説明

自動二輪車

【課題】本発明は、車両後部に盗難対策装置が配置される自動二輪車において、車両のコストアップを抑えることができる技術を提供することを課題とする。
【解決手段】自動二輪車に、乗員が座るシートを支持する左右のシートフレーム27L、27Rと、これらの左右のシートフレーム27L、27Rに取付けられ後輪14からの泥・水・埃が及ぶことを防止するリヤフェンダ68と、左右他側のシートフレーム27に取付けられる盗難対策装置70と、この盗難対策装置70へ後輪14からの泥・水・埃の直撃を防ぐアンダカバー98とが備えられる。リヤフェンダ68とアンダカバー98とは一体成形されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後部に盗難対策装置を備える自動二輪車の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の盗難に対する対策が各種講じられる。この対策の1つに、車両の位置を追跡するものがある。
【0003】
車両の位置が特定できる機能を有する盗難対策装置を備えた自動二輪車が知られている(例えば、特許文献1(図2)参照。)。
【0004】
特許文献1の図2に示すように、盗難対策装置(50)(括弧付き数字は、特許文献1記載の符号を示す。以下同じ。)は、タンデムシート(26)の下方でシートレール(17)の上面に配置される。タンデムシート(26)は、電波を通す非金属部材で構成される。従って、タンデムシート(26)の下方に盗難対策装置(50)を配置しても、良好な通信性能が得られる。タンデムシート(26)の下方のスペースに盗難対策装置(50)を配置するため、車体スペースの有効活用が図れる。
【0005】
以下、特許文献1の技術を、タンデムシート(26)の車幅方向一方に消音器が配置される自動二輪車に適用する場合について検討する。
タンデムシート(26)の車幅方向一方に消音器が配置されるタイプの自動二輪車では、消音器の熱を避けるため、タンデムシート(26)の車幅方向他方に盗難対策装置(50)が配置される。この盗難対策装置(50)へ後輪で跳ね上げる泥・水・埃が向かう。対策として、盗難対策装置(50)の下面をアンダカバーで覆うことが有効となる。
【0006】
しかし、アンダカバーを車体カバーとは別に設けると、アンダカバーの調達コストが嵩み、車両のコストアップを招く。アンダカバーの機能を残しながら、別部品であるアンダカバーを廃止することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−111185公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、車両後部に盗難対策装置が配置される自動二輪車において、車両のコストアップを抑えることができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車体フレームと、この車体フレームから車両後方へ延ばされ乗員が座るシートを支える左右のシートフレームと、これらの左右のシートフレームのうちのいずれか一方のシートフレームに取付けられる消音器と、左右のシートフレームに取付けられシート下の空間に後輪からの泥・水・埃が及ぶことを防止するリヤフェンダとが備えられている自動二輪車において、左右のシートフレームのうちの他方のシートフレームよりも車幅方向外側にて、リヤフェンダ、シートフレーム又は車体フレームに、車両の位置情報を測定しこの位置情報を無線送信する盗難対策装置が取付けられ、この盗難対策装置は、外部からのいたずらを防ぎつつ後輪からの泥・水・埃の直撃を防ぐアンダカバーで覆われ、このアンダカバーは、リヤフェンダに一体成形されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、リヤフェンダは、後輪の上方を覆う天井部と、この天井部の左右端から下方へ延びる左右の縦壁と、他方の縦壁から水平方向外方へ延びて盗難対策装置を下方から覆うアンダカバーとからなり、天井の左右部と、一方の縦壁の端部と、他方の縦壁から延びるアンダカバーとは、シートフレームに取付けられていることを特徴とする
【0011】
