説明

自動分析装置およびその制御方法

【課題】水位センサや圧力センサ等の機構を設置することなく、希釈容器内の溶液の液面高さや、希釈容器に吐出される溶液の単位時間当たりの流量を測定することができる自動分析装置を提供する。
【解決手段】自動分析装置において、制御部は、シッパーノズル222が希釈容器203内の液体に接触していない状態で電解質測定部にて測定した起電力E0を記憶部に記憶し、シッパーノズル222が希釈容器203内の液体に接触する状態までの過程で電解質測定部によって得られた起電力Enと記憶部に記憶している起電力E0とに基づいて、希釈容器203内の液体の液面高さを検出する処理を制御する。そして、起電力Enと起電力E0との差が閾値ΔE以上となったことを判断して、希釈容器203内の液体の液面高さを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置の技術に関し、特に、生体液中のイオン分析に使用する電解質測定装置、およびこの電解質測定装置を含む生化学自動分析装置、さらにこれらの制御方法に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血液中に存在するNaイオン、Kイオン、Clイオン等の各種イオンの定量測定においては、イオン選択性電極(ISE;Ion Selective Electrode)を用いて起電力測定を行って分析する方法が主流である。
【0003】
イオン選択性電極を用いた測定法には、試料溶液を希釈液で希釈し測定する希釈法と、試料溶液を希釈無しに測定する非希釈法がある。小形緊急検査装置などを除いてほとんどの自動分析装置に搭載されている電解質測定装置では希釈法が採用されている。希釈法では、希釈カップや反応セル等の容器(以下、希釈容器)で試料溶液を希釈液で希釈し、この希釈された試料溶液(以下、希釈試料溶液)をイオン選択性電極に供給して電解質濃度測定を行う。
【0004】
一般的に、希釈法を採用した電解質測定装置で使用する希釈容器は、繰り返し使用する。このような希釈法を採用した電解質測定装置が、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−57367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した特許文献1を含む従来の電解質測定装置で採用されている希釈法では、すべての試料溶液を希釈容器にて希釈した後、測定することになる。そのため、以前測定した試料溶液が希釈容器に残っていると、誤測定の原因となる。一方、希釈容器の清掃は、検査技師が綿棒などを用いて定期的に清掃してもらうことで対応している。
【0007】
希釈容器を自動で洗浄する機構を設けるのが理想であるが、純水等の洗浄液で希釈容器を洗浄する場合、洗浄液が希釈容器から溢れずに希釈容器全体を洗浄するようにする必要がある。そのためには、希釈容器内にどれだけの洗浄水が入ったかを監視する必要がある。監視のため、例えば、水位センサや圧力センサを液面検知センサとして使用することで液面高さを測定する方法が考えられる。
【0008】
しかし、水位センサを設置すると試料溶液間での汚染による測定不良(キャリーオーバー)が生じやすくなるという課題がある。また、圧力センサ等を設置することで液面高さを測定する方法もあるが、装置構成が複雑になるという課題がある。
【0009】
そこで、本発明は上述したような課題に鑑みてなされたものであり、その代表的な目的は、水位センサや圧力センサ等の機構を設置することなく、希釈容器内の溶液の液面高さや、希釈容器に吐出される溶液の単位時間当たりの流量を測定することができる自動分析装置を提供することにある。
【0010】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
