説明

自動免疫分析装置

【課題】反応容器の向きを揃えて供給でき、短時間に大量のサンプルの分析測定ができる小型の自動免疫分析装置を提供する。
【解決手段】円形の反応ターンテーブル11に複数個セットされた反応容器12内の検体中の測定対象物を抗原抗体反応を利用して免疫学的に測定する自動免疫分析装置10において、円形の反応ターンテーブル11の外周に、反応容器12を整列させて順次供給する容器供給ユニット13と、反応容器12に検体Pを分注する複数本の検体ボトル21を保持した検体ターンテーブル20と、反応容器に試薬を分注する複数本の試薬ボトル25,25′を保持した試薬ターンテーブル24,24′と、検体をB/F分離・洗浄するBF洗浄ユニット28と、分析項目に対応する目的の測定対象物を測定する検出器29とをそれぞれ設け、容器供給ユニット13に反応容器12の向きを90度回転させて整列させる容器整列機構30を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液(特に血清)、尿、唾液、髄液等の検体(試料)中の特定の抗原または抗体を定量する酵素免疫測定(Enzyme Immuno Assay)に用いて好適な自動免疫分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、血液等に含まれるグロブリン、酵素等の蛋白質、ホルモン、細菌、ウイルス等は、その分子構造が類似していたり、ごく微量であるために、通常の分析方法では固定や定量が困難である。これらの物質の分析には、一般に抗原抗体反応を利用した免疫化学的分析方法として特異性が高く、検出感度に優れたEIA法(酵素免疫測定法)が採用されている。通常、このEIA法では、測定対象物に応じた抗原または抗体を固相に結合して用い、これに検体(試料)中の測定対象物を接触させる。次いで、標識化合物である酵素で標識された測定対象物に特異的に反応する抗原または抗体を反応させて固定化し(Bound)、洗浄を繰り返して未反応の酵素標識抗体(Free)を完全に除去する(Bound/Free分離。以下、「B/F分離」という)。この後、検体中の測定対象物と結合した標識物の酵素の活性を測定し、検体中の測定対象物を定量するものである。
【0003】
従って、EIA法を実施するにあたっては、分注、希釈、攪拌、B/F分離・洗浄、固相の移動等の複雑な操作が必要である。また、この実施には、一般に固相が用いられており、ポリスチレンビーズ、磁性粒子、反応容器の内壁等が知られている。この中で高感度かつ迅速な測定を行うために、固相として磁性体微粒子を用い磁石でB/F分離を行う技術や自動免疫分析装置が以前から開発されている。
【0004】
この種の自動免疫分析装置として、図8に示すものがある(例えば、特許文献1参照。)。この自動免疫分析装置1は、図8に示すように、反応容器Kを直線の反応ラインの方向に移送する移送体2と、移送器3aを備え、移送体2上に反応容器Kを供給する反応容器ストッカー3と、分注器4aを備え、反応容器K内に血液等の検体を供給する検体供給部4と、各分注器5b,5dを介して反応容器K内に試薬を分注する一対の試薬ターンテーブル5a,5cを備えた第1試薬格納部5及び第2試薬格納部6と、第1及び第2のB/F分離・洗浄部7a,7bと、移送器8aを備え、分析項目に対応する目的の測定対象物を測定する計測部8と、使用済みの反応容器Kを廃棄する廃棄部9とで構成されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−91521号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の自動免疫分析装置1では、直線状の反応ラインを構成する移送体2に臨むようにして、反応容器ストッカー3と検体供給部4と第1試薬格納部5と第2試薬格納部6と第1及び第2のB/F分離・洗浄部7a,7bと計測部8及び廃棄部9を直線的に配しているため、装置全体が大型化になり、また、分析測定に長時間を要した。さらに、向きが揃っていない反応容器Kを反応容器ストッカー3に整列させて供給することが煩雑であった。
