説明

自動分析用制御装置及びプログラム

【課題】自動分析における分析条件ファイル及び分析スケジュールテーブルの作成作業を効率化する。
【解決手段】自動分析用制御装置において、分析機器の制御に関する複数の設定項目の設定値を記載した分析条件ファイルを記憶する手段と、分析装置で実行する複数の分析について少なくとも分析対象試料の識別情報及び分析に使用する分析条件ファイルを記述すると共に、前記各分析について分析条件ファイルに含まれる複数の設定項目の内の1つ以上に関する設定値を記述した分析スケジュールテーブルを作成する手段と、分析スケジュールテーブルに従って分析機器の動作を制御する制御手段とを設け、前記制御手段を、分析条件ファイルと分析スケジュールテーブルの双方に設定値が記述されている設定項目については、分析スケジュールテーブルに記載された設定値が優先的に適用するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフやガスクロマトグラフ等の分析機器の動作を制御する制御装置及びそのプログラムに関し、更に詳しくは、試料を自動的に交換・選択しながら順次分析を実行する自動分析機器の制御装置及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液体クロマトグラフは、オートサンプラ、ポンプ、カラムオーブン等の複数のユニットから構成されており、制御装置からの制御信号に従って各ユニットの動作が制御される。こうした液体クロマトグラフでは、液体試料を収容した試料容器(バイアル)をオートサンプラのラックに予め多数セットしておき、それら試料の分析順序や分析条件などを規定する分析スケジュールテーブルをオペレータが前記制御装置において入力・設定した上で分析開始を指示する。すると、その分析スケジュールテーブルに従って試料容器が順次選択され、指定された分析条件の下で分析が自動的に実行される(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
図5は液体クロマトグラフ分析における分析スケジュールテーブルの一例である。このテーブル上では1行が1回の分析に対応しており、各行に、その分析を実行するのに必要な情報として、バイアル番号、試料名、分析条件ファイル名などが記述される。ここで分析条件ファイルとは、分析の内容、即ち該分析に適用される各種分析条件が記載されたファイルであり、予めオペレータによって作成されて制御装置に記憶される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-127814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、液体クロマトグラフ分析において、ある試料の最適な分析条件を検討する際などには、同一試料に対して溶離液やカラムの種類のみを変えた複数回の分析を行う場合がある。従来、こうした分析を行う場合には、オペレータが溶離液及び/又はカラムの種類のみが異なる複数の分析条件ファイルを作成して制御装置に登録しておき、図5のように分析スケジュールテーブルの複数の行で同一の試料を指定すると共に、該複数の行のそれぞれにおいて異なる分析条件ファイル名を指定していた。そのため、オペレータにとっては操作が面倒であり作業効率が悪かった。また、分析スケジュールテーブルの各行で分析条件ファイル名を指定する際に、誤ったファイルを指定してしまう可能性もある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、自動分析機器において分析条件の一部のみが異なる複数回の分析を行う場合において、分析条件ファイル及び分析スケジュールテーブルの作成を効率的に行うことのできる自動分析用制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために成された本発明に係る自動分析用制御装置は、予め設定された分析スケジュールテーブルに従って分析機器の動作を制御することにより該分析機器に複数回の分析を順次実行させる自動分析用制御装置であって、
a)分析機器の制御に関する複数の設定項目についてその設定値を記載した分析条件ファイルを記憶する分析条件ファイル記憶手段と、
b)前記複数回の分析の各々について、少なくとも分析対象試料の識別情報を記述すると共に、前記複数回の分析の少なくとも1つについて、前記分析条件ファイルに含まれる複数の設定項目の内の1つ又は複数に関する設定値を記述した分析スケジュールテーブルを作成する分析スケジュールテーブル作成手段と、
c)前記分析スケジュールテーブルに従って前記分析機器の動作を制御する分析制御手段と、
を有し、
