臨床検体処理装置および臨床検体処理システム
【課題】装置の異常(故障)に起因する装置の停止回数を減少させることが可能な臨床検体処理装置を提供する。
【解決手段】この臨床検体処理装置1は、血液塗抹標本作製装置2の所定の動作の動作検出信号に基づく数値(時間およびパルス数)と、所定の動作が非異常状態の範囲内にあることの基準となる第1のしきい値とを比較する比較手段(血液塗抹標本作製装置2の制御部2a)と、動作検出信号に基づく数値(時間およびパルス数)が第1のしきい値を超えた場合に、血液塗抹標本作製装置2が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあることを示す警告情報を、ネットワークを介して、メンテナンス用管理装置(サーバ)5に送信する送信手段(パソコン4の制御部4a)とを備えている。
【解決手段】この臨床検体処理装置1は、血液塗抹標本作製装置2の所定の動作の動作検出信号に基づく数値(時間およびパルス数)と、所定の動作が非異常状態の範囲内にあることの基準となる第1のしきい値とを比較する比較手段(血液塗抹標本作製装置2の制御部2a)と、動作検出信号に基づく数値(時間およびパルス数)が第1のしきい値を超えた場合に、血液塗抹標本作製装置2が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあることを示す警告情報を、ネットワークを介して、メンテナンス用管理装置(サーバ)5に送信する送信手段(パソコン4の制御部4a)とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臨床検体処理装置および臨床検体処理システムに関し、特に、ネットワークを介してメンテナンス用管理装置に接続可能な臨床検体処理装置および臨床検体処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、臨床検体処理装置として、血液検体に対して塗抹標本を作製する塗抹標本作製装置が知られている。この塗抹標本作製装置では、正確かつ迅速に血液検体に対して塗抹標本を作製する必要があるため、装置の異常(故障)に起因する装置の停止回数を減少させる必要があるとともに、装置が停止した場合には、その異常をユーザや装置のメンテナンス会社に知らせる必要がある。そこで、従来では、装置に異常が発生したことを、ユーザなどに知らせる技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、装置の異常発生時に、装置の異常内容を示すデータを、電子メールでユーザのパソコンなどの所定の宛先へ送信する自動分析装置が開示されている。これにより、特許文献1では、自動分析装置のユーザなどは、自動分析装置に異常が発生した場合に、その異常を知ることが可能である。
【特許文献1】特開平10−308737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された自動分析装置では、装置が異常状態にあることを知ることは可能であるが、装置が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い状態(警告状態)にあることを知ることはできない。このため、装置の故障を未然に防止することが困難であるので、装置の異常(故障)に起因する装置の停止回数を減少させるのは困難であるという問題点がある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、装置の異常(故障)に起因する装置の停止回数を減少させることが可能な臨床検体処理装置および臨床検体処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
この発明の第1の局面による臨床検体処理装置は、外部に設置されたメンテナンス用管理装置にネットワークを介して接続可能な臨床検体処理装置であって、臨床検体処理装置の所定の動作の動作検出信号に基づく数値と、所定の動作が非異常状態の範囲内にあることの基準となる第1のしきい値とを比較する比較手段と、動作検出信号に基づく数値が第1のしきい値を超えた場合に、臨床検体処理装置が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあることを示す警告情報を、ネットワークを介して、メンテナンス用管理装置に送信する送信手段とを備えている。
【0007】
この第1の局面による臨床検体処理装置では、上記のように、臨床検体処理装置の所定の動作の動作検出信号に基づく数値と、臨床検体処理装置の所定の動作が非異常状態の範囲内にあることの基準となる第1のしきい値とを比較する比較手段を設けることによって、その比較手段により、臨床検体処理装置が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあると判断することができる。また、臨床検体処理装置が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあることを示す警告情報を、ネットワークを介して、外部に設置されたメンテナンス用管理装置に送信する送信手段を設けることによって、その送信手段により、メンテナンス用管理装置が設置されたメンテナンス会社は、臨床検体処理装置が警告状態にあることを認識することができる。これによって、臨床検体処理装置が故障する前の段階で適切なメンテナンスを行うことができるので、臨床検体処理装置に故障が発生するのを未然に抑制することができる。その結果、臨床検体処理装置の故障回数を減少させることができるので、装置の異常(故障)に起因する装置の停止回数を減少させることができる。
【0008】
上記第1の局面による臨床検体処理装置において、好ましくは、比較手段は、動作検出信号に基づく数値と、第1のしきい値および臨床検体処理装置の所定の動作が異常状態にあることを判定するための基準となる第2のしきい値とを比較し、送信手段は、動作検出信号に基づく数値が第1のしきい値と第2のしきい値との間にある場合に、警告情報を、ネットワークを介して、メンテナンス用管理装置に送信する。このように構成すれば、容易に、比較手段により、臨床検体処理装置が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあると判断することができるとともに、送信手段により、臨床検体処理装置の警告情報を、外部に設置されたメンテナンス用管理装置に送信することができる。
【0009】
上記第1の局面による臨床検体処理装置において、好ましくは、比較手段は、動作検出信号に基づく数値と、臨床検体処理装置の所定の動作が異常状態にあることを判定するための基準となる第2のしきい値とを比較し、送信手段は、動作検出信号に基づく数値が第2のしきい値を超えた場合に、臨床検体処理装置が異常状態にあることを示す異常情報を、ネットワークを介して、メンテナンス用管理装置に送信する。このように構成すれば、比較手段により、臨床検体処理装置が警告状態にあることのみならず、異常状態にあることも判断することができるとともに、送信手段により、臨床検体処理装置の警告情報のみならず、異常情報も外部に設置されたメンテナンス用管理装置に送信することができる。
【0010】
上記第1の局面による臨床検体処理装置において、好ましくは、臨床検体処理装置の少なくとも警告情報を収集するコンピュータをさらに備え、送信手段は、コンピュータに設けられている。このように構成すれば、コンピュータを用いて、容易に、臨床検体処理装置の警告情報を外部のメンテナンス会社のメンテナンス用管理装置に送信することができる。
【0011】
上記第1の局面による臨床検体処理装置において、好ましくは、送信手段は、臨床検体処理装置の少なくとも警告情報を、電子メールを用いて、メンテナンス用管理装置に送信する。このように構成すれば、メンテナンス用管理装置が設置されたメンテナンス会社の管理者は、電子メールの警告情報を読むことによって、臨床検体処理装置が警告状態にあることを認識することができる。
【0012】
上記第1の局面による臨床検体処理装置において、好ましくは、送信手段は、臨床検体処理装置の少なくとも警告情報を、所定のタイミングで、ネットワークを介してメンテナンス用管理装置に送信する。このように構成すれば、メンテナンス用管理装置が設置されたメンテナンス会社の管理者は、臨床検体処理装置が警告状態にあることを所定のタイミングで認識することができる。
【0013】
上記第1の局面による臨床検体処理装置において、好ましくは、送信手段は、臨床検体処理装置の少なくとも警告情報を、臨床検体処理装置の起動時またはシャットダウン時に、ネットワークを介してメンテナンス用管理装置に送信する。このように構成すれば、メンテナンス用管理装置が設置されたメンテナンス会社の管理者は、臨床検体処理装置が警告状態にあることを定期的に認識することができる。
【0014】
上記第1の局面による臨床検体処理装置において、好ましくは、臨床検体処理装置の動作検出信号に基づく数値は、動作監視時間、および、動作タイミング信号に基づく数値の少なくとも一方を含む。このように構成すれば、比較手段により、動作監視時間や動作タイミング信号に基づく数値を所定のしきい値と比較することによって、容易に、臨床検体処理装置が警告状態にあるか否かを判断することができる。
【0015】
上記動作タイミング信号に基づく数値を含む構成において、好ましくは、動作タイミング信号に基づく数値は、モータのパルス数である。このように構成すれば、比較手段により、モータのパルス数をパルス数のしきい値と比較することによって、容易に、臨床検体処理装置が警告状態にあるか否かを判断することができる。
【0016】
上記動作監視時間を含む構成において、好ましくは、動作監視時間は、臨床検体処理装置の所定の動作の開始を起点として、スイッチ手段がオン状態またはオフ状態に切り替わるまでに要した時間である。このように構成すれば、動作開始の起点と、スイッチ手段のオン状態またはオフ状態の切り替わりとを検知することにより、容易に、臨床検体処理装置の動作監視時間を検出することができるので、その動作監視時間を所定のしきい値と比較することによって、容易に、臨床検体処理装置が警告状態にあるか否かを判断することができる。
【0017】
この場合、好ましくは、スイッチ手段は、所定の領域に収容された液体量の変化に伴って上下方向に移動することによりオン状態またはオフ状態に切り替わるフロートスイッチである。このように構成すれば、フロートスイッチのオン状態またはオフ状態の切り替わりを検知することにより、臨床検体処理装置のフロートスイッチを用いる動作の動作監視時間を容易に検出することができる。
【0018】
この発明の第2の局面による臨床検体処理システムは、外部に設置されたメンテナンス用管理装置と、メンテナンス用管理装置にネットワークを介して接続可能な臨床検体処理装置と、臨床検体処理装置の所定の動作の動作検出信号に基づく数値と、所定の動作が非異常状態の範囲内にあることの基準となる第1のしきい値とを比較する比較手段と、動作検出信号に基づく数値が第1のしきい値を超えた場合に、臨床検体処理装置が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあることを示す警告情報を、ネットワークを介して、メンテナンス用管理装置に送信する送信手段とを備えている。
【0019】
この第2の局面による臨床検体処理システムでは、上記のように、臨床検体処理装置の所定の動作の動作検出信号に基づく数値と、臨床検体処理装置の所定の動作が非異常状態の範囲内にあることの基準となる第1のしきい値とを比較する比較手段を設けることによって、その比較手段により、臨床検体処理装置が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあると判断することができる。また、臨床検体処理装置が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあることを示す警告情報を、ネットワークを介して、外部に設置されたメンテナンス用管理装置に送信する送信手段を設けることによって、その送信手段により、メンテナンス用管理装置が設置されたメンテナンス会社は、臨床検体処理装置が警告状態にあることを認識することができる。これによって、臨床検体処理装置が故障する前の段階で適切なメンテナンスを行うことができるので、臨床検体処理装置に故障が発生するのを未然に抑制することができる。その結果、臨床検体処理装置の故障回数を減少させることができるので、装置の異常(故障)に起因する装置の停止回数を減少させることができる。
【0020】
上記第2の局面による臨床検体処理システムにおいて、好ましくは、比較手段は、動作検出信号に基づく数値と、第1のしきい値および臨床検体処理装置の所定の動作が異常状態にあることを判定するための基準となる第2のしきい値とを比較し、送信手段は、動作検出信号に基づく数値が第1のしきい値と第2のしきい値との間にある場合に、警告情報を、ネットワークを介して、メンテナンス用管理装置に送信する。このように構成すれば、容易に、比較手段により、臨床検体処理装置が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあると判断することができるとともに、送信手段により、臨床検体処理装置の警告情報を、外部に設置されたメンテナンス用管理装置に送信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態による血液塗抹標本作製装置を含む臨床検体処理装置と、外部のメンテナンス用管理装置とを備えた臨床検体処理システムの全体構成を示した概略図であり、図2は、血液塗抹標本作製装置および搬送装置を示した斜視図である。また、図3〜図5は、血液塗抹標本作製装置の構造を説明するための図であり、図6は、血液塗抹標本作製装置の染色部の第3吸引排出部に供給される染色液の供給経路を示した流体回路図である。
【0023】
まず、図1を参照して、本実施形態による臨床検体処理装置1の全体構成について説明する。本実施形態による臨床検体処理装置1は、図1に示すように、血液塗抹標本作製装置2と、搬送装置3と、パーソナルコンピュータ(パソコン)4とを備えている。また、パソコン4は、ネットワークを介して、外部のメンテナンス会社に設置されたメンテナンス用管理装置(サーバ)5に接続されている。この臨床検体処理装置1と、血液塗抹標本作製装置2と、搬送装置3と、パソコン4と、メンテナンス用管理装置(サーバ)5とによって、臨床検体処理システムが構成されている。なお、パソコン4は、本発明の「コンピュータ」の一例である。また、ネットワークとしては、電話回線などの専用のネットワーク、インターネット、イントラネット、LANなどのネットワークを用いることが可能である。
【0024】
