説明

臨床検査値の管理装置、管理方法及び管理プログラム

【課題】検査過誤を高精度に検出することができる臨床検査値の管理装置、管理方法及び管理プログラムを提供する。
【解決手段】処理済及び未処理検査値が被験者、検査項目、及び採取年月日と対応させて記録部に記録されており、演算処理部は、第1又は第2検査項目且つ第1又は第2採取年月日に対応する処理済検査値を読み出して検査項目及び被験者ごとの処理済検査値差を計算し、相関係数の絶対値が第1のしきい値よりも大きい場合、第1及び第2検査項目を検査過誤の判断に使用可能な組として決定して第2主成分の標準偏差を計算し、対応する処理済及び未処理検査値を読み出して検査項目及び被験者ごとの第3及び第4採取年月日の処理済及び未処理検査値差を計算し、第2主成分を標準偏差で除した値の絶対値が第2のしきい値よりも大きい場合、その処理済及び未処理検査値のいずれかに過誤があると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、統計処理を用いた臨床検査値の管理に関し、特に、主成分分析を用いて臨床検査値を処理し、その結果から検査過誤の有無を判断する管理装置、管理方法及び管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関においては、日々様々な臨床検査が行われ、その結果が診療に利用されている。測定結果である臨床検査値(以下、単に「検査値」とも記す)には測定の不備や検査の対象者(以下「被験者」とも記す)の取り違いにより発生した、間違った検査値(以下「検査過誤」と記す)が一定の割合で含まれている。これに対し医療機関では検査値の信頼性を確保するため検査過誤が疑われた検査値に対し再検査を施行する。沢山の再検査を施行すれば検査値の信頼性は向上する。しかし、再検査のための時間的、経済的コスト(以下「再検査コスト」と記す。)が増大する。従って、診療に貢献するには検査過誤を正確に検出することができる高精度の精度管理法を用いて検査値の信頼性の確保と再検査コストの低減の相反する要求を両立させることが必要である。
【0003】
検査値を管理する方法は、例えば下記特許文献1〜4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2828609号明細書
【特許文献2】特開平8−147396号公報
【特許文献3】特開平11−45302号公報
【特許文献4】特開2006−31264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、診療に貢献するには、検査結果の信頼性確保と再検査コスト低減の相反する要求を両立させることが必要である。しかし、上記の特許文献1〜4に記載された管理方法では、検査過誤の見逃しが多く間違った検査値を高精度に検出することができない。
【0006】
本発明は、上記した課題を解決すべく、検査値の集合を統計処理することによって、検査過誤を高精度に検出することができる臨床検査値の管理装置、管理方法及び管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記した課題を解決すべく鋭意研究した結果、ある採取年月日における検査値と別の採取年月日における検査値とから求めた差の間に高い相関を有する検査項目の組合せが存在することに着目した。これに主成分分析を組み合わせることにより検査過誤を高精度に検出できることを見出し、これに基づき本願発明をするに至った。なお、下記において、括弧を付して図面の符号を記載しているが、これは本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するためのものではない。ここで用いる主成分分析により第1主成分、第2主成分が計算される。
【0008】
本発明に係る第1の臨床検査値の管理装置は、臨床検査値の検査過誤を検出可能な装置であって、
記録部(13)と演算処理部(11)とを備え、
前記記録部(13)に、複数の処理済検査値及び未処理検査値が被験者、検査項目、及び採取年月日と対応させて記録されており、
前記演算処理部(11)は
第1又は第2検査項目(j、o)且つ第1又は第2採取年月日(k、m)に対応する前記複数の処理済検査値を、前記記録部(13)から読み出してパラメータ作成用検査値群とし、前記第1及び第2検査項目(j、o)各々における前記第1及び第2採取年月日(k、m)の前記パラメータ作成用検査値の差(zijkm、ziokm)を前記被験者(i)ごとに計算し、前記パラメータ作成用検査値の差(zijkm、ziokm)の相関係数(r)を計算し、前記相関係数(r)の絶対値が第1のしきい値(Th1)よりも大きい場合、前記第1及び第2検査項目(j、o)を検査過誤の判断に使用可能な組として決定し、
前記組として決定された第1及び第2検査項目(j、o)の第2主成分(aijo)を、前記パラメータ作成用検査値の差(zijkm、ziokm)を用いて計算し、前記第2主成分(aijo)の標準偏差(σjo)を計算し、前記組として決定された第1及び第2検査項目(j、o)に該当する前記処理済検査値及び未処理検査値を前記記録部(13)から読み出し、前記第1及び第2検査項目(j、o)各々における第3採取年月日(r)の前記処理済検査値及び第4採取年月日(s)の前記未処理検査値の差(zpjrs、zpors)を前記被験者(p)ごとに計算し、主成分分析によって前記処理済検査値及び未処理検査値の差(zpjrs、zpors)の第2主成分(apjo)を計算し、前記処理済検査値及び未処理検査値の差(zpjrs、zpors)の第2主成分(apjo)を前記標準偏差(σjo)で除した値の絶対値が、第2のしきい値(Th2)よりも大きい場合、前記処理済検査値及び未処理検査値の差(zpjrs、zpors)の第2主成分(apjo)に対応する前記処理済検査値及び未処理検査値のいずれかに検査過誤があると判断し、
