説明

自動ねじ締め機

【課題】 ねじ締め時に生じる反力が作業者の腕で受け止められ、手首に負荷されることを軽減できる自動ねじ締め機の提供を目的とする。
【解決手段】 作業者の腕に沿わせる略直方体の筐体38とこの筐体38の前部下面に接続可能かつ作業者の手で把持可能な把持部33とからなる断面略L字形の本体と、前記筐体38の後部に固定され前記把持部33の延びる方向とほぼ平行に配した反力受け部52aとを備えるとともに、モータ21の回転を受けて回転する出力軸35を前記把持部33から一部突出するように配し、締結時に生じた反力で前記出力軸35の軸線を中心に回転する前記筐体38を作業者の腕により受け止めることを可能に構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータとその駆動を受けて回転する出力軸とを備えた手持ち式の自動ねじ締め機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動ねじ締め機は、一般的に特許文献1示すものが知られており以下に説明する。特許文献1の自動ねじ締め機は、回転駆動源の一例であるモータと、このモータの回転を受けて回転する減速用遊星歯車装置と、押されることで前記モータが駆動する起動スイッチとを備えてなる。この自動ねじ締め機は、その全体を断面略L字形のカバーで覆われており、このカバーには前記減速用遊星歯車装置の回転を受けて回転する出力軸と前記起動スイッチとがそれぞれ突出するように配されている。また、前記出力軸は、締結部品の一例であるねじに係合可能なビットが脱着可能に構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4084319号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ねじ締め作業時には、必ず前記ねじに加わるトルクと相反するトルク(以下、反力という)が生じており、この反力によって、前記出力軸の軸線を中心にして前記自動ねじ締め機自身が回転する。作業者は、前記ねじ締め機を手で把持しているため、前述のねじ締め機自身の回転力すなわち前記反力が作業者の手首に伝わる問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題に鑑みて創成されたものであり、締結作業時に生じる反力が腕で受け止められて手首へ負荷されることを軽減できる自動ねじ締め機の提供を目的とする。この目的を達成するために、本発明は、作業者の腕に沿わせる略直方体の筐体とこの筐体の前部下面に接続可能かつ作業者の手で把持可能な把持部とからなる断面略L字形の本体と、前記筐体の後部に固定され前記把持部の延びる方向とほぼ平行に配した反力受け部とを備えるとともに、回転駆動源の回転を受けて回転する出力軸を前記把持部から一部突出するように配し、締結時に生じた反力で前記出力軸の軸線を中心に回転する前記筐体を作業者の腕により受け止めることを可能に構成したことを特徴とする。
【0006】
なお、前記反力受け部は、前記筐体と腕とを密着できるように調整可能な断面U字形のベルトとするかあるいは、前記出力軸の延びる方向に対してほぼ平行に突出する突起部としてもよい。また、締結情報の表示可能な表示部を前記筐体の上面に設けることが好ましく、さらに、前記ツール部の駆動条件を選択する操作ボタンを前記筐体の上面に設けることが好ましい。また、前記筐体の上面に旋回自在なハンドルを備え、このハンドルの旋回方向の固定を任意の位置に設定できるように構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の自動ねじ締め機は、作業者の腕に装着されるため、作業者は、ねじ締め作業時に生じる反力の大半を自身の腕で受け止めることができる。これにより、作業者の手首に伝わる反力は、大幅に軽減できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る自動ねじ締め機30の斜視図である。
【図2】本発明に係る自動ねじ締め機30の斜視図である。
【図3】図1の一実施例の一部切欠き断面図である。
【図4】請求項2の一実施例の自動ねじ締め機30の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1ないし図4に基づき本発明の一実施例を説明する。本発明の自動ねじ締め機30は、回転駆動源の一例であるACサーボモータ(以下、単にモータ21という)の駆動により回転する駆動軸24aを備えたツール部20と、前記駆動軸24aの回転を伝達可能でかつ前記駆動軸24aの軸線に直交するよう配した出力軸35と、前記ツール部20を覆う筐体38と、前記出力軸35を一部突出するように覆う把持部33と、前記筐体38の後部に配されかつ前記把持部33の延びる方向とほぼ平行に配された反力受け部とから構成される。また、前記把持部33は、前記筐体38に固定されており、その断面形状は略L字形となり、把持部33と筐体38とは、固定された状態で本体と呼ばれる。
【0010】
前記ツール部20は、前記モータ21の出力を増力させて出力するギア部24と、このギア部24と前記モータ21との間に配したセンサ部23とから構成される。このモータ21およびギア部24、センサ部23の詳細は、既に公知の特開2001−150253号公報に記載されているため、ここでの説明は省略する。また、前記ツール部20の片側端部には、前記ギア部24の構成部品である前記駆動軸24aが突出するように構成されており、この駆動軸24aには、角材からなるキー25aに位置決めされる形でかさ歯車26aが取り付けられている。これにより、前記かさ歯車26aは、前記モータ21の回転を受けて回転可能となる。
【0011】
前記出力軸35は、端部が断面略丸形状でその他端が断面略正方形の軸部材からなり、前記断面略丸形状の端部は、前記かさ歯車26aおよび前記キー25aとそれぞれ同一形状のかさ歯車26bおよびキー25bが取り付けられる。一方、他端は、締結部品の一例であるねじ(図示せず)に係合可能なソケット(図示せず)が脱着可能に構成される。前記かさ歯車26bは、前記かさ歯車26aに係合するように配されており、前記出力軸35の軸線は、前記駆動軸24aの軸線に対して直交する。さらに、前記出力軸35は、ベアリング36,36を介して後述する把持部33に挿通されており、出力軸35の端部は、前記把持部33の下端から突出する。
【0012】
前記把持部33は、ねじ締め作業時に作業者が把持する部位となっており、この把持部33の外形には、グリップ感を高めるため、図3に示すような曲面の凹部が複数形成される。また、把持部33は、前記出力軸35の外周を取り巻くように配され、回転する前記出力軸35と接触しないように断面略円筒状の部材からなる。
【0013】
前記把持部33の上部には、押しボタン式の起動スイッチ31が配されており、この起動スイッチ31は、ばね32によって把持部33から常時突出する方向に付勢される。
【0014】
前記筐体38は、略直方体でその内部が空洞で形成されており、組立および分解が容易に行えるように、長手方向に対してほぼ左右対称に2分割できるように構成される。この筐体38の内部には、断面L字形のブラケット41が固定されており、このブラケット41に前記ツール部20が固定される。
【0015】
また、この筐体38の後部には、前記反力受け部が配されており、この反力受け部は、断面略U字形のベルト52aで構成される。作業者は、腕を前記ベルト52aに通し、前記把持部33を把持した状態で前記ベルト52aと腕との隙間が少なくなるように前記ベルト52aのたるみ具合を調整できる。つまり、自動ねじ締め機30は、作業者の腕にぴったりと装着できるため、作業者は、自動ねじ締め機30を腕のような感覚で扱うことができる。
【0016】
前記筐体38の上面には、一部突出するように傾斜面が形成されており、この傾斜面には、ねじ締め作業に関する情報を表示可能な表示部と、操作ボタン56a,56b,56c,56dとがそれぞれ配置される。前記表示部は、液晶パネル55で構成されており、例えば締付け作業後に締付けトルクを表示できる一方、前記操作ボタン56a,56b,56c,56dは、ねじ締め条件等を選択可能に構成される。作業者は、前記操作ボタン56a,56b,56c,56dを操作して、前記液晶パネル55に表示される前記ねじ締め条件等を選択する。
【0017】
また、前述の筐体38の上面には、この上面とほぼ平行に少なくとも180度の範囲を旋回自在な断面略L字形のハンドル57が設けられており、このハンドル57の長手側は、作業者が把持できる形状となっている。このハンドル57の旋回中心は、前記出力軸35の回転中心とほぼ一致しており、ハンドル57は、その旋回範囲の任意な位置で固定できるように構成されている。
【0018】
なお、前記モータ21、前記センサ部23、前記起動スイッチ31、前記液晶パネル55、前記操作ボタン56a,56b,56c,56dには、ケーブル(図示せず)がそれぞれ配線されており、これらのケーブルは、前記筐体38の後部に配されたカプラ42の内部を通り制御手段(図示せず)に接続されている。
【0019】
次に、自動ねじ締め機30の作用について説明する。作業者は、前記ベルト52aに腕を通し、通した腕側の手で前記把持部33を把持し、この状態でベルト52aと前記腕との隙間が少なくなるように前記ベルト52aのたるみ具合を調整する。作業者は、前記ドライバユニット30を自身の腕に装着すれば、前記操作ボタン56a,56b,56c,56dを操作して前記液晶パネル55に表示されるねじ締め条件を選択する。このとき、作業者の姿勢は、腕時計の時間を確認するような姿勢となり、前述の操作および表示の確認が容易に行える。
【0020】
次に、作業者は、自動ねじ締め機30を所定のねじ締め位置へ移動して前記ねじと前記ソケットとを係合させ、前記把持部33を把持した手の人差し指によって前記起動スイッチ31を押す。
【0021】
これにより、前記モータ21が回転し、この回転を受けて前記ギア部24を介し前記駆動軸24aおよび前記かさ歯車26aが一体に回転する。この回転は、かさ歯車26aと係合する前記かさ歯車26bへ伝達されるため、前記ソケットが回転し、前記ねじは所定のトルクに到達するまでワーク(図示せず)に螺入される。
【0022】
以上説明したように、本発明の自動ねじ締め機30は、作業者の腕にぴったりと装着できるため、前記ねじの締結直後に生じる反力を前記腕で受け止めることができる。これにより、前記把持部33を把持する側の手首は、前記腕に対して大きく振られることがないため、手首に伝わる前記反力は、大幅に軽減できる利点がある。また、前記腕と自動ねじ締め機30とを一体的な感覚で移動および操作可能であるとともに、前記表示部の表示内容を自然な姿勢で確認できるため、作業性が向上する利点もある。さらに、特に前記反力が高い場合であれば、前記把持部33を把持した反対の手で前記ハンドル57を把持することで前記反力が前記手と前記腕とで受け止めることができ、前記腕に掛かる負担を軽減できる利点もある。
【0023】
なお、本実施例における反力受け部は、前記ベルト52aとしたが、図4に示すように前記出力軸35の延びる方向とほぼ平行に突出する突起部52bにしてもよい。つまり、締結時の反力で生じる自動ねじ締め機30の回転をこの突起部52bを通じて作業者の腕へ伝達できるため、本実施例と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0024】
20 ツール部
21 モータ
24a 駆動軸
30 自動ねじ締め機
31 起動スイッチ
33 把持部
35 出力軸
38 筐体
52a ベルト
52b 突起部
55 液晶パネル
56a 操作ボタン
56b 操作ボタン
56c 操作ボタン
56d 操作ボタン
57 ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の腕に沿わせる略直方体の筐体とこの筐体の前部下面に接続可能かつ作業者の手で把持可能な把持部とからなる断面略L字形の本体と、前記筐体の後部に固定され前記把持部の延びる方向とほぼ平行に配した反力受け部とを備えるとともに、回転駆動源の回転を受けて回転する出力軸を前記把持部から一部突出するように配し、締結時に生じた反力で前記出力軸の軸線を中心に回転する前記筐体を作業者の腕により受け止めることを可能に構成したことを特徴とする自動ねじ締め機。
【請求項2】
前記反力受け部は、前記筐体と腕とを密着できるように調整可能な断面U字形のベルトとしたことを特徴とする請求項1に記載の自動ねじ締め機。
【請求項3】
前記反力受け部は、前記出力軸の延びる方向に対してほぼ平行に突出する突起部としたことを特徴とする請求項1に記載の自動ねじ締め機。
【請求項4】
締結情報の表示可能な表示部を前記筐体の上面に設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の自動ねじ締め機。
【請求項5】
前記ツール部の駆動条件を選択する操作ボタンを前記筐体の上面に設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載の自動ねじ締め機。
【請求項6】
前記筐体の上面に旋回自在なハンドルを備え、このハンドルの旋回方向の固定を任意の位置に設定できることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載の自動ねじ締め機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−43247(P2013−43247A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182701(P2011−182701)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000227467)日東精工株式会社 (263)
【Fターム(参考)】