説明

自動分析装置、自動分析装置の精度管理方法、および精度管理用プログラム

【課題】作業者の負担を減らし、コストを低く抑えながらも正確かつ精密な精度管理を行う。
【解決手段】所定の試料を収容し、当該試料を識別する識別情報をコード化した情報コードを記録する情報コード記録部を有する試料バイアルと、前記試料バイアルを恒温状態で保持するバイアル保持部と、前記バイアル保持部が保持する試料バイアルの情報コード記録部が記録する情報コードを読み取る情報コード読取部と、通信ネットワークを介して複数の自動分析装置に接続され、試料の分析を行う際に必要な分析情報を記憶するとともに、各自動分析装置から送信される分析結果を集計する管理システムとの間で情報の送受信を行う送受信部と、前記管理システムから受信する分析情報を用いて前記情報コードに対応する試料と所定の試薬との反応を制御するとともに、この反応の結果に基づいて前記試料の成分を分析する演算を行う制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や体液等の検体を自動的に分析する自動分析装置、自動分析装置の精度管理方法、および精度管理用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や体液等の検体を生化学的または免疫学的に分析するための装置として自動分析装置が知られている。この自動分析装置では、分析の正確性および精密性を保証するための精度管理を行う。この精度管理には2種類あり、自動分析装置が設置されている施設内部で1日数回の割合で定期的に行う内部精度管理と、年に数回の割合で開催され、他の施設における測定分析結果の比較を行う外部精度管理とがある。
【0003】
このうち内部精度管理では精度管理試料を用いる。この場合、精度管理試料はバイアルから規定の試料カップに移されて自動分析装置の所定位置に設置される。試料カップに移された精度管理試料は、自動分析装置が保持する反応容器に所定量分注される。この反応容器には検査項目に応じた試薬も分注され、この試薬と精度管理試料との間で生じる反応を光学的に測定し、その測定結果を用いて精度管理試料の成分を分析する。
【0004】
精度管理試料は、そのロットに応じて分析に必要な情報も変化することがあるため、以前と異なるロットの精度管理試料を用いることになった場合には、分析に必要な情報を自動分析装置に入力し直す必要がある。このような情報の入力は、作業者(オペレータ)がキーボードなどの入力手段を用いて手入力で行うのが一般的である(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、入力が必要な情報は膨大なため、作業者が入力するのに時間がかかる上、入力ミスが生じやすいという問題があった。
【0005】
この問題を解決するため、試料の識別コードとロット番号などを記録する一次元バーコードが付与された容器と、試料に関するより詳細な情報を記録する二次元バーコードが付与された試薬ボトルとを用いることにより、作業者による煩雑な入力作業の手間を省く技術が開示されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平11−211731号公報
【特許文献2】特開平8−94626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の技術では、いずれの場合にも精度管理試料を試験管やサンプルカップ等の試料容器に移す作業が必要であった。このため、正確な測定を行うには、作業者が試料の設置位置を正しく認識して間違いのないように設置しなければならず、この試料の設置作業が作業者の負担となる場合があった。
【0008】
また、精度管理試料を試料容器に移す場合には、作業者が余裕を見て必要な量よりも若干多めの量の試料を移す傾向にあるため、実際の測定に使用されなかった試料が試料容器内に残存してしまい、高価な精度管理試料に無駄が生じることによってコストがかかってしまうという問題があった。
【0009】
さらに、特許文献2で開示された技術の場合には、一次元バーコードと二次元バーコードをそれぞれ読み取る機能を備えた読取手段を設置しなければならず、そのような機能を具備させることによって自動分析装置が高価になってしまうという問題が生じた。
【0010】
