシステムにつないだ後、灌流溶液の最初の100 mlを回収した。溶液の残りの250 mlを、ローラーポンプ(rollerpump) (Ismatec、グラットブルグ、スイス)によって再循環させた。灌流溶液を、ガラス酸素供給器を用いてカーボジェン(carbogen)(95%O2/5%CO2、1 L/min、Hoekloos Medical、オランダ)によって酸素化し、その結果、前肝臓(prehepatic)の酸素圧は約700 mmHgとなった。空気塞栓(air emboli)を、気泡除去器(bubble trap)によりシステムから除き、その後、溶液を熱交換器(HMT-200, Heto、ブレダ、オランダ)を用いて冷却した。灌流溶液は、直列流量計(in-line flow meter) (HT-207, Transonic Systems Inc、マーストリヒト、オランダ)を通り、門脈カニューレを通って肝臓に入り、肝上大静脈血管カニューレを経由して貯蔵器へと自由に流れた。
【0040】
再灌流は、上述した同一の回路に沿って、37℃で400 mlのクレブス-ヘンスレイ緩衝液(Krebs-Henseleit Buffer)(KHB)溶液を含む第2の貯蔵器を用いて行った。肝臓を再びつなぐ前に、システムを、200 mlの無菌アクアデストおよび50 ml KHBですすいだ。肝臓に再結合した後、最初の100 mlは、回路に再び入らないように排出した。灌流液の残り250 mlは、カーボジェンで酸素化した。サンプルを、直接、前肝臓または後肝臓(pre- or posthepatically)に配管(tubing)して、得た。温度を、肝臓の下に設置したプローブ(Lameris、オランダ)を用いて記録した。それぞれの方法の後、回路を洗浄し蒸気滅菌した(134℃で16分)。
【0041】
実験群および保存条件:
この研究は、3つの実験群を含む:1) CS-UW (N=5); 2) MP-UW-G (N=5)および3) MP-ポリソル (N=5)。単離した肝臓を、CSまたはMPのどちらかで24時間保存し、その後再灌流した。
【0042】
RL(4℃)でウォッシュアウトした後、肝臓を、保存溶液でin situで洗い流した(flushed)。CS肝臓を、50 mlのUW (4℃)で洗い流し、100 mlのUWを含む無菌のカップに置き、冷却した容器(4℃)中の溶けている氷の上で24時間、貯蔵した。MP肝臓を、ウォッシュアウトおよび収集の後、門脈を経由して直接灌流システムにつなぎ、100 mlのUW-Gまたはポリソルのどちらかで洗い流し(flushed)、連続してこの溶液で4℃にて24時間灌流した。保存の期間の後、全ての肝臓を、酸素化したKHBで、37℃で60分間再灌流した。
【0043】
保存溶液:
冷却貯蔵のために、ウィスコンシン大学の保存溶液(Viaspan, Bristol Myers Squibb)を用いた。MPのためのUW-G溶液を、Belzerの処方 (pH 7.4, 330 mosmol/kg)に従って作製した(Pienaar BH et al., Transplantation 1990:49: 258-260)。MP保存溶液ポリソル (pH 7.4, 330 mosmol/kg)は、AMCの外科研究室(the Surgical Laboratory of the AMC)で開発された。再灌流のために、ウシ血清アルブミンの入っていないクレブス-ヘンスレイ緩衝液 (KHB) (pH 7.4, 320 mosmol/kg)を用いた。UW-G、 ポリソルおよびKHBは全て、Sigma-Aldrich (ザインドレヒト、オランダ)、Merck (ハールレム、オランダ)、Cambrex (ヴェルヴィエ、ベルギー)、Centrafarm (エテン・ルール、オランダ)およびNovo Nordisk (アルフェン・アーン・デン・レイン、オランダ)からの、分析用試薬グレード(またはそれより良い等級)の化学物質を用いて、我々の研究室で作製した。使用に先立ち、溶液は、0.45μmのアンプルフィルター(DowCorning、アレスリー、イギリス)および0.22μmのフィルター(Millipack 60、Millipore、アムステルダム、オランダ)を通してろ過することで滅菌した。
【0044】
肝細胞性のダメージおよび肝臓の機能の評価:
肝細胞性のダメージを評価するためのサンプルを、60分間のRPの間、10分おきに採取した。肝臓のダメージは、肝後方の灌流サンプル(Laboratory of Clinical Chemistry、AMC、オランダ)において、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)および乳酸脱水素酵素(LDH)の直接の分析によって評価した。アルファ-GST(アルファ-グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)レベルは、ラットアルファ-GST ELISAキット(Biotrin、ダブリン、アイルランド)を用いて決定した。肝臓の機能は、60分間のRPの間、胆汁生成をモニターすることで評価した。そのうえ、嫌気的解糖を表す乳酸生成(Laboratory of Clinical Chemistry、AMC、オランダ)および灌流液pH(ABL, Radiometer、ズーテルメール、オランダ)を、再灌流の間測定した。
【0045】
組織学および乾/湿重量比:
RP段階の終わりに、生検材料を、尾状部(caudate)および外側右葉(right lateral lobes)から得た。生検材料は、ホルムアルデヒド(10%)中に貯蔵し、パラフィンに包埋した。パラフィン切片(4μm)を、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、光学顕微鏡で評価した。肝臓損傷形態学的分類のために、1(良好)から9(不良)のスケールに類別される9ポイントスケールを用いた(Martin H, et al., Cryobiology 2000:41: 135-144、およびTojimbara T et al., Liver Transpl Surg 1997:3: 39-45)。1.正常な長方形の形状、2.類洞空間(sinusoidal spaces)の増大を伴う円形の肝細胞、3.ゾーン(zone)3における空胞化(vacuolization)、4.ゾーン2における空胞化、5.ゾーン1における空胞化、6.ゾーン3における空胞化および核濃縮、7.ゾーン2における空胞化および核濃縮、8.ゾーン1における空胞化および核濃縮および9.壊死。
【0046】
乾/湿重量比の肝臓のために、生検材料を、灌流後即座に重量を測定し、その後60℃の温室(stove)に貯蔵した。肝臓の重量の減少が止まるまで、7日ごとに再び生検材料の重量を測定した。肝臓の浮腫の量を実証するため、以下の計算を使用した:1-(乾重量/湿重量) x 100%。
【0047】
統計分析:
クラスカル-ワオリス試験(Kruskall-Wallis test)を、3つの群の全体的な比較のために使用した。有意な差があった場合、個々の群の差を、ノンパラメトリック・マン・ホイットニー試験(non-parametric Mann Whitney test)にて評価した。文章およびグラフ中の結果は、平均値±SEMで示されている。統計学的有意性は、p < 0.05として定義した。
【0048】
結果
灌流パラメーター:
肝臓重量は、実験群間で有意に異なることはなかった(16.53±0.53グラム)。低体温MPおよび正常温RPの両方の間、灌流圧力は、20 cm H2O (重力制御(gravity controlled))に一定に保った。低体温MPの間の灌流の流動は、最大で、1 ml/分/グラム肝臓に達した。生常温RPの間、最大で4 ml/分/グラムの流動が記録された。低体温MPにおける酸素化は、約700 mmHgの灌流液pO2となり、正常温RPにおける酸素化は、温度がより高いために、約500 mmHgのpO2となった。正常温RPにおいて記録された温度は、37.13±0.41℃であった。
【0049】
肝細胞ダメージ:
24時間の冷却虚血時間(cold ischemic time)後のALT放出は、UWによるCS後の方が、UW-Gを使用したMPに比較して、t=0’ (4.6 ± 5.37 vs 0.4 ± 0.55)およびt=10’ (5.4± 3.85 vs 1.4 ± 0.55 U/L)において、有意に高かった(図2)。しかしながら、CS-UWとMP-ポリソルを比較すると、ALTレベルは、t=0’およびt=50’を除く全ての時点において、MP-ポリソル後の方が有意に低い。LDHレベルは、有意性に到達することはなかったが、24時間のCS-UW後のものが高い結果となっている。LDHは、UW-Gまたはポリソルのどちらかを用いたMPに比べて、CS-UW後のものが、t=10’において有意に高い(図3)。灌流液の流動、pHおよび乳酸生成は、有意に異なることはなかった(データは示していない)。2つのMPの溶液を比較すると、ASTレベルがより低いことで示されるように、24時間のMP-ポリソル後において、ダメージがより小さいことがわかった(図4)。全ての時点において、ポリソルを支持する傾向があるものの、ALT、LDH、流動、pHおよび乳酸において有意な差はなかった。t=40におけるα-GSTの放出は(図5)、MP-ポリソル後のものが、CS-UW(それぞれ125.5 ± 10.51 vs 46.35 ± 9.11、p< 0.02)およびMP-UW-G(それぞれ101.6 ± 11.99 vs 46.35 ± 9.11、p<0.02)と比較して低かった。
