説明

自動乳化洗浄製剤及び使用法

水との接触時に乳化可能な自動乳化洗浄組成物であって、典型的な一実施形態において該組成物は、該組成物の全質量を基準として、(a)約1%〜約99質量%の複数の二塩基エステルの混合物;(b)約1%〜約40質量%の、有機カチオンで中和された有機アニオンから成る複数の界面活性剤の混合物を含み、該アニオン及びカチオンのいずれか又は双方が、界面活性を有し、その複合体は、該二塩基エステル溶媒混合物中に可溶である。複数の界面活性剤の混合物は、典型的には、カチオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤であり、非イオン性界面活性剤と併用されるかどうかを問わない。複数の二塩基エステルは、アジピン酸、グルタル酸、及びコハク二塩基酸の混合物に由来し、特定の一実施形態では、混合物は、アジピン酸ジアルキル、メチルグルタル酸ジアルキル及びエチルコハク酸ジアルキルを含み、そして該アルキル基は、個別に、C〜C12炭化水素基を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照により本明細書に援用される2009年10月19日に出願された米国仮出願第61/279,306号の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、自己乳化又は自動乳化製剤に関し、詳細には、水との接触時に自動乳化できる二塩基エステル溶媒を含む環境に配慮した洗浄組成物(それは、すすぎ水と接触すると残留洗浄組成物の除去に非常に役立つ)。に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
クリーニング業界の多くの消費者は、より環境に配慮した洗浄製品を必要としている。しかし、環境に配慮していない現行洗浄製品は、トルエン、キシレンなどのような芳香族系溶媒を包含しているか、又はグリコールエーテル系溶媒若しくは塩素化溶媒である。また、これらの溶媒及び関連溶媒の使用は、それらの有害な健康及び安全性に関するデータ、並びにそのような溶媒の廃棄に関連する潜在的な汚染及び環境問題のために、好ましくない。
【0004】
したがって、洗浄用途には、環境に配慮した溶媒の使用が必要とされていた。しかし、多くの環境に配慮した溶媒は、多くの欠点に直面する。例えば、これらの溶媒の幾つかに関連する低揮発性が、洗浄後の溶媒の除去につきものの一連の難題をもたらす。典型的には、洗浄操作後に、過剰な溶媒が、蒸発又は水中でのすすぎにより除去される。低VOC溶媒の高沸点は、蒸発が極めて遅いので、最初のプロセスを実行不可能にすることが多い。後のプロセスは、除去の効率が、水中の溶媒の限られた溶解度に影響されるので、同様に実行不可能である。洗浄溶媒が、水中での溶解度を制限されているとき、洗浄面からのそれの除去には大量の水を使用する必要があり、その溶媒は、好ましくない油状残留物を頻繁に置き去りにすることがある。
【0005】
したがって、塗料及びインクなどの染みを基材から除去し、次に、その基材の表面上にいかなる残留物も残さずに、水で容易にすすがれることができる新規な洗浄組成物が、求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の概要
本発明は、水中で二塩基エステル(又は他の環境に配慮した溶媒)を乳化することが困難であるという課題(それは、洗浄を行なっている間中、そのような溶媒の除去に影響する。)を解決する。複数の二塩基エステル(具体的には、本発明中に組み込まれている二塩基エステル混合物)が、洗浄用途の範囲では、一般に使用される多くの有機溶媒に対する有望で環境に配慮した代替物であることが分かっている。これらの溶媒の環境に配慮した性質としては、生分解性、低臭気及び低VOCなどの性質が挙げられる。しかし、そのような環境保護的な性質は、洗浄後の溶媒の除去につきものの課題も引き起こす。本発明は、水中で溶媒を自然発生的に乳化する界面活性剤混合物の使用により、部分的に水溶性の溶媒を容易に除去するという課題を解決する。一態様では、界面活性剤混合物は、有機カチオンで中和された有機アニオンから成り、アニオンとカチオンのいずれか又は両方は、界面活性を有し、その複合体は、二塩基エステル溶媒混合物に可溶である。この界面活性剤複合体は、非イオン性界面活性剤と併用されるかどうかを問わない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水の存在下で自然発生的に乳化するか、又は自動乳化するであろう(溶媒/界面活性剤混合物を含む)洗浄組成物を生成する。そのような乳化は、該混合物でコーティングされた表面が洗浄のために水ですすがれるときか、又は水中で該混合物を混合して配合物を調製するプロセス中に、発生するであろう。本明細書で記載される配合物は、表面から溶媒をすすぐのに必要な水の量を減少させるであろうし、その水の量は、個別の測定により測定されることができる。本発明の別の重要性は、それが、水中で溶媒を乳化するのに必要な力学的エネルギーの量を減少させ、それにより、この溶媒の最終使用者に適合可能な更に単純かつエネルギー効率の良い製造プロセスを導くことである。
【0008】
本発明は、一実施形態では、二塩基エステル中で可溶なアニオン性並びにカチオン性界面活性剤を含む複数の界面活性剤の混合物を含む。混合物が水と接触すると、溶媒の豊富な相、水の豊富な相及びマイクロエマルション相を含む安定な三相系を得ることができる。一実施形態では、アニオン性界面活性剤は、アニオン性基としてホスフェート又はスルフェートを有する直鎖又は分岐鎖界面活性剤でよい。一実施形態では、カチオン性界面活性剤は、カチオン性基としてアミンを有する直鎖又は分岐鎖分子でよい。自動乳化のために使用される複数の界面活性剤は、有機並びに水性相の両方に可溶である。自己乳化又は自動乳化製剤は、その製剤に対して何らかの力学的エネルギーを供給することなく水を静かに加えると、油と水の界面でマイクロエマルション相が自然発生的に形成されることを定性的に観察することにより一般に特徴付けられる。ジャン−マリエ・ベルナルド(Jean-Marie Bernard)らの米国特許出願公開第2007/0043152号明細書では、自然発生的な乳化機構が記述されており、そしてエマルションを形成するのに必要なエネルギーは、混合物中で乳化されることになる材料を再分配するのに必要なエネルギーのみに関係しており、したがって、エマルションを形成するための外部エネルギー(基本的には攪拌エネルギー)は必要ないことが記述されている。言い換えれば、不連続相の肉眼的に均一な分配を確保するための攪拌に必要なエネルギーは、(例えば手動攪拌と比べて)十分すぎるほどである。
【0009】
検討される一対のアニオン性−カチオン性界面活性剤に応じて、ジエステル相中の全界面活性剤濃度は、一実施形態では、組成物の質量を基準として、約1質量%から約75質量%まで、別の実施形態では約5質量%から約45質量%まで、さらに別の実施形態では約1質量%から約30質量%まで変化する。
【0010】
本発明は、下記の詳細な説明及び実施例から明らかになるであろうし、それらの中では、一態様は、自然発生的に乳化可能、自己乳化可能及び/又は自動乳化可能(本明細書では、全て「自動乳化する」又は「自動乳化」ともいう)であり、組成物の全質量を基準として、(a)約1質量%〜約60質量%の複数の二塩基エステルの混合物;(b)約1質量%〜約75質量%の2つ以上の界面活性剤(典型的には、非イオン性、カチオン性、アニオン性、両イオン性又は両性界面活性剤の任意の組み合わせから選択され、より典型的には、カチオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤から選択される);並びに(c)所望により、水及び/又は添加剤を含むことを特徴とする組成物である。
【0011】
一態様では、洗浄組成物の全質量を基準として、(a)(i)メチルグルタル酸ジアルキル及び(ii)アジピン酸ジアルキル又はエチルコハク酸ジアルキルの少なくとも1つを含む複数の二塩基エステルの混合物;並びに(b)約1質量%〜約75質量%の、少なくとも2つの界面活性剤の界面活性剤混合物を含むことにより、水との接触時に自動乳化できる洗浄組成物が、本明細書で説明される。
【0012】
一実施形態では、複数の二塩基エステルの混合物は、下記一般式を有する:
【化1】

