説明

自動倉庫設備

【課題】構成の簡素化を図りながら、高温環境においてスタッカクレーンを適切に作動させることができ、しかも、収納部における物品の火災を消火できる自動倉庫設備の提供。
【解決手段】収納部を複数備えた物品収納棚と、走行経路に沿って走行自在なスタッカクレーン3と、地上側に設置されてスタッカクレーンの作動を制御する地上側コントローラHとが設けられ、消火ノズル26が昇降台20に設けられ、物品収納棚及びスタッカクレーンが高温環境空間Z2に、消火剤供給源27と地上側コントローラとが常温環境空間Z1に設置され、地上側コントローラとスタッカクレーンとに亘って制御線31が、消火剤供給源と消火ノズルとに亘って消火ホース30が設けられ、制御線及び消火ホースが共通の走行用ケーブルガイド32に収容されて走行台車18の走行に伴って配設経路が変形自在な走行用被ガイド部分30a・31aを備えて構成されている自動倉庫設備。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を収納する収納部を複数備えた物品収納棚と、前記物品収納棚の前面側に設定された走行経路に沿って走行自在な走行台車、前記走行台車に立設された昇降マストに沿って昇降自在な昇降台、及び、前記昇降台に装備されて前記収納部との間で物品を移載自在な移載装置を備えたスタッカクレーンと、地上側に設置されて前記スタッカクレーンの作動を制御する地上側コントローラとが設けられ、消火剤を供給自在な消火剤供給源から消火剤の供給を受けて前記収納部に対して消火剤を散布する消火ノズルが前記スタッカクレーンにおける前記昇降台に設けられている自動倉庫設備に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の自動倉庫設備の従来例として、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1のものでは、物品収納棚及びスタッカクレーンは常温環境空間に設置されており、消火剤供給源としての消火栓も同じ常温環境空間に設置されている。また、スタッカクレーンの作動を制御する地上側コントローラや、消火剤としての水を消火栓から供給する供給状態と供給停止状態との切り換えを制御する制御装置も同様に常温環境空間に設置されている。
【0003】
特許文献1のものでは、ホースリールに巻き取られた状態で消火ホースがスタッカクレーンに備えられており、その一方の端部は昇降台に設けられた消火ノズルに接続され、他方の端部は通常時は未接続状態で開放されている。そして、火災が発生すると、走行経路の原点箇所に設置された消火剤供給源(消火栓)に消火ホースを接続するべく、スタッカクレーンが原点位置まで走行し、消火剤供給源に消火ホースが自動的に接続される。その後、スタッカクレーンの走行作動に伴って、ホースリールに巻き取られている消火ホースが繰り出し及び巻き取られることで、消火ホースが地上側とスタッカクレーンとに亘って接続された状態であってもスタッカクレーンが適切に走行できるようになっている(特許文献1の段落「0016」、「0017」、「0027」及び「0028」並びに図1及び図2参照)。
【0004】
特許文献1の図1には、地上側コントローラとスタッカクレーンとが無線通信する点が記載されている。地上側コントローラとスタッカクレーンとは、スタッカクレーンの作動を制御するために必要な制御信号を通信する。スタッカクレーンと地上側コントローラとが無線通信により制御信号を伝送する場合、例えば、特許文献2の図3に示すように、地上側とスタッカクレーンとの夫々に送受信部を設けて、これらの間で無線通信を行って、スタッカクレーンの作動の制御に必要な制御信号を伝送する。そのため、スタッカクレーンには、受信した信号から制御情報を取り出す受信処理及び制御情報を無線信号に変換して送信する送信処理を実行する無線信号処理装置が設けられることになる。なお、特許文献2には、スタッカクレーンと地上側コントローラとに投受光部を設けて、赤外線通信により制御信号を伝送する例が記載されている(特許文献2の図3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−221201号公報
【特許文献2】特開2008−63032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動倉庫設備の用途によっては、常温環境空間よりも高温に設定された高温環境空間において物品を保管する場合がある。このような場合に、例えば、消火剤として二酸化炭素ガスを用い、消火剤供給源を二酸化炭素ボンベにて構成した場合、高温環境空間に消火剤供給源を配置すると、二酸化炭素ボンベが高温環境に曝されて爆発するおそれがある。消火剤として水を用いるとしても、水温が高くなり消火効果が低減するおそれがあり、また、消火剤として薬剤等を用いる場合でも、薬剤が劣化して消火効果が低減するおそれがある。
さらに、消火剤供給源から消火ホースに消火剤を供給する供給状態と供給停止状態とに切り換える装置(例えば、電磁弁等)を高温環境空間に設置すると、その動作が保障されず、火災が発生した場合に、供給状態に切り換えることができず消火が行えない事態が発生するおそれがある。
【0007】
常温環境空間よりも高温に設定された高温環境空間において物品を保管する場合、自動倉庫設備の物品収納棚やスタッカクレーンが高温環境空間に設けられることになる。そのため、従来の自動倉庫設備のように、無線通信により地上側コントローラとスタッカクレーンとの間で制御信号が伝送される構成であると、スタッカクレーンに設けられる無線信号処理装置が高温環境に曝されることになる。無線信号処理装置には、高度な信号処理を行う半導体部品等が設けられているため、高温環境では正常な動作が保障されない。そのため、地上側コントローラとスタッカクレーンとの間で正常に制御信号を伝送することができず、スタッカクレーンを高温環境空間において正常に動作させることができないという問題がある。
