説明

自動処理装置及びタッチパネル

【課題】衛生的に維持して、帯電を抑制する。
【解決手段】自動処理装置のタッチパネル1において、所定の処理内容を示す操作画像を表示して当該操作画像に接触される操作面に抗菌性を備える抗菌層1bが形成され、抗菌層1bの表面に導電部材1cが設けられた透明絶縁基板1aが具備されている。このようなタッチパネル1では、ユーザが操作入力を行うために透明絶縁基板1aの操作面をタッチする際に、タッチパネル1の抗菌性が維持されて、ユーザからの電荷が導電部材1cを導通して接地に放電される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動処理装置及びタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等の表示装置上に、ユーザによる操作入力を検知するタッチパネルが設置されている(例えば、特許文献1参照)。このようなタッチパネルは、例えば、現金自動預け払い機(Automated Teller Machine:ATM)に適用することができる。
【0003】
ATMにタッチパネルを適用した場合、ユーザである顧客は、所望の取引を実行するために、表示装置の表示面に表示された操作画像をタッチパネルを介して指先でタッチする。そして、タッチパネルが、タッチされた位置を検知して、当該タッチ位置に対応する取引がATMで実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−185935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このようなATMでは、次のような問題点があった。
ATMは一日に不特定多数の顧客に利用されるため、タッチパネルの操作面には抗菌性を有する抗菌コーティングが施されている。一方、不特定多数の顧客の中には、帯電した状態の顧客がいることもある。特に冬のような乾燥する時期には、人は帯電しやすくなる。タッチパネルは、帯電した状態の顧客により繰り返しタッチされると、タッチパネルを構成する絶縁性の透明絶縁基板(例えば、アクリル板)の操作面に電荷が移動することがある。タッチパネルに電荷が移動すると、当該透明絶縁基板に電荷が蓄積して帯電してしまう。このように帯電したタッチパネルに対して、顧客が指先でタッチすると、顧客は帯電による違和感を覚え、不快な気持ちを受けてしまうという問題点があった。
【0006】
このように顧客に対して不快な気持ちを与えないようにするために、操作面に帯電防止剤の噴霧または帯電防止のためのコーティング加工を行うことが考えられる。しかし、このような帯電防止の方法では、抗菌コーティングの効果が持続されなくなり、タッチパネルを衛生的に維持できなくなるという別の問題点もあった。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてされたものであり、衛生的に維持されて、帯電が防止された自動処理装置及びタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、操作入力を受け付けて処理を自動で行う自動処理装置において、所定の処理内容を示す操作画像を表示して当該操作画像に接触される操作面に抗菌性を備える抗菌層が形成され、前記抗菌層の表面に導電部材が設けられた透明絶縁基板を具備するタッチパネルを有する自動処理装置が提供される。
【0009】
また、上記目的を達成するために、上記の自動処理装置に適用されるタッチパネルが提供される。
【発明の効果】
【0010】
上記の自動処理装置及びタッチパネルによれば、衛生的に維持して、帯電を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施の形態に係るタッチパネルの構成を示す図である。
【図2】第2の実施の形態に係るATMの斜視図である。
【図3】第2の実施の形態に係る表示入力ユニットの構成を示す上面図である。
【図4】第2の実施の形態に係る表示入力ユニットの構成を示す断面図である。