【0050】
肝細胞機能:
胆汁生成は、MP-ポリソル後のほうが、MP-UW-GまたはCS-UW後より高かった(それぞれ、355 ± 82,31 対 256 ± 26,19 対 180 ± 61,89μl)。しかしながら、これは、有意性に到達しなかった(図6)。
【0051】
組織学:
肝臓切片の組織病理学的スコアリングの後、より良い中央値スコア(median score)が、CS-UW肝臓(4.5 ± 0.87ポイント)に比べて、UW-Gおよびポリソル(それぞれ、2.0 ± 0.55および1.6 ± 0.40ポイント)を用いたMP群で示された。MP群間では有意な差はみられなかった(図7)。肝臓切片の乾/湿重量は、MP群において最も高く、浮腫のパーセンテージが最も低いことが示されている(図8)。パーセンテージは、それぞれ、76±1.0対72±0.5対72±0.7である。
【0052】
結論
腎臓の臨床的MPのために、改変ウィスコンシン大学溶液(UW-グルコナート)が、標準的に使用されている。この溶液は、肝臓でのMPへの適用のために、マンニトールをラフィノースで置換して、さらに改変されている。生成される溶液は、実験的な肝臓保存に大規模に使用されてきたが(Kim JS et al., Transplant Proc 1997:29: 3452-3454, Pienaar BH et al., Transplantation 1990:49: 258-260,Southard JH et al., Transplant Proc 2000:32: 27-28.)(1-3)、商業的に利用することはできない。発明者らによる、4℃における代謝の抑制を助けるために必要な、栄養素を含む本発明による肝臓および腎臓のMPのための新規な保存溶液、ポリソルが試験された。我々の究極的な目的は、実施例3で取り組まれているように、辺縁性(marginal)のおよび心拍動のないドナーの臓器の保存であるが、まず、基準値を得るために、十分確立された心拍動のないドナーモデルにおいてポリソルを試験しようとした。
【0053】
この実施例において、我々は、心拍動のないドナーラット肝臓モデルにおいて、CSに対するMPの有利点を示した。肝細胞のダメージは、MP保存の肝臓において、有意に低かった。このことは、灌流システムの連続的な酸素化およびMP中の栄養素の連続的な供給により説明することができる。そのうえ、胆汁生成によって表される肝臓機能は、24時間のMPの後において、改善された。
【0054】
ポリソルを用いたMPは、細胞性ダメージの値がより低くなるという結果となり、胆汁生成の見地から、保存後の機能が改善される結果となった。我々は、本発明による溶液の緩衝能力を増強し、酸素-遊離基捕捉剤(scavenger)内容量を最適化し、アミノ酸、エネルギーおよび脂肪代謝のために特定の栄養素を添加した。そのうえ、溶液は、pH 7.4で作製したが、酸素化された肝臓を結合した後、pHは、pH 7.2まで減少する。
【0055】
結論として、機械式灌流による、心拍動のないドナーラットの肝臓の保存は、冷却貯蔵と比較して、より質の高い肝臓の保存がもたらされる。本発明による、新規で、濃縮された保存溶液、ポリソル-1を用いた機械式灌流は、UW-Gと比較して、より質の高い肝臓の保存がもたらされる。この実施例において、ポリソル-1は、実施例1に定義されたとおりに使用した。ポリソルは、ポリソル-1のことを意味する。
【0056】
実施例3
この実施例の狙いは、UWを用いたCS、UW-Gを用いたMPおよびポリソル-1を用いたMPによる、心拍動のないドナー(non-heart-beating donor)(NHBD)の保存を比較することである。
【0057】
最適な肝臓のために選択される、歴史的な保存方法は、冷却貯蔵である。最近の研究により、しかしながら、連続的な低体温機械式灌流(MP)による保存は、肝臓のダメージを低下させ、24時間の保存後においてよりよい肝臓機能をもたらすことがしめされた(Kim JS et al., Transplant Proc 1997; 29(8):3452-3454,Southard JH et al., Transplant Proc 2000; 32(1):27-28, Xu H. et al., Transplantation 2004; 77(11):1676-1682)(4-6)。MPの利点は、ドナー臓器への栄養素および酸素の供給において見出すことができ、保存中および移植前の生存度評価の実現性にある。別の利点は、NHBD臓器の蘇生の可能性において見出すことができる。これらの虚血によりダメージを受けた臓器は、CSで保存することは困難であり、肝臓へのダメージおよび保存後の肝臓機能の低下をもたらす。実験的設定における、肝臓の機械式灌流に使用される保存溶液は、改変ウィスコンシン大学溶液、UW-グルコナート (UW-G)である(Marsh DC, et al., Cryobiology 1989; 26(6):524-534, Pienaar BH, et al., Transplantation 1990; 49(2):258-260)。この溶液には、微小循環性の障害を引き起こし、取得しにくく高価な、コロイド性ヒドロキシエチルデンプンが含まれる。UW-Gは、例えば4℃といった低温において低下した代謝を支えるための、十分な量の栄養素を、肝臓に提供しない。我々は、それゆえ、コロイド性ポリエチレングリコールに基づく、肝臓および腎臓のMPのための本発明による新規の保存溶液であって、低温での取り込みに十分な量の肝臓に必要な栄養素を伴い、灌流の損傷を予防し、心拍動のないドナーから得られる臓器によって維持される虚血、低酸素、酸性化および栄養素欠乏の効果を最小化するために、増強された緩衝能力および増強された抗酸化化合物を伴う、組織培養培地を含む溶液を開発した。
【表1】

【0058】
材料および方法
動物:
体重275 g (+/- 25 g)のオスのウィスターラット(Harlan、オランダ)を、肝臓のドナーとして使用した。動物は、標準化された条件のもと、12/12時間の暗/明周期で、水および標準的固形飼料(Hope Farms、ウールデン、オランダ)を自由に摂取できる状況で飼った。全ての動物は、動物へのケアにおけるオランダの規則および原則に従って取り扱われた。アムステルダム大学の動物倫理委員会により、この動物実験は承認された。
【0059】
実験群および保存条件:
NHBD肝臓の24時間の肝臓保存を、UWを用いたCS (n=6)、UW-Gを用いたMP (n=6)またはポリソルを用いたMP (n=6)の何れかによって行った。37℃でのリンガー乳酸によるin vivoのウォッシュアウトの後、肝臓を低体温保存溶液(4℃)で洗い流した(flushed):肝臓を、50 mlのUW、UW-Gまたはポリソルの何れかで洗い流した。CSでは、肝臓を、4℃の冷却容器中の解けた氷に置かれた、100 mlの低体温UWを含むプラスティック製の無菌カップに浮遊させて置いた。MPでは、肝臓を、250 mlの保存溶液を含む、再循環標準化灌流装置(recirculating standardized perfusion set-up)につないだ。該溶液は、ローラーポンプによって貯蔵器から循環し、カーボジェン (95% O2/ 5% CO2)で酸素化され、および熱交換器で流入温度が4℃になるよう冷却された。灌流液の流出液は、大静脈血管を経由して回収し、貯蔵器に再び入れた。MPならびに再灌流(RP)の両方の間において、肝臓のダメージおよび機能の評価のために、サンプルを採取した。
【0060】
保存溶液:
実施例2と同様。
【0061】
手術方法:
実施例2と同様。
【0062】
機械式灌流システム:
実施例2と同様。
【0063】
サンプル作製:
肝細胞の損傷および機能の評価のための灌流液サンプルを、MPおよびRPの間に採取した。MPの間、サンプルを、t = 0、1、2、22、23、24時間の時間単位で採取した。RP段階において、サンプルを、60分の間に、15分間隔で採取した。再灌流段階の終わりに、ATP評価のための肝臓サンプルを、急速凍結のための凍結固定(freeze clamp)を用いて、副肝葉(accesory liver lobe)から採取した。肝臓サンプルを、尾状部および右肝葉(right liver lobes)からさらに採取し、ホルマリン(PBS中に10%)で処理した。透過型電子顕微鏡のための肝臓サンプルを、中葉から得て、Mac Dowall溶液に貯蔵した。最終的に、肝臓サンプルを、乾/湿重量分析のために、左葉から採取した。
【0064】
肝臓ダメージおよび肝臓機能研究:
実施例2と同様。
【0065】
