説明

臨界流に基づく質量流量検証器

流体送達被試験デバイス(DUT)による測定値を検証するための流量検証器が、DUTからの流体の流れを収容するように構成されるチャンバと、チャンバ内の気体温度を与える少なくとも1つの温度センサと、チャンバ内の気体圧力を与える少なくとも1つの圧力変換器と、DUTからチャンバへの流体の流路に沿ってチャンバの上流に位置決めされる臨界ノズルとを備える。臨界ノズル及び流量検証過程は、ノズルを通る流体の流量を臨界流条件に保持するように構成され、それによって、特定の流量検証時間中に、ノズルを通る流量が実質的に一定であり、且つノズルの下流のチャンバ内のいかなる圧力の変動にも実質的に影響を及ぼされないようになる。それゆえ、流量検証時間中にチャンバ圧力が変化しても、DUTの下流圧力には実質的に影響がなく、流量検証器とDUTとの間の外部体積は流量検証計算に実質的に無関係である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2005年3月25日に出願された「External Volume Insensitive Flow Verification」と題する米国特許出願第11/090,120号(「120出願」)(代理人整理番号MKS−155)の一部継続出願である。その特許出願の内容は、全てが記述されているかのように、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
質量流量コントローラ(MFC)及び質量流量比コントローラ(FRC)のような高精度の流体送達システムは、半導体ウェーハ製造のような用途において非常に重要である。多くの場合に、これらの流体送達システムの精度を検証する必要がある。
【0003】
MFC又はRFCのような測定システムの精度を検証するために、上昇率(ROR)流量検証器が用いられることがある。典型的なROR流量検証器は、チャンバと、圧力変換器と、温度センサと、上流及び下流に1つずつある2つの隔離バルブとを備える。それらのバルブは、動作していないときには閉じることができ、動作が開始されるときに開いて、それによってMFC又はFRCのような被試験デバイス(DUT)からの流体が流量検証器の中に流れることができるようにする。流体の流れが安定すると、下流のバルブを閉じることができ、結果として、チャンバ内の圧力が上昇し、気体温度と共に、圧力の上昇を測定することができる。これらの測定値を用いて、流量を計算することができ、それによって、DUTの性能を検証することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ROR検証器のチャンバ内の上昇する圧力は、検証過程への大きな外乱になることがある。DUTは、目標とする流量設定値を保持するために、そのバルブ位置を調整して、下流圧力(チャンバ圧力)外乱を相殺することができるが、流れに変動が生じることがあり、流量検証過程を損なうことがある。そのようなDUTへの外乱を避けることができる質量流量検証システム及び方法が必要とされている。
【0005】
DUTとROR流量検証器との間を接続する流路の体積は、外部体積と呼ばれる。ROR流量検証器によって流量を計算するために、外部体積を求める必要がある。しかしながら、数多くのDUTがROR検証器に接続されており、DUT毎に異なる外部体積が生じる場合には、外部体積を求めるための準備較正過程は、非常に長い時間を要する。さらに、RORによる流量検証の精度は、外部体積が増加するのに応じて低下する。これは、流路に沿った圧力降下、すなわちRORのチャンバ内の圧力変化(圧力変換器によって測定される)が、流路に沿った圧力変化とは異なるためである。流路が長くなるほど、流量検証の精度が低下する。ROR検証器の外部体積問題を解決するために、質量流量検証システム及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
流体送達デバイスによる測定値を検証するためのROR検証器が記述される。その流量検証器は、デバイスからの流体の流れを収容するように構成されるチャンバと、気体温度を測定するように構成される温度センサと、チャンバ内の流体の圧力を測定するように構成される圧力センサとを備える。その流体検証器は、被試験デバイス(DUT)からチャンバへの流体の流路に沿って、チャンバの入口に位置決めされる臨界ノズルを備える。その臨界ノズルは、臨界流時間tcf中に、ノズルの中を流れる流体の流量、及びノズルの上流圧力(DUTの下流圧力)を、実質的に一定に、且つチャンバ内の圧力変動に実質的に影響を及ぼされないように保持するように構成される。
【0007】
検証過程中にROR検証器によるDUTへの外乱を最小限に抑える方法は、流体送達デバイスと質量流量検証器との間に臨界ノズルを設けて、ノズルの下流圧力とノズルの上流圧力との比が臨界流パラメータαpc未満である限り、ノズルを横切って流れる流体の流れを保持し、ノズルの中を流れる流体の流量がチャンバ内の圧力変動に実質的に影響を及ぼされないようにすることを含む。
【0008】
外部体積問題を解決するためのROR流量検証方法は、流量検証過程が外部体積の影響を受けないように、且つ外部体積についての情報がROR検証器による流量検証計算に関係がないように、ROR検証器のチャンバの入口に臨界ノズルを配置することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本開示の一実施形態による、臨界流に基づく質量流量検証器のブロック図である。
【図2】図1に示される、臨界流に基づく質量流量検証器の応答を示すグラフである。
【図3】図1に示される、臨界流に基づく質量流量検証器の連続パルス準リアルタイム動作を示す図である。
【図4】質量流量検証器のための追加臨界ノズルを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態による、臨界流に基づく質量流量検証器(MFV)100のブロック図である。例示される実施形態では、MFV100は、上昇率(ROR)タイプのMFVであり、密閉されたチャンバに流れ込む流体の圧力の上昇率が測定され、チャンバに流れ込む流量を検証するために用いられる。MFV100は、臨界流に基づくMFVであり、流れ絞り機構140を備えており、その機構は、臨界ノズル140とすることができる。臨界ノズル140は、後に例示される実施形態の場合に先細ノズルとして示されるが、本開示の他の実施形態は、鼓形臨界ノズルのような、他のタイプの臨界ノズルを用いることがあり、臨界オリフィスのような、任意のタイプの臨界流絞り機構を含む任意のデバイスを用いることができる。
【0011】
後にさらに説明されるように、臨界ノズル140は、ノズル140の中の流れを一定に保持し、それによって、MFV100による質量流量試験がチャンバ内の上昇する圧力に実質的に影響を及ぼされないようにする。それゆえ、臨界ノズル140は、被試験デバイス(DUT)に対する下流圧力外乱を大幅に最小化し、それによって流量検証過程中に、DUTの流量変動が最小になるようにする。また、臨界ノズル140は、MFV100による質量流量検証が、臨界ノズル140とDUTとの間のいかなる外部体積によっても実質的に影響を及ぼされないようにする。
【0012】
MFV100は、DUT100からの流体の流れを収容するように構成される密閉された体積又はチャンバ130を含む。DUT110は典型的には、流体の流量を送達する質量流量コントローラ(MFC)又は質量流量比コントローラ(FRC)である。下流出口バルブ150は、チャンバ130からの流体の流れを開閉する。上流入口バルブ120は、DUT110からチャンバ130への流体の流れを開閉する。MFV100はさらに、チャンバ130内の流体の圧力を測定するように構成される圧力センサ170と、チャンバ130内の流体の温度を測定するように構成される温度センサ180とを備える。典型的には、その質量流量が検証されている流体は気体であるが、MFV100によって、他のタイプの流体の流量を検証することもできる。
【0013】
ROR MFVの基本原理は、チャンバ130にわたるマスバランスである。マスバランス方程式を使用し、チャンバ内の気体に理想的な気体法則を適用するとき、以下の式に従ってMFVのチャンバ内の気体圧力及び気体温度を測定することによって、入口気体流量を求めることができる。
【0014】
【数1】