【0013】
式中、R及びR10は、独立して、約1〜約10個の炭素原子を含む炭化水素鎖を含み、そしてRは、−CH−CH−CH−CH−、−CH(CH)−CH−CH−、及び−CH(C)−CH−の少なくとも2つの混合物である。
【0014】
別の実施形態では、複数の二塩基エステルの混合物は、下記(i)〜(iii)を含む:
【0015】
(i)混合物の約7〜14質量%の、下記式の二塩基エステル:
【化2】

【0016】
(ii)混合物の約80〜94質量%の、下記式の二塩基エステル:
【化3】

及び
【0017】
(iii)混合物の約0.5〜5質量%の、下記式の二塩基エステル:
【化4】

【0018】
式中、R及びRは、個別に、C〜C10炭化水素基を含む。
【0019】
別の態様では、本発明は、以下の工程:a)被洗浄基材に本発明の洗浄組成物を接触させる工程、及びb)該洗浄組成物を水ですすぐ工程を含むことにより、該洗浄組成物を水との接触時に自動乳化させる、表面を洗浄する方法である。
【0020】
一実施形態では、複数の二塩基エステルの混合物は、ポリアミドの製造における1つ以上の副生成物に由来する。
【0021】
一実施形態では、界面活性剤混合物は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及びそれらの任意の組み合わせから成る群に由来する少なくとも2つの界面活性剤を含む。2つ以上の界面活性剤は、少なくとも1つのカチオン性界面活性剤及び少なくとも1つのアニオン性界面活性剤を含むことができる。カチオン性界面活性剤又は中性界面活性剤は、カチオン性エトキシ化脂肪族アミン、アルキルジメチルアミン、アルキルアミドプロピルアミン、シクロアルキルアミン、アルキルイミダゾリン誘導体、四級化アミンエトキシレート、四級アンモニウム化合物及びそれらの任意の組み合わせから成る群から形成されることができる。アニオン性界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホネート、アルファ(α)−オレフィンスルホネート、パラフィンスルホネート、アルキルエステルスルホネート、アルキルエーテルホスフェート、アルキルスルフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート、アルキルエーテルスルフェート、アルキルアルコキシスルフェート、アルキルスルホネート、アルキルアルコキシカルボキシレート、アルキルアルコキシ化スルフェート、モノアルキルホスフェート、ジアルキルホスフェート、アルキルナフタレンスルホネート、アルキルホスフェート、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェノールエーテルホスフェート、アルキルフェノールエーテルスルフェート、アルファ(α)−オレフィンスルホネート、サルコシネート、スルホスクシネート、イセチオネート、タウレート、及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択されることができる。
【0022】
一実施形態では、アニオン性界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート、及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
【0023】
別の実施形態では、界面活性剤混合物は、ポリオキシエチレントリデシルエーテルホスフェート、アルキルベンゼンスルホネート、エトキシ化脂肪族アミン、シクロアルキルアミン、イソプロピルアミン及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
【0024】
さらに別の実施形態では、界面活性剤混合物は、ポリオキシエチレントリデシルエーテルホスフェート及びカチオン性エトキシ化脂肪族アミンを含む。さらなる実施形態では、界面活性剤混合物は、ポリオキシエチレントリデシルエーテルホスフェート及びシクロヘキシルアミンを含む。別の実施形態では、界面活性剤混合物は、ポリオキシエチレンドデシルベンゼンスルホネート及びイソプロピルアミンを含む。
【0025】
さらに別の態様では、a)洗浄組成物の全質量を基準として:(i)約1質量%〜約99質量%の、(A)メチルグルタル酸ジアルキル及び(B)アジピン酸ジアルキル又はエチルコハク酸ジアルキルの少なくとも1つを含む複数の二塩基エステルの混合物;(ii)約1質量%〜約75質量%の界面活性剤混合物を含む洗浄組成物を被洗浄表面に接触させる工程;並びにb)水により該表面から該組成物をすすぐ工程、を含むことにより、該組成物を水との接触時に水中へ自動乳化させることができる、基材表面を洗浄する方法が説明される。
【0026】
一実施形態では、界面活性剤混合物は、カチオン性エトキシ化脂肪族アミン、アルキルジメチルアミン、アルキルアミドプロピルアミン、シクロアルキルアミン、アルキルイミダゾリン誘導体、四級化アミンエトキシレート、四級アンモニウム化合物、アルキルベンゼンスルホネート、アルファ(α)−オレフィンスルホネート、パラフィンスルホネート、アルキルエステルスルホネート、アルキルエーテルホスフェート、アルキルスルフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート、アルキルエーテルスルフェート、アルキルアルコキシスルフェート、アルキルスルホネート、アルキルアルコキシカルボキシレート、アルキルアルコキシ化スルフェート、モノアルキルホスフェート、ジアルキルホスフェート、アルキルナフタレンスルホネート、アルキルホスフェート、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェノールエーテルホスフェート、アルキルフェノールエーテルスルフェート、アルファ(α)−オレフィンスルホネート、サルコシネート、スルホスクシネート、イセチオネート、タウレート、及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される少なくとも2つの界面活性剤を含む。
【0027】