前記分析制御手段が、前記複数回の分析の各々において、前記複数の設定項目の内、分析スケジュールテーブル上に設定値が記述されているものについては該設定値を分析に適用し、分析スケジュールテーブル上に記述されていないものについては前記分析条件ファイルに記載されている設定値を分析に適用することを特徴としている。
【0008】
また、前記本発明に係る自動分析用制御装置は、
前記分析スケジュールテーブル作成手段によって作成される分析スケジュールテーブルが、更に、前記複数回の分析の各々について分析に使用する分析条件ファイルを記述したものであって、
前記分析制御手段が、前記複数回の分析の各々において、前記複数の設定項目の内、分析スケジュールテーブル上に設定値が記述されているものについては該設定値を分析に適用し、分析スケジュールテーブル上に記述されていないものについては該分析スケジュールテーブル上でその分析に適用するものとして記述されている分析条件ファイルに記載された設定値を分析に適用するものとすることが望ましい。
【0009】
前記本発明にかかる自動分析用制御装置は、更に、
d)前記複数の設定項目のうち、前記分析スケジュールテーブル上に記述される1つ又は複数の設定項目について選択可能な1つ以上の設定値を取得する設定値候補取得手段、
を有し、
前記分析スケジュールテーブル作成手段を、前記設定値候補取得手段で取得された設定値候補の全ての組合せを網羅した分析スケジュールテーブルを自動的に作成するものとすることが望ましい。
【0010】
また、前記本発明に係る自動分析用制御装置は、前記分析機器がクロマトグラフであって、前記複数の設定項目のうち、前記分析スケジュールテーブル上に記述される1つ又は複数の設定項目が、移動相(即ち、溶離液又はキャリアガス)の種類及びカラムの種類の少なくともいずれか一方であるものとすることが望ましい。
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明に係るプログラムは、予め設定された分析スケジュールテーブルに従って分析機器の動作を制御することにより該分析機器に複数回の分析を順次実行させるためのコンピュータに使用されるプログラムであって、該コンピュータを、
a)分析機器の制御に関する複数の設定項目についてその設定値を記載した分析条件ファイルを記憶する分析条件ファイル記憶手段と、
b)前記複数回の分析の各々について、少なくとも分析対象試料の識別情報を記述すると共に、前記複数回の分析の少なくとも1つについて、前記分析条件ファイルに含まれる複数の設定項目の内の1つ又は複数に関する設定値を記述した分析スケジュールテーブルを作成する分析スケジュールテーブル作成手段と、
c)前記分析スケジュールテーブルに従って前記分析機器の動作を制御する分析制御手段、
として機能させるものであって、
前記分析制御手段が、前記複数回の分析の各々において、前記複数の設定項目の内、分析スケジュールテーブル上に設定値が記述されているものについては該設定値を分析に適用し、分析スケジュールテーブル上に記述されていないものについては前記分析条件ファイルに記載されている設定値を分析に適用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のような構成から成る本発明に係る自動分析用制御装置及びプログラムによれば、分析条件ファイルに含まれる複数の設定項目のうちの一部(例えば、カラムの種類と移動相の種類)について分析スケジュールテーブル上でも設定値を記述することができ、分析スケジュールテーブルで規定される各分析において、分析条件ファイルと分析スケジュールテーブルの双方に設定値が記述されている設定項目については、分析スケジュールテーブルに記載された設定値が優先的に適用される。従って、例えば、カラムと移動相の種類のみを変え、その他の分析条件は同一とした複数回の分析を行う場合であっても、従来のようにカラムと移動相の組み合わせ毎に異なる分析条件ファイルを作成する必要がない。そのため、分析条件ファイルの作成に要するオペレータの手間を軽減することができると共に、オペレータが分析スケジュールテーブル上で誤った分析条件ファイルを指定してしまうのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例に係る制御装置を備えた液体クロマトグラフの概略構成図。
【図2】同実施例における分析スケジュールテーブルを示す図。
【図3】同実施例に係る制御装置の動作を説明するフローチャート。
【図4】本発明の他の実施例に係る制御装置を備えた液体クロマトグラフの概略構成図。