【図5】第2の実施の形態に係るタッチパネルの導電部材の間隔及び幅を説明するための図である。
【図6】第2の実施の形態に係る計測方法を説明するための図である。
【図7】第2の実施の形態に係るタッチパネルに対する電圧の印加回数に応じた帯電電圧を示す図である。
【図8】第2の実施の形態に係る経過時間に応じたタッチパネルの帯電電圧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係るタッチパネルの構成を示す図である。
【0013】
なお、図1(A)は、タッチパネル1の上面図を、図1(B)は、図1(A)の一点鎖線X−Xにおけるタッチパネル1と表示部2との断面図をそれぞれ示している。
タッチパネル1は、ユーザによって繰り返しタッチされても、衛生的に維持されて、電荷の蓄積を防止し、帯電を抑制することができるものである。
【0014】
このようなタッチパネル1は、操作画像を表示する表示部2上に設置された透明絶縁基板1aと、透明絶縁基板1aに対する操作入力を検知する検知部(図示を省略)とを有する。また、タッチパネル1及び表示部2は、例えば、ATM等の自動処理装置の装置本体に設置されて、ユーザに操作画像を視認させて、ユーザからの操作入力を受け付ける。そして、このような装置本体では当該操作入力に応じた処理を実行する。なお、自動処理装置は、ATMに限らず、例えば、駅等の券売機、書店の検索機等のようにユーザからの操作入力に応じて所定の処理を自動的に実行するものである。
【0015】
透明絶縁基板1aは、当該透明絶縁基板1aを介して、表示部2で表示される操作画像が視認される透明の絶縁板である。このような絶縁板として、例えば、アクリル系樹脂で構成されたいわゆるアクリル板等を適用することができる。
【0016】
検知部は、ユーザがタッチパネル1の透明絶縁基板1aを介して表示部2に表示された操作画像に対してタッチした位置を検知する。例えば、透明絶縁基板1aに対して検知部として設置した発光素子・受光素子は、発光素子からの光がユーザのタッチにより遮蔽された位置を検知することができる。なお、タッチパネル1及び表示部2が設置された装置の本体側で、検知したタッチ位置に対応する処理が実行される。
【0017】
また、透明絶縁基板1aの操作面の表面には、抗菌性を有する抗菌層1b(例えば、抗菌性を有するコーティング膜等)が形成されている(図1(B))。
タッチパネル1が銀行のATMに用いられる場合には、抗菌層1bが、不特定多数のユーザ(顧客)により接触されるタッチパネル1に対する細菌の繁殖等を抑制し、抗菌性を維持する。
【0018】
さらに、このような透明絶縁基板1aの抗菌層1bが形成された操作面上に、導電部材1cが設けられている(図1(B))。導電部材1cは、例えば、図1(A)に示されるように、格子状であって、透明絶縁基板1aのタッチされる操作面側の全面を覆っている。また、導電部材1cは、配線3aで抵抗器3を介して接地されている。
【0019】
次に、このようなタッチパネル1に対するユーザの指先でのタッチによる操作入力について説明する。
ユーザは、表示部2に表示される操作画像をタッチパネル1を介して視認する。ユーザは、所望の処理を実行させるために、表示部2に表示されている当該処理内容を表す画像を透明絶縁基板1aの操作面を介して指先でタッチする。
【0020】
この時、ユーザが帯電している場合には、ユーザの指先からタッチパネル1の透明絶縁基板1aの操作面に電荷が移動する。このような操作入力が行われるごとに透明絶縁基板1aの操作面に移動した電荷は、導電部材1cを導電してインピーダンスが低い接地に放電される。このため、電荷は、透明絶縁基板1aの操作面に移動しても、蓄積されず、透明絶縁基板1aの帯電が抑制される。また、導電部材1cは、図1(A)に示されるように、接地との間に抵抗器3が配置されている。このように抵抗器3を配置すると、電荷は導電部材1cから配線3aを導通して緩やかに接地に放電されるようになる。
【0021】
また、このような電荷の放電は、透明絶縁基板1aの抗菌層1bにより、タッチパネル1の透明絶縁基板1aに対する細菌の繁殖等が抑制され、抗菌性が維持された状態で行われる。
