説明

自動フランス落しを備えた子扉の保護装置

【課題】親扉の開閉による衝撃によって子扉の歪みが生ずることを防止し、自動フランス落しの軸杆が受け孔に対して出入困難になったりする故障の発生を防止する子扉に設置される保護装置を提供する。
【解決手段】枠体7と枠体7内に組み込まれる駆動部及び作用部とから成り、駆動部は枠体7内において水平方向に摺動可能に支持される駆動シャフト10を含み、駆動シャフト10はそのドア枠側端部が子扉2の端面から突出状態に支持され、また、駆動シャフト10にそれを子扉2の端面方向に付勢するリターンスプリング13が配備され、作用部は枠体7の両側面間において軸支され、駆動シャフト10に連結され駆動される枢動アーム15とその先端に取り付けられるロック部材18とから成り、ロック部材18は枢動アーム15が駆動シャフト10に駆動されて上下動し、下降時にドア枠の下辺部に形成される受け孔20内に収まることにより子扉2の動きを抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動フランス落しを備えた子扉の保護装置、より詳細には、後閉まり扉である親扉と、先閉まり扉であって自動フランス落しを備えた子扉とから成る親子式扉において、親扉の開閉の反復によって子扉の歪みが生ずることを防止するために子扉に設置される保護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
後閉まり扉である親扉と、先閉まり扉であって自動フランス落しを備えた子扉とから成る親子式扉の場合、出入りのための開閉操作は専ら親扉についてのみ行い、その間子扉は閉じられたままである。従って、子扉は、親扉の開閉の度に、多かれ少なかれ衝撃を受けることになる。
【0003】
子扉に設置される自動フランス落しは、上記衝撃を受ける子扉を保持するためのもので、子扉の親扉側側辺の上下に設置される。各自動フランス落しは、上方又は下方に飛び出る軸杆を有していて、後閉まりである親扉が閉まるに伴って該軸杆が飛び出て、ドア枠の上辺部及び下辺部に形成される受け孔内に収まることで、子扉の動きを抑止するように動作する。そして、親扉を開けると、それに伴って各軸杆が引っ込むことにより、子扉の開放動作が可能となる。
【0004】
また、上記親扉の開閉に伴う衝撃に対処するために、ドア枠の子扉の上辺対応部に戸当てが設置される。従って、子扉は、その上辺及びヒンジによって固定される側辺が確固と保持されることになるが、邪魔になるために戸当てを設けることができないその下辺及び親扉側側辺における耐衝撃力は、他の部分におけるよりも弱いものとなる。
【0005】
このように、子扉の下辺及び親扉側側辺に対する支持力が他の部分よりも弱いために、その部分における親扉の開閉による衝撃に対する耐衝撃性が次第に劣化し、やがて、子扉に歪みが生じてくる。その結果、下辺側の自動フランス落しの軸杆が受け孔の縁部に接触するようになって軸杆の出入が困難になったり、軸杆が曲がったりする故障が生ずるに至る。
【0006】
【特許文献1】特開平5−179856号公報
【特許文献2】特開平11−50750号公報
【特許文献3】特開2003−227275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来の親子式扉の場合には、子扉の下辺及び親扉側側辺に対する支持力が他の部分におけるよりも弱いために子扉に歪みが生ずる結果、下辺側の自動フランス落しの軸杆が受け孔の縁部に接触するようになり、やがて軸杆の出入が困難になったり、軸杆が曲がったりする故障が生じやすいという問題があった。
【0008】
そこで、本発明はそのような問題のない、即ち、後閉まり扉である親扉と、先閉まり扉であって自動フランス落しを備えた子扉とから成る親子式扉において、親扉の開閉による衝撃によって子扉の歪みが生ずることを確実に防止することができ、以て、自動フランス落しの軸杆が受け孔に対して出入困難になったり、軸杆が曲がったりする故障の発生を防止することが可能な、子扉に設置される保護装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、後閉まりの親扉と、先閉まりであって前記親扉側側辺の上下に自動フランス落しが設置された子扉の下辺部に設置される子扉保護装置であって、
