説明

自動二輪車

【課題】自動二輪車用アンテナの耐久性を向上させる。
【解決手段】自動二輪車1は、ヘッドランプ19と、前記ヘッドランプ19の上方に配置された無線通信用のアンテナ22と、を備えている。車体には、前記ヘッドランプ19と前記アンテナ22との間に走行風を通過させる開口が形成されている。これによって、開口からの走行風がヘッドランプ19上を流れて、ヘッドランプ19からアンテナ22に熱が伝わることを防ぐことが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信用のアンテナを取り付け可能な自動二輪車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ETC(登録商標)と略称される道路通行料自動徴収システムの車載機を自動二輪車に装備する場合、ハンドルにETCアンテナを取り付け、そのアンテナに接続される本体機をフロントカウルの外壁面等に固定していた。しかし、その場合にはアンテナ等が車体外部に露出するため、外観が良くないという問題がある。そこで、特許文献1に開示された自動二輪車では、樹脂製のフロントカバー内のヘッドライトの上にアンテナを配置し、外観を良好に保つことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4156783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された自動二輪車では、発熱源であるヘッドランプの上にアンテナが設置されているため、運転状態においてアンテナは高温環境下に置かれることとなり、アンテナの耐久性が低下することとなる。
【0005】
そこで本発明は、アンテナの耐久性を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自動二輪車は、ヘッドランプと、前記ヘッドランプの上方に配置された無線通信用のアンテナと、を備え、車体には、前記アンテナと前記ヘッドランプとの間に走行風を通過させる開口が形成されていることを特徴とする。
【0007】
前記構成によれば、アンテナがヘッドランプよりも上方に配置され、かつ、開口により走行風がヘッドランプ上を流れるので、ヘッドランプからの熱がアンテナに及びにくくなり、アンテナの耐久性が向上する。
【0008】
前記アンテナが配置されるアンテナ配置空間は、後方に開放して形成されていてもよい。
【0009】
前記ヘッドランプと前記アンテナとの間には、金属板が配置されていてもよい。
【0010】
前記アンテナの上方において前記アンテナに対して左右方向にずれた位置にボルトが配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、アンテナの耐久性を向上させることできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る自動二輪車の右側面図である。
【図2】図1に示す自動二輪車のフロントカウル内を右側から見た要部断面図である。
【図3】図1に示す自動二輪車のフロントカウルに設置されたETCアンテナを右斜め後方から見た要部斜視図である。
【図4】変形例の図3相当の図面である。
【図5】図1に示す自動二輪車のメータユニット及びブラケットを示す図面である。
【図6】図1に示す自動二輪車のシートを取り外した状態でストレージ空間を左斜め後方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、自動二輪車に搭乗した運転者から見た方向を基準とする。
【0014】
図1は本発明の第1実施形態に係る自動二輪車1の右側面図である。図1に示すように、自動二輪車1は、略上下方向に設けられたフロントフォーク2を備え、このフロントフォーク2の下部には前輪3が回転自在に軸支されている。フロントフォーク2の上部には図示しないステアリングシャフトを介してステアリングハンドル4が取り付けられている。ステアリングシャフトはヘッドパイプ5によって回動自在に軸支されており、運転者がステアリングハンドル4を左右に揺動させることで前輪3が操舵される。ステアリングハンドル4の後方には燃料タンク6が設けられており、この燃料タンク6の後方に運転者騎乗用のシート7が設けられている。
【0015】