血液塗抹標本作製装置2は、血液検体の塗抹標本を作製するために設けられている。この血液塗抹標本作製装置2は、制御部2aを含んでいるとともに、パソコン4に接続されている。ここで、本実施形態では、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aは、CPU、ROM、RAMなどからなる。この制御部2aは、血液塗抹標本作製装置2の動作制御を行う機能と、血液塗抹標本作製装置2が異常状態にあることを判断する機能と、血液塗抹標本作製装置2が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあることを判断する機能と、血液塗抹標本作製装置2が異常状態および警告状態にあることの情報(異常情報および警告情報)をパソコン4に送信する機能とを有する。なお、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aは、本発明の「比較手段」の一例である。また、搬送装置3は、血液塗抹標本作製装置2の前面に設置されており、搬入部3aおよび取り出し部3bを有している。この搬送装置3は、血液が収容された試験管101を収納する検体ラック100を血液塗抹標本作製装置2に自動的に搬送するために設けられている。
【0025】
また、本実施形態では、パソコン4は、血液塗抹標本作製装置2の状態情報(異常情報および警告情報)をメンテナンス用管理装置(サーバ)5に送信するための制御部4aと、血液塗抹標本作製装置2の状態情報(異常情報および警告情報)を保存するためのメモリ4bとを含んでいる。このパソコン4の制御部4aは、CPU、ROM、RAMなどからなる。また、パソコン4の制御部4aには、電子メールの送受信および加工を行うプログラムが格納されている。なお、パソコン4の制御部4aは、本発明の「送信手段」の一例である。
【0026】
次に、図2〜図6を参照して、血液塗抹標本作製装置2および搬送装置3の全体構成について説明する。まず、図2に示すように、血液塗抹標本作製装置2には、制御部2aに加えて、タッチパネルからなる表示操作部2bと、血液が収容された試験管101を搬送装置3側から血液塗抹標本作製装置2側に搬送するためのハンド部材2cとが設けられている。また、血液塗抹標本作製装置2は、図3に示すように、吸引分注機構部21と、塗抹部22と、樹脂製のカセット23と、カセット収容部24と、カセット搬送部25と、スライドガラス挿入部26と、染色部27と、保管部28とを備えている。また、図3に示すように、血液塗抹標本作製装置2の下方には、染色部27において使用する染色液や洗浄用の水などを収容した複数の容器80が配置されている。
【0027】
吸引分注機構部21は、ハンド部材2c(図2参照)によって血液塗抹標本作製装置2側に搬送された試験管101から血液を吸引するとともに、吸引した血液をスライドガラス10に滴下する機能を有する。この吸引分注機構部21は、図4に示すように、試験管101(図2参照)から血液を吸引するためのピアサ(吸引針)21aと、吸引した血液をスライドガラス10に分注するための分注ピペット21bと、分注ピペット21bを支持する支持部材21cと、支持部材21cを前方(図3の矢印A方向)および後方(図3の矢印B方向)に移動させる前後駆動用モータ21dと、支持部材21cの所定の部分を検出することにより分注ピペット21bの水平方向における原点位置を検出するためのセンサ21eと、支持部材21cおよび前後駆動用モータ21dを支持する支持部材21fと、支持部材21fを上方(図4の矢印C方向)および下方(図4の矢印D方向)に移動させる上下駆動用モータ21gと、支持部材21fの所定の部分を検出することにより分注ピペット21bの垂直方向における原点位置を検出するためのセンサ21hとを含んでいる。なお、前後駆動用モータ21dおよび上下駆動用モータ21gは、本発明の「モータ」の一例である。
【0028】
塗抹部22は、図3に示すように、スライドガラス10を分注・塗抹位置90に供給するとともに、スライドガラス10に滴下された血液を塗抹して乾燥し、かつ、スライドガラス10に印字を行うために設けられている。また、樹脂製のカセット23は、塗抹が施されたスライドガラス10および染色工程で用いる液体(染色液)を収容することが可能なように構成されている。このカセット23は、図5に示すように、スライドガラス収納孔23aと、染色液吸引分注孔23bとを含んでいる。スライドガラス収納孔23aと、染色液吸引分注孔23bとは、内部で繋がっている。
【0029】
また、図3に示すように、カセット収容部24は、カセット23をカセット搬送部25に搬入するために設けられており、送り込みベルト24aを含んでいる。また、カセット搬送部25は、カセット収容部24から搬入されたカセット23をスライドガラス挿入部26および染色部27に搬送するために設けられている。このカセット搬送部25は、図3に示すように、水平方向に移動可能なカセット搬送部材25aと、カセット収容部24から供給されたカセット23を搬送するための搬送路25bとを含んでいる。また、図3に示したスライドガラス挿入部26は、塗抹および印字が施されたスライドガラス10をカセット23のスライドガラス収納孔23aに収納するために設けられている。
【0030】
図3に示した染色部27は、カセット搬送部材25aにより搬送されたカセット23の染色液吸引分注孔23bに染色液を供給することにより、塗抹済みのスライドガラス10に染色を施すために設けられている。この染色部27は、カセット23を搬送するための搬送ベルト27aと、カセット23に対して染色液の供給および排出を行うための第1〜第5吸引排出部27b〜27fとを含んでいる。
【0031】
ここで、図5および図6を参照して、第1〜第5吸引排出部27b〜27fのうち、第3吸引排出部27dに例を取って、その構造および第3吸引排出部27dで使用される染色液の流体経路について説明する。第3吸引排出部27dは、図5に示すように、カセット23に対して染色液の供給および排出を行う供給ピペット71および排出ピペット72と、供給ピペット71および排出ピペット72を支持するピペット支持部材73と、ピペット支持部材73を上下方向(図5の矢印E方向)に移動させるモータ74aおよび駆動ベルト74bを有する駆動機構部74とを含んでいる。第3吸引排出部27dは、カセット23に対して、供給ピペット71および排出ピペット72を駆動機構部74により下方向に移動させることにより、染色液の供給および排出を行うように構成されている。
【0032】
次に、第3吸引排出部27dの供給ピペット71から供給される染色液の流体経路は、図6に示すように、染色液を収容するための容器80と、染色液を一時的に貯留するためのチャンバ81と、チャンバ81に対して加圧および減圧を行うための気圧調節器82と、染色液と染色液を希釈するための希釈液とを混合するための混合チャンバ83と、チャンバ81と混合チャンバ83との間で染色液を移動させるためのダイヤフラムポンプ84と、ダイヤフラムポンプ84に対して加圧および減圧を行うための気圧調節器85とを含んでいる。このチャンバ81は、容器80、気圧調節器82、混合チャンバ83および排出口とパイプによって接続されている。混合チャンバ83は、染色部27の第3吸引排出部27dの供給ピペット71とパイプによって接続されている。また、容器80とチャンバ81との間、チャンバ81と混合チャンバ83との間、および、チャンバ81と排出口との間には、それぞれ、バルブ86、87および88が設置されている。ダイヤフラムポンプ84は、パイプによってバルブ87に接続されている。また、混合チャンバ83には、染色液を希釈するための希釈液を供給するためのパイプが接続されている。
【0033】
チャンバ81は、図6に示すように、染色液を収容するための貯留部81aと、貯留部81aの内部に設けられたフロートスイッチ81bとを有している。このフロートスイッチ81bは、染色液に浮くことが可能な材質により構成され、内部に磁石81cが埋め込まれた浮き部材81dと、浮き部材81dを上下方向に移動可能に支持するとともに、磁気検知型のリードスイッチ81eが内蔵された支持棒81fとから構成されている。また、リードスイッチ81eは、貯留部81a内の染色液が規定量に達したときに浮き部材81dの磁石81cの磁気を検知可能な支持棒81fの所定位置に埋め込まれている。フロートスイッチ81bは、浮き部材81dが所定位置に近づいたときに、支持棒81fのリードスイッチ81eが浮き部材81d内の磁石81cの磁気を検知してオン状態になるとともに、浮き部材81dが所定位置から離れたときに、支持棒81fのリードスイッチ81eが浮き部材81d内の磁石81cの磁気を検知できずにオフ状態になるように構成されている。なお、フロートスイッチ81bは、本発明の「スイッチ手段」の一例である。
【0034】
また、図3に示した保管部28は、染色部27により染色されたスライドガラス10が収納されたカセット23を保管するために設けられている。この保管部28には、カセット23を搬送するための搬送ベルト28aが設けられている。
【0035】
次に、図1〜図4および図6〜図10を参照して、本実施形態による臨床検体処理装置1の動作について説明する。まず、検体の提供者(患者)のカルテ情報が、図示しないホストコンピュータに入力される。そして、図1および図2に示した血液塗抹標本作製装置2は、ホストコンピュータの情報に従って、搬送装置3により搬送される検体ラック100に載置された試験管101から血液検体を採取して血液塗抹標本を作製する。
【0036】
血液塗抹標本作製装置2により血液塗抹標本を作製する際には、まず、吸引分注動作として、図2に示すように、血液検体が収容された試験管101が載置された検体ラック100を搬送装置3の搬入部3aにセットする。そして、表示操作部2bに表示された自動吸引のスタートスイッチを押す。これにより、検体ラック100は、搬送装置3の取り出し部3bに搬送される。そして、血液塗抹標本作製装置2のハンド部材2cが、検体ラック100の試験管101を持ち上げて攪拌した後、図3に示す吸引分注機構部21に試験管101を配置する。そして、ピアサ21aにより試験管101内の血液を吸引する。この後、分注ピペット21bを前方(図3の矢印A方向)および下方(図4の矢印D方向)に移動させて図3に示した分注・塗抹位置90に移動させた後、スライドガラス10に血液を分注ピペット21bから滴下(分注)する。この分注動作の後、分注ピペット21bを上方(図4の矢印C方向)および後方(図3の矢印B方向)に移動させて原点位置に移動させる。分注ピペット21bを上方に移動させる際には、分注動作の後、分注ピペット21bが下端位置に位置する状態で、上下駆動用モータ21gを駆動させる。これにより、分注ピペット21bを支持する支持部材21fが図4の矢印C方向へ移動される。そして、支持部材21fがセンサ21hによって検出されることにより、上下駆動用モータ21gの駆動が停止する。この分注ピペット21bの上昇動作は、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aによって制御される。
【0037】
ここで、図7を参照して、本実施形態による分注ピペット21bの上昇動作における状態認識フローについて説明する。まず、ステップS1において、上下駆動用モータ21gによる分注ピペット21bの上昇動作が終了する。その後、ステップS2において、上下駆動用モータ21gにより分注ピペット21bを上方(図4の矢印C方向)に移動させる際の上下駆動用モータ21gのパルス数を計測するとともに、分注ピペット21bの上昇動作の開始から終了までに要した上下駆動用モータ21gのパルス数が2700以上3300以下の範囲内にあるか否かが判断される。このステップS2におけるパルス数の計測および判断は、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより行われる。なお、上下駆動用モータ21gのパルス数は、本発明の「動作検出信号に基づく数値」および「動作タイミング信号に基づく数値」の一例であり、上下駆動用モータ21gのパルス数2700および3300は、本発明の「第1のしきい値」の一例である。そして、ステップS2において、分注ピペット21bの上昇動作の開始から終了までに要した上下駆動用モータ21gのパルス数が2700以上3300以下の範囲内にあると判断された場合には、ステップS3において、分注ピペット21bの上昇動作が正常状態にあると判断され、そのまま終了する。ステップS2において、分注ピペット21bの上昇動作の開始から終了までに要した上下駆動用モータ21gのパルス数が2700以上3300以下の範囲内にないと判断された場合には、ステップS4において、分注ピペット21bの上昇動作の開始から終了までに要した上下駆動用モータ21gのパルス数が2400以上2700未満、または、3300以上3600未満の範囲内にあるか否かが血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより判断される。なお、この場合の上下駆動用モータ21gのパルス数2400および3600は、本発明の「第2のしきい値」の一例である。そして、ステップS4において、分注ピペット21bの上昇動作の開始から終了までに要した上下駆動用モータ21gのパルス数が2400以上2700未満、または、3300以上3600未満の範囲内にあると判断された場合には、ステップS5において、分注ピペット21bの上昇動作が警告状態にあると認識される。なお、上記ステップS3〜S5の処理は、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより行われる。
【0038】
そして、ステップS6において、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより、警告情報を血液塗抹標本作製装置2からパソコン4に送信するとともに、パソコン4側では、その警告情報をメモリ4b(図1参照)に保存し、血液塗抹標本作製装置2は、自動的に次の動作を開始する。また、ステップS4において、分注ピペット21bの上昇動作の開始から終了までに要した上下駆動用モータ21gのパルス数が2400以上2700未満、または、3300以上3600未満の範囲内にないと判断された場合には、ステップS7において、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより、分注ピペット21bの上昇動作が異常(エラー)状態にあると認識される。そして、ステップS8において、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより、血液塗抹標本作製装置2の表示操作部2bにエラー表示を行うとともに、エラー情報をパソコン4に送信し、パソコン4側では、その異常情報をメモリ4bに保存する。そして、ステップS9において、血液塗抹標本作製装置2のシャットダウン時に、パソコン4のメモリ4bに保存されているエラー情報および警告情報をパソコン4の制御部4aにより、電子メールでメンテナンス用管理装置5に送信する。このようにして、分注ピペット21bの上昇動作の警告情報およびエラー情報が外部のメンテナンス用管理装置5に送信される。
【0039】
また、分注ピペット21bを上昇させた後、後方に移動させる際には、上下駆動用モータ21gによる上昇動作の後、分注ピペット21bが前端位置に位置する状態で、前後駆動用モータ21dを駆動させる。これにより、分注ピペット21bを支持する支持部材21cが図3の矢印B方向へ移動される。そして、支持部材21cがセンサ21eによって検出されることにより、前後駆動用モータ21dの駆動が停止する。この分注ピペット21bの後退動作は、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aによって制御される。