【0008】
この問題に対して、スタッカクレーンと地上側コントローラとを有線の制御線で接続することで地上側コントローラと高温環境空間に設置されるスタッカクレーンとの間で正常に制御信号を伝送することが考えられる。ところが、従来のように、スタッカクレーンに消火ノズルを備えさせ、これに対して消火剤を供給する消火剤供給源を地上側に設けて、消火ホースにより消火ノズルと消火剤供給源とを接続した場合、地上側とスタッカクレーンとの間で制御線及び消火ホースの双方が接続された状態となる。そのため、構成が煩雑になり、スタッカクレーンの走行作動を適切に行い難いという不都合が生じる。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、構成の簡素化を図りながら、高温環境空間においてスタッカクレーンを適切に作動させることができ、しかも、収納部における物品の火災を適切に消火できる自動倉庫設備を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明に係る自動倉庫設備の第1特徴構成は、物品を収納する収納部を複数備えた物品収納棚と、前記物品収納棚の前面側に設定された走行経路に沿って走行自在な走行台車、前記走行台車に立設された昇降マストに沿って昇降自在な昇降台、及び、前記昇降台に装備されて前記収納部との間で物品を移載自在な移載装置を備えたスタッカクレーンと、地上側に設置されて前記スタッカクレーンの作動を制御する地上側コントローラとが設けられ、消火剤を供給自在な消火剤供給源から消火剤の供給を受けて前記収納部に対して消火剤を散布する消火ノズルが前記スタッカクレーンにおける前記昇降台に設けられている自動倉庫設備において、
前記物品収納棚及び前記スタッカクレーンが、常温環境空間の気温よりも高温に維持されている高温環境空間に設置され、前記消火剤供給源と前記地上側コントローラとが、前記常温環境空間に設置され、前記地上側コントローラと前記スタッカクレーンとに亘って接続されて制御信号を伝送する制御線が設けられ、前記消火剤供給源と前記消火ノズルとに亘って接続されて前記消火剤供給源から前記消火ノズルまで消火剤を通流させる消火ホースが設けられ、前記制御線及び前記消火ホースが、前記高温環境空間において、前記走行経路に沿って設けられた共通の走行用ケーブルガイドに収容されて前記走行台車の走行に伴って配設経路が変形自在な走行用被ガイド部分を備えて構成されている点にある。
【0011】
本特徴構成によれば、スタッカクレーンは高温環境空間に設置されているが、地上側コントローラとスタッカクレーンとが制御線により接続されているので、無線信号を用いることなく、地上側コントローラとスタッカクレーンとの間で制御信号を伝送できる。そのため、無線通信装置を用いる場合のように、受信した無線信号から制御情報を取り出す受信処理及び制御情報を無線信号に変換して送信する送信処理を実行する信号処理装置をスタッカクレーンに備えさせずに済む。そのため、スタッカクレーンが高温環境空間に設置されても、スタッカクレーンは、信頼性の高い状態で確実に制御信号を送受信することができる。また、地上側コントローラは、常温環境空間に設置されているため、正常に動作して確実に制御信号を送受信することができる。したがって、地上側コントローラとスタッカクレーンとの間で制御信号を信頼性の高い状態で確実に伝送して、スタッカクレーンを高温環境空間において正常に動作させることができる。
【0012】
また、地上側に設置される消火剤供給源とスタッカクレーンの昇降台に設けられた消火ノズルとに亘って消火ホースが接続されているので、消火剤供給源から消火ノズルまで消火剤を通流させて、収納部に対して消火ノズルから消火剤を散布することができる。消火剤供給源は常温環境空間に設置されるため、消火剤の温度上昇及び劣化を防止することができ、特に、消火剤供給源を二酸化炭素ボンベにて構成した場合には、消火剤供給源の爆発を防止できる。また、消火剤供給源から消火ホースに消火剤を供給する供給状態と供給停止状態とに切り換える装置(例えば、電磁弁等)を常温環境空間に設置することができるので、正常な動作が保障されることになり、火災が発生した場合に、適切に供給状態に切り換えることができる。
【0013】
さらに、制御線及び消火ホースは、いずれも、スタッカクレーンの走行経路に沿って設けられた共通の走行用ケーブルガイドに収容されて走行台車の走行に伴って配設経路が変形自在な走行用被ガイド部分を備えているので、制御線及び消火ホースの走行用被ガイド部分が、スタッカクレーンの走行経路に沿って設けられた走行用ケーブルガイドに案内された状態で走行台車の走行に伴って配設経路が変形する。したがって、スタッカクレーンと地上側コントローラとの間の制御線、及び、スタッカクレーンと消火剤供給源との間の消火ホースが存在していても、スタッカクレーンは走行経路に沿って適切に走行できる。
【0014】
しかも、制御線及び消火ホースを共通の走行用ケーブルガイドに収容することで、制御線及び消火ホースに対して各別にケーブルガイドを設けずに済むため、構成の簡素化を図ることができる。
【0015】
このように、本特徴構成によると、構成の簡素化を図りながら、高温環境においてスタッカクレーンを適切に作動させることができ、しかも、収納部における物品の火災を適切に消火できる自動倉庫設備を得るに至った。
【0016】
本発明に係る自動倉庫設備の第2特徴構成は、前記走行台車は、前記走行台車の幅方向で前記昇降台より幅狭に構成されており、前記走行用ケーブルガイドが、床面において前記走行台車の幅方向で前記昇降台と重複する位置に配置されている点にある。
【0017】