ヘッドパイプ5からはフレーム8が後方へ延びており、このフレーム8の後部には略前後方向に延びるスイングアーム9の前部が枢支されており、このスイングアーム9の後部に駆動輪である後輪10が回転自在に軸支されている。前輪3と後輪10の間では、エンジン12がフレーム8に支持されている。エンジン12の後方には、エンジン12の吸気ポート12aに接続されるスロットル装置13が設けられている。スロットル装置13の後方には、スロットル装置13へ供給されるエアを浄化するためのエアクリーナボックス14が設けられている。エアクリーナボックス14の後方かつシート7の下方には、リアフェンダ15により形成されたストレージ空間16が設けられている。エアクリーナボックス14及びリアフェンダ15の一部は、側方からサイドカバー17により覆われている。
【0016】
ステアリングハンドル4の前方には、メータユニット18が設けられている。メータユニット18の下方で且つフロントフォーク2の前方には、ヘッドランプ19が設けられている。そして、メータユニット18及びヘッドランプ19を覆うように合成樹脂からなるフロントカウル20が設けられている。このフロントカウル20は、メータユニット18及びヘッドランプ19を覆いエンジン12、排気管、車体フレーム等は露出させた状態とする、いわゆるビキニカウル型である。
【0017】
図2は図1に示す自動二輪車1のフロントカウル20内を右側から見た要部断面図である。図3は図1に示す自動二輪車1のフロントカウル20に設置されたETCアンテナ22を右斜め後方から見た要部斜視図である。図2に示すように、フロントカウル20には、ヘッドランプ19の投光面19aを露出させる開口部20aが形成されている。フロントカウル20は、その開口部20aの上縁部から前方に向けて膨出した膨出部20bを有している。膨出部20bは、開口部20aの上縁部から前方に向けて突出する突出壁部20cと、その突出壁部20cの前端から斜め上後方に向けて折り返し状に立設する傾斜壁部20bとを有している。傾斜壁部20bの上側には、透明板からなるウインドシールド24が金属部材であるボルトB1〜B3で固定されている。これらボルトB1〜B3は、フロントカウル20の左右方向の中央を除く位置に取り付けられている。つまり、ボルトB1〜B3は、例えば、ウインドシールド24の左右方向の両端部であって、左右方向中央から離れた位置に左右対称に設けられている。
【0018】
図2及び3に示すように、突出壁部20cの上面(内壁面)の左右方向の中央部には、突出壁部20cを補強し、かつ、アンテナ設置部20eの範囲を規定する一対のリブ20fが形成されている。一対のリブ20fの車体左右方向の間隔は、ETCアンテナ22またはステー21の車体左右方向の幅寸法と略同じ長さに形成される。一対のリブ20fは、前後方向に沿って延びるように互いに間隔をあけて略平行に形成されている。この一対のリブ20fで規定されたアンテナ設置部20eは、フロントカウル20で覆われた内部空間に面する位置において、ヘッドランプ19よりも上方かつ前方に配置されている。なお、本実施形態では、ヘッドランプ19の外面の少なくとも一部には金属メッキ(例えば、クロムメッキやアルミメッキなど)が施されている。
【0019】
アンテナ設置部20eには、折り返し状に(言い換えるとL字状に)屈曲した板状の取付部材である金属製のステー21が取り付けられる。ステー21は、固定板部21aと、その固定板部21aの前端から斜め上後方に向けて延びるよう傾斜したアンテナ取付板部21bとを有している。そして、アンテナ設置部20eに対して固定板部21aが固定部材(例えば、両面テープ)により固定され、アンテナ取付板部21bの斜め上前方に向いた上面に略直方体状のETCアンテナ22が固定部材(例えば、両面テープ)により固定される。ステー21は、ヘッドランプ19側からETCアンテナ22を支持した金属板であり、ヘッドランプ19からETCアンテナ22に向かう電磁波を遮蔽することができる。
【0020】
ETCアンテナ22は、走行中にETCゲートの上方に設けられた路側アンテナ(図示せず)と電波の送受を良好に行うために、ETCアンテナ22の受信面を水平面Xから所定角度θ(例えば、10〜30°)進行方向に向けて前傾させて取り付けるのがよい。つまり、ETCアンテナ22の受信面を水平面Xに平行に配置した状態からETCアンテナ22の前端部を支点としてその後端部を上方に角変位させ、ETCアンテナ22を水平面Xに対して所定角度θ前傾させている。また、ETCアンテナ22から見て水平前方から上方に向けて所定角度φ(例えば、約80°)の範囲には、電波障害物が配置されないようにするのがよい。電波障害物は、例えば、金属部品、金属メッキ物、金属コート物などである。
【0021】