ダメージ:肝臓のダメージを、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の分光光度分析により評価した。灌流液流動を、血管の統合性(integrity)を評価するために、MPおよびRPの間に測定した。機能:肝臓機能は、胆汁生成、酸素消費、アンモニアクリアランス、尿素生成およびATPの回復を測定することで評価した(RP段階において)。酸素消費は、前肝臓および後肝臓(pre- and posthepatic)の血液ガスサンプルにおける酸素圧力の差により決定した(ABL、Radiometer、ズーテルメール、オランダ)。胆汁生成のために、15分おきに、胆汁を、胆管カニューレを介して回収した。アンモニアクリアランスおよび尿素生成を測定するため、肝臓を、5 mM塩化アンモニウムに曝露した(Sigma-Aldrich、ザインドレヒト、オランダ)。サンプルを、RPのt = -5、0、15、30、45および60のときに採取した。アンモニアクリアランスを分析するため、サンプルを、リン酸緩衝食塩水で希釈(10 x)した後、氷上で処理し、0.275 % HClで酸性化した。指示薬としてブロムクレゾールグリーンを用いた微小拡散計の方法を使用した。尿素生成を、ジアセチルモノキシムと特定の窒素性化合物(例えば、尿素、メチル尿素、シトルリン)との反応に基づく、比色定量方法により分析した(Sigma-Aldrich)。ATP値は、凍結固定生検材料を、液体窒素下で微粉砕し、過塩素酸(14%)で希釈し、その後、ヘキソキナーゼおよびG6PDを添加した後に分析して、測定した。
【0066】
組織学:
以下の点以外、実施例2と同様:
透過型電子顕微鏡(TEM)のための肝臓生検材料(1 mm)を、外側左葉(left lateral lobe)から得た。超微細構造の研究のため、生検材料を、少なくとも48時間、マクドウェル(McDowells)固定液中で固定した。その後、それらを、リン酸緩衝液(0.1 M, pH 7.4)ですすぎ、1% OsO4で後固定(postfix)し、水ですすぎ、段階的なエタノールおよびプロピレンオキシド中で脱水した。最終的に、試料は、エポン(epon)に包埋した。超薄切片(80 nm)を、Reichert Ultracut Eを用いて切り出し、酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛(lead citrate)でコントラストを強調した(contrasted)。切片は、100kVで作動するPhilips EM420で研究した:画像を、SIS Megaview IIカメラで取得した。
【0067】
統計分析:
全ての群を、クラスカル-ワオリス試験を用いて比較した。有意な結果の場合は、個々の群間の差を、ノンパラメトリック・マン・ホイットニー-U試験にて評価した。アンモニアクリアランス率には、反復測定の分析を、ボンフェローニによるポストホック試験(post-hoc test)とともに使用した。文章およびグラフ中の結果は、平均±SEMにて示されている。統計的有意性は、p < 0.05として定義した。
【0068】
結果
ラットの体重および肝臓重量について、実験群の間で差はなかった。灌流温度は、群間で異なることはなかった。
【0069】
肝細胞のダメージ(MP):
MPの間、ASTの放出は、t= 0、1、2および22時間のときに、ポリソルと比較してUW-Gを用いたほうが有意に高かった。ALT放出は、全ての時点において、ポリソルと比較してUW-Gを用いたほうが有意に高かった(図1a、b)。MPの間の灌流液の流動は、MP-UW-G群で低下しており、t= 22、23および24時間のときにはMP-ポリソルよりも低い結果と成った(p= 0.01) (図2)。
【0070】
肝細胞のダメージ(RP):
AST放出(図3a)は、t= 30およびt=45において、CSよりもMP-UW-G後のほうが低かった(p< 0.05)。ポリソルを用いると、この放出は、全ての時点において低かった(p< 0.005)。ALT放出は、同じ傾向を示したが(図3b)、有意性は、t= 60のMP-ポリソルにてCSと比較した場合のみに認められた(24.67 ± 7.30 vs. 6.00 ± 1.26 IU/L、p= 0.05)。RPの間の灌流液の流動は、MP-ポリソルが、CSとの比較ではt= 45および60にて、MP-UW-Gとの比較では全ての時点にて、有意に良好であった(図4)。また、灌流液の流動は、全ての時点において、CS群のほうが、MP-UW-Gよりも良好であった。
【0071】
肝臓機能(RP):
胆汁生成は、ポリソルを用いたMP後の場合が、UWによるCSおよびUW-Gを用いたMPと比較して、最も高かった(それぞれ、390 ± 23 vs. 34 ± 19 vs. 153 ± 55 μl/時間、p<0.01) 。CS-UWとMP-UW-Gとの間では、有意な差は見られなかった(図5)。ポリソルを用いたMP後において、最もアンモニアクリアランスが起こり、UW-Gを用いた場合よりt=15、45および60において、CSの場合よりt=15において、有意に良好であった。尿素生成は、全ての時点で、ポリソル群が、UW-Gと比較して有意に高かった。ポリソルとCSとの間に差はなかったものの、t=45において、UW-Gと比較して、CSのほうがより尿素が生成された(図6a、b)。乳酸生成は、CSおよびポリソルを用いたMPの両方と比較して、t=0および15において、UW-Gを用いたMP後のほうが高かった。それ以降の時点においては、差は見られなかった(図7)。酸素消費は、再灌流の段階の間、全ての群で同等であった(データは示していない)。
【0072】
ATP-測定:
再灌流段階の終了時におけるATP含量は、ポリソルを用いたMPの後における場合が、UWによるCSおよびUW-Gを用いたMPの両方の場合に比べて、有意に高かった(それぞれ、7.53 ± 0.55 対 4.05 ± 0.75 対 2.46 ± 0.57 μMol/グラム湿重量)(図8)。
【0073】
組織学:
図9に示されるように、H&E染色した切片の半定量的評価は、ポリソルを用いて保存された肝臓では、2.4±0.3という中央値スコアが得られた。これは、CSおよびUW-Gを用いたMPの両方と比べて(それぞれ、3.9 ± 0.24および4.3 ± 0.48)、有意に良いスコアであった。
【0074】
乾/湿重量比:
灌流後に採取された生検材料では、ポリソルを用いたMPによる保存の後の場合において、UWでのCSおよびUW-Gを用いたMPと比較して、有意に低い乾/湿重量比を示した(73 ± 0.01 対 77 ± 0.01 対 75 ± 0.01%)(図10)。
【0075】
結論
この実施例では、NHBDラット肝臓において3つの保存方法を比較した。つまり、当該分野における最高の基準であるUWを用いたCS、UW-Gを用いたMPおよび本発明による新規に開発されたMP保存溶液;ポリソル-1を用いたMPを比較した。肝臓のダメージおよび肝臓機能の両方に関して、CSおよびUW-Gを用いたMPと比較して、ポリソル-1を用いたMPを24時間行った後のほうが有意に良好であるという結果となった。結論として、本発明による、新規に開発した保存溶液ポリソル-1を用いた、MHBD肝臓の24時間の機械式灌流保存は、UWでの冷却貯蔵およびUW-Gを用いた機械式灌流と比較して、肝臓へのダメージはより低く、肝臓機能はより良好という結果がもたらされる。この実施例において、実施例1に定義されるようなポリソル-1製剤が使用された。および、ポリソルとはポリソル-1を表す。
【0076】
実施例4
この研究の目的は、ブタ肝臓保存モデルにおいて、ポリソルの実現性を評価することであった。最終的に、ポリソルを用いたMPを、セルシオを用いたCSと比較した。この実施例および続く実施例5および6において、実施例1に定義したようなポリソル-2製剤を使用した。
【0077】
材料および方法
動物および麻酔:
35-45 kgのメスのランドレースブタを、肝臓のドナーとして使用した。動物は、標準的な環境下で、標準的な研究用食および水を自由に与えて、7日間研究室の環境に順応させた。実験の前に、ブタは、水は自由に摂取させつつ、一晩絶食させた。全ての動物は、動物へのケアにおけるオランダの規則および原則に従って取り扱われた。アムステルダム大学の動物倫理委員会により、この動物実験は承認された。ケタミン(10 mg/kg)、ドルミカム(1 mg/kg)およびアトロピン(0.1 mg/kg)の前投薬の後、O2/N2Oおよびイソフルラン(1-3%)の吸入により、麻酔を誘導した。管理された機械式人工呼吸のために、気管内の挿管を行った。麻酔は、クエン酸スフェンタニル(sufentanil citrate)(20 mg/L)およびケタミン(20 g/L)の投与まで維持した。静脈へのアクセスのために、耳静脈(ear vene)にカニューレ処置した。動脈の血圧は、鎖骨下動脈を介してモニターし、液体の注入によって調節した。
【0078】
手術:
正中線開腹術および総胆管カニューレ挿入の後(0.8 Fr、腸内摂食管、Vygon、ファルケンスワルト、オランダ)、肝臓の血管分離(vascular isolation)を行った。大静脈血管の肝臓下および肝上部分を3-5 cm切開し、門脈を上部のすい臓の境界まで遠位に切開し、および肝動脈を腹腔軸から脾動脈の分岐点まで下向きに切開した。250 IU/kgヘパリン(5000 IU/ml, Leo Pharma、マルメ、デンマーク)によるブタへのヘパリン処置の後、門脈に、シリコン管でカニューレ処置した。次に肝臓を、in vivoで、5Lの氷冷リンガー乳酸 (乳酸塩29 mmol/L、Na+ 131 mmol/L、K+ 5.4 mmol/L、Ca++ 1.8 mmol/L、Cl- 111 mmol/L、Baxter、ユトレヒト、オランダ)を、ローラーポンプ(roller pump) (Gambro Instruments AB、ルンド、スウェーデン)で100-200 ml/分の流速で、肝臓を通して流すことで、洗い流した(flushed)。このウォッシュアウトの間、肝臓を切除し、臓器用容器に置いた。続いて、肝臓を、1Lの氷冷した、CSのためのセルシオまたはMPのためのポリソルのどちらかで洗い流し(flushed)、それぞれの方法で24時間の低体温保存を行った。
【0079】
溶液(付録1):
CS保存溶液セルシオ (pH 7.3、320 mOsm/kg)を、Imtix Sangstat (リヨン、フランス)から得た。我々のMP保存溶液ポリソルを学術医療センターの外科研究室(Surgical Laboratory of the Academic Medical Center)(アムステルダム、オランダ)で開発した(pH 7.4、312 mOsmol/kg)。ポリソルは、Cambrex (ヴェルヴィエ、ベルギー)で作製された。クレブス-ヘンスレイ緩衝液 (KHB)は、Sigma-Aldrich (ザインドレヒト、オランダ)およびMerck (ハールレム、オランダ)からの、分析用試薬グレードの化学物質を用いて我々の研究室で作製した。KHBは、0.22μmフィルターを通して滅菌した(Millipack 60, Millipore、アムステルダム、オランダ)。
【0080】
冷却貯蔵および低体温機械式灌流装置:
ウォッシュアウトの後、CS群(n=5)の肝臓を、1Lの氷冷セルシオで満たした滅菌容器に入れ、4℃で貯蔵した。ポリソルを用いたMP(n=5)では、肝臓を、門脈への灌流液につながった貯蔵器としても役立つ臓器用容器に4℃で置いた。ポリソルを、ローラーポンプ(200 ml/min、Gambro Instruments AB、ルンド、スウェーデン)で再循環させ、毛細管酸素供給器(capillary oxygenator) (1 L/min、100% 医療用酸素、Hoekloos Medical、アムステルダム、オランダ)で、800-1000 mmHgの酸素圧力まで酸素化した。ポリソルは、流動センサー(HT-207、Transonic Systems Inc、マーストリヒト、オランダ)および腔内圧力センサー(Baxter、ユトレヒト、オランダ)を通した後、肝臓に入れた。灌流液は、自由に、大静脈血管から貯蔵器に流れた。温度プローブ(Lameris、ニューウェハイン、オランダ)を、肝門(liver hilum)に設置した。
【0081】
正常温ブタ肝臓灌流装置:
酸素化KHBを用いた正常温再灌流を、24時間の保存および30分の復温の後に行った。再灌流を、MPの場合と同じ装置で(上記参照)行ったが、この操作においては、システムを熱交換器(HMT-200、Heto、ブレダ、オランダ)で39℃まで加熱した。貯蔵器は、正常温のKHBで満たされ、灌流液は、Medos Hilite 800酸素供給器(シュトルベルク、ドイツ)を用いて、カーボジェン (1 L/min、95/5% O2/CO2、Hoekloos Medical、アムステルダム、オランダ)で酸素化した。再灌流の流速は、約500 ml/分に設定した。
【0082】
分析研究:
肝細胞のダメージ:
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)および乳酸脱水素酵素(LDH)のレベルを、15分間隔の前肝臓(prehepatic)灌流サンプルで、分光光度的に(spectofotometrically)で決定した(7)。血管内の抵抗性(R)は、灌流液の流動(F、ml/分)および腔内圧(P、mmHg)から計算した(R=P/F)。血管内の抵抗性は、類洞内皮細胞(sinusoidal endothelial cell)のダメージおよび血管の統合性のパラメーターである。
【0083】
肝臓機能:
胆汁生成を、再灌流の間15分間胆汁を回収して測定した。アンモニアクリアランスおよび尿素生成は、再灌流の始めに、5 mM塩化アンモニウム(Sigma-Aldrich、ザインドレヒト、オランダ)の単一投与に肝臓をさらした後に、測定した。サンプルを、再灌流のt= 0、15、30、45および60分に採取した。アンモニアクリアランスの分析のために、サンプルを、リン酸緩衝食塩水で希釈(10x)し、HClで酸性化(終濃度:0.45% m/v)した後、氷上で処理した。グルタミン酸デヒドロゲナーゼに触媒される、アンモニア、ケトグルタル酸塩とNADPHとの反応に基づく酵素的方法を用いた(8)。尿素生成は、ジアセチルモノキシム(Sigma-Aldrich)による反応に基づく、比色定量法で分析した(9)。乳酸塩生成を、灌流サンプルで分光光度的に(spectofotometrically)測定した。灌流液のpHを、放射計血液ガスメーター(Radiometer blood gas meter)(ズーテルメール、オランダ)を用いて測定した。
【0084】
統計的分析:
実験群を、GraphPad Prismバージョン4 for Windows(登録商標) (GraphPad Software、サンデイェゴ、カリフォルニア、USA)を用いて、ノンパラメトリック・マン・ホイットニー-U試験により比較した。アンモニアクリアランスおよび尿素生成率には、反復測定の分析を、ボンフェローニによるポストホック試験とともに使用した。文章およびグラフ中の結果は、平均値±SEMで表した。統計的な有意性は、p< 0.05として定義した。
【0085】
結果:
一般:
ブタの体重は、CSおよびMP群間で異なりことはなかった(それぞれ、41±3対37±1 kg)。ウォッシュアウト後の肝臓重量は、CSおよびMP群に対して、それぞれ、1100±65および950±38 gであった。平均再灌流温度は、両群とも同様であった(それぞれ、37.3±0.2および37.8±0.1℃)。
【0086】
肝臓のダメージ:
ASTレベルは、ポリソルを用いたMPと比較して、セルシオを用いたCS後のほうが、有意に高かった(図1A)。同様の結果が、ALTで得られた(図1B)。LDHの放出は、ポリソルを支持する傾向がみられたが、これらの結果は、しかしながら、有意でなかった(図1C)。
【0087】
血管内抵抗性(図2):
再灌流のt=0において、血管内抵抗性は、セルシオを使用したCSと比較して、24時間のポリソルを用いたMP後の場合において、有意に低かった。再灌流の間の全体的な抵抗性をこれらの群の間で比較した場合、抵抗性はまた、CS群で有意に低かった(それぞれ、0.13 ± 0.01および0.16 ± 0.01 mmHg/ml/min)。
【0088】
肝臓機能:
両実験群において、胆汁の生成はなかった。しかしながら、全てのアンモニアは、再灌流の60分間に、尿素へと変換されて排除された(図3)。実験群間で差は見られなかった。再灌流の終了時において、両群で高濃度の乳酸塩が見られたが、CSおよびMP間では差がなかった(8.6±2.3対9.5±1.1 mmol/L)。結果としてpHの低下が、どちらの群においても見られた(6.9±0.1対6.8±0.1)。
【0089】
結論として:新規に開発した機械式灌流保存溶液ポリソルによる、ブタの肝臓の保存は、セルシオを用いた冷却貯蔵と比較して、より良い保存品質に相当する結果となった。ポリソルは、ブタの肝臓のための機械式灌流保存溶液として、実施可能であると考えられる。
【0090】
実施例5
肝臓移植の指標は、過去数年間ドナー臓器の利用性の増加が伴わず、拡大しており、結果として肝臓移植の待機リストが大きくなっている。ドナーの肝臓を待つ間に、患者の14%が死亡している(10)。待機リストを小さくするために、生きているドナーからの肝臓移植、分離した肝臓の移植、臓器提供の政治的システムの変化および辺縁性のドナーの肝臓の使用(11−14)を含む、幾つかの選択肢が研究された。後者の分類は、高齢者のドナー、肝臓の線維症または脂肪変性を示すドナー、または心拍動のないドナー(NHBD)から成る(15−17)。NHBDにおいては、臓器が得られる前に循環停止が起こっている。
【0091】
最適で、心拍動のあるドナーの肝臓に選択される、本願の保存方法は、冷却貯蔵(CS)である。最近の研究では、しかしながら、持続的な低体温機械式灌流(MP)による保存では、24時間の保存の後において、肝臓のダメージがより少なく肝臓の機能がより良好な状態となることが示されてきた(18−20)。MPの利点は、ドナー臓器に栄養素および酸素を持続的に供給することに起因し、その結果、NHBD臓器の蘇生をもたらす。更なる利点は、保存の間の生存度の評価の実現性である。CSは、虚血性のダメージを受けたNHBD臓器の保存には効果がより少ない。というのは、冷却虚血(cold ischemia)の間は、肝臓のダメージは強まり、肝臓の機能は低下するためである。臨床用および実験用の両装置において、肝臓の機械式灌流に主に使用される保存溶液は、改変ウィスコンシン大学溶液、すなわち、UW-グルコナート (UW-G)である(21,22)。この溶液は、微小循環性の障害を起こすことで知られ、入手困難で、および高価であるコロイド性ヒドロキシエチルデンプン(HES)を含む。代謝は4℃という温度で大きく低下するが、UW-Gは、肝臓に対し、4℃での肝臓の代謝活性を支えるための特定の栄養素を提供しない(24)。これらの欠点を克服するために、我々は、肝臓および腎臓のMPのための新規の保存溶液を開発した:それは、コロイド性ポリエチレングリコールに加え、肝臓に必要なグルコースおよびアミノ酸といった栄養素を含む(付録1)。以前の研究で、我々は、心拍動のあるドナーのモデルにおいて、UW-Gの場合を超える、より高い品質のポリソルを用いた肝臓保存を報告した(25)。ラットの肝臓モデルでは、ポリソルを用いたMPは、24時間の低体温持続性MPの後において、肝臓のダメージはより小さく、肝臓の機能はより良好という結果となった。
【0092】
この研究の目的は、UWを用いたCSによるNHBDラット肝臓の保存と、UW-Gまたはポリソルのどちらかを用いたMPの場合とを比較することであった。
【0093】
材料および方法
動物
275 g (+/- 25 g)の体重のオスのウィスターラット(Harlan、ホルスト、オランダ)を、肝臓のドナーとして使用した。動物は、12/12時間の暗/明周期の標準化された条件の下、水および標準固形飼料(Hope Farms, ウールデン)を自由に摂取させて、実験の開始まで飼育した。全ての動物は、動物へのケアにおけるオランダの規則および原則に従って取り扱われた。アムステルダム大学の動物倫理委員会により、この動物実験は承認された。
【0094】
実験群および保存条件
NHBD肝臓の24時間の肝臓保存を、UWを用いたCS (n=6)、UW-Gを用いたMP (n=6)またはポリソルを用いたMP (n=6)の何れかにより行った。50 mlのリンガー乳酸 (乳酸塩29 mmol/L、Na 131 mmol/L、K 5.4 mmol/L、Ca 1.8 mmol/L、Cl 111 mmol/L、Baxter、ユトレヒト、オランダ)で、37℃において、in situでウォッシュアウトを行った後、肝臓を、15 mmHgの圧力で、50 mlのUW、UW-Gまたはポリソルの何れかによる、低体温保存溶液(4℃)の1つで洗い流した(flushed)。CSでは、肝臓を、4℃の冷却容器中の解けた氷に置かれた、100 mlのUWを含むプラスティック製の無菌カップに浮遊させて置いた。MPでは、肝臓を、250 mlの保存溶液を含む、再循環標準化灌流装置につないだ。MPの間、ならびに、再灌流の間の両方において、肝臓のダメージの評価のためにサンプルを採取し、肝臓機能の評価のためのサンプルを最灌流中に採取した。
【0095】
保存溶液
CSのためのUW溶液は、DuPont (Viaspan, pH 7.4, 320 mOsmol/kg, Bristol-Myers Squibb、ニューヨーク、USA)から得た。MPのためのUW-G溶液は、Belzerの処方に従って作製した(pH 7.4, 330 mOsmol/kg)(26)。我々のMP保存溶液ポリソルは、学術医療センターの外科研究室(アムステルダム、オランダ)にて開発した(pH 7.4, 330 mOsmol/kg)。UW-G、ポリソル-2およびクレブス-ヘンスレイ緩衝液 (KHB)は、Sigma-Aldrich (ザインドレヒト、オランダ)、Merck (ハールレム、オランダ)、Cambrex (ヴェルヴィエ、ベルギー)、Centrafarm (エテン・ルール、オランダ)およびNovo Nordisk (アルフェン・アーン・デン・レイン, オランダ)からの、分析試薬グレード(または、それより良い等級)の化学物質を用いて、我々の研究室で全て作製した。HESは、Fresenius (Taunusstein、ドイツ)から入手した。溶液を、0.45μmフィルター(Dow Corning、アレスリー、イギリス)および0.22μmフィルター(Millipack 60, Millipore、アムステルダム、オランダ)を通して滅菌した。
【0096】
手術方法
ラットを、O2/空気/イソフルラン(1 L/min: 1 L/min: 3 %)で麻痺させた。正中切開術に続いて両側性肋骨下切開の後、動物に、大静脈血管を介して0.1 mlのヘパリン(5000 IU/ml、Leo Pharma、マルメ、デンマーク)でヘパリン処置した。2分後、動物を屠殺するために、横隔切除(phrenotomy)を行った。肝臓への血流を停止させた後、温熱虚血時間(warm ischemic time)(WIT)を開始した。WITの間、肝臓を周囲から分離し(mobilized)、胆管に0.9 mmカテーテル(B-Braun、メルスンゲン、ドイツ)でカニューレ処置した。WITの30分後、肝臓を、門脈カニューレ(2.7 mm、腸内栄養管、Vygon、ファルケンスワルト、オランダ)を介して50 mlのリンガー乳酸 (37℃, 8 mmHG)でウォッシュアウトした。ウォッシュアウトの間、肝臓のうっ血を、肝臓下の大静脈血管を切断することで防いだ。肝上の大静脈血管を、次に、2 mmのカニューレ(Vygon)でカニューレ処置し、肝臓下の大静脈血管を連結し、周辺組織の手入れの後、肝臓を切除し重量を測定した。
【0097】
機械式灌流システム
我々の機械式灌流システムは、学術医療センターの医療工学学部(Medical Technology Department of the Academic Medical Center)(アムステルダム、オランダ)にて開発した。肝臓をつなぐ前に、回路を、無菌アクアデストおよび保存溶液ですすいだ。圧力駆動システム(15 mmHg)は、350 mlの無菌MP溶液(4℃)を含む貯蔵器から成る。肝臓をシステムにつないだ後、溶液の最初の100 mlを、システムに再び入らないようにして、自由に排出させた。溶液の残りの250 mlを、ローラーポンプ(Ismatec、グラットブルグ、スイス)によって再循環させた。灌流溶液を、ガラス酸素供給器を用いて酸素化し、臓器の酸素圧を700 mmHgとした。空気塞栓を、気泡除去器によりシステムから除き、その後、溶液を熱交換器(HMT-200, Heto、ブレダ、オランダ)を用いて4℃まで冷却した。溶液は、流量計 (HT-207, Transonic Systems Inc、マーストリヒト、オランダ)を通り、次に門脈カニューレを通って肝臓に入った。溶液は、肝上大静脈血管カニューレから貯蔵器へと自由に流れた。
【0098】
正常温再灌流
クレブス-ヘンスレイ緩衝液 (KHB)による再灌流は、30分の復温の期間の後に行い、受取人への肝臓の移植を模倣した。再灌流の直前に、塩化アンモニウムを、機能試験のために添加した。再灌流を、貯蔵器を350 mlのKHBで満たし温度を37℃に調節するという例外を除いて、MPと同様の装置で行った。肝臓の結合の前に、システムを、無菌アクアデストおよびKHBですすいだ。肝臓の結合の後、再び、最初の100 mlを、システムに再び入らないようにして、自由に排出させた。この溶液を、熱交換器で加熱し、流量計を通過させ、次に門脈カニューレを介して肝臓に入れた。肝臓のダメージおよび肝臓機能の評価のためのサンプルを、後肝臓(posthepatically)から採取した。肝臓の温度を、肝臓の下に設置した温度プローブで測定した(Lameris, ニューウェハイン、オランダ)。システムを、アルコール(70%)および滅菌水(アクアデスト)で、それぞれの方法の前後に洗浄した。
【0099】
サンプル調製
肝細胞の損傷および肝臓機能の評価のための灌流サンプルを、MPおよび再灌流の間に採取した。MPの間、サンプルを、1時間おきに、t=0、t=1、t=2、t=22、t=23およびt=24時間に採取した。再灌流の段階において、サンプルを、60分の期間、15分間隔で採取した。再灌流の段階の終わりに、アデノシン三リン酸(ATP)の評価のための肝臓サンプルを、急速組織凍結のための凍結固定を用いて、副肝葉(accessory liver lobe)から採取した。肝臓の生検材料を、尾状部および右肝葉(right liver lobes)からさらに採取し、ホルマリン(リン酸緩衝食塩水中10%)で処理した。透過型電子顕微鏡のための肝臓サンプルを、中葉から採取し、マクドウェル溶液中に貯蔵した。最終的に、肝臓サンプルを、乾/湿重量分析のために、左葉から採取した。
【0100】
肝臓のダメージおよび肝臓機能の研究
ダメージパラメーター:肝臓のダメージは、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の分光光度分析により評価した(27)。灌流流動は、微小血管の統合性を評価するために、MPおよび再灌流の間に測定した。
【0101】
機能パラメーター:肝臓機能は、胆汁生成、酸素消費、アンモニアクリアランス、尿素生成およびATP回復を測定することで評価した。胆汁生成の測定のために、胆汁を、胆管カニューレを介して、再灌流の間に回収した。酸素消費は、灌流液の流動および肝臓の湿重量に関連して、前および後肝臓(pre- and posthepatic)の血液のガスサンプル中の酸素濃度(μMol/L)の違いにて決定した(ABL, Radiometer、ズーテルメール、オランダ)。アンモニアクリアランスおよび尿素生成を測定するために、肝臓を、5 mMの塩化アンモニウムにさらした(Sigma-Aldrich、ザインドレヒト、オランダ)。サンプルを、再灌流のt=-5、t=0、t=15、t=30、t=45およびt=60分に採取した。アンモニアクリアランスの分析のために、サンプルを、リン酸緩衝液食塩水で希釈(10x)し、HClで酸性化(終濃度: 0.45% m/v)した後、氷上で処理した。グルタミン酸デヒドロゲナーゼで触媒する、アンモニア、ケトグルタル酸塩とNADPHとの間の反応に基づく酵素的方法を使用した(28)。尿素生成は、ジアセチルモノキシムとの反応に基づく、比色定量法にて分析した(Sigma-Aldrich)(29)。ATPは、液体窒素下で粉砕した後に、氷冷HClO4 (終濃度: 3.5% m/v)で抽出した、凍結固定(freeze-clamped)生検材料で測定した。沈殿したタンパク質を、微小遠心分析器にて4℃で急速に遠心分離して除去し、上清を、0.3 M MOPSを加えた2 M KOH の混合物で、pH 7まで中性化した。ATPは、グルコース、NADP+、グルコース-6-リン酸-デヒドロゲナーゼおよびヘキソキナーゼを用いて、蛍光定量的に測定した(30)。
【0102】
組織学
組織学のための肝臓生検材料を、ホルマリン中(リン酸緩衝食塩水中、10%)に貯蔵し、パラフィンで処理し、4μm切片に切り出した。ヘマトキシリンおよびエオシン染色の後、切片を、TojimbaraおよびMartinにより改変された、9−ポイント半定量的ダメージスコアを用いて、光学顕微鏡で評価した(31、32)。外側左葉(left lateral lobe)からの生検材料を、乾/湿重量比の評価のために採取した:肝臓を、再灌流後、即座に重量を測定した。その後、これらの生検材料を、60℃で環境容器(climate chamber)にて保持した。生検材料は、重量の減少がみられなくなるまで、3−5日おきに重量を測定した。乾/湿重量比を測定するため、以下の式を使用した:100% x (1−(乾燥重量/湿潤重量))。超微細構造的研究を目的として、透過型電子顕微鏡のための肝臓生検材料(1 mm3)を、マクドウェル固定液で少なくとも48時間固定した。その後、Na-リン酸緩衝液(0.1 M, pH 7.4)ですすぎ、1% OsO4で後固定(postfix)し、水ですすぎおよび段階的なエタノール(70-80-90-96-100%)およびプロピレンオキシドで脱水した。最終的に、試料を、エポン(epon)に包埋した。超薄切片(80 nm)を、Reichert Ultracut Eで切り出し、酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛(lead citrate)でコントラストを強調した(contrasted)。切片は、100kVで作動するPhilips EM420で研究した:画像を、SIS Megaview IIカメラで取得した。
【0103】
統計分析
全ての群を、クラスカル-ワオリス試験を用いて比較した。有意な結果の場合は、個々の群間の差を、ノンパラメトリック・マン・ホイットニー-U試験にて評価した。アンモニアクリアランス率および尿素生成率には、反復測定の分析を、ボンフェローニによるポストホック試験とともに使用した。文章およびグラフ中の結果は、平均±SEMにて示されている。統計的有意性は、p < 0.05として定義した。
【0104】
結果
一般
平均ラット重量および肝臓重量は、それぞれ289 ± 7 gおよび14.8 ± 0.3 gであった(n=18)。
【0105】
肝細胞のダメージおよびMPにおける灌流流動(4℃)
MPの間、ASTの放出は、t=0、t=1、t=2およびt=22時間において、ポリソルと比較して、UW-Gを用いた場合のほうが有意に高かった。ATL放出は、全ての時点でポリソルと比較してUW-Gを用いた場合のほうが有意に高かった(図1A、B)。MPの間における灌流の流動は、MP-UW-G群において低下し、t=22、t=23およびt=24時間において、MP-ポリソルと比較して、より低い流動を示す結果となった(p= 0.01)(図2A)。
【0106】
肝細胞のダメージおよび再灌流中の灌流流動(37℃)
AST放出(図3A)は、t=30およびt=45分において、CSと比較してMP-UW-G後のほうが低かった(p< 0.05)。ポリソルを用いた場合、この放出は、全ての時点において低かった(p< 0.005)。ALT放出は同じ傾向を示したが(図3B)、有意性は、t=60分でのMP-ポリソルとCSとの比較においてのみあった(9.7 ± 2.4 対 47.2 ± 14.2 IU/L, p< 0.05)。再灌流の間における灌流流動は、CSとの比較ではt=45およびt=60分で、MP-UW-Gとの比較では全ての時点で、MP-ポリソルの方が有意に高かった(図2B)。また、灌流流動は、全ての時点において、MP-UW-Gと比較して、CS群のほうが良好であった(p< 0.05)。
【0107】
再灌流中の肝細胞機能(37℃)
胆汁生成は、ポリソルを用いたMP後が、UWによるCSおよびUW-Gを用いたMPと比較して、最も高かった(それぞれ、390 ± 23 vs. 34 ± 19 vs. 153 ± 55 μl/時間、p<0.01)。CS-UWとMP-UW-Gとの間では、有意な差は見られなかった(表1)。酸素消費量は、UW-Gを用いたMPとの比較では全ての時点で、UWを用いたCSとの比較ではt=60で、ポリソルを用いたMPの後が最も高かった(図4)。ポリソルを用いたMP後において、最もアンモニアクリアランスが起こり、UW-Gを用いたよりt=15、45および60において、CSの場合よりt=15において、有意によかった。尿素生成は、全ての時点で、ポリソル群が、UW-Gと比較して有意に高かった。ポリソルとCSとの間に差はなかったものの、t=45において、UW-Gと比較して、CSのほうがより尿素が生成された(図5A、B)。
【0108】
ATP-含量
再灌流段階の最終時におけるATP含量は、ポリソルを用いたMPの後における場合が、UWによるCSおよびUW-Gを用いたMPの両方の場合に比べて、有意に高かった(それぞれ、7.5 ± 0.6 対 4.0 ± 0.8および2.5 ± 0.6 μMol/グラム湿重量)。
【0109】
組織学
ヘマトキシリンおよびエオシン染色した切片における、ダメージの半定量的評価は、ポリソルを用いて保存された肝臓では、2.2±0.2という平均スコアが得られた。これは、CSおよびUW-Gを用いたMPの両方と比べて(それぞれ、3.7 ± 0.3および4.4 ± 0.3)、有意に良いスコアであった。
【0110】
乾/湿重量比
再灌流後に採取された生検材料は、ポリソルを用いたMPによる保存の後において、UWでのCSおよびUW-Gを用いたMPと比較して、有意に低い乾/湿重量比を示し(それぞれ、72.6 ±0.8 対 77.1 ± 1.1および75.2 ± 0.9%)、それゆえ、組織の浮腫はより小さいことが示された。
【0111】
結論として、新規に開発された保存溶液ポリソルを用いた、NHBDラット肝臓の24時間の機械式灌流保存は、UWによる冷却貯蔵およびUW-Gを用いた機械式灌流と比較して、より小さな肝臓のダメージおよびより良好な肝臓の機能がもたらされる。この例において、ポリソル-2製剤は、実施例1で定義されるように、使用された。
【0112】
実施例6
肝臓移植は、末期肝臓疾患の患者に選択される治療である(33、34)。肝臓移植片の質は、その他の要因のなかでも、保存方法および保存期間の長さ、すなわち、冷却虚血時間(cold ischemic time)に依存する。肝臓保存における、現在の最高の基準は(35)、適当な保存溶液を用いてウォッシュアウトし、冷却貯蔵(CS)でヒト肝臓の同種移植を16時間まで安全に保存することを可能とすることである(36)。この設定において、肝臓は、移植片の生存度に関しての何れの客観的情報を伴わず、保存段階後に、受取人に移植される。肝細胞のダメージおよび肝臓の機能の前持った評価のための信頼できる方法は、静的な冷却貯蔵臓器(statically cold stored organ)において欠けている。ドナーの病歴、巨視的な評価および肝臓の生検材料分析は、冷却保存された肝臓移植片の生存度に対して、ほとんど指標となることがない(37)。ほとんどの腹腔の臓器の保存において、CSの限界に達してきた。代わりとして、肝臓の機械式灌流保存(MP)は、実験的研究が再び注目されるようになった。MPは、60年代初頭には既に適用されていた(38−40)。ウォッシュアウトにより血液の残留物を排除した後、肝臓は、再循環機械式灌流システムにつなげられ、そこで、輸送の期間、低体温保存溶液で灌流される。CSを超えるMPの幾つかの利点が推論された:1)酸素および栄養素の持続的供給、2)代謝の最終生成物の除去、3)保存中の肝臓生存度の評価(41)および4)心拍動のないドナー(NHBD)の肝臓といった、虚血性のダメージを受けた臓器の蘇生の可能性(42)。実験的研究により、CSと比較してMP後における、肝臓移植片の移植後の機能にて優れた結果が示された(43−45)。これらの結果は、臓器は4℃まで冷却されても、7−35%の本来の代謝は維持されているという事実で説明することができる(46)。低下したとしても、この代謝は、持続性酸素化MPによってのみ供給される、エネルギー基質および酸素から利益を得ることができる。実験的MPで頻繁に使用される、改変ウィスコンシン大学溶液(UW-グルコナート: UW-G)は、肝臓のエネルギー、炭水化物および脂肪代謝のための基質を欠いている(47−51)。低体温臓器保存のための溶液中の栄養素の役割に関する文献は少ないものの(52−54)、我々は、栄養素が強化された灌流溶液により、より良質な肝臓保存がもたらされると仮定した。このことは、新規の保存溶液、ポリソルの開発につながった。この溶液は、強力な緩衝剤および遊離基の補足剤とともに、肝臓代謝に必要な栄養素を含む。中でも、ポリソルとその他のMP保存溶液との間の違いを作る構成成分は、グルタミン、ヒスチジン、トリプトファンおよびアルギニンといったアミノ酸、ならびに、アスコルビン酸およびアルファ-トコフェロールといったビタミンである。この研究の目的は、ポリソルを用いたラット肝臓のMPを評価することと、結果を、UW-Gを用いたMP、最高の基準であるUWを用いたCS法の両方と比較することである。この目的のため、保存方法およびMP溶液の両方を、単離され灌流されたラットの肝臓モデル(isolated perfused rat liver model)(IPRL)で評価した。
【0113】
材料および方法
動物および手術
体重350 g(+/−50 g)のオスのウィスターラット(Harlan、ホルスト、オランダ)を、肝臓のドナーとして使用した。動物は、実験の直前まで、標準化された条件のもと、12/12時間の暗/明周期で、水および標準的固形飼料(Hope Farms、ウールデン、オランダ)を自由に摂取できる状況で飼った。全ての動物は、アムステルダム大学の動物倫理委員会の承認の下、動物へのケアにおけるオランダの規則および原則に従って取り扱われた。ラットを、O2/空気/イソフルラン(1 L/min: 1 L/min: 3 %)で麻痺させ、0.1 ml/100 g体重のFFM(ハイプノーム/ドルミカム/アクアデスト: 1:1:2)を腹腔内注射した。手術の間、O2/空気/イソフルランを、マスクを通して吸入させることで、麻痺状態を維持した。正中切開術に続く両側性肋骨下切開の後、肝臓を周囲から分離(mobilize)し、胆管に0.9 mmカテーテル(B-Braun、メルスンゲン、ドイツ)でカニューレ処置した。門脈のカニューレ処置の前に、動物に、大静脈血管を介して0.1 mlのヘパリン(5000 IU/ml、Leo Pharma、マルメ、デンマーク)でヘパリン処置した。肝臓を、門脈のカニューレ(0.8 fr、腸内栄養管、Vygon、ファルケンスワルト、オランダ)を介して、50 mlのリンガー乳酸 (37℃、10 cm H2O、Baxter、ユトレヒト、オランダ)でウォッシュアウトした。ウォッシュアウトの間、動物は、腹部の大静脈血管の切れ目から出血した。肝上の大静脈血管は、0.6 frカニューレ(Vygon)でカニューレ処置し、肝臓下の大静脈血管を連結し、周辺組織の手入れの後、肝臓を切除し重量を測定した。
【0114】
機械式灌流システム:
二重性機械式灌流システムは、学術医療センターの医療工学開発学部(AMC、アムステルダム、オランダ)により開発され、単一の装置においてMPおよび再灌流(RP)相の両方が可能である(付録2)。切除された肝臓の結合の前に、回路を、200 mlの無菌アクアデストで、続いて50 mlの保存溶液ですすいだ。圧力調節性灌流システムは、350 mlの無菌MP溶液を含む貯蔵器から成る。肝臓をシステムにつないだ後、灌流溶液の最初の100 mlを回収した。溶液の残りの250 mlを、ローラーポンプ (Ismatec、グラットブルグ、スイス)によって再循環させた。灌流溶液を、ガラス酸素供給器を用いてカーボジェン (95%O2/5%CO2、1 L/min、Hoekloos Medical、アムステルダム、オランダ)によって酸素化し、その結果、前肝臓の酸素圧は約700 mmHgとなった。空気塞栓を、気泡除去器によりシステムから除き、その後、溶液を熱交換器(HMT-200, Heto、ブレダ、オランダ)を用いて冷却した。灌流溶液は、直列流量計(in-line flow meter) (HT-207, Transonic Systems Inc、マーストリヒト、オランダ)を通り、門脈カニューレを通って肝臓に入り、肝上大静脈血管カニューレを経由して貯蔵器へと自由に流れた。
【0115】
再灌流は、上述した同一の回路に沿って、37℃で400 mlのクレブス-ヘンスレイ緩衝液 (KHB)溶液を含む第2の貯蔵器を用いて行った。肝臓の再結合の前に、システムを、200 mlの無菌アクアデストおよび50 ml KHBですすいだ。肝臓に再結合した後、最初の100 mlは、回路に再び入らないように排出した。灌流液の残り250 mlは、カーボジェンで酸素化した。サンプルを、前肝臓または後肝臓(pre- or posthepatically)に配管(tubing)して得た。温度を、肝臓の下に設置したプローブ(Lameris、ニューウェハイン、オランダ)を用いて記録した。それぞれの方法の後、回路を洗浄し蒸気滅菌した(134℃で16分)。
【0116】
実験群および保存条件:
この研究は、3つの実験群を含む:1) CS-UW (N=5); 2) MP-UW-G (N=5)および3) MP-ポリソル (N=5)。単離した肝臓を、CSまたはMPのどちらかで24時間保存し、その後再灌流した。RL(4℃)でウォッシュアウトした後、肝臓を、保存溶液でin situで洗い流した(flushed)。CS肝臓を、50 mlのUW (4℃)で洗い流し、100 mlのUWを含む無菌のカップに置き、冷却した容器(4℃)中の溶けている氷の上で24時間、貯蔵した。MP肝臓を、ウォッシュアウトおよび収集の後、門脈を経由して直接灌流システムにつなぎ、100 mlのUW-Gまたはポリソルどちらかで洗い流し、連続してこの溶液で4℃にて24時間灌流した。保存の期間の後、全ての肝臓を、酸素化したKHBで、37℃で60分間再灌流した。
【0117】
保存溶液:
冷却貯蔵のために、ウィスコンシン大学の保存溶液(Viaspan, Bristol Myers Squibb、ニューヨーク、USA)を用いた。MPのためのUW-G溶液を、Belzerの処方(pH 7.4、4℃、330 mosmol/kg)に従って作製した(55)。MP保存溶液ポリソル (pH 7.4、4℃、330 mosmol/kg)は、AMCの外科研究室で開発された。再灌流のために、ウシ血清アルブミンの入っていないクレブス-ヘンスレイ緩衝液 (KHB) (pH 7.4、37℃、320 mosmol/kg)を用いた。UW-G、 ポリソルおよびKHBは全て、Sigma-Aldrich (ザインドレヒト、オランダ)、Merck (ハールレム、オランダ)、Cambrex (ヴェルヴィエ、ベルギー)、Centrafarm (エテン・ルール、オランダ)およびNovo Nordisk (アルフェン・アーン・デン・レイン、オランダ)からの、分析用試薬グレード(またはそれより良い等級)の化学物質を用いて、我々の研究室で作製した。使用に先立ち、溶液は、0.45μmのアンプルフィルター(DowCorning、アレスリー、イギリス)および0.22μmのフィルター(Millipack 60、Millipore、アムステルダム、オランダ)を通してろ過することで滅菌した。
【0118】
肝細胞性のダメージおよび肝臓の機能の評価:
肝細胞性のダメージを評価するためのサンプルを、60分間のRPの間、10分おきに採取した。肝臓のダメージは、肝後方の灌流サンプル(Laboratory of Clinical Chemistry、AMC、オランダ)において、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)および乳酸脱水素酵素(LDH)の直接の分析によって評価した。アルファ-GST(アルファ-グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)レベルは、ラットアルファ-GST ELISAキット(Biotrin、ダブリン、アイルランド)を用いて決定した。肝臓の機能は、60分間のRPの間、胆汁生成をモニターすることで評価した。そのうえ、乳酸生成(Laboratory of Clinical Chemistry、AMC、オランダ)および灌流液pH(ABL, Radiometer、ズーテルメール、オランダ)を、再灌流の間測定した。
【0119】
組織学および乾/湿重量比:
RP段階の終わりに、生検材料を、尾状部および外側右葉(right lateral lobes)から得た。生検材料は、ホルムアルデヒド(10%)中に貯蔵し、パラフィンに包埋した。パラフィン切片(4μm)を、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、光学顕微鏡で評価した。肝臓損傷形態学的分類のために、1(良好)から9(不良)のスケールに類別される9ポイントスケールを用いた(56)。1.正常な長方形の形状、2.類洞空間(sinusoidal spaces)の増大を伴う円形の肝細胞、3.ゾーン3における空胞化(vacuolization)、4.ゾーン2における空胞化、5.ゾーン1における空胞化、6.ゾーン3における空胞化および核濃縮、7.ゾーン2における空胞化および核濃縮、8.ゾーン1における空胞化および核濃縮および9.壊死。乾/湿重量比の肝臓のために、生検材料を、灌流後即座に重量を測定し、その後60℃の温室(stove)に貯蔵した。肝臓の重量の減少が止まるまで、7日ごとに再び生検材料の重量を測定した。肝臓の浮腫の量を実証するため、以下の計算を使用した:1-(乾重量/湿重量) x 100%。
【0120】
統計分析:
クラスカル-ワオリス試験を、3つの群の全体的な比較のために使用した。有意な差があった場合、個々の群の差を、ノンパラメトリック・マン・ホイットニー試験にて評価した。文章およびグラフ中の結果は、平均値±SEMで示されている。統計学的有意性は、p < 0.05として定義した。
【0121】
結果
灌流パラメーター:
肝臓重要は、実験群間で有意に異なることはなかった(16.5±0.5グラム)。低体温MPおよび正常温RPの両方の間、灌流圧力は、20 cm H2O (重力制御(gravity controlled))に一定に保った。低体温MPの間の灌流の流動は、最大で、1 ml/分/グラム肝臓に達した。生常温RPの間、最大で3 ml/分/グラムの流動が記録された。低体温MPにおける酸素化は、約700 mmHgの灌流液pO2となり、正常温RPにおける酸素化は、より高い温度のために、約500 mmHgのpO2となった。正常温RPにおいて記録された温度は、37.1±0.4℃であった。