別の実施形態では、界面活性剤混合物は、ポリオキシエチレントリデシルエーテルホスフェート及びカチオン性エトキシ化脂肪族アミンを含む。別の実施形態では、界面活性剤混合物は、ポリオキシエチレントリデシルエーテルホスフェート及びシクロヘキシルアミンを含む。さらなる実施形態では、界面活性剤混合物は、ポリオキシエチレンドデシルベンゼンスルホネート及びイソプロピルアミンを含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】ウィンザー(Winsor)相図における三種類の相の概略図である。
【図2】ローダミーン(Rhodameen)T15、ローダファク(Rhodafac)410を含むローディアソルブ(Rhodiasolv)IRISの液滴の自然発生的分解を示す図である。
【図3】ローディアソルブIRIS(界面活性剤の添加なし)の液滴が水に接触させられるときの液滴分解の不発生を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
本明細書で使用されるときには、用語「アルキル」とは、飽和した直鎖、分岐鎖、又は環状炭化水素基を意味し、限定されるものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、n−ヘキシル、及びシクロヘキシルを含む。
【0030】
本明細書で使用されるときには、有機基に関する用語「(C〜C)」{式中、r及びsは、それぞれ整数である}は、その基が、1つの基当たりr個〜s個の炭素原子を含んでよいことを示す。
【0031】
典型的な一実施形態では、本発明の組成物は、本明細書で説明されるような無毒性、不燃性及び生物分解性の二塩基エステル溶媒{例えば、ローディア(Rhodia)社製ローディアソルブ(Rhodiasolv)Iris}、カチオン性界面活性剤−エトキシ化脂肪族アミン(例えば、ローディア社製ローダミーン(Rhodameen)T15)及びアニオン性界面活性剤−ポリオキシエチレントリデシルエーテルホスフェート(例えば、ローディア社製ローダファク(Rhodafac)シリーズ)を用いて開発される配合物である。本発明の組成物は、無毒性、生分解性、低VOC及び不燃性などの環境に配慮した特性を有する。しかし、カチオン性及びアニオン性界面活性剤は、上記実施形態に限定されるだけではないことを理解されたい。本発明に使用されることができるカチオン性界面活性剤は、アミン官能基を有する任意の適切なカチオン性界面活性剤でよい。本発明に使用されることができるアニオン性界面活性剤は、ホスフェート、ホスホネート、スルフェート、スルホネート及び/又はスルホサクシネート官能基を有する任意の適切なアニオン性界面活性剤でよい。
【0032】
一般に、自動乳化製剤は、下記を特徴とする:
【0033】
−それらは、大量の油及び遺留水を可溶化する。
【0034】
−過剰な量の油及び水の存在下で、第三の界面活性剤の豊富な中相が形成される。
【0035】
−過剰な相と界面活性剤の豊富な相との界面張力が低い(10−3mN/m)。
【0036】
特定の界面活性剤濃度及び組み合わせにおいて、その製剤が3つの異なる流体相に分かれ、その中相が大半の界面活性剤を含むとき、低張力の状態が発生する。したがって、マイクロエマルション製剤のスクリーニングを可能にする基準は、下記の通りに選択されることができる:
【0037】
−界面張力の測定、典型的には、油回収のための最適な処方は、過剰な油及び水相と、中相内の界面活性剤の豊富な相との界面張力が等しい場合と厳密に対応する。
【0038】
−中相内へ溶かされた油の量が生理食塩水の量と等しい3相領域内の点(同じ可溶化パラメータ)の決定。最大可溶化パラメータを有する製剤は、油の回収において、より効率的である。実際に、可溶化パラメータが増加すると、界面張力が減少する。
【0039】
−製剤が三相を示す塩分濃度の中点としての水相の最適な塩分濃度の定量化。
【0040】
中相マイクロエマルション形成を促進する同条件は、油及びマイクロエマルションと水及びマイクロエマルション相との間に最低界面張力を生じさせるだけでなく、所定量の界面活性剤のために油及び電解質の最大可溶化も提供する。
【0041】
マイクロエマルション形成の観察は、界面活性剤を比較するための基準状態であるようだ。三相領域:界面でのマイクロエマルション形成について、ウィンザー(Winsor)は、その系を、過剰な油及び水相の両方と平衡な状態にある熱力学的に安定な中相マイクロエマルション、III型と呼んだ。実際には、下記の通り三種類の「ウィンザー相図」がある:
【0042】
−界面活性剤が主に水相に溶解されている2相領域と対応しているI型、
【0043】
−界面活性剤が主に油相に溶解されている2相領域と対応しているII型、及び
【0044】
−界面活性剤が水相と油相の間にそれ自体の相を形成する3相領域と対応しているIII型。
【0045】
複数の系の少なくとも1つを温度、生理食塩水相の塩分濃度、共界面活性剤の濃度などについて可変にすることにより、I→III→II遷移(又はその逆)を含むことが可能である。
【0046】
図1では、ウィンザーにより説明された相の三種類が示される。図1によれば、本明細書で説明されている二塩基エステル溶媒(例えば、アイリス(IRIS))は、水よりも密度が高い。
【0047】
マイクロエマルションの形成には、油及び水マイクロドメインを分離する界面活性剤膜がどちらかといえばフレキシブルであること、並びに界面活性剤の親水性及び親油性がおおよそ平衡状態にあることが必要である。この平衡状態のすぐ近くでは、マイクロエマルションは、両相において連続的になり、過剰な水及び油の両方とともに存在するが、これらの全体的な制限を満たす条件内では、マイクロ構造は、親水及び親油相互作用の相対強度の変化に対して極めて過敏である。
【0048】
本組成物は、複数の二塩基エステルの混合物を含む。一実施形態では、その混合物は、アルコール及び直鎖状二塩基酸の付加体を含み、その付加体は、式R−OOC−A−COO−R{式中、R及び/又はRは、個別に、C〜C12アルキル、より典型的にはC〜Cアルキルを含み、そしてAは、−(CH−、−(CH−、及び−(CH−の混合物を含む。}を有する。別の実施形態では、R及び/又はRは、個別に、C〜C12アルキル、より典型的にはC〜Cアルキルを含む。一実施形態では、R及びRは、個別に、フーゼル油に由来する炭化水素基を含むことができる。一実施形態では、R及びRは、個別に、1〜8個の炭素原子を有する炭化水素基を含むことができる。一実施形態では、R及びRは、個別に、5〜8個の炭素原子を有する炭化水素基を含むことができる。
