説明

自動二輪車用ETC車載器

【課題】取付作業が容易で取付スペースも縮小できる自動二輪車用ETC車載器を安価に提供すること。
【解決手段】ETC車載器1の樹脂ケース3には本体収納部3a内に電子回路モジュール2が収納・保持されており、樹脂ケース3の内底部には金属製のナット板4が固定されている。このナット板4は例えば第2雌ねじ孔4bに連結ねじ5を締結させることによって、底板部3bに固定できる。このようなETC車載器1を自動二輪車側の取付板10に取り付ける際には、取付板10上に樹脂ケース3の底板部3bを搭載して、取付板10の貫通孔10aと底板部3bの貫通孔37に挿通した取付ねじ7をナット板4の第1雌ねじ孔4aに螺着させると共に、取付ねじ7の頭部7aを取付板10の貫通孔10a周縁部に圧着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動料金収受システム(ETC:Electronic Toll Collection System)用の電子回路モジュールを内蔵したETC車載器に係り、特に、自動二輪車に取り付けて使用されるETC車載器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有料道路の料金所では、ETC車載器と無線通信を行って通行料金の支払いが自動的に行えるようにするというシステムが普及している。そのため、四輪車だけでなく自動二輪車でもETC車載器の需要が高まっているが、二輪車に設置されるETC車載器は取付スペースの制約が大きく、防水性についても特別な配慮が必要となる。
【0003】
このような自動二輪車用のETC車載器としては、従来、電子回路モジュールが収納・保持される筐体の外壁面側方に一対の耳部を突設し、これら耳部を自動二輪車の所定部位に取り付けて使用するという構成のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。前記筐体にはICカード(ETCカード)を挿入するためのスロットが開設されており、該筐体内の電子回路モジュールは配線ケ−ブルを介して外部アンテナ(通信用アンテナ)と接続されている。
【特許文献1】特開2006−209627号公報(第4−8頁、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の自動二輪車用ETC車載器のように、電子回路モジュールを収納する筐体の外壁面側方に一対の耳部を突設すると、筐体の平面的な大きさが耳部によって増大してしまうため、自動二輪車側に広い取付スペースが必要になるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、取付作業が容易で取付スペースも縮小できる自動二輪車用ETC車載器を安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明では、自動料金収受システム用の電子回路モジュールが収納・保持されている樹脂ケースを自動二輪車に取り付けて使用されるETC車載器において、複数箇所に雌ねじ孔を有して前記樹脂ケース内の底板部に固定されたナット板と、自動二輪車側の取付部材となる取付板および前記樹脂ケースの底板部を貫通して前記ナット板の前記雌ねじ孔に螺着される複数本の取付ねじとを備え、前記樹脂ケースを前記取付板上に搭載して前記取付ねじを前記雌ねじ孔に螺着させると共に該取付ねじの頭部を該取付板に圧着させることによって、前記樹脂ケースが前記取付板上に設置されるように構成した。
【0007】
このように構成された自動二輪車用ETC車載器は、安価に製造可能な樹脂ケース内の底板部に予めナット板が固定されており、このナット板に取付ねじを締結させることによって自動二輪車に取り付けることができる。そのため、樹脂ケースに取付用の耳部を突設する必要がなくなって、取付スペースを縮小することができると共に、取付ねじをナット板に締結させるだけでよいので、取付作業も簡単に行える。
【0008】
上記の構成において、
ナット板に第2雌ねじ孔を設けると共に、樹脂ケースの底板部に第2雌ねじ孔と対向する嵌入孔を設けて、樹脂ケースの底面側から嵌入孔に挿通した連結ねじを第2雌ねじ孔に螺着させると共に該連結ねじの頭部を該嵌入孔に圧着させることによって、ナット板が樹脂ケースの底板部に固定されていると、ナット板を樹脂ケースの底板部に固定する組立作業を簡素化できるため好ましい。