これらの内部精度管理上の問題点に加えて、外部精度管理は上記の如く年に数回の割合でしか開催されないため、測定結果と母集団との間に顕著な差異が生じても、その事実を即座に把握することは難しかった。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、作業者の負担を減らし、コストを低く抑えながらも正確かつ精密な精度管理を行うことができる自動分析装置、自動分析装置の精度管理方法、および精度管理用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の発明は、試料を所定の試薬と反応させることによって前記試料の成分の分析を行う自動分析装置であって、所定の試料を収容し、当該試料を識別する識別情報をコード化した情報コードを記録する情報コード記録部を有する試料バイアルと、前記試料バイアルを恒温状態で保持するバイアル保持部と、前記バイアル保持部が保持する試料バイアルの情報コード記録部が記録する情報コードを読み取る情報コード読取部と、通信ネットワークを介して複数の自動分析装置に接続され、試料の分析を行う際に必要な分析情報を記憶するとともに、各自動分析装置から送信される分析結果を集計する管理システムとの間で情報の送受信を行う送受信部と、前記送受信部が前記管理システムから受信する分析情報を用いて前記情報コード読取部が読み取った情報コードに対応する試料と所定の試薬との反応を制御するとともに、この反応の結果に基づいて前記試料の成分を分析する演算を行う制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記情報コード、前記分析情報、前記分析結果、および前記集計結果のうち少なくともいずれか一つを記憶する記憶部をさらに備え、前記情報コード読取部が読み取った情報コードを前記記憶部が記憶していない場合には、前記管理システムに対して前記読み取った情報コードに対応する試料の分析情報の送信を要求することを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記送受信部は、前記試料の分析結果を前記管理システムに送信する一方、この分析結果を含む複数の分析結果を前記管理システムが集計した集計結果を前記管理システムから受信することを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項記載の発明において、前記識別情報は、当該識別情報に対応する試料の名称およびロット番号を含むことを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項記載の発明において、前記試料は、精度管理試料および検量線作成試料のうちのいずれか一方であることを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の発明は、試料を所定の試薬と反応させることによって前記試料の成分を分析する自動分析装置が、通信ネットワークを介して複数の自動分析装置に接続され、前記精度管理試料の分析を行う際に必要な分析情報を記憶するとともに、各自動分析装置から送信される分析結果を集計する管理システムとの間で通信を行うことによって当該自動分析装置の精度管理を行う自動分析装置の精度管理方法であって、当該自動分析装置は、試料を識別する識別情報をコード化した情報コードを記録する情報コード記録部を有し、前記識別情報に対応する精度管理試料を収容する試料バイアルと、前記試料バイアルを恒温状態で保持するバイアル保持部とを備え、前記バイアル保持部が保持する試料バイアルの情報コード記録部が記録する情報コードを読み取る情報コード読取ステップと、前記情報コード読取ステップで読み取った情報コードを当該自動分析装置の記憶部が記憶していない場合には、前記管理システムに対して前記読み取った情報コードに対応する精度管理試料の分析情報の送信を要求する要求ステップと、前記管理システムから受信した分析情報を用いて前記精度管理試料を所定の試薬と反応させ、この反応の結果を光学的に測定し、この測定結果に基づいて前記精度管理試料の成分を分析する演算を行う分析ステップと、前記分析ステップで行った分析演算の結果を前記管理システムに送信する分析結果送信ステップと、前記分析結果送信ステップで送信した分析結果を含む複数の分析結果を前記管理システムが集計した集計結果を受信する集計結果受信ステップと、を少なくとも実行することを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の発明に係る精度管理用プログラムは、請求項6記載の自動分析装置の精度管理方法を当該自動分析装置に実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、当該自動分析装置が、所定の試料を収容し、当該試料を識別する