本特徴構成によれば、走行用ケーブルガイドを床面に設ければよいので、天井や壁に設ける場合に比べて取付作業が容易である。また、制御線及び消火ホースの走行用被ガイド部分が床面付近の高さにおいて走行用ケーブルガイドにより案内される状態で配設されるので、スタッカクレーンの走行台車へ接続する場合に適した配設高さとなる。しかも、走行台車は、走行台車の幅方向で昇降台より幅狭に構成されているため、昇降台が下限位置まで下降した場合に走行台車の両脇には空間が形成されるが、床面において走行台車の幅方向で昇降台と重複する位置に走行用ケーブルガイドを配置することで、走行台車の両脇の空間を有効に利用することができる。
【0018】
本発明に係る自動倉庫設備の第3特徴構成は、前記消火ホースにおける前記高温環境空間に位置する部分は、前記走行用被ガイド部分よりも消火剤供給方向で下流側において、前記昇降マストに沿って配設されるマスト設置部分を有し、前記スタッカクレーンは、前記制御線に伝送される制御信号のうち前記移載装置についての制御信号を伝送する移載装置用制御線を備え、前記移載装置用制御線は、前記昇降マストに沿って配設され、前記移載装置用制御線及び前記消火ホースの前記マスト設置部分が、共通の昇降用ケーブルガイドに収容されて前記昇降台の昇降に伴って配設経路が変形自在な昇降用被ガイド部分を備えて構成されている点にある。
【0019】
本特徴構成によれば、昇降マストに沿って配設されるマスト設置部分のうち、昇降用被ガイド部分が、昇降用ケーブルガイドに収容されており、この部分が昇降台の昇降に伴って配設経路が変形できるため、昇降台における消火ノズルに消火ホースが接続された状態でも、昇降台を適切に昇降させることができる。
【0020】
また、昇降台に装備された移載装置についての制御信号を伝送する移載装置用制御線が配設されているので、移載装置の作動を制御するために必要な制御信号を、地上側コントローラから制御線及び移載装置用制御線を通じて、地上側コントローラと昇降台側との間で伝送することができる。
また、移載装置用制御線は、昇降マストに沿って配設されており、そのうちの昇降用被ガイド部分が、昇降用ケーブルガイドに収容されている。この昇降用被ガイド部分が昇降台の昇降に伴って配設経路が変形できるため、昇降台に移載装置用制御線が接続された状態でも、昇降台を昇降マストに沿って適切に昇降させることができる。
しかも、移載装置用制御線及び消火ホースのマスト設置部分が収容される昇降用ケーブルガイドは共通のものであるため、移載装置用制御線及び消火ホースのマスト設置部分に対して各別にケーブルガイドを設けずに済むため、構成の簡素化を図ることができる。
【0021】
本発明に係る自動倉庫設備の第4特徴構成は、前記消火ホースにおける前記走行用被ガイド部分を含む部分の両端部が、地上側に固定状態で配設された地上側ホース部分と前記走行台車及び前記昇降マストに固定状態で配設されたクレーン側ホース部分とに着脱自在に接続されている点にある。
【0022】
本特徴構成によれば、消火ホースにおける走行用被ガイド部分を含む部分の両端部は、地上側ホース部分とクレーン側ホース部分とに着脱自在に接続されているので、それらの接続箇所の接続を解除することで、消火ホースにおける走行用被ガイド部分を含む部分を地上側ホース部分及びクレーン側ホース部分から取り外すことができる。消火ホースにおける走行用被ガイド部分は、走行用ケーブルガイドに収容されて、スタッカクレーンの走行に伴って、配設経路が変形する部分であるから、スタッカクレーンの走行作動が繰り返されると消火ホースにおける走行用被ガイド部分の変形も繰り返される。そのため、消火ホースにおける他の部分に比べて経年劣化が生じ易い部分となっている。本特徴構成によれば、交換が必要なほど劣化していない部分をそのまま残し、経年劣化が生じ易い走行用被ガイド部分を含む部分だけを取り外して、新しい消火ホース部分に部分的に交換ができるため、消火ホース全体を交換せずに済む。そのため、交換時のコストを低く抑えることができる。また、走行用ケーブルガイドに消火ホースを収容する作業を行う場合には、走行用被ガイド部分を含む部分だけを取り扱えばよいため、全長の長い消火ホースの比較的短い一部分だけを扱えば済むことから、走行用ケーブルガイドへの収容作業の作業性も良くなる。
【0023】
本発明に係る自動倉庫設備の第5特徴構成は、前記消火剤が二酸化炭素ガスであり、前記消火剤供給源が、二酸化炭素ボンベにて構成され、前記二酸化炭素ボンベから前記消火ホースに二酸化炭素ガスを供給する供給状態と供給停止状態とに切り換える電磁式の開閉弁が、前記常温環境空間に設けられている点にある。
【0024】
本特徴構成によれば、収納部の物品に対して二酸化炭素ガスが散布されるので、物品に対する消火作用をした後は、消火剤は周辺の空気に拡散する。そのため、物品収納棚や床面やスタッカクレーンが消火剤により汚れることがないため、物品の火災を消火した後の復旧作業が容易であり、迅速に通常の状態に復帰できる。
【0025】
本発明に係る自動倉庫設備の第6特徴構成は、前記スタッカクレーンは、走行用モータ及びこの走行用モータを駆動する走行用インバータ、昇降用モータ及びこの昇降用モータを駆動する昇降用インバータ、並びに、移載用モータ及びこの移載用モータを駆動する移載用インバータを備え、前記地上側コントローラは、前記走行用インバータ、前記昇降用インバータ、及び前記移載用インバータに対して各別に、対応するモータについての前記制御信号を指令自在に構成されている点にある。
【0026】
