説明

自動二輪車

ピストンロッド22をシリンダ21の上側に位置するように上記車体フレームに連結し、該ピストンロッド2にこれの外周部を覆うようにカバー36を装着し、該カバー36の外側に中間ばね受け部材31及びカム(ばね特性切換え機構)30を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、後輪緩衝装置を備えた自動二輪車に関する。
【背景技術】
自動二輪車においては、後部乗員や荷物の積載による重量変化が生じた場合でも乗り心地や操縦安定性を確保できるようにした後輪緩衝装置を備える場合がある。
このような後輪緩衝装置として、従来、ピストンロッドが挿入されたシリンダに中間ばね受け部材を軸方向に移動可能に装着し、該中間ばね受け部材とピストンロッド側のばね受け座との間にメインコイルバネを配設するとともに、シリンダ側のばね受け座との間にサブコイルバネを配設して緩衝器を構成し、上記中間ばね受け部材をメイン,サブコイルバネの両方の組み合わせばね特性又はメインコイルバネだけの単独ばね特性の何れかが得られる状態に切り替える切換え機構を設けたものが提案されている(例えば、特許第3020178号参照)。
上記後輪緩衝装置では、運転者だけのときには上記組み合わせばね特性側に切り換え、二人乗りあるは重い荷物を積載したときには単独ばね特性側に切り替えるように構成されている。
ところで、上記特許文献に記載された装置では、上記シリンダがピストンロッドの上側に位置するように倒立配置されているので、シリンダとピストンロッドとの間のシール性を確保するためにバックアップスプリングを必要としている。このためコストが上昇するとともに、シール構造が複雑となるという懸念がある。このようなコスト上昇,シール構造の複雑化を回避するには、上記シリンダがピストンロッドの下側に位置するように正立配置することが有効である。
【発明の開示】
しかしながら、上記のような正立配置とした場合には、ばね特性切換え機構がダンパの下部に位置することから、後輪スプロケットやマフラ等に干渉するおそれがあり、切換え機構の配置スペースを確保し難く、設計の自由度が低いという問題がある。なお、ばね特性切換え機構や中間ばね受け部材をピストンロッド側に配置した場合、構造の如何によってはダンパのストローク量が規制されるという問題が生じる。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、正立配置を採用する場合に、切換え機構の配置スペースを確保でき、設計の自由度を向上できる自動二輪車を提供することを目標としている。
請求項1の発明は、シリンダ内に挿入されたピストンと、このピストンに一端が接続され、他端がシリンダの一端部から外方に突出されたピストンロッドとを有するダンパと、上記ピストンロッドの軸方向に移動可能に上記ダンパの径方向外側に設けられた中間ばね受け部材と、上記シリンダの他端部に設けられた第1ばね受け座と、この第1ばね受け座と上記中間ばね受け部材との間に設けられた第1ばねと、上記ピストンロッドの他端部に設けられた第2ばね受け座と、この第2ばね受け座と上記中間ばね受け部材との間に設けられた第2ばねと、上記中間ばね受け部材が上記ダンパに対して移動を許容される状態と、上記中間ばね受け部材が上記ダンパに対して移動を阻止される状態とを択一的に切り換えるばね特性切換え機構とを有する後輪緩衝装置を備え、上下揺動可能に車体フレームに支持されたリヤアームに上記シリンダの他端部が連結され、上記ピストンロッドの他端部が上記シリンダよりも上方に位置するように車体フレームに連結され、上記ピストンロッドの他端部を外側から覆うカバーが設けられ、該カバーの外側に上記中間ばね受け部材と上記ばね特性切換え機構とが配設されていることを特徴とする自動二輪車である。
請求項2の発明は、請求項1において、上記第2ばねのばね線径は上記第1ばねのばね線径より小さく設定されていることを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1又は2において、上記ばね特性切換え機構は、上記中間ばね受け部材の上記ダンパに対する移動を阻止するカムを備えていることを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項1ないし3の何れかにおいて、上記後輪緩衝装置は左,右一対設けられており、該一対の後輪緩衝装置は各々ばね特性切換え機構を備えており、該一対のばね特性切換え機構を操作する単一の操作部材が設けられていることを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項4において、上記操作部材は、シート下方の車体カバーの内側に配置されていることを特徴としている。
請求項6の発明は、請求項4において、上記操作部材は、操向ハンドル周辺に配置されていることを特徴としている。
請求項7の発明は、請求項4において、後席乗員用の可倒式のフートレストが設けられ、該フートレストと上記操作部材とは連動するよう連結されており、上記フートレストが使用状態に回動されたとき、上記ばね特性切換え機構は、上記中間ばね受け部材が上記ダンパに対して移動を阻止される状態に切り換えられるように構成されていることを特徴としている。
請求項8の発明は、請求項4ないし7の何れかにおいて、上記ばね特性切換機構は、上記中間ばね受け部材が上記ダンパに対して移動を許容される状態と、上記中間ばね受け部材が上記ダンパに対して移動を阻止される状態の、いずれの状態に切り換えられているかを表示する表示手段を備えていることを特徴としている。
請求項9の発明は、請求項4において、上記操作部材の操作を上記ばね特性切換え機構に伝達する操作力伝達部材が設けられ、該操作力伝達部材は、車体構成部品に挟まれる空間を通るように配置されていることを特徴としている。
請求項10の発明は、請求項4において、上記操作部材は、いずれか一方の後輪緩衝装置に設けられたばね特性切換え機構に一体的に取付けられていることを特徴としている。