【0049】
一実施形態では、混合物は、アルコールと分岐鎖又は直鎖二塩基酸との付加体を含み、その付加体は、式R−OOC−A−COO−R{式中、R及び/又はRは、個別に、C〜C12アルキル、より典型的にはC〜Cアルキルを含み、そしてAは、−(CH−、−CHCHCH(CH)−、及び−CHCH(C)−の混合物を含む。}を有する。別の実施形態では、R及び/又はRは、個別に、C〜C12アルキル、より典型的にはC〜Cアルキルを含む。酸部分は、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、シュウ酸、マロン酸、ピメリン酸、スベリン酸及びアゼライン酸、並びにそれらの混合物などのような二塩基酸から誘導されることができる点を理解されたい。
【0050】
本発明に使用される1つ以上の二塩基エステルは、任意の適切なプロセスにより調製されることができる。例えば、アジピン酸の付加体及びフーゼル油の付加体の製造方法が、例えば、チュイバ(Chuiba)らの「Indian Journal of Technology,Vol.23,August 1985,pp.309-311」の文献“The Use of Egyptian Fusel Oil for the Preparation of Some Plasticizers Compatible with Polyvinyl Chloride”に記述されている。
【0051】
二塩基エステルは、式HOOC−A−COOHの二塩基酸又は式MeOOC−A−COOMeのジエステルと分岐鎖アルコール又は複数のアルコールの混合物との反応により、「エステル化」段階を含むプロセスにより得られることができる。その反応は、適切に触媒作用を受けることができる。好ましくは、二塩基酸又はジエステル1モル当たり少なくとも2モル当量のアルコールが使用される。その反応は、適切な場合には、反応副生成物の抽出と、次のろ過及び/又は精製(例えば蒸留)の段階とにより、促進されることができる。
【0052】
混合物の形態の複数の二塩基酸は、詳細には、複数のジニトリル化合物の混合物から得られることができて、詳細には、ブタジエンの二重ヒドロシアノ化(double hydrocyanation)によるアジポニトリルの製造プロセスにおいて形成され、かつ回収される。このプロセスは、世界的に消費される大多数のアジポニトリルを形成するために工業的な大規模で使用されており、多数の特許及び研究において記述されている。ブタジエンのヒドロシアノ化のための反応は、大部分において直鎖ジニトリルを形成するが、分岐鎖ジニトリルも形成し、それらの主な2つは、メチルグルタロニトリル及びエチルスクシノニトリルである。分岐鎖ジニトリル化合物は、アジポニトリルの分離及び精製のための段階において、蒸留により分離され、例えば蒸留塔内の上部留分として、回収される。その後に、分岐鎖ジニトリルは、二塩基酸又はジエステル(アルコール若しくは複数のアルコールの混合物又はフーゼル油との事後的なトランスエステル化反応のための軽質ジエステルであるか、又はそのまま本発明に従うジエステルである。)へ変換されることができる。
【0053】
本発明の複数の二塩基エステルは、ポリアミド、例えばポリアミド6,6の製造における1つ以上の副生成物に由来してよい。一実施形態では、その混合物は、アジピン二塩基酸、グルタル二塩基酸及びコハク二塩基酸の、直鎖又は分岐鎖、環状又は非環状C〜C20アルキル、アリール、アルキルアリール又はアリールアルキルエステルを含む。別の実施形態では、混合物は、アジピン二塩基酸、メチルグルタル二塩基酸及びエチルコハク二塩基酸の、直鎖又は分岐鎖、環状又は非環状C〜C20アルキル、アリール、アルキルアリール又はアリールアルキルエステルを含む。
【0054】
一般に、ポリアミドは、ジアミンとジカルボン酸の反応により形成された縮合反応物により調製されたコポリマーである。具体的には、ポリアミド6,6は、ジアミン(典型的にはヘキサメチレンジアミン)にジカルボン酸(典型的にはアジピン酸)を反応させることにより形成された縮合反応物により調製されたコポリマーである。
【0055】
一実施形態では、本発明の混合物は、ポリアミドの製造に利用されるアジピン酸の反応、合成及び/又は製造において1つ以上の副生成物から誘導されることができ、組成物は、アジピン二塩基酸、グルタル二塩基酸、及びコハク二塩基酸(本明細書では、「AGS」又は「AGS混合物」ということがある)のジアルキルエステルの混合物を含む。
【0056】
一実施形態では、複数のエステルの混合物は、ポリアミド(典型的には、ポリアミド6,6)の製造に利用されるヘキサメチレンジアミンの反応、合成及び/又は製造において副生成物から誘導される。組成物は、アジピン二塩基酸、メチルグルタル二塩基酸、及びエチルコハク二塩基酸(本明細書では「MGA」、「MGN」、「MGN混合物」又は「MGA混合物」ということがある。)のジアルキルエステルの混合物を含む。
【0057】
本発明の二塩基エステル混合物の沸点は、約120℃〜450℃の範囲にある。一実施形態では、本発明の混合物の沸点は、約160℃〜400℃の範囲にあり;一実施形態では、その範囲は、約210℃〜290℃であり;別の実施形態では、その範囲は、約210℃〜245℃であり;別の実施形態では、その範囲は、約215℃〜225℃の範囲である。一実施形態では、本発明の混合物の沸点範囲は、約210℃〜390℃、より典型的には約280℃〜390℃、より典型的には295℃〜390℃の範囲である。一実施形態では、本発明の混合物の沸点は、約215℃〜400℃、典型的には約220℃〜350℃の範囲にある。
【0058】
一実施形態では、複数の二塩基エステルの混合物は、約300℃〜330℃の沸点範囲を有する。典型的には、ジイソアミルAGS混合物は、この沸点範囲に関連する。別の実施形態では、本発明の二塩基エステル混合物は、約295℃〜310℃の沸点範囲を有する。典型的には、ジ−n‐ブチルAGS混合物は、この沸点範囲に関連する。一般に、より高い沸点、典型的には215℃を超える沸点、又は高い沸点範囲は、より低いVOCと対応する。
【0059】
特定の実施形態では、二塩基エステル混合物は、下記ジエステルを含む:
【0060】
式Iのジエステル:
【化5】

【0061】
式IIのジエステル
【化6】

及び
【0062】
式IIIのジエステル
【化7】

【0063】
式中、R及び/又はRは、個別に、約1個〜約8個の炭素原子を有する炭化水素、典型的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、n‐ブチル、イソアミル、ヘキシル、ヘプチル又はオクチルを含むことができる。そのような実施形態では、典型的には、混合物は、(混合物の質量を基準として)(i)約15%〜約35%の式Iのジエステル、(ii)約55%〜約70%の式IIのジエステル、及び(iii)約7%〜約20%の式IIIのジエステルを含み、より典型的には、(i)約20%〜約28%の式Iのジエステル、(ii)約59%〜約67%の式IIのジエステル、及び(iii)約9%〜約17%の式IIIのジエステルを含む。一般に、その混合物は、98℃の引火点、約10Pa未満の20℃での蒸気圧、及び約200〜300℃の蒸留温度範囲を特徴とする。また、ローディアソルブ(Rhodiasolv)(登録商標)RPDE(ローディア社、ニュージャージー州、Cranbury)、ローディアソルブ(登録商標)DIB(ローディア社、ニュージャージー州、Cranbury)及びローディアソルブ(登録商標)DEE(ローディア社、ニュージャージー州、Cranbury)に関して言及されることができる。
【0064】
特定の代替的な実施形態では、二塩基エステル混合物は、下記ジエステルを含む:
【0065】
式IVのジエステル:
【化8】

