説明

臨床分析における誤ったサンプル採集を検出するための自動的方法および装置

誤った抗凝血剤を用いて採集された生物サンプルを後続の分析検査のために特定する方法。本方法は、実質的にまたは部分的に悪影響を受ける特定の分析検査結果の特定も可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2007年12月20日に出願された米国仮出願第61/015,582号に対する優先権を主張する。同文献の全開示内容をここに参考のため援用する。
【0002】
本発明は、臨床分析におけるサンプル採集の装置/方法に主に関し、より詳細には、誤ったサンプル採集を回避および検出するための装置/方法に関する。
【背景技術】
【0003】
臨床化学研究室の分野において、特定の血液検査および分析を信頼性を以て行うためには特定の保存剤を用いる必要があることが周知である。その主な理由として、血液の凝固速度が比較的速く、また、特定の血液検査試薬の場合、混合目的のために血液サンプルを流体状態にしておくことが必要なためである。別の理由として、いくつかの血液分析器の基礎を成す流体系中の血液を流体状態で保持しておくことで、導管およびチャンバの閉塞を回避し、検査完了後にサンプルを検査用チャンバから効果的に洗浄することが可能になるためである。いくつかの抗凝固試薬が利用可能であり、これらの試薬は、自然の凝固過程を多様な周知の様式で阻害抑制する。例えば、凝固カスケードの一部としてカルシウムイオンが必要であるため、採集時に過量のエチレンジアミン4酢酸(EDTA)を血液サンプルに付加することにより、前記EDTAとの配位により前記カルシウムイオンを封鎖することができ、これにより凝固を回避する。臨床化学分野においてよく周知のように、特定の血液検査に適した抗凝血剤は、特定のものしかない。
【0004】
ユーザ(例えば、看護師、医師、瀉血専門医)が臨床的観点から特定の血液検査または一連の血液検査が必要であると判断した場合、前記ユーザは、適切な採集デバイスを選択する。サンプル採取を指先穿刺を用いて(例えば、ランセットにより)行う場合、この採集デバイスは典型的には被覆毛細管である。より典型的には静脈穿刺が用いられ、針を静脈に穿刺し、前記針の他端は真空採血管と噛合されている。これは通常、着色ストッパ付きの真空管であるバキュテイナ(登録商標)を用いて行われる。前記真空管中には、血液サンプル安定化のための試薬または保存剤も含まれており、例えば、ヘパリン塩、キレート剤(例えば、EDTA)または他の何らかの抗凝血剤物質が含まれ得る。該ストッパの色は一般的には、当該管中の抗凝血剤試薬の特定のためのみに用いられ、例えば、緑色のストッパはヘパリンを表し、紫色はEDTAを表すといった具合である。ユーザは一般的には所与の検査セットに対して正しい管を選択する経験を豊富に持つものの、それでも、管の選択を誤る可能性が未だにある。なぜならば、ユーザ(典型的には看護師が多い)は多忙であり他にも完了すべき業務を沢山持つため、あらゆる所与の業務を中断する場合があり得る。バキュテイナ(登録商標)の詳細については、http://en.Wikipedia.org/wiki/Vacutainerを参照されたい。施設によっては、過誤防止のために、採血管メーカーを一社に統一しているところも実際にある。
【0005】
このような採血管選択における過誤を捕獲するために研究室検査分野において広く採用されている間接的戦略として、所与の血液検査において報告可能範囲を設定し、個々のサンプル分析が前記報告可能範囲外である場合、該分析器内のアルゴリズムがそのことをマーカーで示すか、または、前記検査結果を別様に報告不可つまり範囲外として特定する。しかし、所与の検査結果が不正確なサンプル採集に基づいていない場合であっても、当該検査結果を分析システムによって報告不可としてマーカーで示す理由は他にも多くある。そのような理由を挙げると、センサつまり検出手段が、例えば、以下の理由(すなわち、洗浄サイクルが不完全、温度変動が事前設定範囲外、較正の不良および試薬の期限切れ)のうちの1つもしくは複数の理由に起因して仕様通りに動作していない可能性がある。当業者であれば、これらは可能性のある理由のうちの数例に過ぎないことを認識する。これらのうちには、間違った抗凝血剤を用いてサンプル採集を行う可能性も含まれる。しかし、先行技術のシステムの場合、後者の理由を特定の理由として隔絶し、ユーザに対してこの理由を明示的に特定するための手段は得られない。
【0006】
当該分野の現状を確認する目的のための、EDTAサンプルを意図的に先行技術の電解質分析器具(例えば、i−STAT(登録商標)および放射計)で分析する実験において、カリウム結果およびカルシウム結果のみが、これらの結果が範囲外となるはずであると予測された通り、抑制される。先行技術器具によって提供された他の検査結果(例えば、pO、pH、pCOおよび乳酸塩)のどれも異常としてマーカーで示されたものはまったく無く、また、誤った種類の採集デバイスが用いられた旨を示す器具も無かった。
【0007】
これらの分析器からの応答は、患者の健康および福祉に対して大きな影響を与え得る臨床的決定を下すために用いられることが多いため、血液分析の失敗の特定の原因(とりわけ、原因が不正確なサンプル採集方法の使用である場合)を見分ける能力を統合する血液分析システムの必要性が残っている。さらに、センサ性能に対してはあまり顕著な影響を及ぼさずかつ典型的には不正確な抗凝固に起因するものとして認識されている微妙な効果も特定する必要がある。本発明は、先行技術におけるこれらの欠陥を改善し、所与の検査セットに対する不正確なサンプル採集についてユーザに対して警告する自動的手段を提供するものである。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、血液サンプルの採血管中への採集が意図する血液分析において不適切である場合に、前記血液サンプルの分析における病院過誤を検出および回避するための、向上した手段を提供することを意図する。開示される方法は、不正確な種類の採血管から入手された結果が臨床的に有効な結果として報告されないことを保障するための簡単かつ有用な手段を提供する。加えて、本発明は、前記誤った採集デバイス内へのサンプル採集という特定の原因をユーザに対して警告する手段を提供する。その後、前記ユーザに対し、分析システムとして具現化された本発明の手段により、正しいサンプリングデバイスまたは方法について指示を与えることができる。その後、前記分析サイクルをこのデバイスまたは方法を用いて繰り返すことができる。
【0009】
本発明は研究室ベースの臨床化学検査において有用であるが、ポイントオブケア、ベッドサイド検査、緊急治療室、医師の事務所、クリニック、血液バンク、手術室、研究室または養護施設における検査、遠隔検査(例えば、クルーズ船またはMASHユニット)、およびモバイル検査(例えば、救急車におけるもの)において、特に有用である。ポイントオブケア検査(ニアペイシェント検査およびベッドサイド検査とも呼ばれる)と同様にサンプル採集および検査または分析の実施が同一場所において行われる分析システムにおいて本発明を具現化すると、特に有用である。しかし、本発明は、臨床的検査用研究室の他にも、任意の研究室(その例を非限定的に挙げると、研究用研究室または政府研究室がある)においても使用可能であることが理解される。
【0010】
本発明は、分析システムによって特定の検査の値を記録し、前記誤ったサンプル採集デバイスを特定するためのアルゴリズムを提供することにより、採血管中の誤った血液保存剤の存在を自動的に特定することに特に関する。これは、前記検査を行う際に用いられる多様な検出手段(例えば、センサ)の出力署名を分析することにより、行われる。前記アルゴリズムを用いることにより、誤った結果をマーカーで示すことができる一方、正しい保存剤を用いた検査実行を通過させる。前記分析システムを用いて複数検査の組み合わせをサンプルに実行し、これらの検査のうちいくつかのみが特定の保存剤による悪影響を受ける場合、前記アルゴリズムは、これらの影響を受ける検査のみをマーカーで示し、その他の検査について良好な結果を表示することができる。必要に応じて、前記分析器は、正しい種類の採集デバイスまたは抗凝血剤について前記ユーザに注意喚起するメッセージを表示する。
【0011】