【0040】
ここで、図8を参照して、本実施形態による分注ピペット21bの後退動作における状態認識フローについて説明する。まず、ステップS11において、前後駆動用モータ21dによる分注ピペット21bの後退動作が終了する。その後、ステップS12において、前後駆動用モータ21dにより分注ピペット21bを後方(図3の矢印B方向)に移動させる際の前後駆動用モータ21dのパルス数を計測するとともに、分注ピペット21bの後退動作の開始から終了までに要した前後駆動用モータ21dのパルス数が270以上330以下の範囲内にあるか否かが判断される。このステップS12におけるパルス数の計測および判断は、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより行われる。なお、前後駆動用モータ21dのパルス数は、本発明の「動作検出信号に基づく数値」および「動作タイミング信号に基づく数値」の一例であり、前後駆動用モータ21dのパルス数270および330は、本発明の「第1のしきい値」の一例である。そして、ステップS12において、分注ピペット21bの後退動作の開始から終了までに要した前後駆動用モータ21dのパルス数が270以上330以下の範囲内にあると判断された場合には、ステップS13において、分注ピペット21bの後退動作が正常状態にあると判断され、そのまま終了する。ステップS12において、分注ピペット21bの後退動作の開始から終了までに要した前後駆動用モータ21dのパルス数が270以上330以下の範囲内にないと判断された場合には、ステップS14において、分注ピペット21bの後退動作の開始から終了までに要した前後駆動用モータ21dのパルス数が240以上270未満、または、330以上360未満の範囲内にあるか否かが血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより判断される。なお、この場合の前後駆動用モータ21dのパルス数240および360は、本発明の「第2のしきい値」の一例である。そして、ステップS14において、分注ピペット21bの後退動作の開始から終了までに要した前後駆動用モータ21dのパルス数が240以上270未満、または、330以上360未満の範囲内にあると判断された場合には、ステップS15において、分注ピペット21bの後退動作が警告状態にあると認識される。なお、上記ステップS13〜S15の処理は、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより行われる。
【0041】
そして、ステップS16において、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより、警告情報を血液塗抹標本作製装置2からパソコン4に送信するとともに、パソコン4側では、その警告情報をメモリ4b(図1参照)に保存し、血液塗抹標本作製装置2は、自動的に次の動作を開始する。また、ステップS14において、分注ピペット21bの後退動作の開始から終了までに要した前後駆動用モータ21dのパルス数が240以上270未満、または、330以上360未満の範囲内にないと判断された場合には、ステップS17において、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより、分注ピペット21bの後退動作が異常(エラー)状態にあると認識される。そして、ステップS18において、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより、血液塗抹標本作製装置2の表示操作部2bにエラー表示を行うとともに、エラー情報をパソコン4に送信し、パソコン4側では、その異常情報をメモリ4bに保存する。そして、ステップS19において、血液塗抹標本作製装置2のシャットダウン時に、パソコン4のメモリ4bに保存されているエラー情報および警告情報をパソコン4の制御部4aにより、電子メールでメンテナンス用管理装置5に送信する。このようにして、分注ピペット21bの後退動作の警告情報およびエラー情報が外部のメンテナンス用管理装置5に送信される。
【0042】
上記した吸引分注機構部21による吸引分注動作と並行して、または、吸引分注動作の後、塗抹部22による塗抹動作が行われる。この塗抹部22では、スライドガラス10を分注・塗抹位置90(図3参照)に供給するとともに、スライドガラス10に滴下された血液を塗抹して乾燥する。そして、スライドガラス10に血液検体の情報の印字を行った後、印字後のスライドガラス10を、スライドガラス挿入部26側に移動する。次に、図3に示したカセット収容部24にセットされたカセット23が送り込みベルト24aによってカセット搬送部25の搬送路25bに送り込まれる。そして、カセット搬送部25のカセット搬送部材25aによってスライドガラス挿入部26へ搬送される。
【0043】
図3に示したスライドガラス挿入部26では、まず、カセット23のスライドガラス収納孔23aにスライドガラス10が収納されているか否かが判断される。そして、カセット23にスライドガラス10が収納されていると判断された場合には、そのまま、カセット搬送部材25aにより搬送路25bに沿ってカセット23が染色部27に移動される。この場合、カセット23は、染色部27による染色処理が行われずに保管部28に移動される。また、スライドガラス挿入部26において、カセット23のスライドガラス収納孔23aにスライドガラス10が収納されていないと判断された場合には、スライドガラス挿入部26によるカセット23へのスライドガラス10の挿入動作が行われた後、塗抹済みのスライドガラス10が収納されたカセット23が、カセット搬送部材25aにより染色部27に搬送される。
【0044】
本実施形態による染色部27では、カセット23が搬送ベルト27aにより搬送されるとともに、第1吸引排出部27b〜第5吸引排出部27fにおいて、染色液や洗浄用の水を、順次、カセット23の染色液吸引分注孔23bに対して分注および吸引排出することにより、カセット23の塗抹済みのスライドガラス10に染色処理を施す。また、スライドガラス10の染色処理に使用される染色液などの液体は、図6に示すように、チャンバ81に一時的に貯留された後、供給ピペット71からカセット23内に分注される。
【0045】
ここで、図6を参照して、上記した第1〜第5吸引排出部27b〜27fの動作のうち、第3吸引排出部27dにおいてカセット23内に分注される染色液を一時的に貯留するチャンバ81の吸引動作および排出動作について説明する。
【0046】
まず、チャンバ81の吸引動作を行う場合には、図6に示すバルブ86を開放状態にするとともに、バルブ88を遮断状態にし、バルブ87において、チャンバ81と混合チャンバ83との間の流路を遮断状態にする。そして、気圧調節器82によりチャンバ81内を減圧する。これにより、容器80内の染色液がチャンバ81内に移動する。この染色液の流入に伴ってチャンバ81内に設置されているフロートスイッチ81bの浮き部材81dが上方に移動する。そして、フロートスイッチ81bがオン状態になることにより、気圧調節器82による減圧が解除され、チャンバ81による染色液の吸引動作が終了する。
【0047】
次に、チャンバ81内の染色液を混合チャンバ83に移動させる場合には、バルブ86および88を遮断状態にするとともに、バルブ87において、チャンバ81とダイヤフラムポンプ87との間の流路を開放状態にする。そして、気圧調節器85によりダイヤフラムポンプ84内を減圧する。これにより、チャンバ81内の染色液がダイヤフラムポンプ84内に一定量吸引される。その後、バルブ87において、ダイヤフラムポンプ84と混合チャンバ83との間の流路を開放状態にする。そして、気圧調節器85によりダイヤフラムポンプ84内を加圧する。これにより、ダイヤフラムポンプ84内の染色液が混合チャンバ83に一定量移動する。そして、染色液は、混合チャンバ83において希釈された後、第3吸引排出部27dの供給ピペット71からカセット23内に供給される。
【0048】
また、チャンバ81の排出動作を行う場合には、バルブ86を遮断状態にするとともに、バルブ88を開放状態にし、バルブ87において、チャンバ81と混合チャンバ83との間の流路を遮断状態にする。そして、気圧調節器82によりチャンバ81内を加圧する。これにより、チャンバ81内の染色液が排出口から装置外へ排出される。この染色液の流出に伴ってチャンバ81内に設置されているフロートスイッチ81bの浮き部材81dが下方に移動する。そして、フロートスイッチ81bがオフ状態になることにより、気圧調節器82による加圧が解除され、チャンバ81による染色液の排出動作が終了する。
【0049】
ここで、図9を参照して、本実施形態によるチャンバ81の吸引動作における状態認識フローについて説明する。まず、ステップS21において、チャンバ81による染色液の吸引動作が終了する。その後、ステップS22において、チャンバ81による染色液の吸引動作が開始してから、フロートスイッチ81bがオン状態になることにより吸引動作が終了するまでに要した時間を計測するとともに、5秒以内にフロートスイッチ81bがオン状態になり、チャンバ81の吸引動作が終了したか否かが判断される。このステップS22における時間の計測および判断は、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより行われる。なお、チャンバ81による染色液の吸引動作に要する時間は、本発明の「動作検出信号に基づく数値」および「動作監視時間」の一例であり、チャンバ81による染色液の吸引動作に要する時間5秒は、本発明の「第1のしきい値」の一例である。そして、ステップS22において、5秒以内にフロートスイッチ81bがオン状態になり、チャンバ81の吸引動作が終了したと判断された場合には、ステップS23において、チャンバ81による染色液の吸引動作が正常状態にあると判断され、そのまま終了する。ステップS22において、5秒以内にフロートスイッチ81bがオン状態にならずに、チャンバ81の吸引動作が終了しなかったと判断された場合には、ステップS24において、7秒以内にフロートスイッチ81bがオン状態になり、チャンバ81の吸引動作が終了したか否かが血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより判断される。なお、この場合のチャンバ81による染色液の吸引動作に要する時間7秒は、本発明の「第2のしきい値」の一例である。そして、ステップS24において、7秒以内にフロートスイッチ81bがオン状態になり、チャンバ81の吸引動作が終了したと判断された場合には、ステップS25において、チャンバ81による染色液の吸引動作が警告状態にあると認識される。なお、上記ステップS23〜S25の処理は、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより行われる。
【0050】
そして、ステップS26において、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより、警告情報を血液塗抹標本作製装置2からパソコン4に送信するとともに、パソコン4側では、その警告情報をメモリ4b(図1参照)に保存し、血液塗抹標本作製装置2は、自動的に次の動作を開始する。また、ステップS24において、7秒以内にフロートスイッチ81bがオン状態にならずに、チャンバ81の吸引動作が終了しなかったと判断された場合には、ステップS27において、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより、チャンバ81による染色液の吸引動作が異常(エラー)状態にあると認識される。そして、ステップS28において、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより、血液塗抹標本作製装置2の表示操作部2bにエラー表示を行うとともに、エラー情報をパソコン4に送信し、パソコン4側では、その異常情報をメモリ4bに保存する。そして、ステップS29において、血液塗抹標本作製装置2のシャットダウン時に、パソコン4のメモリ4bに保存されているエラー情報および警告情報をパソコン4の制御部4aにより、電子メールでメンテナンス用管理装置5に送信する。このようにして、チャンバ81の吸引動作の警告情報およびエラー情報が外部のメンテナンス用管理装置5に送信される。
【0051】
また、図10を参照して、本実施形態によるチャンバ81の排出動作における状態認識フローについて説明する。まず、ステップS31において、チャンバ81による染色液の排出動作が終了する。その後、ステップS32において、チャンバ81による染色液の排出動作が開始してから、フロートスイッチ81bがオフ状態になることにより排出動作が終了するまでに要した時間を計測するとともに、2秒以内にフロートスイッチ81bがオフ状態になり、チャンバ81の排出動作が終了したか否かが判断される。このステップS32における時間の計測および判断は、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより行われる。なお、チャンバ81による染色液の排出動作に要する時間は、本発明の「動作検出信号に基づく数値」および「動作監視時間」の一例であり、チャンバ81による染色液の排出動作に要する時間2秒は、本発明の「第1のしきい値」の一例である。そして、ステップS32において、2秒以内にフロートスイッチ81bがオフ状態になり、チャンバ81の排出動作が終了したと判断された場合には、ステップS33において、チャンバ81による染色液の排出動作が正常状態にあると判断され、そのまま終了する。ステップS32において、2秒以内にフロートスイッチ81bがオフ状態にならずに、チャンバ81の排出動作が終了しなかったと判断された場合には、ステップS34において、5秒以内にフロートスイッチ81bがオフ状態になり、チャンバ81の排出動作が終了したか否かが血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより判断される。なお、この場合のチャンバ81による染色液の排出動作に要する時間5秒は、本発明の「第2のしきい値」の一例である。そして、ステップS34において、5秒以内にフロートスイッチ81bがオフ状態になり、チャンバ81の排出動作が終了したと判断された場合には、ステップS35において、チャンバ81による染色液の排出動作が警告状態にあると認識される。なお、上記ステップS33〜S35の処理は、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより行われる。
【0052】