【0015】
式中、kは変換定数であり、SCCM(標準立方センチメートル毎分)単位の場合に6×10であり、SLM(標準リットル毎分)単位の場合に6×10であり、ここで、Pstpは標準圧力(=1atm)であり、Tstpは標準温度(=273.15K)であり、Pはチャンバ気体圧力であり、Vはチャンバ体積であり、Tは気体温度である。
【0016】
MFV100は、圧力センサ170及び温度センサ180の出力信号を受信すると共に、上流バルブ120及び下流バルブ150の動作を制御する、コントローラ160を含む。コントローラ160は、下流バルブが閉じた後に、チャンバ内の流体の圧力の上昇率を測定し、経時的に測定された圧力の上昇率及び温度を用いて、式(1)に従って、DUTからチャンバへの流体の流量を計算し、それによって、DUTによる測定値を検証する。
【0017】
典型的な質量流量検証手順は以下のとおりである。
1.上流バルブ120及び下流バルブ150の両方を開く。
2.DUTのための流量設定値を与える。
【0018】
3.チャンバ圧力が定常状態になるまで待つ。
4.流量計算のためにチャンバ気体圧力及びチャンバ気体温度を記録し始める。
5.下流バルブ150を閉じて、チャンバ圧力を上昇させる。
【0019】
6.流量の検証が終わるのを待つ。
7.下流バルブ150を開く。
8.チャンバ気体圧力及びチャンバ気体温度を記録するのを止める。
【0020】
9.式(1)に基づいて、流量を計算し、検証された流量を報告する。
臨界ノズル140は、流体の流れを臨界流又はチョーク流れに保持するように構成される。気体が絞り機構の中を通り抜けるとき、その密度は減少し、速度は増加する。質量流束(単位面積当たりの質量流量)が最大になる臨界面積がある。この面積では、速度が音速であり、下流圧力をさらに減少させても、質量流量は増加しない。これは、臨界流又はチョーク流れと呼ばれる。
【0021】
臨界流条件が満たされるようにするために、臨界圧力比apcは、以下のように、ノズルの最大限許容できる下流圧力Pdmaxと、ノズルの上流圧力Pとの間の比として定義される。
【0022】
【数2】