本発明の目的は、サンプル中の検体種の分析のための血液サンプルの採集において、抗凝血剤を有する採集デバイスが不正確に使用されていることを決定するための自動的方法を提供する。前記方法において、前記サンプルのための前記正しい採集デバイスは、選択された抗凝血剤を除外する。前記方法は、(a)サンプルを採集デバイスから一価イオンおよび二価陽イオンおよび少なくとも1つの他の検体を含む種を分析する手段を有する分析器具へ付加するステップと、(b)前記サンプル中の一価イオン、二価陽イオンおよび1つもしくは複数の他の検体の濃度を決定するステップ、(c)前記一価イオン濃度を所定の上限閾値とそして前記二価陽イオン濃度を所定の下限閾値と比較するステップであって、前記閾濃度値をどちらとも上回る場合、前記分析器具は、前記サンプル中の前記一価イオン、二価陽イオンおよび前記他の検体種のうち1つもしくは複数についての濃度値を用いるべきはないと報告する、ステップと、(d)前記分析器は、前記サンプルが前記誤った抗凝血剤を用いて採集されたことを報告する、ステップとを含む。
【0012】
本発明のさらなる目的は、サンプル中の検体種の分析のための血液サンプルの採集において、抗凝血剤を有する採集デバイスが不正確に使用されていることを決定するための自動的方法を提供する。前記方法において、前記サンプルのための前記正しい採集デバイスは、選択された抗凝血剤を除外する。前記方法は、(a)サンプルを採集デバイスから二価陽イオンおよび少なくとも1つの他の検体を含む種を分析する手段を有する分析器具へ不可するステップと、(b)前記サンプル中の二価陽イオンおよび1つもしくは複数他の検体の濃度を決定するステップと、(c)前記二価陽イオン濃度を所定の下限閾値と比較するステップであって、前記閾濃度値を上回る場合、前記分析器具は、前記サンプル中の前記二価陽イオンおよび前記他の検体種のうち1つもしくは複数についての濃度値は使用すべきではないことを報告する、ステップと、(d)前記分析器は、前記サンプルが前記誤った抗凝血剤を用いて採集されたことを報告する、ステップとを含む。
【0013】
本発明のさらなる目的は、陽イオン塩のカルシウム結合剤を含む採集デバイスにおける、1つもしくは複数のイオン種の測定のための血液サンプルの誤った採集を特定する方法を提供することである。前記方法は、採集デバイスから血液サンプルを取り出すステップと、前記サンプル中の陽イオン濃度を上限閾値に対して決定するステップと、前記サンプル中のカルシウムイオン濃度を下限閾値に対して決定するステップと、前記陽イオン濃度が前記上限閾値を上回りかつ前記カルシウム濃度が前記下限閾値を下回る場合、前記血液サンプル中の前記陽イオン、カルシウムおよび少なくとも1つの他の測定されたイオン種の報告をマーカーで示すまたは抑制するステップと、1つもしくは複数の他の選択されたイオン種の測定の目的のためには、採集デバイスの種類は血液サンプル採集用として不適切であることを報告するステップとを含む。
【0014】
本発明のさらなる目的は、第1種の信頼性のある測定に対して不適合である試薬を含む採集デバイスにおいて、前記第1種の測定における生物サンプルの誤った採集を特定する方法を提供することである。前記方法は、採集デバイスからサンプルを取り出すステップと、前記サンプル中の第2種の濃度を閾値に対して決定するステップと、前記第2種の濃度が前記閾値を超える場合、前記第1種および第2種の測定濃度の報告をマーカーで示すまたは抑制するステップと、前記第1種および第2種の測定用のサンプル採集用として採集デバイスの種類が不適切である疑いがある旨を報告するステップとを含む。
【0015】
本発明のさらなる目的は、第1種の信頼性のある測定に対して不適合である試薬を含む採集デバイスにおいて、少なくとも1つの種の測定における生物サンプルの誤った採集を特定する方法を提供することである。前記方法は、採集デバイスからサンプルを取り出すステップと、前記種それぞれに対する閾値について、前記サンプル中の他の複数の種の濃度を決定するステップと、前記複数の種それぞれの濃度が前記閾値を超える場合、前記複数の種および前記少なくとも1つの種の測定濃度の報告をマーカーで示すまたは抑制するするステップと、前記少なくとも1つの種および前記複数の種の測定用のサンプル採集用として、採集デバイスの種類が不適切である疑いがある旨を報告するステップとを含む。
【0016】
本発明のさらなる目的は、イオン種分析のための血液サンプルの収集において採集デバイスが不正確に使用されたことを決定するための自動的方法を提供する。前記方法は、二価陽イオンを含むイオン種を分析する手段を有する分析器具へサンプルを採集デバイスから付加するステップと、前記サンプル中の前記二価陽イオンおよび1つもしくは複数の他のイオン種の濃度を決定するステップと、前記二価陽イオン濃度を所定の閾値と比較するステップであって、前記閾濃度値を上回る場合、前記分析器具が、前記サンプル中の前記二価陽イオンおよび1つもしくは複数の他のイオン種についての濃度値を用いるべきではない旨を報告し、前記サンプルが前記誤った抗凝血剤を用いて採集された旨を報告する、ステップとを含む。
【0017】
本発明のさらなる目的は、誤った抗凝血剤を用いて不正確に採集された血液サンプルを、正しい抗凝血剤を用いて採集されたサンプルから見分けるための自動検体検査方法を提供することである。前記方法は、(a)採集されたサンプルを、サンプル中の少なくとも2つの検体の濃度を決定する手段を有する分析器具内に導入するステップと、(b)第1検体および前記サンプル中の1つもしくは複数の他の検体の濃度を決定するステップと、(c)前記第1検体濃度と、所定の閾値とを比較するステップと、(d)前記閾濃度値を上回らない場合、前記分析器具が、前記第1検体および前記サンプル中の1つもしくは複数の他の検体についての濃度値を報告するステップと、(e)前記閾濃度値を上回る場合、前記分析器具は、前記第1検体および前記サンプル中の1つもしくは複数の他の検体についての濃度値を使用すべきではない旨を報告し、前記サンプルが前記誤った抗凝血剤を用いて採集された旨を報告するステップとを含む。
【0018】
本方法は、二価陽イオン(とりわけ、カルシウムおよびマグネシウム)用のセンサを用いて不適切な抗凝固プロトコルを特定する際に、特に有用である。例えば、センサ出力を分析アルゴリズムに連結し、前記二価陽イオンセンサをカルシウム用とし、前記アルゴリズムにより、濃度閾値を約0.25mM未満に設定する。ここで、前記分析システムは、いくつかの他のイオン種(例えば、マグネシウム、塩化物、重炭酸塩、カリウム、ナトリウム、リチウム、アンモニウムおよび水素イオン)の検査をする。
【0019】
本方法は、以下のようなEDTA採集デバイスの特定において、特に有用である。すなわち、前記デバイスは、EDTAを含む管であり、前記管には、前記管への侵入を密封するストッパが設けられ、前記管の内部は不完全真空状態になっている。加えて、本方法は、検査管、シリンジおよび毛細管を含むEDTAを含む他の採集デバイスの特定にも使用可能であり、前記検査管、シリンジおよび毛細管を構成する材料がポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリエチレンナフタレートポリビニル塩化物、ガラス、または他の材料であるかを問わない。
【0020】
本方法は、1つもしくは複数の再利用可能センサを備えた研究室用分析器を含む分析器具において適切であり、また、前記分析器具が1つもしくは複数の使い捨て用検査カートリッジと共に用いられる分析器を含む場合にも適している。さらに、これらの使い捨て用検査カートリッジは、1つもしくは複数のセンサを含み得る。
【0021】
前記二価陽イオン濃度の決定をセンサによって行う場合、イオン選択電極、オプトード、炎光光度計、イオン感受性染料および二価陽イオン依存型酵素分析を全て用いることができる。分析化学および分析生化学の分野の当業者にとって、他の検出手段が明らかである。しかしながら、前記方法は典型的には、電気化学的検出手段、(例えば、カルシウムイオン選択電極、または必要に応じてマグネシウムイオン選択電極)を用いるものとして考えられる。
【0022】
他の種のイオン濃度の決定をセンサによって行う場合、イオン選択電極、オプトード、炎光光度計、イオン感受性染料および二価陽イオン依存型酵素分析を全て用いることができる。分析化学および分析生化学の分野の当業者にとって、他の検出手段が明らかである。本方法は典型的には、イオン選択電極を有する電気化学的検出法を用いて、これらの他のイオン(例えば、カルシウム、マグネシウム、塩化物、重炭酸塩、カリウム、ナトリウム、リチウム、アンモニウムおよび水素)を測定すると考えられる。
【0023】
前記方法において報告ステップが用いられる場合、これは一般的には、分析器具上の表示画面あるいは音声警告またはメッセージによって行われ、前記分析器は一般的には、ポイントオブケアの場所、(例えば、救急科、手術室、医師の事務所および救急車)に配置される。
【0024】
典型的には、前記開示される方法用に企図されるサンプル種類は不希釈全血であるが、当該サンプル種類は他にも血漿、血清ならびにこれら全ての希釈サンプルおよび修正サンプルであってもよい。
【0025】