そして、ステップS36において、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより、警告情報を血液塗抹標本作製装置2からパソコン4に送信するとともに、パソコン4側では、その警告情報をメモリ4b(図1参照)に保存し、血液塗抹標本作製装置2は、自動的に次の動作を開始する。また、ステップS34において、5秒以内にフロートスイッチ81bがオフ状態にならずに、チャンバ81の排出動作が終了しなかったと判断された場合には、ステップS37において、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより、チャンバ81による染色液の排出動作が異常(エラー)状態にあると認識される。そして、ステップS38において、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより、血液塗抹標本作製装置2の表示操作部2bにエラー表示を行うとともに、エラー情報をパソコン4に送信し、パソコン4側では、その異常情報をメモリ4bに保存する。そして、ステップS39において、血液塗抹標本作製装置2のシャットダウン時に、パソコン4のメモリ4bに保存されているエラー情報および警告情報をパソコン4の制御部4aにより、電子メールでメンテナンス用管理装置5に送信する。このようにして、チャンバ81の排出動作の警告情報およびエラー情報が外部のメンテナンス用管理装置5に送信される。
【0053】
その後、染色済みのスライドガラス10が収納されたカセット23は、搬送ベルト27bから保管部28の搬送ベルト28aへ順次送り出される。そして、カセット23は、保管部28の搬送ベルト28aにより搬送されて保管される。
【0054】
本実施形態では、上記のように、血液塗抹標本作製装置2の分注ピペット21bの上昇動作の開始から終了までに要した上下駆動用モータ21gのパルス数と、血液塗抹標本作製装置2の分注ピペット21bの上昇動作が非異常状態の範囲内にあることの基準となる上下駆動用モータ21gのパルス数(2700および3300:第1のしきい値)、および、血液塗抹標本作製装置2の分注ピペット21bの上昇動作が異常状態にあることを判定するための基準となる上下駆動用モータ21gのパルス数(2400および3600:第2のしきい値)とを比較する血液塗抹標本作製装置2の制御部2aを設けることによって、その制御部2aにより、容易に、血液塗抹標本作製装置2の分注ピペット21bの上昇動作が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあると判断することができる。また、血液塗抹標本作製装置2の分注ピペット21bの上昇動作が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあることを示す警告情報を、ネットワークを介して、外部に設置されたメンテナンス用管理装置(サーバ)5に送信するパソコン4の制御部4aを設けることによって、容易に、メンテナンス用管理装置(サーバ)5が設置されたメンテナンス会社は、血液塗抹標本作製装置2の分注ピペット21bの上昇動作が警告状態にあることを認識することができる。これによって、血液塗抹標本作製装置2を含む臨床検体処理装置1が故障する前の段階で適切なメンテナンスを行うことができるので、臨床検体処理装置1に故障が発生するのを未然に抑制することができる。その結果、臨床検体処理装置1の故障回数を減少させることができるので、臨床検体処理装置1の異常(故障)に起因する臨床検体処理装置1の停止回数を減少させることができる。
【0055】
また、上記した分注ピペット21bの上昇動作の場合と同様に、分注ピペット21bの後退動作や、チャンバ81の吸引動作および排出動作においても、各々の動作を検出する信号(時間やパルス数)と、各々が対応する第1のしきい値および第2のしきい値とを比較する血液塗抹標本作製装置2の制御部2aを設けることによって、その制御部2aにより、容易に、血液塗抹標本作製装置2の分注ピペット21bの後退動作やチャンバ81の吸引動作および排出動作が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあると判断することができるとともに、パソコン4の制御部4aにより、容易に、メンテナンス用管理装置(サーバ)5が設置されたメンテナンス会社は、血液塗抹標本作製装置2の分注ピペット21bの後退動作やチャンバ81の吸引動作および排出動作が警告状態にあることを認識することができる。
【0056】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0057】
上記実施形態では、本発明を、血液塗抹標本作製装置を含む臨床検体処理装置に適用した例について説明したが、本発明はこれに限らず、他の臨床検体処理装置にも適用可能である。たとえば、血液検体に対して、血球数、ヘマトクリットまたはヘモグロビンなどを分析する血球分析装置(血液分析装置)、感染症や癌マーカーの抗原または抗体の濃度を求める免疫測定装置、血清や血漿検体に対して、凝固機能を検査する血液凝固測定装置、血清総蛋白量や臓器機能の指標である酵素活性を測定する生化学分析装置、尿検体に対して、蛋白質、糖、赤血球の有無を判定する尿定性装置、または、赤血球、白血球、上皮細胞、円柱、細菌を定量する尿沈渣検査装置などの臨床検体処理装置にも適用可能である。
【0058】
また、上記実施形態では、装置のシャットダウン時に、血液塗抹標本作製装置の状態情報(警告情報およびエラー情報)をパソコンからメンテナンス用管理装置に送信する例を示したが、本発明はこれに限らず、装置の起動時に、血液塗抹標本作製装置の状態情報(警告情報およびエラー情報)をパソコンからメンテナンス用管理装置に送信するようにしてもよい。また、エラー情報や警告情報の中の緊急を要する情報を、シャットダウン時や起動時を待たずに、リアルタイムで、パソコンからメンテナンス用管理装置に送信するようにしてもよい。
【0059】
たとえば、図11は、図10に示した本発明の一実施形態の変形例によるチャンバ81の排出動作における状態認識を説明するためのフローチャートである。図11を参照して、本変形例では、チャンバ81の排出動作のエラー情報を、血液塗抹標本作製装置2のシャットダウンを待たずに、リアルタイムでパソコン4からメンテナンス用管理装置(サーバ)5に送信する。すなわち、図11に示すステップS31〜S38において、図10に示すステップS31〜S38と同様の処理が行われた後、ステップS41において、パソコン4の制御部4aにより、パソコン4のメモリ4bに保存されたエラー情報が緊急を要するエラー情報(緊急情報)であるか否かが判断される。そして、ステップS41において、緊急情報であると判断された場合には、ステップS42において、パソコン4の制御部4aにより、緊急情報が、シャットダウンを待たずに直ちに電子メールによりメンテナンス用管理装置5に送信される。一方、ステップS41において、緊急情報でないと判断された場合には、ステップS39に進み、図10に示すステップS39と同様の処理が行われる。すなわち、パソコン4の制御部4aにより、パソコン4のメモリ4bに保存されているエラー情報が、血液塗抹標本作製装置2のシャットダウン時に電子メールによりメンテナンス用管理装置5に送信される。なお、上記変形例では、チャンバ81の排出動作のエラー情報を、シャットダウンを待たずにリアルタイムでパソコン4からメンテナンス用管理装置(サーバ)5に送信する例を示したが、分注ピペット21bの上昇動作および後退動作やチャンバ81の吸引動作エラー情報を、シャットダウンを待たずにリアルタイムでパソコン4からメンテナンス用管理装置(サーバ)5に送信してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、電子メールを用いて、血液塗抹標本作製装置の状態情報(警告情報およびエラー情報)をメンテナンス用管理装置(サーバ)に送信するようにしたが、本発明はこれに限らず、電子メール以外のデータ通信手法により、血液塗抹標本作製装置の状態情報(警告情報およびエラー情報)をメンテナンス用管理装置(サーバ)に送信するようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、パソコン4の制御部4aに電子メールの送信機能を持たせた例を示したが、本発明はこれに限らず、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aに電子メールの送信機能を持たせてもよい。その場合、臨床検体処理装置1は、パソコン4を必要としないので、臨床検体処理装置1の構成を簡略化することができる。
【0062】
また、上記実施形態では、血液塗抹標本作製装置2の吸引分注機構部21の分注ピペット21bの上昇動作および後退動作の警告情報と、血液塗抹標本作製装置2の染色部27の第3吸引排出部27dに染色液を供給するチャンバ81の吸引動作および排出動作の警告情報とをメンテナンス用管理装置に送信する例を示したが、本発明はこれに限らず、血液塗抹標本作製装置2の他の部分の動作の警告情報をメンテナンス用管理装置に送信してもよい。たとえば、吸引分注機構部21のピアサ21aの上昇動作の警告情報、染色部27の第3吸引排出部27d以外の吸引排出部に染色液や洗浄用の水を供給するチャンバの吸引動作および排出動作の警告情報、血液塗抹標本作製装置2のその他のチャンバ(たとえば、排液チャンバなど)の吸引動作および排出動作の警告情報をメンテナンス用管理装置に送信するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態による臨床検体処理装置および外部のメンテナンス用管理装置を備えた臨床検体処理システムの全体構成を示した平面図である。
【図2】図1に示した本発明の一実施形態による臨床検体処理装置の血液塗抹標本作製装置および搬送装置を示した斜視図である。
【図3】図2に示した血液塗抹標本作製装置の内部構造を示した平面図である。
【図4】図3に示した血液塗抹標本作製装置の吸引分注機構部を示した平面図である。
【図5】図3に示した血液塗抹標本作製装置の染色部の第3吸引排出部を示した平面図である。
【図6】図5に示した染色部の第3吸引排出部に供給される染色液の供給経路を示した流体回路図である。
【図7】図3に示した吸引分注機構部の分注ピペットの上昇動作における状態認識を説明するためのフローチャートである。
【図8】図3に示した吸引分注機構部の分注ピペットの後退動作における状態認識を説明するためのフローチャートである。
【図9】図6に示したチャンバの吸引動作における状態認識を説明するためのフローチャートである。
【図10】図6に示したチャンバの排出動作における状態認識を説明するためのフローチャートである。
【図11】図10に示した本発明の一実施形態の変形例によるチャンバの排出動作における状態認識を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
1 臨床検体処理装置
2 血液塗抹標本作製装置
2a 制御部(比較手段)
4 パソコン(コンピュータ)
4a 制御部(送信手段)
5 メンテナンス用管理装置(サーバ)
21d 前後駆動用モータ(モータ)
21g 上下駆動用モータ(モータ)
81b フロートスイッチ(スイッチ手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、臨床検体処理装置および臨床検体処理システムに関し、特に、ネットワークを介してメンテナンス用管理装置に接続可能な臨床検体処理装置および臨床検体処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、臨床検体処理装置として、血液検体に対して塗抹標本を作製する塗抹標本作製装置が知られている。この塗抹標本作製装置では、正確かつ迅速に血液検体に対して塗抹標本を作製する必要があるため、装置の異常(故障)に起因する装置の停止回数を減少させる必要があるとともに、装置が停止した場合には、その異常をユーザや装置のメンテナンス会社に知らせる必要がある。そこで、従来では、装置に異常が発生したことを、ユーザなどに知らせる技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、装置の異常発生時に、装置の異常内容を示すデータを、電子メールでユーザのパソコンなどの所定の宛先へ送信する自動分析装置が開示されている。これにより、特許文献1では、自動分析装置のユーザなどは、自動分析装置に異常が発生した場合に、その異常を知ることが可能である。
【特許文献1】特開平10−308737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された自動分析装置では、装置が異常状態にあることを知ることは可能であるが、装置が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い状態(警告状態)にあることを知ることはできない。このため、装置の故障を未然に防止することが困難であるので、装置の異常(故障)に起因する装置の停止回数を減少させるのは困難であるという問題点がある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、装置の異常(故障)に起因する装置の停止回数を減少させることが可能な臨床検体処理装置および臨床検体処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
この発明の第1の局面による臨床検体処理装置は、外部に設置されたメンテナンス用管理装置にネットワークを介して接続可能な臨床検体処理装置であって、臨床検体処理装置の所定の動作の動作検出信号に基づく数値と、所定の動作が非異常状態の範囲内にあることの基準となる第1のしきい値とを比較する比較手段と、動作検出信号に基づく数値が第1のしきい値を超えた場合に、臨床検体処理装置が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあることを示す警告情報を、ネットワークを介して、メンテナンス用管理装置に送信する送信手段とを備えている。
【0007】
この第1の局面による臨床検体処理装置では、上記のように、臨床検体処理装置の所定の動作の動作検出信号に基づく数値と、臨床検体処理装置の所定の動作が非異常状態の範囲内にあることの基準となる第1のしきい値とを比較する比較手段を設けることによって、その比較手段により、臨床検体処理装置が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあると判断することができる。また、臨床検体処理装置が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあることを示す警告情報を、ネットワークを介して、外部に設置されたメンテナンス用管理装置に送信する送信手段を設けることによって、その送信手段により、メンテナンス用管理装置が設置されたメンテナンス会社は、臨床検体処理装置が警告状態にあることを認識することができる。これによって、臨床検体処理装置が故障する前の段階で適切なメンテナンスを行うことができるので、臨床検体処理装置に故障が発生するのを未然に抑制することができる。その結果、臨床検体処理装置の故障回数を減少させることができるので、装置の異常(故障)に起因する装置の停止回数を減少させることができる。
【0008】