請求項3に係る発明は、アンダカバーは、他方のシートフレームの下方を通って車幅方向外方へ延びており、このアンダカバーに、リヤフェンダの側方を覆うサイドカバーが設けられ、このサイドカバーは、シートフレームに取付けられ、アンダカバーの車幅方向外端部に、下からサイドカバーの一部を当てることで、外端部を補強するようにしたことを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、アンダカバーに、サイドカバーの下部が締結されることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、シートフレームに、盗難対策装置を支える盗難対策装置ステイが設けられることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、リヤフェンダに、盗難対策装置が装着される盗難対策装置ステイが一体形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明は、左右のシートフレームは、車体フレームから車両後方へ延ばされ乗員が座るシートを支える左右のシートレール及びこれらの左右のシートレールよりも下方にて車体フレームから車両後方斜め上方へ延ばされ後部で左右のシートレールに接続される左右のリヤサブパイプとからなり、シートレールにリヤサブパイプの後部が合流する合流箇所より車両後方で且つ合流箇所の近傍位置に、盗難対策装置ステイが配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、アンダカバーは、リヤフェンダと一体成形されている。
すなわち、リヤフェンダとアンダカバーとを一体成形した一部品とすることで、別部品(アンダカバー)の調達が不要になった。すなわち、リヤフェンダとアンダカバーとを別部品にした場合に較べて、部品点数が減らせる。加えて、組付け工数を減らすことができる。
結果、本発明によれば、車両のコストアップを抑えつつ車両後部の車幅方向側方に盗難対策装置を配置する技術が提供される。
【0017】
請求項2に係る発明では、リヤフェンダの各部をシートフレームへ取付けた。嵩張る形状のリヤフェンダをシートフレームにしっかりと固定することができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、シートフレームに取付けられるサイドカバーで、リヤフェンダに備えられているアンダカバーの外端部を補強するようにした。シートフレームから車幅方向左右に延びているアンダカバーの左右端部は、支持する部材が設けられていないため、高さ方向上下に変形し易い。
この点、本発明では、サイドカバーでアンダカバーの端部を補強したので、アンダーカバの端部に生じやすい上下の変形を抑えることができる。
【0019】
請求項4に係る発明では、アンダカバーにサイドカバーの下部が締結される。すなわち、サイドカバーの下部は、アンダカバーに締結される。サイドカバーは、シートフレームに加えて、その下部アンダカバーに締結されているので、サイドカバーに生ずる振動やリヤフェンダに生ずる振動を低く抑えることができる。
【0020】
請求項5に係る発明では、シートフレームに盗難対策装置を支える盗難対策装置ステイが設けられている。
盗難対策装置を支える盗難対策装置ステーは、シートフレーム又は車体フレームに設けることができる。リヤフェンダに一体形成されたアンダカバーの上方に盗難対策装置が配置される。結果、盗難対策装置はリヤフェンダの近傍に配置される。
車体フレームよりも盗難対策装置の近くにあるシートフレームに盗難対策装置ステーを設けることで、盗難対策装置ステーは短くなり、盗難対策装置の小型化・軽量化が図れる。
【0021】
また、盗難対策装置ステイによって支持される盗難対策装置は、アンダカバーを取り外したときに、そのまま残るので、アンダカバーを取り外した状態で、盗難対策装置のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0022】
請求項6に係る発明では、リヤフェンダに、盗難対策装置が装着される盗難対策装置ステイが一体形成されている。別体で設けられている盗難対策装置ステイをリヤフェンダに一体化することで部品点数の一層の削減が図れる。
【0023】
請求項7に係る発明では、盗難対策装置ステイは、合流箇所より車両後方で且つ合流箇所の近傍位置に配置される。
仮に、盗難対策ステイが合流箇所よりも車両前方側に取付けられると、車体フレームから車両後方斜め上方へ延びるリヤサブパイプが、盗難対策装置から延びるハーネス等の配設の邪魔になることがある。
【0024】
この点、本発明では、盗難対策装置ステイは、合流箇所の車両後方に配置される。このような位置であれば、リヤサブパイプが、盗難対策装置から延びるハーネス等の配設の邪魔になり難い。加えて、合流箇所の近傍に盗難対策装置ステイを配置したので、盗難対策装置ステイの強度確保が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る自動二輪車の左側面図である。
【図2】本発明に係る自動二輪車の車体後部の分解斜視図である。
【図3】図1の要部拡大図である。
【図4】図3の4矢視図である。
【図5】図4の5−5線断面図である。
【図6】図4の6−6線断面図である。
【図7】図4の7−7線断面図である。