前記方法において閾値が使用される場合、カルシウム閾値については一般的には約0.001mM〜約0.3mMの範囲の値が選択され、カリウム閾値については一般的には約8mM〜約20mMの範囲の値が選択される。ナトリウム閾値を用いる諸方法の場合、これは一般的には約160mM以上である。
【0026】
当業者であれば、検体(例えば、イオン種)の測定値が単独で閾値を超える場合に前記測定値を抑制またはマーカーで示すことが広範に用いられていることを認識する。しかしながら、本方法は、単独では必ずしも閾値を超えてはいないが抑制またはマーカーで示す対象とすべき他の測定種を体系的に特定する手段を開示する。加えて、本方法は、所与の検査または検査セットについて誤った抗凝固プロトコルを用いて採集された血液サンプルを特定し、当該原因をユーザに対して特定する自動的手段を提供する。
【0027】
当業者であれば、前記開示される方法は一般的には、EDTAによるサンプルの誤った採集の特定を対象とするが、これらの方法は、適切な改変により、任意の当該分野において開示されている抗血液凝固剤(その例を非限定的に挙げると、EDTAの塩(例えば、KEDTA、KEDTA、およびNaEDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)およびその塩、シュウ酸およびその塩(例えば、シュウ酸カリウム)、クエン酸およびその塩(例えば、クエン酸三ナトリウム)、フッ化物(例えば、フッ化ナトリウム)、非平衡化ヘパリン(例えば、ナトリウムヘパリン)、およびそれらの組み合わせがある)を用いたサンプル採集にも適用可能であることを理解する。さらなる抗凝血剤が、当業者にとって公知であるはずである。よって、本方法は、患者サンプルに関する高品質の結果を提供するという有用な進展を臨床化学分野において提供する。
【0028】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明を添付図面と共に参照すれば、明らかとなる。これらの図面は、本発明の実施形態の多様な特徴を例示的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明およびその付随する利点のより完全な理解については、以下の詳細の説明を添付図面と関連して参照すればより容易に理解されるため、容易に得られる。
【図1】誤った検査結果をマーカーで示すための先行技術によるアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図2】本発明の例示的実施形態による、サンプルがEDTAを用いて不正確に採集されている場合において、望ましくないATEを示す検査結果をマーカーで示すことが可能な新規のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図3】本発明の例示的実施形態による、サンプルがEDTAを用いて不正確に採集されている場合において、望ましくないATEを示す検査結果をマーカーで示すことが可能な新規のアルゴリズムのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
誤ったサンプル採集を回避および検出するためのシステムおよび方法が開示される。前記システムおよび方法は、i−STAT(登録商標)ポイントオブケア血液検査システムに基づき、このシステムでは、1つもしくは複数の血液検査を行うためのセンサを備えた使い捨てカートリッジが用いられる。これらのカートリッジは、ポータブル分析器を用いて動作される。前記ポータブル分析器は、検査結果および他の情報をユーザに提供するためのディスプレイを有する。i−STAT(登録商標)システムについては、i−STAT(登録商標)System Manual(2007)(Abbott Point of Care、East Windsor、NJ)中に詳細に記載がある。本明細書中、同文献全体を援用する。当業者であれば、前記開示された方法は、ポイントオブケア拠点および中央研究室の双方において用いられる他の血液検査システムにも適合可能であることを認識する。また、前記開示された方法は、他のハンドヘルド分析器または検査カートリッジおよびポータブル臨床的分析器の組み合わせ(その例を非限定的に挙げると、先端生命科学技術を用いたもの、および利用可能であるかまたは利用可能となり得るもの)に適合可能であることが理解される。
【0031】
例示的実施形態において、ポイントオブケア血液分析システムは一般的には、血液検査(その例を非限定的に挙げると、電解質、血液ガス、化学的性質、凝固、血液学、グルコースおよび心臓マーカーがある)を行う再利用可能な読取装置に基づく。ポイントオブケア血液分析システムは、使い捨てカートリッジを用いて血液検査を行う。前記使い捨てカートリッジは、(i)分析エレメント(例えば、微細加工バイオセンサ(例えば、検体(例えば、pH、酸素およびグルコース)を感知する電極)と、(ii)流体エレメント(例えば、前記電極との間での血液サンプルの送受のための導管)と、(iii)較正エレメント(例えば、各検体の既知の濃度で前記電極を標準化するための液体)とを含む。前記読取装置は、前記電極の動作(例えば、測定実行および演算実行)のための電子機器およびアルゴリズムを含む。前記装置はまた、結果を表示し、必要に応じてコンピュータワークステーションを介して、これらの結果を研究室および病院情報システム(LIS、HIS)に通信する能力も有する。前記リーダとワークステーションとの間の通信は、多様な手段(例えば、赤外線リンク)を介して、前記ワークステーションと研究室情報システムとの間でハードワイヤ接続または他の類似の手段を介して行われる。電子機器分野および通信分野の当業者であれば、必要に応じて他のデータ送信手段(例えば、多様な無線プロトコル)を使用できることを認識する。
【0032】
感知電極、測定方法、使い捨て用カートリッジおよびリーダ(分析器および器具とも呼ばれる)の一般的分野におけるいくつかの技術について、共有されているi−STAT(登録商標)特許中に開示があり、当該特許をここに参考のため援用する:米国特許第5,112,455号、米国特許第5,096,669号、米国特許第5,212,050号、米国特許第5,200,051号、および米国特許第5,447,440号。さらなる背景情報については、i−STAT(登録商標)System Manual(Abbott Point of Care、East Windsor、NJ)中に記載がある。
【0033】
本発明では、当該生理学的サンプルが血液、血漿または血清(試薬修正形態および希釈形態を含む)であるシステムについて主に説明するが、本発明は、他の生物材料(その例を非限定的に挙げると、尿、唾液、膣、糞便、気管支および胃分泌物)の分析にも適用可能である。前記使い捨て診断デバイスは、例えば、尿分析デバイス、唾液分析デバイス、および口腔粘膜検体採取分析デバイスを含み得る。
【0034】
本出願において、「血液」および「全血」という用語は交換可能に用いられ、採血されたばかりの血液を指す。このような血液はバキュテイナ内に採血され得、抗凝血剤を含み得、またはこのような血液に、臨床分析の最中に1つもしくは複数の標準的な臨床薬が付加され得る。
【0035】
前記血液サンプルは、ヒトの動脈、静脈または毛細血管源または動物のそれらから採取され得る。
【0036】
本明細書中用いられる「検体」という用語は、測定可能な質のために表される成分を指す。
【0037】
「保存剤」および「抗凝血剤」という用語は、本明細書中交換可能に用いられ、細胞の凝固の回避を指す。当業者であれば、多くのバキュテイナ(登録商標)血液採血管がリチウムおよびナトリウムヘパリンを含み得ることを理解する。他の管(例えば、血液採血管)は、凝固促進剤(例えば、ナトリウムポリアネトールスルホネート)を含み得る。
【0038】
単数形である「一つの(a)」、「一つの(an)」および「その、該、当該、前記(the)」を用いた場合、文脈から明らかに違う場合を除いて、複数についても言及している。
【0039】
別様に定義が無いかまたは文脈から明らかに違う場合を除いて、本明細書中用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者の一員が一般的に理解するような意味を有する。
【0040】
上記したように、本発明の例示的実施形態は、使い捨て用検査用デバイスまたはカートリッジにおいて感知手段が設けられた、当該分野において公知の他の分析システムにも適用可能である。これらの分析システムを挙げると、電気化学的原理(例えば、電位差測定法、アンペロメトリーおよび伝導度測定法)に基づいたシステムおよび検査システム(典型的には電極、修飾電極、イオン選択電極、酵素電極、免疫電極、帯状電極、バイオセンサ、免疫センサなどと呼ばれる)がある。これらの分析システムはまた、光学的方法(例えば、濁度検出、または1つもしくは複数の選択波長における吸光度、エバネッセンス、蛍光、発光、導波管、反射率等)に基づくものも含む。これらのデバイスでは、少なくとも検査サンプルが各デバイス内の検査領域に送達されかつ当該前記デバイスが読取装置と共に動作される範囲までは、i−STAT(登録商標)システムに対して類似の流体を用いることができる。よって、本発明は、患者ケアの拠点、(例えば、手術室、緊急治療室および医師の事務所)において用いられるこれらのシステムにおいても、主にかつ非排他的に適用可能である。
