説明

自動二輪車用ナビゲーションシステム

【課題】
自動二輪車用のナビゲーションシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】
自車位置を測位して自動二輪車の、目的地までの進行方向を算出するナビゲーション装置と、運転者が装着するヘルメットのバイザー部分に、ナビゲーション装置で算出した進行方向を含むナビゲーションに関する情報を表示するバイザー表示装置と、自動二輪車の速度を検出する速度検出装置と、ナビゲーション装置で算出した進行方向を、振動によって運転者に伝える振動装置と、を有しており、速度検出装置において、一定以上の速度を検出した場合に、バイザー表示装置での表示を行わない、または縮小して表示をする表示制御をナビゲーション装置で行う、自動二輪車用ナビゲーションシステムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車用のナビゲーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
出発地から目的地まで車両の走行経路を案内するシステムとして、ナビゲーションシステムが存在する。このナビゲーションシステムは、主に自動車などでその使用が普及しているが、オートバイやスクーターなどの車両(以下、総称して「自動二輪車」という)では普及していない。これは、ナビゲーションシステムではナビゲーション装置の表示装置を視認しやすい位置に設置して、進行方向を画面と音声などにより案内しているが、設置場所の確保等の関係でそれらを自動二輪車に設置させることが困難であることも原因の一つである。
【0003】
これらの自動二輪車での表示の問題を解決するために、下記特許文献1に記載のように、ヘッドマウントディスプレイを表示装置としたり、自動二輪車の前部にヘッドアップディスプレイを表示装置としたりすることによって、自動二輪車でもナビゲーションシステムを提供しようとする試みがある。
【0004】
【特許文献1】特開2004−101197号公報
【特許文献2】特開2001−278153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような装置を用いることによって自動二輪車用のナビゲーションシステムとすることが出来る。しかし自動二輪車ではヘルメットの着用が義務づけられていることから、特許文献1に記載のようなヘッドマウントディスプレイをヘルメットの下に装着することは難しい。また特許文献2に記載のようなヘッドアップディスプレイの画面は下方にあるので、自動車などよりも危険性の高い自動二輪車では、表示を行う装置は視界前方にあることが好ましい。
【0006】
また従来のナビゲーションシステムは、主に自動車での使用を想定されているため、自動二輪車に適したナビゲーションの制御が行われるわけではない。例えばナビゲーションシステムの表示装置を設置する空間がなかったり、音声で案内を行ったとしても周囲の雑音などによって聞き取りにくかったりするので、どの方向に向かったらよいのか、分からかったりする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は上記問題点に鑑み、ヘルメットのバイザーをナビゲーションシステムの表示装置として用いると共に、自動二輪車に適した機能を備えた、自動二輪車用のナビゲーションシステムを発明した。
【0008】
請求項1の発明は、自動二輪車用のナビゲーションシステムであって、自車位置を測位して前記自動二輪車の、目的地までの進行方向を算出するナビゲーション装置と、前記運転者が装着するヘルメットのバイザー部分に、前記ナビゲーション装置で算出した進行方向を含むナビゲーションに関する情報を表示するバイザー表示装置と、前記自動二輪車の速度を検出する速度検出装置と、を有しており、前記速度検出装置において、一定以上の速度を検出した場合に、前記バイザー表示装置での表示を行わない、または縮小して表示をする表示制御を前記ナビゲーション装置で行う、自動二輪車用ナビゲーションシステムである。
【0009】
