説明

自励式無効電力補償装置

【課題】単相電圧型コンバータをカスケード接続した自励式無効電力補償装置において、初期電源を投入した際に単相電圧型コンバータのコンデンサに流れる突入電流を抑制するために必要な充電抵抗を短絡するために必要な電磁接触器を、少ない回路構成を追加することで減らす。
【解決手段】電磁接触器の代わりに単相電圧型コンバータの上アームに充電抵抗と、それに並列にIGBTを取り付ける。電圧検出器は前記コンデンサの充電電圧を検出し、ある一定の時間が通過したら前記IGBTをONし、ON状態は自己保持される。単相電圧型コンバータのコンデンサからエネルギーを取り出す場合は前記IGBTの還流ダイオードを前記コンデンサの放電電流が通る。前記コンデンサを充電する場合は前記IGBTを介して前記コンデンサを充電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無効電力を連続的に制御できる自励式無効電力補償装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2を用いて従来技術を説明する。三相交流電源系統200のそれぞれに本装置である自励式無効電力補償装置を接続するための電磁接触器103が接続されている。電磁接触器103のもう一端には充電抵抗5と、該充電抵抗5に並列に電磁接触器104が接続されている。充電抵抗5のもう一端にはインダクタ9が接続されている。インダクタ9のもう一端にはスター結線で任意数個カスケード接続された単相電圧型PWMコンバータ1が接続されている。単相電圧型PWMコンバータ1は図4に示すようになっており、還流ダイオード付きの半導体スイッチが4つフルブリッジ回路を成しており、半導体スイッチに並列に接続された還流ダイオード12のカソード側にコンデンサ7の正極が接続され、半導体スイッチに並列に接続された還流ダイオード14のアノード側にコンデンサ7の負極が接続されている構成となっている。
【0003】
[非特許文献1]によれば、図4に示される単相電圧型PWMコンバータ1は該単相電圧型PWMコンバータ1を構成する4つの半導体スイッチのオン・オフを制御することによって、コンデンサ7の電圧およびコンデンサ7の逆極性の電圧および零電圧を出力することができる。
【0004】
[非特許文献1]における従来技術の自励式無効電力補償装置は、図2のような構成にすることによって、出力電圧がマルチレベル化することで三相交流電源系統200の電流の高調波成分が非常に少ない良好な波形を得ることができる。三相交流電源系統200の無効電力は,電圧変動や安定性低下の原因となるので、従来技術の自励式無効電力補償装置を用いることで、三相交流電源系統200の無効電力を制御し、良好な配電系統電圧を得ることが可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】吉井剣・井上重徳・赤木泰文:「6.6kVトランスレス・カスケードPWM STATCOM −三相200V10kVAミニモデルによる動作検証―」、電学論D 127巻 8号 2007年 p781〜p788
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、本自励式無効電力補償装置を三相交流電源系統200に接続した際に、図2を構成する単相電圧型PWMコンバータ1を構成するコンデンサ7の群に突入電流が流れるのを防止するために、充電抵抗5を具備する必要があった。従来技術では、単相電圧型PWMコンバータ1群を構成する半導体スイッチをすべてOFFにし、電磁接触器103をONにする。コンデンサ7群を流れる突入電流は充電抵抗5によって抑制され、コンデンサ7群が十分充電されたのち、電磁接触器104をONするというシーケンスが必要であった。このシーケンスは外部にCPUを設けて制御をしなければならないという煩雑な手間があった。よって、大型な電磁接触器104を安価な手間で省略し、かつCPUによる制御によって充電抵抗5を短絡する手間を省略したいという要望があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、単相フルブリッジコンバータが三相スター結線で任意数個カスケード接続されて構成された電力変換器の、前記三相スター結線の各相それぞれにおける任意数個のうちのひとつの前記半導体スイッチ群において、上アームの還流ダイオード12のカソードにコンデンサ101の正極が接続され、前記コンデンサ101の負極に抵抗5が接続され、該抵抗5のもう一端に前記還流ダイオード14のアノードに接続され、前記抵抗5に並列に、コレクタが前記コンデンサ101の負極に接続されるように還流ダイオード付きIGBT6が接続され、前記コンデンサ101の正極と該コンデンサ101の負極が入力され前記コンデンサ101の両端の電圧にあるゲインを掛けた電圧を出力する電圧検出器10が接続され、該電圧検出器10の出力にダイオード31のアノードが接続され、該ダイオード31のカソードにNPN型トランジスタ41のベースとダイオード32カソードが接続され、前記NPN型トランジスタ41のエミッタに抵抗23が接続され、該抵抗23のもう一端に前記コンデンサ101の負極が接続され、前記NPN型トランジスタ41のコレクタにPNP型トランジスタ42のベースが接続され、該PNP型トランジスタ42のエミッタと前記コンデンサ101の正極との間に抵抗25が接続され、前記ダイオード32のアノードに前記PNP型トランジスタ42のコレクタが接続され、一次側と二次側が絶縁されており一次側に発光ダイオードが搭載されていて前記一次側の発光ダイオードのアノードに前記PNP型トランジスタ42のコレクタが接続され、コンデンサ101の負極が前記発光ダイオードのカソードに接続され、二次側に受光素子が搭載されていて該受光素子が半導体スイッチとなっているオプトカプラが接続され、該半導体スイッチの上段には前記コンデンサ101が接続されて、該半導体スイッチの下段には前記半導体スイッチのONおよびOFF状態に応じて前記IGBT6を駆動するための電圧を出力するゲートアンプ26が接続され、該ゲートアンプ26の出力が前記IGBT6のゲートに接続されている回路を具備することである。