【0041】
例示的実施形態において、前記リーダは一般的にはハンドヘルド型のもの、ポータブル型のもの、または卓上に小さな設置面積を有するものであり得る。前記リーダは、所望であればベッドサイドの場所まで容易に移動させることができるように、独立型(すなわち、電池式)であることが望ましい。しかし、前記リーダを主電源に取り付けてもよいし、あるいは、主電源に取り付けられた電池充電器に断続的に取り付けてもよい。
【0042】
ポイントオブケア血液検査システムの主要な価値の1つとして、患者の血液サンプルを検査のために中央研究室まで時間をかけて送る必要性が無くなる点がある。これらのシステムの操作は十分に容易であり、看護師は、ベッドサイドにおいて、研究室における結果に相当する質の信頼性のある定量的分析結果を得ることができる。好適な実施形態において、前記看護師は、必要な一連の検査と共にカートリッジを選択し、血液サンプルを採取し、前記サンプルを前記カートリッジ内に計量分配し、前記カートリッジを密封し、前記カートリッジを前記読取デバイスに挿入する。その後、前記読取デバイスは検査サイクル(すなわち、検査結果を成功裏に生成するために必要なその他の全ての分析ステップ)を行う。このような簡単な作業を通じて、医師は、患者の生理学的状態についての洞察をより迅速に得ることができる。加えて、評価時間が低減することにより、医師は適切な治療についてより迅速に決定することができ、これにより、患者の予後回復の可能性を向上させることができる。
【0043】
緊急治療室および病院内の他の救急処置場所において、個々の患者にとって必要な血液検査の種類は異なることが多い。そのため、ポイントオブケアシステムは一般的には、異なる血液検査メニューを備えたさまざまな使い捨てカートリッジを提供する。ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、重炭酸塩、酸素分圧(pO)、二酸化炭素分圧(pCO)、pH、グルコース、ヘマトクリット、ヘモグロビン、アンモニウム、乳酸塩、血中尿素窒素(BUN)およびクレアチニンに関する検査の他に、他の検査を挙げると、プロトロンビン時間(PT)、PT/INR、活性凝固時間(ACT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、ヘモグロビンA1C、ヘパリン抗Xa、血液培養、トロポニンI、トロポニンT、クレアチンキナーゼMB(CKMB)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、NTproBNPおよびC反応性タンパク(CRP)がある。当該分野において周知のように、いくつかの他のパラメータ(例えば塩基過剰(BE)、アニオンギャップ、および酸素飽和パーセンテージ(%Osat))をこれらの検査結果から計算することができる。これらの検査は、いくつかの組み合わせにおいて提供可能であり、使い捨て用デバイス(例えば、使い捨てカートリッジ)としてユーザに提供される。例えば、i−STAT(登録商標)システムは、病院に対し、1種類から8種類以上の血液検査メニューを備えた10種類を超えるカートリッジを提供する。これらの検査メニューは、各検査が所与の抗凝血剤と適合可能でありかつ製造物から製品カタログにおいて所与の抗凝血剤または抗凝血剤オプションが分かるように、構成される。検査において異なる抗凝血剤が必要な場合、これらの異なる抗凝血剤は別個のカートリッジ中に設けられ、製品カタログ中に、各カートリッジに適した抗凝血剤が示される(例えば、凝固検査には3.2%のクエン酸塩濃度が適している)。
【0044】
その結果、所与のユーザ(例えば、病院)は、複数種類のカートリッジを用い得、各ポイントオブケア検査場所において、検査結果の品質(例えば、正しいサンプル採集プロトコル)を保証する必要があり得る。これらの場所を挙げると、例えば、緊急治療室(ER)、重症管理室(CCU)、小児集中治療室(PICU)、集中治療室(ICU)、腎臓透析室(RDU)、手術室(OR)、心臓血管手術室(CVOR)および一般病棟(GW)がある。あるいは、前記ユーザは、医師の事務所、クリニック、研究室、救急車または看護師訪問サービスであり得る。しかしながら、品質を保証する必要性はどこの場所でも同様である。
【0045】
本発明の一例において、抗凝血剤KEDTA(トリ−カリウムエチレンジアミン4酢酸)を用いた採血管がi−STATシステムのEG7+カートリッジの作動において不正確に用いられる状況を考える必要がある。前記EG7+カートリッジは、以下の検査メニュー(すなわち、K、Na、iCa、pH、pCO、pOおよびヘマトクリット)を有し、全ての検査は、電気化学的な感知原理に基づく。ここで前記EG7+カートリッジについて説明した同じ考慮内容が、以下のメニュー(すなわち、ヘマトクリット、Na、K、イオン化カルシウム(iCa)、pH、pCO、pOおよびグルコース)を有するi−STAT(登録商標)CG8+カートリッジ、メニュー(すなわち、ヘマトクリット、Na、K、iCa、Cl、TCO(全炭酸ガス)、クレアチニン、BUN、グルコース)を有するi−STAT(登録商標)CHEM8+カートリッジ、および以下のメニュー(すなわち、K、Na、Cl、BUN、グルコースおよびヘマトクリット)を有するi−STAT(登録商標)EG+カートリッジにも適用される点に留意されたい。加えて、当該管内にKEDTAまたはKEDTAが含まれるかに関係なく、同じ考慮内容が適用される。KEDTAは液体であり、前記サンプルを約1〜2%希釈するのに対し、KEDTAは管の壁上で噴霧乾燥され、前記サンプルを希釈しない。後者(EDTAあたり2個のカリウムイオン)は現在一般的には、臨床的分析における抗凝固目的のための好適なEDTA塩となっている。
【0046】
例示的実施形態によれば、KEDTAは抗凝血剤である。KEDTAの存在により、血液サンプルに対していくつかの効果が得られる。すなわち、サンプル中に自然に存在するカリウムが、(KEDTA中の)EDTAと結合したカリウムにより増大する。前記カートリッジ中のカリウムイオンセンサは2つの異なるカリウム源を見分けることができないため、患者サンプルの検査値が不正確に上昇する。通常の患者カリウム値は約4mMであるのに対し、前記付加されたEDTAと結合したカリウムの存在のより、測定値が一般的に約9mMを超える点に留意されたい。この値は異常値であり、ヒトのサンプル中に生理学的に見られる値をはるかに超えている点に留意されたい。先行技術によるi−STAT(登録商標)システムの動作モードにおいて、この値は報告可能範囲外であるため、リーダディスプレイ上でマーカーで示される。また、この値は、他の種類のシステムエラー(例えば、カリウムセンサが仕様通りに機能していない、または溶血によりサンプルが損なわれた)も示し得る。表1は、i−STAT(登録商標)システムによって検査された検体の報告可能範囲を示す。
【表1】

【0047】
EDTAが血液サンプルに対して持つ別の効果として、EDTAと、前記血液サンプル中の本質的に全ての二価金属イオン(とりわけ、イオン化カルシウムおよびマグネシウム)とを結合させる点がある。その結果、サンプルのカルシウム測定値は0.1mM未満かまたは本質的にゼロとなる。この値もやはり非生理学的値であり、前記報告可能範囲(表1を参照)から外れている。この結果は、先行技術によるi−STAT(登録商標)システム上で、抑制またはマーカーで示されることとなる。上記したカリウムに関する同じ論法が適用される。なぜならば、前記のマーカーで示された結果の原因は必ずしも誤った抗凝血剤に起因するものではなく、内在的なセンサまたはシステムエラー、または他の分析前エラー(例えば、溶血)に起因するかもしれないからである。
【0048】
例1
表2は、i−STATCHEM8+検査カートリッジに関するデータを示す。このデータは、各検査のための、EDTA、リチウムヘパリンおよび抗凝血剤の不使用を使用した計算値、および許容可能な総エラー量(ATE)を含む。通常ポイントおよび臨床的決定ポイントにおけるATE値を示している。
【0049】
例2