本発明のように構成することで、ナビゲーションに関する情報を、運転者のヘルメットのバイザー部分に表示することが可能となる。バイザー部分にナビゲーションに関する情報の表示を行うことで、自動二輪車においてもナビゲーションの表示を容易にする。また運転者は、バイザー部分を通して道路などを見ているため、所定以上の速度を超過している場合にもその表示を行うのは、安全上、好ましくないので、表示をせず、または表示を縮小してその安全にも配慮されたナビゲーションシステムが可能となる。
【0010】
請求項2の発明において、前記自動二輪車用ナビゲーションシステムは、更に、前記ナビゲーション装置で算出した進行方向を、振動によって前記運転者に伝える振動装置、を有する自動二輪車用ナビゲーションシステムである。
【0011】
上述のように、バイザー部分には一定の速度以上でている場合にはその表示が行われない、あるいは小さくしか表示されない場合がある。そうすると、運転者は進行方向を記憶する必要性があるが、それは逆に運転者に対して余計な負担を強いていることとなり、運転に集中が出来ない。そこで、進行方向について、運転者に振動によって伝えることで、運転者の負担を軽減することが出来る。また表示なども行わないので、運転者の安全にも配慮されている。
【0012】
請求項3の発明は、自動二輪車用のナビゲーションシステムであって、自車位置を測位して前記自動二輪車の運転者に対して、目的地までの進行方向を算出するナビゲーション装置と、前記ナビゲーション装置で算出した進行方向を、振動によって前記運転者に伝える振動装置と、を有する自動二輪車用ナビゲーションシステムである。
【0013】
自動二輪車のナビゲーションの際の問題の一つは、運転者に対してどのように進行方向を伝えるか、という点にある。この点、何らかの表示を行ったり、音声案内をする、といったことが考えられるが、表示を行うには運転者の視線の移動等が発生して、安全上、好ましくない場合もある。また音声案内にしても、自動二輪車は自動車と異なり音声は聞き取りにくく、またイヤホンのようなものを使用すると、逆に周囲の音が聞き取りにくくなり、これも安全上、好ましくない。そこで、進行方向について、運転者に振動によって伝えることで、運転者に対して的確に進行方向を伝えることが出来る。また表示なども行わないので、運転者の安全にも配慮されている。
【0014】
請求項4の発明において、前記振動装置は、前記自動二輪車のハンドルまたは前記運転者の腕に取り付けられる、自動二輪車用ナビゲーションシステムである。
【0015】
振動は運転者に伝えられることが目的なので、ハンドルや運転者の腕に取り付けられることが好ましい。
【0016】
請求項5の発明では、前記自動二輪車のハンドルの左右の部分に取り付けられた前記振動装置において、前記進行方向が右側の場合には、前記ハンドルの右側に取り付けられた振動装置を振動させ、前記進行方向が左側の場合には、前記ハンドルの左側に取り付けられた振動装置を振動させる制御を前記ナビゲーション装置が行う、自動二輪車用ナビゲーションシステムである。
【0017】
請求項6の発明では、前記運転者の両腕に取り付けられた前記振動装置において、前記進行方向が右側の場合には、前記運転者の右腕に取り付けられた振動装置を振動させ、前記進行方向が左側の場合には、前記運転者の左腕に取り付けられた振動装置を振動させる制御を前記ナビゲーション装置が行う、自動二輪車用ナビゲーションシステムである。
【0018】
請求項7の発明では、前記自動二輪車のハンドルまたは前記運転者の腕に取り付けられた前記振動装置において、前記進行方向が右側の場合には、前記振動装置を進行方向が右側であることを示す振動のパターンで振動させ、前記進行方向が左側の場合には、前記振動装置を進行方向が左側であることを示す振動のパターンで振動させる制御を前記ナビゲーション装置が行う、自動二輪車用ナビゲーションシステムである。
【0019】
請求項5乃至請求項7の発明のように、振動を発生させることが好ましい。このように振動を発生させることで、的確に運転者に進行方向を認識させることが出来る。
【0020】
請求項8の発明において、前記振動装置は、前記右折または左折する地点までの距離に応じて、振動のパターンまたは大きさが変化する、自動二輪車用ナビゲーションシステムである。
【0021】
振動装置で単に、どちらの方向へ曲がるか、といったような進行方向を伝えるほか、本発明のように構成することで、振動の大きさやパターンを変化させることによって、右折や左折する地点までの距離も伝えることが出来る。