前記第1のしきい値(Th1)が0.5以上であり、
前記第2のしきい値(Th2)が2以上である
ことを特徴としている。なお、本発明の「処理済検査値」とは、既に本発明が適用され、あるいは既に医師などに報告されて診療に利用されて、再検査対象外となっている検査値を意味し、「未処理検査値」とは、医師などに報告される前、即ち診療に利用される前の検査値であり、本発明が適用されておらず、検査過誤の検出が必要なものを意味する。
【0009】
また、本発明に係る第2の臨床検査値の管理装置は、上記第1の臨床検査値の管理装置において、
前記演算処理部(11)が、読み出された前記複数の処理済検査値を前記検査項目ごとにトランケーションして、前記各処理済検査値をパラメータ作成用検査値とするか否かを判断すること、及び、
歪度を基に前記検査項目ごとの前記パラメータ作成用検査値群の分布形を判断し、該判断結果に応じて前記各パラメータ作成用検査を変換することを含むことを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る第3の臨床検査値の管理装置は、前記第1採取年月日(k)と前記第2採取年月日(m)との差、及び前記第3採取年月日(r)と前記第4採取年月日(s)との差がともに許容日差の範囲内にあることを特徴としている。なお、本発明において、「許容日差」とは同一被験者及び同一検査項目で2つの検査値それぞれに対応する採取年月日の差を示す整数値であり、「許容日差関係にある」とは許容日差が整数値の範囲内であることを示す。
【0011】
また、本発明に係る臨床検査値の管理方法は、臨床検査値の検査過誤を検出可能な方法であって、
複数の処理済検査値及び未処理検査値が、被験者、検査項目、及び採取年月日と対応させて記録された記録部(13)から、第1又は第2検査項目(j、o)且つ第1又は第2採取年月日(k、m)に対応する前記複数の処理済検査値を読み出してパラメータ作成用検査値群とし、前記第1及び第2検査項目(j、o)各々における前記第1及び第2採取年月日(k、m)の前記パラメータ作成用検査値の差(zijkm、ziokm)を前記被験者(i)ごとに計算し、前記パラメータ作成用検査値の差(zijkm、ziokm)の相関係数(r)を計算する第1ステップと、
前記相関係数(r)の絶対値が第1のしきい値(Th1)よりも大きいか否かを判断し、大きい場合、前記第1及び第2検査項目(j、o)を検査過誤の判断に使用可能な組として決定する第2ステップと、
前記組として決定された第1及び第2検査項目(j、o)の第2主成分(aijo)を、前記パラメータ作成用検査値の差(zijkm、ziokm)を用いて計算する第3ステップと、
前記第2主成分(aijo)の標準偏差(σjo)を計算する第4ステップと、
前記組として決定された第1及び第2検査項目(j、o)に該当する前記処理済検査値及び未処理検査値を前記記録部(13)から読み出し、前記第1及び第2検査項目(j、o)各々における第3採取年月日(r)の前記処理済検査値及び第4採取年月日(s)の前記未処理検査値の差(zpjrs、zpors)を前記被験者(p)ごとに計算し、主成分分析によって前記処理済検査値及び未処理検査値の差(zpjrs、zpors)の第2主成分(apjo)を計算する第5ステップと、
前記処理済検査値及び未処理検査値の差(zpjrs、zpors)の第2主成分(apjo)を前記標準偏差(σjo)で除した値の絶対値が、第2のしきい値(Th2)よりも大きい場合、前記処理済検査値及び未処理検査値の差(zpjrs、zpors)の第2主成分(apjo)に対応する処理済検査値及び未処理検査値のいずれかに検査過誤があると判断する第6ステップと、を含み、
前記第1のしきい値(Th1)が0.5以上であり、
前記第2のしきい値(Th2)が2以上である
ことを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係る臨床検査値の管理プログラムは、臨床検査値の検査過誤を検出可能なコンピュータプログラムであって、
コンピュータに、
複数の処理済検査値及び未処理検査値が、被験者、検査項目、及び採取年月日と対応させて記録された記録部(13)から、第1又は第2検査項目(j、o)且つ第1又は第2採取年月日(k、m)に対応する前記複数の処理済検査値を読み出してパラメータ作成用検査値群とし、前記第1及び第2検査項目(j、o)各々における前記第1及び第2採取年月日(k、m)の前記パラメータ作成用検査値の差(zijkm、ziokm)を前記被験者(i)ごとに計算し、前記パラメータ作成用検査値の差(zijkm、ziokm)の相関係数(r)を計算する第1の機能と、
前記相関係数(r)の絶対値が第1のしきい値(Th1)よりも大きいか否かを判断し、大きい場合、前記第1及び第2検査項目(j、o)を検査過誤の判断に使用可能な組として決定する第2の機能と、
前記組として決定された第1及び第2検査項目(j、o)の第2主成分(aijo)を、前記パラメータ作成用検査値の差(zijkm、ziokm)を用いて計算する第3機能と、