本発明に繋がる見解が得られたのは、上記と同じサンプルを採集し、正しい採血管内で(すなわち、1つは抗凝血剤無しでまたは1つはリチウムヘパリン(LiHep)と共に)検査し、また、表2に示すようにKEDTA、KEDTA、NaEDTA、クエン酸三ナトリウム、ならびにシュウ酸カリウムおよびフッ化ナトリウムの混合物を含む不正確な採血管内においても検査をした。前記CHEM8+検査カートリッジメニューを含むその他の検査のうちいくつかについて、驚くべき結果を表2中に記録した。各検査について、これらの結果をATEおよび1/2ATEを共に表2中に示す。
【表2】

【0050】
検体に関するATE上限は一般的には、臨床検査改善法(CLIA)から得ている点に留意されたい。精度ガイドラインとして、真の結果を前記ATE値よりも少ない値でバイアスがけした結果を、患者の安全性に対する受容可能な危険性と関連付ける。市販のシステム(例えば、i−STAT(登録商標)システム)は一般的には、プロトコルの調査のため、より厳しい1/2ATE基準を適用している。表2は前記通常ポイントおよび臨床的決定ポイントにおけるATE値を示す。バイアスが1/2ATEよりも大きい検査については、影付きボックスで示している点に留意されたい
【0051】
EDTA塩について、表2中のCHEM8+検査カートリッジの検査結果を複合的に見ると、グルコース結果、TCO結果およびクレアチニン結果のみが完全に無影響であることが分かる。Na、pHおよびヘマトクリットについては、EDTA塩の存在により若干低い値が観察され、pO、pCO、BUNおよび塩化物については、部分的に上昇した値が観察された。重要なことに、これらの値は全て、通常予測される値の範囲内に良好に収まった。その結果、前記差に起因して所与の検査が上記したようなATEから外れるか否かを決定する必要がある。ここで説明したアルゴリズムについて、先行技術による典型的なアルゴリズムを図1に示す。図1は、誤った検査結果をマーカーで示すための先行技術アルゴリズムを示し、この先行技術アルゴリズムでは、直接影響を受ける検査のみをマーカーで示す。前記先行技術によるi−STAT(登録商標)システムの場合、これらの結果のうちのどの結果も事前に抑制していなかったが、図2および図3に示す新規のアルゴリズムの場合、EDTAの不正確な使用に起因して受容不可能なATEが発生する検査については、検査結果を抑制することができる。
【0052】
表2は、前記抗凝血剤であるクエン酸三ナトリウムならびにシュウ酸カリウムおよびフッ化ナトリウムの混合物により、前記1/2ATE基準に基づいて、クレアチニンのみが実質的に影響を受けないことも示している点に留意されたい。同様に、図2および図3中の新規のアルゴリズムは、これらの抗凝血剤に適用可能である。
【0053】
例3
表3は、i−STAT(登録商標)CG8+検査カートリッジについてのデータ(各検査に対する、KEDTAおよびリチウムヘパリンを使用した計算値、許容可能な総エラー量(ATE)を含む)を示す。通常ポイントおよび臨床的決定ポイントにおけるATE値を示している。
【表3】

【0054】
グルコースおよびヘマトクリットのみがEDTAによる影響を受けておらず、図2および図3中のアルゴリズムを用いて、Na、K、iCa、pH、pCOおよびpOに関する結果を自動的に抑制することが可能である点に留意されたい
【0055】
例4
表4は、i−STATEG7+検査カートリッジのデータ(各検査に対する、KEDTAおよびリチウムヘパリンを使用した計算値、許容可能な総エラー量(ATE)を含む)を示す。通常ポイントおよび臨床的決定ポイントにおけるATE値を示している。
【表4】

【0056】
前記どの検査結果もEDTAにより影響を受けておらず、図2および図3中のアルゴリズムを用いて、全ての結果を自動的に抑制できる点に留意されたい。KEDTAとEG7+とのデータの場合、KEDTAとCG8+とのデータの場合よりもヘマトクリット(HCT)に対する影響が大きい点に留意されたい。これは、表2中の前記CHEM8+に関するデータにもあてはまる。このことの起こる原因は、以下の二つの理由のためである:すなわち、(a)KEDTAは液体処方物であるため、希釈効果が発生する、および(b)KEDTAが、KEDTAよりも赤血球をより収縮させる。これは当該分野において周知であり、臨床検査標準委員会H7−3A(Wayne、PA)内に、この点について最も厳然に記述されている。
【0057】
例示的実施形態によれば、EG7+検査カートリッジをEDTAサンプルと共に作動した場合に不正確な結果が報告される危険性を回避するため、前記新規の方法は、以下の機能ステップを行うアルゴリズムを提供する。すなわち、測定されたカリウムが閾値(例えば、9mM)を超えかつ測定されたイオン化カルシウム値が閾値(例えば、0.2mM)を下回る場合、カートリッジ検査についての結果を表示せず、サンプルが誤った抗凝血剤(例えば、EDTA)と共に管中に不正確に採集されている旨を示すメッセージを出す。図3は、この新規のアルゴリズムを模式的に示す。このアルゴリズムは、サンプルがEDTAを用いて不正確に採集された場合の望ましくないATEを示す検査結果をマーカーで示すことができる。
【0058】
マグネシウムイオン(Mg)検査もメニューの一部である場合、この検査もEDTAによる影響を受ける点に留意されたい。その結果、これを前記アルゴリズムの一部として用いることができるが、Mg検査値が前記生理学的範囲を大きく下回る場合、このMg検査値を用いて、不正確な抗凝固手順を示す。報告可能なマグネシウム検査の典型的な基準範囲は、新生児の場合に0.50〜0.90mM、成人の場合に0.65〜1.05mMである。前記開示されたアルゴリズムの適切な閾値は0.2mMであるが、約0.1mM〜約0.3mMの範囲にあり得る。前記iCa検査に加えてまたは前記iCa検査の代わりに前記Mg検査を用いてもよい点にも留意されたい。よって、「Mg結果は閾値を下回りかつおよびK結果は閾値を上回る?」あるいは「iCa結果およびMg結果は閾値を下回りかつK結果は閾値を上回る?」というボックスを含むように図3を修正することができる。
【0059】
例示的実施形態において、カルシウム値が閾値を下回れば十分である。ここで、前記アルゴリズムは、結果を抑制するためのカリウム閾値制限要求を除外する。図2は、この新規のアルゴリズムを示す。このアルゴリズムは、サンプルがEDTAを用いて不正確に採集された場合の望ましくないATEを示す検査結果をマーカーで示すことができる。この第2実施形態の制限は、カルシウムセンサが非生理学的カルシウム値を純粋に測定しているのかあるいは仕様通りに機能していないセンサとなっているだけなのかを明確に見分けることができなければならない、という要件である。カルシウムセンサが後者である場合、カルシウム検査値のみを抑制すればよく、その他の値は信頼性を以て報告することができる。図3に示すアルゴリズムの利点は、ロバスト性がより高い点である。
【0060】
EDTAの誤った使用をユーザに報告するための実際の方法については、フラグ付き表示、結果の抑制、印刷メッセージ、警告画面および警告音またはメッセージを用いて行うことができる。他の類似の方法については、当業者にとって明らかである。
【0061】
本発明の実用性の別の例示的実施形態において、i−STAT(登録商標)システムのユーザがBNP検査カートリッジをCHEM8+と同時に作動させることを望む可能性がある。これらのカートリッジはどちらも、鬱血性心不全が疑われる患者の評価において有用である。前記BNP検査カートリッジはKEDTAを保存剤として必要とするのに対し、CHEM8+はリチウムヘパリンを用いるかまたは抗凝血剤を用いない。その結果、前記ユーザは、サンプルを正しい管中に採集し、前記管とカートリッジとを正しくマッチさせなければならない。前記CHEM8+カートリッジはNa、K、Cl、iCa、TCO、グルコース、尿素、クレアチニンおよびヘマトクリットについての検査を有するため、サンプル採集の際にKEDTAが不正確に使用された場合、図2および図3に示す新規のアルゴリズムはこれを認識し、影響を受ける結果(計算されたアニオンギャップパラメータを含む)全てをマーカーで示すか、または抑制する。
【0062】
例示的実施形態において、本発明は、同一のサンプルまたは同一様式で採集されたサンプルを用いた検査を行っている別の検査システムに対して警告を発する際に本方法が用いられる可能性を考慮する。サンプルをポイントオブケア拠点において検査した後にさらなる検査のために中央研究室へと搬送することは珍しくない。例えば、上記において開示されたアルゴリズムが、特定のサンプルが誤った抗凝血剤によって不正確に採集されていると決定した場合、前記器具は、ポイントオブケア拠点から中央研究室にメッセージを送って、特定されているサンプルが不正確に修正された旨の警告を前記研究室に発することができる。サンプル採血管は典型的には採集ポイントにおいてバーコード付けされ(かつ他の情報を記録し)、これにより、患者を特定し、これにより、前記研究室は、前記研究室に到着した管と特定の警告またはメッセージとのマッチングのための特定手段(バーコードリーダ)を有する点に留意されたい。当業者であれば、ポイントオブケアにおける血液分析に用いられる器具は、データ管理および請求書作成が可能な病院の研究室情報システム(LIS)にリンクされることが多いことを認識する。このような接続性は、従来の有線手段によって提供してもよいし、あるいは、周知のプロトコルを用いて無線的に提供してもよい。この種の情報を別の場所に送信するための他の手段については、データ管理分野の当業者にとって明らかである。