【発明の効果】
【0008】
本発明を具備することによって、電磁接触器よりも小型なIGBTで充電抵抗5を従来技術の性能をそれほど損ねることなく、安価な部品を追加することによって、さらにCPUの制御を介さずに実現することが可能である点である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図3の一部である本発明の構成の説明図である。(実施例1)
【図2】従来技術を説明した図である。
【図3】本発明の構成の全体を説明した図である。
【図4】従来技術および本発明の構成の一部を説明した図である。
【図5】本発明の詳細な回路構成一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
自励式無効電力補償装置において、大型な電磁接触器を安価な手間で省略し、かつCPUによる制御によって充電抵抗5を短絡する手間を省略するという問題を、本発明を具備することによって、電磁接触器よりも小型なIGBT6で充電抵抗5を従来技術の性能をそれほど損ねることなく、安価な部品を追加することによって、さらにCPUの制御を介さずに実現することが可能にした。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明を説明した図である。図1は図3の一部である。従来技術では図2に示すように、自励式無効電力制御装置を電源投入した際に単相電圧型PWMコンバータ1群が具備するコンデンサ7へ流れる初期充電電流を抑制するための抵抗5が、インダクタ9
と電磁接触器103の間に必要であり、さらに該抵抗5を短絡するための電磁接触器104が必要であったが、図3に示すように、本発明では、抵抗5は図1に示されるような接続箇所に搭載され、電磁接触器104は必要ない。
【0012】
図1に示す本発明を具備した単相電圧型PWMコンバータ8は、図3に示すようにスター結線上にカスケード接続された単相電圧型PWMコンバータ1群の各相のどこかにひとつ搭載されていればよい。
【0013】
図5は図1の詳細な回路図例である。抵抗5は本発明が電源初期投入された際に、コンデンサ101を流れる突入電流を抑制するとともに、コンデンサ101の電圧をコンデンサ101のキャパシタンスと抵抗5の抵抗値による時定数で徐々に増加させる機能を持つ。抵抗21と抵抗22は徐々に増加するコンデンサ101の電圧を分圧し、検出する機能を持つ。抵抗22の両端の電圧がダイオード31のフォワードドロップ電圧とNPN型トランジスタ41のON電圧を超えた場合、NPN型トランジスタ41がONをし、41のコレクタに電流が流れるため、PNP型トランジスタ42がONをし、PNP型トランジスタ42のコレクタに流れる電流はダイオード32を介して、NPN型トランジスタ41をONしつづける。
【0014】
抵抗25はPNP型トランジスタ42を過電流から保護するためのものである。抵抗23はNPN型トランジスタ41を安定に動作させるために設置されるものである。
【0015】
オプトカプラ24は高耐電圧のフォトカプラや高耐電圧フォトMOSリレーを応用することが可能であるが、ここではフォトカプラを一例に説明する。PNP型トランジスタ42がONすると、PNP型トランジスタ42のコレクタを流れる電流はオプトカプラ24の一次側に入力され、オプトカプラ24の二次側がONする。オプトカプラ24のエミッタにはツェナーダイオード262のカソードと抵抗261の一端が接続され、ツェナーダイオード262のアノードと抵抗261のもう一端はIGBT6のエミッタに接続されている。IGBT6のゲートにツェナーダイオード262のカソードが接続されている。ツェナーダイオード262の降伏電圧は約15Vほどであり、該IGBT6のゲートを駆動するには十分な電圧を確保するものとする。ここで、オプトカプラ24の二次側のコレクタとコンデンサ101の正極の間に接続された抵抗241は、ツェナーダイオードを過電流から保護するために接続される。
【0016】
抵抗5はコンデンサ101を充電する時定数を決定するので、本発明を具備した単相電圧型PWMコンバータ8群や単相電圧型PWMコンバータ1群が過電圧で壊れない範囲であれば、抵抗値を調整することでIGBT6がいつONするかのタイミングを設計することができる。
【0017】
また、ダイオード31を直列に追加したり、抵抗22の抵抗値を変えたりすることでもIGBT6をONするタイミングを設計することができる。これにより、コンデンサ101が十分に充電されてからIGBT6をONすることが可能である。このため、結果的にIGBT6はコンデンサ7が充電されている期間だけOFFし、あとはONを保持し続けることが可能である。
【0018】
