説明

自動分析定量観測方法および自動分析定量観測装置

【課題】人手を介すること無く、安全かつ正確に、一定時間毎に長期間にわたって自動的に水質を観測することができる自動分析定量観測装置を提供する。
【解決手段】サンプリングした試料Sを、空気Aで分節しながら試薬B,Cとともに管10の中に連続的に注入して定量、混合し、この混合液を反応マニホールド4で分解した後、検出器5で常法により分析するようになされた連続流れ分析方法において、一定時間毎に試料Sをサンプリングして管10に供給し、反応マニホールド4では、10〜30分間混合液を停止させ、80〜90℃の温度でUV照射を行いながら加熱することによって混合液を分解し、一定時間毎に反復して調製されるこられ混合液を順次分析して試料サンプリング地点の全窒素および全リンを経時的に定量観測する全窒素および全リンの自動分析定量観測装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続流れ分析法(Continuous Flow Analysis, 略してCFA)を用いて、検査対象中の超微量濃度成分の濃度測定を長期間にわたって自動観測する自動分析定量観測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、海水や排水などの検査対象中に含まれる全窒素および全リンの濃度測定を行うための分析装置としては、連続流れ分析法と呼ばれる原理を用いた分析装置が使用されている。
【0003】
この分析装置では、管内に一定流量で連続的に試薬を導入し、それに空気または不活性ガス等の気体を規則正しく注入して液体を気泡分節し、次に試料および必要とする試薬を順次注入し、混合コイルや反応コイル等を用いて反応を行わせ、生じた反応生成物をフローセル装着の分光光度計等の検出器で測定する方法を採用している(たとえば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開平8−285835号公報
【特許文献2】特開2006−234601号公報
【特許文献3】特開2006−208344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような分析装置は、海水や排水などの水質を管理する場合に用いられている。この場合、水質管理の観点からすると、人手を介すること無く、一定時間毎に長期間にわたって自動的に水質を観測することが好ましい。
【0005】
しかし、上記従来の分析装置の場合、反応コイルを用いて反応を行わせる際、高温、高圧でコイルを加熱するため、万が一のことがあった場合に備えて人を配置しておかなければならず、無人での自動観測を実現できない。
【0006】
そのため、長い反応コイルを用いて長時間にわたって反応させるとともに、無人での自動観測が可能な程度の加熱、加圧条件に緩和することが考えられるが、この場合、反応コイルの長さが非現実的な長さになってしまう。
【0007】
本発明は係る実情に鑑みてなされたものであって、人手を介すること無く、安全かつ正確に、一定時間毎に長期間にわたって自動的に水質を観測することができる自動分析定量観測装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の自動分析定量観測方法は、サンプリングした試料を、気体で分節しながら試薬とともに管の中に連続的に注入して定量、混合し、この混合液を反応マニホールドで分解した後、検出器で常法により分析するようになされた連続流れ分析方法において、一定時間毎に試料をサンプリングして管に供給し、反応マニホールドでは、10〜30分間混合液を停止させ、80〜90℃の温度でUV照射を行いながら加熱することによって混合液を分解し、一定時間毎に反復して調製されるこられ混合液を順次分析して試料サンプリング地点の全窒素および全リンを経時的に定量観測するようになされたものである。
【0009】
また、上記課題を解決するための本発明の自動分析定量観測装置は、オートサンプラーでサンプリングした試料を、秤量ポンプによって、気体で分節しながら試薬とともに管の中に連続的に注入して定量、混合し、この混合液を反応マニホールドで分解した後、検出器で常法により分析するようになされた分析装置であって、反応マニホールドは、10〜30分間混合液を停止させ、80〜90℃の温度でUV照射を行いながら加熱するように構成され、オートサンプラーは、この反応マニホールドでの加熱時間よりも長い間隔で、反復して試料をサンプリングするようになされ、試料注入時以外は管内に水を供給するようになされたものである。
【発明の効果】
【0010】
以上述べたように、本発明によると、反応マニホールドで混合液を停止させて80〜90℃の温度で加熱しながらUV照射することにより、混合液を高温高圧にすることなく分解することができる。したがって、試料中の極微量の成分であっても、精度良く全窒素および全リンを測定することが可能となる。また、混合液を高温高圧にすることなく分解するため、無人運転が可能となり、一定時間毎に反復して調製されるこられ混合液を順次分析して試料サンプリング地点の全窒素および全リンを経時的に、かつ安全に定量観測することができる。
【0011】
また、本発明の自動分析定量観測装置は、反応マニホールドは、10〜30分間の分解液の停止と、80〜90℃の温度での分解液の加熱に加え、UV照射を行いながら分解するように構成しているので、混合液の分解性能に優れた効果を発揮することとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は自動分析定量観測装置1の全体構成の概略を示し、図2は同自動分析定量観測装置1の反応マニホールド4を示している。
【0013】
すなわち、この自動分析定量観測装置1は、オートサンプラー2でサンプリングした試料Sを、秤量ポンプ3によって、空気Aで分節しながら試薬B,Cとともに管10の中に連続的に注入して定量、混合し、この混合液を反応マニホールド4で分解した後、検出器5で常法により分析するようになされた分析装置であって、反応マニホールド4は、10〜30分間にわたって混合液を停止させ、80〜90℃の温度でUV照射を行いながら加熱するように構成され、オートサンプラー2は、この反応マニホールド4での加熱時間よりも長い間隔で、反復して試料Sをサンプリングするようになされ、試料注入時以外は管10内に純水Wを供給するようになされたものである。
【0014】
オートサンプラー2は、サンプル吸引ポンプがONとなり、同時にサンプル電磁弁が開いて、常時オーバーフローしているサンプル採取部からサンプルを吸引するように構成されている。サンプリングは、約5〜10分間行われ、その後電磁弁が閉じられて純水Wを吸引するように切り替えられる。
【0015】
秤量ポンプ3では、定量型ポンプチューブを装着できるペリスタ型ポンプが用いれられ、サンプリングした試料Sや、試薬B,Cを一定流量で連続的に管10内に供給することができるようになされている。この秤量ポンプ3には、ポンプの脈動と同期して規則正しく空気Aを注入することができる注入気体制御ライン11が設けられ、管10内に導入されたこれら試料Sと試薬B,Cとの混合液を、気泡分節することができるようになされている。試料Sと試薬B,Cとの混合液は、空気Aによって分節された各分節単位での渦流によって混合される。また、管10を螺旋状に巻回し、この螺旋内部を通過する際の転倒混和により混合するようにしてもよい。
【0016】
この秤量ポンプ3により、管10に導入された試料Sは、まず、空気Aによって規則正しく分節され、これら分節された各分節単位毎に、試薬Bであるアルカリペルオキソ二硫酸カリウムが注入され、アルカリ分解用の混合液となる。また、反応マニホールド4の中間位置では、別の試薬Cである硫酸が注入されて、酸性ペルオキソ二硫酸カリウムによる酸性分解用の混合液となる。なお、分節する空気Aとしては、不活性ガスを用いるものであってもよい。
【0017】
反応マニホールド4は、図2に示すように、螺旋状に巻回された石英管41の中心にUV照射ランプ42を設けるとともに、外周からヒータ43を被覆して構成されている。また、石英管41の中間部には、上記した別の試薬Cである硫酸を注入するための分岐管44が設けられている。この反応マニホールド4は、UV照射を行いながら、80〜90℃の温度で石英管41を10〜30分間にわたり加熱することができるように構成されている。そして、加熱する10〜30分間にわたり、石英管41内の混合液が動かないように制御される。この停止時間が10分未満の場合、十分に混合液を分解することができない。また、30分を越えて停止した場合、既に充分に分解するのであまり意味が無くなる。また、加熱温度については、80℃未満の場合、十分に分解することができない。また、加熱温度の上限については、特に高ければ良く分解するが、高く設定すると安全性などの面で無人運転ができなくなるので、90℃以下の範囲に抑えることが好ましい。また、この液の停止と加熱とに加え、反応マニホールド4は、石英管41内の混合液をUV照射ランプ42によって照射するようにしているので、分解が促進される。したがって、80〜90℃の低温で10〜30分間の加熱によって、石英管41内の混合液は、後の分析に有効な分解液として調製することができることとなる。この際、分岐管44より下流側は酸分解用の混合液となされ、上流側はアルカリ分解用の混合液となされているので、それぞれ、この反応マニホールド4での分解により、分岐管44を境にして酸分解液、アルカリ分解液として調製される。