識別情報をコード化した情報コードを記録する情報コード記録部を有する試料バイアルと、前記試料バイアルを恒温状態で保持するバイアル保持部と、前記バイアル保持部が保持する試料バイアルの情報コード記録部が記録する情報コードを読み取る情報コード読取部と、通信ネットワークを介して複数の自動分析装置に接続され、試料の分析を行う際に必要な分析情報を記憶するとともに、各自動分析装置から送信される分析結果を集計する管理システムとの間で情報の送受信を行う送受信部と、前記管理システムから受信する分析情報を用いて前記情報コードに対応する試料と所定の試薬との反応を制御するとともに、この反応の結果に基づいて前記試料の成分を分析する演算を行う制御部とを備えることにより、作業者の負担が少なくて済み、コストを抑えながらも正確かつ精密な精度管理を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る自動分析装置を含むネットワークの全体構成を示す説明図である。同図に示す自動分析装置1は、検体等の試料の成分を生化学的または免疫学的に分析するものであり、通信ネットワークNを介して管理システム3に接続されている。この管理システム3には、通信ネットワークNを介して複数の自動分析装置1が接続されている。
【0021】
自動分析装置1は、試料および試薬を反応容器に分注し、その反応容器内で生じる反応を光学的に測定する測定機構101と、この測定機構101の駆動制御を行うとともに測定機構101における測定結果の分析を行う制御分析機構102とを有し、これらの二つの機構が連携することによって試料の成分の分析を行う。
【0022】
図2は、自動分析装置1の測定機構101要部の一構成例を示す平面図である。同図に示す測定機構101は、血液や体液等の検体を収容する検体容器111を搭載した複数のラック112を収納して移送する機能を有する検体移送部11、試料を収容する試料バイアル121を保持するバイアル保持部である試料テーブル12、試料テーブル12が保持する試料バイアル121に貼付された情報コードを読み取る情報コード読取部13、試料と試薬を反応させる反応容器141を保持する反応テーブル14、および試薬容器151を保持する試薬テーブル15を備える。
【0023】
また、測定機構101は、反応容器141の内部に収容される液体を攪拌する攪拌部16、反応容器141内を通過してくる光の強度などを測定する測光部17、および反応容器141の洗浄を行う洗浄部18を備える。さらに、測定機構101は、試料を分注する試料分注部19と、試薬を分注する試薬分注部20とを有する。
【0024】
試料テーブル12は、制御分析機構102が有する制御部25の制御のもと、ステッピングモータが駆動することにより、当該試料テーブル12の中心を通る鉛直線を回転軸として回動自在であり、所望の試料バイアル121を試料分注部19による試料吸引位置まで移送する。この試料テーブル12は、所定の形状をなす試料バイアル121をそのまま保持可能な形状をなしているので、試料バイアル121内の試料を他の試料容器に移す作業を行う必要がない。
【0025】
試料テーブル12の上方には開閉自在なカバーが設けられる一方、試料テーブル12の下方には恒温槽が設けられている。この結果、カバーを閉じたときに試料バイアル121を恒温状態に保ち、試料バイアル121内の試料の蒸発や変性を抑えることができる。
【0026】
図3は、試料バイアル121の外観を模式的に示す図である。同図に示す試料バイアル121の側面部には、内部の試料を識別するための情報コードを記録する情報コード記録部122が設けられている。この情報コード記録部122が記録する情報コードは、試料の名称とロット番号をコード化したものであり、情報量が少ない。そこで、情報コードとして一次元バーコードを適用する。この場合、情報コード読取部13は一次元バーコードリーダを用いて実現される。
【0027】
試料テーブル12には、精度管理試料(コントロール)を収容する試料バイアル121が設置される。この試料テーブル12には、他に緊急用の検体等を格納することもできる。この場合、検体は試料バイアル121と同形状をなす検体用容器(バイアル)に収容される。なお、試料テーブル12が検体容器111も保持できるようにしてもよい。
【0028】
反応テーブル14は、反応容器141への試料や試薬の分注、反応容器141の攪拌、洗浄、または測光を行うために反応容器141を所定の位置まで移送する。この反応テーブル14は、制御部25の制御のもとステッピングモータが駆動することにより、当該反応テーブル14の中心を通る鉛直線を回転軸として回動自在である。なお、この反応テーブル14の上方と下方には、試料テーブル12と同様、開閉自在なカバーと恒温層がそれぞれ設けられている(図示せず)。