本特徴構成によれば、地上側コントローラが、インバータに対して制御信号を指令することで、走行用モータ、昇降用モータ、及び、移載用モータの作動を制御できる。インバータに指令される制御信号としては、例えば、電圧値や周波数をPWM制御する場合のパルス信号が指令される。つまり、スタッカクレーンの移載装置を目標位置に位置させるための走行作動及び昇降作動、並びに、物品の受取又は受渡のための移載作動を適切に制御するために必要な高度な演算処理は地上側コントローラに実行させ、演算処理の必要のない信号に基づいて動作するインバータにモータを駆動させることができる。これにより、高度な演算処理が可能な高性能なマイクロコンピュータ等の適正動作温度の上限が比較的低い集積度の高い半導体部品を、高温環境空間に設置されるスタッカクレーン側に設けずに済む。したがって、スタッカクレーンの制御のための演算処理を行う半導体部品の熱暴走等による動作不良を防止して、スタッカクレーンを適切に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】自動倉庫設備の全体平面図
【図2】自動倉庫設備の一部側面図
【図3】スタッカクレーンの平面図
【図4】スタッカクレーンの下部拡大正面図
【図5】消火ホースの構成図
【図6】制御ブロック図
【図7】一対の消火ホースの配設状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る自動倉庫設備の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の自動倉庫設備では、複数のリチウムイオン電池パッケージの集合体を物品Wとして保管する。
[全体構成]
図1及び図2に示すように、建物内に形成される常温環境空間Z1の床面Fに区画壁1が設けられ、この区画壁1により常温環境空間Z1から仕切られた高温環境空間Z2に物品収納棚2及びスタッカクレーン3が設置されている。図示は省略するが、区画壁1は天井側にも形成されており、上下方向においても常温環境空間Z1と高温環境空間Z2とが仕切られている。つまり、高温環境空間Z2は、区画壁1により常温環境空間Z1から仕切られた閉空間となっている。高温環境空間Z2内の気温は、図示しない空調装置により常温環境空間Z1内の気温よりも高温(例えば、60℃)に維持されている。
【0029】
区画壁1の一側面には、常温環境空間Z1と高温環境空間Z2との間で物品Wを搬出入するための搬出入口4と、スタッカクレーン3のメンテナンス等をする作業員が出入りするための作業用出入り口5が形成されている。搬出入口4の上縁部には搬出入口4を開閉自在なシートシャッタ6が設けられている。シートシャッタ6は、通常時は閉状態となっており、物品Wを搬出入するときに自動的に開状態となる。
【0030】
搬出入口4の常温環境空間Z1側には、搬出入コンベヤ7が設けられ、搬出入口4の高温環境空間Z2側には、入出庫コンベヤ8が設けられている。搬出入コンベヤ7は所定の搬入元から搬出入口4まで物品Wを搬送し、シートシャッタ6の開状態において入出庫コンベヤ8に物品Wを受け渡す。入出庫コンベヤ8は、受け取った物品Wをスタッカクレーン3に対する受け渡し用位置まで搬送する。また、入出庫コンベヤ8は、受け渡し用位置から搬出入口4まで物品Wを搬送し、シートシャッタ6の開状態において搬出入コンベヤ7に物品Wを受け渡す。搬出入コンベヤ7は、受け取った物品Wを所定の搬出先に搬送する。
【0031】
作業用出入り口5には、開閉自在なドア9と、このドア9が閉じ状態であることを検出するドアスイッチ10が設けられている。
【0032】
[物品収納棚]
物品収納棚2は、スタッカクレーン3の走行経路の両脇に設置され、物品Wを収納自在な収納部11を縦横に並ぶ状態で複数備えている。収納部11の夫々は、上下左右の側面に防火パネルが備えられており、隣接する収納部11同士の収納空間は区切られている。収納部11の上側面の防火パネルの下面には、熱及び煙を検出する火災センサ12(図6参照)が取り付けられている。図1では図示しないが、各収納部11の火災センサ12は、区画壁1を貫通する信号線により常温環境空間Z1側に配置された後述する管理コントローラHに接続されており、火災センサ12の検出信号が管理コントローラHに入力されるようになっている。
【0033】
[貯水槽]
一対の物品収納棚2のうちの一方の物品収納棚2における横幅方向で外方に隣接する箇所に、火災が発生した物品Wを水没させて火災を鎮火させるための貯水槽13が設置されている。貯水槽13には、物品Wを載置支持する荷受枠14が昇降自在に備えられている。荷受枠14は、水面上に位置する荷受高さと水中に没入する水没高さとに亘って一対の電動モータ15により、昇降ガイド16に沿って、昇降駆動される。荷受枠14は通常時は荷受高さにて待機しており、火災が発生して収納部11においてスタッカクレーン3による初期消火が施された火災物品Wがスタッカクレーン3により荷受枠14上に出庫されると、自動的に水没高さに下降するように構成されている。
【0034】
[スタッカクレーン]
スタッカクレーン3は、物品収納棚2の前面側に設定された走行経路における床面Fに設置された走行レール17に沿って走行自在な走行台車18、走行台車18に立設された前後一対の昇降マスト19に沿って昇降自在な昇降台20、及び、昇降台20に装備されて収納部11との間で物品Wを移載自在な移載装置としてのフォーク装置21を備えている。
【0035】
走行台車18の管理コントローラHが設置されている側(以下、HP側という)の端部には、走行用モータM1、昇降用モータM2が設けられ、昇降台20には、移載用モータM3が設けられている。フォーク装置21は、移載用モータM3の正逆の回転作動により左右両側に出退自在に構成されている。そして、スタッカクレーン3は、走行用モータM1による走行台車18の走行作動、昇降用モータM2による昇降台20の昇降作動により、フォーク装置21を移載対象の収納部11や入出庫コンベヤ8についての移載用位置に位置させた後、移載用モータM3によるフォーク装置21の出退作動や昇降台20の昇降作動による卸し用の移載作動や掬い用の移載作動を行うことで、一対の物品収納棚2の夫々についての収納部11と、入出庫コンベヤ8又は貯水槽13における荷受枠14との間で物品Wを搬送することができるようになっている。
【0036】
走行台車18の走行位置を検出する走行位置検出手段としての走行用ロータリエンコーダRE1が走行台車18に設けられ、昇降台20の昇降位置を検出する昇降位置検出手段としての昇降用ロータリエンコーダRE2、及び、フォーク装置21の出退位置を検出する出退位置検出手段としての移載用ロータリエンコーダRE3が昇降台20に設けられている(図6参照)。
【0037】
図示は省略するが、走行用ロータリエンコーダRE1は、走行レールに沿って設けられたラックギヤに歯合するピニオンギヤの回転量に応じた数のパルスを出力する。昇降用ロータリエンコーダRE2は、昇降用モータM2により回転駆動される昇降用駆動スプロケットの回転量に応じた数のパルスを出力する。昇降用駆動スプロケットは、昇降台20の前後における上端部及び下端部に両端が接続されて、上部フレームに設けられた従動スプロケット及び走行台車18に設けられた複数の案内スプロケットを経由してHP側の昇降マストの内部を経由する状態でスタッカクレーン3の上下に渡って巻き掛けられた一対の吊り下げ用ループチェーンを巻回作動させる。移載用ロータリエンコーダRE3は、移載用モータM3により回転駆動される出退用駆動スプロケットの回転量に応じた数のパルスを出力する。出退用駆動スプロケットは、フォーク装置21に設けられたラックギヤに歯合するピニオンギヤと同軸の従動スプロケットに巻き掛けられた環状チェーンを巻回作動させる。
【0038】
図2に示すように、昇降台20には、各パイプやL字部材により枠組みして構成された支持枠22が取り付けられている。支持枠22には4本の支持ブラケット23により、スタッカクレーン3の前後方向に間隔を隔てて設置されて縦軸心周りに揺動自在な前後一対のガイド棒24を備えた荷姿異常検出装置25が取り付けられている。一対のガイド棒24の夫々は、揺動基端部に設けられたコイルバネより基準位置に付勢されており、ガイド棒24が揺動したときの揺動基端部の位置変化を検出する一対のリミットスイッチが支持ブラケット23に取り付けられている。一対のガイド棒24の前後方向の設置間隔は、物品Wの幅より僅かに長く設定されており、また、一対のガイド棒24の上部には水平部分が形成されている。これにより、フォーク装置21に載置支持された物品Wを移載する時に、物品Wがガイド棒24に接触した場合に対応するリミットスイッチがオンすることで、上下方向及び前後方向での物品Wの荷姿の異常を検出できるようになっている。なお、荷姿異常検出装置25は、昇降台20の左右両側に設けられている。
【0039】
[消火ノズル]
図2、図3及び図7に示すように、昇降台20の支持枠22には、収納部11に対して二酸化炭素ガスを散布する消火ノズル26が一対設けられている。消火ノズル26には、常温環境空間Z1において区画壁1に近接して設置された二酸化炭素ボンベ27から、消火ホース30により消火剤としての二酸化炭素ガスが供給される。このように、消火剤としての二酸化炭素ガスを供給自在な消火剤供給源としての二酸化炭素ボンベ27から二酸化炭素ガスの供給を受けて収納部11に対して二酸化炭素ガスを散布する消火ノズル26がスタッカクレーン3における昇降台20に設けられ、二酸化炭素ボンベ27と消火ノズル26とに亘って接続されて二酸化炭素ボンベ27から消火ノズル26まで二酸化炭素ガスを通流させる消火ホース30が設けられている。
【0040】
本実施形態では、消火ノズル26として、一対の物品収納棚2の夫々に対抗する向きで配置された一対の消火ノズル26を備えている。消火ホース30として、一対の消火ノズル26の夫々に対応して二本の消火ホース30が設けられ、これらが一対の二酸化炭素ボンベ27に各別に接続されている。
【0041】
[二酸化炭素ボンベ]
図6及び図7に示すように、二酸化炭素ボンベ27の頭部には、レギュレータ及び電磁式の開閉弁としての電磁弁48が取り付けられている。電磁弁48は、管理コントローラHにより開閉制御されることで、二酸化炭素ボンベ27から消火ホース30に二酸化炭素ガスを供給する供給状態と供給停止状態とに切り換える。電磁弁48は、常温環境空間Z1に設けられているため、動作保障温度範囲内であることからその動作が保障される。
【0042】
[走行用ケーブルガイド]
図1、図2及び図6に示すように、スタッカクレーン3の作動を制御する地上側コントローラとしての管理コントローラHが、常温環境空間Z1に設置されている。管理コントローラHとスタッカクレーン3とは、区画壁1を貫通する状態で設けられ制御信号を伝送する制御線31により接続されている。制御線31は、高温環境空間Z2において、走行経路に沿って設けられた走行用ケーブルガイド32に収容されて走行台車18の走行に伴って配設経路が変形自在な走行用被ガイド部分31aを備えて構成されている。制御線31は、複数の信号線がナイロンスリーブ等で収束保護された束状のハーネスとなっており、結束された状態で走行用ケーブルガイド32に収容されている。
【0043】
前記消火ホース30は、高温環境空間Z2において、前記走行用ケーブルガイド32に収容されて走行台車18の走行に伴って配設経路が変形自在な走行用被ガイド部分30aを備えて構成されている。つまり、制御線31及び消火ホース30が、共通の走行用ケーブルガイド32に収容されている。
【0044】
図1及び図4に示すように、床面Fには走行レール17に沿ってガイド設置プレート40が設置され、走行用ケーブルガイド32の消火剤供給方向で下流側の一端部32f(以下、床側端部32fという)が、走行経路の中間箇所においてガイド設置プレート40に接続され、他端部32h(以下、台車側端部32hという)が、走行台車18のHP側端部に設けられた走行用ケーブルガイド取付ブラケット41に接続されて支持されている。