【0022】
請求項9の発明において、前記自動二輪車用ナビゲーションシステムは、更に、前記運転者が装着するヘルメットにおいて、前記ヘルメットのバイザー部分に、前記ナビゲーション装置で算出した進行方向を含むナビゲーションに関する情報を表示するバイザー表示装置、を有する自動二輪車用ナビゲーションシステムである。
【0023】
上述の請求項3の発明において、更にヘルメットのバイザー部分に、ナビゲーションに関する情報を表示するように構成することも出来る。
【0024】
請求項10の発明において、前記自動二輪車用ナビゲーションシステムは、更に、前記ヘルメットに、前記自動二輪車の進行方向に対する前記運転者の顔の向きを測定する頭部方向測定装置、を有しており、前記ナビゲーション装置は、前記頭部方向測定装置で測定した顔の向きに応じた表示を前記バイザー表示装置で行う、自動二輪車用ナビゲーションシステムである。
【0025】
このように進行方向に対する顔の向きを測定することが出来る。これによって、顔の向きにあわせて進行方向などの表示を行うことが出来る。
【0026】
請求項11の発明において、前記ナビゲーション装置は、自車の位置を測位し、目的地までの進行方向を算出するナビゲーション部と、前記進行方向を含むナビゲーションに関する情報の表示制御を行う表示制御部と、前記速度検出装置から前記自動二輪車の速度の情報を受け取る速度情報取得部と、を有しており、前記表示制御部は、前記速度情報取得部で取得した速度の情報が、一定の速度以上の場合に前記バイザー表示装置での表示を行わない、または縮小して表示をする表示制御を行う、自動二輪車用ナビゲーションシステムである。
【0027】
請求項12の発明において、前記ナビゲーション装置は、更に、前記ナビゲーション部で算出した進行方向の情報を前記振動装置に対して渡すことで、前記振動装置において振動を発生させることによって、前記運転者に振動によって進行方向を伝える振動発生指示部、を有する自動二輪車用ナビゲーションシステムである。
【0028】
請求項13の発明において、前記ナビゲーション装置は、更に、前記運転者の顔の向きの情報を前記頭部方向測定装置から受け取る頭部方向情報取得部、を有しており、前記表示制御部は、前記頭部方向情報取得部で取得した顔の向きの情報に応じた表示を前記バイザー表示装置で行う、自動二輪車用ナビゲーションシステムである。
【0029】
上述のナビゲーション装置は、請求項11乃至請求項13の発明のように構成することが出来る。
【発明の効果】
【0030】
本発明を用いることにより、ヘルメットのバイザーをナビゲーションシステムの表示装置として用いることが出来る。これにより従来のようにヘッドマウントディスプレイやヘッドアップディスプレイを備えなくても良い。また単なるナビゲーションシステムではなく、自動二輪車に適した機能を備えることによって、より自動二輪車の運転者の利便性に供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の自動二輪車用ナビゲーションシステム1の全体の概念図を図1に、ナビゲーション装置2の概念図を図2に示す。
【0032】
自動二輪車用ナビゲーションシステム1は、ナビゲーション装置2とバイザー表示装置3と速度検出装置4と頭部方向測定装置5と振動装置6とを有している。ナビゲーション装置2は、自車位置を検出し、自動二輪車の進行方向に関する情報を、後述するバイザー表示装置3で表示させる。なお各装置は、有線またはは無線で接続されている。
【0033】
バイザー表示装置3は、自動二輪車の運転者が装着するヘルメットのバイザー部分に、いわゆる電子ペーパーのような、透過性のある薄膜の液晶や有機ELなどからなる表示装置22を貼付したり、あるいはバイザーそのものを上記素材で構成する。例えば、液晶とポリマーの複合膜からなる液晶を用いることが出来る。このような電子ペーパーについては、その一例が下記ホームページに詳述されている(http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0713/fujitsu.htm)(http://www.nhk.or.jp/strl/open2002/tenji/id28/28index.html)。