【0023】
臨界流条件は、以下の関係が成り立つことを要求する。
【0024】
【数3】

【0025】
式中、Pはノズルの下流圧力である。臨界圧力比apcは、流れ絞り機構、すなわち臨界ノズル140の特性である。臨界圧力比は、臨界ノズルの形状、及び固有の気体特性にのみ依存する。拡散体、及び肉厚の角張った縁部を有するオリフィスを用いない、ASME長円ノズルの場合、臨界圧力比apcは、以下のように、定常の等エントロピー流の仮定に基づいて導出することができる。
【0026】
【数4】

【0027】
式中、γは、以下に定義される、気体の比熱の比である。
【0028】
【数5】

【0029】
式中、Cは一定の圧力における気体熱容量であり、Cは一定の体積における気体熱容量である。
【0030】
臨界流条件下で、臨界流量は以下の式によって与えられる。
【0031】
【数6】

【0032】
式中、kは上記の変換係数であり、Tは気体温度であり、Pは上流圧力であり、Aは、オリフィスの断面積又はノズルののど部の面積であり、C’は吐出係数であり、Mは気体の分子量であり、Rは一般気体法則定数であり、C’はノズル吐出係数である。
【0033】
吐出係数C’は、高速の気体流がオリフィスを通り抜けた後に、その気体流の直径が減少し続けるのに応じて、減少する断面積を説明する。C’の値は0.7〜1.0である。
以下の気体関数を定義することができる。
【0034】
【数7】