【0063】
報告された結果に関する「マーカーで示す」および「抑制する」と言う用語について説明すると、前記アルゴリズムおよび器具用ソフトウェアは、例えば、特定の検査結果をマーカーで示すことができる(すなわち、この結果を使用可能な結果として報告することができる)が、その結果が理想的条件下で得られたものではない場合、当該結果をマーカーで示すこと、または別の類似の様式で特定することもできる。当該分野における当業者にとって、ATEについての上記記載を鑑みれば、不正確なサンプリング方法が用いられた可能性が有る場合でも、検査結果のうちいくつかは実質的にその影響を受けていないため使用可能であるか、または、影響は少ないため注意すれば使用することが可能な場合がある。抑制という用語については、当該器具が特定の検査濃度値を表示せず、その代わりにアスタリスクまたは他の類似の印を表示して、結果が報告されていない旨を示すことを意味する。
【0064】
表2中に概要がまとめられている本発明の実用性の別の例示的実施形態において、CHEM8+カートリッジが誤って他の異なる抗凝血剤と共に用いられている。この表中のデータは、シュウ酸カリウム/フッ化ナトリウムおよびクエン酸三ナトリウム採血管と共に作動されたカートリッジについての結果を示す。前記シュウ酸カリウム/フッ化ナトリウムを組み合わせた保存剤の場合、ナトリウムを約45mMだけ、カリウムを約24mMだけ増加させ、カルシウムを約0.015mMだけ低減させる効果を有する点に留意されたい。前記CHEM8+メニュー上のその他の検査への効果は、図3に示すアルゴリズムによりマーカーで示される。この文脈において、「iCa結果は閾値を下回りかつNa結果は閾値を上回る?」または「iCa結果はを下回りかつKおよびNa結果は閾値を上回る?」というボックスを含むように図3を修正することができる点に留意されたい。
【0065】
前記アルゴリズム中の閾値については、以下のものが好適である。すなわち、「陽イオンがナトリウムであり、閾値は約160mMを超える」、「陽イオンがカリウムであり、閾値が約9mMを超える」、「カルシウム閾値が約0.25mMであり、陽イオンがマグネシウムであり、閾値が約0.2mMである」。当業者であれば、前記カルシウム閾値は約0.3mM〜約0.001mMの範囲において最良に選択され、前記カリウム閾値は約8mM〜約20mMの範囲において最良に選択されることを認識する。
【0066】
上記した検査を超える他の検査に対する本発明の適用可能性については、当業者であれば、ここで提示した教示内容に基づけば、過度の実験は不要であることを認識する。不正確な抗凝固手順によるATEへの影響について、新規の検査を上述したように評価することができる。その影響が1/2ATE未満である場合、前記開示されたアルゴリズムが用いられる場合、当該検査をフラグ付けする必要は無い。しかし、その影響が1/2ATEよりも大きい場合、当該検査をマーカーで示すまたは抑制することができる。例示目的のために、前記方法は、乳酸塩、リチウム、ビリルビンおよびコレステロールを含む検査に適用可能である。
【0067】
例示的実施形態において、前記二価陽イオンはカルシウムまたはマグネシウムであり、前記一価イオンはカリウムまたはナトリウムである。ここで、その他の検体種は典型的には、カルシウム、マグネシウム、カリウムナトリウム、水素、塩化物、重炭酸塩、アンモニウム、リチウム、pH、pCO、pO、グルコース、クレアチニン、乳酸塩、血中尿素窒素、およびヘマトクリットの中から選択される。前記二価陽イオンがカルシウムである場合、その閾値は好適には約0.25mMであり、約0.3mM〜約0.001mMの範囲から選択された値でよい。前記一価イオンがカリウムである場合、その閾値は好適には約9mMであり、典型的には約8mM〜約20mMの範囲から選択された値でよい。前記二価陽イオンがマグネシウムである場合、その閾値は好適には約0.2mMであり、前記一価イオンがナトリウムである場合、その閾値は好適には約160mMである。
【0068】
上述したように、別の実施形態において、前記アルゴリズムは、第2二価陽イオン濃度の決定を含み得、前記決定に起因して結果がマーカーで示されるまたは抑制されるが、前記アルゴリズムにおいて、前記第1および第2の二価陽イオン濃度は、それぞれに対する事前選択された閾値を上回らなくてはならない。別の関連する実施形態は、第2の一価イオン濃度を決定する方法を有する。ここで、結果をマーカーで示すためまたは抑制するためには、第1および第2の一価イオン濃度双方がそれぞれに対する事前選択された閾値を超える必要がある。
【0069】
例示的実施形態において、前記一価イオン、前記二価陽イオンおよびその他全ての検体種の濃度の決定は、電気化学的に決定される。とりわけ、前記二価陽イオン濃度の決定は、カルシウムイオン選択電極またはマグネシウムイオン選択電極によって行われ、前記一価イオン濃度の決定は、カリウムイオン選択電極またはナトリウムイオン選択電極によって行われる。
【0070】
別の例示的実施形態において、その他の検体種の濃度は、電位差センサ、アンペロメトリーセンサおよび電気伝導度センサによって決定される。しかしながら、オプトード、炎光光度法、イオン感受性染料、イオン依存型酵素分析および酵素分析に基づいたセンサを用いることも可能である。
【0071】
他の例示的実施形態において、前記二価陽イオン濃度の決定は、イオン選択電極、電位差センサ、オプトード、炎光光度計、イオン感受性染料および二価陽イオン依存型酵素分析の群から選択されたセンサによって行われ得る。同様に、前記一価イオン濃度の決定は、イオン選択電極、電位差センサ、オプトード、炎光光度計、イオン感受性染料およびイオン依存型酵素分析の群から選択されたセンサによって行われ得る。
【0072】
一実施形態において、本発明は、分析器具(例えば、1つもしくは複数の再利用可能センサ(二価陽イオン用センサ、一価イオン用センサおよび少なくとも1つの他の検体種用センサを含む)を備えた研究室用分析器)内において具現化される。しかしながら、前記好適な実施形態において、前記分析器具は、1つもしくは複数のセンサ(二価陽イオン用センサ、一価イオン用センサ、および少なくとも1つの他の検体種用センサを含む)を有する使い捨て用検査カートリッジと共に用いられる分析器を含む。どちらの場合においても、検査結果は、前記分析器の画面上のメッセージ表示、印刷メッセージまたは音声メッセージによって報告される点に留意されたい。
【0073】
サンプル採集については、典型的な実施形態において、前記採集デバイスは、管である。前記管は、内部侵入を密封するストッパを備え、前記管の内部は不完全真空状態である。あるいは、前記採集デバイスは、開口採血管、真空管、シリンジまたは毛細管である。ここで、前記サンプルは一般的には血液、血漿または血清である。前記サンプルは水または緩衝液で希釈するか、または、試薬(例えば、酵素、染料、抗体、酵素補因子および基質など)の付加により修正され得る点に留意されたい。
【0074】
本発明は一般的には1つの場所(例えば、救急科、手術室、医師の事務所または救急車)において実施されるものとして期待されるが、他の適切なポイントオブケア拠点が当業者にとって明らかである。
【0075】
上述したように、当業者であれば、検体の測定値(例えば、イオン種)が単独で閾値を超えた場合に当該測定値を抑制することまたはマーカーで示すことが広範に用いられていることを認識する。しかしながら、本方法が開示しているのは、単独では閾値を超えないが抑制またはマーカーで示すべき他の測定種を体系的に特定する手段である。加えて、本方法は、所与の検査または検査セットについて誤った抗凝固プロトコルを用いて採集された血液サンプルを特定するための自動的手段を提供する。その結果、本方法は、患者サンプルに関する高品質結果を提供するという有用な進展を臨床化学分野において提供する。
【0076】
上記記載は、本発明による例を提供する。しかしながら、本発明について多様な好適な実施形態の観点から説明してきたが、当業者であれば、本発明の意図から逸脱することなく、多様な改変、代用、省略および変更が可能であることを認識する。よって、本発明の範囲は以下の請求の範囲のみによって限定されることが意図される。
【0077】