上記第1の局面による臨床検体処理装置において、好ましくは、比較手段は、動作検出信号に基づく数値と、第1のしきい値および臨床検体処理装置の所定の動作が異常状態にあることを判定するための基準となる第2のしきい値とを比較し、送信手段は、動作検出信号に基づく数値が第1のしきい値と第2のしきい値との間にある場合に、警告情報を、ネットワークを介して、メンテナンス用管理装置に送信する。このように構成すれば、容易に、比較手段により、臨床検体処理装置が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあると判断することができるとともに、送信手段により、臨床検体処理装置の警告情報を、外部に設置されたメンテナンス用管理装置に送信することができる。
【0009】
上記第1の局面による臨床検体処理装置において、好ましくは、比較手段は、動作検出信号に基づく数値と、臨床検体処理装置の所定の動作が異常状態にあることを判定するための基準となる第2のしきい値とを比較し、送信手段は、動作検出信号に基づく数値が第2のしきい値を超えた場合に、臨床検体処理装置が異常状態にあることを示す異常情報を、ネットワークを介して、メンテナンス用管理装置に送信する。このように構成すれば、比較手段により、臨床検体処理装置が警告状態にあることのみならず、異常状態にあることも判断することができるとともに、送信手段により、臨床検体処理装置の警告情報のみならず、異常情報も外部に設置されたメンテナンス用管理装置に送信することができる。
【0010】
上記第1の局面による臨床検体処理装置において、好ましくは、臨床検体処理装置の少なくとも警告情報を収集するコンピュータをさらに備え、送信手段は、コンピュータに設けられている。このように構成すれば、コンピュータを用いて、容易に、臨床検体処理装置の警告情報を外部のメンテナンス会社のメンテナンス用管理装置に送信することができる。
【0011】
上記第1の局面による臨床検体処理装置において、好ましくは、送信手段は、臨床検体処理装置の少なくとも警告情報を、電子メールを用いて、メンテナンス用管理装置に送信する。このように構成すれば、メンテナンス用管理装置が設置されたメンテナンス会社の管理者は、電子メールの警告情報を読むことによって、臨床検体処理装置が警告状態にあることを認識することができる。
【0012】
上記第1の局面による臨床検体処理装置において、好ましくは、送信手段は、臨床検体処理装置の少なくとも警告情報を、所定のタイミングで、ネットワークを介してメンテナンス用管理装置に送信する。このように構成すれば、メンテナンス用管理装置が設置されたメンテナンス会社の管理者は、臨床検体処理装置が警告状態にあることを所定のタイミングで認識することができる。
【0013】
上記第1の局面による臨床検体処理装置において、好ましくは、送信手段は、臨床検体処理装置の少なくとも警告情報を、臨床検体処理装置の起動時またはシャットダウン時に、ネットワークを介してメンテナンス用管理装置に送信する。このように構成すれば、メンテナンス用管理装置が設置されたメンテナンス会社の管理者は、臨床検体処理装置が警告状態にあることを定期的に認識することができる。
【0014】
上記第1の局面による臨床検体処理装置において、好ましくは、臨床検体処理装置の動作検出信号に基づく数値は、動作監視時間、および、動作タイミング信号に基づく数値の少なくとも一方を含む。このように構成すれば、比較手段により、動作監視時間や動作タイミング信号に基づく数値を所定のしきい値と比較することによって、容易に、臨床検体処理装置が警告状態にあるか否かを判断することができる。
【0015】
上記動作タイミング信号に基づく数値を含む構成において、好ましくは、動作タイミング信号に基づく数値は、モータのパルス数である。このように構成すれば、比較手段により、モータのパルス数をパルス数のしきい値と比較することによって、容易に、臨床検体処理装置が警告状態にあるか否かを判断することができる。
【0016】
上記動作監視時間を含む構成において、好ましくは、動作監視時間は、臨床検体処理装置の所定の動作の開始を起点として、スイッチ手段がオン状態またはオフ状態に切り替わるまでに要した時間である。このように構成すれば、動作開始の起点と、スイッチ手段のオン状態またはオフ状態の切り替わりとを検知することにより、容易に、臨床検体処理装置の動作監視時間を検出することができるので、その動作監視時間を所定のしきい値と比較することによって、容易に、臨床検体処理装置が警告状態にあるか否かを判断することができる。
【0017】
この場合、好ましくは、スイッチ手段は、所定の領域に収容された液体量の変化に伴って上下方向に移動することによりオン状態またはオフ状態に切り替わるフロートスイッチである。このように構成すれば、フロートスイッチのオン状態またはオフ状態の切り替わりを検知することにより、臨床検体処理装置のフロートスイッチを用いる動作の動作監視時間を容易に検出することができる。
【0018】
この発明の第2の局面による臨床検体処理システムは、外部に設置されたメンテナンス用管理装置と、メンテナンス用管理装置にネットワークを介して接続可能な臨床検体処理装置と、臨床検体処理装置の所定の動作の動作検出信号に基づく数値と、所定の動作が非異常状態の範囲内にあることの基準となる第1のしきい値とを比較する比較手段と、動作検出信号に基づく数値が第1のしきい値を超えた場合に、臨床検体処理装置が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあることを示す警告情報を、ネットワークを介して、メンテナンス用管理装置に送信する送信手段とを備えている。
【0019】
この第2の局面による臨床検体処理システムでは、上記のように、臨床検体処理装置の所定の動作の動作検出信号に基づく数値と、臨床検体処理装置の所定の動作が非異常状態の範囲内にあることの基準となる第1のしきい値とを比較する比較手段を設けることによって、その比較手段により、臨床検体処理装置が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあると判断することができる。また、臨床検体処理装置が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあることを示す警告情報を、ネットワークを介して、外部に設置されたメンテナンス用管理装置に送信する送信手段を設けることによって、その送信手段により、メンテナンス用管理装置が設置されたメンテナンス会社は、臨床検体処理装置が警告状態にあることを認識することができる。これによって、臨床検体処理装置が故障する前の段階で適切なメンテナンスを行うことができるので、臨床検体処理装置に故障が発生するのを未然に抑制することができる。その結果、臨床検体処理装置の故障回数を減少させることができるので、装置の異常(故障)に起因する装置の停止回数を減少させることができる。
【0020】
上記第2の局面による臨床検体処理システムにおいて、好ましくは、比較手段は、動作検出信号に基づく数値と、第1のしきい値および臨床検体処理装置の所定の動作が異常状態にあることを判定するための基準となる第2のしきい値とを比較し、送信手段は、動作検出信号に基づく数値が第1のしきい値と第2のしきい値との間にある場合に、警告情報を、ネットワークを介して、メンテナンス用管理装置に送信する。このように構成すれば、容易に、比較手段により、臨床検体処理装置が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあると判断することができるとともに、送信手段により、臨床検体処理装置の警告情報を、外部に設置されたメンテナンス用管理装置に送信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態による血液塗抹標本作製装置を含む臨床検体処理装置と、外部のメンテナンス用管理装置とを備えた臨床検体処理システムの全体構成を示した概略図であり、図2は、血液塗抹標本作製装置および搬送装置を示した斜視図である。また、図3〜図5は、血液塗抹標本作製装置の構造を説明するための図であり、図6は、血液塗抹標本作製装置の染色部の第3吸引排出部に供給される染色液の供給経路を示した流体回路図である。
【0023】
まず、図1を参照して、本実施形態による臨床検体処理装置1の全体構成について説明する。本実施形態による臨床検体処理装置1は、図1に示すように、血液塗抹標本作製装置2と、搬送装置3と、パーソナルコンピュータ(パソコン)4とを備えている。また、パソコン4は、ネットワークを介して、外部のメンテナンス会社に設置されたメンテナンス用管理装置(サーバ)5に接続されている。この臨床検体処理装置1と、血液塗抹標本作製装置2と、搬送装置3と、パソコン4と、メンテナンス用管理装置(サーバ)5とによって、臨床検体処理システムが構成されている。なお、パソコン4は、本発明の「コンピュータ」の一例である。また、ネットワークとしては、電話回線などの専用のネットワーク、インターネット、イントラネット、LANなどのネットワークを用いることが可能である。
【0024】
血液塗抹標本作製装置2は、血液検体の塗抹標本を作製するために設けられている。この血液塗抹標本作製装置2は、制御部2aを含んでいるとともに、パソコン4に接続されている。ここで、本実施形態では、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aは、CPU、ROM、RAMなどからなる。この制御部2aは、血液塗抹標本作製装置2の動作制御を行う機能と、血液塗抹標本作製装置2が異常状態にあることを判断する機能と、血液塗抹標本作製装置2が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあることを判断する機能と、血液塗抹標本作製装置2が異常状態および警告状態にあることの情報(異常情報および警告情報)をパソコン4に送信する機能とを有する。なお、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aは、本発明の「比較手段」の一例である。また、搬送装置3は、血液塗抹標本作製装置2の前面に設置されており、搬入部3aおよび取り出し部3bを有している。この搬送装置3は、血液が収容された試験管101を収納する検体ラック100を血液塗抹標本作製装置2に自動的に搬送するために設けられている。
【0025】
また、本実施形態では、パソコン4は、血液塗抹標本作製装置2の状態情報(異常情報および警告情報)をメンテナンス用管理装置(サーバ)5に送信するための制御部4aと、血液塗抹標本作製装置2の状態情報(異常情報および警告情報)を保存するためのメモリ4bとを含んでいる。このパソコン4の制御部4aは、CPU、ROM、RAMなどからなる。また、パソコン4の制御部4aには、電子メールの送受信および加工を行うプログラムが格納されている。なお、パソコン4の制御部4aは、本発明の「送信手段」の一例である。
【0026】
次に、図2〜図6を参照して、血液塗抹標本作製装置2および搬送装置3の全体構成について説明する。まず、図2に示すように、血液塗抹標本作製装置2には、制御部2aに加えて、タッチパネルからなる表示操作部2bと、血液が収容された試験管101を搬送装置3側から血液塗抹標本作製装置2側に搬送するためのハンド部材2cとが設けられている。また、血液塗抹標本作製装置2は、図3に示すように、吸引分注機構部21と、塗抹部22と、樹脂製のカセット23と、カセット収容部24と、カセット搬送部25と、スライドガラス挿入部26と、染色部27と、保管部28とを備えている。また、図3に示すように、血液塗抹標本作製装置2の下方には、染色部27において使用する染色液や洗浄用の水などを収容した複数の容器80が配置されている。
【0027】
吸引分注機構部21は、ハンド部材2c(図2参照)によって血液塗抹標本作製装置2側に搬送された試験管101から血液を吸引するとともに、吸引した血液をスライドガラス10に滴下する機能を有する。この吸引分注機構部21は、図4に示すように、試験管101(図2参照)から血液を吸引するためのピアサ(吸引針)21aと、吸引した血液をスライドガラス10に分注するための分注ピペット21bと、分注ピペット21bを支持する支持部材21cと、支持部材21cを前方(図3の矢印A方向)および後方(図3の矢印B方向)に移動させる前後駆動用モータ21dと、支持部材21cの所定の部分を検出することにより分注ピペット21bの水平方向における原点位置を検出するためのセンサ21eと、支持部材21cおよび前後駆動用モータ21dを支持する支持部材21fと、支持部材21fを上方(図4の矢印C方向)および下方(図4の矢印D方向)に移動させる上下駆動用モータ21gと、支持部材21fの所定の部分を検出することにより分注ピペット21bの垂直方向における原点位置を検出するためのセンサ21hとを含んでいる。なお、前後駆動用モータ21dおよび上下駆動用モータ21gは、本発明の「モータ」の一例である。
【0028】
塗抹部22は、図3に示すように、スライドガラス10を分注・塗抹位置90に供給するとともに、スライドガラス10に滴下された血液を塗抹して乾燥し、かつ、スライドガラス10に印字を行うために設けられている。また、樹脂製のカセット23は、塗抹が施されたスライドガラス10および染色工程で用いる液体(染色液)を収容することが可能なように構成されている。このカセット23は、図5に示すように、スライドガラス収納孔23aと、染色液吸引分注孔23bとを含んでいる。スライドガラス収納孔23aと、染色液吸引分注孔23bとは、内部で繋がっている。
【0029】
また、図3に示すように、カセット収容部24は、カセット23をカセット搬送部25に搬入するために設けられており、送り込みベルト24aを含んでいる。また、カセット搬送部25は、カセット収容部24から搬入されたカセット23をスライドガラス挿入部26および染色部27に搬送するために設けられている。このカセット搬送部25は、図3に示すように、水平方向に移動可能なカセット搬送部材25aと、カセット収容部24から供給されたカセット23を搬送するための搬送路25bとを含んでいる。また、図3に示したスライドガラス挿入部26は、塗抹および印字が施されたスライドガラス10をカセット23のスライドガラス収納孔23aに収納するために設けられている。
【0030】
図3に示した染色部27は、カセット搬送部材25aにより搬送されたカセット23の染色液吸引分注孔23bに染色液を供給することにより、塗抹済みのスライドガラス10に染色を施すために設けられている。この染色部27は、カセット23を搬送するための搬送ベルト27aと、カセット23に対して染色液の供給および排出を行うための第1〜第5吸引排出部27b〜27fとを含んでいる。
【0031】
ここで、図5および図6を参照して、第1〜第5吸引排出部27b〜27fのうち、第3吸引排出部27dに例を取って、その構造および第3吸引排出部27dで使用される染色液の流体経路について説明する。第3吸引排出部27dは、図5に示すように、カセット23に対して染色液の供給および排出を行う供給ピペット71および排出ピペット72と、供給ピペット71および排出ピペット72を支持するピペット支持部材73と、ピペット支持部材73を上下方向(図5の矢印E方向)に移動させるモータ74aおよび駆動ベルト74bを有する駆動機構部74とを含んでいる。第3吸引排出部27dは、カセット23に対して、供給ピペット71および排出ピペット72を駆動機構部74により下方向に移動させることにより、染色液の供給および排出を行うように構成されている。