【0035】
気体関数のこの定義を用いるとき、式(6)を以下のように簡単に書くことができる。
【0036】
【数8】

【0037】
式(3)の臨界流条件が保持される限り、下流圧力は、絞り機構を横切る質量流量に影響を及ぼすことはなく、流量を増やす唯一の方法は、式(8)に従って上流圧力を高めることである。
【0038】
臨界流に基づくMFV(これ以降、cMFVと呼ばれる)は、図1に示されるように、ROR検証器のチャンバの入口において、臨界ノズル又はオリフィスのような流れ絞り機構を有する。cMFV100の上流バルブ120及び下流バルブ150がいずれも開いており、DUTの流れが定常状態にあり、臨界ノズルが適当な大きさである場合には、絞り機構の下流圧力(チャンバ圧力)と、絞り機構の上流圧力との間の圧力比は、臨界圧力比限界(apc)よりも小さい。それゆえ、流れ絞り機構を横切る流れは臨界流であり、式(8)によるチャンバ圧力とは無関係である。この定常状態の瞬間には、絞り機構を通る流れは、DUTによって送達される流れに等しく、絞り機構の上流圧力(DUTの下流圧力)は一定である。流量を検証するために、下流バルブ150が閉じられるとき、チャンバ圧力は上昇する。
【0039】
チャンバ圧力と絞り機構の上流圧力との間の圧力比が、臨界圧力比(apc)よりも小さい限り、絞り機構を通る流れは依然として臨界流であり、上昇するチャンバ圧力とは無関係である。それゆえ、絞り機構を通る流れが変化せず、絞り機構の上流圧力も変化しないため、チャンバ圧力が上昇している場合であっても、DUTへの下流圧力外乱は存在しない。上昇するチャンバ圧力が臨界圧力比(apc)を超える場合には、絞り機構を通る流れは臨界流ではなく、絞り機構の上流圧力及び下流圧力の両方に依存する。結果として、絞り機構を通る流れは、DUTによって送達される流れには等しくなく、絞り機構の上流圧力が変化し、DUTへの下流圧力外乱が存在する。
【0040】
cNFVの臨界流時間は、下流バルブが完全に閉じた時点と、上昇するチャンバ圧力が臨界圧力比限界(apc)を超える時点との間の時間として定義される。臨界流時間中に、絞り機構を通る流れは一定の臨界流であり、チャンバ圧力とは無関係であるため、DUTへの下流圧力外乱は存在しない。臨界流時間は、式(1)及び式(3)の助けを借りて、式(8)の両辺を、時刻t=0から臨界流時間tcfまで積分することによって求めることができる。
【0041】
【数9】