【0007】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、反応容器の向きを揃えて供給することができ、かつ、短時間に大量のサンプルの分析測定を行うことができる小型の自動免疫分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、円形の反応ターンテーブルに複数個セットされた反応容器内の検体中の測定対象物を抗原抗体反応を利用して免疫学的に測定する自動免疫分析装置において、前記円形の反応ターンテーブルの外周に、前記反応容器を整列させて順次供給する容器供給ユニットと、前記反応容器に検体を分注する複数本の検体ボトルを保持した検体ターンテーブルと、前記反応容器に試薬を分注する複数本の試薬ボトルを保持した試薬ターンテーブルと、前記検体をB/F分離・洗浄するBF洗浄ユニットと、分析項目に対応する目的の測定対象物を測定する検出器とをそれぞれ設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、円形の反応ターンテーブルに複数個セットされた反応容器内の検体中の測定対象物を抗原抗体反応を利用して免疫学的に測定する自動免疫分析装置において、前記円形の反応ターンテーブルの外周に、前記反応容器を整列させて順次供給する容器供給ユニットと、前記反応容器に検体を分注する複数本の検体ボトルを保持した検体ターンテーブルと、前記反応容器に試薬を分注する複数本の試薬ボトルを保持した試薬ターンテーブルと、前記検体をB/F分離・洗浄するBF洗浄ユニットと、分析項目に対応する目的の測定対象物を測定する検出器とをそれぞれ設け、前記容器供給ユニットに、前記反応容器の向きを90度回転させて整列させる容器整列機構を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、円形の反応ターンテーブルの外周に、反応容器を整列させて順次供給する容器供給ユニットと、反応容器に検体を分注する複数本の検体ボトルを保持した検体ターンテーブルと、反応容器に試薬を分注する複数本の試薬ボトルを保持した試薬ターンテーブルと、検体をB/F分離・洗浄するBF洗浄ユニットと、分析項目に対応する目的の測定対象物を測定する検出器とをそれぞれ設けたことにより、自動免疫分析装置の全体の小型化を図ることができると共に、大量のサンプルの分析測定を短時間で処理することができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、円形の反応ターンテーブルの外周に、反応容器を整列させて順次供給する容器供給ユニットと、反応容器に検体を分注する複数本の検体ボトルを保持した検体ターンテーブルと、反応容器に試薬を分注する複数本の試薬ボトルを保持した試薬ターンテーブルと、検体をB/F分離・洗浄するBF洗浄ユニットと、分析項目に対応する目的の測定対象物を測定する検出器とをそれぞれ設け、容器供給ユニットに、反応容器の向きを90度回転させて整列させる容器整列機構を備えたことにより、自動免疫分析装置の全体の小型化を図ることができると共に、大量のサンプルの分析測定を短時間で処理することができる。さらに、容器整列機構により、反応容器を90度回転させて向きを揃えた整列状態で容器供給廃棄ディスク上にスムーズに供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施形態の自動免疫分析装置を示す全体の平面図、図2は同自動免疫分析装置に用いられる容器整列機構の側面図、図3は同容器整列機構を一部断面で示す背面図、図4は同容器整列機構の要部の概略構成を示す斜視図、図5乃至図7は同自動免疫分析装置によるステップ分析の各例を示すフローチャートである。
【0014】
図1に示すように、自動免疫分析装置10は、恒温(37℃)に維持されて回転する円形の反応ターンテーブル11の外周に、反応容器12を整列させて順次供給する容器供給ユニット13と、反応容器12を供給したり、廃棄する容器供給廃棄ディスク14と、この容器供給廃棄ディスク14上に配置され、反応容器12内の検体(試料)Pを遠心分離させる遠心器17と、反応容器12に検体Pを分注する複数本の検体ボトル21及び希釈液ボトル22を保持した円形の検体ターンテーブル20と、反応容器12に試薬R,R′を分注する複数本の試薬ボトル25,25′を保持した円形で一対の試薬ターンテーブル24,24′と、B/F分離用の磁石27と、検体をB/F分離・洗浄するBF洗浄ユニット28と、分析項目に対応する目的の測定対象物を光学的に計測するホトルマンの検出器29とをそれぞれ設けており、円形の反応ターンテーブル11の円周上に円環状に52個セットされた反応容器12内の検体P中の測定対象物を抗原抗体反応を利用して免疫学的に測定するものである。
【0015】