前記第2主成分(aijo)の標準偏差(σjo)を計算する第4機能と、
前記組として決定された第1及び第2検査項目(j、o)に該当する前記処理済検査値及び未処理検査値を前記記録部(13)から読み出し、前記第1及び第2検査項目(j、o)各々における第3採取年月日(r)の前記処理済検査値及び第4採取年月日(s)の前記未処理検査値の差(zpjrs、zpors)を前記被験者(p)ごとに計算し、主成分分析によって前記処理済検査値及び未処理検査値の差(zpjrs、zpors)の第2主成分(apjo)を計算する第5の機能と、
前記処理済検査値及び未処理検査値の差(zpjrs、zpors)の第2主成分(apjo)を前記標準偏差(σjo)で除した値の絶対値が、第2のしきい値(Th2)よりも大きい場合、前記処理済検査値及び未処理検査値の差(zpjrs、zpors)の第2主成分(apjo)に対応する処理済検査値及び未処理検査値のいずれかに検査過誤があると判断する第6の機能と、を実現させ、
前記第1のしきい値(Th1)が0.5以上であり、
前記第2のしきい値(Th2)が2以上である
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、臨床検査値群の中から、検査過誤を高精度に検出することができる。検出可能な検査過誤は、医師などに報告されて診療に利用された過去の検査値の検査過誤に限定されず、医師などに報告される以前の、未だ診療に利用されていない検査値の検査過誤も含まれる。この後者の検査過誤を検出できる点が、臨床検査値の管理において特に重要である。従って、臨床検査値の管理を高精度且つ効率的に行うことができ、検査結果の信頼性確保と再検査コスト低減の相反する要求を両立させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る臨床検査値の管理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した管理装置による、検査過誤の検出機能を示すフローチャートである。
【図3】図2に示した処理を説明する相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施の形態を、添付した図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る臨床検査値の管理装置(以下、単に「管理装置」とも記す)の概略構成を示すブロック図である。管理装置(1)は、演算処理部(11)と、一時記憶部(12)と、記録部(13)と、操作部(14)と、表示部(15)と、入出力インタフェース部(16)(以下、入出力IF部(16)と記す)と、通信インタフェース部(17)(以下、通信IF部(17)と記す)と、これら各部間でデータを交換するための内部バス(18)とを備えて構成されている。
【0017】
操作部(14)は、演算処理部(11)に対する指示やデータを入力するための手段である。表示部(15)は、演算処理部(11)による処理結果などを表示する。入出力IF部(16)は、操作部(14)及び表示部(15)との、インタフェースを担う。通信IF部(17)は、ネットワーク(LAN、イントラネット、インターネットなど)を介して、外部の測定装置(2)やデータベース(3)(以下、DB(3)と記す)とデータ交換を行う。測定装置(2)は、臨床検査用の装置であり、例えば、血液分析装置、血液凝固測定装置、染色装置など(東芝製TBA-200FR NEO、Sysmex製 XE-5000など)である。また、測定装置(2)は、複数備えていてもよい。
【0018】
管理装置(1)を、例えばコンピュータを利用して構成する場合、演算処理部(11)、一時記憶部(12)、及び記録部(13)には、それぞれCPU、RAM、及びハードディスクドライブを用いることができる。また、操作部(14)には、コンピュータ用のキーボード、マウス、タッチパネルなどを使用することができる。入出力IF部(16)には、操作部(14)に応じたシリアル若しくはパラレルインタフェースを採用すればよい。また、入出力IF部(16)は、ビデオメモリ及びDA変換部を備え、表示部(15)のビデオ方式に応じたアナログ信号を出力することによって、表示部(15)に情報を提示するための画像が表示される。
【0019】
図2は、管理装置(1)の機能、即ち、検査過誤の検出機能を示すフローチャートである。以下においては、特に断らない限り、管理装置(1)の演算処理部(11)が行う処理として説明する。演算処理部(11)は、操作部(14)が操作されて通信IF部(17)を介してデータを取得して記録部(13)に記録し、適宜記録部(13)からデータを一時記憶部(12)に読み出し、所定の処理を行った後、その結果を記録部(13)に記録する。また、演算処理部(11)は、操作部(14)の操作を促す画面データや処理結果を表示する画面データを生成し、入出力IF部(16)のビデオRAMを介して、これらの画像を表示部(15)に表示する。また、後述するしきい値などは、予め初期値として記録部(13)に記録されているとする。
【0020】
以下の説明で、処理対象とする検査項目は、例えば次の合計118項目である。但し、これらに限定される訳ではなく、これらの一部が別の検査項目で置き換えられても、これらに別の検査項目が追加されても、これらの一部が削除されてもよい。
・血清学検査(19項目):TPAb、HbeAg、HbeAg、HbsAg、HbsAb、HTLV-1Ab、HIVAb、HCVAb、HCVcAg、BNP尿HCG、血清HCG、FT3、FT4、TSH、AFP、CEA、CA19-9、IRI