【0029】
試薬テーブル15は、所望の試薬容器151を試薬分注部20による試薬吸引位置まで移送する機能を有し、上記二つのテーブルと同様に、制御部25の制御のもとステッピングモータが駆動して試薬テーブル15の中心を通る鉛直線を回転軸として回動自在である。
【0030】
攪拌部16は、反応容器141に分注された試料と試薬の攪拌を行い、反応を促進させる。図2に示す場合には、鉛直方向上下に移動自在なアーム161の先端部に、鉛直方向を指向する攪拌棒162が取り付けられている。攪拌時には、この攪拌棒162が反応容器141の内部に入り込んで試料と試薬の混合液を攪拌する。
【0031】
測光部17は、所定の波長の光を発生する光源171と、この光源171から照射され、反応容器141を通過した光を受光するための受光部172を有する。このうち受光部172は、受光した光の強度を電気信号に変換する受光素子を用いて実現される。
【0032】
洗浄部18は、測光部17で測定が終了した反応容器141内の混合液を排出し、洗浄を行う。この洗浄した反応容器141は再利用されるが、検査内容によっては1回の測定終了後に反応容器141を廃棄してもよい。
【0033】
試料分注部19は、試料の吸引および吐出を行う細管状のプローブ191と、このプローブ191を移動するために鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行うアーム192と、吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構とを備える(図示せず)。この試料分注部19は、検体移送部11または試料テーブル12の試料吸引位置にある検体容器111または試料バイアル121からの試料の吸引し、この吸引した試料を反応テーブル14上の試料分注位置にある反応容器141へ吐出する。
【0034】
試薬分注部20は、試薬テーブル15上の試薬吸引位置にある試薬容器151からの試薬の吸引を行う一方、この吸引した試薬を反応テーブル14上の試薬分注位置にある反応容器141へ吐出する。この試薬分注部20は、試料分注部19と同様の構成を有しており、細管状のプローブ201、アーム202、および吸排機構(図示せず)を備える。
【0035】
プローブ191および201の下端部には、液面を検知する液面検知機能が設けられており、液面の高さが変化しても各プローブ先端の所定長さ分だけが液面から入るように設定されている。これにより、各プローブにおける試料または試薬の分注精度を保つと同時に、プローブ自身の汚れを防止することができる。
【0036】
なお、攪拌棒162、プローブ191および201は、1回の動作の後、個別に設けられる洗浄部(図示せず)で洗浄される。この洗浄を行う代わりに、1回の動作ごとに使用済みの攪拌棒162やプローブ191および201を廃棄し、新しいものに取り替えてもよい。また、試料や試薬を分注後にそれらを適切な濃度に希釈する希釈液を保持、分注する希釈分注部をさらに設けてもよい。
【0037】
次に、図1を参照して制御分析機構102の構成を説明する。制御分析機構102は一または複数のコンピュータを用いて実現され、分析に必要な各種情報を入力するためキーボートまたはマウス等のポインティングデバイスによって実現される入力部21、分析結果等を出力表示するためCRT、液晶、有機EL等のディスプレイやプリンタによって実現される出力部22、および通信ネットワークNを介して所定の形式に従った情報の送受信を行うインタフェースとしての機能を有する送受信部23を備える。
【0038】
また、制御分析機構102は、情報コード読取部13で読み取る情報コード、管理システム3から受信する試料の分析に関する分析情報、測定機構101における分析結果、および管理システム3が集計する集計結果などを状況に応じて記憶する記憶部24と、当該制御分析機構102内の各機能または各手段の制御を行うとともに測定機構101の駆動制御を行う制御部25とを備える。
【0039】
記憶部24は、さまざまな情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置1が処理を実行する際にその処理に係る各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記録するメモリとを用いて実現される。また、記憶部24として、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、MOディスク、PCカード、xDピクチャーカード等の記録媒体に記録された情報を読み取ることができる補助記憶装置をさらに備えてもよい。