請求項11の発明は、請求項9又は10において、上記操作力伝達部材は、上記各後輪懸架装置から後方又は前方に延出され、車体構成部品に挟まれる空間を通るように配置されていることを特徴としている。
請求項12の発明は、請求項9又は10において、上記一対の後輪緩衝装置は、上部ほど前側に位置するよう前傾状態に配置され、上記操作力伝達部材は、可撓性を有する線状部材で構成されるとともに上記各後輪緩衝装置から後方に向けて延出され、シートレールとシート底板とに挟まれた空間を通るように配索されていることを特徴としている。
請求項13の発明は、請求項12において、上記シート底板に、シートレールに向かって突出する前後一対の突出部が設けられ、上記操作力伝達部材は、前後−対の突出部の間又はこれらの近傍を通るように配索されていることを特徴としている。
請求項14の発明は、請求項9又は10において、上記一対の後輪緩衝装置は上部ほど前側に位置するよう前傾状態に配置され、上記操作力伝達部材は、可撓性を有する線状部材で構成されるとともに上記各後輪緩衝装置から前方に向けて延出され、シートレールとシート底板とに挟まれた空間を通るように配索されていることを特徴としている。
請求項15の発明は、請求項9において、上記操作力伝達部材は、アウタチューブ内にインナケーブルを相対移動可能に挿入してなるワイヤケーブルから構成され、該ワイヤケーブルは、その一端が一方のばね特性切換え機構に連結されるとともに、該ばね特性切換え機構から後方に延び、車体構成部品に挟まれる空間を通るように配置されていることを特徴としている。
請求項16の発明は、請求項1と同様の後輪緩衝装置を備え、上記ばね特性切換え機構を操作する操作部材が設けられ、該操作部材の操作を上記ばね特性切換え機構に伝達する操作力伝達部材が設けられ、該操作力伝達部材が、車体構成部品に挟まれる空間を通るように配置されていることを特徴とする自動二輪車である。
請求項17の発明は、請求項16において、上記後輪緩衝装置は左,右一対設けられており、該一対の後輪緩衝装置は各々ばね特性切換え機構を備えており、一対のばね特性切換え機構を操作する単一の操作部材が設けられていることを特徴としている。
請求項1の発明に係る自動二輪車では、ピストンロッドをシリンダの上側に位置するように配置し、ピストンロッドにこれの外周部を囲むようにカバーを装着し、該カバーの外側に中間ばね受け部材及び上記ばね特性切換え機構を配設したので、ダンパを正立配置する場合のばね特性切換え機構をピストンロッド側に配置することが可能となり、コスト上昇や構造の複雑化を招くことなく後輪スプロケット,マフラ等との干渉を防止できる。またシリンダを囲むように装着したカバーの外側に切換え機構及び中間ばね受け部材を配設したので、これらの部材がダンパのストローク量を規制するといった問題も生じない。
請求項2の発明では、第2ばねの線径を第1ばねより小さくしたので、第2ばねの外径の拡大を抑制でき、ダンパの上部をコンパクトにして車体レイアウト上の自由度を高めることができ、デザイン性を向上できる。また第2ばねの内側に上記切換え機構を配置することが可能となり、該切換え機構を配設する場合の装置全体の大型化を防止できる。
請求項3の発明では、ばね特性切換え機構を、中間ばね受け部材のダンパに対する移動を阻止するカムを備えたものとしたので、カムを回動させるだけの簡単な構造でかつ少ない部品点数でばね特性切換え機構を構成できるとともに、操作力の軽減が可能となる。即ち、上述の公報記載の装置では、カムを移動可能位置に付勢するばねと、該カムをばねの付勢力に抗して移動不能位置に規制するストッパとを備えており、部品点数が増えるという問題がある。またカムを移動不能位置に回動させる際に上記ばねを圧縮する必要があり、それだけ操作力が大きくなるという問題がある。
請求項4の発明では、車体フレームの左,右側部に配設された各後輪緩衝装置のばね特性切換え機構を1つの操作部材で切換え操作するようにしたので、各切換え機構のそれぞれに操作部材を配置する場合に比べて部品点数を低減できるとともに、切り換え操作を簡単に行なうことができる。
また上記操作部材を操作力伝達部材を介して切換え機構に連結したので、操作部材を後輪緩衝装置から離れた位置に配置することができ、配置位置における自由度を高めることができる。
請求項5の発明では、操作部材をシート下方の車体カバーの内側に配置したので、操作部材が外方に露出せず、外観を向上できるとともに、乗車状態や走行状態での切り換え操作を防止できる。
請求項6の発明では、操作部材を操向ハンドル周辺に配置したので、切り換え操作を容易に行なうことができ、また操作部材が外部から見えることから商品性をアピールすることができる。
請求項7の発明では、後席乗員用フートレストの操作に連動して切り換え操作が行われるので、一人乗りと二人乗りとで自動的にばね特性を切り換えることができる。
請求項8の発明では、切換え機構の切り替え位置を表示するようにしたので、切り換え状態を目視することにより確認することができるとともに、商品性をアピールすることができる。
請求項9の発明では、操作部材の操作をばね特性切換え機構に伝達する操作力伝達部材を車体構成部品に挟まれる空間を通るように配置したので、操作力伝達部材の配索構造を簡素化できる。
請求項10の発明では、操作部材を一方の切換え機構に一体的に取付けたので、例えば操作部材を左右の後輪緩衝装置とは別な箇所に配置する場合に比べて配置スペース全体を小さくすることができる。
請求項11では、操作力伝達部材を上記各後輪緩衝装置から後方又は前方に延出し、車体構成部品間を通るように配索したので、操作力伝達部材の配索構造を簡素化できる。より具体的には、請求項12の発明に示すように、操作力伝達部材を可撓性を有する線状部材(例えばワイヤケーブル)とするとともに前傾している後輪緩衝装置から車幅方向ではなく後方に延長し、後上がりに配置されたシートレールとシート底板との間を通るように配索したので、操作力伝達部材の配索構造を簡素化できる。
請求項13発明では、上記操作力伝達部材を、上記シート底板にシートレールに向かって突出するよう形成された一対の突出部間又はこれの近傍を通るように配索したので、突出部によりシート底板とシートレールとの間に形成された既存の隙間を有効利用して操作力伝達部材を配索でき、また操作力伝達部材に不要な外力が加わるのを防止できる。
