説明

自動スプレーガンのマニホールド着脱装置

【課題】 スプレーガン本体をマニホールドに装着させる方向に移動させた状態で、ワンタッチで簡易装着が可能な着脱装置とする。
【手段】 塗料およびエアの供給路につながる開口を設けたシート面を形成したスプレーガン本体と、前記シート面のそれぞれの開口に一致し前記シート面と接合する取付け面に供給出口を形成したマニホールドを装着分離する着脱装置において、前記のシート面および取付け面と直交する立面から固定用係止片を突出させ、この係止片が挿入される側に係止片と係合して装着する方向の移動を規制する固定手段を設ける。固定手段は装着方向を軸に回転するロック本体に、前記係止片が挿入された位置で軸方向に移動可能な第1の溝と、回転した時に係止片と係合して装着位置に固定する第2の溝を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装用自動スプレーガンの塗料、噴霧エア供給路と接続されるマニホールドを確実かつ容易に装着し、ワンタッチで着脱を可能とする装置に関するものである。

【背景技術】
【0002】
塗装用スプレーガンは、作業者が直接操作する手持式のスプレーガンの他、自動塗装機や塗装ロボットに搭載して作動させる自動スプレーガンがある。この種の自動スプレーガンは、機械的に操作され長時間の作業が連続して行われるのが普通である。しかし塗料を使用することによる汚損や塗料の付着などを完全に防止することは困難で、定期的なメンテナンスが必要とされる。
【0003】
また塗料の変更や、塗装条件の変更等によりスプレーガンの交換が必要なことも多くあり、スプレーガンの交換は日常的に行われるのが通常である。
このような場合、自動塗装ラインは停止され、その間の作業は非生産時間として大きな損失となり、極力短時間の作業で完了できることが望まれる。これらの要求に応えるため、スプレーガン本体に接続される塗料供給ホースや作動制御用エアや噴霧用エアの供給ホースの接続されたマニホールドを設け、このマニホールドに自動スプレーガン本体を着脱するだけで交換を可能にしたマニホールドスプレーガンが知られている。
【0004】
これまでに示されたマニホールドスプレーガンの着脱手段は、特開平9−206635号公報に見られるように、確実に固定するため、ねじの締結による着脱が用いられていた。これに対し、すばやく着脱できるように改善された方法としては、フックを利用した固定手段等が提案されている。(特開平10−180163号公報、特開2003−62498号公報)
【0005】
しかし、これらはいずれか一方の端部をフック状の係止部材で位置決めし、他方を装着位置に合わせた後に締め付ける構造となっていて装着される接合面の位置によって圧着される条件が異なり、接続状態にバラツキが生じ、また通路接合部のパッキン等に変則的な力が作用して耐久上の問題が生ずる結果となる。このことから位置決めとは別に一箇所の締め付け手段により確実に締め付けるものとして、WO2006/6055で示されるような改善もなされている。
【0006】
いずれにしても、これらに示されたマニホールドとスプレーガン本体の接続面は、いずれも一面で形成されており、これらの接続面を合わせてこれを固定する方法が採られており、一方側を他方に圧接する関係位置に係合するよう保持させ、押し当てた状態で固定するもので、装着される方向に挿入される軸や係止片に対してその挿入方向の移動や外れを規制する構造は複雑で安定性に欠ける問題が残されている。
【0007】
また着脱は簡便であるほど望ましく、その動作もワンタッチで出来ることが望まれるが、装着する際に仮に保持することで位置決めを確実容易にすることや、固定手段を解除した時にそのまま分離されると落下の危険性があり、簡単に外せる構造を有しながら、実用上は固定手段を外しても緩んだ状態で係合が維持されるように構成することも必要となる。

【特許文献1】特開平10−180163号公報
【特許文献2】特開2003−62498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
塗料及びエア等の複数の供給路を統合配管するマニホールドと、塗料を噴霧する機能を備えたスプレーガン本体とを個別に設け、これらを組み合わせて自動スプレーガンを構成するマニホールドスプレーガンにおいて、スプレーガン本体とマニホールドが確実に装着される構造とし、装着及び分離するに当たり、これを簡便に行うことが出来、短時間でスプレーガン本体の交換を可能にして作業者の負担を軽減、全体としての生産性を高めることができる装置を得ることを課題とする。

