説明

自冷有芯コイルとこのコイルを用いた高周波トランス

【課題】コイル全体が効率よく冷却され、エッジワイズコイルの一部がヒートシンクを兼ねて構造が簡素化され、製作が容易で、コストダウンが得られるようにする。
【解決手段】起立させた内鉄型のコア1の左右の鉛直巻線部にそれぞれ絶縁被覆平角銅線からなるエッジワイズコイル3を装備した有芯コイルにおいて、両エッジワイズコイル3の上端相互を、上方へとアーチ状に彎曲させた共通の上部エッジワイズコイル4で電気的・機械的に連続させ、両エッジワイズコイル3の下端から上部エッジワイズコイル4に至る内側に下方から上方に抜ける通風空冷流路5を設けて成り、該通風空冷流路の煙突効果と上部エッジワイズコイル4の強制冷却の放熱フインとしての機能とで上記課題を解決したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランス、チョーク、フィルタ、リアクトル、インダクタンス素子等の自冷有芯コイルとこれを用いて形成した高周波トランスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高周波トランス等では、図4乃至図5に示すように、起立させた内鉄型のコア1の左右の鉛直巻線部にそれぞれ絶縁被覆平角銅線からなる一次コイル2aと二次コイル2bとのバイファイラ巻エッジワイズコイル3を装備させることがある。この場合のバイファイラ巻エッジワイズコイル3は、絶縁被覆丸銅線のバイファイラ巻コイルに比べて一次コイルと二次コイルとの間の電磁的結合性を良くでき、巻数を多くすることができ、かつ、銅線断面積を大きくしても表皮効果の低減で有効断面積がほとんど小さくならないので、大電流・大電力用の高周波トランスに好適である。本発明は、かかる特長を活かしつつコイルの強力な自冷を可能にして、更なる進歩発展を期するものである。
【0003】
ところで、従来の高周波トランス等におけるコイルの自冷手段は、コイル又はコイル乃至コアにヒートシンクを付設するものであった(例えば特許文献1〜4参照)。
【0004】
しかし、それらのヒートシンクは、多数の放熱フインを突設したものであり、また、コイルやコアに伝熱装備させるためにコイルやコアに適合した特殊形状を要するものであり、たとえ別部材であったとしても簡単なものではなく(例えば特許文献1〜3参照)、コイルに直接的に設けるものであれば益々複雑になって製作が困難となり(例えば特許文献4参照)、何れにせよ相応にかなりのコスト高とならざるを得ないものであった。しかも、コイルに直に設けないものでは、熱伝導性能が低下して冷却効果が落ちる可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−8923号公報
【特許文献2】実開平4−70710号公報
【特許文献3】特開昭63−50007号公報
【特許文献4】特公昭47−6183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の従来の問題点を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の自冷有芯コイルは、起立させた内鉄型のコアの左右の鉛直巻線部に絶縁被覆平角銅線からなるエッジワイズコイルを装備させた有芯コイルにおいて、上記エッジワイズコイルの上端相互を共通の上部エッジワイズコイルで電気的・機械的に連続させるとともに、該上部エッジワイズコイルをアーチ状に上方へと彎曲させ、かつ、上記左右の両エッジワイズコイル乃至上記上部エッジワイズコイルの内側に下方から上方に抜ける通風空冷流路を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の高周波トランスは、上記自冷有芯コイルを用い、かつ、上記左右の両エッジワイズコイル乃至上記上部エッジワイズコイルを一次コイルと二次コイルとのバイファイラ巻エッジワイズコイルとするとともに、いずれか一方乃至双方を単一体乃至複数の分割体として成る。
【0009】
如上の構成であるから、本発明に係る自冷有芯コイルでは、鉛直方向の左右両エッジワイズコイル及び上部エッジワイズコイルが通電により発熱すると、この熱で各通風空冷流路内の空気が加熱されて上昇し、これに伴い各通風空冷流路に煙突効果が生じて、通風空冷流路内に下方から外気が強力に吸入されて上昇し、上部エッジワイズコイルの隙間から上方へと勢い良く流出する。この際、上部エッジワイズコイルが強制冷却の放熱フインとして機能して、該上部エッジワイズコイルがその空気流で強制冷却され、該上部エッジワイズコイルの熱が左右のエッジワイズコイルから上昇する伝導熱共々外へと排出される。つまり、外気が自然対流で各通風空冷流路内を勢い良く流れて、上部エッジワイズコイルを介してコイル全体が強制風冷されるのである。更に、上部エッジワイズコイルは、コイル全体における上部からの漏洩磁束を制限し、効率を良くする。これに加えて、本発明に係る高周波トランスでは、左右の両エッジワイズコイル乃至上部エッジワイズコイルを一次コイルと二次コイルとのバイファイラ巻エッジワイズコイルとしているので、一次コイルと二次コイルとの間の磁気的結合性を良好にでき、巻数を多くすることができ、かつ、一次コイルと二次コイルとのいずれか一方乃至双方を単一体乃至複数の分割体としているので、これらを電気的に単一又は直列・並列に適宜に接続することで一次・二次の電圧・電流、電磁的性能等を適宜に選定でき、自在性のある好適な高周波トランスにすることができる。
【発明の効果】
【0010】