【0045】
走行用ケーブルガイド取付ブラケット41の近傍には、走行用インバータINV1、昇降用インバータINV2及び移載用インバータINV3を収容するインバータ収納用の筐体42が設置されており、図2及び図3にも示すように、走行用ケーブルガイド32の台車側端部32hから結束状態で引き出された制御線31はこの筐体内に結束状態で引き込まれ、制御線31を構成する各信号線が筐体42内のインバータや端子台43(図6参照)に接続されている。
【0046】
図3及び図4に示すように、走行台車18は、幅方向で昇降台20より幅狭に構成されており、走行用ケーブルガイド32が、床面Fにおいて走行台車18の幅方向で昇降台20と重複する位置に配置されている。これにより、昇降台20が下限位置まで下降した場合に走行台車18の両脇に形成される空間を有効に利用して走行用ケーブルガイド32を配置でき、走行用ケーブルガイド32を設置する場合のスペース効率を向上させている。
なお、図4中、28は走行用モータM1により回転駆動されて走行レール17の上面を転動する走行駆動輪、29は走行レール17の左右の側面を転動して走行台車18の左右方向の移動を規制する左右一対のガイドローラである。
【0047】
[昇降用ケーブルガイド]
図2、図3及び図7に示すように、消火ホース30における高温環境空間Z2に位置する部分は、走行用被ガイド部分30aよりも消火剤供給方向で下流側において、HP側の昇降マスト19に沿って配設されるマスト設置部分33を有している。消火ホース30のマスト設置部分33は、昇降用ケーブルガイド35に収容されて昇降台20の昇降に伴って配設経路が変形自在な昇降用被ガイド部分33aを備えている。昇降用ケーブルガイド35から引き出された一対の消火ホース30は、昇降台設置部分36として、長手方向の複数箇所をインシュロックなどにより昇降台20における支持枠22の構成部材に沿うように固定状態で配設され、一対の消火ノズル26の夫々に接続されている。
【0048】
図2、図3及び図6に示すように、スタッカクレーン3は、制御線31に伝送される制御信号のうちフォーク装置21についての制御信号を伝送する移載装置用制御線34を備えている。移載装置用制御線34は、本実施形態では、昇降台20に設けられている移載用ロータリエンコーダRE3の出力信号を伝送する信号線(図6参照)及び一対の荷姿異常検出装置25が供えるリミットスイッチの検出信号を伝送する信号線(図示せず)である。移載装置用制御線34は、一端が筐体42に収容されている端子台43に接続されて、筐体42の配線口から引き出されて、HP側の昇降マスト19に沿って配設されて、他端部が移載用ロータリエンコーダRE3に接続されている。移載装置用制御線34は、前記昇降用ケーブルガイド35に収容されて昇降台20の昇降に伴って配設経路が変形自在な昇降用被ガイド部分34aを備えている。
【0049】
つまり、移載装置用制御線34及び消火ホース30のマスト設置部分33が、共通の昇降用ケーブルガイド35に収容されて昇降台20の昇降に伴って配設経路が変形自在な昇降用被ガイド部分33a・34aを備えている。
【0050】
図2、図3及び図7に示すように、昇降用ケーブルガイド35は、消火剤供給方向で下流側の一端部(以下、マスト側端部35mという)が、HP側の昇降マスト19から走行台車18の横幅方向で一方側に延設する状態で設けられた昇降用ケーブルガイド取付ブラケット44に接続されて支持され、他端部(以下、昇降台側端部35v)が、昇降台20のHP側の端部に設けられた昇降台側取付ブラケット45に接続されて支持されている。
【0051】
ちなみに、図6に示すように、本実施形態では、スタッカクレーン3の作動用電力は、常温環境空間Z1から区画壁1を貫通して配設される給電ケーブル37にて電源46から供給される。図4及び図6に示すように、給電ケーブル37は、消火ホース30及び制御線31と同様に、共通の走行用ケーブルガイド32に収容されており、走行台車18の走行に伴って配設経路が変形自在な走行用被ガイド部分37aを備えて構成されている。走行用ケーブルガイド32の台車側端部32hから引き出された給電ケーブル37は、筐体42に引き込まれ、走行用インバータINV1、昇降用インバータINV2、及び、移載用インバータINV3の夫々に接続され、電力を供給する。
【0052】
また、図6に示すように、移載用インバータINV3から移載用モータM3に供給される電力は移載用給電ケーブル38により送電される。移載用給電ケーブル38は、消火ホース30のマスト設置部分33や移載装置用制御線34と同様に、共通の昇降用ケーブルガイド35に収容されており、昇降台20の昇降に伴って配設経路が変形自在な昇降用被ガイド部分38aを備えて構成されている。
【0053】
[ホース構造]
図5に示すように、一対の消火ホース30の夫々は、3つの中継接続部J1〜J3により長手方向に4つの区間に分割されている。すなわち、二酸化炭素ボンベ27の電磁弁48と床面に設置された第1中継接続部J1と間に配設される第1ホース部分301、第1中継接続部J1と走行台車18のHP側の端部に取り付けられた第2中継接続部J2との間に配設され、その中間部分が走行用ケーブルガイド32に収容された走行用被ガイド部分30aを形成している第2ホース部分302、第2中継接続部J2とHP側の昇降マスト19の中間高さに設けられた第3中継接続部J3と間に設けられた第3ホース部分303、第3中継接続部J3と消火ノズル26との間に設けられ、その中間部分が昇降用ケーブルガイド35に収容された昇降用被ガイド部分33aを形成している第4ホース部分304の4つのホース部分301〜304により消火ホース30が構成されている。
【0054】