【図5】従来技術における分析スケジュールテーブルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る自動分析用制御装置の一実施例を、図面を参照して説明する。図1は本実施例による制御装置を備えた液体クロマトグラフの概略構成図である。
【0015】
この液体クロマトグラフは、送液部10、オートサンプラ30、カラムオーブン40、検出部50、これら各部をそれぞれ制御するシステムコントローラ60、システムコントローラ60を通して分析作業を管理したり検出部50で得られたデータを解析・処理したりする制御装置70、制御装置70に接続されたキーボードやマウスから成る操作部75、ディスプレイから成る表示部76などを備える。送液部10は、送液ポンプ14によって吸引された溶離液Aと、送液ポンプ18によって吸引された溶離液Bとを汎用分析用グラジエントミキサー19又は超高速分析用グラジエントミキサー20によって混合した上でカラムへと送出するものであり、前記2つのグラジエントミキサー19、20のいずれか一方を選択的に溶離液の流路に介挿するための流路切り替えバルブ21を備えている。また、送液ポンプ14、18にはそれぞれ溶離液切り替えバルブ13、17及びデガッサ12、16を介して2つの溶離液容器が接続されている。溶離液切り替えバルブ13の切り替えにより2つの溶離液容器11a、11bの内の1つが選択され、該容器内の溶離液が前記溶離液Aとして送液ポンプ14により吸引される。同様に溶離液切り替えバルブ17の切り替えにより2つの溶離液容器15a、15bの内の1つが選択され、該容器内の溶離液が前記溶離液Bとして送液ポンプ18により吸引される。カラムオーブンは、汎用分析用カラム41、超高速分析用カラム42、及びこれらのカラムのいずれか一方を選択的に溶離液の流路に接続するための流路切り替えバルブ43を内装している。したがって、本実施例の液体クロマトグラフにおいて分析に使用可能な溶離液とカラムの組み合わせは、(溶離液A:2種類)×(溶離液B:2種類)×(カラム:2種類)の計8通りとなる。
【0016】
制御装置70は、機能ブロックとして、記憶部71、分析スケジュールテーブル作成部72、分析制御部73、及びデータ処理部74を含んでいる。制御装置70の実体はパーソナルコンピュータであり、パーソナルコンピュータにインストールした専用の制御/処理ソフトウエアを実行することにより後述するような各種機能が達成される。
【0017】
1回の分析における標準的な分析動作は次の通りである。即ち、制御装置70の分析制御部73から指示を受けたシステムコントローラ60の制御の下で、溶離液切り替えバルブ13、17がそれぞれ1つの溶離液容器を選択し、送液ポンプ14、18が前記溶離液容器から所定の流量で以て溶離液を吸引する。送液ポンプ14で吸引された溶離液Aと送液ポンプ18で吸引された溶離液Bは、汎用分析用グラジエントミキサー19又は超高速分析用グラジエントミキサー20によって均一に混合され、混合後の溶離液は、オートサンプラ30を介してカラムへと流入する。オートサンプラ30には1つ以上の試料瓶(バイアル)が搭載されたラックがセットされており、システムコントローラ60の制御の下に所定の試料を選択してこれを採取し、所定のタイミングで以て該試料を溶離液中に注入する。この試料は溶離液に乗って汎用分析用カラム41又は超高速分析用カラム42へと導入される。カラムを通過する間に試料中の各成分は時間的に分離されて溶出して検出部50に導入され、検出部50に設けられたPDA検出器51及び質量分析計52によって各成分が順次検出されてその濃度に応じた検出信号をデジタル化したデータがシステムコントローラ60を介して制御装置70へ送られる。制御装置70では受け取ったデータをハードディスク等の記憶装置上に設けられた記憶部71に格納するとともに、データ処理部74で所定の処理を行ってクロマトグラムを作成し表示部76の画面上に表示する。
【0018】
オートサンプラ30のラックに搭載された試料を連続的に分析するために、分析に先立って、オペレータは操作部75の操作により分析スケジュールテーブルを作成する必要がある。図2は本実施例における分析スケジュールテーブルの一例である。分析スケジュールテーブル中の各行はそれぞれ1回の分析に対応しており、各列は各種設定項目に対応している。本例の分析スケジュールテーブルにおける設定項目は、図中の左から順に、バイアル番号(本発明における分析対象試料の識別情報に相当)、試料名、分析条件ファイル名、カラムの種類、溶離液Aの種類、溶離液Bの種類となっている。
【0019】