【0040】
制御部25は、測定機構101における測定結果に基づいて試料の成分の分析演算を行う分析演算部251を有し、制御および演算機能を有するCPU(Central Processing Unit)等によって実現される。この制御部25は、記憶部24が記憶するプログラムをメモリから読み出すことにより、前記分析演算を含む自動分析装置1の各種動作の制御および演算を実行する。
【0041】
以上の構成を有する自動分析装置1に通信ネットワークNを介して接続される管理システム3について説明する。この管理システム3は一または複数のコンピュータを用いて構築され、当該管理システム3全体の制御および演算等を行うサーバ31と、試料の分析情報を記憶する分析情報データベース(DB)32と、各自動分析装置1から送られてくる分析結果、およびその分析結果をサーバ31が集計した結果などを含む集計情報を記憶する集計情報データベース(DB)33とを有する。
【0042】
通信ネットワークNは、インターネット、電話網、パケット網、WAN(Wide Area Network)、有線または無線LAN(Local Area Network)、専用回線、イントラネット等、所定の形式に従って電気的な信号の送受信を行うことができれば如何なるものであっても構わない。
【0043】
次に、自動分析装置1が行う精度管理方法について説明する。図4は、自動分析装置1の精度管理方法の概要を示すシーケンス図である。より具体的には、試料バイアル121を試料テーブル12に設置した後の自動分析装置1の動作の概要を、管理システム3との通信を含めて示すシーケンス図である。以下の説明においては、自動分析装置1と管理システム3は常時通信可能な状態にあるものとするが、送信元が情報の送信を開始する際に送信先との通信を確立するような構成にしてもよい。
【0044】
試料バイアル121が試料テーブル12に設置されると、情報コード読取部13は、新たに設置された試料バイアル121の情報コード記録部122に記録されている情報コードを読み取る(ステップS1)。このステップS1に先立って、試料テーブル12は、読取対象である試料バイアル121の情報コード記録部122が情報コード読取部13に正対する情報コード読取位置Aまで移送する。なお、図2に示す場合には、試料バイアル121を設置するときに、情報コード記録部122が試料テーブル12の外周を向くように設置されていなければならない。
【0045】
情報コード読取部13が読み取った情報コードは、制御部25に送信される。制御部25では、受信した情報コードを記憶部24で検索し、読み取った情報コードを記憶済みでない場合(ステップS2でNo)には、その情報コードを記憶部24に格納して記憶するとともに、その情報コードを送受信部23から管理システム3に送信する(ステップS3)。
【0046】
自動分析装置1から情報コードを受信した管理システム3は、サーバ31がその情報コードに対応する試料を用いた分析に必要な分析情報を検索して分析情報データベース32から読み出し、この読み出した分析情報を自動分析装置1に送信する(ステップS4およびS5)。この分析情報は、分析項目、試料の濃度や有効期限、試料と試薬の分注量、各分析項目の参照値および許容値、等の分析パラメータを含むものである。
【0047】
管理システム3から分析情報を受信した自動分析装置1は、出力部22でその分析情報を表示したり印刷したりして出力するとともに、その分析情報を記憶部24に格納して記憶する(ステップS6)。
【0048】
以上の説明では、情報コード読取部13が記憶部24で記憶していない情報コードを読み取った場合、自動分析装置1がその情報コードを自動的に管理システム3に対して送信するものとしたが、作業者が情報コードの送信を行うか否かをその都度選択できるような構成にしてもよい。
【0049】
なお、ステップS1で読み取った情報コードを記憶部24がすでに記憶している場合(ステップS2でYes)には、それ以後のステップS3〜S6の処理は行わずに後述するステップS7以降の処理に進む。ただし、既に記憶済みの情報コードであっても、その情報コードに対応する分析情報が更新されている可能性がある場合などには分析情報を改めて取得する必要がある。このような場合には、上述したステップS3〜S6と同様の処理を行うことによって記憶部24で記憶している分析情報を更新するようにしてもよい。
【0050】