【0042】
式中、(ap0)は、t=0(下流バルブが閉じる前に入口流が安定している時点)におけるチャンバ圧力と絞り機構の上流圧力との間の初期圧力比である。
【0043】
式(9)から明らかであるように、臨界流時間は、気体特性、気体温度、及び臨界ノズルを含むcMFVの形状にのみ依存する。言い換えると、臨界流時間は流量とは無関係である。cMFVの検証時間が臨界流時間内にある場合には、ノズルを横切る流れは一定の臨界流であり、上昇するチャンバ圧力はDUTの下流圧力を乱さない。これは、DUTへの下流外乱を大幅に最小化する。臨界流時間は、チャンバ体積Vにも比例する。それゆえ、臨界圧力比apcを増加させるか、又は臨界流面積Aを減少させると、臨界流時間が長くなる。所与の臨界ノズル及びチャンバ体積の場合に、SF及びWFのような大きな分子量の気体が、He及びHのような小さい分子量の気体よりもはるかに長い臨界流時間を有することがわかっている。水素は、全ての半気体の中で最も短い臨界流時間を有する。
【0044】
式(3)の臨界流条件が保持される限り、臨界ノズル又はオリフィスのような流れ絞り機構は、ROR検証器のチャンバをDUTへの外部配管から分離する。流量検証時間が臨界時間内にある場合には、絞り機構を通る臨界流は、DUTの流量に等しい。明らかに、臨界ノズルとDUTとの間の外部体積は、式(1)の流量計算とは関係がない。流量検証の計算のために、準備較正過程において、流れ絞り機構とDUTとの間の外部体積を求める必要はない。
【0045】
図2は、臨界流に基づくMFV100の応答と共に、臨界流時間を示すグラフである。グラフ210は、チャンバ内の流体の圧力を表しており、それは、下流バルブが閉じられるときに上昇する。グラフ220は、流体の流量を表す。cMFVの臨界流時間が、参照番号230で図2に示される。図2において明らかであるように、臨界流時間中に、ノズルを通る入口流は、臨界流又はチョーク流れであり、上昇するチャンバ圧力は、ノズルの入口流及び上流圧力(DUTの下流圧力でもある)に影響を及ぼさないであろう。臨界流時間(その間、DUTの下流圧力は一定である)が経過した後に、流量は降下し、DUTの下流圧力が変化する。
【0046】
流量検証中に、チャンバ圧力を、臨界圧力比限界よりも常に低く抑えることができる場合には、ノズルを通る流れは常に臨界流条件にあり、チャンバ圧力が変化しても、DUTの下流圧力は乱されることがなく、それによってDUTの実際の流れの変動は実質的に最小限に抑えられる。
【0047】
図3は、図1に示される臨界流に基づく質量流量検証器の連続パルス準リアルタイム(CPSR)動作を示す。グラフ310は、チャンバ内の流体の圧力を表しており、それは、下流バルブが閉じられるときに上昇し、下流バルブが開けられるときに降下する。グラフ320は、流体の流量を表す。CPSR動作は、マルチラン流量検証時間全体を通じて臨界流条件を満たし続けるために、cMFV用に開発された。CPSR動作時に、下流バルブが閉じられる時刻と、開けられる時刻との間の時間は、臨界流時間内にあり、上昇するチャンバ圧力が臨界圧力比限界を決して超えないようにする。図3において明らかなように、各流量検証実行は、ノズルを横切る流れが臨界流であるような臨界流時間内にある。それゆえ、チャンバ圧力が変化しても、ノズルの上流圧力には影響を及ぼさないため、DUTへの下流圧力外乱が最小限に抑えられる。結果として、DUTの実際の流れの変動が、マルチラン流量検証時間全体を通じて最小限に抑えられている。
【0048】
検証の出力は、何度も実行する中で平均することができ、何度も検証を実行する場合に、CPSR動作によって保証されるように、ノズルを横切る入口流は一定であるか、又は臨界流条件にある。このようにして、測定雑音によって引き起こされる変動を最小限に抑えることができる。前段において説明されたCPSR動作は、DUTの下流圧力を乱すことなく、何度も流量の検証を実行するための簡単で、迅速な方法である。
【0049】
臨界ノズルは、モデル化し、計算し、設計し、製造し、試験するのが容易である。臨界ノズルは、ROR MFVへの追加部品にすることができる。図4は、ROR MFVのための追加臨界ノズルを概略的に示す。質量流量検証のための優れた精度、再現性、及び外部体積の影響を受けない特性を達成するために、DUTのための流量範囲及び最大下流圧力要件に基づいて、種々のオリフィスサイズの臨界ノズルを選択することができる。
【0050】
一実施形態では、MFV100はさらに、流れ安定性検出器として、流量ノズルの上流に位置決めされる、第2の圧力変換器190(便宜上、図1及び図4の両方において示される)も備えることがある。圧力変換器190は、流量ノズル140の上流圧力を測定するように構成される。ノズルの上流圧力が安定すると、ノズルを通ってチャンバに流れ込む流れが安定し、cMFVは流量検証過程を直ちに開始することができる。圧力変換器190によって、cMFVは、流量検証過程を実行する前に、流れが安定するまで一定の時間だけ待たなければならないのを避けることができる。ノズルの上流圧力はさらに、第2の流量検証機構として、式(6)に従ってノズルを通る流量を計算するために用いることができる。この第2の流量検証機構は、cMFVを診断するために用いることができるか、又はcMFVに対する第2の流量検証方法として用いることができる。
【0051】
要するに、臨界ノズルがチャンバ体積の入口に配置される、臨界流に基づくMFVが提供される。その臨界ノズルは、ROR MFVへの追加部品にすることができる。チャンバ圧力と、ノズルの上流圧力との間の比が、臨界流圧力比よりも小さい限り、上昇するチャンバ圧力はDUTの下流圧力に影響を及ぼすことはなく、ノズルを横切る流量は一定である。流量検証のためにDUTとcMFVとの間の外部体積を求める準備構成は不要である。このようにして、精度、再現性、及び外部体積の影響を受けないという点で、質量流量検証の性能が大きく改善される。
【0052】
システム及び方法の特定の実施形態が説明されてきたが、これらの実施形態に内在する概念は他の実施形態においても用いることができることは理解されたい。本特許出願の保護は、以下の特許請求の範囲だけに限定される。
【0053】
この特許請求の範囲において、具体的に言及されない限り、単数形の構成要素を参照することは、「唯一」を意味するように意図されておらず、「1つ又は複数」を意味するように意図されている。当業者に知られているか、又は後に知られるようになる、本開示全体を通じて説明される種々の実施形態の構成要素に対する全ての構造的及び機能的均等物は、参照により本明細書に明白に援用され、特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。さらに、特許請求の範囲において明らかに列挙されているか否かにかかわらず、本明細書において開示されるいかなるものも公共のものとして提供するように意図されていない。その要素が、「〜の手段」という言い回しを用いて明らかに列挙されない限り、又は方法に関する請求項の場合には、その要素が、「〜するステップ」という言い回しを用いて列挙されない限り、いかなる請求項の要素も、米国特許法第112条第6項の定めるところに従って解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体送達デバイスによる測定値を検証するための流量検証器であって、該流量検証器は、
前記デバイスからの前記流体の流れを収容するように構成されるチャンバと、
前記チャンバ内の前記流体の圧力を測定するように構成される圧力センサと、
前記チャンバ内の前記流体の温度を測定するように構成される温度センサと、
前記デバイスから前記チャンバへの前記流体の流路に沿って、前記チャンバの上流に位置決めされる臨界ノズルとを備え、
前記臨界ノズルは、臨界流時間tcf中に、前記ノズルを通る前記流体の流量を実質的に一定に保持し、且つ前記チャンバ内の圧力の変動の影響を実質的に受けないように構成される、流体送達デバイスによる測定値を検証するための流量検証器。
【請求項2】
請求項1に記載の流量検証器において、前記臨界ノズルは、前記臨界流時間tcf中に、前記ノズルを通って流れる前記流体が臨界流条件を満たすことができるように構成され、前記臨界流条件は数学的に以下の式によって与えられ、
【数10】