・生化学検査(42項目):TP、K、ALB、Cl、TBIL、S-OSM、DBIL、HDLc、AST、UIBC、ALT、Fe、CHE、U-OSM、ALP、24H-CCR、LAP、1H-CCR、γ-GT、アンモニア、CK、髄液蛋白定量、LD、髄液糖定量、CHOL、髄液Na、TGL、髄液K、AMY、髄液Cl、IP、FBS、Ca、RBP、UN、TTR、CRE、TRF、UA、LDLc、Na、CRP
・血液学検査(57項目):PT-T、PT-%、APTT-T、APTT-%、フィブリノーゲン、FDP-E、AT3、α2PI、PLG、出血時間、PT比、PT(INR)、第13因子、プロテインC、D-ダイマー、プラスミンα2PI複合体、トロンビンATIII複合体、可溶性トロンボモジュリン、WBC、RBC、HGB、HCT、MCV、MCH、MCHC、RDW、PLT、MPV、PDW、PCT、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、網赤血球数、網赤血球数%、ヘモグロビンA1C、IRF、好塩基球(用手)、好酸球(用手)、骨髄球(用手)、後骨髄球(用手)、かん状該球(用手)、分葉核球(用手)、リンパ球(用手)、単球(用手)、異形リンパ球(用手)、異常リンパ球(用手)、異常細胞(用手)、芽球(用手)、前骨髄球(用手)、赤芽球(用手)、NNC(用手)、MEG(用手)、plasma cell(用手)顆粒リンパ球(用手)。
【0021】
記録部(13)には、予め、検体コード、検査項目コード、検査値、検査日、及び採取年月日の情報がそれぞれの対応が分かるように記録されている。例えば、検体コード、検査項目コード、検査値、検査日、及び採取年月日がテーブルとして記録されているとする。また、記録部(13)には、予め、検体コード及び被験者コードの対応も分かるように記録されており、例えば、検体コード及び被験者コードがテーブルとして記録されているとする。
【0022】
以下、図2を参照して、本実施形態に係る検査過誤を検出する機能について説明する。ステップS1からステップS15はパラメータ作成のための過程(パラメータ計算過程)であり、ステップS16からステップS21は管理対象検査値に対し検査過誤を検出する過程(管理過程)である。
【0023】
ステップS1において、通信IF部(17)を介して、測定装置(2)またはDB(3)から処理済検査値及び未処理検査値を取得し、記録部(13)に記録する。取得されたデータは、複数の検体に関する検査データである。従って、複数の検体についての検査値が、検体を特定する情報(例えば検体コード)、検査項目を特定する情報(例えば検査項目コード)、検査日(例えば年月日)、及び採取年月日と対応させて、記録部(13)に記録される。すなわち、複数の検体、検査項目、検査結果、検査日、及び採取年月日が、それらの対応関係が分かるように記録される。また、検体及び被験者についても、それらの対応関係が分かるように記録部(13)に記録される。
【0024】
ステップS2において、検査項目(上記の118項目)の中から1つの検査項目を指定し、処理済検査値を採取年月日とともに記録部(13)から読み出す。ステップS2〜S4の処理は、全ての検査項目について行うこととする。
【0025】
ステップS3において、ステップS2で読み出された処理済検査値に対してトランケーションを行う。具体的には、検査項目ごとに集計し平均と標準偏差を算出する。これを基に平均+3倍の標準偏差以上を示す処理済検査値、及び平均−3倍の標準偏差以下を示す処理済検査値を除外する。これにより異常な検査値が含まれることが多い極端な外れ値を除外することができる。この過程がトランケーションである。なお、検査項目によっては、トランケーション処理を行わなくてもよい場合もある。トランケーション処理を完了した処理済検査値をパラメータ作成用検査値とする。
【0026】
ステップS4において、ステップS3のパラメータ作成用検査値(ステップS4〜S15の処理において、検査値とはパラメータ作成用検査値を意味することとする)に対し、検査項目ごとの歪度を公知の次式1で計算する。このとき、検査値をそのまま用いて歪度を計算した結果(以下、歪度1と記す)と検査値を自然対数の底を用いて対数変換した変換値から歪度を計算した結果(以下、歪度2と記す)を比較する。具体的には、歪度1の絶対値と歪度2の絶対値のうち、どちらが0に近いかを判断する。歪度1の絶対値の方が0に近ければ、その検査項目の検査値の分布は正規分布に近似しているとして、記録部(13)に記録されている検査値をそのままステップS6からステップS21の計算に用いる。これに対し、歪度2の絶対値の方が0に近ければ、その検査項目の検査値の分布は対数正規分布に近似しているとして検査値を対数変換した値をステップS6からステップS21の計算に用いる。但し、対数変換以前の検査値が0.000である場合、対数変換不可能であるため近似値として0.001を対数変換した値を用いる。なお、最初から正規分布する検査項目のみを処理対象とする場合には、ステップS4の処理は不要である。
【0027】
これは、検査値の分布が正規分布に近似する検査項目と、対数正規分布に近似する検査項目があり、本法では正規分布に近似することを前提としているため、対数正規分布に近似する検査項目の検査値を対数変換により正規分布に近似させる措置である。
Sq=[Σ(x−xav/n]/xσ (式1)