請求項14の発明では、操作力伝達部材を後輪緩衝装置から車幅方向ではなく前方に延長し、シートレールとシート底板との間を通るように配索したので、操作力伝達部材の配索構造を簡素化できる。
請求項15の発明では、操作力伝達部材を可撓性を有するワイヤケーブルとするとともに前傾している後輪緩衝装置から車幅方向ではなく後方に延長し、車体構成部品に挟まれる空間を通るように配置したので、操作力伝達部材の配索構造を簡素化できる。
請求項16の発明では、操作力伝達部材を車体構成部品に挟まれた空間を通るように配置したので、操作力伝達部材の配索構造を簡素化できる。
請求項17の発明では、1つの操作部材で左,右の後輪緩衝装置の特性を略同時に調整することができ、調整操作を簡単容易に行なうことができる。また左,右の後輪緩衝装置にそれぞれ操作部材を配置する場合に比べて部品点数を低減できる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1実施形態による後輪緩衝装置が配設された自動二輪車の側面図である。
図2は、上記後輪緩衝装置の緩衝器の正面図である。
図3は、上記緩衝器のばね特性切換え機構の断面図である(図2のIII−III線断面図)。
図4は、上記切換え機構の操作部材の平面図である。
図5は、上記操作部材の一部断面図である。
図6は、上記緩衝器の斜視図である。
図7は、上記緩衝器のダストカバーの斜視図である。
図8は、上記切換え機構の中間ばね受け部材の斜視図である。
図9は、上記切換え機構を構成するカムの斜視図である。
図10は、上記緩衝器の上ばね受け座の斜視図である。
図11は、上記緩衝器のリングプレートの斜視図である。
図12は、上記緩衝器のストッパ板の斜視図である。
図13は、上記緩衝装置の荷重と変位量との関係を示す特性図である。
図14は、操作部材に係る第2実施形態を示す平面図である。
図15は、上記第2実施形態の操作部材の正面図である。
図16は、請求項9〜13の発明の第3実施形態により緩衝器の側面図である。
図17は、上記左右一対の緩衝器の平面図である。
図18は、上記左右一対の緩衝器の正面図である。
図19は、上記緩衝器の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1ないし図13は、本発明の第1実施形態による自動二輪車を説明するための図であり、図1は後輪緩衝装置が配設された自動二輪車の側面図、図2は緩衝器の正面図、図3は緩衝器のばね特性切換え機構の断面図(図2のIII−III線断面図)、図4は切換え機構の操作部材の平面図、図5は操作部材の一部断面図、図6は緩衝器の斜視図、図7はダストカバーの斜視図、図8は中間ばね受け部材の斜視図、図9はカムの斜視図、図10は上ばね受け座の斜視図、図11はリングプレートの斜視図、図12はストッパ板の斜視図、図13は緩衝器の荷重と変位量との関係を示す特性図である。なお、本実施形態でいう前後,左右とはシートに着座した状態で見た場合の前後,左右を意味する。
図1において、1は自動二輪車を示しており、これの車体フレーム2は、エンジン3が搭載されるメインフレーム6と、該メインフレーム6に接続され、車両後方に略直線状に延びる左,右一対のシートレール8と、各シートレール8の中央部とメインフレーム6の下部とを結合する左,右一対のシートステー9とを備えている。
上記メインフレーム6の前端に固着されたヘッドパイプ10によりフロントフォーク4が枢支されており、該フロントフォーク4の下端に前輪11が軸支され、上端に操向ハンドル12が固定されている。
上記メインフレーム6は、上記ヘッドパイプ10の上端部から車両後斜め下方に延びる1本のメインパイプ6aと、下端部から車両後下方に略直線状に延びる1本のダウンチューブ6bと、上記ヘッドパイプ10,メインパイプ6a,ダウンチューブ6bを一体に結合するガセット14とを備えている。
上記メインパイプ6aは、ヘッドパイプ10から直線状に延びるタンクレール部6cと、該タンクレール部6cの後端から下方に屈曲して延びるリヤアームブラケット部6dとを有している。このタンクレール部6cの後端部に上記各シートレール8の前端部が溶接により接合されており、リヤアームブラケット部6dに上記シートステー9の前端部が結合されている。
上記メインパイプ6aとダウンチューブ6bとにより上記エンジン3がクランク軸3aを車幅方向に向けて懸架支持されている。またエンジン3のシリンダヘッド3bの前壁には排気マニホールド15が,後壁には吸気マニホールド16がそれぞれ接続されている。上記エンジン3のクランク軸3aの後側にはこれと平行に出力軸3cが配設され、該出力軸3cには駆動スプロケット3dが固着されている。この駆動スプロケット3dは後述する後輪13に装着された不図示の後輪スプロケットにチェーン等を介して連結されている。
上記メインパイプ6aのタンクレール部6cには燃料タンク17が搭載されており、該燃料タンク17の後側の上記各シートレール8にはシート7が着脱可能に搭載されている。このシート7は前シート部7aとこれより若干高所に位置する後シート部7bとを備えている。
上記シート7の下方はサイドカバー18で覆われており、該サイドカバー18はシート7の下縁に沿って車両前後方向に延びている。また前シート部7aの下方には運転者用フットレスト26が配置され、後シート部7bの下方には後部乗員用フットレスト27が配置されている。この後部乗員用フットレスト27は車外側に突出する乗車位置と、上向きに起立する格納位置との間で回動可能となっている。
上記メインフレーム6のリヤアームブラケット部6dにはリヤアーム5が上下揺動可能に枢支されており、該リヤアーム5の後端部には上記後輪13が軸支されている。このリヤアーム5は、車両前後方向に延びる左,右のアーム部5a,5aの前端同士を車幅方向に延びる連結部5bにより結合してなる平面視で概ねコ字状のものからなり、該連結部5bがピボット軸19を介してリヤアームブラケット部6dに軸支され、左,右のアーム部5aの間に後輪13が配置されている。