【0009】
また、上記の構成において、ナット板と樹脂ケースの底板部との間で複数本の取付ねじを包囲する位置にパッキンが介設されており、かつ底板部に該パッキンを位置決めするための凹溝が形成されていると、取付ねじを貫通させている孔を介して外部から水が浸入しても、その水はパッキンやナット板の螺着部分で遮断されて樹脂ケース内の他所へは浸入しなくなるため、防水性が高まって好ましい。
【0010】
また、上記の構成において、ナット板の材質は特に限定されるわけではないが、ナット板が金属板からなると、強度面での信頼性が高まって部品コストも低減できるため好ましい。
【0011】
この場合において、電子回路モジュールに非接触型ICカードを読み取るためのアンテナが設けられており、かつ樹脂ケースには、電子回路モジュールが配置される本体収納部と底板部との間に該本体収納部よりも小径な筒状部が突設されていることが好ましく、こうすることで、金属製のナット板がICカード用アンテナの性能に悪影響を及ぼさないように両者を離隔させることができるだけでなく、底板部およびナット板が小径化されるため樹脂ケースの取付スペースが一層縮小できる。その際、自動二輪車側の取付板上に載置される筒状部が本体収納部から底板部に向かって先窄まりに形成されていると、樹脂ケースの取付スペースをさらに縮小できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の自動二輪車用ETC車載器は、安価に製造可能な樹脂ケース内の底板部にナット板が固定されており、このナット板に取付ねじを締結させることによって自動二輪車に取り付けることができるため、樹脂ケースの取付スペースを縮小することができるると共に、取付ねじをナット板に締結させるだけでよいので、取付作業も簡単に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
発明の実施の形態を図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係るETC車載器を自動二輪車側の取付部材に取り付けた状態を示す断面図、図2は該ETC車載器の取付前の断面図、図3は図2に示す下ケースの平面図である。ただし、図1と図2は図3中の2点鎖線に沿う断面形状を示している。
【0014】
これらの図に示すETC車載器1は、電子回路モジュール2を樹脂ケース3の内部に収納・保持したものであり、樹脂ケース3の内底部には金属板からなるナット板4が固定されている。このETC車載器1は、自動二輪車側の取付部材となる取付板10に取り付けて使用される。
【0015】
電子回路モジュール2は、配線パターンが形成された回路基板21に各種電子部品22を実装して所要の回路を構成している。また、回路基板21の下面には非接触型ICカード(ETCカード)11を読み取るためのアンテナとして、例えばループアンテナとして動作するパターンアンテナ23が設けられている。この電子回路モジュール2は樹脂ケース3の本体収納部3a内に配置されており、回路基板21が本体収納部3aに位置決め・固定されている。
【0016】
樹脂ケース3は上ケース31と下ケース32とを嵌め合わせて一体化したものである。樹脂ケース3の略上半分は、下ケース32の上端開口部を上ケース31で蓋閉してなる外形が直方体状の本体収納部3aとなっており、この本体収納部3a内には、電子回路モジュール2の回路基板21を位置決め・固定するための図示せぬ基板保持部や、非接触型ICカード11を挿抜可能に配置させるためのガイド溝33等が設けられている。また、本体収納部3aの外壁部には、図示せぬ外部アンテナ(通信用アンテナ)から導出されて回路基板21の配線パターンに接続される図示せぬ配線ケ−ブルを挿通させるためのケ−ブル導入穴34が設けられている。なお、この本体収納部3aにはガイド溝33に連通する図示せぬスロットが開設されており、このスロットを介して非接触型ICカード11が挿抜できるようになっている。
【0017】