【0032】
次に、第3吸引排出部27dの供給ピペット71から供給される染色液の流体経路は、図6に示すように、染色液を収容するための容器80と、染色液を一時的に貯留するためのチャンバ81と、チャンバ81に対して加圧および減圧を行うための気圧調節器82と、染色液と染色液を希釈するための希釈液とを混合するための混合チャンバ83と、チャンバ81と混合チャンバ83との間で染色液を移動させるためのダイヤフラムポンプ84と、ダイヤフラムポンプ84に対して加圧および減圧を行うための気圧調節器85とを含んでいる。このチャンバ81は、容器80、気圧調節器82、混合チャンバ83および排出口とパイプによって接続されている。混合チャンバ83は、染色部27の第3吸引排出部27dの供給ピペット71とパイプによって接続されている。また、容器80とチャンバ81との間、チャンバ81と混合チャンバ83との間、および、チャンバ81と排出口との間には、それぞれ、バルブ86、87および88が設置されている。ダイヤフラムポンプ84は、パイプによってバルブ87に接続されている。また、混合チャンバ83には、染色液を希釈するための希釈液を供給するためのパイプが接続されている。
【0033】
チャンバ81は、図6に示すように、染色液を収容するための貯留部81aと、貯留部81aの内部に設けられたフロートスイッチ81bとを有している。このフロートスイッチ81bは、染色液に浮くことが可能な材質により構成され、内部に磁石81cが埋め込まれた浮き部材81dと、浮き部材81dを上下方向に移動可能に支持するとともに、磁気検知型のリードスイッチ81eが内蔵された支持棒81fとから構成されている。また、リードスイッチ81eは、貯留部81a内の染色液が規定量に達したときに浮き部材81dの磁石81cの磁気を検知可能な支持棒81fの所定位置に埋め込まれている。フロートスイッチ81bは、浮き部材81dが所定位置に近づいたときに、支持棒81fのリードスイッチ81eが浮き部材81d内の磁石81cの磁気を検知してオン状態になるとともに、浮き部材81dが所定位置から離れたときに、支持棒81fのリードスイッチ81eが浮き部材81d内の磁石81cの磁気を検知できずにオフ状態になるように構成されている。なお、フロートスイッチ81bは、本発明の「スイッチ手段」の一例である。
【0034】
また、図3に示した保管部28は、染色部27により染色されたスライドガラス10が収納されたカセット23を保管するために設けられている。この保管部28には、カセット23を搬送するための搬送ベルト28aが設けられている。
【0035】
次に、図1〜図4および図6〜図10を参照して、本実施形態による臨床検体処理装置1の動作について説明する。まず、検体の提供者(患者)のカルテ情報が、図示しないホストコンピュータに入力される。そして、図1および図2に示した血液塗抹標本作製装置2は、ホストコンピュータの情報に従って、搬送装置3により搬送される検体ラック100に載置された試験管101から血液検体を採取して血液塗抹標本を作製する。
【0036】
血液塗抹標本作製装置2により血液塗抹標本を作製する際には、まず、吸引分注動作として、図2に示すように、血液検体が収容された試験管101が載置された検体ラック100を搬送装置3の搬入部3aにセットする。そして、表示操作部2bに表示された自動吸引のスタートスイッチを押す。これにより、検体ラック100は、搬送装置3の取り出し部3bに搬送される。そして、血液塗抹標本作製装置2のハンド部材2cが、検体ラック100の試験管101を持ち上げて攪拌した後、図3に示す吸引分注機構部21に試験管101を配置する。そして、ピアサ21aにより試験管101内の血液を吸引する。この後、分注ピペット21bを前方(図3の矢印A方向)および下方(図4の矢印D方向)に移動させて図3に示した分注・塗抹位置90に移動させた後、スライドガラス10に血液を分注ピペット21bから滴下(分注)する。この分注動作の後、分注ピペット21bを上方(図4の矢印C方向)および後方(図3の矢印B方向)に移動させて原点位置に移動させる。分注ピペット21bを上方に移動させる際には、分注動作の後、分注ピペット21bが下端位置に位置する状態で、上下駆動用モータ21gを駆動させる。これにより、分注ピペット21bを支持する支持部材21fが図4の矢印C方向へ移動される。そして、支持部材21fがセンサ21hによって検出されることにより、上下駆動用モータ21gの駆動が停止する。この分注ピペット21bの上昇動作は、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aによって制御される。
【0037】
ここで、図7を参照して、本実施形態による分注ピペット21bの上昇動作における状態認識フローについて説明する。まず、ステップS1において、上下駆動用モータ21gによる分注ピペット21bの上昇動作が終了する。その後、ステップS2において、上下駆動用モータ21gにより分注ピペット21bを上方(図4の矢印C方向)に移動させる際の上下駆動用モータ21gのパルス数を計測するとともに、分注ピペット21bの上昇動作の開始から終了までに要した上下駆動用モータ21gのパルス数が2700以上3300以下の範囲内にあるか否かが判断される。このステップS2におけるパルス数の計測および判断は、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより行われる。なお、上下駆動用モータ21gのパルス数は、本発明の「動作検出信号に基づく数値」および「動作タイミング信号に基づく数値」の一例であり、上下駆動用モータ21gのパルス数2700および3300は、本発明の「第1のしきい値」の一例である。そして、ステップS2において、分注ピペット21bの上昇動作の開始から終了までに要した上下駆動用モータ21gのパルス数が2700以上3300以下の範囲内にあると判断された場合には、ステップS3において、分注ピペット21bの上昇動作が正常状態にあると判断され、そのまま終了する。ステップS2において、分注ピペット21bの上昇動作の開始から終了までに要した上下駆動用モータ21gのパルス数が2700以上3300以下の範囲内にないと判断された場合には、ステップS4において、分注ピペット21bの上昇動作の開始から終了までに要した上下駆動用モータ21gのパルス数が2400以上2700未満、または、3300以上3600未満の範囲内にあるか否かが血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより判断される。なお、この場合の上下駆動用モータ21gのパルス数2400および3600は、本発明の「第2のしきい値」の一例である。そして、ステップS4において、分注ピペット21bの上昇動作の開始から終了までに要した上下駆動用モータ21gのパルス数が2400以上2700未満、または、3300以上3600未満の範囲内にあると判断された場合には、ステップS5において、分注ピペット21bの上昇動作が警告状態にあると認識される。なお、上記ステップS3〜S5の処理は、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより行われる。
【0038】
そして、ステップS6において、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより、警告情報を血液塗抹標本作製装置2からパソコン4に送信するとともに、パソコン4側では、その警告情報をメモリ4b(図1参照)に保存し、血液塗抹標本作製装置2は、自動的に次の動作を開始する。また、ステップS4において、分注ピペット21bの上昇動作の開始から終了までに要した上下駆動用モータ21gのパルス数が2400以上2700未満、または、3300以上3600未満の範囲内にないと判断された場合には、ステップS7において、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより、分注ピペット21bの上昇動作が異常(エラー)状態にあると認識される。そして、ステップS8において、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより、血液塗抹標本作製装置2の表示操作部2bにエラー表示を行うとともに、エラー情報をパソコン4に送信し、パソコン4側では、その異常情報をメモリ4bに保存する。そして、ステップS9において、血液塗抹標本作製装置2のシャットダウン時に、パソコン4のメモリ4bに保存されているエラー情報および警告情報をパソコン4の制御部4aにより、電子メールでメンテナンス用管理装置5に送信する。このようにして、分注ピペット21bの上昇動作の警告情報およびエラー情報が外部のメンテナンス用管理装置5に送信される。
【0039】
また、分注ピペット21bを上昇させた後、後方に移動させる際には、上下駆動用モータ21gによる上昇動作の後、分注ピペット21bが前端位置に位置する状態で、前後駆動用モータ21dを駆動させる。これにより、分注ピペット21bを支持する支持部材21cが図3の矢印B方向へ移動される。そして、支持部材21cがセンサ21eによって検出されることにより、前後駆動用モータ21dの駆動が停止する。この分注ピペット21bの後退動作は、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aによって制御される。
【0040】
ここで、図8を参照して、本実施形態による分注ピペット21bの後退動作における状態認識フローについて説明する。まず、ステップS11において、前後駆動用モータ21dによる分注ピペット21bの後退動作が終了する。その後、ステップS12において、前後駆動用モータ21dにより分注ピペット21bを後方(図3の矢印B方向)に移動させる際の前後駆動用モータ21dのパルス数を計測するとともに、分注ピペット21bの後退動作の開始から終了までに要した前後駆動用モータ21dのパルス数が270以上330以下の範囲内にあるか否かが判断される。このステップS12におけるパルス数の計測および判断は、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより行われる。なお、前後駆動用モータ21dのパルス数は、本発明の「動作検出信号に基づく数値」および「動作タイミング信号に基づく数値」の一例であり、前後駆動用モータ21dのパルス数270および330は、本発明の「第1のしきい値」の一例である。そして、ステップS12において、分注ピペット21bの後退動作の開始から終了までに要した前後駆動用モータ21dのパルス数が270以上330以下の範囲内にあると判断された場合には、ステップS13において、分注ピペット21bの後退動作が正常状態にあると判断され、そのまま終了する。ステップS12において、分注ピペット21bの後退動作の開始から終了までに要した前後駆動用モータ21dのパルス数が270以上330以下の範囲内にないと判断された場合には、ステップS14において、分注ピペット21bの後退動作の開始から終了までに要した前後駆動用モータ21dのパルス数が240以上270未満、または、330以上360未満の範囲内にあるか否かが血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより判断される。なお、この場合の前後駆動用モータ21dのパルス数240および360は、本発明の「第2のしきい値」の一例である。そして、ステップS14において、分注ピペット21bの後退動作の開始から終了までに要した前後駆動用モータ21dのパルス数が240以上270未満、または、330以上360未満の範囲内にあると判断された場合には、ステップS15において、分注ピペット21bの後退動作が警告状態にあると認識される。なお、上記ステップS13〜S15の処理は、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより行われる。
【0041】
そして、ステップS16において、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより、警告情報を血液塗抹標本作製装置2からパソコン4に送信するとともに、パソコン4側では、その警告情報をメモリ4b(図1参照)に保存し、血液塗抹標本作製装置2は、自動的に次の動作を開始する。また、ステップS14において、分注ピペット21bの後退動作の開始から終了までに要した前後駆動用モータ21dのパルス数が240以上270未満、または、330以上360未満の範囲内にないと判断された場合には、ステップS17において、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより、分注ピペット21bの後退動作が異常(エラー)状態にあると認識される。そして、ステップS18において、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより、血液塗抹標本作製装置2の表示操作部2bにエラー表示を行うとともに、エラー情報をパソコン4に送信し、パソコン4側では、その異常情報をメモリ4bに保存する。そして、ステップS19において、血液塗抹標本作製装置2のシャットダウン時に、パソコン4のメモリ4bに保存されているエラー情報および警告情報をパソコン4の制御部4aにより、電子メールでメンテナンス用管理装置5に送信する。このようにして、分注ピペット21bの後退動作の警告情報およびエラー情報が外部のメンテナンス用管理装置5に送信される。
【0042】
上記した吸引分注機構部21による吸引分注動作と並行して、または、吸引分注動作の後、塗抹部22による塗抹動作が行われる。この塗抹部22では、スライドガラス10を分注・塗抹位置90(図3参照)に供給するとともに、スライドガラス10に滴下された血液を塗抹して乾燥する。そして、スライドガラス10に血液検体の情報の印字を行った後、印字後のスライドガラス10を、スライドガラス挿入部26側に移動する。次に、図3に示したカセット収容部24にセットされたカセット23が送り込みベルト24aによってカセット搬送部25の搬送路25bに送り込まれる。そして、カセット搬送部25のカセット搬送部材25aによってスライドガラス挿入部26へ搬送される。
【0043】
図3に示したスライドガラス挿入部26では、まず、カセット23のスライドガラス収納孔23aにスライドガラス10が収納されているか否かが判断される。そして、カセット23にスライドガラス10が収納されていると判断された場合には、そのまま、カセット搬送部材25aにより搬送路25bに沿ってカセット23が染色部27に移動される。この場合、カセット23は、染色部27による染色処理が行われずに保管部28に移動される。また、スライドガラス挿入部26において、カセット23のスライドガラス収納孔23aにスライドガラス10が収納されていないと判断された場合には、スライドガラス挿入部26によるカセット23へのスライドガラス10の挿入動作が行われた後、塗抹済みのスライドガラス10が収納されたカセット23が、カセット搬送部材25aにより染色部27に搬送される。
【0044】