【図8】盗難対策装置の構成を説明するブロック図である。
【図9】図2の別実施例図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図中及び実施例において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」は、各々、自動二輪車に乗車する運転者から見た方向を示す。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0027】
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、自動二輪車10は、車体フレーム11にエンジン12が懸架され、このエンジン12の前方に前輪13を備え、エンジン12の後方に後輪14を備え、前輪13と後輪14の間に乗員が座るシート15を備え、このシート15に乗員が跨って座る形態の鞍乗り型車両である。
【0028】
車体フレーム11は、前輪13を支えるフロントフォーク17を操向自在に支持するヘッドパイプ21と、このヘッドパイプ21から車両後方へ延びているメインフレーム22と、このメインフレーム22の後端から下方に延びているピボットフレーム23と、メインフレーム22の下方にてヘッドパイプ21から斜め下後方へ延びているダウンフレーム24と、このダウンフレーム24の先端からダウンフレーム24と同じ向きに斜め下後方へ延びた後水平に延びピボットフレーム23の下端に接続されるアンダフレーム25とを主要素とする。
車体フレーム11の後部から車両後方へシート15を支える左のシートフレーム27Lが延び、ヘッドパイプ21の上方でフロントフォーク17に操向ハンドル31が取付けられる。
【0029】
ピボットフレーム23の下部に車幅方向にピボット軸33が延びており、このピボット軸33にスイングアーム34が揺動自在に取付けられている。スイングアーム34は、車両後方へ延びており、このスイングアームの後端35に後輪14が軸支される。スイングアーム34にリンク機構36を介してリヤクッションユニット37の下端37bが取付けられ、メインフレーム22の後端にリヤクッションユニット37の上端37aが取付けられている。
【0030】
エンジン12は、メインフレーム22と、ダウンフレーム24と、アンダフレーム25と、ピボットフレーム23とに囲まれた領域に配置される。エンジン12は、車幅方向に延びるクランク軸41をもつV型2気筒エンジンであり、クランク軸41を内蔵するクランクケース42から車両斜め前上方に前傾する前シリンダ43と、クランクケース42から車両斜め後上方に後傾する後シリンダ44とを有する。
【0031】
前シリンダ43と後シリンダ44の間に所定量の混合気を供給するスロットルボデイ45が設けられ、このスロットルボデイ45の上方にてスロットルボデイ45にエアを濾過するエレメントが内蔵されるエアクリーナボックス46が接続される。シート15の下方に燃料タンク47が設けられている。
【0032】
次に排気管及び消音器の配置構造等について説明する。
前シリンダ43に排気ガスを導く前排気管51が接続され、後シリンダ44に排気ガスを導く後排気管52が接続される。前排気管51及び後排気管52は、クランクケース42の後部下方に設けた集合管53で合体され、この後排気管53から車両斜め上後方へ延びる消音器54に接続される。
【0033】
次に、車体を覆うカバー類について説明する。
ヘッドパイプ21の前方位置にてヘッドパイプ21にフロントカウル61が設けられ、このフロントカウル61の下部に連続して車両後方へ延びるサイドカウル62が設けられ、このサイドカウル62の下方にてエンジン12のクランクケース42の前方及び下方を覆うアンダカウル63が設けられている。
【0034】
前輪13の上方位置にてフロントフォーク17に、車両前部に前輪13から飛散した泥・水・埃をよけるフロントフェンダ67が取付けられ、後輪14の上方位置にてシートフレーム27に、シート15下の空間に後輪14からの泥・水・埃が及ぶことを防止するリヤフェンダ68が取付けられる。
消音器54が配置される側と反対側の車幅方向左側にて、左のシートフレーム27Lに盗難対策装置70が取付けられている。盗難対策装置70は、車両の位置情報を測定しこの位置情報を無線送信するものである。
なお、本実施例では、消音器を車幅右側に配置し盗難対策装置を車幅左側に配置したが、消音器を車幅左側に配置し盗難対策装置を車幅右側に配置することは差しつかえない。
【0035】
次に、盗難対策装置が配置されている車両後部の構造について説明する。
図2に示すように、車体フレーム(図1、符号11)から車両後方へ、車幅方向左右に左右のシートフレーム27L、27Rが延びている。左右のシートフレーム27L、27Rは、各々、メインフレーム(図1、符号22)の後端から車両後方へ略水平に延びて乗員が座るシート(図1、符号15)を支える左右のシートレール28L、28Rと、ピボットフレーム23の下部から車両斜め後上方へ延びて左右のシートレール28L、28Rの後部に接続される左右のリヤサブパイプ29L、29Rとからなる。
【0036】
左右のシートフレーム27L、27Rに下方からリヤフェンダサブ69とリヤフェンダセンタ(以下、単に、「リヤフェンダ68」という。)とをこの順に取付ける。左のシートフレーム27Lに板状の盗難対策装置ステイ73を固着し、この盗難対策装置ステイ73に、トレー部材74を介して盗難対策装置70が取付ける。トレー部材74は、ボルト79、79により盗難対策装置ステイ73に締結される。トレー部材74の輪郭部には、盗難対策装置70が装着される第1突設部87〜第3突設部89が設けられている。
【0037】
次に、リヤフェンダ68の車幅方向左右外方からシートレール28L、28Rへ左右のサイドカバー71L、71Rが取付けられ、サイドカバーの下部71Lbは、リヤフェンダ68が有するアンダカバー98に取付けられる。
【0038】
盗難対策装置83は、外側が箱状のケース体82で覆われている。このケース体82の周囲は、盗難対策装置83に加わる振動等を緩和する弾性部材83によって縦横に囲われ、この弾性部材83にケース体82の側面から外方に突出するように第1凸部84〜第3凸部86が設けられている。これらの第1凸部84〜第3凸部86に、第1突設部87〜第3突設部89が各々係合可能な位置にて高さ方向上下に第1係合穴91〜第3係合穴93(図手前側の符号92、93のみ示す。)が設けられている。
【0039】
前述のように、トレー部材74の底板75から上方に突設する第1突設部87〜第3突設部89が延ばされており、これらの第1突設部87〜第3突設部89に、ケース体82を囲うように保持する弾性部材の第1係合穴91〜第3係合穴93を各々差し込むことで、盗難対策装置83をトレー部材74に取付けるようにした。かかる構成により、振動等から盗難対策装置83を保護することができると共に、盗難対策装置83の着脱が容易に行えるようになり、盗難対策装置83のメンテナンス性が高まる。
【0040】
次に、シートフレーム周辺の配置構造等について説明する。
図3及び図4に示すように、車幅方向左側に盗難対策装置が装着されるトレー部材74が配置される。トレー部材74は、左のシートフレーム27Lに取付けられている。車幅方向右側に消音器54が配置されている。消音器54は、右のシートフレーム27Rに取付けられている。
【0041】
リヤフェンダ68は、後輪(図1、符号14)の上方を覆う天井部96と、天井部96の左右端から下方へ延びる左右の縦壁97L、97Rと、左の縦壁97Lから水平方向外方へ延びるアンダカバー98とを主要素とする。
【0042】
このように、アンダカバー98は、リヤフェンダ68に一体成形されると共に、下方から盗難対策装置70を覆う位置に設けられている。アンダカバー98は、リヤフェンダ68に含まれる。リヤフェンダ68にアンダカバー98を設けたので、盗難対策装置70への外部からのいたずらを防ぎつつ後輪(図1、符号14)からの泥・水・埃の直撃を防ぐことができる。
なお、アンダカバー98は、盗難対策装置70が設けられていない側の車幅方向右側には設けられていない。
【0043】
リヤフェンダ68の車両前方に連続するようにして設けられているリヤフェンダサブ69は、天井部101と、この天井部101の左右端から下方へ延びる左右の縦壁102L、102Rとを主要素とする。
【0044】
次に、リヤフェンダのシートフレームへの取付構造等について説明する。
図2にて、リヤフェンダ68の前端部の取付構造について説明すると、左右のシートフレーム27L、27Rに、各々、左右の第1ステー105L、105Rが設けられ、左右の第1ステー105L、105Rに下方からリヤフェンダサブの天井部101をセットし、リヤフェンダサブの天井部101の下方からリヤフェンダの天井部96をセットし、第1締結部材111a、111bでリヤフェンダサブ69とリヤフェンダ68とを左右のシートフレーム27L、27Rへ共締めする。
【0045】
次に、リヤフェンダ68の車幅方向左側の取付構造について説明する。
左のシートフレーム27Lの構成要素である左のリヤサブパイプ29Lの下面に前後のステー116、117が溶接され、前後のステー116、117へ、アンダカバー98から上方へ前後のリブ118、119が延ばされ、下方から第2締結部材112、112でリヤフェンダ68を左のリヤサブパイプ29Lへ締結する。
【0046】
リヤフェンダ68の車幅方向右側の取付構造について説明すると、右のシートフレーム27の構成要素である右のリヤサブパイプ29Rの下面に後のナット117が溶接され、後のナット117へ右縦壁(図4、符号97R)の端部(図4、符号99)に設けた座部100へ、下方から第3締結部材113でリヤフェンダ68を右のリヤサブパイプ29Rへ締結するようにした。