【課題を解決するための手段】
【0009】
塗料およびエアの供給路につながる開口を設けたシート面を形成したスプレーガン本体と、前記シート面のそれぞれの開口に一致して前記シート面と接合する取付け面に供給出口を形成したマニホールドを装着分離する着脱装置において、前記のシート面および取付け面と直交し、互いに接触し合う立面を形成し、該一方の立面から固定用係止片を突出させ、他方の立面に前記係止片の挿入孔を設け、その内部に係止片と係合する固定手段を設ける。固定手段は装着方向を軸として回転するロック本体に、前記係止片が挿入された位置で軸方向に移動可能な第1の溝と、回転した時に係止片と係合して装着位置に固定する係止段をもつ第2の溝を設ける。 簡単かつ確実に固定するためロック本体には装着方向に働くばねが介装され、固定手段には回転用ツマミが外部に接続されている。

【発明の効果】
【0010】
スプレーガン本体とマニホールドは、 接合面となるシート面と取付け面とは直交する立面を有しているためそれ自体で装着時の位置決めが容易であり、この立面に突出し、すなわちシート面と平行な係止片を設けて、この係止片を押さえる構成としたため、スプレーガン本体とマニホールドは立面をガイドとして移動させられ、係止片の軸をその軸と平行な方向に固定することで装着が出来るため、軸方向の移動を防止するより、移動スキマに入り込ませるだけの簡単な固定手段で移動を停止させ固定をすることが可能となる。
【0011】
また移動を抑える固定手段に楔状の段差を設けて、移動側のスキマに固定すれば、その移動量を調整して装着時の圧接力を適正に維持することも容易にでき、適当な段差を噛み合わせて装着固定する場合においてもその段差の位置を押さえ込む方向に働く弾発手段を組み込むによって適正な装着力を保持し、スプレーガン本体とマニホールド間に設けたパッキン等の気密装置の機能を確実に維持することが出来る。
【0012】
係止片に噛み合わせる段差部を持つ固定手段は回転位置によって簡単に形成することができ、その回転は外部に設けたツマミを回転することで、容易に操作することが可能であり、作業者は短時間で脱着が行えることで負担が軽減され、生産性が向上することになる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
マニホールドガンは、自動スプレーガンのスプレーガン本体部分と、塗料とエア等の接続口を設けスプレーガン本体部に接続する通路を設けたマニホールドを別々に設け、着脱によってスプレーガン本体の交換を可能にしたスプレーガンで、スプレーガンの機能により供給制御される通路の数はいくつかに分けられるが、これは接続面となるスプレーガン側のシート面とマニホールド側の取付け面に設けられる供給口の数が異なるのみで、大きな違いにはならない。
【0014】
通常は塗料の供給口と作動用及び噴霧用の二つのエアの供給口が必要となるが、作動エアと噴霧エアを兼用する場合は一つでも可能であり、反対に噴霧のパターン調整を個別に行うなどの機能を増加させることでエアの制御通路が増加する場合や、多液塗料の場合もしくは塗料循環システムを採用した場合に塗料の通路が増加することもある。その他、特殊の場合に静電塗装等で使用される場合には塗料やエアの流体通路に加え、電気的な接続を必要とする場合も中継接続部品としてマニホールドに設けられることもある。
【0015】
図1に示す実施例は単純に塗料の通路とエアの通路を2つ設けた場合として基本的な例を示している。
スプレーガン本体1は塗装用スプレーガンの構造として良く知られている構成で、先端部には中心部に塗料ノズル2を備え、先端の噴出口3から塗料が噴出される。噴出口3内部にはニードル弁4が当接して噴出口3を遮断し、ニードル弁4後部に接続されたピストン5に作動エアが供給さればね6に抗して後方に引かれると噴出口3が開口して塗料が噴出する。
【0016】
塗料ノズル2の外側には空気キャップ7が着脱自在に取り付けられ、中心口8内に前期噴出口3の先端部が位置し、形成された環状のスキマから噴出するエアによって塗料は噴霧化される。噴出させるエアは後方に設けた空気弁9が前記ピストン5によって作動した時に送り込まれ噴射される。
【0017】
空気キャップ7には他にパターン調整エア口10が中心口8の両側面に配置され、その噴出調整によって噴霧パターンが調整される構成となっている。したがって一般的には、この調整エアは中心からの噴霧化エアとは別の供給路を通し別個に調整されたエアが供給されることになる。図の例ではスプレーガン本体1に設けた手動の調整弁12によって前記調整エア口10から噴出するエアの量を調整する場合が示されている。自動でこの調整を行う場合はマニホールド30からスプレーガン本体1を介して独立した別の供給路を設け、前記調整エア口10に供給されるようにすれば良い。
【0018】