ここで、Xは検査項目、x(i=1〜n)は多数の検体を測定して得られた検査項目(X)の検査値を示す。xavは検査項目(X)の平均値である。nは検査値数である。xσは検査項目(X)の標準偏差である。Σは、添え字(i)についての和を意味する。
【0028】
ステップS5において、検査項目(上記の118項目)の中から1つの検査項目(jとする)を選択する。
【0029】
ステップS6において、ステップS5で指定した検査項目(j)の第1採取年月日の検査値「xijk(i=1〜n)」と第2採取年月日の検査値「yijm(i=1〜n)」との差である検査値差「zijkm(i=1〜n)」を算出し、このzijkmを記録部(13)に記録する。ここで、xijkは被験者(i)、検査項目(j)、及び第1採取年月日(k)の検査値、yijmは被験者(i)、検査項目(j)、第2採取年月日(m)の検査値を意味しており、k<m、即ち第1採取年月日は第2採取年月日より過去の採取年月日である。である。zijkmは、同一被験者(i)及び同一検査項目(j)における第1採取年月日(k)の検査値と第2採取年月日(m)の検査値との差、すなわち、xijkとyijmとの差である。nは被験者数である。採取年月日が同日(k=m)の場合は、時差、即ちxijkとyijmとの検査時刻間差で区別する。ステップS6の処理は、検査項目ごとに、重複しない全ての第1及び第2採取年月日の組み合わせについて行う。なお、第1の採取年月日及び第2の採取年月日は許容日差の範囲内にあることが好ましく、この許容日差は、特に限定されるものではないが、通常0日〜7日程度である。
【0030】
ステップS7において、全ての検査項目についてステップS5及びステップS6の処理が終了したか否かを判断し、終了した場合、ステップS8に移行する。未処理の検査項目があればステップS5に戻る。ステップS5に戻った場合、未処理の検査項目の中から1つの検査項目を選択し、ステップS6の処理を実行する。
【0031】
ステップS8において、検査項目(上記の118項目)の中から異なる2つの検査項目(j、o)を選択し、それらの検査値差「zijkm(i=1〜n1)」及び「ziokm(i=1〜n1)」を記録部(13)から読み出す。ここで、zijkmは、同一被験者(i)及び同一検査項目(j)における第1採取年月日(k)の検査値と第2採取年月日(m)の検査値との差であり、同様に、ziokmは、同一被験者(i)及び同一検査項目(o)における第1採取年月日(k)の検査値と第2採取年月日(m)の検査値との差である。第1採取年月日(k)及び第2採取年月日(m)は、被験者i、検査項目j、及び検査項目oについて同一とする。なお、検査項目(j、o)は本発明の第1及び第2検査項目に相当する。
【0032】
ステップS9において、ステップS8で読み出したn個の検査値差(zijkm)と検査値差(ziokm)との検査値差対(ペア)「zijkm、ziokm(i=1〜n1)」を作成する。なお、ステップS9の処理は、選択した検査項目(j、o)ごとに、重複しない全ての第1及び第2採取年月日の組み合わせについて行う。
【0033】
ステップS10において、ステップS9で作成された検査値差対「zijkm、ziokm(i=1〜n1)」を用いて、相関係数(r)を公知の次式2で計算する。
r=Σ(zijkm−z)(ziokm−z)/{Σ(zijkm−zΣ(ziokm−z1/2 (式2)
ここで、z、zは各検査値差の平均値であり、Σは、添え字(i)についての和を意味する。
【0034】
ステップS11において、ステップS10で計算された相関係数(r)の絶対値が所定のしきい値Th1(例えば0.5)よりも大きく、且つ、2つの検査項目の検査値差対の数が所定数以上(例えば50以上、望ましくは100以上)である場合、ステップS12に移行し、そうでなければステップS13に移行する。検査値差対の数についての条件は、統計的に有効な結果が得られるようにするためである。
【0035】
ステップS12において、ステップ11で選択された2つの検査項目(j、o)を後述する検査過誤の可能性の判定の対象として決定し、例えば、2つの検査項目(j、o)の情報を対応付けて記録部(13)に記録する。
【0036】
ステップS13において、重複せずに選択された全ての検査項目の組み合わせについて、ステップS8〜ステップS12の処理が終了したか否かを判断し、終了した場合、ステップS14に移行する。残っている組み合わせがあればステップS8に戻る。ステップS8に戻った場合、再び検査項目の中から異なる2つの検査項目を選択し、ステップS9〜ステップS13の処理を実行する。このとき、既にステップS8で選択された項目と重複しないように、2つの検査項目を選択する。
【0037】
以上のように、ステップS1〜ステップS13によって、相関の高い2つの検査項目の組が複数決定される。以下のステップS14〜ステップS16の処理においては、ここで決定された組が使用される。
【0038】
ステップS14において、ステップS12で決定された組の検査値差対の第2主成分を計算する。これをaijoとする。ここで、aijoは、2つの検査項目(j、o)の対応する検査値差「zijkm、ziokm(i=1〜n)」に対して、公知の主成分分析を適用して決定された第2主成分(短軸成分)である。ここで、対応する検査値差(zijkm、ziokm)とは、被験者(i)、第1採取年月日(k)、及び第2採取年月日(m)が同一の検査値を意味する。検査値差(zijkm、ziokm)のそれぞれの平均をz、z、標準偏差をzjσ、zoσとして、aijoは、