【0034】
速度検出装置4は、自動二輪車の速度を検出する装置であり、例えば速度センサーを用いたり、加速度センサーを用いて加速度の情報を取得して、それを時間積分することにより速度を算出しても良い。またその他の方法により速度を検出しても良い。
【0035】
頭部方向測定装置5は、自動二輪車の運転者の頭部(顔の向き)がどちらの方向を見ているかを測定する装置であって、好適にはヘルメットに取り付けられた小型ジャイロなどにより、その運転者の頭部(顔の向き)の方向(進行方向に対する角度など)を測定する。例えば通常時であれば運転者の頭部は進行方向に対してまっすぐに向いているが、右折時には、頭部は右側に向くので、進行方向に対して右側に向いたことを測定する。また左折時には、頭部は左側に向くので、進行方向に対して左側に向いたことを測定する。
【0036】
振動装置6は、右折時または左折時に、どちらの方向に進んだらよいか、振動を発生させることにより、その方向を知らせる装置である。例えば携帯電話機に用いられるような小型のバイブレーターを自動二輪車の左右のハンドルに取り付け、右側に進む場合には右側のバイブレーターが振動し、左側に進む場合には左側のバイブレーターが振動する。このようにバイブレーターを軽く振動させることによって、その振動がハンドルを介して運転者に伝わり、運転者にその進行方向を伝えることが出来る。なお安全のため、大きな振動ではないことが好ましい。なお左右のハンドルに各々バイブレーターを備えるのではなく、ハンドルに一つ備えて、振動のパターンを変化させることで、右折、左折を知らせるように構成することも出来る。また振動装置6は、ハンドルに取り付けるほか、運転者の腕などに取り付けるようにしても良い。
【0037】
ナビゲーション装置2は、上述のように自車位置を検出し、目的地までの進行方向を運転者に伝える装置であり、ナビゲーション部10と表示制御部11と速度情報取得部12と頭部方向情報取得部13と振動発生指示部14とを有している。これらの各機能はナビゲーション装置2を構成する小型のコンピュータで実現される。ナビゲーション装置2は、バイザー表示装置3で表示を行うほか、自らが表示装置を有しており、そこで表示を行っていても良い。
【0038】
ナビゲーション装置2は、プログラムの演算処理を実行するCPUなどの演算装置20と、情報を記憶するRAMやハードディスクなどの記憶装置21とを少なくとも有している。コンピュータ上で実現する各機能(各手段)は、その処理を実行する手段(プログラムやモジュールなど)が演算装置20に読み込まれることでその処理が実行される。各機能は、記憶装置21に記憶した情報をその処理において使用する場合には、該当する情報を当該記憶装置21から読み出し、読み出した情報を適宜、演算装置20における処理に用いる。当該コンピュータには、演算装置20の処理結果や記憶装置21に記憶する情報をインターネットやLANなどのネットワークを介して送受信する通信装置24、テンキーなどの入力装置23、ディスプレイなどの表示装置22を有していても良い。図3にナビゲーション装置2のハードウェア構成の一例を示す。
【0039】
本発明に於ける各機能(各手段)は、その機能が論理的に区別されているのみであって、物理上あるいは事実上は同一の領域を為していても良い。
【0040】
ナビゲーション部10は、ナビゲーション装置2の記憶装置21に記憶する地図情報と、自動二輪車に備えられたGPSやジャイロなどによる測位装置(図示せず)の情報とに基づいて、出発地から目的地までの進行方向を算出し、自動二輪車の運転者に対してその進行方向を表示制御部11での表示制御により伝える。
【0041】
表示制御部11は、ナビゲーション部10で算出した進行方向の情報を、バイザー表示装置3で表示する。この際に、後述する速度情報取得部12で速度検出装置4より取得した速度情報が、一定以上の速度の場合にはバイザー表示装置3での表示を行わないことが好ましい。これは運転者はバイザーを通して道路などを見ているためで、一定以上の速度がある場合に表示を行うのは危険だからである。なお、表示を行わない処理のほか、バイザー表示装置3において、その表示を、運転の邪魔にならない程度に小さくして(縮小して)表示する処理としても良い。
【0042】