本実施形態による染色部27では、カセット23が搬送ベルト27aにより搬送されるとともに、第1吸引排出部27b〜第5吸引排出部27fにおいて、染色液や洗浄用の水を、順次、カセット23の染色液吸引分注孔23bに対して分注および吸引排出することにより、カセット23の塗抹済みのスライドガラス10に染色処理を施す。また、スライドガラス10の染色処理に使用される染色液などの液体は、図6に示すように、チャンバ81に一時的に貯留された後、供給ピペット71からカセット23内に分注される。
【0045】
ここで、図6を参照して、上記した第1〜第5吸引排出部27b〜27fの動作のうち、第3吸引排出部27dにおいてカセット23内に分注される染色液を一時的に貯留するチャンバ81の吸引動作および排出動作について説明する。
【0046】
まず、チャンバ81の吸引動作を行う場合には、図6に示すバルブ86を開放状態にするとともに、バルブ88を遮断状態にし、バルブ87において、チャンバ81と混合チャンバ83との間の流路を遮断状態にする。そして、気圧調節器82によりチャンバ81内を減圧する。これにより、容器80内の染色液がチャンバ81内に移動する。この染色液の流入に伴ってチャンバ81内に設置されているフロートスイッチ81bの浮き部材81dが上方に移動する。そして、フロートスイッチ81bがオン状態になることにより、気圧調節器82による減圧が解除され、チャンバ81による染色液の吸引動作が終了する。
【0047】
次に、チャンバ81内の染色液を混合チャンバ83に移動させる場合には、バルブ86および88を遮断状態にするとともに、バルブ87において、チャンバ81とダイヤフラムポンプ87との間の流路を開放状態にする。そして、気圧調節器85によりダイヤフラムポンプ84内を減圧する。これにより、チャンバ81内の染色液がダイヤフラムポンプ84内に一定量吸引される。その後、バルブ87において、ダイヤフラムポンプ84と混合チャンバ83との間の流路を開放状態にする。そして、気圧調節器85によりダイヤフラムポンプ84内を加圧する。これにより、ダイヤフラムポンプ84内の染色液が混合チャンバ83に一定量移動する。そして、染色液は、混合チャンバ83において希釈された後、第3吸引排出部27dの供給ピペット71からカセット23内に供給される。
【0048】
また、チャンバ81の排出動作を行う場合には、バルブ86を遮断状態にするとともに、バルブ88を開放状態にし、バルブ87において、チャンバ81と混合チャンバ83との間の流路を遮断状態にする。そして、気圧調節器82によりチャンバ81内を加圧する。これにより、チャンバ81内の染色液が排出口から装置外へ排出される。この染色液の流出に伴ってチャンバ81内に設置されているフロートスイッチ81bの浮き部材81dが下方に移動する。そして、フロートスイッチ81bがオフ状態になることにより、気圧調節器82による加圧が解除され、チャンバ81による染色液の排出動作が終了する。
【0049】
ここで、図9を参照して、本実施形態によるチャンバ81の吸引動作における状態認識フローについて説明する。まず、ステップS21において、チャンバ81による染色液の吸引動作が終了する。その後、ステップS22において、チャンバ81による染色液の吸引動作が開始してから、フロートスイッチ81bがオン状態になることにより吸引動作が終了するまでに要した時間を計測するとともに、5秒以内にフロートスイッチ81bがオン状態になり、チャンバ81の吸引動作が終了したか否かが判断される。このステップS22における時間の計測および判断は、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより行われる。なお、チャンバ81による染色液の吸引動作に要する時間は、本発明の「動作検出信号に基づく数値」および「動作監視時間」の一例であり、チャンバ81による染色液の吸引動作に要する時間5秒は、本発明の「第1のしきい値」の一例である。そして、ステップS22において、5秒以内にフロートスイッチ81bがオン状態になり、チャンバ81の吸引動作が終了したと判断された場合には、ステップS23において、チャンバ81による染色液の吸引動作が正常状態にあると判断され、そのまま終了する。ステップS22において、5秒以内にフロートスイッチ81bがオン状態にならずに、チャンバ81の吸引動作が終了しなかったと判断された場合には、ステップS24において、7秒以内にフロートスイッチ81bがオン状態になり、チャンバ81の吸引動作が終了したか否かが血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより判断される。なお、この場合のチャンバ81による染色液の吸引動作に要する時間7秒は、本発明の「第2のしきい値」の一例である。そして、ステップS24において、7秒以内にフロートスイッチ81bがオン状態になり、チャンバ81の吸引動作が終了したと判断された場合には、ステップS25において、チャンバ81による染色液の吸引動作が警告状態にあると認識される。なお、上記ステップS23〜S25の処理は、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより行われる。
【0050】
そして、ステップS26において、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより、警告情報を血液塗抹標本作製装置2からパソコン4に送信するとともに、パソコン4側では、その警告情報をメモリ4b(図1参照)に保存し、血液塗抹標本作製装置2は、自動的に次の動作を開始する。また、ステップS24において、7秒以内にフロートスイッチ81bがオン状態にならずに、チャンバ81の吸引動作が終了しなかったと判断された場合には、ステップS27において、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより、チャンバ81による染色液の吸引動作が異常(エラー)状態にあると認識される。そして、ステップS28において、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより、血液塗抹標本作製装置2の表示操作部2bにエラー表示を行うとともに、エラー情報をパソコン4に送信し、パソコン4側では、その異常情報をメモリ4bに保存する。そして、ステップS29において、血液塗抹標本作製装置2のシャットダウン時に、パソコン4のメモリ4bに保存されているエラー情報および警告情報をパソコン4の制御部4aにより、電子メールでメンテナンス用管理装置5に送信する。このようにして、チャンバ81の吸引動作の警告情報およびエラー情報が外部のメンテナンス用管理装置5に送信される。
【0051】
また、図10を参照して、本実施形態によるチャンバ81の排出動作における状態認識フローについて説明する。まず、ステップS31において、チャンバ81による染色液の排出動作が終了する。その後、ステップS32において、チャンバ81による染色液の排出動作が開始してから、フロートスイッチ81bがオフ状態になることにより排出動作が終了するまでに要した時間を計測するとともに、2秒以内にフロートスイッチ81bがオフ状態になり、チャンバ81の排出動作が終了したか否かが判断される。このステップS32における時間の計測および判断は、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより行われる。なお、チャンバ81による染色液の排出動作に要する時間は、本発明の「動作検出信号に基づく数値」および「動作監視時間」の一例であり、チャンバ81による染色液の排出動作に要する時間2秒は、本発明の「第1のしきい値」の一例である。そして、ステップS32において、2秒以内にフロートスイッチ81bがオフ状態になり、チャンバ81の排出動作が終了したと判断された場合には、ステップS33において、チャンバ81による染色液の排出動作が正常状態にあると判断され、そのまま終了する。ステップS32において、2秒以内にフロートスイッチ81bがオフ状態にならずに、チャンバ81の排出動作が終了しなかったと判断された場合には、ステップS34において、5秒以内にフロートスイッチ81bがオフ状態になり、チャンバ81の排出動作が終了したか否かが血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより判断される。なお、この場合のチャンバ81による染色液の排出動作に要する時間5秒は、本発明の「第2のしきい値」の一例である。そして、ステップS34において、5秒以内にフロートスイッチ81bがオフ状態になり、チャンバ81の排出動作が終了したと判断された場合には、ステップS35において、チャンバ81による染色液の排出動作が警告状態にあると認識される。なお、上記ステップS33〜S35の処理は、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより行われる。
【0052】
そして、ステップS36において、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより、警告情報を血液塗抹標本作製装置2からパソコン4に送信するとともに、パソコン4側では、その警告情報をメモリ4b(図1参照)に保存し、血液塗抹標本作製装置2は、自動的に次の動作を開始する。また、ステップS34において、5秒以内にフロートスイッチ81bがオフ状態にならずに、チャンバ81の排出動作が終了しなかったと判断された場合には、ステップS37において、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより、チャンバ81による染色液の排出動作が異常(エラー)状態にあると認識される。そして、ステップS38において、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aにより、血液塗抹標本作製装置2の表示操作部2bにエラー表示を行うとともに、エラー情報をパソコン4に送信し、パソコン4側では、その異常情報をメモリ4bに保存する。そして、ステップS39において、血液塗抹標本作製装置2のシャットダウン時に、パソコン4のメモリ4bに保存されているエラー情報および警告情報をパソコン4の制御部4aにより、電子メールでメンテナンス用管理装置5に送信する。このようにして、チャンバ81の排出動作の警告情報およびエラー情報が外部のメンテナンス用管理装置5に送信される。
【0053】
その後、染色済みのスライドガラス10が収納されたカセット23は、搬送ベルト27bから保管部28の搬送ベルト28aへ順次送り出される。そして、カセット23は、保管部28の搬送ベルト28aにより搬送されて保管される。
【0054】
本実施形態では、上記のように、血液塗抹標本作製装置2の分注ピペット21bの上昇動作の開始から終了までに要した上下駆動用モータ21gのパルス数と、血液塗抹標本作製装置2の分注ピペット21bの上昇動作が非異常状態の範囲内にあることの基準となる上下駆動用モータ21gのパルス数(2700および3300:第1のしきい値)、および、血液塗抹標本作製装置2の分注ピペット21bの上昇動作が異常状態にあることを判定するための基準となる上下駆動用モータ21gのパルス数(2400および3600:第2のしきい値)とを比較する血液塗抹標本作製装置2の制御部2aを設けることによって、その制御部2aにより、容易に、血液塗抹標本作製装置2の分注ピペット21bの上昇動作が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあると判断することができる。また、血液塗抹標本作製装置2の分注ピペット21bの上昇動作が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあることを示す警告情報を、ネットワークを介して、外部に設置されたメンテナンス用管理装置(サーバ)5に送信するパソコン4の制御部4aを設けることによって、容易に、メンテナンス用管理装置(サーバ)5が設置されたメンテナンス会社は、血液塗抹標本作製装置2の分注ピペット21bの上昇動作が警告状態にあることを認識することができる。これによって、血液塗抹標本作製装置2を含む臨床検体処理装置1が故障する前の段階で適切なメンテナンスを行うことができるので、臨床検体処理装置1に故障が発生するのを未然に抑制することができる。その結果、臨床検体処理装置1の故障回数を減少させることができるので、臨床検体処理装置1の異常(故障)に起因する臨床検体処理装置1の停止回数を減少させることができる。
【0055】
また、上記した分注ピペット21bの上昇動作の場合と同様に、分注ピペット21bの後退動作や、チャンバ81の吸引動作および排出動作においても、各々の動作を検出する信号(時間やパルス数)と、各々が対応する第1のしきい値および第2のしきい値とを比較する血液塗抹標本作製装置2の制御部2aを設けることによって、その制御部2aにより、容易に、血液塗抹標本作製装置2の分注ピペット21bの後退動作やチャンバ81の吸引動作および排出動作が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあると判断することができるとともに、パソコン4の制御部4aにより、容易に、メンテナンス用管理装置(サーバ)5が設置されたメンテナンス会社は、血液塗抹標本作製装置2の分注ピペット21bの後退動作やチャンバ81の吸引動作および排出動作が警告状態にあることを認識することができる。
【0056】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0057】
上記実施形態では、本発明を、血液塗抹標本作製装置を含む臨床検体処理装置に適用した例について説明したが、本発明はこれに限らず、他の臨床検体処理装置にも適用可能である。たとえば、血液検体に対して、血球数、ヘマトクリットまたはヘモグロビンなどを分析する血球分析装置(血液分析装置)、感染症や癌マーカーの抗原または抗体の濃度を求める免疫測定装置、血清や血漿検体に対して、凝固機能を検査する血液凝固測定装置、血清総蛋白量や臓器機能の指標である酵素活性を測定する生化学分析装置、尿検体に対して、蛋白質、糖、赤血球の有無を判定する尿定性装置、または、赤血球、白血球、上皮細胞、円柱、細菌を定量する尿沈渣検査装置などの臨床検体処理装置にも適用可能である。
【0058】
また、上記実施形態では、装置のシャットダウン時に、血液塗抹標本作製装置の状態情報(警告情報およびエラー情報)をパソコンからメンテナンス用管理装置に送信する例を示したが、本発明はこれに限らず、装置の起動時に、血液塗抹標本作製装置の状態情報(警告情報およびエラー情報)をパソコンからメンテナンス用管理装置に送信するようにしてもよい。また、エラー情報や警告情報の中の緊急を要する情報を、シャットダウン時や起動時を待たずに、リアルタイムで、パソコンからメンテナンス用管理装置に送信するようにしてもよい。
【0059】