前記子扉保護装置は、前記子扉の下辺部に埋設される枠体と、前記枠体内に組み込まれる駆動部及び作用部とから成り、
前記駆動部は、前記枠体内において水平方向に摺動可能に支持される駆動シャフトを含み、前記駆動シャフトはそのドア枠側端部が前記子扉の端面から突出状態に支持され、また、前記駆動シャフトにそれを前記子扉の端面方向に付勢する手段が配備され、
前記作用部は、前記枠体の両側面間において軸支されていて、前記駆動シャフトに連結されて駆動される枢動アームと、前記枢動アームの先端に取り付けられるロック部材とから成り、
前記ロック部材は、前記枢動アームが前記駆動シャフトに駆動されて旋回動作をするに伴って上下動し、その下降時にドア枠の下辺部に形成される受け孔内に収まることにより、前記子扉の動きを抑止するように作用することを特徴とする、自動フランス落しを備えた子扉の保護装置である。
【0010】
好ましい実施形態においては、前記受け孔の前記子扉の開き方向側の幅寸法が前記ロック部材の厚み寸法よりも大となるようにされ、前記ロック部材が前記受け孔内に収まっているときに、前記受け孔内の前記ロック部材の前記開き方向側に十分な移動スペースができるように構成される。
【0011】
また、他の好ましい実施形態においては、前記駆動シャフトは、前記枠体の上面に取り付けられるアングル材によって水平方向に摺動可能に支持されるようにされ、また、前記駆動シャフトは、その親扉側端部に取り付けられた駆動部材を介して前記枢動アームに連結されるようにされる。
【0012】
また、更に他の好ましい実施形態においては、前記駆動シャフトの前記子扉の端面外に突出する端部に、押圧スプリングを介して出没部材が設置され、前記駆動シャフトの子扉の端面外方向への付勢手段は、前記駆動シャフトの中間部に巻装された、一端が前記駆動シャフトにねじ付けられたナットに押止されると共に他端が前記アングル材の垂直面によって押止されるリターンスプリングとされる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記のとおりであって、子扉の閉時には、駆動シャフトに駆動されて枢動アームが下方に旋回し、ロック部材が受け孔内に収まった状態が維持されるので、親扉の開閉に伴って子扉の親扉側下部にかかる衝撃に対して十分な耐衝撃性を確保することができ、以て、反復される親扉の開閉によって子扉の歪みが生ずることを確実に防止することができ、自動フランス落しの軸杆が受け孔に対して出入困難になったり、軸杆が曲がったりする故障が発生することを確実に防止し得る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態につき、図面に依拠して説明する。図1は、子扉に本発明に係る保護装置を備えた親子式扉の外観例を示す部分断面正面図で、それは、後閉まりの親扉1と先閉まりの子扉2とから成っていて、子扉2の親扉側側辺の上下に自動フランス落し3、4が設置され、その下辺部に、本発明に係る子扉保護装置5が備え付けられる。親扉1の構成及び作用、並びに、子扉2の自動フランス落し3、4の構成及び作用は、従来のものと特に変わりはないので、その詳細な説明は省略する。
【0015】
図2(A)は、本発明に係る子扉保護装置5の全体構成を示す図で、そこに示される子扉保護装置5は、子扉2の下端部に埋設される、通例下面及び端面を開口した断面コの字形の枠体7と、枠体7内に組み込まれる駆動部及び作用部とから成る。
【0016】
駆動部は、枠体7の内天面に取り付けられるアングル材8、9に、水平方向に摺動可能に支持される駆動シャフト10と、駆動シャフト10の枠体7内先端部に取り付けられて、駆動シャフト10と一体に前進又は後退動作する駆動部材11とから成る。好ましい実施形態においては、駆動部材11はブラケット22を介して駆動シャフト10に取り付けられ、且つ、駆動シャフト10にねじ付けられたナット21とブラケット22との間に配装された押圧スプリング23によって、常時内方先端側に付勢される構成とされる。