また表示制御部11は、頭部方向情報取得部13が頭部方向測定装置5より取得した運転者の頭部の方向にあわせて進行方向の表示の制御を行う。例えば図4に示すように、頭部が進行方向に対してまっすぐな場合には、図4(a)のように通常通りの表示を行い、頭部が進行方向に対して右側に向いている場合には、図4(b)のように進行方向に対して右側が中心に来るように表示を行う。更に、頭部が進行方向に対して左側に向いている場合には、図4(c)のように進行方向に対して左側が中心に来るように表示を行う。なお図4のバイザーの表示は、ヘルメットの内部から外部を見た場合、つまり運転者が見た場合と同じ場合を示している。この際にずらす角度は、頭部方向測定装置5で測定した進行方向に対する頭部(顔の向き)の角度を検出できるので、その角度だけ表示をずらせばよい。
【0043】
速度情報取得部12は、速度検出装置4により自動二輪車の速度情報を取得する。
【0044】
頭部方向情報取得部13は、自動二輪車の運転者のヘルメットに備えられた頭部方向測定装置5により、進行方向に対する運転者の頭部(顔の向き)の進行方向に対する方向(角度)の情報を取得する。
【0045】
振動発生指示部14は、ナビゲーション部10で進行方向が右折、左折などの場合に、その情報をナビゲーション部10から受け取ると、振動装置6に対して、振動を発生させる指示を渡す。振動装置6として、左右のハンドルの各々にバイブレーターが備えられている場合には、右折の場合には右側のバイブレーターを振動させるように指示を渡し、左折の場合には左側のバイブレータを振動させるように指示を渡す。また振動装置6として、一つのバイブレターがハンドルに備えられている場合には、右折の場合には右折を示す振動を発生させる指示を渡し、左折の場合には左折を示す振動を発生させる指示を渡す。
【0046】
次に本発明の自動二輪車用ナビゲーションシステム1の処理プロセスの一例を説明する。
【0047】
まず自動二輪車には、ナビゲーション装置2と速度検出装置4と振動装置6とを設置する。ナビゲーション装置2は自動二輪車の如何なる場所に設置しても良いが、操作性なども考慮すると、速度計などが表示されているパネル周辺に設置すると良い。また速度検出装置4として速度センサーを用いることで速度情報を検出することが好ましいが、加速度センサーを用いて、そこで検出した加速度の情報を時間積分することにより、速度情報を算出する装置としても良い。
【0048】
またハンドルには振動装置6を設置する。振動装置6は、運転者に対して振動により進行方向を案内する装置であり、左右のハンドルに一つずつ備えても良いし、ハンドル全体に一つを備えていることでも良い。ハンドル全体に一つ備える場合には、振動パターンの変化により右折または左折を運転者に案内することとなる。運転者は振動装置6での振動を手で感知することによって、進行方向を知ることが出来る。なおハンドルに振動装置6としてのバイブレーターを取り付けるのではなく、腕に振動装置6としてのバイブレーターを取り付けることとしても良い。
【0049】
また運転者が装着するヘルメットには、頭部方向測定装置5とバイザー表示装置3とを備える。頭部方向測定装置5は、ジャイロにより運転者の頭部(顔の向き)が進行方向に対してどの向きにあるか、その角度などを測定する装置である。またバイザー表示装置3は、ヘルメットのバイザー部分に、透過性のある薄膜の液晶や有機ELなどによって進行方向などの情報が表示可能となっている。なお顔の向きと進行方向を測定するために、ジャイロの初期値をヘルメットのバイザーの方向にあわせ、その状態から顔が左右に向くことによって、それにつられてヘルメットも左右に動く。そしてヘルメットが左右に動くことによって、ジャイロがその角度を検出できるので、頭部(顔の向き)の角度を測定できる。
【0050】
自動二輪車用ナビゲーションシステム1を構成する各装置は、有線または無線により情報の送受信が可能である。有線とするか無線とするかは任意に定めることが出来る。
【0051】
このようにして自動二輪車用ナビゲーションシステム1を自動二輪車に設置すると、ナビゲーション装置2を用いて自動二輪車での走行を開始する。この際に、図示はしないが、ナビゲーション装置2のナビゲーション部10ではGPSやジャイロにより自車の位置を測位してその進行方向を算出している。
【0052】