上記リヤアーム5とシートレール8との間には路面から後輪13に伝わる衝撃力を吸収する後輪緩衝装置が左,右一対配設されている。この各緩衝装置は、車体フレーム2の左,右側部に配設された緩衝器20と、該緩衝器20のばね特性を切り換えるばね特性切換え機構(カム)30と、各切換え機構30を操作力伝達部材40を介して切り換え操作する1つの操作部材50とを備えており、詳細には以下の構造となっている。
上記左,右の各緩衝器20は同一構造のものであり、ダンパ20aとばね機構20bとを備えており、上記左,右のアーム部5a,5aと左,右のシートレール8,8との間に車両前側に傾斜させて配置されている。
上記ダンパ20aは、作動油が充填された有底円筒状のシリンダ21内に減衰機構を内蔵するピストン23を進退自在に挿入するとともに、該ピストン23にピストンロッド22を接続し、該ピストンロッド22を上方に突出させた概略構造を有している。またシリンダ21の開口部にはピストンロッド22との間を油密にシールするシール部材24が嵌装されている。
上記緩衝器20は、上記ピストンロッド22がシリンダ21の上側に位置するように正立配置されている。即ち上記ピストンロッド22の上端に接続固定された取付けボス部22aがシートレール8に回動可能に連結され、シリンダ21の下端に接続固定された取付けボス部21aがアーム部5aに回動可能に連結されている。
上記ばね機構20bは、上記ダンパ20aに軸方向に移動可能に配設された概ね環状の中間ばね受け部材31と上記シリンダ21の下端部に固着された下ばね受け座(第1ばね受け座)32との間にコイル状の第1ばね33を配設するとともに、上記中間ばね受け部材31と上記ピストンロッド22の上端部に配設された上ばね受け座(第2ばね受け座)34との間にコイル状の第2ばね35を配設して構成されている。上記中間ばね受け部材31は第1,第2ばね33,35により上下方向に付勢され、両ばね33,35のばね力が釣り合う位置に保持されている。
本実施形態では上記第1ばね33は軸長さが概ね200mmに、線径が7.5mmφ程度に設定されている。また上記第2ばね35は軸長さが概ね50mmに、線径が上記第1ばね33の線径より小さい6mmφ程度に設定されている。
上記ピストンロッド22にはシリンダ21より少し大径に形成された円筒状のダストカバー36が装着されており、このダストカバー36はピストンロッド22の外周部を覆うとともに、上記シリンダ21の上縁部外周を覆っている。該ダストカバー36の上端に固着されたフランジ部36bにはカバープレート36cが配置され、これとピストンロッド22の取付けボス部22aの下面との間に介在された半円状のストッパ板37,37により該ピストンロッド22と共に進退移動するように固定されている。これによりシリンダ21の上端のピストンロッド摺動開口シール部から水,ほこり等の異物が進入するのを防止している。
上記ダストカバー36の外周面に上記中間ばね受け部材31が摺動可能に装着されている。この中間ばね受け部材31は環状のばね支持部31cに上方に突出する一対のカム受け部31a及び一対のばねガイド部31eを90度ずつの間隔をあけて一体形成した構造のものである。この各カム受け部31aの内側面には軸方向に延びる溝31bが切り欠いて形成されている。
またダストカバー36の外周面には軸方向に延びる一対の凸部36aが180度間隔をあけて形成されており、該凸部36aは上記カム受け部31aの溝31bに摺動自在に係合している。これにより中間ばね受け部材31はダストカバー36により軸方向に相対移動可能にかつ周方向には移動不能に支持されている。
上記ばね特性切換え機構は、上記ダストカバー36の外周面に装着された略円筒状のカム30を備えている。このカム30は、ダストカバー36と第2ばね35との間に配設され、上記中間ばね受け部材31の上下移動を許容して第1,第2ばね33,35の両方の組み合わせばね特性を得る移動可能位置と、中間ばね受け部材31の上方移動を阻止して第1ばね33のみによる単独ばね特性を得る移動不能位置との間で回動可能となっている。
上記カム30は、筒状のカム本体30aの上縁に一対の係合突起30bを180度間隔をあけて形成した構造のものである。またカム本体30aには、上記カム受け部31aが進入可能な大きさを有する逃げ凹部30cが軸方向に切り欠いて形成されている。この逃げ凹部30c内にてカム受け部31aを進退させることにより第2ばね35の伸縮を許容している。なお、30eは組立用の逃げ溝である。
また上記カム本体30aの下端面はカム面30dとなっており、該カム面30dは上記移動可能位置にあるときにはカム受け部31aの上端面31dより若干下側に位置している。カム30が上記移動不能位置に回動するとカム面30dがカム受け部31aの上端面31dに係合し、中間ばね受け部材31を下方に押圧付勢して上方への移動を阻止するようになっている。
上記カム30の係合突起30bは上ばね受け座34上に載置されており、該カム30の上側にはリングプレート38が載置されている。このリングプレート38の内側には上記係合突起30bが嵌装される凹部38aが形成されており、これによりリングプレート38を回動させるとこれと共にカム30が回動するようになっている。
ここで、上記緩衝器20の組立作業は以下の手順で行なわれる。シリンダ21の外側にかつ下ばね受け座32上に第1ばね33を配設し、これの上に中間ばね受け部材31,第2ばね33,上ばね受け座34を順次配置し、該第2ばね33の内側にカム30を挿入配置するとともにこれにリングプレート38を係合させる。続いて上記ダストカバー36をこれの凸部36aがカム30の逃げ凹部30c,及び中間ばね受け部材31の溝31bを通るように挿入し、これのフランジ部36bをカム30の上面に載置させる。そしてカバープレート36cを配置し、リングプレート38を加圧して第2ばね35を収縮させ、上記カバープレート36cと取り付けボス部22aの下端面との間に半円状のストッパ板37,37を挿入し、上記加圧を解除する。