ここまで説明したように、試料バイアル121が収容する試料の識別情報を情報コードとして読み取り、この読み取った情報コードに含まれる識別情報に対応する分析情報を管理システム3から取得することにより、管理システム3が管理する最新の分析情報を取得することが可能となる。
【0051】
この後、測定機構101は、試料の測定を開始するまで待機状態にある(ステップS7でNo)。試料の測定をどの時点で開始するかについての情報は、作業者が試料バイアル121を設置した後で入力部21から入力しておく。作業者が入力する情報は、測定の開始時刻でもよいし、試料の測定周期(例えば1周期の間に測定する検体の数)を入力してもよい。なお、ここでいう待機状態とは、測定機構101が試料の測定を待機する状態を意味しており、その間にも通常の検体の測定を行うことは可能である。
【0052】
制御部25が試料の測定を開始する制御信号を測定機構101に対して送信すると、測定機構101は試料の測定を開始する(ステップS7でYes、およびステップS8)。このステップS8における試料の測定は、検体の測定の間に行ってもよいし、一時的に検体の測定を中断して行ってもよい。
【0053】
以下、ステップS8における試料の測定を具体的に説明する。まず、試薬分注部20が、反応テーブル14の所定の試薬分注位置Eにある反応容器141に試薬を分注する。この際には、制御部25の制御のもと、試薬テーブル15が、反応容器141に分注すべき試薬が入った試薬容器151を試薬吸引位置Dまで移送する。その後、試薬分注部20は、アーム202が駆動してプローブ201を試薬吸引位置Dに移送し、試薬容器151内の試薬を所定量吸引する。その後、再びアーム202が駆動して、反応テーブル14の試薬分注位置Eにある反応容器141の内部に吸引した試薬を吐出する。続いて反応テーブル14は、試薬が分注された反応容器141を所定の試料分注位置Cまで移送する。
【0054】
次に、試料分注部19が試料の分注を行う。この際には、制御部25の制御のもと、アーム192を駆動してプローブ191から試料吸引位置Bにある試料バイアル121内の試料を所定量吸引する。その後、再びアーム192が駆動して、反応テーブル14の試料分注位置Cにある反応容器141の内部に吸引した試料を吐出する。
【0055】
続いて反応テーブル14は、試料と試薬が分注された反応容器141を攪拌部16による攪拌位置Fまで移送する。攪拌部16はアーム161を駆動することによって攪拌棒162を反応容器141の内部に挿入し、試料と試薬の混合液を所定時間攪拌する。
【0056】
その後、反応テーブル14は、攪拌が終了した反応容器141を測光部17による測光位置Gまで移送する。測光部17の光源171が放射する光は反応容器141内の反応液(反応が済んだ混合液)を通過して受光部172で受光される。この受光部172は、測定した光の強度等の測定結果(電気信号)を制御分析機構102に送出する。これにより、測定機構101における試料の測定(ステップS8)が終了する。
【0057】
なお、ここまで説明した測定方法はあくまでも一例に過ぎず、試料の種類、分析項目、自動分析装置1の種類などに応じて適宜変更されることはいうまでもない。例えば、試料が分注された後、さらに別の試薬を分注することもある。
【0058】
以上説明したステップS8の後、測光部17からの測定結果を受信した制御分析機構102は、制御部25の分析演算部251が記憶部24から測定対象試料の分析情報を読み出し、測定結果の分析演算を行う(ステップS9)。この分析演算では、測光部17から送られてくる測定結果に基づいて反応液の吸光度を算出し、この算出結果に加えて標準試料から得られる検量線や分析情報に含まれる分析パラメータを用いることにより、反応液の成分や濃度を定量的に求める。
【0059】
ステップS9で分析した分析演算の結果(分析結果)は、出力部22で表示したり印刷したりして出力するとともに、送受信部23を介して管理システム3に送信する(ステップS10)。
【0060】
分析結果を受信した管理システム3は、受信した分析結果を新たな情報として集計するために集計情報データベース33に格納して記憶する(ステップS11)。
【0061】
サーバ31は、同一条件下で行われた試料測定の分析結果がある程度集まった時点で集計処理を行う。このため、ステップS12では、予めサーバ31に対して設定された集計処理の周期に達するまで集計演算は行わないで待機する(ステップS12でNo)。なお、ここでいう同一条件とは、自動分析装置1の種類、試料および試薬のロット番号、分析パラメータ等がそれぞれ同一であることを意味する。また、集計処理の周期は時間で定義してもよいし、各自動分析装置1から受信する分析結果の累計で定義してもよい。