【0017】
駆動シャフト10の後端部は、子扉2をヒンジ33によって固定するドア枠30の内側面31に対向する子扉2の端面32から突出する状態に支持され、その突出端部に出没部材12が取り付けられる。好ましい実施形態では、出没部材12はキャップ状に形成されて、駆動シャフト10の突出端部に被装される。そして、出没部材12の内端部のフランジ部24と駆動シャフト10に固定されたストッパー25との間に、常時出没部材12を外方向に付勢するように作用する押圧スプリング26を配装した構成とされる。
【0018】
駆動シャフト10の中間部には、その子扉2の端面32外への付勢手段であるリターンスプリング13が、その一端が駆動シャフト10にねじ付けられたナット14に押止され、他端がアングル材8の垂直面によって押止された状態にて巻装される。後述するように、リターンスプリング13は、駆動シャフト10が枠体7の内方に押し込まれることによってナット14とアングル材8との間に押し縮められると、その弾発力によって、ナット14を介して駆動シャフト10を枠体7の外方に押し戻すように作用し続ける。
【0019】
駆動部材11の先端部は、駆動軸16を介して枢動アーム15の上部に軸着される。枢動アーム15は枠体7の両側面間において軸支されていて、駆動軸16を介して駆動部材11から押し引き作用を受けるに伴い、その軸支部17を軸に上下方向に旋回する。
【0020】
枢動アーム15の先端にはロック部材18が取り付けられており、ロック部材18は、枢動アーム15の上下方向への旋回動作に伴って上下動する。ドア枠30の下辺部19には受け孔20が形成されていて、ロック部材18は、その下降時に受け孔20内に収まり、上昇時に受け孔20から抜け出るように構成される。
【0021】
この受け孔20の子扉2の開き方向の幅寸法は、ロック部材18の厚み寸法よりも十分大となるように設定され、ロック部材18が受け孔20内に収まっているときに、受け孔20内のロック部材18の開き方向側に十分な移動スペースができるようにされる(図2(B)参照)。逆に、ロック部材18の反対側は、移動スペースができないように、受け孔20の縁部に当接乃至近接状態にされる。なお、好ましくは、ロック部材18が受け孔20からスムーズに抜け出ることを可能にするために、ロック部材18の前面側下端部がテーパ面18aとされる。
【0022】
上記構成において、子扉2が閉まっているときは、子扉2の端面32がドア枠30の内側面31に近接しているため、子扉2の端面32から突出してドア枠30の内側面31に突き当たっている出没部材12、換言すれば、駆動シャフト10が枠体7内に押し込まれた状態になっている。その状態において枢動アーム15は、駆動部材11を介して押され続けるために、図2(A)に実線で示されるように下方に旋回して、ロック部材18は受け孔20内に収まっている。この状態においてロック部材18が子扉の開き方向と反対方向に移動することはないので、親扉1の閉時に子扉2に衝撃が加わっても、十分なお耐衝撃性を発揮する。
【0023】
親扉1と子扉2の双方を開く場合は、先ず、親扉1を開くことにより自動フランス落し3、4が外れ、次いで子扉2を開くために子扉2に手をかけて引くと、受け孔20内のロック部材18の開き方向側に十分な移動スペースがあるために、その分子扉2を開くことができる(図2(B)参照)。この子扉2の開動作に伴い、子扉2の端面32がドア枠30の内側面31から離れる。それにより、リターンスプリング13の作用で駆動シャフト10が子扉2の端面32側に移動する。その結果、枢動アーム15が上方に旋回してロック部材18が受け孔20から抜けるので、その後子扉2は、自由に開閉可能となる。
【0024】
そして、子扉2を閉めると、再び出没部材12がドア枠30の内側面31に突き当たって駆動シャフト10が枠体7内に押し込まれるため、枢動アーム15が下方に旋回してロック部材18が受け孔20内に収まり、子扉2は自動的にロックされる。
【0025】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】子扉に本発明に係る保護装置を備えた親子式扉の外観例を示す部分断面正面図である。