アンテナ設置部20eの上方はフロントカウル20の傾斜壁部20bにより覆われているので、アンテナ設置部20eにステー21を介して設置されたETCアンテナ22は、フロントカウル20により覆われることとなる。このように、フロントカウル20には、ETCアンテナ22を配置するための内部空間であるアンテナ配置空間23が形成されている。アンテナ配置空間23は、ヘッドランプ19上端部よりも上方であって、ヘッドランプ19の前端部となる投光面よりも前方に形成される。フロントカウル20の突出壁部20cと傾斜壁部20bとによって形成されるアンテナ配置空間23は、後方に開放して形成されている。
【0022】
アンテナ配置空間23にETCアンテナ22が配置された場合、ETCアンテナ22の下端部は、ヘッドランプ19の上端部よりも上方に位置し、ETCアンテナ22の後端部は、ヘッドランプ19の前端部よりも前方に配置されている。ETCアンテナ22の前端部とフロントカウル20とは、前後方向に所定寸法L1の隙間が形成される。例えば、隙間L1は、約60mmに設定されている。ETCアンテナ22の前後方向に沿う一辺の長さをL3とし、ETCアンテナ22の水平面からの傾斜角度をθとすると、ETCアンテナ22の突出壁部20cの前後方向寸法L2は、(L1+L3cosθ)よりも大きく設定されている。これによって、ETCアンテナ22がヘッドランプ19の直上に配置されることなく、アンテナ配置空間23に収めることができる。
【0023】
ETCアンテナ22の前端部には、ETC本体機34と接続するためのケーブル22aが形成されている。前述したように、フロントカウル20との間に所定の隙間L1が形成されることで、ケーブル22aの曲率半径が過剰に小さくなることを防ぐことができる。また、ケーブル22aは、突出壁部20c上に沿って延びることで、ケーブル22aのうちアンテナ22近傍の部分が振動することが防がれる。
【0024】
ステー21は、ETCアンテナ22を車体に位置決めする役割を果たす。ETCアンテナ22をステー21とを固定した状態で、ステー21の取り付け面をリブ20f,20fの間の突出壁部20cの後縁部にそろえて配置することで、ETCアンテナ22の取付角度を所定角度範囲内に容易に位置決めすることができる。たとえば、ETCアンテナ22は、進行方向を回転軸線とする左右の傾きを水平より±5°以内の角度範囲に収めることが好ましく、鉛直方向を回転軸線とする回転を進行方向に対して±5°以内の角度範囲に収めることが好ましい。また、ETCアンテナ22は、電波受信の観点から進行方向に対して上下±40°の範囲に金属部材(ボルトなど)が配置されていないことが好ましい。
【0025】
ウインドシールド24を固定するボルトB1〜B3は、フロントカウル20の左右方向の中央には取り付けられていないので、アンテナ設置部20eにステー21を介して取り付けられたETCアンテナ22の上方には、金属製のボルトが存在しない状態となっている。即ち、金属製のボルトB1〜B3は、アンテナ設置部20eの上方においてアンテナ設置部20eに対して左右方向にずれた位置に設けられている。アンテナ設置部20eは、車幅方向の中央に配置されており、左右のボルトB1〜B3は、車幅方向の中心から左右にずれた位置にそれぞれ配置されているが、多少オーバラップしてもよい。
【0026】
なお、ETCアンテナ22を支持するステーは図3の構成に限られず、たとえば図4に示すような構成であってもよい。図4は変形例の図3相当の図面である。図4に示すように、変形例のステー121は、ETCアンテナ22の設置角度を容易に調節できるようになっている。詳しくは、ステー121は、固定部材101と、可動部材102と、可動部材102を固定部材101に対して傾動可能に接続するピン103とを備えている。固定部材101は、底壁部101aと、底壁部101aの両側から垂直上方に突出する略三角形状の側壁部101bとを有している。
【0027】
可動部材102は、固定部材101の上下反転させた形状であり、上壁部102aと、上壁部102aの両側から垂直下方に突出する略三角形状の側壁部102bとを有している。固定部材101の側壁部101bと可動部材102の側壁部102bとは、互いに重ねられた状態で左右方向の軸線を有するピン103により軸支されている。よって、可動部材102は、固定部材102に対してピン103を支点として前後に傾動する。そして、固定部材101の底壁部101aがアンテナ設置部20eに固定部材(例えば、両面テープ等)により固定され、可動部材102の上壁部102aの上面にETCアンテナ22が固定部材(例えば、両面テープ)により固定される。
【0028】