本明細書中、上記した全ての米国特許および特許出願、外国特許および特許出願および公開文献の全体を、各個々の特許、特許出願または公開文献全体が参考のための援用のためにあたかも具体的かつ個々に記載されているかのように、ここに参考のため援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の検体種の分析のための血液サンプルの採集において抗凝血剤を伴う採集デバイスが不正確に使用されていることを判定するための自動的方法であって、前記サンプルのための前記正しい採集デバイスは、選択された抗凝血剤を除外し、前記方法は、
(a)一価イオンおよび二価陽イオンおよび少なくとも1つの他の検体を含む種を分析する手段を有する分析器具へとサンプルを採集デバイスから付加するステップと、
(b)前記サンプル中の一価イオン、二価陽イオンおよび1つもしくは複数の他の検体の濃度を決定するステップと、
(c)前記一価イオン濃度を所定の上限閾値と比較し、前記二価陽イオン濃度を所定の下限閾値と比較するステップであって、前記閾濃度値をどちらとも超える場合、前記分析器具は、前記サンプル中の前記一価イオン、二価陽イオンおよび前記他の検体種のうち1つもしくは複数に関する濃度値をマーカーで示すまたは抑制するステップと、ならびに
(d)前記ステップ(c)により、前記サンプルが前記誤った抗凝血剤を用いて採集された旨を前記分析器によって報告するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記選択された抗凝血剤は、KEDTA、KEDTAおよびNaEDTA、シュウ酸およびその塩、エチレングリコール四酢酸(EGTA)およびその塩、クエン酸およびその塩、フッ化物、非平衡化ヘパリンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記正しい採集デバイスが、抗凝血剤またはリチウムヘパリンを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記二価陽イオンが、カルシウムおよびマグネシウムの群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記一価イオンが、カリウムおよびナトリウムからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記1つもしくは複数の他の検体種が、カルシウム、マグネシウム、カリウムナトリウム、水素、塩化物、重炭酸塩、アンモニウム、リチウム、pH、pCO、pO、グルコース、クレアチニン、乳酸塩、血中尿素窒素およびヘマトクリット、ヘモグロビン、O飽和、全CO、PT/INR、ACT、APTT、BNPおよびCRPからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記二価陽イオンがカルシウムであり、前記閾値が約0.25mMである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記二価陽イオンがカルシウムであり、前記閾値が、約0.3mM〜約0.001mMの範囲の選択された値である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記一価イオンがカリウムであり、前記閾値が約9mMである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記一価イオンがカリウムであり、前記閾値が、約8mM〜約20mMの範囲の選択された値である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記二価陽イオンがマグネシウムであり、前記閾値が約0.2mMである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記一価イオンがナトリウムであり、前記閾値が約160mMである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
第2の二価陽イオン濃度が決定され、結果をマーカーで示すまたは抑制するには、第1の二価陽イオン濃度および第2の二価陽イオン濃度双方がそれぞれに対する事前選択された閾値を超えることが必要である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
第2の一価イオン濃度が決定され、結果をマーカーで示すまたは抑制するには、第1の一価イオン濃度および第2の一価イオン濃度双方がそれぞれに対する事前選択された閾値を超えることが必要である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記一価イオン、前記二価陽イオンおよび前記他の検体種の濃度の決定が、電気化学的に決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記二価陽イオン濃度の決定が、カルシウムイオン選択電極によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記一価イオン濃度の決定が、カリウムイオン選択電極によって行われる、請求項1に記載の方法
【請求項18】
前記少なくとも1つの他の検体種の濃度の決定は、イオン選択電極、オプトード、炎光光度計、イオン感受性染料、イオン依存型酵素分析、酵素分析、電位差センサ、アンペロメトリーセンサおよび電気伝導度センサからなる群から選択されたセンサによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記二価陽イオン濃度の決定が、イオン選択電極、電位差センサ、オプトード、炎光光度計、イオン感受性染料および二価陽イオン依存型酵素分析からなる群から選択されたセンサによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記一価イオン濃度の決定が、イオン選択電極、電位差センサ、オプトード、炎光光度計、イオン感受性染料およびイオン依存型酵素分析からなる群から選択されたセンサによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記分析器具が、1つもしくは複数の再利用可能センサを備えた研究室用分析器を含み、前記1つもしくは複数の再利用可能センサは、二価陽イオン用センサ、一価イオン用センサ、および少なくとも1つの他の検体種用センサを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記分析器具は、1つもしくは複数の再利用可能センサを有する分析器を含み、前記1つもしくは複数の再利用可能センサは、二価陽イオン用センサ、一価イオン用センサ、および少なくとも1つの他の検体種用センサを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記分析器具が分析器を含み、前記分析器は、使い捨て用検査カートリッジと共に用いられ、かつ、二価陽イオン用センサ、一価イオン用センサおよび少なくとも1つの他の検体種用センサを含む1つもしくは複数のセンサを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記報告が、前記分析器の画面上に表示されたメッセージ、印刷メッセージ、音声メッセージ、または別の場所への情報送信によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記採集デバイスは管であり、前記管が、前記管内への侵入を密封するためのストッパを備え、前記管の内部が不完全真空状態である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記採集デバイスが、採血管、真空管、シリンジおよび毛細管からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記サンプルが、血液、血漿、血清およびそれらの希釈および修正されたサンプルからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記方法が、ベッドサイド検査、救急科、手術室、医師の事務所、クリニック、血液バンク、研究室、養護施設、遠隔検査、および例えば救急車におけるモバイル検査からなる群から選択される場所において行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記サンプルが、ポイントオブケア拠点において前記分析器具を用いて採集および検査される、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
サンプル中の検体種の分析のための血液サンプルの採集において抗凝血剤を伴う採集デバイスが不正確に使用されていることを判定するための自動的方法であって、前記サンプルのための前記正しい採集デバイスが、選択された抗凝血剤を除外し、前記方法が、