容器供給廃棄ディスク14に供給された反応容器12は、容器移送ユニット15により円形の反応ターンテーブル11の円周上に移送されてセットされるようになっている。また、円形の反応ターンテーブル11にセットされてB/F分離・洗浄された反応容器12は、容器移送ユニット15により検出器29に移送され、該検出器29で光学的に計測された使用済みの反応容器12は、容器移送ユニット15により容器供給廃棄ディスク14上の廃棄部18に移送されるようになっている。さらに、容器供給廃棄ディスク14上に配置された遠心器17へは別の容器移送ユニット16により反応容器12が移送されるようになっている。また、使用済みの反応容器12は、容器移送ユニット16により容器供給廃棄ディスク14上の別の廃棄部19に移送されるようになっている。
【0016】
また、円形の検体ターンテーブル20に保持された検体ボトル21内の検体P及び希釈液ボトル22内のコントロールスタンダードとしての希釈液Qは、分注ノズルを備えた検体分注ピペッタ23により、円形の反応ターンテーブル11の円周上にセットされた反応容器12内や遠心器17にセットされた反応容器12内にそれぞれ分注されるようになっている。さらに、一対の試薬ターンテーブル24,24′に保持された試薬ボトル25,25′内の薬液R,R′は、分注ノズルを備えた一対の試薬分注ピペッタ26,26′により、円形の反応ターンテーブル11の円周上にセットされた反応容器12内にそれぞれ分注されるようになっている。
【0017】
また、容器供給ユニット13は、反応容器12の向きを90度回転させて整列させる容器整列機構30を備えている。尚、図1〜図3に示すように、反応容器12は透明な樹脂により形成されており、上端が注入口になっている円筒部12aと底面が矩形で直方体状の容器本体12bとで正面逆T字状になっている。
【0018】
図2〜図4に示すように、容器整列機構30は、反応容器12を投入するシュータ形の投入受板31と、この投入受板31の下方に配置され、反応容器12をその容器本体12bの矩形の底面側より挿入する矩形の上側開口部33が形成された上側案内板32と、この上側案内板32より下方に配置されると共に、該上側案内板32の上側開口部33の位置より90度向きを変えた矩形の下側開口部35が形成された下側案内板34と、これら上側案内板32及び下側案内板34を覆う側板36と、矩形の上側開口部33の相対向する短縁部33a,33aの中央と矩形の下側開口部35の相対向する短縁部35a,35aの中央にガイド棒37を介して1本ずつ掛け渡されたワイヤ(線材)38と、矩形の上側開口部33の相対向する長縁部33b,33bと矩形の下側開口部35の相対向する長縁部35b,35bに位相をずらして2本ずつ掛け渡されたワイヤ(線材)38と、下側案内板34の下方に配置され、90度向きを変えられて揃えられた反応容器12を容器供給廃棄ディスク13上に移送するベルトコンベヤ等から成る移送体39とで構成されている。
【0019】
図4に示すように、上側案内板32の矩形の上側開口部33の相対向する短縁部33a,33aの中央と下側案内板34の矩形の下側開口部35の相対向する短縁部35a,35aの中央に各ガイド棒37を介して1本ずつ掛け渡されたワイヤ38の両端が固定された該各ガイド棒37は、前後方向に移動調節自在になっており、相対向する各ガイド棒37間の間隔を調節することができるようになっている。
【0020】
また、上側案内板32の矩形の上側開口部33の相対向する長縁部33b,33bの中央に掛け渡された一対のワイヤ38,38は、下側案内板34の矩形の下側開口部35の相対向する長縁部35b,35bの相対向する角部から各長縁部35bを1とした場合にその位相を3/8ずらして位置に固定されている。
【0021】
さらに、上側案内板32の矩形の上側開口部33の相対向する長縁部33b,33bの相対向する角部から位相を1/6をずらした位置に掛け渡された他の一対のワイヤ38,38は、下側案内板34の矩形の下側開口部35の相対向する長縁部35b,35bの相対向する別の角部から各長縁部35bを1とした場合にその位相を3/8ずらして位置に固定されている。
【0022】
次に、前記構成の自動免疫分析装置10によるステップ分析の一例を、図5に示すフローチャートにより簡単に説明する。
【0023】
円形の反応ターンテーブル11の円周上の最初のポジション(1番目)にセットされた反応容器12内に、検体分注ピペッタ23を介して円形の検体ターンテーブル20に保持された検体ボトル21内の血液の血清等の検体Pと希釈液ボトル22内の希釈液Qが分注されて所定量の希釈検体が注入される。
【0024】