図5は図1に示す自動二輪車1のメータユニット18及びブラケット25を示す図面である。図2及び5に示すように、フロントカウル20及びウインドシールド24で覆われた内部には、メータユニット18が配置されている。メータユニット18には、速度計41と回転数計42とが左右に並んで配置されている。速度計41と回転数計42との間には1つのインジケータ43が設けられ、右にある回転数計42の右側には、4つのインジケータ44が設けられている。これらのインジケータ43,44は、方向指示器の表示部やヘッドランプのハイビーム表示部やその他の表示部からなる点灯/点滅ランプを含んでいる。なお、左にある速度計41の左側にはインジケータは設けられていない。
【0029】
メータユニット18は、ブラケット25により支持されている。このブラケット25は、金属板や金属棒等が溶接等で接合されて一体化されたものであり、フロントカウル20及びヘッドランプ19も支持している。ブラケット25には、運転者から見て速度計41の下方に、板状のインジケータ取付台26が設けられている。このインジケータ取付台26には、ETCインジケータ27が固定部材(例えば、両面テープ)により固定されている。そのETCインジケータ27は、運転者に面する先端面に点灯/点滅ランプである表示部27aを有している。なお、ETCインジケータ27は、後述するETC本体機34にETCカードが差し込まれると緑色に点灯し、ETCカードが差し込まれていないと赤色に点灯し、ETCゲート通過時に緑色が点滅するようになっている。
【0030】
また、メータユニット18の周囲には、メータユニット18の輪郭に沿った開口部28aを有する樹脂製のカバー部材28が設けられている。このカバー部材28は、ETCインジケータ27を上から覆う領域に設けられ、ETCインジケータ27の表示部27aを露出させる窓部28bを有している。このような構成によれば、メータユニット18の右側に多数のインジケータ44が集中している一方で、ETCインジケータ27は左側に配置されているので、運転者は、ETCインジケータ27を他のインジケータ44と区別して視認し易くなる。
【0031】
図6は図1に示す自動二輪車1のシート7を取り外した状態でストレージ空間を左斜め後方から見た斜視図である。図6に示すように、シート7(図1参照)の下方には、リアフェンダ15で囲まれたストレージ空間16が設けられている。燃料タンク6の後端部には被係止穴6aが設けられ、かつ、リアフェンダ15の後方のフレーム32にも被係止穴33が設けられており、シート7(図1参照)の係止突起(図示せず)がそれら被係止穴6a,33に挿入係止されることで、シート7(図1参照)が車体に着脱可能にロック固定されてストレージ空間16が閉鎖される。
【0032】
リアフェンダ15は、底壁部15aと、底壁部15aの両側端から上方に突出する一対の側壁部15bと、底壁部15a及び側壁部15bの後端に連続して後輪10(図1参照)の外形に沿うように底壁部15aの後端から斜め上後方に向ってアーチ状に延びる円弧状後壁部15cとを有している。そのリアフェンダ15は、前方開口部15dを有している。つまり、リアフェンダ15は、前壁上方が開放された形状である。その前方開口部15dに前方から対向するようにエアクリーナボックス14が配置されている。エアクリーナボックス14は、内部にエアクリーナエレメント(図示せず)が収容された本体部14aと、本体部14aの後方開口を閉鎖してストレージ空間16に面する板状蓋部14bと、板状蓋部14bを本体部14aに固定するボルトB4とを有している。この板状蓋部14bの後壁面14cは、その法線が後方に向く略鉛直な面であり、ストレージ空間16の前壁面を兼ねている。なお、エアクリーナボックス14のエア入口及びエア出口(図示せず)は、本体部14aの前壁及び側壁に設けられている。
【0033】
エアクリーナボックス14の板状蓋部14bの後壁面14cは、ETC本体機34を設置するための本体機設置部(以下、符号14cは「本体機設置部」とも称す)となっている。具体的には、本体機設置部14cに、ウレタン等からなる板状の振動吸収パッド30を固定部材(例えば、両面テープ)により固定し、その振動吸収パッド30の後面にETC本体機34を固定部材(例えば、両面テープ)により固定する。
【0034】
ETC本体機34には、下端部で回動可能に支持された蓋部34aがストレージ空間16側に設けられており、その蓋部34を開閉することでETCカード(図示せず)が差し込めるようになっている。ETC本体機34は、ETCアンテナ22、ETCインジケータ27及びバッテリー(図示せず)と電気的に接続されており、ETCカード(図示せず)が差し込まれた状態で使用される。そして、ETC本体機34は、バッテリー(図示せず)からの電力を利用して、ETCカード(図示せず)の認識処理や、ETCアンテナ22で外部と無線通信される信号の処理等を行い、処理内容に関する表示情報をETCインジケータ27(図5参照)に出力する。
【0035】