分析条件ファイルは、LC分析の内容、即ち送液部10、オートサンプラ30、カラムオーブン40、及び検出部50における各種動作条件を記述したファイルであり、分析の遂行に必要な各種の設定項目、例えば、送液部10で送液する溶離液A、Bの種類やその混合比、オートサンプラ30による試料注入条件、カラムオーブン40の温度プロファイル、及び分析に使用するカラムの種類等についてそれぞれ所定の設定値が記載されている。こうした分析条件ファイルは、予めオペレータによって分析条件毎に作成され、所定のファイル名(ファイル1、ファイル2…など)を付与されて記憶部71に記憶されている。
【0020】
分析スケジュールテーブルを作成する際には、操作部75からのオペレータの指示に応じて分析スケジュールテーブル作成部72が表示部76の画面上に分析スケジュールテーブルを表示させて操作部75からの入力を受け付ける。そして、オペレータが操作部75を用いて該分析スケジュールテーブルの各行に各種設定項目の設定値、即ち、各行の分析に用いるバイアル番号、試料名、分析条件ファイル名、カラムの種類、溶離液Aの種類、及び溶離液Bの種類を入力していく。このとき、各設定値は分析スケジュールテーブルの各セルにオペレータが直接入力するようにしてもよく、各セル内にプルダウンメニューを設け、該プルダウンメニューに表示される複数の設定値の中から適当なものをオペレータが選択するようにしてもよい。なお、前記設定項目のうち、カラム、溶離液A、及び溶離液Bについては、分析条件ファイル中にも設定値が記述されているため、各行で指定した分析条件ファイル中の設定値と異なる値を分析に適用したい場合以外は、必ずしも、分析スケジュールテーブル上においてこれらの設定項目に設定値を入力する必要はない。
【0021】
図2は、カラム及び溶離液A、Bのみを変え、他の分析条件は同一とした複数回の分析を同一の試料に対して行う場合の分析スケジュールテーブルの作成例である。この例の一行目から八行目では、各設定項目のうち、バイアル番号、試料名、及び分析条件ファイル名の設定値は各行で同一となっているが、カラム、溶離液A、及び溶離液Bの設定値の組み合わせが各行で異なっている。なお、図2の分析スケジュールテーブルにおいて、カラムの設定値「1」とは汎用分析用カラム41を用いること意味し、カラムの設定値「2」とは超高速分析用カラム42を用いることを意味している。また、溶離液Aの設定値「1」、「2」は、それぞれ溶離液容器11a、11bの溶離液を用いることを意味し、溶離液Bの設定値「1」、「2」は、それぞれ溶離液容器15a、15bの溶離液を用いることを意味している。なお、ここでは設定値として数字を使用しているが、本発明における設定値はこれに限らず、カラムの名称や溶離液の名称等の文字列であってもよい。
【0022】
本実施例の液体クロマトグラフによる連続分析時の動作について図3のフローチャートを参照しつつ説明する。まず、オペレータが操作部75を用いて分析スケジュールテーブルを作成して記憶部71に記憶させ(ステップS11)、更に、操作部75から制御装置70へ連続分析開始の指示を与える(ステップS12)。すると、分析制御部73が分析スケジュールテーブルの一行目に記載された情報を記憶部71から読み出し、その行にカラム、溶離液A、溶離液Bの設定値が記載されているかを確認する(ステップS13)。これらの設定値が分析スケジュールテーブル上に記載されていた場合(ステップS13でYes)には、該分析スケジュールテーブル上の設定値をその行の分析に適用して分析を実行する(ステップS14)。このとき、分析制御部73は、カラム、溶離液A、溶離液Bの種類については前記分析スケジュールテーブル上の設定値を適用し、それ以外の分析条件(設定項目)については分析スケジュールテーブル上で指定された分析条件ファイルの記述に従って各部の動作制御を行う。例えば、図2に示した分析スケジュールテーブルの場合、一行目の分析ではカラムとして汎用分析用カラム41を、溶離液Aとして溶離液容器11aの溶離液を、溶離液Bとして溶離液容器15aの溶離液を使用するよう溶離液切り替えバルブ13、17及び流路切り替えバルブ21、43の動作を制御すると共に、その他の分析条件については分析スケジュールテーブル上で指定された分析条件ファイル(即ち「ファイル1」)の記述に従った動作を行うよう各部に指示する。なお、分析スケジュールテーブル上でカラム、溶離液A、溶離液Bのうちの一部についての設定値のみ(例えばカラムの種類のみ)が指定されていた場合は、それについては分析スケジュールテーブル上の設定値を分析に適用し、残り(例えば溶離液A、溶離液Bの種類)については分析条件ファイルに記載された設定値を分析に適用する。
【0023】
一方、ステップS13において分析スケジュールテーブル上でカラム、溶離液A、溶離液Bの設定値が記載されていなかった場合(ステップS13でNo)には、分析制御部73は分析スケジュールテーブル上で指定された分析条件ファイル(即ち「ファイル1」)の記述をそのまま使用して各部の動作制御を行う(ステップS15)。