また走行中は、常にまたは一定のタイミングごとに、速度検出装置4は自動二輪車の速度を検出し、速度情報をナビゲーション装置2に渡す。速度検出装置4で検出した速度情報は、ナビゲーション装置2の速度情報取得部12で受け取る。
【0053】
また同様に、常にまたは一定のタイミングごとに、頭部方向測定装置5は運転者の頭部(顔の向き)が、進行方向に対してどのような位置関係にあるかを測定し、その方向の情報をナビゲーション装置2に渡す。頭部方向測定装置5で検出した方向(角度)の情報は、ナビゲーション装置2の頭部方向情報取得部13で受け取る。
【0054】
ナビゲーション部10が算出した自動二輪車の進行方向を、表示制御部11はバイザー表示装置3に表示するが、速度情報取得部12において、あらかじめ定められた速度以上になったことを検出すると、表示制御部11はその表示を消す、あるいは小さくする。つまり運転者が運転をしやすいように、バイザーの視界を確保する。この予め定められた速度は、運転者などが任意に設定可能であるが、例えば時速5kmなどとして設定することが出来る。なお、表示制御部11による表示制御として、時速0km以外、つまり停止状態以外では表示できないように設定していても良い。
【0055】
また頭部方向情報取得部13が頭部方向測定装置5から受け取った、運転者の頭部の方向に基づいて、バイザー表示装置3で表示する進行方向に関する情報を変更する制御を行う。例えば、図4(a)に示すように、頭部が進行方向に対してまっすぐに向いていればそのまま進行方向に関する情報、例えば進行方向の矢印、道路、建物などの情報をそのままバイザー表示装置3で表示させる制御を行う。また頭部が進行方向に対して右側を向いた場合、進行方向に対して右側に存在する道路、建物などの情報と、進行方向を示す矢印(進行方向に対する矢印なので、進行方向がまっすぐの場合には斜め左方向、進行方向が右側の場合にはまっすぐの方向、進行方向が左側の場合には左方向)などを表示する制御を行う(図4(b))。また頭部が進行方向に対して左側を向いた場合、進行方向に対して左側に存在する道路、建物などの情報と、進行方向を示す矢印(進行方向に対する矢印なので、進行方向がまっすぐの場合には斜め右方向、進行方向が左側の場合にはまっすぐの方向、進行方向が右側の場合には右方向)などを表示する制御を行う(図4(c))。
【0056】
なお自動二輪車の特性上、頻繁に車線変更などを繰り返すことがあり、そのたびに頭部を左右に向けることがある。その場合、常に頭部の方向に基づいて表示制御を行うと、運転者に対して逆にストレスになりかねない。そこで、頭部が一定時間以上右側、あるいは左側に向いている場合のみに表示制御を行うようにしたり、自動二輪車の傾きを検出するセンサーを別途設け、そのセンサーからの情報に基づいて、自動二輪車が一定以上傾いている場合には表示制御を行うようにすることも出来る。
【0057】
更に、自動二輪車が交差点などの分岐に近づくなどにより、ナビゲーション部10において、右折または左折することを算出した場合には、ナビゲーション部10は、その情報を振動発生部に渡す。振動発生部は、ナビゲーション部10から右折または左折することの情報を受け取ると、振動装置6に対して右折または左折に応じた振動を発生させる指示を渡し、それを受け取った振動装置6は、その指示に応じて振動を発生させる。
【0058】
振動装置6のバイブレーターが左右のハンドルに一つずつ備えられている場合には、右折または左折する方向のバイブレーターが振動し、ハンドル全体で一つ備えられている場合には、右折または左折する方向に応じた振動パターンでバイブレーターが振動する。このような振動を運転者が手で感知することによって運転者は右折または左折することを知ることが出来る。
【0059】
このような振動は、右折や左折する交差点などまでの距離に応じて振動のパターンや振動の大きさを変更するように、振動発生部が指示を出し、それによって振動のパターンや振動の大きさを振動装置6が変更しても良い。例えば、右折する交差点までの距離が700mと、交差点まで直前の位置にいる場合には、前者の方が振動の大きさを小さくする、ように構成することが出来る。このように振動の大きさやパターンも変更することによって、右折や左折するまでの距離も知ることが出来る。
【0060】