式中、
は前記チャンバ内及び前記臨界ノズルの下流の前記流体の圧力であり、
は前記臨界ノズルの上流の前記流体の圧力であり、
γはγ=C/Cによって与えられ、前記流体の比熱C及びCの比であり、ここで、Cは一定の圧力における前記流体の熱容量であり、Cは一定の体積における前記流体の熱容量であり、
pcはPとPとの間の最大限許容できる比を表す臨界圧力比であり、前記臨界流条件が満たされる場合に、前記ノズルを横切る前記流体の流れは実質的に一定のままであり、且つ前記チャンバ内の圧力のいかなる変動にも実質的に影響を及ぼされない、流量検証器。
【請求項3】
請求項2に記載の流量検証器であって、前記デバイスから前記チャンバの入口への前記流体の流れを開閉するように構成される上流バルブと、前記チャンバの出口からの前記流体の流れを開閉するように構成される下流バルブとをさらに備える、流量検証器。
【請求項4】
請求項3に記載の流量検証器であって、前記下流バルブ及び前記上流バルブ、並びに前記圧力センサ及び前記温度センサを制御するように構成されるコントローラをさらに備え、該コントローラは、前記下流バルブが閉じられた後に前記チャンバ内の前記流体の圧力の上昇率を測定し、該測定された上昇率を用いて、前記デバイスから前記チャンバへ流れ込む前記流体の流量を計算し、それによって、前記流体送達デバイスによる測定値を検証するようにさらに構成される、流量検証器。
【請求項5】
請求項4に記載の流量検証器において、前記圧力センサ及び前記温度センサは、前記流量検証過程が、変化するチャンバ圧力、及び前記検証器と前記DUTとの間の外部体積とは実質的に無関係であるように、前記臨界時間t内に測定を行なうように構成される、流量検証器。
【請求項6】
請求項2に記載の流量検証器において、前記臨界流時間tcfは、以下の式によって与えられるように、前記下流バルブが閉じられる時点と、PとPとの間の比が前記臨界圧力比限界apcを超える時点との間と定義され、
【数11】

式中、
はチャンバ体積であり、
p0はt=0における前記ノズルの上流と下流との間の初期圧力比であり、
C’は前記ノズルのための吐出係数であり、
Aは前記ノズルののど部の断面積であり、
(M,γ,T)は以下のとおりであり、
【数12】

式中、
Mは前記流体の分子量であり、
Rは一般気体定数であり、
Tは気体温度であり、
γは前記流体の比熱C及びCの比であり、Cは一定の圧力における気体熱容量であり、Cは一定の体積における気体熱容量である、流量検証器。
【請求項7】
請求項2に記載の流量検証器において、前記臨界流時間tcf中の前記流体の流量は以下の式によって与えられ、
【数13】

式中、
Tは前記流体の温度であり、
Aはノズルオリフィスの断面積であり、
C’は吐出係数であり、
Mは前記流体の分子量であり、
Rは一般気体定数であり、
、P及びγは請求項2において定義される、流量検証器。
【請求項8】
請求項4に記載の流量検証器において、前記コントローラは、
a)前記上流バルブ及び前記下流バルブを開き、
b)前記デバイスのための流量設定値を与え、
c)前記チャンバ内の圧力が定常状態に達し、安定するまで待ち、
d)流量計算のためにチャンバの気体圧力及び前記チャンバ気体温度を記録し始め、
e)前記下流バルブを閉じて、それによって前記チャンバ内の圧力が上昇するようにし、
f)流量検証のために前記臨界流時間tcfよりも短い時間だけ待ち、
g)前記下流バルブが閉じられた時点から測定されるような臨界時間内に、前記下流バルブを開き、
h)以下の式を用いて、前記チャンバに流れ込む前記流体の流量を計算することによって、前記流体送達デバイスの測定値を検証するように構成され、
【数14】

式中、
はチャンバ体積であり、
stpは約273.15Kであり、
stpは約1.01325e5Paであり、
はSCCM単位の場合、約6×10、SLM単位の場合、6×10であり、
Pは前記圧力センサ/変換器によって測定されるチャンバ圧力であり、
Tは前記温度センサによって測定される気体温度である、流量検証器。
【請求項9】
請求項8に記載の流量検証器において、前記臨界ノズルは、前記ROR検証器の前記チャンバ体積を、前記DUTへの外部配管から分離し、それによって前記外部体積の情報が前記ROR質量流量検証器の前記流量計算と関係がなくなると共に、前記流量検証器と前記DUTとの間の前記外部体積を求めるための準備較正が一切不要になるようにする、流量検証器。
【請求項10】
請求項9に記載の流量検証器において、前記流量検証器は、連続パルス準リアルタイム(CPSR)動作モードにおいて動作することができ、該動作モードでは、前記コントローラによって、複数の検証時間のそれぞれにおいて、前記圧力センサ及び前記温度センサによって圧力測定及び温度測定が行なわれ、該各検証時間は、前記下流バルブが閉じられるときに開始し、前記下流バルブが閉じられた時刻から前記臨界流時間tcfが経過する前に、前記下流バルブが開けられるときに終了し、それによって、前記ノズルを横切る流れが常に前記臨界流条件にあり、前記チャンバ圧力が変化しても、前記流量、及び前記DUTの前記下流圧力に実質的に影響を及ぼさないようにする、流量検証器。
【請求項11】
請求項10に記載の流量検証器において、前記コントローラによって計算される前記流量は、前記CPSRモードにおいて何度も実行する場合の平均流量であり、それによって、前記圧力センサ及び前記温度センサ内の測定雑音によって引き起こされる前記計算された流量の変動が最小限に抑えられる、流量検証器。
【請求項12】
請求項1に記載の流量検証器において、前記臨界ノズルは、前記ノズルを通る前記流体の流れを臨界流に制限するように構成される、流量検証器。
【請求項13】
流体送達デバイスの測定値を検証する方法であって、
前記質量流量検証器と前記DUTとの間の前記流体の流路に沿って臨界ノズルを配置することであって、臨界流時間中に、前記残留物の該ノズルを横切る流体の流れ、及び該ノズルの上流の前記流体の圧力が実質的に一定のままであり、且つ前記チャンバ内の圧力の上昇の影響を実質的に受けないように、該流体の流れを保持する、配置すること、
前記チャンバの入口及び出口バルブを開かれている間に、前記流体が流路に沿って前記デバイスから前記チャンバに流れ込むようにすること、
前記チャンバ内に流れ込む前記流体の流量、及び前記チャンバ内の前記流体の圧力が定常状態に達することができるようにすること、
前記チャンバの下流のバルブを閉じることであって、前記流体の圧力が前記チャンバ内で上昇し始めるようにする、閉じること、並びに
前記臨界流時間内に流体圧力及び流体温度の測定を行うことであって、前記チャンバ内の前記流体の圧力の上昇率を測定する、測定を行うこと、及び該測定された上昇率を用いることであって、前記流体温度の測定値と共に、前記流体の流量を計算する、用いることを含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、前記臨界ノズルは、前記臨界流時間中に臨界流条件が満たされるように、前記ノズルを横切る前記流体の流れを制限するように構成され、前記臨界流条件は数学的に以下の式によって与えられ、
【数15】