相関係数(r)>0.5の場合、
ijo={(zijkm−z)/zjσ−(ziokm−z)/zoσ}/21/2 で、
相関係数(r)<−0.5の場合、
ijo={(zijkm−z)/zjσ+(ziokm−z)/zoσ}/21/2 で計算される。
なお、ステップS14の処理は、組として決定された検査項目(j、o)ごとに、重複しない全ての第1及び第2採取年月日の組み合わせについて行う。
【0039】
ステップS15において、ステップS14で計算された第2主成分「aijo(i=1〜n)」の標準偏差を計算する。これを2つの検査項目(j、o)の第2主成分の標準偏差(σjo)としてパラメータに設定し、記録部(13)に記録する。
【0040】
ステップS16において、ステップS12で決定された複数の組のうち、1つの組(検査項目(j、o))を選択して記録部(13)から読み出し、さらに、この組に対応する、被験者(p)の処理済検査値及び未処理検査値を記録部(13)から読み出す。読み出した処理済検査値及び未処理検査値について、検査項目(j、o)ごとに任意に選択した第3採取年月日(r)と第4採取年月日(s)との検査値差(zpjrs 、zpors)を計算する。このとき、第3採取年月日は処理済検査値の採取年月日であり、第4採取年月日は未処理検査値の採取年月日であり、且つ、r<sである。即ち第3採取年月日は第4採取年月日より過去の採取年月日である。なお、第3の採取年月日及び第4の採取年月日は、特に限定されるものではないが、上述した第1の採取年月日及び第2の採取年月日と同じ許容日差の範囲内にあることが好ましい。この結果対(zpjrs 、zpors)に対応する検査値は、パラメータ作成用検査値からパラメータであるσjoが設定された後、本法によって検査過誤検出の対象となる管理対象検査値である。ステップS4において、正規分布に近似していると判断された検査項目は、そのままの検査値を用い、対数正規分布に近似していると判断された検査項目は対数変換された検査値を用いる。
【0041】
ステップS17において、次式3によってSDIpjoを計算する。
SDIpjo=apjo/σjo (式3)
ここで、apjoは、ステップS16において算出されたzpjrs 、zporsに対し、以下のように計算される。すなわち、zpjrs 、zporsに対しステップS14で求めた平均z、z、標準偏差zjσ、zoσを用いて、apjoは、
相関係数(r)>0.5の場合、
pjo={(zpjrs−z)/zjσ−(zpors−z)/zoσ}/21/2 で、
相関係数(r)<−0.5の場合、
pjo={(zpjrs−z)/zjσ+(zpors−z)/zoσ}/21/2 で計算される。σjoは、ステップS15で計算された第2主成分の標準偏差である。主成分分析において、第1主成分(長軸成分)は系統誤差成分、第2主成分(短軸成分)は偶発誤差成分を表すと考えられる。なお、主成分分析は公知であるので説明を省略する。
【0042】
ステップS18において、ステップS17で計算されたSDIpjoの絶対値が、所定のしきい値Th2よりも大きいか否かを判断する。この条件を満たす場合、ステップS19に移行し、そうでなければステップS20に移行する。しきい値Th2は、標準偏差(σjo)を基準として設定することができる。しきい値Th2は、例えば2以上、望ましくは4以上である。
【0043】
ステップS19において、ステップS18の条件を満たす検査値差対(zpjrs、zpors)に対応する処理済検査値及び未処理検査値のいずれかに検査過誤の可能性があると判断し、その情報を記録する。例えば、この検査値差対(zpjrs 、zpors)に対応する2つの検査項目コード(j、o)、2つの採取年月日(r、s)、及びそれぞれの検査値を対応付けて記録部(13)に記録する。
【0044】
図3は、2つの検査項目(j、o)について、上記の処理を概念的に説明するための相関図である。図3では省略しているが、検査項目(j)における第3及び第4採取年月日の検査値差と検査項目(o)における第3及び第4採取年月日の検査値差との検査値差対(ペア)が複数プロットされている。楕円は、プロットされた検査値差対の分布範囲を示している。検査項目(j)の検査値差と検査項目(o)の検査値差は正の相関を示している。ベクトル(α)は分布範囲内の検査値差対を表すベクトルであり、ベクトル(β)は分布範囲を逸脱している検査値差対を表すベクトルである。また、ベクトル(α)、(β)は、短軸方向に平行であり、それぞれの長さは、長軸から検査値差対までの垂直距離(短軸方向の距離)である。このベクトル(α)、(β)の「長さ」が偶発誤差成分(第2主成分)である。ベクトル(β)のように偶発誤差成分が任意の管理限界(しきい値Th2)を逸脱する場合、2つの検査値差に対応する処理済検査値と未処理検査値のいずれかに過誤があると判断できる。
【0045】
ステップS20において、全ての組について処理を終了したか否かを判断し、残っている組があればステップS16に戻り、全て終了していればステップS21に移行する。ステップS16に戻った場合、再び1つの組を選択し、ステップS17〜ステップS20の処理を実行する。このとき、既にステップS16で選択された組を除外して選択する。
【0046】
ステップS21において、ステップS19で記録された検査項目、検査日(測定年月日)、検査値、及び関連する情報を表示部(15)に表示する。なお、ステップS4において対数変換した検査値は変換前の検査値に戻して表示する。表1に、表示の一例を示す。ここで、第3採取年月日(前回日)と第4採取年月日(今回日)は西暦の年月日が8桁で表されている。