以上に説明した構成によれば、アンテナ設置部20eが、ヘッドランプ19よりも上方かつ前方に配置されているので、ヘッドランプ19からの熱がETCアンテナ22に及びにくくなり、ETCアンテナ22の耐久性が向上する。また、アンテナ設置部20eは、フロントカウル20の内部空間に面する位置に設けられているので、自動二輪車1の外観が良好に保たれる。さらに、ヘッドランプ19はアンテナ設置部20eの直下にないので、ヘッドランプ19からの電磁的影響がアンテナ設置部20eに取り付けられたETCアンテナ22に及びにくく、ETCアンテナ22の通信信頼性も向上する。
【0036】
また、フロントカウル20の前方に向けて突出する膨出部20bは走行風で冷却され、その内部に設置されるETCアンテナ22の温度上昇は抑制されるので、ETCアンテナ22の耐久性をより向上させることができる。また、アンテナ設置部20eが設けられる膨出部20bは、開口部20aの上縁部から前方に突出しているので、その内部に設置されるETCアンテナ22と他部品との干渉も回避することができる。さらに、補強用のリブ20fがETCアンテナ22を支持するステー21の設置箇所の目印の役目も兼ねているため、ユーザ又はディーラ等により後付け作業が行われる場合であっても、ステー21及びETCアンテナ22を正しい位置に容易に取り付けることができる。また、フロントカウル20にウインドシールド24を固定するボルトB1〜B3は、アンテナ設置部20eの上方を避ける位置に設けられているので、金属からなるボルトB1〜B3はETCアンテナ20が受信する電波の障害物とならず、良好な電波環境を確保することができる。
【0037】
さらに、ETC本体機34が収容されるストレージ空間16を閉鎖するシート7が車体に着脱可能にロック固定されるので、ETC本体機34を盗難から守るロック装置を専用に設けずに済む。また、本体機設置部14cは、ストレージ空間16に面する略鉛直な側壁面に設けられているので、底壁部15aや傾斜した円弧状後壁部15c等に設けられる場合に比べて、ストレージ空間16内の荷物が取り出しやすくなる。さらに、外部から取り込まれたエアが内部に流れるエアクリーナボックス14にETC本体機34が取り付けられているので、エアクリーナボックス14が放熱効果を発揮する。また、エアクリーナボックス14はストレージ空間16の前壁となる位置に設けられているので、エンジン12からの熱がエアクリーナボックス14によりETC本体機34に伝達されにくくなると共に、ETC本体機34のケーブルに余裕を与えることができる。よって、ETC本体機34の加熱を抑制することができる。さらに、ETC本体機34が取り付けられた板状蓋部14bは、ボルトB4を外すことで本体部14aから容易に離脱できるため、ETC本体機34のメンテナンス等も容易に行うことができる。
【0038】
なお、ETCアンテナ22を支持するステーを取り付けるアンテナ設置部は、前述した箇所に限定されず、ETCアンテナ22がヘッドランプ19の上方かつ前方に配置できるのであれば、メータユニット18やヘッドランプ19やウインドシールド24など又はそれらに接続された支持部材等に設けてもよい。あるいは、ステーを介さずに直接的にフロントカウル20にETCアンテナ22を取り付けてもよい。また、本実施形態のフロントカウル20はいわゆるビキニカウル型であるが、その他のタイプのカウルであってもよい。また、本実施形態のアンテナ設置部20eに設けられるアンテナはETC用のものであるが、他の無線通信用のアンテナ(例えば、GPS用アンテナ、携帯電話用アンテナ、車間通信用アンテナ、ブルートゥース(登録商標)用アンテナ、RFID用アンテナなど)であってもよい。
【0039】
また、フロントカウル20には、ETCアンテナ22とヘッドランプ19との間に走行風が通過するための開口が形成されていてもよい。これによって、開口からの走行風がヘッドランプ19上を流れることにより、ヘッドランプ19からETCアンテナ22に熱が伝わるのを防ぐことができる。また、ステー21の取付位置はリブ20fにより規定されているが、リブ以外の部分で取付位置が規定されてもよい。例えば、フロントカウル20の内面に柱状の凸部が形成されたり、ステー21が嵌まり込む凹部が形成されたり、ステー21の取付位置を示す表示が付されていてもよい。
【0040】
自動二輪車は、ヘッドランプと、前記ヘッドランプの投光面を露出させる開口部が設けられたフロントカウルとを備えた自動二輪車であって、前記フロントカウルは、前端から斜め上後方に向けて延びる傾斜壁部を有し、前記フロントカウルで覆われた内部空間であって前記傾斜壁部の内側に無線通信用のアンテナを設置するためのアンテナ設置部が設けられており、前記アンテナ設置部は、前記ヘッドランプよりも上方かつ前方に離れて配置され、前記アンテナ設置部には、前記アンテナが受信面を進行方向に向けて前傾させて取り付けられるとよい。
【0041】
前記構成によれば、アンテナ設置部が、ヘッドランプよりも上方かつ前方に配置されているので、ヘッドランプからの熱がアンテナに及びにくくなり、アンテナの耐久性が向上する。また、アンテナ設置部は、フロントカウルの内部空間に設けられているので、外観が良好に保たれる。さらに、ヘッドランプはアンテナ設置部の直下に配置される場合に比べて、ヘッドランプからの電磁的影響がアンテナ設置部に取り付けられたアンテナに及びにくくなり、アンテナの通信信頼性も向上する。
【0042】
前記フロントカウルは、前記開口部の上縁部から前方に向けて膨出した膨出部を有し、前記膨出部は、前記開口部の前記上縁部から前方に向けて突出する突出壁部と、前記突出壁部の前端から斜め上後方に向けて折り返し状に立設する前記傾斜壁部とを有し、前記アンテナ設置部は、前記膨出部の内壁面に設けられることで前記ヘッドランプよりも上方かつ前方に配置されており、前記突出壁部の下面は、車外に露出しているとよい。
【0043】
前記膨出部の内壁面に設けた前記アンテナ設置部には、前記アンテナを取り付けるためのステーが取り付けられているとよい。前記フロントカウルの内壁面には、前記ステーを位置決めするリブが形成されているとよい。前記フロントカウルには、前記アンテナと前記ヘッドランプとの間に走行風を通過させる開口が形成されているとよい。前記フロントカウルで覆われた内側にはメータユニットが配置され、前記メータユニットには、前記アンテナ用のインジケータの取付部が接続されているとよい。
【0044】
自動二輪車は、ヘッドランプと、前記ヘッドランプの投光面を露出させる開口部が設けられたフロントカウルとを備えた自動二輪車であって、前記フロントカウルは、前端から斜め上後方に向けて延びる傾斜壁部を有し、前記フロントカウルで覆われた内部空間であって前記傾斜壁部の内側に無線通信用のアンテナを設置するためのアンテナ設置部が設けられており、前記アンテナ設置部は、前記ヘッドランプよりも上方かつ前方に離れて配置され、前記アンテナ設置部には、前記アンテナが取り付けられ、前記フロントカウルには、前記アンテナと前記ヘッドランプとの間に走行風を通過させる開口が形成されているとよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明に係る自動二輪車は、アンテナの耐久性を向上させる優れた効果を有し、ETC等を搭載する自動二輪車に広く適用すると有益である。
【符号の説明】
【0046】
1 自動二輪車
7 シート
14 エアクリーナボックス
14c 後壁面(本体機設置部)
15 リアフェンダ
16 ストレージ空間
19 ヘッドランプ
19a 投光面
20 フロントカウル
20a 開口部
20b 膨出部
20e アンテナ設置部
20f リブ
22 アンテナ
24 ウインドシールド
30 振動吸収パッド
34 ETC本体機
B1〜B4 ボルト(金属部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドランプと、
前記ヘッドランプの上方に配置された無線通信用のアンテナと、を備え、
車体には、前記アンテナと前記ヘッドランプとの間に走行風を通過させる開口が形成されていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
前記アンテナが配置されるアンテナ配置空間は、後方に開放して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記ヘッドランプと前記アンテナとの間には、金属板が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動二輪車。
【請求項4】
前記アンテナの上方において前記アンテナに対して左右方向にずれた位置にボルトが配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−82446(P2013−82446A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−260574(P2012−260574)
【出願日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【分割の表示】特願2008−302267(P2008−302267)の分割
【原出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】