【0047】
図2及び図4にて、リヤフェンダ68は、後輪(図1、符号14)の上方を覆う天井部96と、この天井部の左右端96a、96bから下方へ延びる左右の縦壁97L、97Rと、他方(左側)の縦壁97Lから水平方向外方へ延びて盗難対策装置70を下方から覆うアンダカバー98とからなり、天井部の左右95a、95bと、一方(右側)の縦壁の端部99と、他方(左側)の縦壁97Lから車幅方向外方へ延びるアンダカバー98とは、シートフレーム27L、27Rに取付けられている。
リヤフェンダ68の各部をシートフレーム27L、27Rへ取付けることで、嵩張る形状のリヤフェンダ68をシートフレーム27L、27Rにしっかりと固定することができる。
【0048】
次に、左右のサイドカバー71L、71Rの車両10への締結構造については、前述したように、左右のサイドカバー71L、71Rの上部にて左右のシートレール28L、28Rへ締結されている。
また、リヤフェンダ68の車幅方向左側に配置されるアンダカバー98について、詳細には、締結孔を有する前後のサブリブ121、122が設けられ、左サイドカバーの内面(図6、符号123)にて、各々、前後のサブリブ121、122に合う位置に前後の脚部125、126が設けられ、前後の脚部125、126を前後のサブリブ121、122へ当接し、下方から第4締結部材114、114で左のサイドカバー71Lをリヤフェンダ68のアンダカバー98へ締結するようにした。
【0049】
図4にて、左右のシートフレーム27L、27Rに、リヤフェンダ68が取付けられ、左右のシートフレームのうちの一方(右側)のシートフレーム27Rに消音器54が取付けられ、左右のシートフレームのうちの他方(左側)のシートフレーム27Lよりも車幅方向外側にて左のシートフレーム27Lに、車両の位置情報を測定しこの位置情報を無線送信する盗難対策装置70が装着されるトレー部材74が取付けられている。
【0050】
図3にて、盗難対策装置ステイ73は、左のシートレール28Lにリヤサブパイプの後部131が合流する合流箇所132より車両後方で且つ合流箇所132の近傍位置に配置される。
仮に、盗難対策ステイが合流箇所132よりも車両前方側に取付けられると、車体フレーム11から車両後方斜め上方へ延びるリヤサブパイプ29Lが、盗難対策装置(図1、符号70)から延びるハーネス等の配設の邪魔になることがある。
【0051】
この点、本発明では、盗難対策装置ステイ73は、合流箇所132の車両後方に配置される。このような合流箇所132の後方位置に盗難対策装置ステイ73を取付けたので、盗難対策装置ステイ73の強度確保が容易になる上に、リヤサブパイプ29Lが、盗難対策装置70から延びるハーネス(図2、符号135)等の配設の邪魔になり難い。
なお、盗難対策装置をリヤフェンダ又は車体フレームに取付けることは差し支えない。
【0052】
図5に示すように、シートフレーム27Lにアンダカバー98と別体で盗難対策装置ステイ73が取付けられ、この盗難対策装置ステイ73に盗難対策装置70が取付けられる。
アンダカバー98は、他方(左側)のシートフレーム27Lの下方を通って車幅方向外方へ延びており、このアンダカバー98に、リヤフェンダ68の側方を覆う左のサイドカバー71Lが締結される。アンダカバー98の車幅方向外端部133に、下からサイドカバー71Lの一部を当てることで、外端部133を補強するようにした。
【0053】
リヤフェンダ68に取付けられているサイドカバー71Lで、リヤフェンダ68が有するアンダカバーの外端部133を補強するようにした。シートフレーム27から車幅方向左に延びているアンダカバーの左端部133は、シートフレーム27の他、支持する部材が設けられていないため、高さ方向上下に変形し易い。
この点、本発明では、左のサイドカバー71Lでアンダカバーの左端部133を補強したので、アンダーカバの左端部133に生じやすい上下の変形を抑えることができる。
【0054】
図6に示すように、アンダカバーの上面134から上方に前サブリブ121が凸設され、この前サブリブ121に左のサイドカバー71Lの前脚部125が当接され、下方から、第4締結部材114が締結されている。
このように、前脚部125を前サブリブ121へ当て、第4締結部材114でアンダカバー98へサイドカバー71Lを結合させたので、サイドカバー71Lに生ずる振動やリヤフェンダ68に生ずる振動を低く抑えることができる。
さらに、アンダカバー98の外端部133に第4締結部材114が近接して設けられるので、アンダカバー98の外端部133をサイドカバー71Lで確実に保持させることができる。
【0055】
次に、サイドカバーのリヤフェンダに設けた壁部への締結構造について説明する。
図7に示すように、アンダカバー98の車幅方向外端部133に壁部141を立て、この壁部141にもサイドカバー71Lをねじ142を介して締結するようにした。
アンダカバーの外端部133に加えて壁部141にてサイドカバー71Lをアンダカバー98へ締結するようにしたので、サイドカバー71Lに生ずる振動やリヤフェンダ68に生ずる振動を低く抑えることができる。
【0056】
次に、自動二輪車に搭載されている盗難対策装置及びその関連部分のブロック図について説明する。
図8に示すように、盗難対策装置70は、自動二輪車10の車体に加えられた振動を検知する加速度センサ151と、複数の人工衛星から軌道情報を受信することにより車両の現在位置を検出する全地球測位システム(Global Positioning System)152と、加速度センサ151からの加速度信号SA及び全地球測位システム152からの位置情報JPを受けて盗難対策を指令する制御部153と、制御部153からの交信指令SCに基づいて携帯電話基地局154へ位置情報JPを送信する携帯電話通信部155と、制御部153からのエンジン制御信号SECに基づきエンジン12の点火装置156に点火停止信号SSSを送って点火装置156の作動を停止させる、すなわち、エンジン12を停止させるエンジン制御部157と、制御部153からの警報制御信号SACに基づき警報装置158(ヘッドライト、ウインカ等の灯火器、ホーンに警報信号SAを送って灯火器、ホーンを作動させる警報発生部161と、内部電源162とからなる。内部電源162としては、例えば、リチウム電池が利用される。
【0057】
以上に述べた盗難対策装置が備えられている自動二輪車の作用を次に述べる。
図6にて、リヤフェンダ68とアンダカバー98とは一体成形されている。
リヤフェンダ68とアンダカバー98とを一体成形し一部品としたので、リヤフェンダ68とアンダカバー98とを別部品にした場合に較べて、部品点数が減らせる。加えて、組付け工数を減らすことができる。
結果、本発明によれば、車両のコストアップを抑えつつ車両後部の車幅方向側方に盗難対策装置70を配置する技術が提供される。
【0058】
図2にて、シートフレーム27に盗難対策装置70を支える盗難対策装置ステイ73が設けられている。
本発明では、アンダカバー98と別体で盗難対策装置ステイ73を設けたので、盗難対策装置ステイ73の強度確保が容易に行える。
【0059】
また、盗難対策装置ステイ73によって支持される盗難対策装置70は、アンダカバー98を取り外してもそのまま残るので、アンダカバー98を取り外したときに、盗難対策装置70のメンテナンスを容易に行うことができる。
【実施例2】
【0060】
次に、実施例2を図面に基づいて説明する。
図9に示すように、リヤフェンダ68において、左の縦壁97Lから車幅方向外方へ略水平に延びているアンダカバー98の上面から上方へ、実施例1のトレー部材の構成要素である第1突設部87〜第3突設部89が一体的に延ばされる。すなわち、リヤフェンダ68に、盗難対策装置70が装着されるトレー部材74及び盗難対策装置ステイ73が一体形成される。実施例2では、リヤフェンダ68に、トレー部材74及び盗難対策装置ステイ73が含まれている。
【0061】
そして、トレー部材74の第1突設部87〜第3突設部89に、盗難対策装置70を縦横に囲う弾性部材83の第1係合穴91〜第3係合穴93を係合するようにした。
別体で設けられている盗難対策装置ステイ73をリヤフェンダ68に一体化することで部品点数の一層の削減が図れる。
【0062】
盗難対策装置ステイ73とその近傍に配置されるトレー部材74は、左のシートレール28Lにリヤサブパイプの後部131が合流する合流箇所132より車両後方で且つ合流箇所132の近傍位置に配置される。
合流箇所132の後方位置に盗難対策装置ステイ73及びトレー部材74を取付けたので、リヤサブパイプ29Lが、盗難対策装置70から延びるハーネス(図2、符号135)等の配設の邪魔になり難くすることができる。
【0063】
なお、上述した盗難対策装置ステー及びトレー部材がリヤフェンダに一体化される点以外のリヤフェンダ、サイドカバーのシートフレームへの取付構造については、実施例1と大きく異なるところはなく説明を省略する。
【0064】
尚、本発明は、実施の形態では自動二輪車に適用したが、三輪車にも適用可能であり、一般の車両に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、盗難対策装置が備えられている自動二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0066】
10…自動二輪車、11…車体フレーム、14…後輪、15…シート、27L、27R…左右のシートフレーム、28L、28R…左右のシートレール、29L、29R…左右のリヤサブパイプ、54…消音器、68…リヤフェンダ、70…盗難対策装置、71L…サイドカバー、73…盗難対策装置ステイ、95a、95b…天井部の左右、96a、96b…天井部の左右端、98…アンダカバー、132…合流箇所、133…アンダカバーの車幅方向外端部、141…壁部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(11)と、この車体フレーム(11)から車両後方へ延ばされ乗員が座るシート(15)を支える左右のシートフレーム(27L、27R)と、これらの左右のシートフレーム(27L、27R)のうちのいずれか一方のシートフレーム(27R)に取付けられる消音器(54)と、前記左右のシートフレーム(27L、27R)に取付けられ前記シート(15)下の空間に後輪(14)からの泥・水・埃が及ぶことを防止するリヤフェンダ(68)とが備えられている自動二輪車において、
前記左右のシートフレーム(27L、27R)のうちの他方のシートフレーム(27L)よりも車幅方向外側にて、前記リヤフェンダ(68)、前記シートフレーム(27L)又は前記車体フレーム(11)に、車両の位置情報を測定しこの位置情報を無線送信する盗難対策装置(70)が取付けられ、
この盗難対策装置(70)は、外部からのいたずらを防ぎつつ前記後輪(14)からの泥・水・埃の直撃を防ぐアンダカバー(98)で覆われ、このアンダカバー(98)は、前記リヤフェンダ(68)に一体成形されていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
前記リヤフェンダ(68)は、前記後輪(14)の上方を覆う天井部(96)と、この天井部の左右端(96a、96b)から下方へ延びる左右の縦壁(97L、97R)と、他方の縦壁(97L)から水平方向外方へ延びて前記盗難対策装置(70)を下方から覆うアンダカバー(98)とからなり、天井部の左右(95a、95b)と、一方の縦壁の端部(99)と、他方の縦壁(97L)から延びる前記アンダカバー(98)とは、前記シートフレーム(27L、27R)に取付けられていることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記アンダカバー(98)は、前記他方のシートフレーム(27L)の下方を通って車幅方向外方へ延びており、このアンダカバー(98)に、前記リヤフェンダ(68)の側方を覆うサイドカバー(71L)が設けられ、このサイドカバー(71L)は、前記シートフレーム(27L)に取付けられ、
前記アンダカバー(98)の車幅方向外端部(133)に、下から前記サイドカバー(71L)の一部を当てることで、前記外端部(133)を補強するようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の自動二輪車。
【請求項4】
前記アンダカバー(98)に、前記サイドカバー(71L)の下部が締結されることを特徴とする請求項3記載の自動二輪車。
【請求項5】
前記シートフレーム(27L)に、前記盗難対策装置(70)を支える盗難対策装置ステイ(73)が設けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の自動二輪車。
【請求項6】
前記リヤフェンダ(68)に、前記盗難対策装置(70)が装着される前記盗難対策装置ステイ(73)が一体形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の自動二輪車。
【請求項7】
前記左右のシートフレーム(27L、27R)は、前記車体フレーム(11)から車両後方へ延ばされ乗員が座る前記シート(15)を支える左右のシートレール(28L、28R)及びこれらの左右のシートレール(28L、28R)よりも下方にて車体フレーム(11)から車両後方斜め上方へ延ばされ後部で左右のシートレール(28L、28R)に接続される左右のリヤサブパイプ(29L、29R)とからなり、
前記シートレール(28L)に前記リヤサブパイプ(29L)の後部が合流する合流箇所(132)より車両後方で且つ前記合流箇所(132)の近傍位置に、前記盗難対策装置ステイ(73)が配置されることを特徴とする請求項5又は請求項6記載の自動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−71675(P2013−71675A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213301(P2011−213301)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)