たとえば、図11は、図10に示した本発明の一実施形態の変形例によるチャンバ81の排出動作における状態認識を説明するためのフローチャートである。図11を参照して、本変形例では、チャンバ81の排出動作のエラー情報を、血液塗抹標本作製装置2のシャットダウンを待たずに、リアルタイムでパソコン4からメンテナンス用管理装置(サーバ)5に送信する。すなわち、図11に示すステップS31〜S38において、図10に示すステップS31〜S38と同様の処理が行われた後、ステップS41において、パソコン4の制御部4aにより、パソコン4のメモリ4bに保存されたエラー情報が緊急を要するエラー情報(緊急情報)であるか否かが判断される。そして、ステップS41において、緊急情報であると判断された場合には、ステップS42において、パソコン4の制御部4aにより、緊急情報が、シャットダウンを待たずに直ちに電子メールによりメンテナンス用管理装置5に送信される。一方、ステップS41において、緊急情報でないと判断された場合には、ステップS39に進み、図10に示すステップS39と同様の処理が行われる。すなわち、パソコン4の制御部4aにより、パソコン4のメモリ4bに保存されているエラー情報が、血液塗抹標本作製装置2のシャットダウン時に電子メールによりメンテナンス用管理装置5に送信される。なお、上記変形例では、チャンバ81の排出動作のエラー情報を、シャットダウンを待たずにリアルタイムでパソコン4からメンテナンス用管理装置(サーバ)5に送信する例を示したが、分注ピペット21bの上昇動作および後退動作やチャンバ81の吸引動作エラー情報を、シャットダウンを待たずにリアルタイムでパソコン4からメンテナンス用管理装置(サーバ)5に送信してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、電子メールを用いて、血液塗抹標本作製装置の状態情報(警告情報およびエラー情報)をメンテナンス用管理装置(サーバ)に送信するようにしたが、本発明はこれに限らず、電子メール以外のデータ通信手法により、血液塗抹標本作製装置の状態情報(警告情報およびエラー情報)をメンテナンス用管理装置(サーバ)に送信するようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、パソコン4の制御部4aに電子メールの送信機能を持たせた例を示したが、本発明はこれに限らず、血液塗抹標本作製装置2の制御部2aに電子メールの送信機能を持たせてもよい。その場合、臨床検体処理装置1は、パソコン4を必要としないので、臨床検体処理装置1の構成を簡略化することができる。
【0062】
また、上記実施形態では、血液塗抹標本作製装置2の吸引分注機構部21の分注ピペット21bの上昇動作および後退動作の警告情報と、血液塗抹標本作製装置2の染色部27の第3吸引排出部27dに染色液を供給するチャンバ81の吸引動作および排出動作の警告情報とをメンテナンス用管理装置に送信する例を示したが、本発明はこれに限らず、血液塗抹標本作製装置2の他の部分の動作の警告情報をメンテナンス用管理装置に送信してもよい。たとえば、吸引分注機構部21のピアサ21aの上昇動作の警告情報、染色部27の第3吸引排出部27d以外の吸引排出部に染色液や洗浄用の水を供給するチャンバの吸引動作および排出動作の警告情報、血液塗抹標本作製装置2のその他のチャンバ(たとえば、排液チャンバなど)の吸引動作および排出動作の警告情報をメンテナンス用管理装置に送信するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態による臨床検体処理装置および外部のメンテナンス用管理装置を備えた臨床検体処理システムの全体構成を示した平面図である。
【図2】図1に示した本発明の一実施形態による臨床検体処理装置の血液塗抹標本作製装置および搬送装置を示した斜視図である。
【図3】図2に示した血液塗抹標本作製装置の内部構造を示した平面図である。
【図4】図3に示した血液塗抹標本作製装置の吸引分注機構部を示した平面図である。
【図5】図3に示した血液塗抹標本作製装置の染色部の第3吸引排出部を示した平面図である。
【図6】図5に示した染色部の第3吸引排出部に供給される染色液の供給経路を示した流体回路図である。
【図7】図3に示した吸引分注機構部の分注ピペットの上昇動作における状態認識を説明するためのフローチャートである。
【図8】図3に示した吸引分注機構部の分注ピペットの後退動作における状態認識を説明するためのフローチャートである。
【図9】図6に示したチャンバの吸引動作における状態認識を説明するためのフローチャートである。
【図10】図6に示したチャンバの排出動作における状態認識を説明するためのフローチャートである。
【図11】図10に示した本発明の一実施形態の変形例によるチャンバの排出動作における状態認識を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
1 臨床検体処理装置
2 血液塗抹標本作製装置
2a 制御部(比較手段)
4 パソコン(コンピュータ)
4a 制御部(送信手段)
5 メンテナンス用管理装置(サーバ)
21d 前後駆動用モータ(モータ)
21g 上下駆動用モータ(モータ)
81b フロートスイッチ(スイッチ手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に設置されたメンテナンス用管理装置にネットワークを介して接続可能な臨床検体処理装置であって、
前記臨床検体処理装置の所定の動作の動作検出信号に基づく数値と、前記所定の動作が非異常状態の範囲内にあることの基準となる第1のしきい値とを比較する比較手段と、
前記動作検出信号に基づく数値が前記第1のしきい値を超えた場合に、前記臨床検体処理装置が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあることを示す警告情報を、前記ネットワークを介して、前記メンテナンス用管理装置に送信する送信手段とを備えた、臨床検体処理装置。
【請求項2】
前記比較手段は、前記動作検出信号に基づく数値と、前記第1のしきい値および前記臨床検体処理装置の所定の動作が異常状態にあることを判定するための基準となる第2のしきい値とを比較し、
前記送信手段は、前記動作検出信号に基づく数値が前記第1のしきい値と前記第2のしきい値との間にある場合に、前記警告情報を、前記ネットワークを介して、前記メンテナンス用管理装置に送信する、請求項1に記載の臨床検体処理装置。
【請求項3】
前記比較手段は、前記動作検出信号に基づく数値と、前記臨床検体処理装置の所定の動作が異常状態にあることを判定するための基準となる第2のしきい値とを比較し、
前記送信手段は、前記動作検出信号に基づく数値が前記第2のしきい値を超えた場合に、前記臨床検体処理装置が前記異常状態にあることを示す異常情報を、前記ネットワークを介して、前記メンテナンス用管理装置に送信する、請求項1または2に記載の臨床検体処理装置。
【請求項4】
前記臨床検体処理装置の少なくとも前記警告情報を収集するコンピュータをさらに備え、
前記送信手段は、前記コンピュータに設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の臨床検体処理装置。
【請求項5】
前記送信手段は、前記臨床検体処理装置の少なくとも前記警告情報を、電子メールを用いて、前記メンテナンス用管理装置に送信する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の臨床検体処理装置。
【請求項6】
前記送信手段は、前記臨床検体処理装置の少なくとも前記警告情報を、所定のタイミングで、前記ネットワークを介して前記メンテナンス用管理装置に送信する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の臨床検体処理装置。
【請求項7】
前記送信手段は、前記臨床検体処理装置の少なくとも前記警告情報を、前記臨床検体処理装置の起動時またはシャットダウン時に、前記ネットワークを介して前記メンテナンス用管理装置に送信する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の臨床検体処理装置。
【請求項8】
前記臨床検体処理装置の動作検出信号に基づく数値は、動作監視時間、および、動作タイミング信号に基づく数値の少なくとも一方を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の臨床検体処理装置。
【請求項9】
前記動作タイミング信号に基づく数値は、モータのパルス数である、請求項8に記載の臨床検体処理装置。
【請求項10】
前記動作監視時間は、前記臨床検体処理装置の所定の動作の開始を起点として、スイッチ手段がオン状態またはオフ状態に切り替わるまでに要した時間である、請求項8または9に記載の臨床検体処理装置。
【請求項11】
前記スイッチ手段は、所定の領域に収容された液体量の変化に伴って上下方向に移動することによりオン状態またはオフ状態に切り替わるフロートスイッチである、請求項10に記載の臨床検体処理装置。
【請求項12】
外部に設置されたメンテナンス用管理装置と、
前記メンテナンス用管理装置にネットワークを介して接続可能な臨床検体処理装置と、
前記臨床検体処理装置の所定の動作の動作検出信号に基づく数値と、前記所定の動作が非異常状態の範囲内にあることの基準となる第1のしきい値とを比較する比較手段と、
前記動作検出信号に基づく数値が前記第1のしきい値を超えた場合に、前記臨床検体処理装置が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあることを示す警告情報を、前記ネットワークを介して、前記メンテナンス用管理装置に送信する送信手段とを備えた、臨床検体処理システム。
【請求項13】
前記比較手段は、前記動作検出信号に基づく数値と、前記第1のしきい値および前記臨床検体処理装置の所定の動作が異常状態にあることを判定するための基準となる第2のしきい値とを比較し、
前記送信手段は、前記動作検出信号に基づく数値が前記第1のしきい値と前記第2のしきい値との間にある場合に、前記警告情報を、前記ネットワークを介して、前記メンテナンス用管理装置に送信する、請求項12に記載の臨床検体処理システム。
【請求項1】
外部に設置されたメンテナンス用管理装置にネットワークを介して接続可能な臨床検体処理装置であって、
前記臨床検体処理装置の所定の動作の動作検出信号に基づく数値と、前記所定の動作が非異常状態の範囲内にあることの基準となる第1のしきい値とを比較する比較手段と、
前記動作検出信号に基づく数値が前記第1のしきい値を超えた場合に、前記臨床検体処理装置が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあることを示す警告情報を、前記ネットワークを介して、前記メンテナンス用管理装置に送信する送信手段とを備えた、臨床検体処理装置。
【請求項2】
前記比較手段は、前記動作検出信号に基づく数値と、前記第1のしきい値および前記臨床検体処理装置の所定の動作が異常状態にあることを判定するための基準となる第2のしきい値とを比較し、
前記送信手段は、前記動作検出信号に基づく数値が前記第1のしきい値と前記第2のしきい値との間にある場合に、前記警告情報を、前記ネットワークを介して、前記メンテナンス用管理装置に送信する、請求項1に記載の臨床検体処理装置。
【請求項3】
前記比較手段は、前記動作検出信号に基づく数値と、前記臨床検体処理装置の所定の動作が異常状態にあることを判定するための基準となる第2のしきい値とを比較し、
前記送信手段は、前記動作検出信号に基づく数値が前記第2のしきい値を超えた場合に、前記臨床検体処理装置が前記異常状態にあることを示す異常情報を、前記ネットワークを介して、前記メンテナンス用管理装置に送信する、請求項1または2に記載の臨床検体処理装置。
【請求項4】
前記臨床検体処理装置の少なくとも前記警告情報を収集するコンピュータをさらに備え、
前記送信手段は、前記コンピュータに設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の臨床検体処理装置。
【請求項5】
前記送信手段は、前記臨床検体処理装置の少なくとも前記警告情報を、電子メールを用いて、前記メンテナンス用管理装置に送信する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の臨床検体処理装置。
【請求項6】
前記送信手段は、前記臨床検体処理装置の少なくとも前記警告情報を、所定のタイミングで、前記ネットワークを介して前記メンテナンス用管理装置に送信する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の臨床検体処理装置。
【請求項7】
前記送信手段は、前記臨床検体処理装置の少なくとも前記警告情報を、前記臨床検体処理装置の起動時またはシャットダウン時に、前記ネットワークを介して前記メンテナンス用管理装置に送信する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の臨床検体処理装置。
【請求項8】
前記臨床検体処理装置の動作検出信号に基づく数値は、動作監視時間、および、動作タイミング信号に基づく数値の少なくとも一方を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の臨床検体処理装置。
【請求項9】
前記動作タイミング信号に基づく数値は、モータのパルス数である、請求項8に記載の臨床検体処理装置。
【請求項10】
前記動作監視時間は、前記臨床検体処理装置の所定の動作の開始を起点として、スイッチ手段がオン状態またはオフ状態に切り替わるまでに要した時間である、請求項8または9に記載の臨床検体処理装置。
【請求項11】
前記スイッチ手段は、所定の領域に収容された液体量の変化に伴って上下方向に移動することによりオン状態またはオフ状態に切り替わるフロートスイッチである、請求項10に記載の臨床検体処理装置。
【請求項12】
外部に設置されたメンテナンス用管理装置と、
前記メンテナンス用管理装置にネットワークを介して接続可能な臨床検体処理装置と、
前記臨床検体処理装置の所定の動作の動作検出信号に基づく数値と、前記所定の動作が非異常状態の範囲内にあることの基準となる第1のしきい値とを比較する比較手段と、
前記動作検出信号に基づく数値が前記第1のしきい値を超えた場合に、前記臨床検体処理装置が正常状態に比べて将来故障する可能性の高い警告状態にあることを示す警告情報を、前記ネットワークを介して、前記メンテナンス用管理装置に送信する送信手段とを備えた、臨床検体処理システム。
【請求項13】
前記比較手段は、前記動作検出信号に基づく数値と、前記第1のしきい値および前記臨床検体処理装置の所定の動作が異常状態にあることを判定するための基準となる第2のしきい値とを比較し、
前記送信手段は、前記動作検出信号に基づく数値が前記第1のしきい値と前記第2のしきい値との間にある場合に、前記警告情報を、前記ネットワークを介して、前記メンテナンス用管理装置に送信する、請求項12に記載の臨床検体処理システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−3181(P2006−3181A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179051(P2004−179051)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
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