一方、樹脂ケース3の略下半分には、本体収納部3aから底板部3bに向かって先窄まりに突出する筒状部3cが設けられており、この筒状部3cの内底部に組み込まれたナット板4が連結ねじ5によって底板部3bに固定されている。また、ナット板4と底板部3bとの間には防水用のパッキン6が介設されている。筒状部3cが先窄まりであることから、樹脂ケース3の底板部3bは本体収納部3aに比してかなり小径となっている。底板部3bの内底面には、ナット板4の四隅を位置決めするためのL字状の位置決め突起35が突設されていると共に、パッキン6を位置決めするための正方形状の凹溝36が刻設されている。図1に示すように、この底板部3bは自動二輪車側の取付板10上に載置される部分であって、正方形状の底板部3bの隅部4箇所と中央にそれぞれ貫通孔37と嵌入孔38が開設されている。ここで、底板部3bの四隅に設けられた貫通孔37は、ナット板4を取付板10に固定する取付ねじ7を貫通させるためのものであり、これら貫通孔37を包囲する位置にパッキン6用の前記凹溝36が形成されている。また、底板部3bの中央に設けられた嵌入孔38は連結ねじ5の頭部5aを嵌入させるためのものである。なお、図3に示すように、下ケース32には上ケース位置決め用の突起32aや上ケース締結用のねじ穴32b、補強用のリブ32c等が設けられている。
【0018】
ナット板4は樹脂ケース3の底板部3bとほぼ同じ大きさの正方形状の金属板であり、このナット板4には、隅部4箇所に取付ねじ7を螺着させるための第1雌ねじ孔4aが設けられると共に、中央部に連結ねじ5を螺着させるための第2雌ねじ孔4bが設けられている。ナット板4の四隅に設けられた第1雌ねじ孔4aは底板部3bの貫通孔37と対向しており、ナット板4の中央部に設けられた第2雌ねじ孔4bは底板部3bの嵌入孔38と対向している。このナット板4は、位置決め突起35で位置決めして底板部3b上に搭載した後、樹脂ケース3の底面側から嵌入孔38に挿通した連結ねじ5を第2雌ねじ孔4bに螺着させると共に、連結ねじ5の頭部5aを嵌入孔38に圧着させることによって、樹脂ケース3の底板部3bに強固に固定されている。また、こうして連結ねじ5をナット板4に締結させると、パッキン6がナット板4と底板部3b間に挟圧されて密閉性が高まる。そのため、底板部3bの貫通孔37や嵌入孔38を介して外部から樹脂ケース3内へ水が浸入しても、その水はパッキン6やナット板4に遮断されて樹脂ケース3内の他所へは浸入しないようになっている。なお、ナット板4の第1および第2雌ねじ孔4a,4bにはねじ5,7が螺着・締結されているため、これら雌ねじ孔4a,4bもほとんど密閉された状態となっている。
【0019】
このように構成されたETC車載器1を自動二輪車側の取付板10に取り付ける場合、図1に示すように、取付板10上に樹脂ケース3の底板部3bを搭載して、取付板10の所定位置に設けられてる貫通孔10aと底板部3bの貫通孔37とを対向させた後、各貫通孔10aに取付ねじ7を挿通して、この取付ねじ7をナット板4の第1雌ねじ孔4aに螺着させると共に、各取付ねじ7の頭部7aを取付板10の貫通孔10a周縁部に圧着させる。これにより、ナット板4の四隅が取付ねじ7に締結されるため、ETC車載器1を取付板10上に強固に取り付けることができる。
【0020】
上記の如く本実施形態例に係るETC車載器1は、安価に製造可能な樹脂ケース3内の底板部3bに予めナット板4が固定されており、このナット板4に取付ねじ7を締結させることによって自動二輪車側の取付板10に強固に取り付けることができる。そのため、樹脂ケース3に取付用の耳部を突設する必要がなくなって、取付スペースを縮小することができると共に、取付ねじ7をナット板4に締結させるだけでよいので、取付作業も簡単に行える。
【0021】
また、このETC車載器1は、樹脂ケース3の底面側から嵌入孔38に挿通した連結ねじ5を第2雌ねじ孔4bに締結させるだけでナット板4が底板部3bに固定できるため、ナット板4を樹脂ケース3の底板部3bに固定する組立作業が簡単に行える。しかも、ナット板4と底板部3bとの間で取付ねじ7を包囲する位置にはパッキン6が介設されているため、貫通孔10a,37や嵌入孔38を介して外部から水が浸入しても、その水はパッキン6やナット板4の螺着部分で遮断されて樹脂ケース3内の他所へは浸入せず、よって電子回路モジュール2に悪影響を及ぼす虞がない。
【0022】