したがって、本発明によれば、コイル全体が効率よく冷却され、そして、上部エッジワイズコイルがヒートシンクを兼ねて、構造が簡素化され、製作が容易であり、コストダウンが得られる。よって、所期の目的を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る実施例1を示す高周波トランスの正面図である。
【図2】同例の平面図である。
【図3】同例の側面図である。
【図4】従来例を示す高周波トランスの正面図である。
【図5】同例の要部平面図である。
【図6】同例の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
図1乃至図3は、本発明に係る自冷有芯コイルAを用いた高周波トランスBの実施例を示している。
【0013】
高周波トランスBは、自冷有芯コイルAを主要部とするものであり、該自冷有芯コイルAは、起立させた内鉄型のコア1の左右の鉛直巻線部にそれぞれ絶縁被覆平角銅線からなるエッジワイズコイル3を装備した有芯コイルにおいて、両エッジワイズコイル3の上端相互を、上方へとアーチ状に彎曲させた共通の上部エッジワイズコイル4で電気的・機械的に連続させ、両エッジワイズコイル3の下端から上部エッジワイズコイル4に至る内側に下方から上方に抜ける通風空冷流路5を設けている。該通風空冷流路の確保とそれらのエッジワイズコイルの位置保持は、コアとそれらのエッジワイズコイルとの間に電気絶縁性・耐熱性の適宜形状の巻枠やスペーサや支持部材等を介在させることにより簡潔に簡単かつ容易に行うことができる。
【0014】
そして、高周波トランスBは、左右の両エッジワイズコイル3及び上部エッジワイズコイル4を、共通の一次コイル2aと二次コイル2bとのバイファイラ巻エッジワイズコイルにしている。なお、図示のものでは、その一次コイル2aと二次コイル2bとの双方をそれぞれ単一体としているが、いずれか一方乃至双方を複数の分割体にしてもよい。
【0015】
起立させた内鉄型のコア1は、高周波帯域で透磁率が高く、飽和磁束密度が大きく、固有電気抵抗が大きく渦電流損が少ない、化学式MOFe2 O3(M:2価の金属)で表されるソフトフェライトから成る一対のU形コア6を上下に突き合わせて結束バンド7で締結している。また、コア1の下端には前後一対のブラケット8を挟着させて2本のボルト・ナット9で締め付けることにより脚体10を設けている。
【0016】
以上の構成であるから、上記高周波トランスBの自冷有芯コイルAでは、左右両エッジワイズコイル3及び上部エッジワイズコイル4が通電により発熱すると、通風空冷流路5内の空気が加熱されて通風空冷流路5内に自然対流の上昇空気流が生じ、この上昇空気流の流速が通風空冷流路5における煙突効果で助長されて、通風空冷流路5内には下方から外気が強力に吸入されて上昇し、上方へと勢いよく排出される。したがって、両エッジワイズコイル3及び上部エッジワイズコイル4がその強力で勢いの強い通風で強制風冷され、この際、特に上部エッジワイズコイル4は、両エッジワイズコイル3から上昇する伝導熱によっても加熱されるが、上方へのアーチ状の彎曲により上方に広く扇形に開放されているから、強制冷却の放熱フインとしての機能を発揮して強力に効率よく強制冷却され、結果として、全コイルの温度上昇が低減される。これがまた省エネルギーに寄与することとなる。しかも、上部エッジワイズコイル4は、コイル全般における上部からの漏洩磁束を低減し、効率を向上させる。
【0017】
高周波トランスBは、左右のエッジワイズコイル3及び上部エッジワイズコイル4の全てを一次コイル2aと二次コイル2bとのバイファイラ巻エッジワイズコイルとしているので、高周波大電流・大電力用に供することができる。なお、一次コイル2aと二次コイル2bとのいずれか一方乃至双方を、単一体乃至複数の分割体にすることにより、これらを電気的に単一又は直列・並列に適宜に接続することで一次・二次の電圧・電流、電磁的性能等を適宜に選定できる。
【符号の説明】
【0018】
A 自冷有芯コイル
B 高周波トランス
1 内鉄型のコア
2a 一次コイル
2b 二次コイル
3 左右のエッジワイズコイル
4 上部エッジワイズコイル
5 通風空冷流路
6 U形コア
7 結束バンド
8 ブラケット
9 ボルト・ナット
10 脚体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起立させた内鉄型のコアの左右の鉛直巻線部に絶縁被覆平角銅線からなるエッジワイズコイルを装備させた有芯コイルにおいて、上記エッジワイズコイルの上端相互を共通の上部エッジワイズコイルで電気的・機械的に連続させるとともに、該上部エッジワイズコイルをアーチ状に上方へと彎曲させ、かつ、上記左右の両エッジワイズコイル乃至上記上部エッジワイズコイルの内側に下方から上方に抜ける通風空冷流路を設けたことを特徴とする自冷有芯コイル。
【請求項2】
請求項1に記載の自冷有芯コイルを用い、かつ、上記左右の両エッジワイズコイル乃至上記上部エッジワイズコイルを一次コイルと二次コイルのバイファイラ巻エッジワイズコイルとするとともに、いずれか一方乃至双方を単一体乃至複数の分割体として成る高周波トランス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−233847(P2011−233847A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105778(P2010−105778)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(391032819)株式会社アイキューフォー (7)
【Fターム(参考)】