(a)二価陽イオンおよび少なくとも1つの他の検体を含む種を分析する手段を有する分析器具へとサンプルを採集デバイスから付加するステップと、
(b)前記サンプル中の二価陽イオンおよび1つもしくは複数の他の検体の濃度を決定するステップと、
(c)前記二価陽イオン濃度を所定の下限閾値と比較するステップであって、前記閾濃度値を上回る場合、前記分析器具が、前記サンプル中の前記二価陽イオンおよび前記他の検体種のうち1つもしくは複数についての濃度値をマーカーで示すまたは抑制する、ステップと、
(d)前記サンプルが誤った抗凝血剤を用いて採集された旨を前記分析器が報告するステップと、
を含む、方法。
【請求項31】
前記二価陽イオンがカルシウムである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記1つもしくは複数の他の検体種が、マグネシウム、カリウムナトリウム、水素、塩化物、重炭酸塩、アンモニウム、リチウム、pH、pCO、pO、グルコース、クレアチニン、乳酸塩、血中尿素窒素、およびヘマトクリットからなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記二価陽イオンがカルシウムであり、前記閾値が、約0.3mM〜約0.001mMの範囲において選択された値である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記選択された抗凝血剤は、KEDTA、KEDTA、およびNaEDTA、シュウ酸およびその塩、エチレングリコール四酢酸(EGTA)およびその塩、クエン酸およびその塩、フッ化物、非平衡化ヘパリンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
陽イオン塩のカルシウム結合剤を含む採集デバイスにおける1つもしくは複数のイオン種の測定のための血液サンプルの誤った採集を特定する方法であって、
採集デバイスから血液サンプルを取り出すステップと、
前記サンプル中の陽イオン濃度を上限閾値に対して決定するステップと、
前記サンプル中のカルシウムイオン濃度を下限閾値に対して決定するステップと、
前記陽イオン濃度が前記上限閾値を上回りかつ前記カルシウム濃度が前記下限閾値を下回る場合、前記血液サンプル中の前記陽イオン、カルシウムおよび少なくとも1つの他の測定されたイオン種の報告をマーカーで示すまたは抑制するステップと、
1つもしくは複数の他の選択されたイオン種の測定の目的のためには、採集デバイスの種類が血液サンプル採集用として不適切であることを報告するステップと、
を含む、方法。
【請求項36】
前記カルシウム結合剤が、EDTA、EGTA、シュウ酸塩、クエン酸塩およびフッ化物からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記陽イオンが、ナトリウムおよびカリウムからなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記陽イオンがナトリウムであり、前記閾値が約160mMである、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記陽イオンがカリウムであり、前記閾値が約9mMである、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記カルシウム閾値の範囲が、約0.3mM〜0.001mMである、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記少なくとも1つの他の測定されたイオン種が、マグネシウム、塩化物、重炭酸塩、カリウム、ナトリウム、リチウム、アンモニウムおよび水素イオンからなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
第1種の信頼性のある測定と不適合な試薬を含む採集デバイスにおいて、前記第1種の測定における生物サンプルの誤った採集を特定する方法であって、
採集デバイスからサンプルを取り出すステップと、
前記サンプル中の第2種の濃度を閾値に対して決定するステップと、
前記第2種の濃度が前記閾値を超える場合、前記第1種および第2種の測定濃度の報告をマーカーで示すまたは抑制するステップと、
前記第1種および第2種の測定用のサンプル採集用として採集デバイスの種類が不適切である疑いがある旨を報告するステップと、
を含む、方法。
【請求項43】
前記生物サンプルが、血液、血漿、血清およびそれらの希釈およびその修正されたサンプルからなる群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記第1種が、不適切な採集デバイス内で採集されたものとして報告された、前記サンプル中の複数の種のうちの1つである、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記第2種が、閾値に対して前記サンプル内の濃度が決定され、かつ、不適切な採集デバイス内に採集されているものとして報告されている複数の種のうちの1つである、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
少なくとも1つの種の信頼性のある測定に対して不適合である試薬を含む採集デバイスにおいて、少なくとも1つの種の測定における生物サンプルの誤った採集を特定する方法であって、
採集デバイスからサンプルを取り出すステップと、
前記種のそれぞれに対する閾値について、前記サンプル中の他の複数の種の濃度を決定するステップと、
前記複数の種それぞれの濃度が前記閾値を超える場合、前記複数の種および前記少なくとも1つの種の測定濃度の報告をマーカーで示すまたは抑制するするステップと、
前記少なくとも1つの種および前記複数の種の測定用のサンプル採集用として、採集デバイスの種類が不適切である疑いがある旨を報告するステップと
を含む、方法。
【請求項47】
イオン種分析のための血液サンプルの収集において採集デバイスが不正確に使用されたことを判定するための自動的方法であって、
二価陽イオンを含むイオン種を分析する手段を有する分析器具へとサンプルを採集デバイスから付加するステップと、
前記サンプル中の前記二価陽イオンおよび1つもしくは複数の他のイオン種の濃度を決定するステップと、
前記二価陽イオン濃度を所定の閾値と比較するステップであって、前記閾濃度値を上回る場合、前記分析器具は、前記サンプル中の前記二価陽イオンおよび1つもしくは複数の他のイオン種についての濃度値を用いるべきではない旨を報告するステップと、
前記サンプルが前記誤った抗凝血剤を用いて採集された旨を報告するステップと、
を含む、方法。
【請求項48】
前記不正確に用いられた採集デバイスがEDTAを含み、適切な採集デバイスがEDTAを除外する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
誤った抗凝血剤を用いて不正確に採集された血液サンプルを、正しい抗凝血剤を用いて採集されたサンプルから見分けるための自動検体検査方法であって、
(a)採集されたサンプルを、サンプル中の少なくとも2つの検体の濃度を決定する手段を有する分析器具内に導入するステップと、
(b)前記サンプル中の第1検体および1つもしくは複数の他の検体の濃度を決定するステップと、
(c)前記第1検体濃度と、所定の閾値とを比較するステップと、
(d)前記閾濃度値を上回らない場合、前記分析器具が、前記サンプル中の前記第1検体および1つもしくは複数の他の検体についての濃度値を報告するステップと、
(e)前記分析器具が、前記サンプル中の前記第1検体および1つもしくは複数の他の検体についての濃度値を使用すべきではない旨を報告し、前記閾濃度値を上回る場合、前記サンプルが前記誤った抗凝血剤を用いて採集された旨を報告するステップと、
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−508223(P2011−508223A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539904(P2010−539904)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/087813
【国際公開番号】WO2009/086186
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(501354521)アボット ポイント オブ ケア インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】