上記操作部材50は、上記シート7の後端部下方のサイドカバー18の内側に配設されており、シートレール8にブラケット8aを介して取付け固定されている。この操作部材50は、上,下ケース部51a,51bをボルト締め固定してなるケース51内に円板状の回転プーリ52を収納配置するとともに、該回転プーリ52に一体形成された回転軸53を軸支し、該回転軸53のケース外突出部53aに操作レバー54をボルト締め固定した概略構造となっている。
上記操作力伝達部材40は、上記1つの操作部材50と左,右の緩衝器20,20の各カム30,30とを連結している。この操作力伝達部材40は可撓性を有する3本の第1,第2,第3操作ケーブル41,42,43により構成されている。各操作ケーブル41〜43は、上記サイドカバー18内のシートレール8に沿って配索されており、アウタチューブ41a〜43a内にインナケーブル41b〜43bを移動可能に挿入してなるものである。
上記第1,第2操作ケーブル41,42の各アウタチューブ41a,42aの一端部41c,42cは上記操作部材50のケース51に接続固定されており、各インナケーブル41b,42bの一端部41d,42dは回転プーリ52の外周面に形成された溝52a内に配索され、該回転プーリ52の途中に連結されている。
上記第1操作ケーブル41のアウタチューブ41aの他端部41eは、車両右側の緩衝器20の上ばね受け座34に一体に突出形成された支持片部34aに接続固定されている。また第1操作ケーブル41のインナケーブル41bの他端部41fは右側のリングプレート38の外周面に形成された溝38b内に配索され、該リングプレート38の途中に連結されている。
上記第2操作ケーブル42のアウタチューブ42aの他端部42eは左側の緩衝器20の上ばね受け座34の支持片部34aに接続固定されており、インナケーブル42bの他端部42fは左側のリングプレート38の外周面に形成された溝38b内に配索され、該リングプレート38の途中に連結されている。
上記第3操作ケーブル43のアウタチューブ43aの一端部43cは上記右側のリングプレート38の支持片部34aに接続固定され、インナケーブル43bの一端部43dは右側のリングプレート38の外周面に形成された溝38b内に配索され、該リングプレート38の途中に連結されている。またアウタケーブル43aの他端部43eは上記左側のリングプレート38の支持片部34aに接続固定され、インナケーブル43bの他端部43fは左側のリングプレート38の外周面に形成された溝38b内に配索され、該リングプレート38の途中に連結されている。
上記操作レバー54がソフト位置Sにあるときには、カム30は、移動可能位置にあり、該カム30の逃げ凹部30cが中間ばね受け部材31のカム受け部31aと一致しており、そのため中間ばね受け部材31は軸方向移動が許容されている。これにより、図13に特性線Bで示すように、第1,第2ばね33,35の両方を組み合わせたばね定数の小さい組み合わせばね特性が得られる。その結果一人乗り走行時の乗り心地,操縦安定性を確保できる。
上記操作レバー54をソフト位置Sからハード位置Hに回動すると、第2操作ケーブル42を介して左側のリングプレート38及びカム30が反時計周りに回動するとともに、第3操作ケーブル43を介して右側のリングプレート38及びカム30も反時計周りに回動する。すると左,右のカム30が移動不能位置に回動し、カム面30dがカム受け部31a上に乗り上げ、もって中間ばね受け部材31は上方移動不能に固定される。これにより、図13に特性線Aで示すように、第1ばね33単独によるばね定数の大きい単独ばね特性に切り換わる。その結果二人乗り,あるいは重い荷物を積載したときの底付きを抑制でき、乗り心地,操継安定性を確保できる。
なお、上記状態で、操作レバー54をソフト位置Sに戻すと、第1操作ケーブル41を介して右側のカム30が時計周りに回動するとともに、第3操作ケーブル43を介して左側のカム30が時計周りに回動し、各カム30とカム受け部31aとの係合が解除され、上記組み合わせばね特性に切り換わる。ここで、特性線B1は第1ばね33単独のばね特性を、特性線B2は第2ばね35単独のばね特性を示している。
このように本実施形態によれば、車体フレーム2の左,右側部に配設された各緩衝器20をピストンロッド22がシリンダ21の上側に位置するように正立配置し、ピストンロッド22にこれの外周部を囲むようにダストカバー36を装着し、該ダストカバー36の外周面に中間ばね受け部材31を軸方向移動可能に装着するとともに、ばね特性切換え機構を構成するカム30を配設したので、緩衝器20を正立配置する場合の中間ばね受け部材31及びカム30をピストンロッド22側,つまり緩衝器20の上部に配置することが可能となり、コスト上昇及び構造の複雑化を招くことなく後輪スプロケット,マフラ等との干渉を防止できる。
またシリンダ21を囲むように配置された上記ダストカバー36の外側にカム30及び中間ばね受け部材31を配設したので、該カム30や中間ばね受け部材31がピストンロッド22に干渉することはなく、緩衝器20のピストンストローク量が上記部材によって規制されるといった問題を回避できる。
本実施形態では、第2ばね35の線径を第1ばね33の線径より小さくしたので、それだけ該第2ばね35の外径の拡大を抑制でき、緩衝器20の上部をコンパクトにして車体レイアウト上の自由度を高めることができ、デザイン性を向上できる。また緩衝器20の第2ばね35の内側にカム30を配置することができ、緩衝器20の大型化を防止できる。
また本実施形態では、ダストカバー36の外周面に装着されたカム30を回動可能に配設し、該カム30を中間ばね受け部材31を固定する移動不能位置に、又は中間ばね受け部材31の移動を許容する移動可能位置に回動させる構造としたので、上記カム30を回動させるだけの簡単な構造でかつ少ない部品点数で切換え機構を構成できるとともに、必要な操作力を軽減できる。
本実施形態では、上記左,右の緩衝器20の各カム30の切り換え操作を1つの操作部材50で同時に行なうようにしたので、各カム30にそれぞれ操作部材を配置する場合に比べて部品点数を低減できるとともに、切り換え操作を1回で簡単に行なうことができる。