【図2】本発明に係る子扉の保護装置の全体構成及び動作の一部を示す図である。
【図3】本発明に係る子扉の保護装置の動作を示す図である。
【図4】本発明に係る子扉の保護装置の要部の動作を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 親扉
2 子扉
3 自動フランス落し
4 自動フランス落し
5 子扉保護装置
7 枠体
8 アングル材
9 アングル材
10 駆動シャフト
11 駆動部材
12 出没部材
13 リターンスプリング
14 ナット
15 枢動アーム
16 駆動軸
17 軸支部
18 ロック部材
18a テーパ面
19 ドア枠下辺部
20 受け孔
21 ナット
22 ブラケット
23 押圧スプリング
24 ナット
25 ストッパー
26 押圧スプリング
30 ドア枠
31 ドア枠の内側面
32 子扉の端面
33 ヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後閉まりの親扉と、先閉まりであって前記親扉側側辺の上下に自動フランス落しが設置された子扉の下辺部に設置される子扉保護装置であって、
前記子扉保護装置は、前記子扉の下辺部に埋設される枠体と、前記枠体内に組み込まれる駆動部及び作用部とから成り、
前記駆動部は、前記枠体内において水平方向に摺動可能に支持される駆動シャフトを含み、前記駆動シャフトはそのドア枠側端部が前記子扉の端面から突出状態に支持され、また、前記駆動シャフトにそれを前記子扉の端面方向に付勢する手段が配備され、
前記作用部は、前記枠体の両側面間において軸支されていて、前記駆動シャフトに連結されて駆動される枢動アームと、前記枢動アームの先端に取り付けられるロック部材とから成り、
前記ロック部材は、前記枢動アームが前記駆動シャフトに駆動されて旋回動作をするに伴って上下動し、その下降時にドア枠の下辺部に形成される受け孔内に収まることにより、前記子扉の動きを抑止するように作用することを特徴とする、自動フランス落しを備えた子扉の保護装置。
【請求項2】
前記受け孔の前記子扉の開き方向側の幅寸法は、前記ロック部材の厚み寸法よりも大とされ、前記ロック部材が前記受け孔内に収まっているときに、前記受け孔内の前記ロック部材の前記開き方向側に十分な移動スペースができるようにされた、請求項1に記載の自動フランス落しを備えた子扉の保護装置。
【請求項3】
前記駆動シャフトは、前記枠体の上面に取り付けられるアングル材によって水平方向に摺動可能に支持される、請求項1又は2に記載の自動フランス落しを備えた子扉の保護装置。
【請求項4】
前記駆動シャフトは、その親扉側端部に取り付けられた駆動部材を介して前記枢動アームに連結される、請求項1乃至3のいずれかに記載の自動フランス落しを備えた子扉の保護装置。
【請求項5】
前記駆動シャフトの前記子扉の端面外に突出する端部に、押圧スプリングを介して出没部材が設置された、請求項1乃至4のいずれかに記載の自動フランス落しを備えた子扉の保護装置。
【請求項6】
前記駆動シャフトの子扉の端面外方向への付勢手段は、前記駆動シャフトの中間部に巻装された、一端が前記駆動シャフトにねじ付けられたナットに押止されると共に他端が前記アングル材の垂直面によって押止されるリターンスプリングである、請求項3に記載の自動フランス落しを備えた子扉の保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−101001(P2010−101001A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270798(P2008−270798)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【特許番号】特許第4272695号(P4272695)
【特許公報発行日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(396012964)松本アルミ建材株式会社 (2)