【0018】
この反応マニホールド4に用いる石英管41としては、 内径1mm〜5mm、より好ましくは2mm〜3mmのものが用いられる。1mm未満の場合は石英管41内を通過する試料Sや試薬B,Cなどの液が詰まり易くなり、5mmを越えると試薬B,Cの使用量が増加して無駄になってしまう。また、石英管41の長さとしては、50cm〜10m、より好ましくは1m〜3mのものが用いられる。50cm未満の場合、分析に必要な充分な量の分解液を調製することができなくなる。また、10mを越えると分析に必要な量以上の分解液が調製されるので無駄が多くなってしまう。
【0019】
検出器5では、まず、上記反応マニホールド4で分解された硝酸性窒素に酸化された分解液と、正リン酸に酸化された分解液とが、スプリッターによって二つに分けられて別個にリサンプルされ、それぞれ全窒素分析系6、全リン分析系7に導入される。
【0020】
全窒素分析系6では、管10に注入されたイミダゾールDを空気Aで分節し、そこに分解液R1を注入し、カドミウム−銅還元コイル61を通過させ、硝酸性窒素を亜硝酸性窒素に還元させる。ついで、ナフチルエチレンジアミンEを注入し、発色した赤色色素を分光光度計50のフローセル51に導入し、550nm付近の分光光度で比色定量する。
【0021】
なお、上記全窒素分析系6では、カドミウム−銅間隙コイルを使用したエチレンジアミン吸光光度法による分析例を示しているが、これに限定されるものではなく管10に注入された純水または硫酸液を空気Aで分節し、そこに分解液R1を注入した後、フローセル51に導入し、220nm付近の分光光度で比色定量するものであってもよい。
【0022】
全リン分析系7では、管10に注入されたモリブデン酸塩の発色試薬Fを気体Aで分節し、そこにアスコルビン酸試薬G、分解液R2を注入し、発色したモリブデン青の青色色素を分光光度計50のフローセル52に導入し、880nm付近の分光光度で比色定量する。
【0023】
なお、検出器5に用いる検出装置としては、分光光度計50を用いているが、特に分光光度計50に限定されるものではなく、試料Sによっては、紫外線吸光光度計、蛍光光度計、炎光光度計などであってもよい。
【0024】
各試料Sの濃度は、検出器5からの信号を、コンピュータで自動処理することにより算出される。
【0025】
この自動分析定量観測装置1による試料Sの濃度の測定は、あらかじめコンピュータに設定しておくことで、その後は自動的に反復して長期にわたって経時的に測定することができる。連続測定期間としては、1週間以上、一年を通じて連続運転をすることが可能である。
【0026】
なお、試料Sのサンプリングを行うインターバルタイムについては、反応マニホールド4での停止時間(10〜30分)よりも長ければ特に限定されるものではなく、例えば30分毎、1時間毎、またはそれ以上の所望の間隔で設定することができる。ただし、反応マニホールド4で液を停止させることによって、装置経路の液の流れが停止するので、インターバルタイムを短く設定する場合には、先の試料Sが検出器5で検出された後に次の試料Sが反応マニホールドSで停止するように、インターバルタイムを調整するか、経路の管10の長さを調整しておく必要がある。また、インターバルタイムが長い場合、装置経路に試料S以外の水が無駄に多く流れている時間が多くなるので、この場合は、先の試料Sが検出器5で検出された後から次のインターバルタイムまでの間にわたって、装置経路の流れ全体を停止させておくことが好ましい。
【0027】
また、試料Sの濃度を算出する際のデータとしてあらかじめ設定した一定期間毎に、純水Wを試薬Rのみで調製した場合のベースの測定、標準液による検量線の測定が行われる。これらベースの測定や検量線の測定は、装置のメンテナンス時に行うものであっても良いし、長期間にわたって無人運転を行う場合は、試料Sのサンプリングの間に自動的にベースの測定や標準液による検量線の測定を行うようにプログラミングしておいてもよい。
【0028】
さらに、サンプリングした試料Sは、反応マニホールド4の位置で停止して分解処理を行うため、少なくともこの反応マニホールド4の内部に試料Sが充填されるように送られる。これは、反応マニホールド4の容量や反応マニホールド4までの管10の長さから割り出した容量などを基に秤量ポンプ3で試料Sの送り具合を調整することで可能となる。また、反応マニホールド4で分解処理を行う試料S以外は、この自動分析定量観測装置1の経路に余分な試料Sが流れないように、純水Wに切り替えられる。この純水Wを流すことによって、毎回測定毎の経路の洗浄が行われることとなる。