上記操作部材50を各操作ケーブル41〜43を介して左,右のカム30に連結したので、操作部材50を緩衝器20から離れた位置に配置することができ、配置位置における自由度を高めることができる。即ち、操作部材50をシート7の後端部下方のサイドカバー18の内側に配置したので、外部に露出せず外観の悪化を防止できるとともに乗車状態や走行状態での切り換え操作を防止できる。
また各カム30を3本の操作ケーブル41〜43で切り換え操作を行なうので、配索構造を簡単にできるとともに、コストを低減できる。即ち、各カムにそれぞれ操作部材を配置する場合には操作ケーブルが少なくとも4本必要であり、配索構造が複雑となり、コストも上昇する。
なお、上記実施形態では、操作部材50をシート7下方のサイドカバー18内のシートレール8に取付けた場合を説明したが、本発明の操作部材は操向ハンドル12の周辺,例えばヘッドパイプ10上部の運転者から見える位置に配置してもよく、このようにしたのが請求項6の発明である。このようにした場合には、切り換え操作を容易に行なうことができ、また操作レバー54が外部から見えることから商品性をアピールすることができる。
図14,図15は請求項7の発明に係る第2実施形態を示す。本実施形態は後席乗員用フットレストを操作部材に兼用した例である。
図において、後席乗員用フットレフト27の回動軸27aに固定された駆動傘歯車60aは車体側に回転自在に配置されたプーリ61の車幅方向に配置された回転軸61aに固定された従動傘歯車60bに噛合している。上記プーリ61は図4のプーリ52に相当しており、図4と同様のケーブル41,42が連結されている。
上記フットレスト27が格納位置にあるときには組み合わせばね特性が得られるようになっており、フットレスト27を使用時位置に回動させると上述のカム30が中間ばね受け部材31の上方移動を阻止し、単独ばね特性が得られるようになっている。
このように本実施形態では、フットレスト27の使用時位置への回動を利用してばね特性を自動的に切り換えることができる。なお、この場合、フットレスト27に戻り防止装置を取り付け、乗車状態では切り換えできないようにすることも可能である。
ここで上記中間ばね受け部材31が上記ダンパ20aに対して移動を許容される状態と、移動を阻止される状態の何れの状態に切り換えられているかを示す表示手段を設けてもよくこのようにしたのが請求項8の発明である。
具体的には上記操作レバー54の切り換え位置S,Hをインジケータに表示するようにすればよい。例えば、操作レバー54にインジケータスイッチを設け、該スイッチによりランプを点灯させるように構成してもよい。このように構成した場合には、切り換え状態が目視により確認でき、また商品性をアピールすることができる。
またメインキースイッチで操作レバーや切換え機構をロックするように構成してもよい。さらには人手による切り換え操作を油圧に変換し、該油圧で切換え機構を駆動するようにしてもよく、このようにした場合には操作力を大幅に低減できる。またスイッチ操作により電動モータで切り換えを行なうように構成することも可能であり、この場合には人手による操作を不要にできる。
図16ないし図19は、請求項9〜13の発明の第3実施形態による後輪緩衝装置を説明するための図である。図中、図2〜図4と同一符号は同一又は相当部分を示す。
本実施形態の各後輪緩衝装置は、車体フレーム2の左,右側部に上部ほど前側に位置するよう前傾状態に配設された緩衝器20と、該緩衝器20のばね特性を切り換えるカム30と、該各カム30を操作力伝達部材40を介して切り換え操作する1つの操作部材50とを備えており、基本的な構造は第1実施形態と略同様であることから、以下、異なる部分について説明する。
上記シート7は、樹脂製のシート底板56に不図示のクッション材を配置し、該クッション材の外表面を表皮で覆った構造のものである。上記シート底板56は底板本体部56cとこれの外周を囲むフレーム部56bとを一体形成した構造のものである。
上記底板本体部56cの前,後部には左右一対のストッパ部56a,56aが下方に突出形成されており、各ストッパ部56aはシートレール8に当接可能となっている。また底板本体部56cの左右のストッパ部56aの後側にはゴム製の弾性部材57が装着されており、該弾性部材57はシートレール8に当接している。ここで上記ストッパ部56a及び弾性部材57はシート底板に形成された前後一対の突出部となっている。また上記シートレール8は後部ほど高くなるよう後上がりに配置され、上記シート底板56も全体として若干後上がりに配置されている。そのため車両側方から見ると、上記シートレール8とシート底板56との間には若干の隙間cが形成されている。
上記左右の緩衝器20の各カム30の係合部30bにはリングプレート38が装着固定されており、該リングプレート38の外周面には一対のガイド溝38a,38aが形成されている。また上記左右のダンパ20aの取付けボス部22aにはブラケット39が固定されている。このブラケット39は舌状の固定片39aの外端に支持片39bを屈曲形成した概ねT字形状のものであり、該支持片39bの中央部にはダンパ20aの減衰力を調整する減衰力調整バルブが58が装着されている。
上記操作部材50は、左側のダンパ20aに第2ばね35の外周を囲むように配設された筒体50aに操作ノブ50bを接続形成した構造となっている。この筒体50aの上端部にはフランジ37が固着されており、該フランジ37はリングプレート38と係合部30bとで挟持固定されている。これにより操作部材50を回動させるとリングプレート38と共にカム30が回動するようになっている。
上記操作力伝達部材40は可撓性を有する第1,第2ワイヤケーブル41,42により構成されている。各ワイヤケーブル41,42はアウタチューブ41a,42a内にインナケーブル41b,42bを相対移動可能に挿入してなるものである。