式中、
は前記チャンバ内及び前記臨界ノズルの下流内の前記流体の圧力であり、
は前記臨界ノズルの上流の前記流体の圧力であり、
γはγ=C/Cによって与えられ、前記流体の比熱C及びCの比であり、ここでCは一定の圧力における前記流体の熱容量であり、Cは一定の体積における前記流体の熱容量であり、
pcはPとPとの間の最大限許容できる比を表す臨界流パラメータであり、前記臨界流条件が満たされる場合に、前記ノズルを横切る前記流体の流れは実質的に一定のままであり、且つ前記チャンバ内の圧力のいかなる変動にも実質的に影響を及ぼされない、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記流体の流量は以下の式を用いて計算され、
【数16】

式中、P及びTは、チャンバ圧力が変化しても前記DUTの前記下流圧力に影響を及ぼさないような前記臨界流時間内にある検証時間中に、前記圧力センサ及び前記温度センサによって測定される、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、
前記圧力の測定及び前記温度の測定は複数の検証時間のそれぞれにおいて行われ、各該検証時間は、前記下流バルブが閉じられるときに開始し、前記下流バルブが閉じられた時刻から前記臨界流時間tcfが経過する前に前記下流バルブが開けられるときに終了し、
前記計算された流量は、前記CPSRモードにおける多数の実行中の平均流量であり、測定される雑音が最小限に抑えられるようにする、方法。
【請求項17】
DUT(被試験デバイス)と、該DUTによる質量流量測定値を検証するための質量流量検証器との間の外部体積を求めるのを避ける方法であって、該方法は、
前記質量流量検証器の前記入口に流れ絞り機構を配置することを含み、該流れ絞り機構は、
臨界ノズル、及び
臨界オリフィスのうちの少なくとも一方を含む、方法。
【請求項18】
流体の流量の流量測定デバイスによる測定値を検証する質量流量検証器によって計算される前記流体の流量の変動を最小限に抑える方法であって、該質量流量検証器は、前記流量測定デバイスからの前記流体の流れを収容するように構成されるチャンバと、該チャンバ内の前記流体の圧力を測定するように構成される圧力センサと、該チャンバ内の前記流体の温度を測定するように構成される温度センサとを備え、該方法は、
該ノズルを横切る前記流体の流れを制限するように、前記流量測定デバイスと前記チャンバとの間に臨界ノズルを配設することを含み、前記ノズルの下流の圧力及び前記ノズルの上流の圧力の比が臨界流パラメータapcよりも小さい限り、前記ノズルを通る前記流体の流量が前記チャンバ内の圧力の変動の影響を実質的に受けないようにする、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、所望の流量範囲、及び前記流量測定デバイスの最大下流圧力要件に基づいて、前記臨界ノズルのための最適なオリフィスサイズを選択することをさらに含む、方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法であって、前記流量ノズルの前記上流圧力を測定するために、該流量ノズルの上流に位置決めされる第2の圧力変換器をさらに備え、前記第2の圧力変換器によって測定される前記流量ノズルの前記上流圧力を用いて、前記流量検証を実行する前に、前記ノズルを通る流れが安定しているか否かを判定することができる、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、前記第2の圧力変換器によって測定される前記流量ノズルの前記上流圧力を用いて、cMFVへの第2の流量検証方法として、請求項7に記載の式によって前記ノズルを通る前記流量を計算することができる、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−543061(P2009−543061A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518530(P2009−518530)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/072186
【国際公開番号】WO2008/014076
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(592053963)エム ケー エス インストルメンツ インコーポレーテッド (114)
【氏名又は名称原語表記】MKS INSTRUMENTS,INCORPORATED