【0062】
その後、所定の周期に達して集計を開始する場合(ステップS12でYes)には、サーバ31が集計情報データベース33から集計すべき分析結果を読み出して、統計的な演算を実行する(ステップS13)。ここでの演算においては、分析結果の平均値や標準偏差の算出、および個々の分析結果の偏差値の算出などを行う。
【0063】
その後、サーバ31は、ステップS13で求めた統計的な演算の結果を集計結果として集計情報データベース33に格納して記憶するとともに、その集計における統計データの母集団の要素である分析結果を送信してきた複数の自動分析装置1に対して集計結果を送信する(ステップS15)。
【0064】
これに対して、集計処理を開始しない場合(ステップS12でNo)には、新たな分析結果を他の自動分析装置1から受信した時点(ステップS14でYes)でステップS11に戻って受信した分析結果の記憶を行う。これ以外の場合(ステップS14でNo)には、再びステップS12に戻って集計開始となるまで待機する。
【0065】
管理システム3から集計結果を受信した自動分析装置1は、受信した集計結果を出力部22で表示したり印刷したりして出力する一方、その集計結果を記憶部24に格納して記憶する(ステップS16)。なお、管理システム3から集計結果を受信する場合、自動分析装置1の側で受信する周期を設定しておいてもよい。
【0066】
以上説明したように、試料の測定を行った後で、その測定結果を分析し、この分析結果を管理システム3に対して送信し、管理システム3によって他の自動分析装置1の分析結果とともに統計的に集計された結果を受信することにより、外部精度管理を行うことができる。すなわち、この実施の形態によれば、通常の外部精度管理(年に数回)に比べてはるかに頻繁に集計結果を得ることができるので、測定結果と母集団との間に乖離が生じても、その事実をかなり早い段階で把握することが可能となる。
【0067】
以上説明した本発明の一実施の形態によれば、試料バイアルをそのまま設置可能な資料テーブルを備えることにより、測定するたびに試料をバイアルから試料容器に移す作業や試料容器を所定位置に設置する作業を行う必要がなくなり、作業者の負荷を軽減し、作業ミスを一段と防止することが可能になるとともに、試料バイアルを試料容器に移す際の無駄も無くすことができるので、高価な試料に費やすコストを抑えることができる。
【0068】
また、この実施の形態によれば、試料バイアルに添付されている情報コードを読み取ることによって分析情報を得ることができるので、試料のロットが変更された場合でも、作業者が煩雑なパラメータ設定を手入力によって行う必要がなくなるので、作業者の負荷が軽減でき、作業時間の短縮と試料情報の正確な入力を実現することができる。
【0069】
さらに、この実施の形態によれば、各自動分析装置における分析内容の集計結果を従来の外部制度管理と比較して短い周期で得ることができるので、測定結果と母集団との間に乖離が生じた場合でも、その事実を常に早い段階で認識することが可能となる。
【0070】
以上、本発明を実施する上で最良と思われる一形態を詳述してきたが、本発明はこの一実施の形態によってのみ限定されるものではない。例えば本発明は、精度管理試料だけでなく、検量線を作成するために使用する検量線作成試料(キャリブレータ)にも適用することができる。
【0071】
このように、本発明は、ここでは記載していないさまざまな実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置を含むシステムの全体構成を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置要部の構成を示す説明図である。
【図3】試料バイアルの構成を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置の精度管理方法の処理の概要を示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0073】
1 自動分析装置
3 管理システム
11 検体移送部
12 試料テーブル
13 情報コード読取部
14 反応テーブル
15 試薬テーブル
16 攪拌部
17 測光部
18 洗浄部
19 試料分注部
20 試薬分注部
21 入力部
22 出力部
23 送受信部
24 記憶部
25 制御部
31 サーバ
32 分析情報データベース
33 集計情報データベース