【0022】
このように上記のタッチパネル1では、表示部2の表示面上に配置した透明絶縁基板1aの操作入力のためにタッチされる操作面に、抗菌層1bを形成し、接地された導電部材1cを設けるようにした。これにより、ユーザが操作入力を行うために透明絶縁基板1aの操作面をタッチすると、透明絶縁基板1aの細菌の繁殖が防止された状態で、ユーザからの電荷が導電部材1cを導通して接地に放電される。この結果、タッチパネル1の透明絶縁基板1aの操作面は、抗菌性が維持されて、電荷の蓄積が防止されて、操作面の帯電が抑制されるようになる。したがって、ユーザは当該タッチパネル1にタッチしても、タッチパネル1が衛生的に維持され、また、帯電による違和感を覚えなくなり、不快な気持ちをしなくなる。
【0023】
また、透明絶縁基板1aに設けられた導電部材1cに対して、接地との間に抵抗器3を設置するようにした。これにより、電荷は導電部材1cから配線3aを導通して緩やかに接地に放電されるようになる。この結果、ユーザが、タッチパネル1の透明絶縁基板1aの操作面をタッチする際に、導電部材1cに接触しても、ユーザと導電部材1cとの間の電気的な短絡(ショート)の発生が防止されて、ユーザが受ける痛みを抑制することができる。
【0024】
[第2の実施の形態]
次に、上記タッチパネルを具体的に説明すると共に、自動処理装置の一例としてATMに当該タッチパネルを適用した場合について説明する。
【0025】
図2は、第2の実施の形態に係るATMの斜視図である。
ATM10は、銀行、コンビニエンスストア、駅構内等に設置されて、顧客による操作入力に応じて、送金・入金・振込み・引き落とし等の取引を自動的に実行し、また、通帳及びキャッシュカードに当該取引内容を記録することができるものである。
【0026】
このようなATM10は、通帳挿入/排出口11、硬貨投入/放出口12、カード挿入/排出口13、紙幣挿入/放出口14及び表示入力ユニット15が外装されている。
通帳挿入/排出口11及びカード挿入/排出口13は、顧客によって通帳及びキャッシュカードがそれぞれ挿入され、また、ATM10の内部で所定の処理が実行されると、通帳及びキャッシュカードがそれぞれ搬送されて、排出される。
【0027】
硬貨投入/放出口12及び紙幣挿入/放出口14は、顧客による操作入力に応じて、硬貨及び紙幣がそれぞれ投入及び挿入され、また、ATM10の内部で所定の処理が実行されて搬送された硬貨及び紙幣がそれぞれ放出される。
【0028】
表示入力ユニット15は、後述する光学式のタッチパネル20及び液晶ディスプレイ30等から構成されており、顧客によるタッチパネル20に対する操作入力を受け付けて、ATM10は当該操作入力に応じた処理を実行する。また、所定の処理の結果を液晶ディスプレイ30に表示することができる。
【0029】
次に、このような表示入力ユニット15の詳細について説明する。
図3は、第2の実施の形態に係る表示入力ユニットの構成を示す上面図である。
なお、図3(A)は表示入力ユニット15のタッチパネル20の、図3(B)はタッチパネル20に設けられた導電部材22のそれぞれの上面図である。
【0030】
タッチパネル20は、開口部21aを備えた外装樹脂21により外縁部が覆われており、外装樹脂21の開口部21aには、格子状の導電部材22が配置されている(図3(A))。
【0031】
当該外装樹脂21を取り外すと、図3(B)に示されるように、格子状の導電部材22の四隅の各頂点部には、外側に突出した凸部22aが形成されている。
このような導電部材22は、後述するように、コーティング膜24が操作面に形成されたアクリル板25に形成されて、顧客のタッチにより指先から移動した電荷を接地に放電するためのものである。電荷を接地に放出するためには、導電部材22は格子状の場合に限らず、短冊状の導電部材を一方向に複数配列させた形状、梯子状の形状等であっても構わない。なお、導電部材22は格子状であるために、1つの格子を構成する四辺のうち最大3箇所が切断されてしまっても電荷の導通は維持されるため、短冊状の導電部材を一方向に複数配列させた形状等よりも耐久性が優れている。