【0047】
【表1】

【0048】
以上によって、検査過誤検出の対象となる実検体の検査値対のうち、検査過誤に該当する可能性の高い検査値を提示することができる。
【0049】
なお、上記処理において、検査値群が異なれば、即ち、医療機関や検査値の測定装置が異なれば、ステップS12で決定される相関の高い検査項目や第2主成分の標準偏差(σjo)が異なり得る。従って、ステップS1〜S15の処理は、検査値群が追加、変更される毎に行うことが望ましい。その一方、特定の医療機関で同じ測定装置を使用していれば、既に決定された相関の高い2つの検査項目を用いて、ステップS16〜S21の処理を行っても、高い信頼性で検査過誤の可能性を提示することができる。また、相関係数(r)の絶対値が0.6以上である組を使用すれば、医療機関によらず高い信頼性で検査過誤の可能性を提示することができる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態に係る臨床検査値の管理装置、及びそれを用いた管理方法について説明したが、本発明は上記に限定されない。例えば、管理装置(1)は、図1の構成から変更して構成され得る。また、図2に示したフローチャートは、種々変更されて実行され得る。
【0051】
例えば、図1では、管理装置(1)が処理済検査値及び未処理検査値を、ネットワークを介して取得する場合を説明したが、可搬性の記録媒体(光磁気記録媒体、フラッシュメモリなど)を介して取得してもよい。
【0052】
また、専用の管理装置として実現する代わりに、上記した機能をコンピュータに実現させるプログラムを、既存の臨床検査装置に搭載してもよい。
【0053】
また、しきい値は任意である。例えば、Th1として0.6以上の値を使用すれば、医療機関などに依存せずに一般的に使用できる検査項目及び採取年月日を決定できる。
【0054】
また、Th2として、標準偏差の4倍よりも大きい値を使用することも、標準偏差の4倍よりも小さい値を使用することもできる。但し、Th2は、小さ過ぎると無駄な再検査が増加し、大きすぎると結果の信頼性が低下するので好ましくない。少なくとも標準偏差の2倍であることが必要である。
【0055】
また、図2の判断ステップ(S11、S18)において、値を計算する度に判断する代わりに、計算結果を記録し、全ての計算が完了した後に、計算結果の全てについて、条件を満たすか否かを判断してもよい。
【0056】
また、測定された検査値が、正規分布または対数正規分布する場合に限定されず、これらの分布に対応しない場合には、変換後の検査値が正規分布となるように変換すればよい。
【0057】
また、上記では、未処理検査値(医師に報告されていない検査値)の検査過誤を検出する場合を説明したが、これに限定されない。将来の検査値(将来において測定された場合の検査値)の検査過誤を検出することも可能である。また、処理済検査値(医師に報告されて診療に利用された検査値)についても、同様に検査過誤を検出することが可能である。
【実施例】
【0058】
以下に実施例を示し、本発明の特徴とするところをより一層明確にする。
【0059】
2010年1月1日〜2010年6月30日の間に、大分大学医学部附属病院で検査された検体の検査値に、本発明を適用した。検体の総数は208821であり、上記で示した生化学検査、血液学検査、血清学検査の合計118項目の検査値を用いた。
【0060】
表2に、図2のステップS1〜S13に対応する処理を行った結果、得られた相関の高い2つの検査項目(|r|>0.5)の組の一部を示す。全部でなく一部を示すのは相関の高い組合せ数が膨大であるためである。これらの検査項目の組の検査値を用いて、検査過誤の可能性を判断することが望ましい。なお、|r|>0.6の検査項目の組には、右端列に“1”が表示されている。これらの検査項目の組は、別の医療機関においても、検査過誤の判断に使用することができる。
【0061】
【表2】

【符号の説明】
【0062】
1 管理装置
11 演算処理部
12 一時記憶部
13 記録部
14 操作部
15 表示部
16 入出力インタフェース部(入出力IF部)
17 通信インタフェース部(通信IF部)
18 内部バス
2 測定装置
3 データベース
4 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臨床検査値の検査過誤を検出可能な装置であって、
記録部と演算処理部とを備え、
前記記録部に、複数の処理済検査値及び未処理検査値が被験者、検査項目、及び採取年月日と対応させて記録されており、
前記演算処理部は、
第1又は第2検査項目、且つ第1又は第2採取年月日に対応する前記複数の処理済検査値を、前記記録部から読み出してパラメータ作成用検査値群とし、前記第1及び第2検査項目各々における前記第1及び第2採取年月日の前記パラメータ作成用検査値の差を前記被験者ごとに計算し、前記パラメータ作成用検査値の差の相関係数を計算し、前記相関係数の絶対値が第1のしきい値よりも大きい場合、前記第1及び第2検査項目を検査過誤の判断に使用可能な組として決定し、
前記組として決定された第1及び第2検査項目の第2主成分を、前記パラメータ作成用検査値の差を用いて計算し、前記第2主成分の標準偏差を計算し、