前記塗料ノズル2に連通する塗料供給路13は、その開口14を第1のシート面15に設け、作動エア供給路16、噴霧エア供給路18は、それぞれの開口17,19を第2のシート面20に設けている。第1のシート面15と第2のシート面20は互いに平行に段差を設けて形成している。段差の部分はシート面と垂直な立面21とし、その立面から垂直にすなわち2つのシート面とは平行に突出する係止片22が突出している。またシート面には装着位置を確実にするため、少なくとも1ヶ所以上に位置決め用ピン23が埋め込まれ、その一部が突出されている。図の例ではバランスを配慮して2本が設けられている。
【0019】
一方マニホールド30は、前記スプレーガン本体1のシート面15,20と立面21に合致する第1の取付け面31と第2の取付け面32と取付立面33をそれぞれ有し、これらの取付け面に前記シート面の開口14、17、19、と一致する供給出口34、37、39、を形成し、それぞれの供給通路35、38、40、を介して塗料供給口41、作動エア供給口42、噴霧エア供給口43が設けられている。
【0020】
また前記スプレーガン本体1の立面21に突出する係止片22に対応したマニホールドの位置には、挿入孔24が設けられ、位置決めと着脱時の固定手段として用いられる。図の例では挿入孔24の内部に固定部材としてロック本体45が装着されており、このロック本体45に挿入孔24となる凹部44が穿設され、前記係止片22が挿入された状態で、前記立面21が取付立面33をガイドとして図の下方に移動し、互いのシート面と取付け面が密着させる。図5から図7はこのロック本体45と係止片22のみを抜き出し、その位置関係を示している。
【0021】
図5の状態で係止片22はロック本体45の凹部44の上部に挿入された状態であり、この時はスプレーガン本体1とマニホールド30は、シート面15、20と取付け面31、32が密着されていない。この状態から、例えばスプレーガン本体1を下方に移動させると係止片22が下方に移動し図6の状態になり、シート面15、20と取付け面31、32が密着されてそれぞれの供給通路が連通する。
【0022】
この状態で、係止片22の上部に空いたスキマ25に入り込んで噛み合う係止段部26をもったロック本体を回転させて、図7の状態に固定することによって、係止片22が上方に移動することを防止する。これによってスプレーガン本体1とマニホールド30は装着固定される。回転によって段差の位置が変わるロック本体45を形成することにより、ワンタッチで切り替えることができる。このロック本体45は既知の手段によって一体に設けた心棒46と外部に配置されるつまみ47によって外部から操作するように構成される。これらの噛み合う段差を持たせた形状は本実施例に限定されること無く、回転角度によって押さえ込む位置が異なる段差を形成して係止片を係合させる構成が既存の技術の範囲でいくつか考えられる。
【0023】
図4における実施例の場合は、マニホールド30に設けられたロック本体が回転軸方向の移動を規制するため、止めねじ27で規制されている。但し回転が円滑にできるように摺動抵抗の少ないフッ化樹脂等の摺動パッキン28がそれぞれの摺動部に介装されている。さらにロック本体45を規制する位置のバラツキを回避し、係止片22の押付け力を維持するため止めねじ27内にロック本体45を弾圧するばね29が介装されている。
【0024】
これにより押さえ込みが常に安定し、スプレーガン本体1とマニホールド30の間のパッキン等による気密が保たれる。すなわち前記スプレーガン本体1の開口14,17,19と対応するマニホールド30のそれぞれの供給出口34,37,39は、装着された時に漏洩を防止する手段としてシール手段もしくはパッキンが介装されている。本実施例では開口14の周囲にシールリング51を装着し、第1取付け面31が密着した時に接続される方法と、第2シート面20と第2取付け面32の間に接続通路部分に穴を開けたパッキン52を介装し締め付けた時に通路の接続と漏洩防止を図った方法が採用されている。いずれの場合も押付け力によって気密が保持され確実な供給が可能となる。
【0025】
実施例の固定手段は係止片に係合させて固定する方法として、マニホールドに設けた固定装置を示したが、密着させるシート面とは直交する立面をガイドとして移動させ所定の位置で固定させるため、固定手段はこれに限定されること無く、各種のロック装置が使用され、所定の位置で緊締され、容易に解除できる技術を用いて所期の効果を得ることができる。
【0026】
本実施例では係止片に対し、確実に固定する手段としてロック本体を回転させて係合する構成としたが、係止片に対し確実に所定の位置で係止させる作動竿等を設け、押し込むだけで弾性に抗して係合させ、解除の際にはその作動竿を逆に操作して分離可能にするなどの着脱手段を利用することもできる。