【0066】
式Vのジエステル:
【化9】

及び
【0067】
式VIのジエステル:
【化10】

【0068】
式中、R及び/又はRは、個別に、約1個〜約8個の炭素原子を有する炭化水素、典型的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、n‐ブチル、イソアミル、ヘキシル、ヘプチル、又はオクチルを含むことができる。そのような実施形態では、混合物は、典型的には、(混合物の質量を基準として)(i)約5%〜約30%の式IVのジエステル、(ii)約70%〜約95%の式Vのジエステル、及び(iii)約0%〜約10%の式VIのジエステルを含む。より典型的には、混合物は、典型的には、(混合物の質量を基準として):(i)約6%〜約12%の式IVのジエステル、(ii)約86%〜約92%の式Vのジエステル、及び(iii)約0.5%〜約4%の式VIのジエステルを含む。
【0069】
最も典型的には、混合物は、(混合物の質量を基準として):(i)約9%の式IVのジエステル、(ii)約89%の式Vのジエステル、及び(iii)約1%の式VIのジエステルを含む。一般に、その混合物は、98℃の引火点、約10Pa未満の20℃での蒸気圧、及び約200〜275℃の蒸留温度範囲を特徴とする。ローディア社製ローディアソルブ(登録商標)IRIS及びローディアソルブ(登録商標)DEE/M(ローディア社(ニュージャージー州、Cranbury)社製)に関して言及されることができる。
【0070】
本発明の一実施形態によれば、複数の二塩基エステルの混合物は、(ポリアミド中の主モノマーの一種である)アジピン酸の調製における1つ以上の副生成物に対応する。例えば、複数のジアルキルエステルは、質量を基準として、15〜33%のコハク酸、50〜75%のグルタル酸及び5〜30%のアジピン酸を一般に含む1つの副生成物のエステル化により得られる。別の例としては、複数のジアルキルエステルは、質量を基準として、30〜95%のメチルグルタル酸、5〜20%のエチルコハク酸及び1〜10%のアジピン酸を一般に含む第二の副生成物のエステル化により得られる。酸部分は、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、シュウ酸、マロン酸、ピメリン酸、スベリン酸及びアゼライン酸、並びにそれらの混合物などのような二塩基酸に由来してよいことを理解されたい。
【0071】
また、本発明の組成物は、1つ以上の界面活性剤又は複数の界面活性剤の混合物を含んでよい。本発明の界面活性剤又は複数の界面活性剤の混合物は、任意の数のカチオン性、両性、両イオン性、アニオン性又は非イオン性界面活性剤、それらの誘導体、並びに任意のそのような複数の界面活性剤の混合物(組み合わせ)でよい。
【0072】
一実施形態では、一般に、非イオン性界面活性剤は、例えば、アミド、例えば、アルカノールアミド、エトキシ化アルカノールアミド、エチレンビスアミドなど;エステル、例えば、脂肪酸エステル、グリセロールエステル、エトキシ化脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、エトキシ化ソルビタンなど;エトキシレート、例えば、アルキルフェノールエトキシレート、アルコールエトキシレート、トリスチリルフェノールエトキシレート、メルカプタンエトキシレートなど;末端キャッピングされたEO/POブロックコポリマー、例えば、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー、塩素キャッピングされたエトキシレート、四官能性ブロックコポリマーなど;アミンオキシド、例えば、ラウラミン(lauramine)オキシド、コカミン(cocamine)オキシド、ステアラミン(stearamine)オキシド、ステアラミド(stearamide)プロピルアミンオキシド、パルミトアミド(palmitamide)プロピルアミンオキシド、デシルアミンオキシドなど;脂肪族アルコール、例えば、デシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノレイル(linoleyl)アルコール及びリノレニル(linolenyl)アルコールなど;並びにアルコキシ化アルコール、例えば、エトキシ化ラウリルアルコール、トリデセス(trideceth)アルコールなど;並びに脂肪酸、例えば、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、セテアリン酸(cetearic acid)、イソステアリン酸、リノレイン酸、リノレン酸、リシノール酸、エライジン酸、アラキドン酸(arichidonic acid)、ミリストレイン酸など;並びにそれらの混合物の1つ以上を含む。別の実施形態では、非イオン性界面活性剤は、グリコール、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、アルキルPEGエステル、ポリプロピレングリコール(PPG)及びそれらの誘導体などである。一実施形態では、界面活性剤は、アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート又はテルペンアルコキシレートである。
【0073】
別の実施形態では、界面活性剤は、カチオン性界面活性剤である。カチオン性界面活性剤としては、限定されるものではないが、直鎖又は分岐鎖エトキシ化脂肪族アミン、アルキルジメチルアミン、アルキルアミドプロピルアミン、シクロアルキルアミン、アルキルイミダゾリン誘導体、四級化アミンエトキシレート、及び四級アンモニウム化合物、例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CETAB又は臭化セトリモニウムとしても知られる)、セチルトリメチルアンモニウムクロリド(塩化セトリモニウムとしても知られる)、ミリスチルトリメチルアンモニウムブロミド(臭化ミルトリモニウム又はクオタニウム−13としても知られる)、ステアリルジメチルジステアリルジモニウムクロリド、ジセチルジモニウムクロリド、ステアリルオクチルジモニウムメトスルフェート、二水素化パルモイルエチル(palmoylethyl)ヒドロキシエチルモニウムメトスルフェート、イソステアリルベンジルイミドニウムクロリド、ココイル(cocoyl)ベンジルヒドロキシエチルイミダゾリニウムクロリド、ジセチルジモニウムクロリド及びジステアリルジモニウムクロリド;イソステアリルアミノプロパルコニウム(isostearylaminopropalkonium)クロリド又はオレアルコニウム(olealkonium)クロリド;ベヘントリモニウムクロリド;並びにそれらの混合物などが挙げられる。特定の一実施形態では、カチオン性界面活性剤は、エトキシ化脂肪族アミン又はシクロアルキルアミンである。
【0074】
別の実施形態では、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤である。アニオン性界面活性剤としては、限定されるものではないが、直鎖及び/又は分岐鎖アルキルベンゼンスルホネート、アルファ(α)−オレフィンスルホネート、パラフィンスルホネート、アルキルエステルスルホネート、アルキルエーテルホスフェート、アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、アルキルアルコキシスルフェート、アルキルスルホネート、アルキルアルコキシカルボキシレート、アルキルアルコキシ化スルフェート、モノアルキルホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート、ジアルキルホスフェート、アルキルナフタレンスルホネート、アルキルホスフェート、アルキルベンゼンスルホン酸及び塩、アルキルフェノールエーテルホスフェート、アルキルフェノールエーテルスルフェート、アルファ(α)−オレフィンスルホネート、サルコシネート、スルホスクシネート、イセチオネート、及びタウレート、並びにそれらの混合物が挙げられる。分岐鎖アニオン性界面活性剤としては、限定されるものではないが、トリデセス硫酸ナトリウム、トリデシル硫酸ナトリウム、トリデセス硫酸アンモニウム、トリデシル硫酸アンモニウム、及びトリデセスカルボン酸ナトリウムが挙げられる。一実施形態では、アニオン性界面活性剤は、エーテルホスフェートである。一実施形態では、アニオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレントリデシルエーテルホスフェートである。
【0075】
使用に適した任意の両性界面活性剤としては、限定されるものではないが、脂肪族基が直鎖又は分岐鎖でよく、かつ複数の脂肪族置換基の1つが約8〜約18個の炭素原子を含み、1つがアニオン性水溶化基を含む脂肪族二級及び三級アミンの誘導体が挙げられる。適切な両性界面活性剤の特定の例としては、アルキルアンホカルボキシグリシネート及びアルキルアンホカルボキシプロピオネート、アルキルアンホジプロピオネート、アルキルアンホジアセテート、アルキルアンホグリシネート、及びアルキルアンホプロピオネート、並びにアルキルイミノプロピオネート、アルキルイミノジプロピオネート、及びアルキルアンホプロピルスルホネート(例えば、ココアンホアセテート、ココアンホプロピオネート、ココアンホジアセテート、ラウロアンホアセテート、ラウロアンホジアセテート、ラウロアンホジプロピオネート、ラウロアンホジアセテート、ココアンホプロピルスルホネート、カプロアンホジアセテート、カプロアンホアセテート、カプロアンホジプロピオネート、及びステアロアンホアセテートなど)のアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は置換アンモニウム塩が挙げられる。
【0076】
適切な両イオン性界面活性剤としては、アルキルベタイン、例えば、ココジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルジメチルアルファ(α)−カルボキシ−エチルベタイン、セチルジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルビス−(2−ヒドロキシ−エチル)カルボキシメチルベタイン、ステアリルビス−(2−ヒドロキシ−プロピル)カルボキシメチルベタイン、オレイルジメチルガンマ(γ)−カルボキシプロピルベタイン、及びラウリルビス−(2−ヒドロキシプロピル)α−カルボキシエチルベタイン、アミドプロピルベタイン、及びアルキルスルタインなどが挙げられ、例えば、ココジメチルスルホプロピルベタイン、ステアリルジメチルスルホプロピルベタイン、ラウリルジメチルスルホエチルベタイン、ラウリルビス−(2−ヒドロキシ−エチル)スルホプロピルベタイン、及びアルキルアミドプロピルヒドロキシスルタインなどが挙げられる。
【0077】
一実施形態では、界面活性剤混合物は組み合わせである。
【0078】
所望により、本発明の組成物は、追加成分又は添加剤、例えば、湿潤剤、溶媒、脱泡剤、レベリング剤、顔料ペースト、染料などを含むことができる。他の追加成分としては、限定されるものではないが、剥離剤(delaminates)、緩衝及び/又はpH制御剤、芳香剤、香料、染料、漂白剤、増白剤、可溶化材料、安定化剤、腐食防止剤、ローション及び/又は鉱油、酵素、曇り点改質剤、保存剤、イオン交換剤、キレート剤、発泡制御剤(sudsing control agent)、土壌除去剤、柔軟剤、乳白剤、不活性希釈剤、灰化阻害剤(graying inhibitor)、安定化剤、ポリマーなどが挙げられる。
【実施例】
【0079】
実験
例1:三種のホスフェート(ローダファク(Rhodafac)RS410−RS610−RS710)をアニオン性界面活性剤として有するカチオン性ローダミーン(Rhodameen)T15
【0080】
これらのホスフェートは、エチレンオキシド数が3から10まで変化するポリオキシエチレントリデシルエーテルホスフェート類に属する。カチオン性エトキシ化脂肪族アミン(ローダミーンT15)に、ローディアソルブ(Rhodiasolv)IRIS中の3つの異なるアニオン性ホスフェート界面活性剤を下記濃度で混合した:
【表1】

【0081】
得られたIRIS界面活性剤混合物をいかなる機械的攪拌もせずに等量の水と接触させた。水との接触の18時間後に、1−RS410試料、2−RS610試料及び3−RS710試料において自動乳化現象が観察された。水性相と有機相を対比するために、水より密度の高い有機相中にナイルレッド染料を加えた。1−RS410、2−RS610及び3−RS710試料の自動乳化によって、薄ピンク色を呈する半透明な界面領域が形成された。(いかなる界面活性剤も含まない)標準液は自動乳化しなかった。
【0082】
例2:三種のホスフェートを有するカチオン性ローダミーンPN430
【0083】
カチオン性エトキシ化脂肪族アミン(ローダミーンPN430)に、ローディアソルブIRIS中の3つの異なるアニオン性ホスフェート界面活性剤を下記濃度で混合した:
【表2】

【0084】
得られたIRIS界面活性剤混合物をいかなる機械的攪拌もせずに等量の水と接触させた。水との接触の18時間後に、4−RS410試料、5−RS610試料及び6−RS710試料において自動乳化現象が観察された。水性相と有機相を対比するために、水より密度の高い有機相中にナイルレッド染料を加えた。4−RS410、5−RS610及び6−RS710試料の自動乳化によって、薄ピンク色を呈する半透明な界面領域が形成された。(いかなる界面活性剤も含まない)標準液は自動乳化しなかった。
【0085】
例3:シクロヘキシルアミン−ホスフェート混合物中の自動乳化
【0086】
IRISに溶解したアニオン性ホスフェートとシクロヘキシルアミンの混合物を下記で列挙された濃度で調製した。次に、これらの混合物を等量の水と接触させた。水との接触の18時間後に、7−RS410試料、8−RS610試料及び9−RS710試料において自動乳化現象が観察された。対比し易くするために、IRIS相を疎水性ナイルレッド染料で染色する一方で、水性相を親水性フルオレセイン染料で染色した。二塩基エステルのみを含む標準液は自動乳化しなかった。
【表3】