【0032】
また、導電部材22は、格子状であるために、格子に囲まれたアクリル板25の領域に蓄積した電荷を引き込みやすい。したがって、格子状の導電部材22は、アクリル板25の格子に囲まれた領域に蓄積される電荷を減らして、帯電を抑制することができる。
【0033】
また、導電部材22の四隅の凸部22aには、開口部23aが形成された取付部材23が設置されている。なお、1つの取付部材23の表面抵抗を4つ合わせた取付部材23の合成表面抵抗は、次式(1)で表される。
【0034】
Ra
=[{(r1*r2)/(r1+r2)}*{(r3*r4)/(r3+r4)}]/
[{(r1*r2)/(r1+r2)}+{(r3*r4)/(r3+r4)}]・・・(1)
但し、Raは合成表面抵抗を、r1〜r4を取付部材の1つの表面抵抗をそれぞれ表す。なお、取付部材23は、表面にテープを貼付する等により表面抵抗を所望の抵抗値に制御することができる。
【0035】
このような導電部材22の合成表面抵抗Raの具体例について説明する。
まず、国際電気標準会議(IEC)において公開された、人が電流を感じないレベルの最大の電流Iは0.0005[A]と規定されている。また、タッチする指の表面の一般的な帯電量Vは100[V]程度であることが知られている。したがって、帯電量100[V]の場合に、人が電流を感じないレベルの抵抗Rは、200(=100[V]/0.0005[A])[kΩ]以上である。
【0036】
図3(B)に示される導電部材22の抵抗がこのような電流I及び抵抗Rの条件を満たすためには、抵抗のE−24系列のラインアップから、導電部材22の1つの取付部材23の表面抵抗rを820[kΩ]のものを選択する必要がある。このような表面抵抗rを導電部材22に適用すると、上記の式(1)から、導電部材22の合成表面抵抗Raが205[kΩ]となり、200[kΩ]を超えた抵抗Rを実現することができる。
【0037】
このようなタッチパネル20を有する表示入力ユニット15についてさらに説明する。
図4は、第2の実施の形態に係る表示入力ユニットの構成を示す断面図である。
なお、図4には、図3(A)の表示入力ユニット15に対する一点鎖線Y−Yで断面にした左側の断面図を拡大したものである。
【0038】
表示入力ユニット15は、既述のタッチパネル20及び液晶ディスプレイ30により構成される。
タッチパネル20は、透明のコーティング膜24が操作面に形成されたアクリル板25に、既述の導電部材22が設けられている。なお、アクリル板25は、アクリル系樹脂で構成された透明な絶縁板である。また、ATM10は不特定多数の顧客によって触れられることから、コーティング膜24には、汚れの防止、抗菌、防臭、防カビ、殺菌のために、銀系等の抗菌剤を適量含有させている。また、既述の導電部材22は、熱圧着によりアクリル板25の操作面に入りこむように設けられている。このため、アクリル板25の操作面は凹凸が少なく、略水平に維持されている。したがって、凹凸が少ないことから、アクリル板25と導電部材22とで構成される角部に埃、ゴミ等が溜まることがなく、衛生的であって、ゴミ等への帯電を防止することができる。
【0039】
このようなアクリル板25の外縁部に外装樹脂21が接着層21cにより固着されている。なお、導電部材22の凸部22aに設置された取付部材23は外装樹脂21外に突出して、導電性を有する固定部材26cに狭持されて取り付けられる。この時、取付部材23の開口部23aは固定部材26cに形成されている開口部26c1及び外装樹脂21に形成されている開口部21dに位置合わせされている。
【0040】
また、アクリル板25の外縁部を囲むように取り付けられた外装樹脂21の内部には、一対の発光素子21b及び受光素子(図示を省略)がアクリル板25を挟んで縦横方向にそれぞれ複数対向配置している。顧客がアクリル板25の操作面を指先でタッチすると、発光素子21bからの光は指先により遮光されて、当該発光素子21bに対向する受光素子が光を受光できなくなる。ATM10では、発光素子21b及び遮光された、発光素子21bに対向する受光素子の位置が検知されると共に、当該位置に対応する液晶ディスプレイ30に表示されている取引が操作入力されたことを認識して、当該取引の処理を実行する。