【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例で、マニホールドスプレーガンとして組み合わされた状態を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例でスプレーガン本体とマニホールドを分離した状態で示す外観図である。
【図3】本発明の実施例でスプレーガン本体とマニホールドを装着する途中の状態を示す外観図である。
【図4】図1の固定手段を構成するロック本体部分を詳細に示した部分断面図である。
【図5】図3の状態の時、固定手段の実施例として示したロック本体が、係止片に係合する状態を示す、3方向から見た説明図。
【図6】図5の状態からロック本体を軸方向に上に移動させた時の状態を示す説明図。
【図7】図6の状態からロック本体を90°回転させ、固定手段が図1に示す組み合わされた状態に固定された時の状態を示す、3方向から見た説明図。
【符号の説明】
【0028】
1、スプレーガン本体
2、塗料ノズル
7、空気キャップ
12、調整弁
14、17、19、開口
15、第1のシート面
20、第2のシート面
21、立面
22、係止片
23、ピン
24、挿入孔
25、スキマ
26、係止段部
27、止めねじ
28、摺動パッキン
29、ばね
30、マニホールド
31、第1の取付け面
32、第2の取付け面
33、取付立面
34,37,39、供給出口
35,38,40、供給通路
44、凹部
45、ロック本体
47、つまみ
51、シールリング
52、パッキン



【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料およびエアの供給路につながる開口を設けたシート面を形成したスプレーガン本体と、前記シート面のそれぞれの開口に一致し前記シート面と接合する取付け面に供給出口を形成したマニホールドを装着分離する着脱装置において、前記のシート面および取付け面と直交し、互いに接触し合う立面を形成し、該一方の立面から突出させた固定用係止片と、他方の立面に前記係止片の挿入孔を設け、該挿入孔の内部に 前記スプレーガン本体とマニホールドを装着する方向を軸として回転し、前記係止片と係合して前記軸方向の移動を規制する係止段部を設けた固定手段を設け、該固定手段を外部から回転可能とした自動スプレーガンのマニホールド着脱装置。
【請求項2】
前記固定手段は、係止片が挿入された位置で軸方向に移動可能な第1の溝と、略90°回転した時に係止片と噛み合い、軸方向の移動を規制する係止段部をもつ第2の溝を設けたロック本体からなる請求項1のマニホールド着脱装置。
【請求項3】
前記ロック本体には前記係止片に作用して装着方向に押圧するばねが介装されている請求項2のマニホールド着脱装置。

















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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