上記第1,第2ワイヤケーブル41,42の各アウタチューブ41a,42aの端部はそれぞれ上記左,右のブラケット39の支持片39bに接続固定されており、各インナケーブル41b,42bの端部はそれぞれ左,右のリングプレート38のガイド溝38a内に配索され、該リングプレート38の途中に連結されている。
そして上記第1,第2ワイヤケーブル41,42は左右のカム30,30の略接線方向後方に向けて延びた後、上記シートレール8とシート底板57との隙間cで,かつストッパ部56aと弾性部材57との間を通るように車幅方向に配索されている。また第1,第2ワイヤケーブル41,42は左右のシートレール8の間に配設されたリヤフェンダ59の上面に沿って配索されている。なお上記ワイヤケーブル41,42は上記ストッパ部56aの前側近傍、あるいは弾性部材57の後側近傍に配索してもよい。
上記操作部材50の操作ノブ50bがソフト位置Sにあるときには、中間ばね受部材31は移動可能位置にて軸方向移動が許容されている。これにより第1,第2ばね33,35の両方を組み合わせたばね定数の小さい組合せばね特性が得られる。
上記操作部材50をソフト位置Sからハード位置Hに回動させると、左側のリングプレート38及びカム30が反時計周りに回動するとともに、この回動が上記第1ワイヤケーブル41を介して右側のリングプレート38に伝達され、該リングプレート38及びカム30が反時計周りに回動する。すると左,右のカム30のカム面30dがカム受け部31aに係合し、もって中間ばね受部材31は移動不能位置に固定される。これにより第1ばね33単独によるばね定数の大きい単独ばね特性に切り換わる。
この状態で、操作部材50をソフト位置Sに戻すと、左側のカム30が時計周りに回動するとともに、第2ワイヤケーブル41を介して右側のカム30が時計周りに回動し、各カム30とカム受け部31aとの係合が解除され、上記組合せばね特性に切り換わる。
本第3実施形態によれば、左右一対の緩衝器20に配設されたカム30同士をリングプレート38を介在させて第1,第2ワイヤケーブル41,42により連結し、左側のカム30に接続された操作部材50を回動操作することにより左側のカム30を回動させるとともに、この回動操作を上記第1,第2ワイヤケーブル41,42を介して右側のカム30に伝達するようにしたので、1つの操作部材50で左右の緩衝器20のばね特性を同時に切り換えることができ、切り換え操作を容易に行なうことができるとともに、左右のカム30にそれぞれ操作部材を配置する場合に比べて部品点数を低減できる。
また上記第1,第2ワイヤケーブル41,42を前傾状態に配置された緩衝器20から車幅方向ではなく後方にやや後上がりに延長し、さらにシートレール8とシート底板56との間に挟まれる部分を通るように配索したので、左右の緩衝器20のばね特性切換え機構を連結するためのワイヤケーブルの配索構造を簡素化できる。また緩衝器20のワイヤケーブル接続部及びシートレール8とともにワイヤケーブル41,42が一緒に上下動することから、該ワイヤケーブル41,42に不要な外力が加わるのを防止できる。
上記操作部材50を左側のダンパ20aのカム30に一体的に取付けたので、例えば操作部材を左右の緩衝器とは別な箇所に配置する場合に比べて配置スペース全体を小さくすることができる。またライダより後側に操作部材50を配置したので、ライダが乗車状態や走行状態で切り換え操作を行なおうとしても手が届きにくく、従って走行状態での操作を抑制できる。
本実施形態では、操作力伝達部材40を可撓性を有するワイヤケーブル41,42からなるものとしたので、左右の緩衝器20,20の連結作業を容易に行なうことができる。
上記第1,第2ワイヤケーブル41,42をシートレール8とシート底板56との隙間cのストッパ部56aと弾性部材57との間を通るように配索したので、シートレール8とシート底板56との間の空きスペースを有効利用して配索することができ、さらにストッパ部56aとシートレール8との既存の隙間cを有効利用して配索でき、ワイヤケーブル41,42に不要な外力が加わるのを防止できる。
なお、上記第3実施形態では、ワイヤケーブルを緩衝器20の後側を通って左右の緩衝器を連結するように配索したが、緩衝器20の前側を通って左右の緩衝器を連結するように配索することも可能である。このようにしたのが請求項14の発明であり、この場合にも上記第3実施形態と同様の作用効果が得られる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内に挿入されたピストンと、このピストンに一端が接続され、他端がシリンダの一端部から外方に突出されたピストンロッドとを有するダンパと、上記ピストンロッドの軸方向に移動可能に上記ダンパの径方向外側に設けられた中間ばね受け部材と、上記シリンダの他端部に設けられた第1ばね受け座と、この第1ばね受け座と上記中間ばね受け部材との間に設けられた第1ばねと、上記ピストンロッドの他端部に設けられた第2ばね受け座と、この第2ばね受け座と上記中間ばね受け部材との間に設けられた第2ばねと、上記中間ばね受け部材が上記ダンパに対して移動を許容される状態と、上記中間ばね受け部材が上記ダンパに対して移動を阻止される状態とを択一的に切り換えるばね特性切換え機構とを有する後輪緩衝装置を備え、上下揺動可能に車体フレームに支持されたリヤアームに上記シリンダの他端部が連結され、上記ピストンロッドの他端部が上記シリンダよりも上方に位置するように車体フレームに連結され、上記ピストンロッドの他端部を外側から覆うカバーが設けられ、該カバーの外側に上記中間ばね受け部材と上記ばね特性切換え機構とが配設されていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
請求項1において、上記第2ばねのばね線径は上記第1ばねのばね線径より小さく設定されていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記ばね特性切換え機構は、上記中間ばね受け部材の上記ダンパに対する移動を阻止するカムを備えていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れかにおいて、上記後輪緩衝装置は左,右一対設けられており、該一対の後輪緩衝装置は各々ばね特性切換え機構を備えており、該一対のばね特性切換え機構を操作する単一の操作部材が設けられていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項5】
請求項4において、上記操作部材は、シート下方の車体カバーの内側に配置されていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項6】
請求項4において、上記操作部材は、操向ハンドル周辺に配置されていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項7】
請求項4において、後席乗員用の可倒式のフートレストが設けられ、該フートレストと上記操作部材とは連動するよう連結されており、上記フートレストが使用状態に回動されたとき、上記ばね特性切換え機構は、上記中間ばね受け部材が上記ダンパに対して移動を阻止される状態に切り換えられるように構成されていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項8】
請求項4ないし7の何れかにおいて、上記ばね特性切換機構は、上記中間ばね受け部材が上記ダンパに対して移動を許容される状態と、上記中間ばね受け部材が上記ダンパに対して移動を阻止される状態の、いずれの状態に切り換えられているかを表示する表示手段を備えていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項9】
請求項4において、上記操作部材の操作を上記ばね特性切換え機構に伝達する操作力伝達部材が設けられ、該操作力伝達部材は、車体構成部品に挟まれる空間を通るように配置されていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項10】
請求項4において、上記操作部材は、いずれか一方の後輪緩衝装置に設けられたばね特性切換え機構に一体的に取付けられていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項11】
請求項9又は10において、上記操作力伝達部材は、上記各後輪緩衝装置から後方又は前方に延出され、車体構成部品に挟まれる空間を通るように配置されていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項12】
請求項9又は10において、上記一対の後輪緩衝装置は、上部ほど前側に位置するよう前傾状態に配置され、上記操作力伝達部材は、可撓性を有する線状部材で構成されるとともに上記各後輪緩衝装置から後方に向けて延出され、シートレールとシート底板とに挟まれた空間を通るように配索されていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項13】
請求項12において、上記シート底板に、シートレールに向かって突出する前後一対の突出部が設けられ、上記操作力伝達部材は、前後一対の突出部の間又はこれらの近傍を通るように配索されていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項14】
請求項9又は10において、上記一対の後輪緩衝装置は上部ほど前側に位置するよう前傾状態に配置され、上記操作力伝達部材は、可撓性を有する線状部材で構成されるとともに上記各後輪緩衝装置から前方に向けて延出され、シートレールとシート底板とに挟まれた空間を通るように配索されていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項15】
請求項9において、上記操作力伝達部材は、アウタチューブ内にインナケーブルを相対移動可能に挿入してなるワイヤケーブルから構成され、該ワイヤケーブルは、その一端が一方のばね特性切換え機構に連結されるとともに、該ばね特性切換え機構から後方に延び、車体構成部品に挟まれる空間を通るように配置されていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項16】
シリンダ内に挿入されたピストンと、このピストンに一端が接続され、他端がシリンダの一端部から外方に突出されたピストンロッドとを有するダンパと、上記ピストンロッドの軸方向に移動可能に上記ダンパの径方向外側に設けられた中間ばね受け部材と、上記シリンダの他端部に設けられた第1ばね受け座と、この第1ばね受け座と上記中間ばね受け部材との間に設けられた第1ばねと、上記ピストンロッドの他端部に設けられた第2ばね受け座と、この第2ばね受け座と上記中間ばね受け部材との間に設けられた第2ばねと、上記中間ばね受け部材が上記ダンパに対して移動を許容される状態と、上記中間ばね受け部材が上記ダンパに対して移動を阻止される状態とを択一的に切り換えるばね特性切換え機構とを有する後輪緩衝装置を備え、上記ばね特性切換え機構を操作する操作部材が設けられ、該操作部材の操作を上記ばね特性切換え機構に伝達する操作力伝達部材が設けられ、該操作力伝達部材が、車体構成部品に挟まれる空間を通るように配置されていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項17】
請求項16において、上記後輪緩衝装置は左,右一対設けられており、該一対の後輪緩衝装置は各々ばね特性切換え機構を備えており、一対のばね特性切換え機構を操作する単一の操作部材が設けられていることを特徴とする自動二輪車。

【国際公開番号】WO2004/104441
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506410(P2005−506410)
【国際出願番号】PCT/JP2004/007242
【国際出願日】平成16年5月20日(2004.5.20)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【出願人】(000201766)創輝株式会社 (39)
【Fターム(参考)】