【0029】
実施例1
内径2mm、長さ4mの石英管をコイル状に巻回し、その中央を貫通するようにUVランプを配置し、石英コイルの周囲にバンドヒーターを巻き付けて40〜100℃まで加熱できるように構成した反応マニホールドを有する自動分析定量観測装置を用意した。
【0030】
試薬として、ペルオキソ二硫酸カリウム40g、水酸化ナトリウム4gを純水1000ミリリットルに溶解したものを用意し、他の試薬として、硫酸100ミリリットルを純水1000ミリリットルに溶解したものを用意した。
【0031】
試料としてトリポリリン酸0.5gを純水に溶解して1000ミリリットルとしたものを用意した。
【0032】
表1に示すように、反応マニホールドで加熱なし、70℃加熱、80℃加熱のそれぞれの条件で液を停止しない場合、5〜30分の停止時間で停止した場合のそれぞれについて、試料であるトリポリリン酸水溶液の濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
表1から、加熱温度が高く停止時間が長い程、回収率に優れ、特に、加熱温度80℃で10分以上停止した場合には86%を超える優れた回収率が得られることが確認できた。
【0035】
実施例2
試料として表2に示す各化合物を用意し、上記実施例1と同様の試薬および反応マニホールドを用いて分析を行った。反応マニホールドは、20分停止、80℃で加熱の条件で実験を行った。結果を表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
表2から、何れの化合物においても、優れた回収率が得られることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、上下水道、海水、河川、湖沼、等における水質管理に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る自動分析定量観測装置の全体構成の概略を示す回路図である。
【図2】図1の反応マニホールド部分の拡大図である。
【符号の説明】
【0040】
1 自動分析定量観測装置
10 管
2 オートサンプラー
3 秤量ポンプ
4 反応マニホールド
5 検出器
S 試料
A 空気(気体)
B 試薬
C 試薬
D 試薬
E 試薬
F 試薬
G 試薬

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプリングした試料を、気体で分節しながら試薬とともに管の中に連続的に注入して定量、混合し、この混合液を反応マニホールドで分解した後、検出器で常法により分析するようになされた連続流れ分析方法において、
一定時間毎に試料をサンプリングして管に供給し、
反応マニホールドでは、10〜30分間混合液を停止させ、80〜90℃の温度でUV照射を行いながら加熱することによって混合液を分解し、
一定時間毎に反復して調製されるこられ混合液を順次分析して試料サンプリング地点の全窒素および全リンを経時的に定量観測するようになされたことを特徴とする全窒素および全リンの自動分析定量観測方法。
【請求項2】
オートサンプラーでサンプリングした試料を、秤量ポンプによって、気体で分節しながら試薬とともに管の中に連続的に注入して定量、混合し、この混合液を反応マニホールドで分解した後、検出器で常法により分析するようになされた分析装置であって、
反応マニホールドは、10〜30分間混合液を停止させ、80〜90℃の温度でUV照射を行いながら加熱するように構成され、
オートサンプラーは、この反応マニホールドでの加熱時間よりも長い間隔で、反復して試料をサンプリングするようになされ、
試料注入時以外は管内に水を供給するようになされたことを特徴とする全窒素および全リンの自動分析定量観測装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−288228(P2009−288228A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145560(P2008−145560)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(504049626)ビーエルテック株式会社 (3)
【Fターム(参考)】