【0041】
液晶ディスプレイ30は、操作画像を表示する液晶パネル部31と、液晶パネル部31の外縁部を覆い、液晶パネル部31を固定する外装樹脂32とを有する。
液晶パネル部31は、光源となるバックライト、光を透過・遮蔽する液晶シャッタ、及びカラーフィルタ(それぞれ図示を省略)が(図中下から順に)積層されたもの等を備えている。
【0042】
外装樹脂32は、既述の通り、液晶パネル部31を固定すると共に、開口部32aが形成されている。さらに、外装樹脂32には、液晶パネル部31の液晶シャッタの明暗を制御する駆動回路が内蔵されており、液晶パネル部31によって表示される画像の切り替え等を実行する。
【0043】
このような液晶ディスプレイ30上に、開口部21d,23a,26c1,32aを位置合わせして、固定部材26cが取り付けられたタッチパネル20を載置する。そして、開口部21d,23a,26c1,32aに、座金(ワッシャ)26bを介して螺子26aを螺合することで、液晶ディスプレイ30上にタッチパネル20を固定することができる。
【0044】
次に、このようなタッチパネル20のアクリル板25に設置した格子状の導電部材22の格子の間隔及び幅について説明する。
図5は、第2の実施の形態に係るタッチパネルの導電部材の間隔及び幅を説明するための図である。
【0045】
なお、図5(A)は導電部材22の格子の間隔を、図5(B)は導電部材22の幅をそれぞれ説明するための図を表している。
まず、導電部材22の格子の間隔について説明する。
【0046】
IEC(International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)60950−1(2.1.1.1項におけるフィンガーテストの子供の指の直径)を踏まえて、図5(A)に示される導電部材22の格子の間隔(辺の長さ)aは5.4mm以下が好ましい。
【0047】
また、第2の実施の形態で利用しているコーティング膜24は、銀系の抗菌剤の含有量に基づいて、十分な抗菌効果を得るにはコーティング膜24が少なくとも1mm2必要である。このことから、アクリル板25に形成されたコーティング膜24に対して、導電部材22の格子の辺の長さaは少なくとも1mm以上であることが望まれる。
【0048】
したがって、導電部材22の格子の間隔(辺の長さ)aは、1.0mm以上、5.4mm以下であることが望ましい。
次に、導電部材22の幅について説明する。
【0049】
上記の通り、人が電流を感じないレベルの最大の電流値Iは0.0005[A]と規定されている。また、導電性を有する線材は、平常温度(40度程度)において、その幅(直径)が50AWG(American Wire Gauge)サイズの場合に、最大0.0005[A]の電流を流すことが可能であることが知られている。このことから、導電部材22のAWGサイズは50AWG以上であれば、人に感じない範囲の電流を流すことができる。なお、50AWGは、幅(直径)が0.02502mmに対応している。
【0050】
また、第2の実施の形態で利用しているコーティング膜24では、図5(B)に示されるように、幅が1mm程度のコーティング膜24に対し、十分な抗菌効果が保障されるようにするには、銀系の抗菌剤の含有量に基づいて、幅bが0.2mmまでの導電部材22を形成することができる。
【0051】
したがって、導電部材22の幅bは、0.02502mm以上、0.2mm以下の範囲であることが望ましい。また、このような範囲になるように幅bをAWGに換算すると、50AWG以上、32AWG以下の範囲となる。なお、32AWGは、0.1798mmに対応するため、このような範囲は、0.02502mm以上、0.1798mm以下の範囲と表すこともできる。
【0052】
なお、50AWGは、導体断面積が0.0004929mm2に対応しており、この導体断面積を確保することにより、人に感じない範囲の電流を流すことができる。つまり、導電部材に使用される線材等は、通常、断面形状が円状になっているので、AWG等の直径を用いた表現が多いが、円状でなくても断面積が同じであれば、楕円や四角等の別形状であっても良い。
【0053】
したがって、導電部材22の導体断面積が0.0004929mm2以上、幅が0.2mm以下の範囲と表すこともできる。
このような構成を有する表示入力ユニット15のタッチパネル20に対する操作入力を実行のためのタッチ動作について説明する。
【0054】
まず、顧客は液晶ディスプレイ30で表示される操作画像等をタッチパネル20を介して視認する。
顧客は、液晶ディスプレイ30に表示されている所望の取引に対応するタッチパネル20のアクリル板25の操作面を指先でタッチすると、発光素子21bからの光が遮蔽され、発光素子21bと遮光された発光素子21bに対向する受光素子との位置が検知される。そして、ATM10は、当該位置に対応する液晶ディスプレイ30に表示されている取引が操作入力されたことを認識して、当該取引の処理を実行する。
【0055】
また、顧客がタッチパネル20のアクリル板25の操作面を指先でタッチした際には、顧客の指先は導電部材22にも接触する。この時、導電部材22は既述の通りアクリル板25に入り込むように設けられてアクリル板25の操作面が略水平に維持されているために、顧客はアクリル板25の操作面の凹凸等による不快を感じることなくタッチすることができる。さらに、アクリル板25の導電部材22の格子で囲まれる領域のコーティング膜24によりアクリル板25の操作面は抗菌性等が維持されている。
【0056】
顧客のタッチにより指先から電荷が導電部材22に移動する。なお、一部の電荷はアクリル板25の導電部材22の格子で囲まれた領域に移動して帯電する。囲まれた領域にそのまま蓄積される電荷もあれば、導電部材22に引き込まれる電荷もある。指先及び導電部材22の格子で囲まれた領域からそれぞれ導電部材22に移動した電荷は、インピーダンスが低いところに流れるために、導電部材22を四隅の凸部22aに進み、凸部22aから電荷は取付部材23の表面抵抗により緩やかに導通し、さらに螺子26aからATM10内部を導通し、ATM10から接地に放電される。このようにして、アクリル板25の操作面には電荷が殆ど蓄積されないようになる。
【0057】
次に、このようなタッチパネル20の帯電電圧について説明する。
なお、以下では、後述するように、アクリル板25の操作面に静電ガン40で意図的に帯電させてその帯電電圧を計測するようにしている。
【0058】
図6は、第2の実施の形態に係る計測方法を説明するための図である。
なお、図6(A)は上面図を、図6(B)は図6(A)の一点鎖線Z−Zにおける断面図をそれぞれ示している。
【0059】
計測方法としては、まず、図6に示されるように、金属プレート50上に、コーティング膜24を形成したアクリル板25を載置した場合(以下、「導電部材無」の場合)に、当該アクリル板25の操作面に対して電圧を印加して、帯電させる。
【0060】
これに対して、金属プレート50上に、前述の接地された格子状の導電部材22及びコーティング膜24のみが形成されたアクリル板25を載置した場合(以下、「導電部材有」の場合)に、当該アクリル板25の操作面に対して電圧を印加して、帯電させる。
【0061】
なお、図6は、導電部材無の場合について示している。また、電圧の印加には、静電気を発生させる装置である、例えば、静電ガン40を用いている。
このような2つの場合のアクリル板25の操作面に対して印加する電圧は±30kVであって、この電圧を複数回印加した。そして、50回、100回、250回、350回印加した場合におけるアクリル板25の操作面の帯電電圧について計測した。
【0062】
図7は、第2の実施の形態に係るタッチパネルに対する電圧の印加回数に応じた帯電電圧を示す図である。
なお、図7の中央欄は導電部材無の場合の、右欄は導電部材有の場合のそれぞれの帯電電圧の計測結果をそれぞれ示している。
【0063】
また、一般に、タッチパネルの帯電電圧が6kV以上であれば、タッチした人は帯電による違和感を覚え、帯電電圧が4kV程度以下であれば帯電による違和感を覚えないことが分かっている。
【0064】
まず、導電部材無(コーティング膜24のみを形成したアクリル板25)の場合には、印加回数が50回で既に帯電電圧が13.7kV、−10.3kVとなり、このような状態のタッチパネルであれば、顧客が違和感を覚えてしまう。
【0065】
この後も、印加回数が増加するに連れて、アクリル板25の帯電電圧(の絶対値)は増加する。印加回数が250回の時に帯電電圧が16.5kV、−15.2kVとなったことが計測されてから、印加回数がさらに増加しても、帯電電圧は殆ど増加しなくなり、アクリル板25の帯電電圧が飽和状態になっていることが考えられる。
【0066】
一方、導電部材有(前述の接地された導電部材22及びコーティング膜24が形成されたアクリル板25)の場合には、印加回数が50回で帯電電圧が2kV、−2.5kVとなり、顧客が違和感を覚えるほど帯電していないことが分かる。なお、この時に計測される帯電電圧は、アクリル板25の導電部材22の格子で囲まれた領域に電荷が帯電していることによるものと考えられる。
【0067】
この後、印加回数を増加するに連れて、アクリル板25の帯電電圧(の絶対値)が増加して、印加回数が250回で帯電電圧は3kV、−4kVとなったことが計測された。また、印加回数が350回でも250回の時と同じ帯電電圧が計測されていることから、印加回数が100回〜250回で、既に、アクリル板25は、顧客が違和感を覚えない程度の帯電電圧で、飽和状態になっていることが考えられる。
【0068】
したがって、導電部材有の場合には、±30kVの電圧を複数回印加しても、アクリル板25は、顧客が違和感を覚えない程度の帯電電圧に抑制することができる。これは、導電部材無の場合と比較すると、帯電電圧がおよそ80%程度抑制されている。
【0069】
さらに、上記2つの場合のアクリル板25の帯電電圧の時間依存性について説明する。
図8は、第2の実施の形態に係る経過時間に応じたタッチパネルの帯電電圧を示す図である。
【0070】
なお、図8の中央欄は導電部材無の場合の、右欄は導電部材有の場合のそれぞれの帯電電圧の計測結果をそれぞれ示している。
図8は、上記の2つの場合においてアクリル板25に30kVの電圧で350回印加して帯電した状態から、1時間(一部、30分)間隔で14時間後までの時間の経過に伴った帯電電圧の変化を示している。
【0071】
まず、導電部材無の場合には、帯電電圧が16.5kVから時間の経過に連れて減少していくことが分かる。これは、アクリル板25に蓄積した電荷の自然放電によるものであると考えられる。
【0072】
また、この場合において、帯電電圧が顧客が違和感を覚えない程度(4kV程度)まで減少するために、9時間〜10時間を要する。アクリル板25の帯電がほぼ除電されるまでには、14時間程度を要する。
【0073】
一方、導電部材有の場合にも、印加回数が350回の時に既に顧客が違和感を覚えない程度の帯電電圧であるものの、4kVから時間の経過に連れて自然放電により減少していることが分かる。計測開始から2.5時間後に帯電電圧0.4kVが計測されると、以後、時間が経過しても減少しなくなり、自然放電が飽和状態になったことが考えられ、2.5時間程度で、アクリル板25の帯電がほぼ除電されることが分かる。
【0074】
したがって、導電部材有の場合には、電圧が印加されてもアクリル板25の帯電電圧を抑制することができることから、導電部材無の場合と比較して、短時間で除電することができる。
【0075】
このように上記のタッチパネル20では、液晶ディスプレイ30の表示面上に配置したアクリル板25の操作入力のためにタッチされる操作面に、抗菌性を有するコーティング膜24を形成し、螺子26aを介して接地された導電部材22を設けるようにした。これにより、顧客が操作入力を行うためにアクリル板25の操作面をタッチすると、タッチパネル20の抗菌性を維持して、顧客からの電荷が導電部材22を導通して取付部材23を経て螺子26aから接地に放電される。この結果、タッチパネル20のアクリル板25の操作面が衛生的に維持された状態で、電荷の蓄積が防止されて、操作面の帯電が抑制されるようになる。したがって、顧客は当該タッチパネル20のアクリル板25にタッチしても違和感を覚えなくなり、不快な気持ちをしなくなる。また、抗菌性の効果を低下させるような、アクリル板25に対して帯電防止のためのスプレーまたはコーティング等を行わずして、タッチパネル20の抗菌性を維持した状態で、帯電を抑制することができる。