すなわち、代表的な自動分析装置は、電極法により液中の電解質を測定する電解質測定部と、前記電解質測定部にて測定した起電力を記憶する記憶部と、液体を保持する容器と、前記容器に液体を分注する分注部と、前記容器内の液体を吸引し、前記電解質測定部に供給するシッパーノズルと、前記容器内の液体の液面高さを検出する処理を制御する制御部とを備える。特に、前記制御部は、前記シッパーノズルが前記容器内の液体に接触していない状態で前記電解質測定部にて測定した起電力(E0)を前記記憶部に記憶し、前記シッパーノズルが前記容器内の液体に接触する状態までの過程で前記電解質測定部によって得られた起電力(En)と前記記憶部に記憶している起電力(E0)とに基づいて、前記容器内の液体の液面高さを検出する処理を制御することを特徴とする。
【0013】
また、代表的な自動分析装置の制御方法は、前記制御部の制御として、前記シッパーノズルを用いて前記容器内の液体を吸引し、前記電解質測定部と前記シッパーノズルとの流路間を液体で満たすステップと、前記電解質測定部と前記シッパーノズルとの間に生じる起電力に基づいて、前記容器内の液体が所定量、あるいは所定の液面高さまで収容されていることを検出するための基準となる起電力(E0)を得るステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0015】
すなわち、代表的な効果は、水位センサや圧力センサ等の機構を設置することなく、希釈容器内の溶液の液面高さや、希釈容器に吐出される溶液の単位時間当たりの流量を測定することができる。この結果、構造が単純で信頼性の高い電解質測定装置を含む自動分析装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置の全体構成の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置に含まれる電解質測定装置の構成の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置に含まれる電解質測定装置において、この電解質測定装置の測定系が変化した場合の測定起電力の電位と希釈容器内の溶液の液面高さとの関係の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置に含まれる電解質測定装置において、希釈容器内の溶液の液面高さ検出処理フローの一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置に含まれる電解質測定装置において、希釈容器内の溶液の液面高さ検出処理フローの別の一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置に含まれる電解質測定装置において、希釈容器内の溶液の流量測定処理フローの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の実施の形態においては、便宜上その必要があるときは、複数の実施の形態またはセクションに分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0018】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0020】
<本発明の実施の形態の概要>
本発明の実施の形態に係る自動分析装置(一例として、()内に図2等の対応する構成要素を付記)は、電極法により液中の電解質を測定する電解質測定部(イオン選択電極204〜206と比較電極207等)と、電解質測定部にて測定した起電力を記憶する記憶部(記憶装置12)と、液体を保持する容器(希釈容器203)と、容器に液体を分注する分注部(プローブ202とシリンジ209,210と電磁弁215〜218等)と、容器内の液体を吸引し、電解質測定部に供給するシッパーノズル(シッパーノズル222)と、容器内の液体の液面高さを検出する処理を制御する制御部(制御部13)とを備える。特に、制御部は、シッパーノズルが容器内の液体に接触していない状態で電解質測定部にて測定した起電力(E0)を記憶部に記憶し、容器への液体の分注を繰り返している過程で電解質測定部によって得られた起電力(En)と記憶部に記憶している起電力(E0)とに基づいて、容器内の液体の液面高さを検出する処理を制御することを特徴とする。
【0021】