運転者に対して進行方向を知らせるには、音声案内や表示装置22での表示による案内が一般的である。しかし音声案内の場合、自動二輪車はヘルメットを装着しているため、ナビゲーション装置2の本体から音を再生しても聞き取りづらいし、またヘルメット内にスピーカーを設けて音を再生しても、周囲の音が聞き取りにくくなり、安全上好ましくない。また表示装置22での案内も、本発明のようなバイザーでの表示や、特許文献1のようなヘッドマウントディスプレイによる表示では、一定速度以上では危険な場合もあるし、また特許文献2のような装置では視線の方向が変わるので、それも安全上好ましくない。そこで、本発明のように振動で方向を知らせることによって、安全に且つ正確に運転者に対して進行方向を知らせることが出来る。
【0061】
以上のような処理を自動二輪車が目的地に到着するまで繰り返すことによって、ナビゲーションが行える。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明を用いることにより、ヘルメットのバイザーをナビゲーションシステムの表示装置22として用いることが出来る。これにより従来のようにヘッドマウントディスプレイやヘッドアップディスプレイを備えなくても良い。また単なるナビゲーションシステムではなく、自動二輪車に適した機能を備えることによって、より自動二輪車の運転者の利便性に供する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の自動二輪車用ナビゲーションシステムの全体の概念を示す図である。
【図2】ナビゲーション装置の概念を示す図である。
【図3】ナビゲーション装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図4】頭部の方向とバイザー表示装置での表示を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1:自動二輪車用ナビゲーションシステム
2:ナビゲーション装置
3:バイザー表示装置
4:速度検出装置
5:頭部方向測定装置
6:振動装置
10:ナビゲーション部
11:表示制御部
12:速度情報取得部
13:頭部方向情報取得部
14:振動発生指示部
20:演算装置
21:記憶装置
22:表示装置
23:入力装置
24:通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動二輪車用のナビゲーションシステムであって、
自車位置を測位して前記自動二輪車の、目的地までの進行方向を算出するナビゲーション装置と、
前記運転者が装着するヘルメットのバイザー部分に、前記ナビゲーション装置で算出した進行方向を含むナビゲーションに関する情報を表示するバイザー表示装置と、
前記自動二輪車の速度を検出する速度検出装置と、
を有しており、
前記速度検出装置において、一定以上の速度を検出した場合に、前記バイザー表示装置での表示を行わない、または縮小して表示をする表示制御を前記ナビゲーション装置で行う、
ことを特徴とする自動二輪車用ナビゲーションシステム。
【請求項2】
前記自動二輪車用ナビゲーションシステムは、更に、
前記ナビゲーション装置で算出した進行方向を、振動によって前記運転者に伝える振動装置、
を有することを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車用ナビゲーションシステム。
【請求項3】
自動二輪車用のナビゲーションシステムであって、
自車位置を測位して前記自動二輪車の運転者に対して、目的地までの進行方向を算出するナビゲーション装置と、
前記ナビゲーション装置で算出した進行方向を、振動によって前記運転者に伝える振動装置と、
を有することを特徴とする自動二輪車用ナビゲーションシステム。
【請求項4】
前記振動装置は、
前記自動二輪車のハンドルまたは前記運転者の腕に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の自動二輪車用ナビゲーションシステム。
【請求項5】
前記自動二輪車のハンドルの左右の部分に取り付けられた前記振動装置において、
前記進行方向が右側の場合には、前記ハンドルの右側に取り付けられた振動装置を振動させ、前記進行方向が左側の場合には、前記ハンドルの左側に取り付けられた振動装置を振動させる制御を前記ナビゲーション装置が行う、
ことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の自動二輪車用ナビゲーションシステム。
【請求項6】
前記運転者の両腕に取り付けられた前記振動装置において、
前記進行方向が右側の場合には、前記運転者の右腕に取り付けられた振動装置を振動させ、前記進行方向が左側の場合には、前記運転者の左腕に取り付けられた振動装置を振動させる制御を前記ナビゲーション装置が行う、
ことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の自動二輪車用ナビゲーションシステム。
【請求項7】
前記自動二輪車のハンドルまたは前記運転者の腕に取り付けられた前記振動装置において、
前記進行方向が右側の場合には、前記振動装置を進行方向が右側であることを示す振動のパターンで振動させ、前記進行方向が左側の場合には、前記振動装置を進行方向が左側であることを示す振動のパターンで振動させる制御を前記ナビゲーション装置が行う、
ことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の自動二輪車用ナビゲーションシステム。
【請求項8】
前記振動装置は、
前記右折または左折する地点までの距離に応じて、振動のパターンまたは大きさが変化する、
ことを特徴とする請求項2から請求項7のいずれかに記載の自動二輪車用ナビゲーションシステム。
【請求項9】
前記自動二輪車用ナビゲーションシステムは、更に、
前記運転者が装着するヘルメットにおいて、前記ヘルメットのバイザー部分に、前記ナビゲーション装置で算出した進行方向を含むナビゲーションに関する情報を表示するバイザー表示装置、
を有することを特徴とする請求項3に記載の自動二輪車用ナビゲーションシステム。
【請求項10】
前記自動二輪車用ナビゲーションシステムは、更に、
前記ヘルメットに、前記自動二輪車の進行方向に対する前記運転者の顔の向きを測定する頭部方向測定装置、を有しており、
前記ナビゲーション装置は、
前記頭部方向測定装置で測定した顔の向きに応じた表示を前記バイザー表示装置で行う、
ことを特徴とする請求項1または請求項9に記載の自動二輪車用ナビゲーションシステム。
【請求項11】
前記ナビゲーション装置は、
自車の位置を測位し、目的地までの進行方向を算出するナビゲーション部と、
前記進行方向を含むナビゲーションに関する情報の表示制御を行う表示制御部と、
前記速度検出装置から前記自動二輪車の速度の情報を受け取る速度情報取得部と、
を有しており、
前記表示制御部は、
前記速度情報取得部で取得した速度の情報が、一定の速度以上の場合に前記バイザー表示装置での表示を行わない、または縮小して表示をする表示制御を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車用ナビゲーションシステム。
【請求項12】
前記ナビゲーション装置は、更に、
前記ナビゲーション部で算出した進行方向の情報を前記振動装置に対して渡すことで、前記振動装置において振動を発生させることによって、前記運転者に振動によって進行方向を伝える振動発生指示部、
を有することを特徴とする請求項2から請求項7、請求項11のいずれかに記載の自動二輪車用ナビゲーションシステム。
【請求項13】
前記ナビゲーション装置は、更に、
前記運転者の顔の向きの情報を前記頭部方向測定装置から受け取る頭部方向情報取得部、
を有しており、
前記表示制御部は、
前記頭部方向情報取得部で取得した顔の向きの情報に応じた表示を前記バイザー表示装置で行う、
ことを特徴とする請求項10から請求項12のいずれかに記載の自動二輪車用ナビゲーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−26075(P2008−26075A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−197123(P2006−197123)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(599108242)Sky株式会社 (257)
【Fターム(参考)】