説明

臨床サンプル中のインターフェロン応答(IRIS)

本発明は、多発性硬化症(MS)に対する処置の有効性を決定するために有用な特定の遺伝子セットに関するものである。また、本発明は、MS処置の有効性を評価するために有用なこれらの遺伝子のアレイを提供する。また、MS処置効果を評価するための方法と、MSのインターフェロンβ-1Bの処置に対する患者応答における中和抗体を検出するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2008年9月16日に出願された米国仮出願シリアル番号61/097227に対する優先権を主張し、その全体を、参照により援用する。
【0002】
技術分野
本発明は、多発性硬化症(MS)に対する処置の有効性を測定するために有用な特定の遺伝子のセットに関する。
【0003】
配列表への参照
2008年9月12日作成の紙、および.txt形式の電子コピーの両方で添付された配列表を、参照により援用する。出願人は更に、紙と電子のコピーに含まれている内容が同一であることを保証する。
【背景技術】
【0004】
背景
多くの病気の状態は、遺伝子DNAのコピー数の変化を通して、あるいは特定の遺伝子の転写レベルの変化を通して(たとえば、開始、RNA前駆体の提供、RNAのプロセシングなどの制御を通して)、様々な遺伝子の発現レベルの違いによって特徴づけられる。
【0005】
多発性硬化症(MS)は中枢神経系(CNS)の慢性的な神経学的および炎症性疾患である。 MSに罹患したヒトでは、プラークまたは病斑と呼ばれる損傷のパッチが、中枢神経白質の一見ランダムな領域に現れる。病斑の部位では、神経絶縁材料であるミエリンが、脱髄として知られるプロセス中に失われる。炎症、脱髄、オリゴデンドロサイト死、膜損傷および軸索死のすべてが、MSの症状の一因となる。中枢神経系の予測不可能な病気であるMSは、比較的良性のものから、多少障害を引き起こすものや、脳や体の他の部分との間の伝達が中断され壊滅的なものまで幅広い。多くの研究者は、MSが自己免疫疾患であり、免疫システムが神経絶縁ミエリンを破壊すると信じている。このような攻撃は、ウイルス、ダイエット、アレルギーなどの未知の環境要因と関係している可能性がある。
【0006】
医師は病気の発症後すぐに、一部の患者でMSを診断することがある。しかし、他方で、医師は、容易に症状の原因を特定することができない場合があり、長年にわたって不確実となり、不思議に盛衰する不可解な症状によって複数の診断が中断されることになる。患者の大半は軽度に罹患するが、最悪の場合、MSによってヒトは、書いたり、話したり、歩いたりすることができなくなる。 MSは、自発的に弱まる自然的傾向がある病気であるが、普遍的に効果的な処置法がない。MSを証明し、あるいは排除する1つの臨床検査さえいまだなく、また、治療法も存在しない。また、処置応答および非応答患者を同定する臨床検査も存在しない。したがって、本技術分野においては、MSの改善した診断テストや、MS処置のための新たな戦略を開発するための処置標的に大きな必要性がある。
【0007】
インターフェロンベータ(例えば、Betaseron)などのMSを処置する処置薬として使用されている化合物は、おそらくこれらの遺伝子発現の変化の一部またはすべてを逆行させる。これらの遺伝子の少なくとも一部の発現変化は、したがって、このような処置法の有効性を測定し、あるいは予測する方法として使用しうる。その結果、これらの遺伝子発現の変化の一部またはすべてが、バイオマーカーフィンガープリントとみなされ、また、それとして利用しうる。ひいては、遺伝子産物もまた、バイオマーカーとして使用することができる。バイオマーカーは、処置の有効性の測定や予測に使用されているほか、処置的投与に対して陽性に応答することが予測される患者や、非応答の状態に戻しうる患者を同定するために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、再発寛解型多発性硬化症(RRMS)の患者の遺伝子発現プロファイリングの例を示す。応答が、過渡的であり、かつ変動することが示されている。 図1(a)は、RRMSデータセットの4時間後の処理サンプルの異なるサンプルクラスタリングを示す主成分分析である。 図1(b)は、分析した22283の間で変化するIFNβ誘導プローブセット(実線)の数と、その変化の相対的な大きさ(平均倍率変化、破線)をプロットする。両方の値とも刺激後4時間でIFNβ応答がピークになる。 図1(c)は、IFNβ刺激4時間後の免疫関連遺伝子群間の遺伝子誘導の可変レベルを示す。
【図2】図2は、機能によるIRIS遺伝子の分布に関する円グラフを示す。グラフは、標準的なIFN応答マーカー、異常調節および逆調節遺伝子を含む。
【図3】図3は、次の3つの主要手順を描くIRIS分析(またはNAb法)のフローチャートを示す。(1)IFNβによる4時間の細胞刺激、(2)RNAの単離とcDNA合成、および(3)IRIS/TLDA分析。
【図4】図4は、(a)10LU/mLの初期濃度に対する%応答としてプロットし、IRIS/ TLDAで測定したPBMCにおける4時間のIFNβ応答の例を示す。図4(b)は、刺激を1LU/mLへ10倍減少したときの遺伝子発現の%減少を示す。カワデ法によって定義される中和の基準は、10倍減少単位またはTRUと表現される。
【図5】図5は、IRIS遺伝子の中和力価の計算の例を示す。図は、MxA遺伝子、未知の機能の遺伝子、および細胞周期遺伝子の10倍減少単位(TRU)を示す。TRU力価は、IFNβ活性を10倍減少させる(たとえば、10LUから 1 LU)血清希釈である。
【図6】図6は、Betaseron処理のMS患者血清で測定され、各IRIS遺伝子につきTRUと表現されるNAb活性の例を示す。ここで、中和の程度は、遺伝子特異的であり、IFIT1やMxAなどの遺伝子は、極めて中和に感受性があり、他方、GBP1とGCH1は血清中和に耐性である。
【図7】図7は、IRIS分析の例を示す。これは、中和に対する遺伝子の感受性が、IFNβに対する遺伝子応答の大きさと相関しないことを示す。
【図8】図8は、ヒト単球細胞株THP1を応答細胞として使用するIFNβ-1aとIFNβ-1B活性についてのIRIS分析の例を示す。質量(mg / mL)ではなくmL当たりのIUに対して正規化した2つのIFNβフォームは、単球細胞株で同様の水準のIRIS遺伝子発現を誘導した。
【図9】図9は、ヒト単球細胞株THP1を応答細胞として使用してIFNβ-1aとIFNβ-1Bの活性の中和を測定するIRIS分析の例を示す。Betaseron処理MS患者の抗血清と標準的な抗IFNβ血清に対して試験する場合、IFNβ-1aは、IFNβ-1Bよりも中和に対して感受性である。IFNβ-1Bと同等の活性では、IFNβ-1aは、中和には4〜15倍低い中和抗体濃度を必要とする。
【発明の概要】
【0009】
概要
本発明は、差別的に発現された遺伝子、および多発性硬化症の予測と予後診断のためのこれらの差別的に発現された遺伝子の使用、ならびに多発性硬化症の処置の有効性を、測定、評価または分析するためのこれらの差別的に発現する遺伝子の使用に関する。具体的には、この発明は、これらの差別的に発現する遺伝子に特異的なプローブを含む、多発性硬化症の処置の有効性を評価するのに有用なアレイに関する。
【0010】
従って、本発明は、1または複数の異常調節遺伝子と1または複数の反対調節遺伝子に特異的な複数のプローブを含む、被験者における多発性硬化症(MS)の処置の有効性を評価するのに有用なアレイを提供し、ここで、前記異常調節および逆調節遺伝子はインターフェロンβ-1Bの導入に対する応答を示し、それにより、有効性は、前記処置前の遺伝子発現と比較した場合の、前記処置後の前記異常調節および逆調節遺伝子の遺伝子発現の変化によって評価される。また、本発明は、MSの処置の有効性を評価するために該アレイを使用する方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、多発性硬化症の処置の有効性を評価する方法であって、
(a)抗MS剤で処置する前に患者から取られた第一の生物サンプル中における、1または複数の異常調節遺伝子と1または複数の逆調節遺伝子の発現レベルを測定し、
ここに、前記異常調節および逆調節遺伝子は、インターフェロンβ-1Bの導入に対して応答を示し、
(b)抗MS剤での初期処置後に患者から取られた少なくとも第二の生物サンプル中の異常調節遺伝子および逆調節遺伝子の発現レベルを測定し、次いで、
(c)第二の生物学的サンプル中の異常調節および逆調節遺伝子の発現レベルを、第一の生物学的サンプル中の異常調節および逆調節遺伝子の発現レベルと比較することを含み、
ここに、第一の生物サンプル中の異常調節または逆調節遺伝子の発現レベルと比較した第二の生物サンプル中の異常調節または逆調節遺伝子の発現レベルの変化が、処置の有効性を示すことを特徴とする方法を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、多発性硬化症の処置に有用な化合物を同定する方法であって、
(a)1または複数の異常調節遺伝子および1または複数の逆調節遺伝子の発現レベルを分析し、ここに、前記異常調節および逆調節遺伝子は、化合物の処置前の細胞または組織サンプルにおいて、インターフェロンβ-1Bの導入に対する応答を示し、次いで、
(b)化合物での処置後の細胞または組織サンプルにおける異常調節および逆調節遺伝子の発現レベルを分析することを含み、
ここに、異常調節および逆調節遺伝子の発現レベルの変動が薬物の有効性を示すことを特徴とする方法を提供する。
【0013】
本発明は、また、インターフェロンβ-1Bの導入に対する患者応答における中和抗体を検出する方法であって、
(a)1または複数の異常調節遺伝子と1または複数の逆調節遺伝子の発現レベルを測定し、
ここに、前記異常調節および逆調節遺伝子は、抗MS剤で処置する前の患者から取られた第一の生物サンプル中において、インターフェロンβ-1Bの導入に対する応答を示し、
(b)少なくとも抗MS剤での初期処置の後の患者から取られた第二の生物サンプル中の異常調節遺伝子および逆調節遺伝子の発現レベルを測定し、次いで
(c)第二の生物学的サンプル中の異常調節および逆調節遺伝子の発現レベルを、第一の生物サンプル中の異常調節および逆調節遺伝子の発現レベルと比較すること、
を含み、
それにより、中和抗体活性が、インターフェロンβ-1Bの有効性を減少させたか、または薬物の有効性に影響を与えなかったかを決定することができることを特徴とする方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、インターフェロンβ-1Bの導入に際して差別的に発現する特定の遺伝子のセットについての発現プロファイルを含み、MRI、再発率、病気の進行および障害スコア(EDSS)などの測定可能な患者の臨床反応との相互の関連づけに有用である、遺伝子発現フィンガープリントを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
本明細書に記載の方法および組成物、ならびに参照によって援用される方法および組成物は、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコール、細胞株、動物種または属、構築体、および試薬を限定するものではなく、それらは変更されてもよいことを理解されたい。また、本明細書で用いる専門用語は、特定の実施形態のみを記載するために用いられているのであって、本発明の範囲の限定を意図していないことを理解されたい。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0016】
本明細書および特許請求の範囲において、単数形は、そうではないことを文脈が別に明白に規定していない限り、複数の言及を含む。したがって、たとえば、遺伝子への言及は、1または複数の遺伝子への言及であり、当業者にとって知られたその均等物などを含む。
【0017】
本明細書にて使用される全ての技術用語および科学用語は、別の定義がない限り、本発明が属する分野の当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。本明細書にて記載されるのと同様または同等の任意の方法、装置、および材料を本発明の実施または試験において使用してもよいが、そのより好ましい方法、装置、および材料について、以下に記載する。
【0018】
本明細書に挙げられる全ての刊行物は、本発明に関連して使用されうる、上記刊行物において記載された構築体および方法などを、本明細書において記載および開示する目的で、参照によって援用する。本明細書で論じられる上記出版物は、本願出願日に先行した開示のためだけに提示されている。本明細書は、本発明には先行発明を理由にそのような開示に先行する資格がないことを自認するものと解釈されるべきではない。
【0019】
導入
インターフェロンβ(IFNβ)は、抗ウイルス、抗増殖、または免疫調節として分類されている広い範囲の応答を誘導する。この機能的な多重性は、MSでのその有効性の原因となる作用機構を理解する挑戦に貢献している。インビトロウイルス保護分析(CPE分析)と、タイプI(IFNγ)及びタイプII(IFNβ)との両方のインターフェロンによって誘導される単一の抗ウイルス遺伝子MxAの発現を測定する最近導入された分析の2つの基本的なアプローチが、現在IFNβ生物活性を測定するために使用される。その性質上、これらのウイルスベースの分析のどちらも、IFNβの抗増殖または免疫調節作用に直接的な相関関係を与えるということはできない。この直接的な相関関係を与えるインビトロのIFNβ生物活性を測定するための新規のアプローチが提供される。
【0020】
このアプローチは、MSや病気の進行と関連付けられることが知られている生物学的調節への関与に基づき疾患内で特別に選択された、「臨床サンプル中のIFN応答(IRIS)」遺伝子と呼ばれる遺伝子の固有のフィンガープリントを利用する。アレイは、MS患者の処置(インターフェロン応答など)の有効性を測定するため、IRIS遺伝子を利用して開発された。
【0021】
IRIS遺伝子パネル
健常者、処置を受けていない再発寛解型多発性硬化症(RRMS)患者、およびIFNβ-1B(Betaseronなど)で処理した患者の間の末梢血単核細胞(PBMC)において観察された異なる遺伝子発現パターンに基づいて、臨床的に関連のあるMS-関連遺伝子セットが同定された。図1には、RRMS患者におけるIFNβ-1Bの単回投与に対する応答の遺伝子発現プロファイリングの例が示されている。既述のように、MSと病気の進行に関連付けられることが知られている生物学的調節への関与に基づく病気セット内で、関連遺伝子が特別に選定された。この固有のセットには、IFNβ-1Bにより異常調節され、かつ反対調節される遺伝子のほか、Th1-Th2応答、接着、走化性、インターフェロンシグナル伝達、および細胞周期応答に関連した遺伝子が含まれている。
【0022】
図2に示すのは、機能によるIRIS遺伝子の分布に関する円グラフである。グラフには、標準的なインターフェロン応答マーカーである異常調節遺伝子および逆調節遺伝子が含まれている。
【0023】
表1で示されるのは、IFNβ活性を測定するために一般的に使用される標準的なIFN誘導性遺伝子である。
【0024】
【表1】

【0025】
表2に示すのは、IFNβ-1B(すなわちBetaseron)処理に際して逆調節されMS患者で同定された遺伝子である。健常者とMS患者の間で差別的に発現するこれらの遺伝子は、IFNβ-1Bの処置に際して「健常」レベルに戻る。健常とは、MSなしの個人に類似するレベルであることを意味するものとする。
【0026】
【表2】

【0027】
表3に示すのは、IFNβ-1B(すなわちBetaseron)処置により異常調節されるMS患者で同定された遺伝子である。異常調節は、遺伝子が健常者とMS患者の間で差別的に発現されていることを意味するものとする。これらの遺伝子は、IFNβ-1B処置により「健常」レベルに戻る。
【0028】
【表3】

【0029】
表3の遺伝子は、ギャップ比率分析により選定された。この分析では、処置セットの最小発現レベル(Betaseron注射後4時間)のコントロール(未処理またはゼロ時間)の最大値に対するギャップ比率を計算する。プローブセットのいずれかで2に等しいかそれよりも大きいギャップ比率を生成するように決定されたIFNβ応答遺伝子のセットを集めた。こうして、免疫調節、免疫応答の変調(TH1対TH2)およびIFNシグナル伝達に関連し多様な機能を有する前述の遺伝子のセットが、IRIS遺伝子として選択された。
【0030】
また、本発明は、インターフェロンβ-1Bの導入に際して差別的に発現される遺伝子の特定のセットの発現プロファイルを含む遺伝子発現のフィンガープリントを提供し、該フィンガープリントは、MRI検査、再発率、病気の進行、および障害スコア(EDSS)などの患者の測定可能な臨床反応との相互の関連づけに有用である。
【0031】
ある実施形態において、遺伝子発現のフィンガープリントの遺伝子の特定のセットには、図2に示す全てのものが含まれる。他の実施形態では、遺伝子の特定のセットは、図2に示す1または複数を含む。
【0032】
IRISアレイ
IRIS遺伝子は、RT-PCRを含む任意の最先端の遺伝子プロファイリング法を使用して、あるいは、遺伝子オリゴヌクレオチドアレイなどのアレイまたはRT-PCRフォーマットマイクロ流体カードによって、直接測定することができる。IRIS遺伝子のフィンガープリントは、選択数の遺伝子だけを含んでいるので、ある実施形態では、低密度アレイを使用することもできる。アレイの作成では、IRIS遺伝子に選択的にハイブリダイズするプローブが、遺伝子発現解析のためのアレイ上に配置される。このアレイは、被験者でのMS処置の有効性を評価するのに有用である。
【0033】
いくつかの実施形態では、アレイを使用して被験者のMS処置の有効性を評価する方法も提供する。図3で示されるのは、3つの主要手順を描くIRIS分析のフローチャートである:(1)IFNβによる細胞刺激期間(たとえば4時間)、(2)RNA単離とcDNA合成、および(3)分析。図4は、IRISアレイによって測定されるPBMC中の4時間IFNβ応答をプロットしたものである。
【0034】
従って、本発明は、1または複数の異常調節遺伝子および1または複数の逆調節遺伝子に特異的な複数のプローブを含む、被験者での多発性硬化症(MS)の処置の有効性を評価するために有用なアレイを提供し、ここに、前記異常調節および逆調節遺伝子は、インターフェロンβ-1Bの導入に対する応答を示し、ここに、有効性が、前記処置の前における遺伝子発現と比較した場合の前記処置の後の前記異常調節または逆調節遺伝子の遺伝子発現の変化によって評価される。
【0035】
ある実施形態において、1または複数の異常調節遺伝子は表3に記載されるものから選択される。ある実施形態では、1または複数の逆調節遺伝子は表2に記載されるものから選択される。
【0036】
ある実施形態において、アレイは、分析が正しく機能していることを確実にするため、そして、正規化のため、いくつかのハウスキーピング遺伝子や、分析コントロール遺伝子やマーカーも含む。これらの分析コントロールマーカーには、内因性遺伝子、細胞系譜遺伝子が含まれる。内因性遺伝子の例には、GAPDH(NM_002046)およびHPRT1(NM_ 000194)が含まれるが、これらに限定されない。細胞系譜遺伝子の例には、CD3e(NM_ 000733)、CD14(NM_ 000591)、CD19(NM_ 001770)、ITGAX(NM_ 000887)、NCAM(NM_181351)およびCD16(NM_000560)が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
ある実施形態では、IRIS遺伝子は、細胞の遺伝子発現レベルを定量するためのハウスキーピング遺伝子とともに、マイクロ流体TaqMan分析プレートなどのアレイにフォーマットされる。ある実施形態では、IRIS遺伝子は、マイクロアレイ上にフォーマットされる。
【0038】
本発明はまた、多発性硬化症の処置の有効性を評価する方法であって、
(a)抗MS剤で処置する前に患者から取られた第一の生物サンプル中における、1または複数の異常調節遺伝子と1または複数の逆調節遺伝子の発現レベルを測定し、
ここに、前記異常調節および逆調節遺伝子は、インターフェロンβ-1Bの導入に対して応答を示す、
(b)抗MS剤での初期処置後に患者から取られた少なくとも第二の生物サンプル中の異常調節遺伝子および逆調節遺伝子の発現レベルを測定すること、および
(c)第二の生物学的サンプル中の異常調節および逆調節遺伝子の発現レベルを、第一の生物学的サンプル中の異常調節および逆調節遺伝子の発現レベルと比較することを含み、
ここに、第一の生物サンプル中の異常調節または逆調節遺伝子の発現レベルと比較した第二の生物サンプル中の異常調節または逆調節遺伝子の発現レベルの変化が処置の有効性を示すことを特徴とする方法を提供する。
【0039】
ある実施形態において、異常調節および逆調節遺伝子の発現レベルの変化は、MRI、再発率、病気の進行、および障害スコア(EDSS)などの測定可能な臨床反応と相互に関連するパターンを作成し、ここに前記パターンは統計的手法を用いて測定される。これらの統計的測定には、グループ比較T−検定、ランダムフォレスト分類、および条件付き推論ツリーモデルを含むが、これらに限定されない。
【0040】
ある実施形態において、1または複数の異常調節遺伝子は表3に記載されるものから選択される。ある実施形態では、1または複数の逆調節遺伝子は表2に記載されるものから選択される。ある実施態様において、生物サンプルは、血液、尿、骨髄、または生検サンプルからのものである。
【0041】
本発明は、多発性硬化症の処置に有用な化合物を同定する方法であって、
(a)1または複数の異常調節遺伝子および1または複数の逆調節遺伝子の発現レベルを分析し、ここに、前記異常調節および逆調節遺伝子は、化合物の処置前の細胞または組織サンプルにおいて、インターフェロンβ-1Bの導入に対する応答を示し、次いで
(b)化合物での処置後の細胞または組織サンプルにおける異常調節および逆調節遺伝子の発現レベルを分析することを含み、
ここに、異常調節および逆調節遺伝子の発現レベルの変動が薬物の有効性を示すことを特徴とする方法を提供する。
【0042】
中和抗体の検出
IRISアレイは、インターフェロンβ-1Bの導入に対する患者応答において中和抗体を検出するのにも有用である。したがって、インターフェロンβ-1Bの導入に対する患者応答において中和抗体を検出する方法であって、
(a)1または複数の異常調節遺伝子と1または複数の逆調節遺伝子の発現レベルを測定し、
ここに、前記異常調節および逆調節遺伝子は、抗MS剤で処置する前の患者から取られた第一の生物サンプル中において、インターフェロンβ-1Bの導入に対して応答を示し、
(b)少なくとも抗MS剤での初期処置の後の患者から取られた第二の生物サンプル中の異常調節遺伝子および逆調節遺伝子の発現レベルを測定し、次いで
(c)第二の生物学的サンプル中の異常調節および逆調節遺伝子の発現レベルを、第一の生物サンプル中の異常調節および逆調節遺伝子の発現レベルと比較すること、
を含み、それにより、中和抗体活性が、インターフェロンβ-1Bの有効性を減少させたか、または薬物の有効性に影響を与えなかったかを決定することができることを特徴とする方法が提供される。
【0043】
RRMS患者血清は、通常のPBMCでのIFNβ誘導遺伝子発現の阻害を測定し、中和力価は、図5で説明するカワデ式を使用して計算した。遺伝子発現の中和は、分析した遺伝子のすべてで同じではないと判断され、これは、IFNβによる遺伝子誘導の大きさに依存しない広い範囲の阻害を示す。
【0044】
IFNβ-およびIFNβ-1Aに対する患者NAbsおよびWHO抗IFNβ-1B標準の効果も示されている(図8と図9を参照のこと)。結果は、IRISによるNAb効果の測定が、患者血清中のIFNβ中和活性の測定に対するより包括的なアプローチを提供することによって、現在の抗ウイルスおよびMxA分析よりも大きな利点を示すことを示している。
【0045】
従って、本発明は、RRMSでのIFNβ処置に関連する特定の生物のNAbsの効果を明らかにし、MS処置への反応を予測するIRISアプローチを実行するのを助ける。
【0046】
遺伝子発現の改変をアッセイする方法
本発明によれば、MSに罹患した患者において遺伝子発現をアッセイする方法が提供される。上述のように、このアッセイの主な応用は以下のとおりである:
(a)その遺伝子発現プロファイルがIFNβ処置に対する臨床応答に相関する患者を同定する、
(b)その遺伝子発現プロファイルが処置に対する応答不良を反映する患者を同定する、
(c)その中和抗体状態が、現行のウイルス阻害アッセイによって測定して、処置に対する臨床応答の不存在に相関する患者を同定する、および
(d)その中和抗体状態が、IFNβ有効性に対して影響を有しない患者を同定する。これらのそれぞれの分析において、前のセクションに記載された遺伝子の特定のセットの発現が、測定される。以下は、これらの方法のさまざまな側面についての説明である。
【0047】
1.ハイブリダイゼーション
遺伝子発現を評価することができるさまざまな方法がある。これらの方法は、蛋白質、またはmRNAレベルのいずれかを見る。mRNAを見る方法は、すべて基本的には、基本的なレベルでは、核酸ハイブリダイゼーションに依拠する。ハイブリダイゼーションは、DNAおよび/またはRNAの相補的なストレッチとで選択的に二重分子を形成する核酸の能力と定義される。想定される適用に応じて、プローブまたはプライマーの標的配列についての選択性の度合いを変化させるためには、ハイブリダイゼーションの条件の変化が用いられるであろう。
【0048】
典型的には、13〜100ヌクレオチド、好ましくは17〜100ヌクレオチドの長さのプローブまたはプライマーは、1〜2キロベースまでの長さで、またはそれ以上の長さで、安定でありかつ選択的である二重分子の形成を可能にする。得られたハイブリッド分子の安定性と選択性を増加させるために、20塩基を超える長さであり連続ストレッチを通じて相補的な配列を有する分子が、一般的に好ましい。一般的には、20から30ヌクレオチド、または所望ならばそれより長い1または複数の相補的な配列を有するハイブリダイゼーション用の核酸分子を設計するのが好まれるであろう。このような断片は、たとえば、直接的に化学的手段によりフラグメントを合成することにより、または組換え生産のための組換えベクターに選択配列を導入することにより、容易に調製することができる。
【0049】
高選択性を必要とする適用では、典型的には、ハイブリッド形成のための比較的高ストリンジェント条件を用いることが望まれることになる。たとえば、約0.02 M〜約0.10 M NaCl、約50℃〜約70℃の温度などの比較的低塩および/または高温条件下である。このような高ストリンジェント条件は、プローブまたはプライマーとテンプレートまたはターゲット鎖との間の、もしあっても、わずかな不一致しか認容せず、特定の遺伝子を単離するため、あるいは特定のmRNA転写産物を検出するために特に適しているであろう。増加量のホルムアミドを添加することによって、条件は、よりストリンジェントにすることができることが広く理解されている。
【0050】
特定の適用では、たとえば、より低ストリンジェントな条件を用いることができる。これらの条件下では、ハイブリダイゼーション鎖の配列は、完全に相補的でなく、1または複数の位置に不一致があっても、ハイブリダイゼーションが起こりうる。塩濃度を増加させるか、および/または温度を下げることによって、条件をより低ストリンジェントにすることができる。たとえば、中ストリンジェント条件は、約0.1〜0.25 M NaCl、約37℃〜約55℃の温度で提供することができ、他方、低ストリンジェント条件は、約0.15 M〜約0.9 Mの塩、約20℃〜約55℃の範囲の温度で提供することができる。ハイブリダイゼーション条件は、所望の結果に応じて容易に操作することができる。
【0051】
他の実施形態では、ハイブリダイゼーションは、たとえば、50mM Tris-HCl(pH 8.3)、75 mM塩化カリウム、3 mMMgCl2、1.0 mMジチオスレイトール、約20℃〜約37℃の間の温度の条件下で達成できる。利用する他のハイブリダイゼーション条件には、約10 mM Tris-HCl(pH 8.3)、50mM塩化カリウム、1.5 mM MgCl2、約40℃〜約72℃の範囲の温度が、含まれうる。
【0052】
特定の実施形態では、ハイブリダイゼーションを測定するために、標識などの適切な手段と組み合わせて本発明の定義された配列の核酸を使用することが有利になる。蛍光性、放射性、酵素性、またはアビジン/ビオチンなどの他のリガンドを含む、多様な適当な標識手段が当技術分野で知られており、それらを検出することができる。ある実施形態では、放射性またはその他の環境に望ましくない試薬の代わりに、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼやペルオキシダーゼなどの蛍光標識または酵素タグの使用が望まれうる。酵素のタグの場合には、相補的な核酸を含むサンプルとの特異的なハイブリダイゼーションを同定するために、比色分析標識基質が、可視的または分光光度法的に検出できる検出手段を提供するために用いることができることが知られている。
【0053】
一般的には、本明細書に記載したプローブまたはプライマーは、対応する遺伝子の発現検出のためのPCRのような溶液ハイブリダイゼーションのほか、固相を用いる形態での試薬として、有用であるということが想定される。固相に関する実施形態では、試験のDNA(またはRNA)は、選択されたマトリックスまたは表面に吸着され、あるいは貼付される。この固定された一本鎖核酸は、所望の条件下で選択されたプローブとのハイブリダイゼーションに供される。選択する条件は、特定の状況に依存する(たとえば、G + C含量、標的核酸のタイプ、核酸の起源、ハイブリダイゼーションプローブのサイズなどに依存する)。目的とする特定の適用のためのハイブリダイゼーション条件の最適化は、当業者によく知られている。非特異的に結合したプローブ分子を除去するためのハイブリダイズ分子の洗浄後、結合した標識の量を測定することによって、ハイブリダイゼーションを検出し、および/または定量化する。代表的な固相ハイブリダイゼーション法は、米国特許第5843663、5900481および5919626に開示されている。本発明の実施に使用することができるハイブリダイゼーションの他の方法は、米国特許第5849481、5849486および5851772に開示されている。本明細書のこの節で特定されるこれらおよび他の参考文献の関連する部分は、参照により本明細書と一体化する。
【0054】
2.核酸の増幅
多くの核酸、特に、mRNAは、低濃度であるので、核酸増幅は、発現を評価する能力を大幅に向上させる。一般的なコンセプトは、核酸は、関心のある領域に隣接する一対のプライマーを用いて増幅することができるということである。本明細書中で使用される用語「プライマー」は、テンプレートに依存するプロセスで初期の核酸の合成をプライミングすることができる任意の核酸を包含することが意図されている。典型的には、プライマーは、長さ10から20および/または30塩基対のオリゴヌクレオチドであるが、より長い配列を用いることができる。プライマーは、一本鎖の形態が好ましいが、一本鎖、および/または二本鎖の形態で提供されうる。
【0055】
選択された遺伝子に対応する核酸に選択的にハイブリダイズするように設計された一対のプライマーは、選択的ハイブリダイゼーションを可能にする条件下でテンプレート核酸と接触させる。所望の適用に応じて、高ストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、プライマーに完全に相補的な配列へのハイブリダイゼーションのみを可能にするように選択することができる。他の実施形態では、ハイブリダイゼーションは、プライマー配列と1または複数のミスマッチを含む核酸の増幅を可能にするため、ストリンジェンシーを減少させた条件下で生じうる。一度ハイブリダイズしたら、テンプレートプライマー複合体は、テンプレート依存的な核酸合成を促進する1または複数の酵素と接触させる。「サイクル」とも呼ばれる増幅の複数の繰り返しは、十分な量の増幅産物が生成されるまで行われる。
【0056】
増幅産物は検出または定量化されうる。特定の適用では、検出は視覚的な手段によって実行されうる。また、検出は、化学発光、組み込み放射性標識の放射性シンチグラフィー、または蛍光標識を介する、あるいは、電気および/または熱インパルス信号を使用するシステムを介する、生成物の間接的な識別を含みうる。
【0057】
テンプレートに依存する数多くのプロセスを、指定されたテンプレートサンプル中に存在するオリゴヌクレオチド配列を増幅するために利用することができる。最もよく知られている増幅方法の一つは、米国特許第4683195、4683202および4800159と、イニス(Innis)らによる1988年の文献で詳細に記載されているポリメラーゼ連鎖反応(PCRと呼ばれる)であり、それぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0058】
逆転写PCR(RT-PCR)増幅法は、増幅されたmRNAの量を定量化するために行うことができる。RNAをcDNAに逆転写する方法はよく知られている(Sambrookらによる1989年を参照;参照により援用)。逆転写のための別の方法は、耐熱性DNAポリメラーゼを使用する。これらの方法は、WO90/07641に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。ポリメラーゼ連鎖反応の手順は、当技術分野でよく知られている。RT-PCRの代表的な方法は、米国特許第5882864に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
標準的なPCRは、通常、特定の配列を増幅する一対のプライマーを使用するが、マルチプレックスPCR(MPCR)は、同時に多くの配列を増幅する複数対のプライマーを使用する(Chamberlanら、1990;参照により援用)。単一チューブに多くのPCRプライマーが存在することにより、誤プライミングPCR産物や「プライマー二量体」の形成の増大や、長いDNA断片の増幅識別などの多くの問題が起こりうる。通常、MPCR緩衝液は、Taqポリメラーゼ添加剤を含み、これは、アンプリコン間の競合とMPCR中の長いDNA断片の増幅識別を減少させる。MPCR産物は、さらに検証のための遺伝子特異的プローブとハイブリダイズすることができる。理論的には、必要に応じた数のプライマーを使用できるべきである。しかし、MPCR中に生じる副次的影響のために(プライマー二量体、誤プライミングPCR産物など)、MPCR反応に使用することができるプライマーの数には限界がある(20未満)。欧州出願第0 364 255や、ミュラー(Mueller)とウォールド(Wold)(1989)も参照されたく、参照により本明細書に組み込まれる。
【0060】
増幅のためのもう一つの方法は、リガーゼ連鎖反応(「LCR」)であり、欧州出願第320 308に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4883750は、プローブの対を標的配列に結合するためのLCRに類似する方法について説明する。米国特許第5912148に開示され参照により本明細書に組み込まれるPCRおよびオリゴヌクレオチドリガーゼ分析(OLA)に基づく方法も、使用することができる。
【0061】
本発明の実施に使用することができる標的核酸配列の増幅のための別の方法は、米国特許第5843650、5846709、5846783、5849546、5849497、5849547、5858652、5866366、5916776、5922574、5928905、5928906、5932451、5935825、5939291および5942391、英国出願第2 202 328、およびPCT出願第PCT/US89/01025に開示され、それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
PCT出願第PCT/US87/00880に記載されるQベータレプリカーゼも、また、本発明の増幅法として用いることができる。この方法では、標的のものと相補的な領域を有するRNAの複製配列が、RNAポリメラーゼの存在下でサンプルに付加される。ポリメラーゼは、複製配列をコピーし、そして、それは検出されうる。
【0063】
制限酵素認識部位の1の鎖にヌクレオチド5'-[.α.-チオ]-三リン酸を含む標的分子の増幅を達成するため制限エンドヌクレアーゼおよびリガーゼを使用する等温増幅法も、本発明の核酸の増幅に有用でありうる(Walkerら、1992)。米国特許第5916779に開示された鎖置換増幅(SDA)は、複数の繰返しの鎖置換および合成を含む核酸の等温増幅、すなわち、ニックトランスレーションを行う別の方法である。
【0064】
その他の核酸増幅法は、転写ベース増幅システム(TAS)を含み、核酸配列ベース増幅(NASBA法)と3SR(Kwohら、1989年;Gingerasら、PCT出願第WO88/ 10315;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を含む。欧州出願第329 822は、一本鎖RNA(「ssRNA」)、ssDNAおよび二本鎖DNA(dsDNA)の循環的な合成を含む核酸増幅プロセスを開示し、本発明で使用することができる。
【0065】
PCT出願WO89/06700(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、配列の多数のRNAコピーの転写に続いて行われる標的一本鎖DNA(「ssDNA」)へのプロモーター領域/プライマー配列のハイブリダイゼーションに基づく核酸配列の増幅法を開示する。この方法は、循環的ではない。すなわち、新しいテンプレートは、得られたRNA転写物から作製されない。他の増幅方法は、「race」と「一方的PCR法」を含む(Frohiman、1990;オーハラら、1989)。
【0066】
3.核酸の検出
任意の増幅に続いて、テンプレートおよび/または過剰なプライマーから増幅産物を分離することが望ましい。一実施形態では、増幅産物は、標準的な方法を使用してアガロース、アガロース-アクリルアミドまたはポリアクリルアミドゲル電気泳動泳動によって分離される(Sambrookら、1989)。分離された増幅産物は、さらなる操作のため、ゲルから切り出し、溶出することができる。低融点アガロースゲルを使用して、分離されたバンドは、ゲルを加熱し、続いて、核酸を抽出することによって取り出すことができる。
【0067】
核酸の分離は、本技術分野で知られているクロマトグラフィー技術によっても行うことができる。本発明の実施に使用することができるクロマトグラフィーには多くの種類があり、吸着、分配、イオン交換、ハイドロキシアパタイト、分子篩、逆相、カラム、紙、薄層、ガスクロマトグラフィのほか、HPLCが含まれる。
【0068】
特定の実施形態では、増幅産物は可視化される。典型的な可視化手法には、エチジウムブロマイドでのゲルの染色、および紫外光下でバンドの可視化が含まれる。また、増幅産物が、放射性または蛍光標識ヌクレオチドで一体的に標識されている場合、分離された増幅産物は、X線フィルムに露出させることができ、あるいは適切な刺激性スペクトルで可視化することができる。
【0069】
一実施形態では、増幅産物の分離に続いて、標識した核酸プローブが、増幅マーカー配列に接触する。プローブは、好ましくは発色団に結合するが、放射性標識でもよい。別の実施形態では、プローブは、抗体またはビオチン、または検出可能な部分を持つ別の結合パートナーなどの結合パートナーに結合する。
【0070】
特定の実施形態では、検出は、サザンブロッティングおよび標識プローブを用いるハイブリダイゼーションによる。サザンブロッティングに関する技術は、当業者によく知られている(Sambrookら1989年を参照)。上記の一例は、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5279721に記載され、自動化電気泳動および核酸トランスファーのための装置および方法が開示されている。該装置は、ゲルの外部操作なしに電気泳動およびブロッティングが可能であり、本発明の方法を実施するのに理想的に適している。
【0071】
本発明の実施に使用することができる核酸検出の他の方法は、米国特許第5840873、5843640、5843651、5846708、5846717、5846726、5846729、5849487、5853990、5853992、5853993、5856092、5861244、5863732、5863753、5866331、5905024、5910407、5912124、5912145、5919630、5925517、5928862、5928869、 5929227、5932413および5935791に開示されており、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
4.核酸アレイ
マイクロアレイは、実質的に平面な基盤、たとえば、バイオチップの表面に、空間的に分布し安定的に結合した複数のポリマー分子を含む。ポリヌクレオチドのマイクロアレイは、開発されてきており、スクリーニングやDNA配列決定などのさまざまな応用の用途が見出される。マイクロアレイが特に用途を見出す1つの領域は、遺伝子発現解析である。
【0073】
マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析では、「プローブ」オリゴヌクレオチドのアレイは、関心のある核酸サンプル、すなわち、特定の組織型からのポリA mRNAまたは全体RNAなどの標的と接触する。ハイブリダイゼーション条件下で接触が行われ、非結合核酸がその後除去される。ハイブリダイズした核酸の得られたパターンは、試験されたサンプルの遺伝子プロファイルに関する情報を提供する。マイクロアレイの遺伝子発現解析の手法は、定性的でも定量的でも情報を提供することができる。
【0074】
使用することができる別の様々なアレイが、本技術分野で知られている。標的核酸との配列特異的なハイブリダイゼーションが可能なアレイのプローブ分子は、ホスホジエステル結合がホスホロチオエート、メチルイミノ、メチルホスホネート、ホスホロアミダート、グアニジンなどの代替結合に交換されている核酸;リボースのサブユニットがたとえばヘキソースホスホジエステルに置換されている核酸;ペプチド核酸;などを含む、ポリヌクレオチドもしくはハイブリダイズする類似物、または模倣物であってもよい。プローブの長さは、一般的には、10〜1000のヌクレオチド(nts)の範囲であり、ある実施形態においては、プローブは、オリゴヌクレオチドであり、通常、長さが15〜150ntsの範囲であり、より通常には、15〜100ntsであり、他の実施形態においては、プローブは、より長く、通常、長さとして、150〜1000ntsの範囲であり、ポリヌクレオチドのプローブは、一本鎖または二重鎖、通常、一本鎖であってよく、cDNAから増幅されたPCR断片であってよい。
【0075】
基盤の表面のプローブ分子は、陽性ハイブリダイゼーション事象が、標的核酸サンプルを得た生理学的起源内の特定の遺伝子の発現と相関することができるように解析され既知の位置でアレイ上に配置された選択遺伝子に対応する。プローブ分子を安定的に結合する基盤は、プラスチック、セラミックス、金属、ゲル、膜、ガラス等を含む様々な材料から製造することができる。アレイは、プローブを予備成形し、それらを安定的に支持体の表面に結合することや、支持体上で直接プローブを成長させることなど、任意の便利な方法に従って製造することができる。数多くの別のアレイ構成およびそれらの製造のための方法が、当業者に知られており、米国特許第5445934、5532128、5556752、5242974、5384261、5405783、5412087、5424186、5429807、5436327、5472672、5527681、5529756、5545531、5554501、5561071、5571639、5593839、5599695、5624711、5658734、5700637、および6004755に開示されている。
【0076】
非ハイブリダイズ標識核酸が検出段階でシグナルを発することができるハイブリダイゼーションに続いて、ハイブリダイズしない標識核酸を支持体表面から除去する洗浄段階が行われ、ハイブリダイズした核酸のパターンが基盤表面に生成される。多種多様な洗浄液およびそれらの使用のためのプロトコールが、当業者に知られており、使用することができる。
【0077】
標的核酸の標識は、直接検出されないが、採用されているシグナル生成システムの他のメンバー(複数も可)とともに、結合した標的を含むアレイと接触する。たとえば、標的の標識がビオチンである場合、特異的結合メンバー対の間の結合を生じるのに十分な条件下で、ストレプトアビジン-蛍光発色体複合体を含むアレイと接触させる。接触後、シグナル生成システムの任意の非結合メンバーは、たとえば、洗浄により、除去される。使用される特定の洗浄条件は、使用されるシグナル生成システムの特定の性質に必然的に依存し、用いる特定のシグナル生成システムに精通した当業者に知られているであろう。
【0078】
結果としての標識核酸のハイブリダイゼーションパターン(複数も可)は、核酸の特定の標識に基づいて選択される特定の検出方法を用いて、さまざまな方法で、可視化または検出することができ、ここで代表的な検出手段としては、シンチレーションカウント、オートラジオグラフィー、蛍光測定、熱量測定、発光測定などが挙げられる。
【0079】
パターンに偽陽性シグナルを生成する不一致ハイブリダイゼーション事象の可能性を低減させることを望む場合、検出や可視化の前に、エンドヌクレアーゼが一本鎖を変性するが二本鎖DNAを変性しないために十分な条件下で、ハイブリダイズした標的/プローブ複合体のアレイを、エンドヌクレアーゼで処理してもよい。異なる様々なエンドヌクレアーゼが、知られ使用することができ、ここで、このようなヌクレアーゼには、マングビーンヌクレアーゼ、S1ヌクレアーゼなどが含まれる。このような処理が、標的核酸が直接検出可能な標識で標識されていない分析、たとえば、ビオチン化標的核酸を用いる分析で用いられる場合、エンドヌクレアーゼ処理は、一般的に、シグナル生成システムの他のメンバーに(複数も可)、たとえば、蛍光ストレプトアビジン複合体にアレイを接触させる前に行われる。上述のようにエンドヌクレアーゼ処理は、プローブの3'末端に実質的に完全なハイブリダイゼーションを有する唯一の末端標識標的/プローブ複合体がハイブリダイゼーションパターンで検出されることを確実にする。
【0080】
上記のように、ハイブリダイゼーション、および任意の洗浄段階(複数も可)、ならびに/またはその後の処理に続いて、得られたハイブリダイゼーションパターンを検出する。ハイブリダイゼーションパターンの検出または可視化では、標識の強度やシグナル値を検出するだけでなく定量化するが、このことは、ハイブリダイゼーションのパターンでアレイ上の特定の場所にハイブリダイズされている各末端標識標的のコピー数の総数または絶対値を取得するために、ハイブリダイゼーションの各スポットからのシグナルを測定し、既知数の末端標識した標的核酸によって放出されるシグナルに対応する単位値と比較することを意味する。
【0081】
蛋白質ベースの診断分析
本発明の別の局面において、いずれかの蛋白質ベースの診断のアプローチを採用することができる。タンパク質同定の最も一般的な形態は、抗体を使用することである。本明細書においては、用語「抗体」はIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEなどの免疫学的結合剤を広く意味するものとする。生理的な状況の中で最も一般的な抗体であるため、そして、実験環境で最も簡単に作られるため、一般的には、IgGおよび/またはIgMが好ましい。用語「抗体」は、抗原結合領域を有し、たとえば、Fab'、Fab、F(ab').sub.2、単一ドメイン抗体(DABs)、Fv、 scFv(単鎖Fv)などの抗体断片を含む任意の抗体様分子をも意味する。様々な抗体ベースの構造物および断片を調製し使用するための技術が、当技術分野でよく知られている。ポリクローナルおよびモノクローナルの両方の抗体を調製し特徴づける手段は、当該分野でよく知られている(たとえば、抗体:研究所マニュアル、コールドスプリングハーバー研究所、1988などを参照。参照により本明細書に組み込まれる)。
【0082】
本発明では、免疫検出法が提供される。少し挙げると、免疫検出法には、酵素結合免疫測定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)、免疫放射定量測定法、蛍光免疫測定法、化学発光法、生物発光分析法、およびウェスタンブロッティングが含まれる。様々な有用な免疫検出方法の手順が、たとえば、Doolittle および Ben-Zeev 0, 1999、Gulbis および Galand, 1993、De Jager ら 1993、およびNakamura ら 1987などの科学文献に記載されており、参照によりそれぞれが本明細書に組み込まれる。
【0083】
一般的には、免疫結合方法は、関連するポリペプチドを含むことが疑われるサンプルを取得すること、そして、免疫複合体の形成を可能にする効果的な条件下で最初の抗体とサンプルを接触することを含む。抗原の検出に関して、分析する生物サンプルは、たとえば、組織切片または被検査物、均質化組織抽出物、細胞、あるいは生物学的流体などの、抗原を含むことが疑われる任意のサンプルであってもよい。
【0084】
免疫複合体(一次免疫複合体)の形成を可能にするのに十分な効果的な条件下または期間、選択された生物サンプルを抗体と接触させることは、一般的には、単にサンプルに抗体組成物を加え、抗体が存在する任意の抗原と免疫複合体を形成する、すなわち、結合するのに十分な長さの期間、混合物を培養することである。この時間の後、任意の非特異的結合抗体種を除去するために、一般的には、組織切片、ELISAプレート、ドットブロット、またはウェスタンブロッティングなどのサンプル抗体組成物を洗浄し、第一免疫複合体内に特異的に結合した抗体だけの検出を可能にする。
【0085】
一般的には、免疫複合体形成の検出は、当技術分野で知られており、数多くのアプローチを適用することにより達成することができる。これらの方法は、一般的に、任意の放射性、蛍光性、生物学的、および酵素的タグなどの標識やマーカーの検出に基づく。このような標識の使用に関する米国特許には、米国特許第3817837、3850752、3939350、 3996345、4277437、4275149および4366241が含まれ、参照によりそれぞれが本明細書に組み込まれる。もちろん、当技術分野で知られるように、 二番目の抗体、および/またはビオチン/アビジンリガンド結合配置などの二次的結合リガンドの使用を通した利点を付加的に見出すことができる。
【0086】
検出に用いる抗体は、それ自体が検出可能な標識に接続されてもよく、この標識を単純に検出することによって組成物中の第一免疫複合体の量を測定することができる。また、一次免疫複合体中に結合する一次抗体は、抗体への結合親和性を有する第二の結合リガンドによって検出してもよい。これらの例では、第二の結合リガンドは、検出可能な標識に接続してもよい。第二の結合リガンドは、しばしば、それ自体が抗体であり、したがって「二次」抗体と呼んでもよい。一次免疫複合体は、二次免疫複合体の形成を可能にするのに十分に効果的な条件下および期間、標識、二次結合リガンド、または抗体に接触させる。一般的には、任意の非特異的な結合標識二次抗体またはリガンドを除去するために二次免疫複合体を洗浄し、二次免疫複合体の残りの標識を検出する。
【0087】
他の方法は、二段階のアプローチによる一次免疫複合体の検出を含む。抗体への結合親和性を有する抗体などの第二の結合リガンドは、上述したように、二次免疫複合体を形成するために使用される。洗浄後、有効な条件を再度下時間(三次免疫複合体)免疫複合体の形成を可能にするのに十分な期間、二次免疫複合体を、二次抗体への結合親和性を有する第三結合リガンドまたは抗体と接触させる。第三リガンドまたは抗体を、検出可能な標識に接続し、形成された第三免疫複合体の検出を可能にする。所望ならば、このシステムは、シグナルの増幅を提供してもよい。
【0088】
チャールズカントールによって設計された免疫検出の一つの方法は、2つの異なる抗体を使用する。第一段階ビオチン化モノクローナルまたはポリクローナル抗体は、標的抗原(複数も可)を検出するために使用され、第二段階抗体が、複合ビオチンに接続しているビオチンを検出するために使用される。この方法では、第一段階抗体を含む溶液中で、まず試験するサンプルをインキュベートする。標的抗原が存在する場合は、抗体のいくつかが抗原に結合し、ビオチン化抗体/抗原複合体を形成する。抗体/抗原複合体は、ストレプトアビジン(またはアビジン)、ビオチン化DNA、および/または相補的なビオチン化DNAの連続した溶液でのインキュベーションによって増幅され、各段階で抗体/抗原複合体に追加のビオチンサイトを付加する。増幅段階は、増幅の適切なレベルが達成されるまで繰り返され、その後、ビオチンに対する第二段階の抗体を含む溶液中でサンプルをインキュベートする。この第二段階の抗体は、たとえば、発色基質を使用して組織酵素学によって抗体/抗原複合体の存在を検出するために使用することができる酵素で標識される。適切な増幅で、肉眼で見える複合体を得ることができる。
【0089】
免疫検出のもう一つの知られている方法は、免疫PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)の手法を活用する。PCR法は、ビオチン化DNAのインキュベーションまでは、カントールの方法と似ているが、複数の繰返しのストレプトアビジンとビオチン化DNAのインキュベーションを用いる代わりに、抗体を放出させる低pHまたは高塩緩衝液でDNA /ビオチン/ストレプトアビジン/抗体複合体を洗浄する。得られた洗浄溶液は、適切なコントロールと適切なプライマーを用いてPCR反応を行うために使用する。少なくとも理論的には、膨大な増幅能力とPCRの特異性は、単一の抗原分子を検出するために利用することができる。上で詳述したように、免疫学的分析は、本質的に結合分析である。ある免疫学的分析は、本技術分野で知られている様々な種類の酵素結合免疫測定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)である。しかし、検出がこのような技術に限定されないことは容易に理解されようし、ウェスタンブロッティング、ドットブロット、FACS分析などを使用することもできる。
【0090】
1つの例示的なELISA法では、本発明の抗体は、ポリスチレンマイクロタイタープレートのウェルなどのタンパク質の親和性を示す選択された表面上に固定化される。次に、臨床サンプルなど、抗原を含むことが疑われる試験組成物を、ウェルに加える。結合し、非特異的に結合した免疫複合体を除去するための洗浄をした後、結合抗原が検出されうる。一般的には、検出は、検出可能な標識に接続した別の抗体を添加することによって達成される。このタイプのELISAは、単純な「サンドイッチELISA」である。検出は、また、二次抗体を添加し、続いて、二次抗体に結合親和性を有し検出可能な標識に接続されている三次抗体を添加することによっても達成することができる。
【0091】
別の例示的なELISA法では、抗原を含むことが疑われるサンプルは、ウェル表面に固定化され、その後、本発明の抗ORFのメッセージおよび抗ORFの翻訳産物の抗体と接触する。結合と非特異的結合免疫複合体を除去するための洗浄の後、結合した抗ORFのメッセージと抗ORFの翻訳産物の抗体を検出する。第一の抗ORFのメッセージと抗ORFの翻訳産物の抗体が検出可能な標識に接続している場合には、免疫複合体は、直接検出することができる。免疫複合体は、第一の抗ORFのメッセージと抗ORFの翻訳産物の抗体の結合親和性を有し検出可能な標識に接続されている二次抗体を用いて検出することができる。
【0092】
抗原を固定化する別のELISA法は、検出において抗体の競合の使用を含む。このELISA法では、抗原に対する標識抗体がウェルに加えられ、結合を可能とし、標識の手段によって検出する。未知サンプル中の抗原の量は、被覆ウェルとのインキュベーション中に、抗原に対する標識抗体とサンプルを混合することによって測定される。サンプル中に抗原が存在することによって、ウェルに結合することができる抗原に対する抗体の量が低減するので、最終的なシグナルが低減する。これは、未知サンプルで抗原に対する抗体を検出するのにも適しており、非標識抗体が抗原被覆ウェルに結合し、標識抗体に結合することができる抗原の量を低減する。「免疫複合体(抗原/抗体)形成を可能とする効果的な条件」は、抗原および/または抗体を、BSA、ウシグロブリン(BGG)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)/トゥイーンなどの溶液で希釈することを好ましくは含む条件を意味する。これらの添加物質はまた、非特異的バックグラウンドの低減を助力する傾向がある。「適切な」条件も、インキュベーションが効果的な結合ができるようにするのに十分な温度または期間であることを意味する。インキュベーション段階は、通常、約1〜2〜4時間くらいで、好ましくは約25℃〜27℃の温度であるが、約4℃で一晩でもよい。
【0093】
本発明の抗体は、免疫組織化学(IHC)による研究のために調製した新鮮凍結および/またはホルマリン固定、パラフィン包埋組織ブロックとともに使用することができる。これらの微粒子被検査物から組織ブロックを調製する方法は、様々な予後因子の以前のIHCの研究でうまく使用されており、および/または、当業者によく知られている(Brownら、1990年;Abbondanzoら、1999年;Allredら、1990年)。
【0094】
また、免疫組織化学を使用することも、本発明で意図されている。この手法は、無傷組織サンプル中の抗原を検出し定量化するため、抗体を使用する。一般的には、凍結片は、小さなプラスチック容器でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で室温で凍結「粉砕」組織を再水和し;遠心分離により粒子をペレット化し;粘性包埋剤(OCT)でそれらを再懸濁し;カプセルを反転し再び遠心分離によりペレット化し;−70℃のイソペンタンで急凍結し;プラスチック製のカプセルを切断し組織の凍結シリンダを除去し;クライオスタットミクロトームチャック上に組織シリンダを固定し;25〜50連続切片を切断することによって調製される。
【0095】
永久切片は、プラスチックのマイクロチューブで50 mgのサンプルを再水和し;ペレット化し;10%ホルマリンに再懸濁し4時間固定し;洗浄/ペレット化し;温2.5%寒天で再懸し;ペレット化し;氷水中で冷却し寒天を硬化させ;チューブから組織/寒天ブロックを取り除き;パラフィンにブロックを浸潤させおよび/または埋め込ませ;50連続永久切片まで切断することを含む同様の方法により調製することができる。
【実施例】
【0096】
本明細書において説明された実施例と実施形態は、例示としてのものであってこれに限定されず、そして、特許請求の範囲に記載の本発明の精神と範囲から逸脱することなく他の例を用いてよいことは、当業者に明らかであろう。
【実施例1】
【0097】
実施例1.IRIS遺伝子発現分析
【0098】