また、本発明の実施の形態に係る自動分析装置の制御方法(一例として、()内に図4の対応するステップを付記)は、制御部の制御として、シッパーノズルを用いて容器内の液体を吸引し、電解質測定部とシッパーノズルとの流路間を液体で満たすステップ(S1)と、電解質測定部とシッパーノズルとの間に生じる起電力に基づいて、容器内の液体が所定量、あるいは所定の液面高さまで収容されていることを検出するための基準となる起電力(E0)を得るステップ(S3)とを有することを特徴とする。
【0022】
以上説明した本発明の実施の形態の概要に基づいた実施の形態を、以下において具体的に説明する。以下に説明する実施の形態は本発明を用いた一例であり、本発明は以下の実施の形態により限定されるものではない。
【0023】
<実施の形態>
<<自動分析装置の全体構成および動作>>
図1を用いて、本実施の形態に係る自動分析装置の全体構成および動作について説明する。図1は、この自動分析装置の全体構成の一例を示す概略構成図である。ここでは、生化学自動分析装置を例に説明する。
【0024】
図1において、1はサンプルディスク、2は試薬ディスク、3は反応ディスク、4は反応槽、5はサンプリング機構、6は試薬分注機構、7は攪拌機構、8は測光機構、9は洗浄機構、10はコンピュータ(PC)、11は電解質測定部、12は記憶装置、13は制御部、14は圧電素子ドライバ、15は攪拌機構コントローラ、16は試料容器、17は円形サンプルディスク、18は試薬ボトル、19は円形試薬ディスク、20は保冷庫、21は反応容器、22は反応容器ホルダ、23は駆動機構、24はサンプルプローブ、25はサンプルプローブ支承軸、26はサンプルプローブアーム、27は試薬プローブ、28は試薬プローブ支承軸、29は試薬プローブアーム、30は電解質測定用サンプリング機構、31は固定部、33はノズル、34は上下駆動機構、35は電解質測定用サンプルプローブ、36は電解質測定用サンプルプローブ支承軸、37は電解質測定用サンプルプローブアームである。
【0025】
本実施の形態に係る自動分析装置は、主に、複数の試料容器16が載置されるサンプルディスク1と、複数の試薬ボトル18が載置される試薬ディスク2と、複数の反応容器21が載置される反応ディスク3と、サンプルディスク1と反応ディスク3との近傍に設置されたサンプリング機構5と、試薬ディスク2と反応ディスク3との近傍に設置された試薬分注機構6と、反応ディスク3の近傍に設置された攪拌機構7、測光機構8、洗浄機構9、電解質測定部11、および電解質測定用サンプリング機構30等を有して構成される。
【0026】
サンプルディスク1は、円形サンプルディスク17上に、分析対象の試料(サンプルとも記す)を収容する複数の試料容器16が円周上に並んで載置されている。このサンプルディスク1の近傍には、サンプリング機構5が設置されている。このサンプリング機構5は、該当する試料容器16から試料を吸入し、この試料を該当する反応容器21に吐出するサンプルプローブ24がサンプルプローブ支承軸25に固定されたサンプルプローブアーム26に取り付けられている。
【0027】
試薬ディスク2は、円形試薬ディスク19上に、試薬を収納する複数の試薬ボトル18が円周上に並んで載置されている。この試薬ディスク2には、保冷庫20が設置されている。また、この試薬ディスク2の近傍には、試薬分注機構6が設置されている。この試薬分注機構6は、該当する試薬ボトル18から試薬を吸入し、この試薬を該当する反応容器21に吐出する試薬プローブ27が試薬プローブ支承軸28に固定された試薬プローブアーム29に取り付けられている。
【0028】
反応ディスク3は、複数の反応容器21が保持される複数の反応容器ホルダ22が円周上に並んで載置されている。この反応ディスク3には、反応槽4が設置されている。この反応ディスク3は、駆動機構23により間欠回転可能となっている。また、この反応ディスク3の近傍には、攪拌機構7、測光機構8、洗浄機構9、電解質測定部11、電解質測定用サンプリング機構30等が設置されている。
【0029】
攪拌機構7は、反応容器21内の内容物(試料と試薬)を攪拌するための機構であり、圧電素子ドライバ14、攪拌機構コントローラ15等から構成される。測光機構8は、反応容器21内の内容物を透過した透過光および内容物にて散乱した散乱光を測定するための機構であり、図示しない光源や検出器等から構成される。洗浄機構9は、反応容器21内を洗浄するための機構であり、ノズル33、上下駆動機構34等から構成される。
【0030】
電解質測定部11は、試料の電解質測定を行うための装置であり、図2において後述するイオン選択電極や比較電極等から構成される。電解質測定用サンプリング機構30は、試料を電解質測定部11に分注するための機構であり、試料を吸入する電解質測定用サンプルプローブ35が電解質測定用サンプルプローブ支承軸36に固定された電解質測定用サンプルプローブアーム37に取り付けられている。
【0031】
これらのサンプルディスク1、試薬ディスク2、反応ディスク3、サンプリング機構5、試薬分注機構6、攪拌機構7、測光機構8、洗浄機構9、電解質測定部11、および電解質測定用サンプリング機構30は、それぞれ制御部13に接続され、さらにコンピュータ10に接続されて、各動作が制御されるようになっている。また、制御部13には、記憶装置12に接続されている。
【0032】
コンピュータ10は、例えば演算処理機能や記憶機能等を含む本体、キーボードやマウス等の入力部、液晶やCRT等の表示部から構成され、測定試料の情報や、測定項目の登録、分析パラメータ等を設定する。記憶装置12には、分析パラメータ、各試薬ボトルの分析可能回数、最大分析可能回数、キャリブレーション結果、分析結果等や、分注動作を評価する判定プロセス、また予め保持する判定に必要なデータなどを記憶保持している。なお、記憶装置12に記憶保持する情報は、コンピュータ10に付属する記憶媒体に記憶されても良いし、個別の記憶データベースとして記憶装置12のように単独で存在しても良い。
【0033】
以上のように構成される自動分析装置において、試料の比色分析は、以下のようにサンプリング、試薬分注、攪拌、測光、反応容器の洗浄、濃度換算等のデータ処理の順番に実施される。
【0034】
サンプルディスク1、試薬ディスク2、反応ディスク3、サンプリング機構5、試薬分注機構6、攪拌機構7、測光機構8、洗浄機構9、電解質測定部11、および電解質測定用サンプリング機構30は、制御部13によりコンピュータ10を介して制御される。
【0035】
まず、サンプルディスク1上には、分析される試料を収容した複数の試料容器16が円周上に並んで設置されており、この分析される試料の順番に従ってサンプリング機構5のサンプルプローブ24の下まで移動する。試料容器16中の試料は、サンプリング機構5に連結された試料用ポンプ(図示せず)により、反応ディスク3上の反応容器21の中に所定量分注される。
【0036】
さらに、試料を分注された反応容器21は、反応槽4の中を第1試薬添加位置まで移動する。移動した反応容器21には、試薬分注機構6の試薬プローブ27に連結された試薬用ポンプ(図示せず)により、試薬ディスク2上の試薬ボトル18から吸引された試薬が所定量加えられる。第1試薬添加後の反応容器21は、攪拌機構7の位置まで移動し、最初の攪拌が行われる。このような試薬の添加−攪拌が、例えば第1〜第4試薬について行われる。
【0037】
続いて、内容物が攪拌された反応容器21は、測光機構8において、光源から発した光束中を通過し、この時の吸光度は多波長光度計により検知される。検知された前記吸光度の信号は制御部13に入り、試料の濃度に変換される。また、制御部13では同時に吸光度に基づいた異常の判定を行う。
【0038】
また、試料の電解質測定は、試料を電解質測定用サンプリング機構30で電解質測定部11に分注して行う。なお、電解質測定部11への分注は、サンプリング機構5で行っても良い。
【0039】
そして、濃度変換されたデータは、記憶装置12に記憶され、コンピュータ10に付属する表示装置に表示される。測光の終了した前記反応容器21は、洗浄機構9の位置まで移動し、洗浄され、次の分析に供される。
【0040】
以上のように、本実施の形態に係る自動分析装置においては、サンプリング、試薬分注、攪拌、測光、反応容器の洗浄、濃度換算等のデータ処理を順番に実施して、試料の比色分析を行うことができる。
【0041】
<<電解質測定装置の構成および動作>>
図2を用いて、前述した自動分析装置に含まれる電解質測定装置(電解質測定部11とその周辺の電磁弁やシリンジ等の機構部を含む部分)の構成および動作について説明する。図2は、この電解質測定装置の一例を示す概略構成図である。
【0042】
図2において、201は試料容器、202はプローブ、203は希釈容器、204はNaイオン選択電極、205はKイオン選択電極、206はClイオン選択電極、207は比較電極、208はシッパーシリンジ、209は内部標準液シリンジ、210は希釈液シリンジ、211はピンチバルブ、212は比較電極用二方電磁弁、213はシッパーシリンジ吸引用二方電磁弁、214は廃液吐出用二方電磁弁、215は内部標準液吐出用二方電磁弁、216は内部標準液吸引用二方電磁弁、217は希釈液吐出用二方電磁弁、218は希釈液吸引用二方電磁弁、219は比較電極液ボトル、220は内部標準液ボトル、221は希釈液ボトル、222はシッパーノズル、223は希釈液用ヒーター、224は内部標準液用ヒーター、225は希釈容器用ヒーター、226はイオン選択電極用ヒーター、227は比較電極用ヒーター、228は真空ノズルである。
【0043】
本実施の形態における電解質測定装置は、主に、電極法により液中の電解質を測定する電解質測定部と、電解質測定部にて測定した起電力を記憶する記憶部と、液体を保持する希釈容器203と、希釈容器203に液体を分注する分注部と、希釈容器203内の液体を吸引し、電解質測定部に供給するシッパーノズル222と、希釈容器203内の液体の液面高さを検出する処理を制御する制御部等を備えて構成される。
【0044】
電解質測定部は、Naイオン選択電極204、Kイオン選択電極205、およびClイオン選択電極206と、比較電極207等から構成される。電解質測定部の周辺には、シッパーノズル222からNaイオン選択電極204、Kイオン選択電極205、Clイオン選択電極206までの流路に希釈容器203内の希釈試料溶液(試料溶液が希釈液で希釈された溶液)、または内部標準液を吸引して満たすためのシッパーシリンジ208、およびシッパーシリンジ吸引用二方電磁弁213が設けられ、また、比較電極液ボトル219から比較電極207までの流路に比較電極液ボトル219の比較電極液を満たすための比較電極用二方電磁弁212が設けられている。
【0045】
分注部は、試料容器201の試料溶液を吸引して希釈容器203に吐出するプローブ202と、希釈液ボトル221の希釈液を吸引して希釈容器203に吐出する希釈液吸引用二方電磁弁218、希釈液シリンジ210、および希釈液吐出用二方電磁弁217と、内部標準液ボトル220の内部標準液を吸引して希釈容器203に吐出する内部標準液吸引用二方電磁弁216、内部標準液シリンジ209、および内部標準液吐出用二方電磁弁215等から構成される。
【0046】
シッパーノズル222は、希釈容器203内の希釈試料溶液または内部標準液を吸引するノズルである。また、このシッパーノズル222は、上下方向に駆動可能であり、希釈容器203に対して上限点から一定量ずつ下降することができる構造となっている。
【0047】
この電解質測定装置において、例えば、希釈容器203は図1に示した反応容器21に対応し、また、シッパーノズル222は図1に示した電解質測定用サンプリング機構30の電解質測定用サンプルプローブ35に対応する。さらに、これに限られるものではないが、イオン選択電極204〜206や比較電極207等は図1に示した電解質測定部11に含まれる。さらに、電解質測定装置を構成する記憶部は図1に示した記憶装置12(あるいはコンピュータ10内の記憶領域や付属の記憶媒体)に対応し、また、制御部は図1に示した制御部13(あるいはコンピュータ10も含む)に対応する。この制御部13は、図4〜図6において後述する、希釈容器203内の溶液の液面高さ検出処理フローや希釈容器203内の溶液の流量測定処理フロー等を制御する。
【0048】
以上のように構成される電解質測定装置において、まずこの電解質測定装置の動作について図2を用いて説明する。この電解質測定装置の動作は、制御部13によりコンピュータ10を介して制御される。
【0049】
図2において、試料容器201の試料溶液はプローブ202にて設定量吸引され、希釈容器203に吐出される。そして、希釈液ボトル221の希釈液は、希釈液吸引用二方電磁弁218、希釈液シリンジ210、希釈液吐出用二方電磁弁217の動作により希釈容器203に吐出され、試料容器201から希釈容器203に吐出された試料溶液が希釈される。
【0050】
ピンチバルブ211が閉じた状態で、シッパーシリンジ208、シッパーシリンジ吸引用二方電磁弁213の動作により、比較電極液ボトル219の比較電極液は、比較電極用二方電磁弁212を介して、比較電極207まで吸引される。次に、希釈容器203にて希釈された希釈試料溶液は、ピンチバルブ211が開いた状態で、シッパーシリンジ208、シッパーシリンジ吸引用二方電磁弁213の動作により、シッパーノズル222からNaイオン選択電極204、Kイオン選択電極205、Clイオン選択電極206まで吸引される。そして、比較電極207とイオン選択電極204,205,206との間に生じる起電力が測定される。希釈容器203に残された希釈試料溶液は、真空ノズル228で除去される。
【0051】
一方、内部標準液ボトル220の内部標準液は、内部標準液吸引用二方電磁弁216、内部標準液シリンジ209、内部標準液吐出用二方電磁弁215の動作により、希釈容器203に吐出される。希釈試料溶液と内部標準液が交互にシッパーノズル222からイオン選択電極204,205,206まで吸引されて、比較電極207とイオン選択電極204,205,206との間に生じる起電力が測定される。希釈容器203に残された内部標準液は、真空ノズル228で除去される。
【0052】
理想状態において、比較電極207とイオン選択電極204,205,206との間に生じる起電力は、
E=E’+2.303×RT/nF×log(f×Ci)……(1)
E:起電力
E’:測定系により定まる一定起電力
R:気体定数
T:絶対温度
F:ファラデー定数
f:活量係数
Ci:イオン(i)の濃度
n:イオン(i)の電荷数
以上の計算式で表される。
【0053】
式(1)より、起電力は絶対温度に依存するため、電解質測定装置の希釈容器203、希釈容器203内の溶液および電解質測定部は恒温制御されている。試料濃度は、内部標準液と試料溶液の起電力の差とあらかじめ作成しておいた検量線から算出する。測定が終了した試料や内部標準液は、廃液吐出用二方電磁弁214の開閉により、廃液流路から装置外に排出される。
【0054】
なお、内部標準液および希釈液は、内部標準液吐出用二方電磁弁215および希釈液吐出用二方電磁弁217を通過後、内部標準液用ヒーター224および希釈液用ヒーター223により温められる。また、希釈容器203、イオン選択電極204,205,206、および比較電極207は、それぞれ、希釈容器用ヒーター225、イオン選択電極用ヒーター226、および比較電極用ヒーター227により温度制御されている。
【0055】
<<電解質測定装置の測定系が変化した場合の状態変化>>
続いて、前述した電解質測定装置の動作において、この電解質測定装置の測定系が変化した場合について図3を用いて説明する。図3は、この電解質測定装置の測定系が変化した場合の測定起電力の電位と希釈容器内の溶液の液面高さとの関係の一例を示す説明図である。
【0056】
電解質測定装置の測定系が変化すると、前述した式(1)の測定系により定まる一定起電力E’が変化し、得られる起電力Eも変わる。例えば、イオン選択電極204,205,206と電気的に導通したシッパーノズル222が、希釈容器203内の溶液と非接触の状態(図3に示す状態1)と接触の状態(図3に示す状態2)とでは測定系が異なるため、仮に同一試料が電極内に満たされていたとしても、得られる起電力は異なる。
【0057】