なお、ナット板4の材質は金属に限定されるわけではなく、例えばナット板4が高硬度なプラスチックであってもよいが、本実施形態例のようにナット板4が金属板からなると、強度面での信頼性が高くて部品コストも低減できる。また、本実施形態例のように樹脂ケース3の本体収納部3aと底板部3bとの間に先窄まりな筒状部3cが突設されていると、金属製のナット板4がICカード11用のパターンアンテナ23の性能に悪影響を及ぼさないように両者4,23を離隔させることができるだけでなく、底板部3bおよびナット板4が小径化されるため樹脂ケース3の取付スペースを大幅に縮小できる。
【0023】
なお、樹脂ケース3の底板部3bにナット板4を固定する手段は適宜選択可能であり、例えばボルトとナットの締結によって底板部3bおよびナット板4を圧着させるようにしてもよいが、その場合はボルトを挿通させている孔から水が浸入しないように不所望な隙間を封止しておくことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態例に係るETC車載器を自動二輪車側の取付部材に取り付けた状態を示す断面図である。
【図2】該ETC車載器の取付前の断面図である。
【図3】図2に示す下ケースの平面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ETC車載器
2 電子回路モジュール
3 樹脂ケース
3a 本体収納部
3b 底板部
3c 筒状部
4 ナット板
4a 第1雌ねじ孔
4b 第2雌ねじ孔
5 連結ねじ
5a 頭部
6 パッキン
7 取付ねじ
7a 頭部
10 取付板
11 非接触型ICカード
21 回路基板
23 パターンアンテナ(ICカード用アンテナ)
35 位置決め突起
36 凹溝
37 貫通孔
38 嵌入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動料金収受システム用の電子回路モジュールが収納・保持されている樹脂ケースを自動二輪車に取り付けて使用されるETC車載器であって、
複数箇所に雌ねじ孔を有して前記樹脂ケース内の底板部に固定されたナット板と、自動二輪車側の取付部材となる取付板および前記樹脂ケースの底板部を貫通して前記ナット板の前記雌ねじ孔に螺着される複数本の取付ねじとを備え、
前記樹脂ケースを前記取付板上に搭載して前記取付ねじを前記雌ねじ孔に螺着させると共に該取付ねじの頭部を該取付板に圧着させることによって、前記樹脂ケースが前記取付板上に設置されるようにしたことを特徴とする自動二輪車用ETC車載器。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記ナット板に第2雌ねじ孔を設けると共に、前記樹脂ケースの底板部に前記第2雌ねじ孔と対向する嵌入孔を設けて、前記樹脂ケースの底面側から前記嵌入孔に挿通した連結ねじを前記第2雌ねじ孔に螺着させると共に該連結ねじの頭部を該嵌入孔に圧着させることによって、前記ナット板が前記樹脂ケースの底板部に固定されていることを特徴とする自動二輪車用ETC車載器。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記ナット板と前記樹脂ケースの底板部との間で前記複数本の取付ねじを包囲する位置にパッキンが介設されており、かつ前記底板部に該パッキンを位置決めするための凹溝が形成されていることを特徴とする自動二輪車用ETC車載器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の記載において、前記ナット板が金属板からなることを特徴とする自動二輪車用ETC車載器。
【請求項5】
請求項4の記載において、前記電子回路モジュールに非接触型ICカードを読み取るためのアンテナが設けられており、かつ前記樹脂ケースには、前記電子回路モジュールが配置される本体収納部と前記底板部との間に該本体収納部よりも小径な筒状部が突設されていることを特徴とする自動二輪車用ETC車載器。
【請求項6】
請求項5の記載において、前記筒状部が前記本体収納部から前記底板部に向かって先窄まりに形成されていることを特徴とする自動二輪車用ETC車載器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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