ホース部分301〜304は両端部に筒状の口金具が設けられており、第1中継接続部J1〜第3中継接続部J3の夫々は二酸化炭素ガスを通流させる通流路が形成されている。そして、ホース部分301〜304はホース部分301〜304に対して着脱自在に接続されており、全てのホース部分301〜304が接続されることで、電磁弁48から消火ノズル26までが連通して二酸化炭素ガスの通流路が形成される。
【0055】
そして、消火ホース30のうち走行用ケーブルガイド32に収容されて走行台車18の走行に伴って配設経路が変形自在な走行用被ガイド部分30aは、第2ホース部分302の中間部に形成されているため、第2ホース部分302は、消火ホース30における走行用被ガイド部分30aを含む部分である。そして、この第2ホース部分302の両端部は、地上側、つまり、床面Fに固定状態で配設された地上側ホース部分としての第1ホース部分301と走行台車18及びHP側の昇降マスト19に固定状態で配設されたクレーン側ホース部分としての第3ホース部分303の消火剤供給方向で上流側の部分に着脱自在に接続されている。また、消火ホース30のうちHP側の昇降マスト19に沿って配設されたマスト設置部分33は、第3分割部分303の消火剤供給方向で下流側の部分と、第4分割部分304の消火剤供給方向で上流側の部分とで構成されている。
【0056】
[制御構成]
図6の制御ブロック図に示すように、前述の走行用モータM1及びこの走行用モータM1を駆動する走行用インバータINV1、昇降用モータM2及びこの昇降用モータM2を駆動する昇降用インバータINV2、並びに、移載用モータM3及びこの移載用モータM3を駆動する移載用インバータINV3は、高温環境空間Z2に設置されるスタッカクレーン3に備えられている。そして、常温環境空間Z1に設置された管理コントローラHは、高温環境空間Z2に設置されたスタッカクレーン3が備える各インバータに対して対応するモータについての制御信号を各別に指令するように構成されている。
【0057】
インバータに指令される制御信号としては、例えば、電圧値や周波数をPWM制御する場合のパルス信号が指令される。つまり、スタッカクレーン3の走行作動、昇降作動及び移載作動を適切に制御するために必要な高度な演算処理は管理コントローラHに実行させ、演算処理の必要のない信号に基づいて動作するインバータにモータを駆動させて、スタッカクレーン3の作動させる構成を採用している。このようにして、高度な演算処理が可能な高性能なマイクロコンピュータ等のような適正動作温度の上限が比較的低い集積度の高い半導体部品を、高温環境空間Z2に設置されるスタッカクレーン3側に設けずに済むようにしている。したがって、スタッカクレーン3の制御のための演算処理を行う半導体部品の熱暴走等による動作不良を防止して、スタッカクレーン3を適切に作動させることができる。
【0058】
なお、本実施形態では、図6に示すように、管理コントローラHは、スタッカクレーン3の運転中に前述のドアスイッチ10のオン信号が途絶えると、電源制御装置47に対して、給電ケーブル37による電力の供給を強制的に停止する電力遮断指令を出力して、スタッカクレーン3の作動を停止させる非常停止手段を備えている。これにより、スタッカクレーン3の作動中に作業者用出入り口5から作業者が高温環境空間Z2に進入しても、スタッカクレーン3との接触事故を未然に防ぐことができる。
【0059】
[消火処理]
次に、収納部11に収納されている物品Wに火災が発生した場合の管理コントローラHが実行する消火処理における制御動作を簡単に説明する。
収納部11の物品Wに火災が発生すると、火災センサ12がこれを検出し、火災検出信号が管理コントローラHに送信される。管理コントローラHは、火災検出信号を何れの火災センサ12からの信号であるかを識別可能な状態で受信すると、火災が発生した収納部11を判別し、当該収納部11の掬い用の移載位置にスタッカクレーン3のフォーク装置21を位置させる。なお、火災発生時に、スタッカクレーン3が他の物品Wの搬送作業中であれば、その搬送作業を完了させた後、又は、中断させた後、火災が発生した収納部11に移動させればよい。
【0060】
火災が発生した収納部11への移動が完了すると、管理コントローラHは、当該収納部11が設けられている物品収納棚2に対応する側の消火ノズル26に接続されている二酸化炭素ボンベ27の電磁弁48を開制御して供給状態に切り換える。これにより、収納部11における物品Wに向けて消火ノズル26から二酸化炭素ガスが噴出され、当該物品Wの初期消火が行われる。
【0061】
設定時間の初期消火が完了すると、管理コントローラHは、電磁弁48を閉操作し供給停止状態に切り換える。物品Wを収納部11から掬い取り、貯水槽13まで搬送して荷受枠14に受け渡すようにスタッカクレーン3の作動を制御する。荷受枠14に物品Wが載置されると、荷受枠14が下降移動され、物品Wが貯水槽13内に水没されて物品Wの火災が沈火する。
【0062】
〔別の実施形態〕
以上、発明者によってなされた発明を発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。以下、本発明の別実施形態について説明する。
【0063】
(1)上記実施形態では、スタッカクレーン3に接続された給電ケーブル37によりスタッカクレーン3の作動用電力を供給するものを例示したが、これに代えて、走行レール17に沿って地上側に給電レールを設けて、給電レールから接触又は非接触状態で電力を受け取り自在な集電部をスタッカクレーン3に設けて、給電レール及び集電部によりスタッカクレーン3の作動用電力を供給するものでもよい。
【0064】
(2)上記実施形態では、複数のリチウムイオン電池パッケージの集合体を物品として収納する自動倉庫設備を例示したが、これに限らず、発火のおそれのある物品に対して適用可能である。