101 測定機構
102 制御分析機構
111 検体容器
112 ラック
121 試料バイアル
122 情報コード記録部
141 反応容器
151 試薬容器
161、192、202 アーム
162 攪拌棒
171 光源
172 受光部
191、201 プローブ
251 分析演算部
N 通信ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を所定の試薬と反応させることによって前記試料の成分の分析を行う自動分析装置であって、
所定の試料を収容し、当該試料を識別する識別情報をコード化した情報コードを記録する情報コード記録部を有する試料バイアルと、
前記試料バイアルを恒温状態で保持するバイアル保持部と、
前記バイアル保持部が保持する試料バイアルの情報コード記録部が記録する情報コードを読み取る情報コード読取部と、
通信ネットワークを介して複数の自動分析装置に接続され、試料の分析を行う際に必要な分析情報を記憶するとともに、各自動分析装置から送信される分析結果を集計する管理システムとの間で情報の送受信を行う送受信部と、
前記送受信部が前記管理システムから受信する分析情報を用いて前記情報コード読取部が読み取った情報コードに対応する試料と所定の試薬との反応を制御するとともに、この反応の結果に基づいて前記試料の成分を分析する演算を行う制御部と、
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記情報コード、前記分析情報、前記分析結果、および前記集計結果のうち少なくともいずれか一つを記憶する記憶部をさらに備え、
前記情報コード読取部が読み取った情報コードを前記記憶部が記憶していない場合には、前記管理システムに対して前記読み取った情報コードに対応する試料の分析情報の送信を要求することを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記送受信部は、前記試料の分析結果を前記管理システムに送信する一方、この分析結果を含む複数の分析結果を前記管理システムが集計した集計結果を前記管理システムから受信することを特徴とする請求項1または2記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記識別情報は、当該識別情報に対応する試料の名称およびロット番号を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記試料は、精度管理試料および検量線作成試料のうちのいずれか一方であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の自動分析装置。
【請求項6】
試料を所定の試薬と反応させることによって前記試料の成分を分析する自動分析装置が、通信ネットワークを介して複数の自動分析装置に接続され、前記精度管理試料の分析を行う際に必要な分析情報を記憶するとともに、各自動分析装置から送信される分析結果を集計する管理システムとの間で通信を行うことによって当該自動分析装置の精度管理を行う自動分析装置の精度管理方法であって、
当該自動分析装置は、
試料を識別する識別情報をコード化した情報コードを記録する情報コード記録部を有し、前記識別情報に対応する精度管理試料を収容する試料バイアルと、前記試料バイアルを恒温状態で保持するバイアル保持部とを備え、
前記バイアル保持部が保持する試料バイアルの情報コード記録部が記録する情報コードを読み取る情報コード読取ステップと、
前記情報コード読取ステップで読み取った情報コードを当該自動分析装置の記憶部が記憶していない場合には、前記管理システムに対して前記読み取った情報コードに対応する精度管理試料の分析情報の送信を要求する要求ステップと、
前記管理システムから受信した分析情報を用いて前記精度管理試料を所定の試薬と反応させ、この反応の結果を光学的に測定し、この測定結果に基づいて前記精度管理試料の成分を分析する演算を行う分析ステップと、
前記分析ステップで行った分析演算の結果を前記管理システムに送信する分析結果送信ステップと、
前記分析結果送信ステップで送信した分析結果を含む複数の分析結果を前記管理システムが集計した集計結果を受信する集計結果受信ステップと、
を少なくとも実行することを特徴とする自動分析装置の精度管理方法。
【請求項7】
請求項6記載の自動分析装置の精度管理方法を当該自動分析装置に実行させることを特徴とする精度管理用プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate