説明

自動ねじ締め装置とその制御方法

【課題】特性の異なる螺合部品(雄ねじ、ボルト、ナット等)であっても、ばね等の交換や、段取り等なしに、被螺合部(雌ねじ穴、雄ねじ部材等)にねじ締めを正確かつ確実に行うことができる自動ねじ締め装置とその制御方法を提供する。
【解決手段】ロボットアーム先端5に取り付けられ、これに作用する外力を検出する力センサ12と、力センサに取り付けられ、所定の螺合部品1を把持し所定の軸心を中心に回転駆動する把持回転装置14と、力センサで検出した軸方向の外力が予め設定した押付力となるようにロボットアーム先端5を力制御する力制御装置16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットなどのロボットアーム先端に取り付けて使用する自動ねじ締め装置とその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願において、「ねじ締め」とは、螺合部品(雄ねじ、ボルト、ナット等)をこれと螺合する被螺合部(雌ねじ穴、雄ねじ部材等)に、それぞれに設けられたねじ溝に沿って螺合させて回転し、2以上の部材を強固に連結する「ねじ締め工程」を意味する。
かかる「ねじ締め工程」は、多様なワークやねじの種類に応じて、高精度に実現する必要がある。
【0003】
一般的に、ねじ締め工程は、ねじ締めドライバを「送りねじ」などでねじの進行方向に送る(移動させる)ことで行われる。このとき、ドライバの回転数NとねじピッチPにより決まるねじの進行速度P・Nに、ドライバの送り速度Vを合わせなければならない。
しかし、ドライバの送り速度Vをねじの進行速度P・Nに完全に一致させることは困難であるため、ねじを高精度に締め付けるためには、ねじに適切な押し付け圧力Fを与えなければならない。
そこで、ねじの進行速度P・Nとドライバの送り速度Vの差ΔVを吸収し適切な押し付け圧力Fを与えるために、従来からばね機構を搭載したものや、エアシリンダを利用した自動ねじ締め装置が提案されている(例えば、特許文献1〜3)。
【0004】
特許文献1は、ねじ締め対象となるねじの大きさの広い範囲にわたり、それぞれに最適な初期のねじ締め圧力が得られるようにして、ねじ締め初期のかじり現象を防止することを目的とする。
そのため、この装置は、図1に示すように、ねじ締めドライバ51をモータ駆動により送りねじ52を介して下降させ、ねじ締め圧力を発生させるねじ締め装置において、送りねじ52により移動制御される送りねじブッシュ53の移動をドライバ51に伝達する経路内に弾性部材54と、弾性部材54のセット力を調節する調節部材55を配設し、ねじ締め時の初期のねじ締め圧力を調節設定可能にしたものである。
【0005】
特許文献2は、エアシリンダを用いた場合、ねじ込み時の送り速度に合わすために、駆動速度を上げることができず、高速作業化が困難であるという問題を解決することを目的とする。
そのため、この装置は、図2に示すように、ねじ締めビット61と、このねじ締めビット61を回転駆動する締め付け用モータ62を備えたねじ締めヘッド63と、ねじ締めヘッド63をワークに対して遠近方向に移動可能とする直線摺動用軸受を構成する第1移動ブロック64と、移動用モータ66による動力をスプリング67,68を介して第1移動ブロック64に伝える前記直線摺動用軸受を構成する第2移動ブロック65と、ねじ締め工程に対応して移動用モータ66を駆動制御する制御手段とを備え、スプリング67,68としてバネ定数の異なる2種を取り付け、一方のバネ定数の小さい第1スプリング67により第1移動ブロック64および第2移動ブロック65を連接し、他方のバネ定数の大きい第2スプリング68は、第1移動ブロック64と第2移動ブロック65が所定間隔以上離れると引張力を発生するように取り付けたものである。
【0006】
特許文献3は、組立てロボットに電動ドライバ70を装備し、電動ドライバで雄ねじを雌ねじに締め付けるときに、電動ドライバ70を組立てロボットに装着する際の治具71として用いられ、組立てロボットと電動ドライバによるねじの締付が適正なトルクで効率よく行えるようにし、雄ねじを雌ねじに締付するねじ込みの初期工程及び締付完了工程の両工程においてそれぞれ適切な押圧力が雄ねじに加えられるようにすることを目的とする。
そのため、この装置は、図3に示すように、電動ドライバ70を相対移動可能に保持するとともに、電動ドライバ70のビット軸方向に電動ドライバ70を案内する保持案内手段72,73と、ビット軸方向の弾性力Fを、保持案内手段72,73を支点として電動ドライバ70に加える弾性体74,75とを備えてなり、ビット軸方向における電動ドライバ70と保持案内手段72,73との相対移動の距離をDとし、弾性力Fと相対移動距離Dとの比F/Dを弾性体74,75の弾性係数Eと定義するとき、弾性係数Eは相対移動距離Dに応じて変動するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−253767号公報、「自動ねじ締め装置」
【特許文献2】特許第2760066号公報、「ねじ締め装置」
【特許文献3】特許第3489044号公報、「電動ドライバ保持構造」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ねじ締め工程において、初期押付力が不適切だと、ねじが傾くなどしてかじり現象が発生しやすい。そのため特許文献1では、送りねじ52とばね機構(弾性部材54)で構成されたねじ締め装置において、適切な初期押付力を容易に設定できるようにばね機構に調整機能(調節部材55)を設けている。
しかし、特許文献1の装置や、エアシリンダのエア圧による押し付けでは、押付力がねじ締め工程の間一定であり、初期押付力しか調整できないため、ねじ締め全体を通して適切な押付力を維持することができない。
【0009】
これに対し、特許文献2では、ばね定数の小さなばね67と大きなばね68の2つを併用して、ねじがねじ穴にぶつかるまでは小さなばね定数のばね67が働きやわらかく衝撃を吸収し、ねじがねじ穴に締まり始めてからは大きなばね定数のばね68が働き、十分な押付力を与える機構となっている。この機構により、ねじ締め工程を高速に実行できる。
しかし、特許文献2および特許文献3の装置では、使用する2種のばねのばね定数が一定であり、特性の異なるねじやワークに対応するためには、ばねを交換する必要があり、段取りに余計な手間が掛かる問題点があった。
【0010】
また、産業用ロボットなどを用いてねじ締め工程を自動で行う場合には、ロボットアーム先端に備えつけた機構、例えばロボットハンドなどを様々な用途に使用するためにねじ締め機構は極力簡素であることが望ましい。従来技術においては、ばねなどが必要で複雑な機構になってしまう問題点があった。
【0011】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、特性の異なる螺合部品(雄ねじ、ボルト、ナット等)であっても、ばね等の交換や、段取り等なしに、被螺合部(雌ねじ穴、雄ねじ部材等)にねじ締めを正確かつ確実に行うことができる自動ねじ締め装置とその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、ロボットアーム先端に取り付けられ、これに作用する外力を検出する力センサと、
該力センサに取り付けられ、所定の螺合部品を把持し所定の軸心を中心に回転駆動する把持回転装置と、
前記力センサで検出した前記軸方向の外力が予め設定した押付力となるようにロボットアーム先端を力制御する力制御装置とを備えた、ことを特徴とする自動ねじ締め装置が提供される。
【0013】
また本発明によれば、ロボットアーム先端に取り付けられ、これに作用する外力を検出する力センサと、
該力センサに取り付けられ、所定の螺合部品を把持し所定の軸心を中心に回転駆動する把持回転装置とを備え、
前記力センサで検出した前記軸方向の外力が予め設定した押付力となるようにロボットアーム先端を力制御する、ことを特徴とする自動ねじ締め装置の制御方法が提供される。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記押付力は、所定の螺合部品に対し予め設定された初期押付力又は最大押付力からなり、
初期押付力は、ねじ締め開始時において螺合部品が外れずかつ傾かない小さい値であり、
最大押付力は、ねじ締めトルクによる最大カムアウト力より大きい値である。
【発明の効果】
【0015】
上記本発明の装置および方法によれば、把持回転装置(例えばねじ締めドライバ)、力センサ、および力制御装置を備え、把持回転装置により所定の螺合部品を把持し所定の軸心を中心に回転させ、力センサによりロボットアーム先端(すなわち、ねじ締めドライバ)に作用する軸方向の外力を検出し、力制御装置により力センサで検出した軸方向外力が予め設定した押付力となるようにロボットアーム先端を力制御するので、特性の異なる螺合部品(雄ねじ、ボルト、ナット等)であっても、ばね等の交換や、段取り等なしに、被螺合部(雌ねじ穴、雄ねじ部材等)にねじ締めを正確かつ確実に行うことができる。
【0016】
また、本発明の好ましい実施形態によれば、例えば垂直多関節ロボットによるねじ締めにおいて、ロボットアーム先端に把持回転装置(例えばねじ締めドライバ)を取り付け、ねじ締めドライバに作用する軸方向の押付力を力制御により調整することによって、初期押付力、ねじ締め中に必要な押付力、ねじ締め最後に必要な大きな押付力のすべてを適切な値にすることができる。
さらに、インピーダンス(ばね定数)についても制御パラメータを設定するだけで変更できるため、ねじやワークの特性に応じて容易に修正することができる。
【0017】
従って、本発明によれば、以下の効果が得られる。
(1) ねじ締めの進行に応じて常に適切な押し付け圧力を与えることができるため、高速・高精度なねじ締めが可能となる。
(2) 対象となるねじやワークの特性に応じて、容易にインピーダンス(ばね定数)を変更できる。
(3) ねじ締めのためだけに必要とされる機構を追加する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】特許文献1の装置の模式図である。
【図2】特許文献2の装置の模式図である。
【図3】特許文献3の装置の模式図である。
【図4】本発明の自動ねじ締め装置を備えた産業用ロボットの構成図である。
【図5】本発明による力制御の模式図である。
【図6】本発明による制御方法の第1実施形態を示すフロー図である。
【図7】本発明による制御方法の第2実施形態を示すフロー図である。
【図8】本発明による制御方法の第3実施形態を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0020】
図4は、本発明の自動ねじ締め装置を備えた産業用ロボットの構成図である。この図において、1は螺合部品、2は被螺合部材、3はテーブル、4はロボット、5はロボットアーム先端、6はロボット制御装置である。
【0021】
螺合部品1は、この例ではボルトであるが、雄ねじ、ナット等であってもよい。
被螺合部材2は、螺合部品1が螺合する部材であり、この例ではボルトが螺合する被螺合部2aを有する。被螺合部2aは、この例では鉛直に延びる雌ねじ穴であるが、傾斜していてもよい。また、螺合部品1が雄ねじの場合、被螺合部2aは雄ねじ部材でもよい。
被螺合部材2は、この例ではテーブル3の上面の所定位置に正確に位置決めされている。なお、被螺合部材2は、組立中の製品の一部であってもよい。
【0022】
ロボット4は、この例では、多関節ロボットであるが、本発明はこれに限定されず、その他のロボットであってもよい。
ロボット制御装置6は、例えば数値制御装置であり、指令信号によりロボット4を3次元的に数値制御し、ロボットアーム先端5を3次元的に移動するようになっている。
【0023】
図4において、本発明の自動ねじ締め装置10は、力センサ12、把持回転装置14、および力制御装置16を備える。
【0024】
力センサ12は、例えばロードセルであり、ロボットアーム先端5に取り付けられ、これに作用する外力を検出するようになっている。この外力は、少なくとも把持回転装置14により把持する螺合部品1の軸方向外力を検出するように構成されている。
【0025】
把持回転装置14は、例えばねじ締めドライバであり、力センサ12に取り付けられ、所定の螺合部品1の特定位置(例えば、雄ねじやボルトの頭部、ナットの側面等)を把持し、螺合部品1の所定の軸心を中心に回転駆動するようになっている。
【0026】
なお、把持回転装置14(ねじ締めドライバ)はロボットアーム先端5の中心に位置する必要はなく、オフセットしてもよい。そのため、別の作業用のグリッパやカメラなどと並列して取り付けることができ、ロボットの用途をねじ締めに限定することがない。
【0027】
螺合部品1の把持は、吸引による吸着、磁石による吸着、或いは開閉する爪部材による挟持でもよい。この把持力は、把持回転装置14の作動中に、螺合部品1が落下、或いは傾動しないように、十分な大きさを有する。
また、把持回転装置14による螺合部品1の特定位置の把持は、把持回転装置14を移動させて予め位置決めされた螺合部品1を把持してもよく、或いは逆に螺合部品1を供給する図示しない供給装置により、螺合部品1を把持回転装置14の把持部に供給してもよい。
【0028】
力制御装置16は、例えばロボット制御装置6にインストールされた制御プログラムであり、力センサ12で検出した軸方向の外力が予め設定した押付力となるように力制御する。
なお、螺合部品1の種類、寸法、初期押付力、最大押付力、等は、予めロボット制御装置6又は力制御装置16の記憶装置に記憶されている。
【0029】
図4において、本発明の自動ねじ締め装置10は、さらにロボットアーム先端5に取り付けられたカメラ15を備える。
カメラ15は、例えばCCD又はCMOSカメラであり、被螺合部2a(雌ねじ穴)を撮像し、ロボット制御装置6に撮像データを入力する。
ロボット制御装置6又は力制御装置16は、撮像データを画像処理して、被螺合部2aの位置を特定し、所定の螺合部品1(例えば、ボルト)を把持して被螺合部2a(雌ねじ穴)に向けて移動し、両者の軸心を一致させ、かつ螺合部品1の下端を被螺合部2a(雌ねじ穴)の開口端まで移動するようになっている。
【0030】
図5は、本発明による力制御の模式図である。この図において、横軸は螺合部品1(ボルト)の下端と被螺合部2a(雌ねじ穴)の開口端とが一致する位置(x=0)からの両者の螺合長さxである。また、縦軸は本発明による力制御の目標押付力Fである。
【0031】
この例において、F1は初期押付力、F2は最大押付力であり、それぞれ所定の螺合部品1に対し予め設定され、ロボット制御装置6又は力制御装置16の記憶装置に記憶されている。
初期押付力F1は、ねじ締め開始時において螺合部品1が外れず、かつ傾かない小さい値に設定する。
また最大押付力F2は、ねじ締めトルクによる最大カムアウト力より大きい値で設定する。
また、L1は初期押付力F1を保持する螺合長さ、L2は最大押付力F2の保持を開始する螺合長さ、Lは最大螺合長さである。
【0032】
この例において、押付力Fは、螺合長さL1,L2の間は、任意の関数F=F(x)により初期押付力F1から最大押付力F2まで連続的に増加している。
なお、本発明はこの構成に限定されず、螺合長さxが0〜Lの範囲において、任意の関数F(x)で押付力Fを定義してもよい。
また、螺合長さL1,L2の間において、押付力Fを螺合長さの変化量Δxに比例して直線的に増加させてもよく、或いは、その間でステップ状に増加させてもよく、或いは螺合長さxが0〜Lの範囲において、押付力Fを一定にしてもよい。
【0033】
図6は、本発明による制御方法の第1実施形態を示すフロー図である。なお、この例は、図5に示した力制御を行う場合を示している。
【0034】
本発明の制御を開始する前に、上述したカメラ15により被螺合部2a(雌ねじ穴)を撮像し、ロボット制御装置6又は力制御装置16により、撮像データを画像処理して、被螺合部2aの位置を特定し、把持回転装置14(ねじ締めドライバ)の先端に所定の螺合部品1(例えば、ねじ)を保持する(行程S1)。
次いで、ねじ締めドライバ14を被螺合部2a(雌ねじ穴)に向けて移動し、両者の軸心を一致させ、ねじ締めドライバ14を回転させる(行程S2)。
次に、螺合部品1の下端を被螺合部2a(雌ねじ穴)の開口端まで移動する。この初期状態において、螺合長さxは0(x=0)である。
【0035】
本発明による制御方法では、上述した初期状態から、ロボットアーム先端5の3次元制御により、螺合部品1を被螺合部2aに向けて、同軸を保持しながら移動させ、同時に力センサ12で検出した軸方向の外力が予め設定した押付力となるようにロボットアーム先端5を力制御する。
【0036】
図6において、本発明の制御方法は、S3〜S8の各行程(ステップ)からなる。
行程S3では、螺合長さxと螺合長さL1を比較し、x<L1の場合(Yes)はF=F1となるように押付力Fをフィードバック制御し(行程S4)、x=L1の場合(No)は行程S5に移動する。
行程S5では、螺合長さxと螺合長さL2を比較し、x<L2の場合(Yes)はF=F(x)となるように押付力Fをフィードバック制御し(行程S6)、x=Lの場合(No)は行程S7に移動する。
行程S7では、螺合長さxと螺合長さLを比較し、x<Lの場合(Yes)はF=F2となるように押付力Fをフィードバック制御し(行程S7)、x=Lの場合(No)は、本発明の制御を終了する。
【0037】
上述した制御方法により、図5に示した力制御を行うことができる。
【0038】
図7は、本発明による制御方法の第2実施形態を示すフロー図である。この例は、螺合長さxが0〜Lの範囲において、押付力Fが一定の場合である。
【0039】
本発明の制御を開始する前に、第1実施形態と同様に、把持回転装置14(ねじ締めドライバ)の先端に所定の螺合部品1(例えば、ねじ)を保持し(行程S1)、ねじ締めドライバ14を回転させる(行程S2)。
【0040】
本発明による制御方法では、上述した行程S2の状態から、ロボットアーム先端5の3次元制御により、螺合部品1を被螺合部2aに向けて、同軸を保持しながら移動させ、同時に力センサ12で検出した軸方向の外力が予め設定した押付力となるようにロボットアーム先端5を力制御する。
【0041】
図7において、本発明の制御方法は、S13〜S15の各行程(ステップ)からなる。
行程S13では、力制御の押付力Fを所定の値F3に設定する。押付力F3は、ねじがねじ穴に接触したときに傾いてかじらない大きさであり、かつねじが最後まで締付けられたときにねじ締めドライバ14の先端がねじ頭から外れない力であるのがよい。
行程S14では、押付力Fを一定値F3に維持しつつ、ねじ締めドライバ14を進行させる。
行程S15では、「ねじが最後まで締め付けられたか?」をチェックし、(Yes)であればこの制御を終了し、(No)であれば行程S14を繰り返す。このチェックは、例えば、把持回転装置14(ねじ締めドライバ)の先端位置、又は把持回転装置14の回転数や回転速度、トルク、電流等から判断することができる。
【0042】
上述した制御方法により、螺合長さxが0〜Lの範囲において、押付力Fが一定の力制御を行うことができる。
【0043】
図8は、本発明による制御方法の第3実施形態を示すフロー図である。この例は、螺合長さxが0〜Lの範囲において、任意の関数F(x)で押付力Fを力制御する場合を示している。
【0044】
本発明の制御を開始する前に、第1実施形態と同様に、把持回転装置14(ねじ締めドライバ)の先端に所定の螺合部品1(例えば、ねじ)を保持し(行程S1)、ねじ締めドライバ14を回転させる(行程S2)。
【0045】
さらに、第2実施形態と同様に、本発明による制御方法では、上述した行程S2の状態から、ロボットアーム先端5の3次元制御により、螺合部品1を被螺合部2aに向けて、同軸を保持しながら移動させ、同時に力センサ12で検出した軸方向の外力が予め設定した押付力となるようにロボットアーム先端5を力制御する。
【0046】
図8において、本発明の制御方法は、S23〜S28の各行程(ステップ)からなる。
行程S23では、力制御の押付力Fを所定の値F1(初期押付力F1)に設定する。この初期押付力F1は、ねじがねじ穴に接触したときに傾いてかじらない大きさの力とする。
行程S24では、押付力Fを一定値F1に維持しつつ、ねじ締めドライバ14を進行させる。
行程S25では、「ねじ穴に接触したか?」をチェックし、(Yes)であれば、行程S26に進み、(No)であれば行程S24を繰り返す。このチェックは、例えば、把持回転装置14(ねじ締めドライバ)の先端位置、又は電気的接触から行うことができる。
行程S26では、力制御の押付力Fを所定の値F(x)に設定する。この押付力F(x)は、ねじが最後まで締付けられたときにねじ締めドライバ14の先端がねじ頭から外れない大きさとし、かつ徐々に値を大きくする。
行程S27では、押付力Fを所定の値F(x)に維持しつつ、ねじ締めドライバ14を進行させる。
行程S28では、「ねじが最後まで締め付けられたか?」をチェックし、(Yes)であれば、制御を終了し、(No)であれば行程S27を繰り返す。例えば、把持回転装置14(ねじ締めドライバ)の先端位置、又は把持回転装置14の回転数や回転速度、トルク、電流等から判断することができる。
【0047】
上述した制御方法により、螺合長さxが0〜Lの範囲において、任意の関数F(x)で押付力Fを力制御することができる。
【0048】
上述したように、本発明では、力制御により与える押付力Fを、ねじ締めの進行(すなわち螺合長さxの増加)に応じて、以下のように変化させる。
(1) 本発明の制御を開始する前(準備行程)では、吸引その他の手段により、把持回転装置14(ねじ締めドライバ)の先端に、螺合部品1の特定位置(ボルトの頭部)を保持しているものとする。
(2) ねじ締めドライバからボルトの頭部が外れず、かつボルトが傾くほどではない大きさの初期押付力F1として、ねじ締めドライバを回転させながら被螺合部2a(雌ねじ穴)に向かう。
(3) 雌ねじ穴へのねじ込み中には、押付力を、カムアウト力(ねじ締めトルクによりねじ締めビットが押し上げられる力)より大きくし、ねじ締めを適切に進行させる。
(4) ねじ締めの最後には、ねじが底付きしたときに発生する最大カムアウト力より大きい最大押付力F2とする。
【0049】
上述した本発明の装置および方法によれば、把持回転装置14(例えばねじ締めドライバ)、力センサ12、および力制御装置16を備え、把持回転装置14により所定の螺合部品1を把持し所定の軸心を中心に回転させ、力センサ12によりロボットアーム先端5(すなわち、ねじ締めドライバ)に作用する軸方向の外力を検出し、力制御装置16により力センサ12で検出した軸方向外力が予め設定した押付力となるようにロボットアーム先端5を力制御するので、特性の異なる螺合部品(雄ねじ、ボルト、ナット等)であっても、ばね等の交換や、段取り等なしに、被螺合部(雌ねじ穴、雄ねじ部材等)にねじ締めを正確かつ確実に行うことができる。
【0050】
また、例えば垂直多関節ロボットによるねじ締めにおいて、ロボットアーム先端5に把持回転装置14(例えばねじ締めドライバ)を取り付け、ロボットアーム先端5(すなわち、ねじ締めドライバ)に作用する軸方向の押付力を力制御により調整することによって、初期押付力F1、ねじ締め中に必要な押付力、ねじ締め最後に必要な大きな押付力F2のすべてを適切な値にすることができる。
さらに、インピーダンス(ばね定数)についても制御パラメータを設定するだけで変更できるため、ねじやワークの特性に応じて容易に修正することができる。
【0051】
従って、本発明によれば、以下の効果が得られる。
(1) ねじ締めの進行に応じて常に適切な押し付け圧力を与えることができるため、高速・高精度なねじ締めが可能となる。
(2) 対象となるねじやワークの特性に応じて、容易にインピーダンス(ばね定数)を変更できる。
(3) ねじ締めのためだけに必要とされる機構を追加する必要がない。
【0052】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0053】
1 螺合部品(ボルト、雄ねじ、ナット等)、
2 被螺合部材、2a 被螺合部(雌ねじ穴、雄ねじ部材)、
3 テーブル、4 ロボット、5 ロボットアーム先端、
6 ロボット制御装置、
10 自動ねじ締め装置、12 力センサ(ロードセル)、
14 把持回転装置(ねじ締めドライバ)、16 力制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアーム先端に取り付けられ、これに作用する外力を検出する力センサと、
該力センサに取り付けられ、所定の螺合部品を把持し所定の軸心を中心に回転駆動する把持回転装置と、
前記力センサで検出した前記軸方向の外力が予め設定した押付力となるようにロボットアーム先端を力制御する力制御装置とを備えた、ことを特徴とする自動ねじ締め装置。
【請求項2】
ロボットアーム先端に取り付けられ、これに作用する外力を検出する力センサと、
該力センサに取り付けられ、所定の螺合部品を把持し所定の軸心を中心に回転駆動する把持回転装置とを備え、
前記力センサで検出した前記軸方向の外力が予め設定した押付力となるようにロボットアーム先端を力制御する、ことを特徴とする自動ねじ締め装置の制御方法。
【請求項3】
前記押付力は、所定の螺合部品に対し予め設定された初期押付力又は最大押付力からなり、
初期押付力は、ねじ締め開始時において螺合部品が外れずかつ傾かない小さい値であり、
最大押付力は、ねじ締めトルクによる最大カムアウト力より大きい値である、ことを特徴とする請求項2に記載の自動ねじ締め装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−264514(P2010−264514A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115109(P2009−115109)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】