説明

自励振動流ノズル

【課題】噴出流体を、例え前後方向に揺動させて洗浄範囲の拡大を図ることを目的とするものである。
【解決手段】流体が直進流動するノズル本体3の先端内部に渦室12を形成するとともに、この流体の直進流動方向に対して上記渦室13を偏心させて初期渦方向を設定し、前記初期渦方向の設定側に対応するノズル本体3の一部部位に吐出孔15を設け、初期渦方向に沿って流体が渦を形成すると吐出孔15を設けた渦室の部位とは反対側の部位の圧力が低下することで渦の流れ方向が切換えられるように構成し、上記渦の流れ方向切換えによって、吐出孔から吐出される流体を発振させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生洗浄機能付便座などに設けられる自励振動流ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の衛生洗浄機能付便座などに設けられる自励振動流ノズルは、ノズル本体の先端に流体素子を組み込むことにより、噴流を前後方向に揺動偏向させて洗浄範囲を拡大し、加えて、噴流が周期的に人体にあたることにより良好な洗浄感を得ている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、洗浄ノズルの噴流を偏向させる手段として、ノズル本体の噴出口を機構的に偏向させるものも見受けられる(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特公昭63−60182号公報
【特許文献2】特開2003−232068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、ノズル本体の先端部に流体素子あるいは噴出口を機構的に偏向させる手段を組み込む必要があり、それらの動作原理から所定の大きさが必要である。そのため、ノズル形状が必然的に大きくなり、しかも構成部品として高い精度が必要で、信頼性を確保するのが困難であった。さらには、これら部品のコストが高いという課題を有していた。
【0005】
本発明は前記従来の課題を解決するもので、精密な構成部品を必要としない、信頼性の高い自励振動流洗浄ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明は、流体が直進流動するノズル本体の先端内部に渦室を形成するとともに、この流体の直進流動方向に対して上記渦室を偏心させて初期渦方向を設定し、前記初期渦方向の設定側に対応するノズル本体の一部部位に吐出孔を設け、初期渦方向に沿って流体が渦を形成すると吐出孔を設けた渦室の部位とは反対側の部位の圧力が低下することで渦の流れ方向が切換えられるように構成し、上記渦の流れ方向切換えによって、吐出孔から吐出される流体を発振させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の自励振動流洗浄ノズルは、直進流体をノズル本体先端の曲面部に衝突させて、自励振動流を発生させ、この自励振動流に影響される位置にノズルの噴出口を設けることにより、ノズルから吐出される流体を安定して揺動させることができ、またそのための構成も極めて簡素化できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の自励振動流洗浄ノズルは、流体が直進流動するノズル本体の先端内部に渦室を形成するとともに、この流体の直進流動方向に対して上記渦室を偏心させて初期渦方向を設定し、前記初期渦方向の設定側に対応するノズル本体の一部部位に吐出孔を設け、初期渦方向に沿って流体が渦を形成すると吐出孔を設けた渦室の部位とは反対側の部位の圧力が低下することで渦の流れ方向が切換えられるように構成し、上記渦の流れ方向切換えによって、吐出孔から吐出される流体を発振させるようにしたものである。
【0009】
このため、自励振動流が極めて簡単な機構で実現できるだけでなく、形状のコンパクト化が促進でき、また低廉なノズルを提供できる。
【0010】
そして、吐出孔はノズル本体の一部周壁を平面状部とし、この平面状部に形成した。
【0011】
また、吐出孔の孔径をD、同孔の深さSとしたとき、アスペクト比S/Dは1.0以下に設定して、吐出孔から吐出される流体の発振を確実とした。
【0012】
また、流体が直進流動する通路の中心と渦室の高さ方向の中心をずらして渦の流れ方向を切換えるようにした。
【0013】
吐出孔は複数個設けてもよく、形状として楕円形状とすることも考えられる。さらに、ノズル本体に空気混入用のエジェクターを設ければ気泡混入の流体にでき、例えば、洗浄効果を高めることができる。
【0014】
そして、これら自励振動流ノズルを衛生洗浄機能付便座に搭載することで洗浄効果の高い、コンパクトな構成にまとめることができるものである。
【0015】
(実施の形態1)
図1〜図5は衛生洗浄機能付便座に使用したものであって、洗浄用流体が直進流動する通路1を中心部に形成した流体導入部2にパイプ状のノズル本体3を外嵌合して自励振動流ノズル4が構成されている。さらに述べると、ノズル本体3は肉厚が0.3mmから0.5mm程度のステンレス鋼板の絞り加工により得たもので、シールリング5を介して流体導入部2の外周面に液密に取着してあり、カシメ部6で一体化されている。
【0016】
さらに、上記ノズル本体4は、流体流入部7を基端側に設けたシリンダ8に出没自在に内嵌合されている。
【0017】
ノズル4の液体導入部2の基端にはシリンダ8の内周を摺動する径大なフランジ9が形成されており、流体流入部7を介してこのシリンダ8に流体が導入されると、この流体圧をフランジ9が受けて背圧用のスプリング10に抗してノズル4を突出方向に摺動させるものである。また流体の導入を停止すると上記スプリング10の作用でノズル4は元の後退位置(シリンダ8に対する収納状態)に戻る。
【0018】
上記フランジ9の前方に設けたパッキング11は、ノズル4の突出位置でシリンダ8の段差部に弾接して流体の漏れを防止する作用を発揮する。
【0019】
ところで、上記ノズル本体3の先端部内方には渦室12が形成してある。この渦室12は、曲面部13とそれより上流側の上部に位置して平面状部14をもち、これによって、通路1は平面状部14側に近く位置するように偏在する形態に設定されている。そして吐出孔15がこの平面状部14に形成してある。
【0020】
上記吐出孔15の孔径をD、同孔の深さSとしたとき、アスペクト比S/Dは1.0以下に、液体導入部2の通路1の内径をD1、渦室13の高さをHとしたとき、D1<Hにそれぞれ設定してある。また、通路10の中心線と曲面部14の半径中心部とはほぼ一致させて設定されている。
【0021】
先にも述べたように、流体流入部7を介してシリンダ8に流体が導入されると、スプリング10に抗してノズル4が突出方向に摺動するとともに、導入された流体が液体導入部
2の通路1からノズル本体3内を流れる。ここで、通路1は平面状部14側に近い形態で偏在しているところから、ノズル本体3内を流れる流体が平面状部14に付着するように流動して曲面部13に至り、渦室12で渦Aを形成するもので、したがって、この渦Aの向きは図5aのように反時計方向となる。
【0022】
上記反時計方向の渦Aが形成されると、渦室12の下壁近辺の圧力が低下し、その結果、ノズル本体3内を流れる流体が渦室12の下壁に付着するように流動して曲面部13に至り、よって、渦室12では時計方向の渦Bを形成する(図5b)。
【0023】
渦Bが形成されると平面状部14の側の圧力が低下するから、再度、反時計方向の渦Aが形成される。このように、渦室13では反時計方向、時計方向の渦A,Bが交互に形成されることとなる。
【0024】
そして、反時計方向の渦Aは吐出孔15から吐出される流体に前方偏向力を付与して、結果的に斜め前方の吐出流体Cを形成し、一方、時計方向の渦Bは吐出孔15から吐出される流体に後方偏向力を付与し、これにより、斜め後方の吐出流体Dを形成することとなる。
【0025】
したがって、吐出孔15からの吐出流体は斜め前方および後方に振動されるもので、その分、洗浄範囲が拡大し、洗浄効果も高められるものである。
【0026】
ここで、吐出孔12の孔径Dと深さSのアスペクト比S/Dを1.0以下に設定した理由について述べる。
【0027】
仮に、吐出孔15の深さSが孔径Dよりも大であると、すなわち、アスペクト比S/Dが1.0以上であると、吐出流体はどうしてもその吐出孔15で流れ方向が拘束される形となり、揺動そのものが規制されるようになる。上記のように、アスペクト比S/Dを1.0以下にすると吐出孔15による流れ方向の拘束が小さくなり、確実な吐出流体の揺動を得ることができるものである。吐出流体の大きな揺動を確実に実現しようとするならば、アスペクト比S/Dを0.5以下に設定することが望ましい。
【0028】
また、液体導入部2の通路1の内径D1と、渦室13の高さHとの関係をD1<Hに設定したので、渦室12の内部においてその高さ方向に流体の流れ方向が変動する充分なる幅が与えられることとなり、その結果、吐出流体を確実に揺動できる。
【0029】
さらに、上記D1<Hの関係から通路1からの流体噴出方向を意図的に偏向させることができる。本実施の形態では、吐出孔15を形成した変面状部14に近い側に噴出流体をずらして設定しているため、この通路1から噴出される流体は、先ず、この変面状部14に付着するようにして流れ、逆に変面状部14とは反対側に偏向させると、最初はこの反対側の面に偏向されるものである。
【0030】
また、ノズル本体3をステンレスの板材を薄肉に絞って構成することにより、ノズル本体先端の曲面部、ノズル本体の吐出孔を形成した変面状部14を絞り加工で一体に構成でき、しかも、コンパクトに構成することができる。
【0031】
(実施の形態2)
図6は本発明の第2の実施の形態を示し、変面状部14に吐出孔15aを複数個設けて洗浄感を良くしたものである。
【0032】
もちろん、この場合でも、ノズル噴流の偏向機能は同様に作用するため、自励振動流に
より周期的に揺動する噴流つくりだすことができる。
【0033】
(実施の形態3)
図7は本発明の第3の実施の形態を示し、変面状部14に前後に長い楕円状に開口した吐出孔15bを設け、噴流のばらけを少なくしてソフトな洗浄感が得られるようにしたものである。