【0065】
(3)上記実施形態では、収納部11の夫々に火災センサ12を備えて火災が発生した収納部を検出するものを例示したが、これに限らず、例えば、高温環境用の赤外線カメラ等の撮像装置を収納部やスタッカクレーンに設けて、その映像から火災の発生を検出し収納部を判別する等、その他の構成により火災が発生した収納部を検出するものであってもよい。
【0066】
(4)上記実施形態では、消火剤として二酸化炭素ガスを用いたものを例示したが、これに限らず、消火剤としては、水や発泡状の液体などであってもよい。
【0067】
(5)上記実施形態では、移載装置用制御線を消火ホースの昇降用被ガイド部分と共通の昇降用ケーブルガイドに収容されたものを例示したが、移載装置用制御線を案内する別のケーブルガイドを設けてもよい。また、移載装置用制御線を設けることなく、無線通信により移載装置用の制御信号を伝送する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0068】
2 物品収納棚
3 スタッカクレーン
11 収納部
18 走行台車
19 昇降マスト
20 昇降台
21 移載装置
26 消火ノズル
27 消火剤供給源
30 消火ホース
30a 走行用被ガイド部分
301 地上側ホース部分
302 消火ホースにおける走行用被ガイド部分を含む部分
303 クレーン側ホース部分
31 制御線
31a 走行用被ガイド部分
32 走行用ケーブルガイド
33 マスト設置部分
33a 昇降用被ガイド部分
34 移載装置用制御線
34a 昇降用被ガイド部分
35 昇降用ケーブルガイド
48 電磁弁
F 床面
H 地上側コントローラ
INV1 走行用インバータ
INV2 昇降用インバータ
INV3 移載用インバータ
M1 走行用モータ
M2 昇降用モータ
M3 移載用モータ
RE1 走行用ロータリエンコーダ
RE2 昇降用ロータリエンコーダ
RE3 移載用ロータリエンコーダ
W 物品
Z1 常温環境空間
Z2 高温環境空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を収納する収納部を複数備えた物品収納棚と、
前記物品収納棚の前面側に設定された走行経路に沿って走行自在な走行台車、前記走行台車に立設された昇降マストに沿って昇降自在な昇降台、及び、前記昇降台に装備されて前記収納部との間で物品を移載自在な移載装置を備えたスタッカクレーンと、
地上側に設置されて前記スタッカクレーンの作動を制御する地上側コントローラとが設けられ、
消火剤を供給自在な消火剤供給源から消火剤の供給を受けて前記収納部に対して消火剤を散布する消火ノズルが前記スタッカクレーンにおける前記昇降台に設けられている自動倉庫設備であって、
前記物品収納棚及び前記スタッカクレーンが、常温環境空間の気温よりも高温に維持されている高温環境空間に設置され、
前記消火剤供給源と前記地上側コントローラとが、前記常温環境空間に設置され、
前記地上側コントローラと前記スタッカクレーンとに亘って接続されて制御信号を伝送する制御線が設けられ、
前記消火剤供給源と前記消火ノズルとに亘って接続されて前記消火剤供給源から前記消火ノズルまで消火剤を通流させる消火ホースが設けられ、
前記制御線及び前記消火ホースが、前記高温環境空間において、前記走行経路に沿って設けられた共通の走行用ケーブルガイドに収容されて前記走行台車の走行に伴って配設経路が変形自在な走行用被ガイド部分を備えて構成されている自動倉庫設備。
【請求項2】
前記走行台車は、前記走行台車の幅方向で前記昇降台より幅狭に構成されており、
前記走行用ケーブルガイドが、床面において前記走行台車の幅方向で前記昇降台と重複する位置に配置されている請求項1記載の自動倉庫設備。
【請求項3】
前記消火ホースにおける前記高温環境空間に位置する部分は、前記走行用被ガイド部分よりも消火剤供給方向で下流側において、前記昇降マストに沿って配設されるマスト設置部分を有し、
前記スタッカクレーンは、前記制御線に伝送される制御信号のうち前記移載装置についての制御信号を伝送する移載装置用制御線を備え、
前記移載装置用制御線は、前記昇降マストに沿って配設され、
前記移載装置用制御線及び前記消火ホースの前記マスト設置部分が、共通の昇降用ケーブルガイドに収容されて前記昇降台の昇降に伴って配設経路が変形自在な昇降用被ガイド部分を備えて構成されている請求項1又は2記載の自動倉庫設備。
【請求項4】
前記消火ホースにおける前記走行用被ガイド部分を含む部分の両端部が、地上側に固定状態で配設された地上側ホース部分と前記走行台車及び前記昇降マストに固定状態で配設されたクレーン側ホース部分とに着脱自在に接続されている請求項1〜3の何れか一項記載の自動倉庫設備。
【請求項5】
前記消火剤が二酸化炭素ガスであり、
前記消火剤供給源が、二酸化炭素ボンベにて構成され、
前記二酸化炭素ボンベから前記消火ホースに二酸化炭素ガスを供給する供給状態と供給停止状態とに切り換える電磁式の開閉弁が、前記常温環境空間に設けられている請求項1〜4の何れか一項記載の自動倉庫設備。
【請求項6】
前記スタッカクレーンは、
走行用モータ及びこの走行用モータを駆動する走行用インバータ、
昇降用モータ及びこの昇降用モータを駆動する昇降用インバータ、並びに、
移載用モータ及びこの移載用モータを駆動する移載用インバータを備え、
前記地上側コントローラは、前記走行用インバータ、前記昇降用インバータ、及び前記移載用インバータに対して各別に、対応するモータについての前記制御信号を指令自在に構成されている請求項1〜5の何れか一項記載の自動倉庫設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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