【0122】
肝細胞ダメージ:
24時間の冷却虚血時間(cold ischemic time)後のALT放出は、UWによるCS後の方が、UW-Gを使用したMPに比較して、t=0分(4.6 ± 2.4 対 0.4 ± 0.2 IU/L)およびt=10分(5.4± 1.7 対 1.4 ± 0.2 IU/L)において、有意に高かった(図2)。しかしながら、CS-UWとMP-ポリソルを比較すると、ALTレベルは、t=0分およびt=50分を除く全ての時点において、MP-ポリソル後の方が有意に低い。LDHレベルは、有意性に到達することはなかったが、24時間のCS-UW後のものが高い結果となっている。LDHは、UW-Gまたはポリソルのどちらかを用いたMPに比べて、CS-UW後のものが、t=10分において有意に高い(図1B)。灌流液の流動、pHおよび乳酸生成は、有意に異なることはなかった(データは示していない)。2つのMPの溶液を比較すると、ASTレベルがより低いことで示されるように、24時間のMP-ポリソル後において、ダメージがより小さいことがわかった(図1C)。全ての時点において、ポリソルを支持する傾向があるものの、ALT(図1A)、LDH(図1B)、流動、pHおよび乳酸生成(データは示していない)において有意な差はなかった。t=40におけるα-GSTの放出は(図2)、MP-ポリソル後のものが、CS-UW(それぞれ125.5 ± 10.5対 46.4 ± 9.1、p< 0.02)およびMP-UW-G(それぞれ101.6 ± 12.0対46.4 ± 9.1、p<0.02)と比較して低かった。
【0123】
肝細胞機能:
胆汁生成は、MP-ポリソル後のほうが、MP-UW-GまたはCS-UW後より高いようであった(それぞれ、355 ± 82.3 対 256 ± 26.2 および 180 ± 61,89μl/h)。しかしながら、これは、有意性に到達しなかった(図3)。
【0124】
組織学:
肝臓切片の組織病理学的スコアリングの後、より良い中央値スコアが、CS-UW肝臓(4.5 ± 0.9ポイント)に比べて、UW-Gおよびポリソル(それぞれ、2.0 ± 0.6および1.6 ± 0.4ポイント)を用いたMP群でしめされた。MP群間では有意な差はみられなかった(図4)。肝臓切片の乾/湿重量は、MP群において最も高く、浮腫のパーセンテージが最も低いことが示されている(図5)。パーセンテージは、それぞれ、76±1.0対72±0.5対72±0.7である。
【0125】
結論として、機械式灌流による、心拍動のないドナーラットの肝臓の保存は、冷却貯蔵と比較して、よりよい質の肝臓の保存がもたらされる。本発明による、新規で、濃縮された保存溶液、ポリソル-2を用いた機械式灌流は、UW-Gと比較して、よりよい質に相当する肝臓の保存がもたらされる。この実施例において、実施例1に定義されたとおりのポリソル-2が使用され、ポリソルは、ポリソル-2のことを意味する。
【0126】
[参考文献一覧]
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドナーの臓器の生存度を維持するための、臓器保存および灌流溶液であって、組織培養培地を含み、以下の点を特徴とする溶液:
a) 組織培養培地を含む溶液の緩衝能力が、少なくとも20のベータまで増加しており、および、
b) デキストラン、PEG、ヒドロキシエチルデンプン(HES)およびアルブミンから成る化合物の群から選択される、少なくとも1つの高分子量化合物が、膠質浸透圧を増大させるために添加され、
c) 溶液が、140 mM未満の[Na+]濃度、25 mM未満の[K+]濃度を有し、[Na+]と[K+]との比が、少なくとも2:1、好ましくは5:1である。
【請求項2】
請求項1に記載の溶液であって、生理的膠質浸透圧が、20から35 mmHg、好ましくは25 mmHg周辺に維持される溶液。
【請求項3】
請求項1に記載の溶液であって、生理的浸透圧モル濃度が、300から400 mOsmの間、好ましくは300から350 mOsmの間、および最も好ましくは330 mOsm周辺に維持される溶液。
【請求項4】
請求項1に記載の溶液であって、前記組織培養培地が、最小必須培地イーグル(MEM)、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、RPMI 1640培地、DMEM/F-12培地、ハムF-10、ハムF12、イスコブ(Iscove's)変法ダルベッコ培地、レイボビッツ(Leibovitz's)L-15培地およびアール(Earle)塩添加最小必須培地およびウィリアムスE培地から成る群から選択される溶液。
【請求項5】
請求項4に記載の溶液であって、前記組織培養培地が、ウィリアムスE培地である溶液。
【請求項6】
請求項5に記載の溶液であって、各アミノ酸、アルギニン、アスパラギン、シスチン、ヒスチジン、グルタミン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリンおよびトリプトファンの少なくとも1つの濃度が、標準的なウィリアムスE培地に比べて2から10倍に増加した溶液。
【請求項7】
請求項1に記載の溶液であって、セレンの供給源が、好ましくはNaSeO3・5H2Oとして、提供される溶液。
【請求項8】
請求項1に記載の溶液であって、付加的な緩衝能力が、HEPES、PIPES、MOPS、TES、BES、ビシン(Bicine)、トリシン、トリス、クエン酸塩、ヒスチジン、KH2PO4、K2HPO4、NaHCO3から成る群から選択される緩衝剤の付加により提供される溶液。
【請求項9】
請求項1に記載の溶液であって、高分子量化合物である、25.000から45,000ダルトン、好ましくは30,000ダルトン周辺のポリエチレングリコール(PEG)が、コロイド性添加物として使用される溶液。
【請求項10】
請求項1に記載の溶液であって、オファロプリノール(ofallopurinol)、トロロクス、グルタチオン、ビタミンE、メチレンブルーおよびアスコルビン酸から成る群から選択される、付加的な抗酸化剤が提供される溶液。
【請求項11】
請求項1に記載の溶液であって、ラフィノース、トレハロース、マンニトール、スクロース、グルコース、キシリトールおよびラクトビオン酸塩(lactobionate)からなる群から選択される付加的な不透過剤が添加される溶液。
【請求項12】
請求項1から請求項11の何れか1項に記載の溶液に臓器を置くことを含む、臓器の保存のための方法。
【請求項13】
請求項1から請求項11の何れか1項に記載の溶液にて、臓器をすすぎ(rinsing)または洗い流す(flushing)ことを含む、臓器の保存のための方法。
【請求項14】
請求項1から請求項11の何れか1項に記載の溶液による連続的なまたは拍動性の灌流の条件に臓器を置くことを含む、臓器の保存のための方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記臓器が、心臓、肺、すい臓、腎臓または肝臓から成る臓器の群から選択される方法。
【請求項16】
請求項12から請求項14の何れか1項に記載の方法であって、前記溶液の温度が、0℃から20℃、好ましくは0℃から10℃であり、および該溶液が酸素化されている方法。
【請求項17】
請求項11から請求項16の何れか1項に記載の方法であって、移植しようとする前記臓器が、心拍動のないドナーから得られる方法。
【請求項18】
請求項11から請求項17の何れか1項に記載の方法であって、前記増加がヒトの臓器である方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13】
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【図14a】
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【図14b】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−10771(P2013−10771A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−178669(P2012−178669)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【分割の表示】特願2007−541120(P2007−541120)の分割
【原出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(507156635)ドールザンド・エアドライブ・ビー.ブイ. (2)
【出願人】(508374162)アカデミシュ・メディシュ・セントルム・ビー・デ・ウニベルジテート・ファン・アムステルダム (1)
【氏名又は名称原語表記】Academisch Medisch Centrum bij de Universiteit van Amsterdam
【住所又は居所原語表記】Meibergdreef 9, 1100 DE Amsterdam, The Netherlands
【Fターム(参考)】