次に、希釈検体が注入された反応容器12内に、一対の試薬分注ピペッタ26,26′を介して一対の試薬ターンテーブル24,24′に保持された試薬ボトル25,25′内から試薬R,R′としての所定量のビチオン抗体液と標準抗体液が分注され、インキュベーション後に、磁性粒子としての所定量のストレプトアビジン粒子が注入される。
【0025】
そして、所定時間経過した後で、BF洗浄ユニット28で希釈検体がB/F分離・洗浄され、ホトルマンの検出器29にて分析項目に対応する目的の測定対象物が光学的に計測される。
【0026】
この自動免疫分析装置10によれば、円形の反応ターンテーブル11の外周に、反応容器12を整列させて順次供給する容器供給ユニット13と、反応容器12に血液の血清等の検体Pを分注する複数本の検体ボトル21を保持した検体ターンテーブル20と、反応容器12に試薬R,R′を分注する複数本の試薬ボトル25,25′を保持した試薬ターンテーブル20と、検体PをB/F分離・洗浄するBF洗浄ユニット28と、分析項目に対応する目的の測定対象物を光学的に測定する検出器29等をそれぞれ設け、容器供給ユニット13に反応容器12の向きを90度回転させて整列させる容器整列機構30を備えたことにより、自動免疫分析装置10の全体の小型化を図ることができると共に、大量のサンプルの分析測定を短時間で処理することができる。
【0027】
また、図2及び図3に示すように、上,下側案内板32,34とワイヤ38等から成る簡単な構造の容器整列機構30の6本のワイヤ38間を反応容器12が通過することにより、反応容器12を90度回転させて向きを確実に変えることができる。この向きが揃えられた反応容器12は、移送体39により整列した状態で容器供給廃棄ディスク14上に短時間でスムーズに供給される。
【0028】
尚、前記実施形態によれば、反応容器12の向きを90度回転させる線材としてワイヤ38を用いたが、ワイヤ以外の線材を用いても良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態の自動免疫分析装置を示す全体の平面図である。
【図2】上記自動免疫分析装置に用いられる容器整列機構の側面図である。
【図3】上記容器整列機構を一部断面で示す背面図である。
【図4】上記容器整列機構の要部の概略構成を示す斜視図である。
【図5】上記自動免疫分析装置によるステップ分析の一つの例を示すフローチャートである。
【図6】上記自動免疫分析装置によるステップ分析の他の例を示すフローチャートである。
【図7】上記自動免疫分析装置によるステップ分析の別の例を示すフローチャートである。
【図8】従来の自動免疫分析装置の構成を示す概念図である。
【符号の説明】
【0030】
10 自動免疫分析装置
11 円形の反応ターンテーブル
12 反応容器
13 容器供給ユニット
14 容器供給廃棄ディスク
20 検体ターンテーブル
21 検体ボトル
24,24′ 試薬ターンテーブル
25 試薬ボトル
28 BF洗浄ユニット
29 検出器
P 検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の反応ターンテーブルに複数個セットされた反応容器内の検体中の測定対象物を抗原抗体反応を利用して免疫学的に測定する自動免疫分析装置において、
前記円形の反応ターンテーブルの外周に、前記反応容器を整列させて順次供給する容器供給ユニットと、前記反応容器に検体を分注する複数本の検体ボトルを保持した検体ターンテーブルと、前記反応容器に試薬を分注する複数本の試薬ボトルを保持した試薬ターンテーブルと、前記検体をB/F分離・洗浄するBF洗浄ユニットと、分析項目に対応する目的の測定対象物を測定する検出器とをそれぞれ設けたことを特徴とする自動免疫分析装置。
【請求項2】
円形の反応ターンテーブルに複数個セットされた反応容器内の検体中の測定対象物を抗原抗体反応を利用して免疫学的に測定する自動免疫分析装置において、
前記円形の反応ターンテーブルの外周に、前記反応容器を整列させて順次供給する容器供給ユニットと、前記反応容器に検体を分注する複数本の検体ボトルを保持した検体ターンテーブルと、前記反応容器に試薬を分注する複数本の試薬ボトルを保持した試薬ターンテーブルと、前記検体をB/F分離・洗浄するBF洗浄ユニットと、分析項目に対応する目的の測定対象物を測定する検出器とをそれぞれ設け、前記容器供給ユニットに、前記反応容器の向きを90度回転させて整列させる容器整列機構を備えたことを特徴とする自動免疫分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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