前記組として決定された第1及び第2検査項目に該当する前記処理済検査値及び未処理検査値を前記記録部から読み出し、前記第1及び第2検査項目各々における第3採取年月日の前記処理済検査値及び第4採取年月日の前記未処理検査値の差を前記被験者ごとに計算し、主成分分析によって前記処理済検査値及び未処理検査値の差の第2主成分を計算し、前記処理済検査値及び未処理検査値の差の第2主成分を前記標準偏差で除した値の絶対値が、第2のしきい値よりも大きい場合、前記処理済検査値及び未処理検査値の差の第2主成分に対応する前記処理済検査値及び未処理検査値のいずれかに検査過誤があると判断し、
前記第1のしきい値が0.5以上であり、
前記第2のしきい値が2以上である
ことを特徴とする臨床検査値の管理装置。
【請求項2】
前記処理済検査値を読み出してパラメータ作成用検査値群とすることが、
前記演算処理部が、読み出された前記複数の処理済検査値を前記検査項目ごとにトランケーションして、前記各処理済検査値をパラメータ作成用検査値とするか否かを判断すること、及び、
歪度を基に前記検査項目ごとの前記パラメータ作成用検査値群の分布形を判断し、該判断結果に応じて前記各パラメータ作成用検査値を変換する、請求項1に記載の臨床検査値の管理装置。
【請求項3】
前記第1採取年月日と前記第2採取年月日との差、及び前記第3採取年月日と前記第4採取年月日との差がともに許容日差の範囲内にある、請求項1又は2に記載の管理装置。
【請求項4】
臨床検査値の検査過誤を検出可能な方法であって、
複数の処理済検査値及び未処理検査値が、被験者、検査項目、及び採取年月日と対応させて記録された記録部から、第1又は第2検査項目、且つ第1又は第2採取年月日に対応する前記複数の処理済検査値を読み出してパラメータ作成用検査値群とし、前記第1及び第2検査項目各々における前記第1及び第2採取年月日の前記パラメータ作成用検査値の差を前記被験者ごとに計算し、前記パラメータ作成用検査値の差の相関係数を計算する第1ステップと、
前記相関係数の絶対値が第1のしきい値よりも大きいか否かを判断し、大きい場合、前記第1及び第2検査項目を検査過誤の判断に使用可能な組として決定する第2ステップと、
前記組として決定された第1及び第2検査項目の第2主成分を、前記パラメータ作成用検査値の差を用いて計算する第3ステップと、
前記第2主成分の標準偏差を計算する第4ステップと、
前記組として決定された第1及び第2検査項目に該当する前記処理済検査値及び未処理検査値を前記記録部から読み出し、前記第1及び第2検査項目各々における第3採取年月日の前記処理済検査値及び第4採取年月日の前記処理済検査値及び未処理検査値の差を前記被験者ごとに計算し、主成分分析によって前記処理済検査値及び未処理検査値の差の第2主成分を計算する第5ステップと、
前記処理済検査値及び未処理検査値の差の第2主成分を前記標準偏差で除した値の絶対値が、第2のしきい値よりも大きい場合、前記処理済検査値及び未処理検査値の差の第2主成分に対応する処理済検査値及び前記未処理検査値のいずれかに検査過誤があると判断する第6ステップと、を含み、
前記第1のしきい値が0.5以上であり、
前記第2のしきい値が2以上である
ことを特徴とする臨床検査値の管理方法。
【請求項5】
臨床検査値の検査過誤を検出可能なコンピュータプログラムであって、
コンピュータに、
複数の処理済検査値及び未処理検査値が、被験者、検査項目、及び採取年月日と対応させて記録された記録部から、第1又は第2検査項目、且つ第1又は第2採取年月日に対応する前記複数の処理済検査値を読み出してパラメータ作成用検査値群とし、前記第1及び第2検査項目各々における前記第1及び第2採取年月日の前記パラメータ作成用検査値の差を前記被験者ごとに計算し、前記パラメータ作成用検査値の差の相関係数を計算する第1の機能と、
前記相関係数の絶対値が第1のしきい値よりも大きいか否かを判断し、大きい場合、前記第1及び第2検査項目を検査過誤の判断に使用可能な組として決定する第2の機能と、
前記組として決定された第1及び第2検査項目の第2主成分を、前記処理対象検査値の差を用いて計算する第3機能と、
前記第2主成分の標準偏差を計算する第4機能と、
前記組として決定された第1及び第2検査項目に該当する前記処理済検査値及び未処理検査値を前記記録部から読み出し、前記第1及び第2検査項目各々における第3採取年月日の前記処理済検査値及び第4採取年月日の前記処理済検査値及び未処理検査値の差を前記被験者ごとに計算し、主成分分析によって前記処理済検査値及び未処理検査値の差の第2主成分を計算する第5の機能と、
前記処理済検査値及び未処理検査値の差の第2主成分を前記標準偏差で除した値の絶対値が、第2のしきい値よりも大きい場合、前記処理済検査値及び未処理検査値の差の第2主成分に対応する処理済検査値及び前記未処理検査値のいずれかに検査過誤があると判断する第6の機能と、を実現させ、
前記第1のしきい値が0.5以上であり、
前記第2のしきい値が2以上である
ことを特徴とする臨床検査値の管理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−64203(P2012−64203A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175077(P2011−175077)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(304028726)国立大学法人 大分大学 (181)
【Fターム(参考)】