【0087】
例4:イソプロピルアミン−スルホネート混合物中の自動乳化
【0088】
本発明の一実施形態に使用される別の界面活性剤混合物は、ローダカル(Rhodocal)330として市販されている、ドデシルベンゼンスルホネートとイソプロピルアミンの混合物である。IRIS/界面活性剤混合物と水の初期接触から48時間後に自動乳化現象が観察された。水性相と有機相を対比するために、水より密度の高い有機相中にナイルレッド染料を加えた。有機相中の界面活性剤の濃度を5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%及び40%に変えた。界面活性剤濃度が増加するにつれて、乳化プロセスの効率も増加することが観察された。10%、15%、20%、25%、30%、35%及び40%試料の自動乳化によって、薄ピンク色を呈する半透明な界面領域が形成された。標準液は自動乳化しなかった。
【0089】
例5:溶媒液滴の自動乳化の観察
【0090】
自動乳化の実用性を証明するために、溶媒の液滴を水に接触させ、カメラを用いて液滴の事後的な溶解を観察した。図2で示す通り、溶媒が、ローダファク410とローダミーンT15の混合物を含むとき、その液滴は、自然発生的に分解して、更に小さい多くの個別の液滴になることが観察された。しかし、図3で示す通り、界面活性剤混合物が不在であると、そのような分解は観察されなかった。
【0091】
したがって、本発明は、説明された対象を実施し、説明された目的及び利点並びに本明細書に内在する他の内容を達成するのに十分に適応している。本発明は、発明の特定の好ましい実施形態を参照して表され、説明され、かつ定義されたが、そのような参照は、本発明の限定を意図するものではなく、そのような限定は推定されるものではない。表現され、かつ説明された本発明の好ましい実施形態は、例示的なものにすぎず、本発明の範囲を網羅するものではない。結果として、本発明は、特許請求の範囲の理念及び範囲のみに限定されるものであり、全ての点で均等に対する十分な認識を提供するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄組成物の全質量を基準として:
(a)(i)メチルグルタル酸ジアルキル及び(ii)アジピン酸ジアルキル又はエチルコハク酸ジアルキルの少なくとも1つを含む複数の二塩基エステルの混合物;並びに
(b)約1質量%〜約75質量%の、少なくとも2つの界面活性剤の界面活性剤混合物
を含むことにより、水との接触時に自動乳化できる洗浄組成物。
【請求項2】
前記複数の二塩基エステルの混合物は、アジピン酸ジアルキル、メチルグルタル酸ジアルキル及びエチルコハク酸ジアルキルを含む、請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項3】
前記複数の二塩基エステルの混合物は、ポリアミドの製造における1つ以上の副生成物に由来する、請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項4】
前記複数の二塩基エステルの混合物は、アジポニトリルを製造するプロセスに由来する、請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項5】
前記少なくとも2つの界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項6】
前記少なくとも2つの界面活性剤は、少なくとも1つのカチオン性界面活性剤及び少なくとも1つのアニオン性界面活性剤を含む、請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項7】
前記カチオン性界面活性剤又は中性界面活性剤は、カチオン性エトキシ化脂肪族アミン、アルキルジメチルアミン、アルキルアミドプロピルアミン、シクロアルキルアミン、アルキルイミダゾリン誘導体、四級化アミンエトキシレート、四級アンモニウム化合物及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、請求項5に記載の洗浄組成物。
【請求項8】
前記アニオン性界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホネート、アルファ−オレフィンスルホネート、パラフィンスルホネート、アルキルエステルスルホネート、アルキルエーテルホスフェート、アルキルスルフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート、アルキルエーテルスルフェート、アルキルアルコキシスルフェート、アルキルスルホネート、アルキルアルコキシカルボキシレート、アルキルアルコキシ化スルフェート、モノアルキルホスフェート、ジアルキルホスフェート、アルキルナフタレンスルホネート、アルキルホスフェート、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェノールエーテルホスフェート、アルキルフェノールエーテルスルフェート、アルファ−オレフィンスルホネート、サルコシネート、スルホスクシネート、イセチオネート、タウレート、及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、請求項5に記載の洗浄組成物。
【請求項9】
前記アニオン性界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート、及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、請求項5に記載の洗浄組成物。
【請求項10】
前記界面活性剤混合物は、ポリオキシエチレントリデシルエーテルホスフェート、アルキルベンゼンスルホネート、エトキシ化脂肪族アミン、シクロアルキルアミン、イソプロピルアミン及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項11】
前記界面活性剤混合物は、ポリオキシエチレントリデシルエーテルホスフェート及びカチオン性エトキシ化脂肪族アミンを含む、請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項12】
前記界面活性剤混合物は、ポリオキシエチレントリデシルエーテルホスフェート及びシクロヘキシルアミンを含む、請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項13】
前記界面活性剤混合物は、ポリオキシエチレンドデシルベンゼンスルホネート及びイソプロピルアミンを含む、請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項14】
前記複数の二塩基エステルの混合物は:
(i)該混合物の約7〜14質量%の、下記式:
【化1】

{式中、R及びRは、個別に、C〜C10炭化水素基を含む。}
の二塩基エステル;
(ii)該混合物の約80〜94質量%の、下記式:
【化2】

{式中、R及びRは、個別に、C〜C10炭化水素基を含む。}
の二塩基エステル;及び
(iii)該混合物の約0.5〜5質量%の、下記式:
【化3】

{式中、R及びRは、個別に、C〜C10炭化水素基を含む。}
の二塩基エステル
を含む、請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項15】
以下の工程:
a)洗浄組成物の全質量を基準として:
(i)約1質量%〜約99質量%の、(A)メチルグルタル酸ジアルキル及び(B)アジピン酸ジアルキル又はエチルコハク酸ジアルキルの少なくとも1つを含む複数の二塩基エステルの混合物;
(ii)約1質量%〜約75質量%の界面活性剤混合物;
を含む洗浄組成物を被洗浄面へ接触させる工程;並びに
b)水により該組成物を該表面からすすぐ工程;
を含むことにより、該組成物を水との接触時に水中へ自動乳化させることができる、基材表面を洗浄する方法。
【請求項16】
前記界面活性剤混合物は、カチオン性エトキシ化脂肪族アミン、アルキルジメチルアミン、アルキルアミドプロピルアミン、シクロアルキルアミン、アルキルイミダゾリン誘導体、四級化アミンエトキシレート、四級アンモニウム化合物、アルキルベンゼンスルホネート、アルファ−オレフィンスルホネート、パラフィンスルホネート、アルキルエステルスルホネート、アルキルエーテルホスフェート、アルキルスルフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート、アルキルエーテルスルフェート、アルキルアルコキシスルフェート、アルキルスルホネート、アルキルアルコキシカルボキシレート、アルキルアルコキシ化スルフェート、モノアルキルホスフェート、ジアルキルホスフェート、アルキルナフタレンスルホネート、アルキルホスフェート、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェノールエーテルホスフェート、アルキルフェノールエーテルスルフェート、アルファ−オレフィンスルホネート、サルコシネート、スルホスクシネート、イセチオネート、タウレート、及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される少なくとも2つの界面活性剤を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記界面活性剤混合物は、ポリオキシエチレントリデシルエーテルホスフェート及びカチオン性エトキシ化脂肪族アミンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記界面活性剤混合物は、ポリオキシエチレントリデシルエーテルホスフェート及びシクロヘキシルアミンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記界面活性剤混合物は、ポリオキシエチレンドデシルベンゼンスルホネート及びイソプロピルアミンを含む、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−508503(P2013−508503A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535188(P2012−535188)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/002781
【国際公開番号】WO2011/049614
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(508339035)
【Fターム(参考)】