【0076】
また、アクリル板25に設けられた導電部材22に対して、接地との間に取付部材23を設置するようにした。これにより、電荷は導電部材22から取付部材23を経て螺子26aを導通して緩やかに接地に放電されるようになる。この結果、顧客が、タッチパネル20のアクリル板25の操作面をタッチする際に、導電部材22に接触しても、顧客と導電部材22との間のショートの発生が防止されて、顧客が受ける痛みを抑制することができる。
【符号の説明】
【0077】
1,20 タッチパネル
1a 透明絶縁基板
1b 抗菌層
1c,22 導電部材
2 表示部
3 抵抗器
3a 配線
10 ATM
11 通帳挿入/排出口
12 硬貨投入/放出口
13 カード挿入/排出口
14 紙幣挿入/放出口
15 表示入力ユニット
21,32 外装樹脂
21a,21d,23a,26c1,32a 開口部
21b 発光素子
21c 接着層
22a 凸部
23 取付部材
24 コーティング膜
25 アクリル板
26a 螺子
26b 座金
26c 固定部材
30 液晶ディスプレイ
31 液晶パネル部
40 静電ガン
50 金属プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作入力を受け付けて処理を自動で行う自動処理装置において、
所定の処理内容を示す操作画像を表示して当該操作画像に接触される操作面に抗菌性を備える抗菌層が形成され、前記抗菌層の表面に導電部材が設けられた透明絶縁基板を具備するタッチパネル、
を有することを特徴とする自動処理装置。
【請求項2】
前記導電部材は接地されていることを特徴とする請求項1記載の自動処理装置。
【請求項3】
前記導電部材と前記接地との間に抵抗を有することを特徴とする請求項2記載の自動処理装置。
【請求項4】
前記導電部材は、格子状であって、前記操作面全面を覆うように設けられていることを特徴とする請求項1記載の自動処理装置。
【請求項5】
前記導電部材の格子間隔は、1.0mm以上、5.4mm以下であることを特徴とする請求項4記載の自動処理装置。
【請求項6】
前記導電部材の幅は、0.02505mm以上、0.2mm以下であることを特徴とする請求項4記載の自動処理装置。
【請求項7】
前記導電部材のAWGサイズは、50AWG以上、32AWG以下であることを特徴とする請求項4記載の自動処理装置。
【請求項8】
前記導電部材の断面積は、0.0004929mm2以上、前記導電部材の幅は、0.2mm以下であることを特徴とする請求項4記載の自動処理装置。
【請求項9】
前記導電部材は、金メッキが施されていることを特徴とする請求項1記載の自動処理装置。
【請求項10】
前記透明絶縁基板はアクリル板であることを特徴とする請求項1記載の自動処理装置。
【請求項11】
前記抗菌層は、銀を含有することを特徴とする請求項1記載の自動処理装置。
【請求項12】
前記導電部材は、前記透明絶縁基板の前記表示面に入り込んで設けられていることを特徴とする請求項1記載の自動処理装置。
【請求項13】
操作入力を受け付けて、前記操作入力を検知するタッチパネルにおいて、
所定の処理内容を示す操作画像を表示して当該操作画像に接触される操作面に抗菌性を備える抗菌層が形成され、前記抗菌層の表面に導電部材が設けられた透明絶縁基板、
を有することを特徴とするタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−14342(P2012−14342A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149085(P2010−149085)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】