【0024】
一回の分析が完了したら、分析スケジュールテーブルで規定された分析がすべて完了したか否かを分析制御部73が判断し(ステップS16)、完了していなかった場合(ステップS16でNo)はステップS13に戻ってステップS16でYesとなるまでステップS13〜S16の処理を繰り返し実行する。
【0025】
以上のように、本実施例に係る制御装置70では、カラム、溶離液A、溶離液Bの種類を分析スケジュールテーブル上で指定することができるため、カラムと溶離液A、Bの種類のみを変え、その他の分析条件は同一とした複数回の分析を行う場合であっても、従来のようにカラム及び溶離液の組み合わせ毎に異なる分析条件ファイルを作成する必要がない。そのため、分析条件ファイルの作成に要するオペレータの手間を軽減することができると共に、オペレータが分析スケジュールテーブル上で誤った分析条件ファイルを指定してしまうのを防ぐことができる。
【0026】
なお、上記ではオペレータが操作部75を用いて分析スケジュールテーブル上の各設定値を手動で入力する例を説明したが、カラム、溶離液A、及び溶離液Bとして選択可能な複数の設定値(すなわち設定値候補)に基づき、分析スケジュールテーブル作成部72が、これら設定値候補の全組み合わせを網羅した図2のような分析スケジュールテーブルを自動的に作成する構成としてもよい。これにより、分析スケジュールテーブルの作成を一層効率化することができる。この場合、前記カラム、溶離液A、及び溶離液Bとして選択可能な複数の設定値は、操作部75からオペレータに入力させるようにしてもよいが、図4に示すように、制御装置70に設定値候補取得部77を設け、前記選択可能な複数の設定値、すなわち溶離液切り替えバルブ13、17で選択可能な溶離液の情報、及び流路切り替えバルブ43で選択可能なカラムの情報を該設定値候補取得部77がシステムコントローラ60を介して自動的に取得する構成とすることが望ましい。
【0027】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明を行ったが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で適宜変更が許容される。例えば、上記実施例では、溶離液A、Bの二種類の溶離液を混合して使用する液体クロマトグラフを例に挙げたが、このような溶離液の混合を行わず、一種類の溶離液のみを使用する液体クロマトグラフにも本発明を適用することができる。この場合、前記一種類の溶離液として使用する溶離液を複数種類の中から切り替え可能な構成とし、該溶離液の種類及び/又はカラムの種類を分析スケジュールテーブル上で指定できるようにする。
【0028】
また、上記実施例は本発明を液体クロマトグラフに適用した例であるが、ガスクロマトグラフ等、ほかの分析機器の制御装置にも適用することができる。なお、ガスクロマトグラフの制御装置とする場合、上記の溶離液に代わりキャリアガスの種類を分析スケジュールテーブル上で指定できるようにすることが望ましい。
【0029】
また、上記実施例では、分析スケジュールテーブル上で各分析に使用する分析条件ファイルを指定するものとしたが、分析条件ファイル記憶手段に一つの分析条件ファイルのみが記憶されており、分析スケジュールテーブルで規定された複数回の分析の全てにおいて前記一つの分析条件ファイルを適用する場合には、必ずしも分析スケジュールテーブル上で分析条件ファイル名を指定する必要はない。この場合、分析スケジュールテーブル上に分析条件ファイル名が記載されていないときには、分析制御手段が自動的に前記複数回の分析の全てに対して前記一つの分析条件ファイルを適用するものとする。
【符号の説明】
【0030】
10…送液部
11a、11b、15a、15b…溶離液容器
12、16…デガッサ
13、17…溶離液切り替えバルブ
14、18…送液ポンプ
19…汎用分析用グラジエントミキサー
20…超高速分析用グラジエントミキサー
21、43…流路切り替えバルブ
30…オートサンプラ
40…カラムオーブン
41…汎用分析用カラム
42…超高速分析用カラム
50…検出部
51…PDA検出器
52…質量分析計
60…システムコントローラ
70…制御装置
71…記憶部
72…分析スケジュールテーブル作成部
73…分析制御部
74…データ処理部
75…操作部
76…表示部
77…設定値候補取得部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された分析スケジュールテーブルに従って分析機器の動作を制御することにより該分析機器に複数回の分析を順次実行させる自動分析用制御装置であって、
a)分析機器の制御に関する複数の設定項目についてその設定値を記載した分析条件ファイルを記憶する分析条件ファイル記憶手段と、