相対的な遺伝子発現は、検出部(たとえば、SDS2.1)用に設計されたアプリケーションソフトウェアを使用して、シーケンス検出システム(たとえば、ABI Prism 7900HT)を用いて測定される。各IRIS遺伝子の発現レベルは、式2-δδCTを使用する比較CT法によって計算され、ここで、δδCTは、キャリブレータサンプル(例:非刺激コントロール)での正規化されたシグナルレベルに対するサンプルの「A」(刺激IFNβなど)での正規化されたシグナルレベルに等しい。サンプルは、GAPDHまたはHPRT1ハウスキーピング遺伝子を用いて正規化することができる。また、サンプルは、患者の末梢血単核球のサンプルにおける応答を見てT細胞(CD3)、B細胞(CD19)、単球(CD14)、樹状細胞(ITGAX)、好中球(NCAM)またはNK細胞(CD16)の細胞系譜マーカーを使用して正規化することができる。NAbの分析のために、IRISの遺伝子発現は、10LU/mL IFNβとともに一定濃度の患者血清を含むサンプルと、10LU/mL IFNβを単独で含むキャリブレータのサンプルとの間で比較され、説明したようにTRU中和力価は、カワデ法を使用して計算される(図5を参照)。患者の反応を示すフィンガープリント発現パターンは、グループ比較T−検定、ランダムフォレスト分類、および条件付き推論ツリーモデルを含むが、それらに限定されない適切な統計的手法を適用することによって測定される。
【実施例2】
【0099】
実施例2.NAb分析患者データ
【0100】
上記のIRIS遺伝子発現分析を使用して、IFNβ誘導の中和の程度が、分析された各IRIS遺伝子に固有であるらしいことが見出される。たとえば、標準IFNβ応答遺伝子MxA遺伝子は、非常に中和に敏感であったが、他方、他のIRIS遺伝子は中和に高い血清濃度を必要とした(図6を参照)。これは、前にウイルス阻害分析によって強力なNAb活性を有することを特徴づけられた患者の血清の分析で示されている。さらに、遺伝子のTRU力価で示されるように、中和に対する感受性は、その特定の遺伝子の応答の大きさと相関していなかった(図7を参照)。
【0101】
上記明細書に記載されているすべての出版物や特許文献は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の範囲および精神から逸脱しない本発明の記載された方法の様々な修正およびバリエーションは、当業者に明白であろう。本発明は、特定の実施形態と関連して記載されているが、本発明は、不当にこのような特定の実施形態に限定すべきではないことが理解されるべきである。実際、当業者に明らかであって本発明を実施するための上記の態様の様々な変更は、次の特許請求の範囲の範囲内であることが意図されている。当業者は、ルーチンにすぎない実験を使用して、本明細書に記載した本発明の具体的な実施形態の多くの同等物を認識するか、あるいは、確認することができるであろう。このような同等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の多発性硬化症(MS)処置の有効性を評価するためのアレイであって、
1または複数の異常調節遺伝子、および1または複数の逆調節遺伝子に特異的な複数のプローブを含み、
ここにで、前記異常調節および逆調節遺伝子は、インターフェロンβ-1Bの導入に対する応答を示し、
それにより、有効性が、前記処置の前における遺伝子発現と比較した場合の前記処置の後の前記異常調節または逆調節遺伝子の遺伝子発現の変化によって評価されることを特徴とするアレイ。
【請求項2】
1または複数の異常調節遺伝子が、ギャップ比率分析によって選択される、請求項1記載のアレイ。
【請求項3】
1または複数の異常調節遺伝子が、表3にリストされている遺伝子から選択される、請求項1または2記載のアレイ。
【請求項4】
1または複数の逆調節遺伝子が、表2にリストされている遺伝子から選択される、請求項1〜3のいずれか1記載のアレイ。
【請求項5】
さらに、表1にリストされた遺伝子から選択される標準インターフェロンマーカーを含む、請求項1〜4のいずれか1記載のアレイ。
【請求項6】
さらに、分析コントロールマーカーを含む、請求項1〜5のいずれか1記載のアレイ。
【請求項7】
分析コントロールマーカーが、内因性遺伝子および細胞系譜遺伝子を含む、請求項6記載のアレイ。
【請求項8】
内因性遺伝子が、GAPDHおよびHPRT1からなる群から選択される、請求項7記載のアレイ。
【請求項9】
細胞系譜遺伝子がCD3e、CD14、CD19、ITGAX、NCAM、およびCD16からなる群から選択される、請求項7記載のアレイ。
【請求項10】
アレイが、低密度マイクロ流体分析プレートである、請求項1〜9のいずれか1記載のアレイ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1記載のアレイを使用して、被験者における多発性硬化症の処置の有効性を評価する方法。
【請求項12】
多発性硬化症の処置の有効性を評価する方法であって、
(a)抗MS剤で処置する前に患者から取られた第一の生物サンプル中における、1または複数の異常調節遺伝子および1または複数の逆調節遺伝子の発現レベルを測定し、
ここに、前記異常調節および逆調節遺伝子は、インターフェロンβ-1Bの導入に対する応答を示す、
(b)抗MS剤での初期処置後に患者から取られた少なくとも第二の生物サンプル中の異常調節遺伝子および逆調節遺伝子の発現レベルを測定し、次いで
(c)第二の生物学的サンプル中の異常調節および逆調節遺伝子の発現レベルを、第一の生物学的サンプル中の異常調節および逆調節遺伝子の発現レベルと比較することを含み、
ここに、第一の生物サンプル中の異常調節または逆調節遺伝子の発現レベルと比較した第二の生物サンプル中の異常調節または逆調節遺伝子の発現レベルの変化が、処置の有効性を示すことを特徴とする方法。
【請求項13】
異常調節および逆調節遺伝子の発現レベルの変化が、MRI、再発率、病気の進行、および障害スコア(EDSS)などの測定可能な臨床応答と関連するパターンを作出し、該パターンが統計的手法を用いて測定される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
異常調節遺伝子が、表3にリストされている遺伝子から選択される、請求項12記載の方法。
【請求項15】
逆調節遺伝子が、表2にリストされている遺伝子から選択される、請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記生物サンプルが、血液、尿、骨髄、および生検サンプルからなる群から選択される、請求項12記載の方法。
【請求項17】
多発性硬化症の処置に有用な化合物を同定する方法であって、
(a)1または複数の異常調節遺伝子および1または複数の逆調節遺伝子の発現レベルを分析し、ここに、前記異常調節および逆調節遺伝子は、化合物の処置前の細胞または組織サンプルにおいて、インターフェロンβ-1Bの導入に対する応答を示し、次いで
(b)化合物での処置後の細胞または組織サンプルにおける異常調節および逆調節遺伝子の発現レベルを分析することを含み、
ここに、異常調節および逆調節遺伝子の発現レベルの変動が薬物の有効性を示すことを特徴とする方法。
【請求項18】
インターフェロンβ-1Bの導入に対する患者応答における中和抗体を検出する方法であって、
(a)1または複数の異常調節遺伝子と1または複数の逆調節遺伝子の発現レベルを測定し、
ここに、前記異常調節および逆調節遺伝子が、抗MS剤で処置する前の患者から取られた第一の生物サンプル中において、インターフェロンβ-1Bの導入に対する応答を示し、
(b)少なくとも抗MS剤での初期処置の後の患者から取られた第二の生物サンプル中の異常調節遺伝子および逆調節遺伝子の発現レベルを測定し、次いで
(c)第二の生物学的サンプル中の異常調節および逆調節遺伝子の発現レベルを、第一の生物サンプル中の異常調節および逆調節遺伝子の発現レベルと比較すること、
を含み、
それにより、中和抗体活性が、インターフェロンβ-1Bの有効性を減少させたか、または薬物の有効性に影響を与えなかったかを決定することができることを特徴とする方法。
【請求項19】
インターフェロンβ-1Bの導入に際して差別的に発現する特定の遺伝子のセットの発現プロファイルを含み、MRI、再発率、病気の進行および障害スコア(EDSS)などの測定可能な患者の臨床反応との相互の関連づけに有用であることを特徴とする遺伝子発現フィンガープリント。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2013−505001(P2013−505001A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527940(P2011−527940)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/057196
【国際公開番号】WO2010/033624
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(503106111)バイエル・ヘルスケア・エルエルシー (154)
【Fターム(参考)】