以上のような構成にすると、本発明である自励式無効電力補償装置が電圧を出力し、コンデンサ101から電力を取り出す場合にはIGBT6の還流ダイオードを電流が流れ、逆にコンデンサ101に電力をため込む場合はON状態を保持されたIGBT6を介して電流が流れて、コンデンサ101が充電される。これは、本発明が従来技術を損ねずに保持していることに他ならない。
【0019】
電磁接触器は大型であり、それに比べIGBTは単相電圧型PWMコンバータ1を構成するIGBTと同程度の定格の容量のものを用意すれば良いのであり、小型化することができる。また、NPN型トランジスタ41やPNP型トランジスタ42やダイオード31やダイオード32などその他の部品は小電圧で駆動されるのでそれほど大きな体積は必要ない。よって、本発明は、従来技術と比較して、従来の機能を損ねることなく小型化装置全体の小型化が期待されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、無効電力を連続的に制御できる自励式無効電力補償装置に適用できるものである。
【符号の説明】
【0021】
1 単相電圧型PWMコンバータ
10 電圧検出器
11 単相電圧型PWMコンバータを構成する半導体スイッチであり、例えばIGBT
12 単相電圧型PWMコンバータを構成する半導体スイッチであり、例えばIGBT
13 単相電圧型PWMコンバータを構成する半導体スイッチであり、例えばIGBT
14 単相電圧型PWMコンバータを構成する半導体スイッチであり、例えばIGBT
21 抵抗
22 抵抗
23 抵抗
24 オプトカプラ
25 抵抗
26 ゲートアンプ
261 抵抗
262 ツェナーダイオード
31 ダイオード
32 ダイオード
41 NPN型トランジスタ
42 PNP型トランジスタ
5 充電抵抗
6 IGBT
7 コンデンサ
8 本発明を具備した単相電圧型PWMコンバータ
9 インダクタ
101 コンデンサ
103 電磁接触器
104 電磁接触器
200 三相交流電源系統
300 三相系統負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電源系統があって、該三相交流電源系統の三相それぞれにA接点で動作する電磁接触器の一端が接続され、それぞれの前記電磁接触器のもう一端にインダクタが接続され、該インダクタのもう一端に、還流ダイオードが並列接続された半導体スイッチが単相フルブリッジ接続された4つの半導体スイッチ群と該半導体スイッチ群の上アームの還流ダイオードのカソード(12)にコンデンサの正極(7)が接続され、該コンデンサ(7)の負極が前記半導体スイッチ群の下アームの還流ダイオードのアノード(14)に接続されて構成される単相フルブリッジコンバータが三相スター結線で任意数個カスケード接続されて構成された電力変換器の、前記三相スター結線の各相それぞれにおける任意数個のうちのひとつの前記半導体スイッチ群において、
上アームの還流ダイオード(12)のカソードにコンデンサ(101)の正極が接続され、前記コンデンサ(101)の負極に抵抗(5)が接続され、該抵抗(5)のもう一端に前記還流ダイオード(14)のアノードに接続され、前記抵抗(5)に並列に、コレクタが前記コンデンサ(101)の負極に接続されるように還流ダイオード付きIGBT(6)が接続され、前記コンデンサ(101)の正極と該コンデンサ(101)の負極が入力され前記コンデンサ(101)の両端の電圧にあるゲインを掛けた電圧を出力する電圧検出器(10)が接続され、該電圧検出器(10)の出力にダイオード(31)のアノードが接続され、該ダイオード(31)のカソードにNPN型トランジスタ(41)のベースとダイオード(32)カソードが接続され、前記NPN型トランジスタ(41)のエミッタに抵抗(23)が接続され、該抵抗(23)のもう一端に前記コンデンサ(101)の負極が接続され、前記NPN型トランジスタ(41)のコレクタにPNP型トランジスタ(42)のベースが接続され、該PNP型トランジスタ(42)のエミッタと前記コンデンサ(101)の正極との間に抵抗(25)が接続され、前記ダイオード(32)のアノードに前記PNP型トランジスタ(42)のコレクタが接続され、一次側と二次側が絶縁されており一次側に発光ダイオードが搭載されていて前記一次側の発光ダイオードのアノードに前記PNP型トランジスタ(42)のコレクタが接続され、コンデンサ(101)の負極が前記発光ダイオードのカソードに接続され、二次側に受光素子が搭載されていて該受光素子が半導体スイッチとなっているオプトカプラが接続され、該半導体スイッチの上段には前記コンデンサ(101)が接続されて、該半導体スイッチの下段には前記半導体スイッチのONおよびOFF状態に応じて前記IGBT(6)を駆動するための電圧を出力するゲートアンプ(26)が接続され、該ゲートアンプ(26)の出力が前記IGBT(6)のゲートに接続されている回路を具備することを特徴とする電力変換器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−92877(P2013−92877A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234016(P2011−234016)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000003115)東洋電機製造株式会社 (380)
【Fターム(参考)】