【0034】
(実施の形態4)
図8は本発明の第4の実施の形態を示し、変面状部14に左右に長い楕円状に開口した吐出孔15cを設けて、幅の広い揺動噴流をつくりだすようにしたことで、広い範囲を均等に洗浄することが可能である。
【0035】
(実施の形態5)
図9は本発明の第5の実施の形態を示すものである。
【0036】
すなわち、本実施の形態では、ノズル本体4の基端側にエジェクター16を設けて流体中に空気を導入するようにしたものである。さらに述べると、流体を絞り部17で加速して混合管部18に噴射されるように構成してあり、この噴射による圧力低下で外部の空気が吸気孔19を介して吸引され、その後、これら流体と空気は混合管部18で混合されて気泡の存在する流体として通路1を通り吐出孔より揺動吐出されるものである。気泡の存在する流体は使用者にソフト感を与え、使用感を向上させることとなる。
【0037】
なお、実施の形態1の図3と同一の作用を発揮する構成については同一符号を付し、その詳細な説明は実施の形態1のものを援用する。
【0038】
(実施の形態6)
図10は本発明の第6の実施の形態を示し、温水洗浄便座に実施した具体例である。
【0039】
水道配管(図示せず)より分岐水栓20を介して分岐された水回路には、上流側からからストレーナ21、逆止弁22、定流量弁23、止水電磁弁24、バキューム弁25が接続されている。バキューム弁25は、それ以後の水回路で負圧が発生した場合に、この負圧を解除する方向に弁が作動する。バキューム弁25以後には、熱交換器26と、熱交換器26の出口に接続された水ポンプ27と、この水ポンプ27の出口に接続された流路切替弁28が接続され、同流路切替弁28にはおしりノズル29、ビデノズル30、ノズル洗浄ポート30とが各々接続されている。
【0040】
これらおしりノズル29、ビデノズル30には実施の形態1〜5いずれかの自励振動流ノズルが装着され、洗浄効果が高く、洗浄感の良いノズルが構成される。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように、本発明にかかる自励振動流ノズルは、ノズル先端の曲面部と、この曲面部に衝突する内部噴流とで自励振動流を発生させ、この自励振動流によりノズルより噴出する噴流を周期的に偏向揺動させるもので、極めて簡単な構成で揺動ノズルが実現が可能となるため、他の洗浄機器、噴流吐出機構への応用展開が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態1における自励振動流ノズルの概略外観図
【図2】図1のA−A断面図
【図3】同自励振動流ノズルの主要部断面図
【図4】同自励振動流ノズルの主要部拡大断面図
【図5】同自励振動流ノズルの動作説明図
【図6】本発明の実施の形態2における自励振動流ノズルの概略外観図
【図7】本発明の実施の形態3における自励振動流ノズルの概略外観図
【図8】本発明の実施の形態4における自励振動流ノズルの概略外観図
【図9】本発明の実施の形態5における自励振動流ノズルの主要部断面図
【図10】本発明の実施の形態6における自励振動流ノズルを搭載した温水洗浄便座の水回路構成図
【符号の説明】
【0043】
1 通路
3 ノズル本体
12 渦室
14 平面状部
15,15a,15b,15c 吐出孔
16 エジェクター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が直進流動するノズル本体の先端内部に渦室を形成するとともに、この流体の直進流動方向に対して上記渦室を偏心させて初期渦方向を設定し、前記初期渦方向の設定側に対応するノズル本体の一部部位に吐出孔を設け、初期渦方向に沿って流体が渦を形成すると吐出孔を設けた渦室の部位とは反対側の部位の圧力が低下することで渦の流れ方向が切換えられるように構成し、上記渦の流れ方向切換えによって、吐出孔から吐出される流体を発振させるようにした自励振動流ノズル。
【請求項2】
ノズル本体の一部周壁を平面状部とし、この平面状部に吐出孔を形成した請求項1記載の自励振動流ノズル。
【請求項3】
吐出孔の孔径をD、同孔の深さSとしたとき、アスペクト比S/Dは1.0以下に設定した請求項1記載の自励振動流ノズル。
【請求項4】
流体が直進流動する通路の中心と渦室の高さ方向の中心をずらして請求項1記載の自励振動流ノズル。
【請求項5】
吐出孔を複数個設けた請求項1記載の自励振動流ノズル。
【請求項6】
出孔を楕円形状とした請求項1記載の自励振動流ノズル。
【請求項7】
ノズル本体に空気混入用のエジェクターを設けた請求項1記載の自励振動流ノズル。
【請求項8】
請求項1〜6いずれか1項記載の自励振動流ノズルを備えた衛生洗浄機能付便座。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−23674(P2007−23674A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−209732(P2005−209732)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】