b)前記複数回の分析の各々について、少なくとも分析対象試料の識別情報を記述すると共に、前記複数回の分析の少なくとも1つについて、前記分析条件ファイルに含まれる複数の設定項目の内の1つ又は複数に関する設定値を記述した分析スケジュールテーブルを作成する分析スケジュールテーブル作成手段と、
c)前記分析スケジュールテーブルに従って前記分析機器の動作を制御する分析制御手段と、
を有し、
前記分析制御手段が、前記複数回の分析の各々において、前記複数の設定項目の内、分析スケジュールテーブル上に設定値が記述されているものについては該設定値を分析に適用し、分析スケジュールテーブル上に記述されていないものについては前記分析条件ファイルに記載されている設定値を分析に適用することを特徴とする自動分析用制御装置。
【請求項2】
前記分析スケジュールテーブル作成手段によって作成される分析スケジュールテーブルが、更に、前記複数回の分析の各々について分析に使用する分析条件ファイルを記述したものであって、
前記分析制御手段が、前記複数回の分析の各々において、前記複数の設定項目の内、分析スケジュールテーブル上に設定値が記述されているものについては該設定値を分析に適用し、分析スケジュールテーブル上に記述されていないものについては該分析スケジュールテーブル上でその分析に適用するものとして記述されている分析条件ファイルに記載された設定値を分析に適用することを特徴とする請求項1に記載の自動分析用制御装置。
【請求項3】
更に、
d)前記複数の設定項目のうち、前記分析スケジュールテーブル上に記述される1つ又は複数の設定項目について選択可能な1つ以上の設定値を取得する設定値候補取得手段、
を有し、前記分析スケジュールテーブル作成手段が、前記設定値候補取得手段で取得された設定値候補の全ての組合せを網羅した分析スケジュールテーブルを自動的に作成するものとすることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動分析用制御装置。
【請求項4】
前記分析機器がクロマトグラフであって、前記複数の設定項目のうち、前記分析スケジュールテーブル上に記述される1つ又は複数の設定項目が、移動相の種類及びカラムの種類の少なくともいずれか一方であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自動分析用制御装置。
【請求項5】
予め設定された分析スケジュールテーブルに従って分析機器の動作を制御することにより該分析機器に複数回の分析を順次実行させるためのコンピュータに使用されるプログラムであって、該コンピュータを、
a)分析機器の制御に関する複数の設定項目についてその設定値を記載した分析条件ファイルを記憶する分析条件ファイル記憶手段と、
b)前記複数回の分析の各々について、少なくとも分析対象試料の識別情報を記述すると共に、前記複数回の分析の少なくとも1つについて、前記分析条件ファイルに含まれる複数の設定項目の内の1つ又は複数に関する設定値を記述した分析スケジュールテーブルを作成する分析スケジュールテーブル作成手段と、
c)前記分析スケジュールテーブルに従って前記分析機器の動作を制御する分析制御手段、
として機能させるものであって、
前記分析制御手段が、前記複数回の分析の各々において、前記複数の設定項目の内、分析スケジュールテーブル上に設定値が記述されているものについては該設定値を分析に適用し、分析スケジュールテーブル上に記述されていないものについては前記分析条件ファイルに記載されている設定値を分析に適用することを特徴とするプログラム。
【請求項6】
前記分析スケジュールテーブル作成手段によって作成される分析スケジュールテーブルが、更に、前記複数回の分析の各々について分析に使用する分析条件ファイルを記述したものであって、
前記分析制御手段が、前記複数回の分析の各々において、前記複数の設定項目の内、分析スケジュールテーブル上に設定値が記述されているものについては該設定値を分析に適用し、分析スケジュールテーブル上に記述されていないものについては該分析スケジュールテーブル上でその分析に適用するものとして記述されている分析条件ファイルに記載された設定値を分析に適用することを特徴とする請求項5に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−181023(P2012−181023A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42158(P2011−42158)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】