通常の電解質測定では、測定系によって決まる起電力E’が一定となるように試料を測定し、得られた起電力から試料濃度の算出を行う。一方、本実施の形態では、濃度起因による起電力の変化が無いように同一の電解質溶液を測定する。この場合、測定系が変化しなければ(希釈容器203内の溶液とシッパーノズル222が非接触ならば(状態1))、得られる起電力は一定であり、測定系が変化すれば(希釈容器203内の溶液とシッパーノズル222が接触すれば(状態2))、測定系によって決まる起電力E’が変化し、得られる起電力Eも変化する。
【0058】
そこで、本実施の形態における電解質測定装置においては、この希釈容器203内の溶液とシッパーノズル222が非接触の状態1と、希釈容器203内の溶液とシッパーノズル222が接触の状態2との状態変化に着目して、以下において具体的に説明するように、希釈容器203内の溶液の液面高さ検出処理、希釈容器203内の溶液の流量測定処理を行うものである。
【0059】
<<希釈容器内の溶液の液面高さ検出処理フロー(1)>>
前述した図2を参照しながら、図4を用いて、前述した電解質測定装置における希釈容器内の溶液の液面高さ検出処理フローについて説明する。図4は、この希釈容器内の溶液の液面高さ検出処理フローの一例を示すフローチャートである。
【0060】
この希釈容器内の溶液の液面高さ検出処理フローは、制御部13によりコンピュータ10を介して制御される。すなわち、制御部13は、例えばコンピュータ10上で動作する装置立ち上げ時の制御プログラムに基づいて、シッパーノズル222が希釈容器203内の溶液に接触していない状態で電解質測定部にて測定した起電力E0を記憶部に記憶し、シッパーノズル222が希釈容器203内の溶液に接触する状態までの過程で電解質測定部によって得られた起電力Enと記憶部に記憶している起電力E0とに基づいて、希釈容器203内の溶液の液面高さを検出する処理を制御するものである。
【0061】
さらに、制御部13は、このコンピュータ10上で動作する装置立ち上げ時の制御プログラムに基づいて、希釈容器203への溶液の分注を繰り返している過程で、起電力Enと起電力E0との差が規定値以上となったことを判断する機能も実現する。この判断する機能の閾値ΔEとなる規定値を記憶する規定値記憶部は、記憶装置12あるいはコンピュータ10内の記憶領域や付属の記憶媒体に設けられている。
【0062】
まず、希釈容器203内の溶液の液面高さを検出する前準備として、廃液吐出用二方電磁弁214の開閉により、流路内の古い内部標準液を廃液流路から装置外へ排出する。また、内部標準液ボトル220の内部標準液を内部標準液吸引用二方電磁弁216、内部標準液シリンジ209、内部標準液吐出用二方電磁弁215の動作により、希釈容器203に吐出する。
【0063】
ステップS1の電解質溶液吸引において、希釈容器203に吐出された内部標準液を、シッパーシリンジ208、シッパーシリンジ吸引用二方電磁弁213、ピンチバルブ211により、シッパーノズル222からイオン選択電極204,205,206まで吸引する。この動作を複数回実施し、シッパーノズル222からイオン選択電極204,205,206までを新しい内部標準液で満たし、イオン選択電極204,205,206とシッパーノズル222の先端が導通された状態とする。
【0064】
次に、ステップS2のシッパーノズル先端位置制御において、シッパーノズル222を検出したい液面高さまで駆動し、停止させる。そして、ステップS3の起電力E0測定において、希釈容器203内の残液を真空ノズル228で除去した後、シッパーノズル222の高さを維持した状態で起電力E0を測定し、得られた起電力E0を記憶部(記憶装置12あるいはコンピュータ10内の記憶領域や付属の記憶媒体)に記録する。
【0065】
さらに、ステップS4の希釈容器への溶液吐出において、希釈容器203に溶液を一定量吐出する。この溶液には、純水や洗剤、希釈液、内部標準液などを用いる。この状態で、ステップS5の起電力En(1回目はn=1)測定において、ステップS3で測定した内部標準液の起電力Enを再度測定する。
【0066】
続いて、ステップS6において、ステップS3で記憶部に記録した起電力E0とステップS5で測定した起電力Enとに基づいて、|En−E0|>ΔEの判定を行う。例えば、溶液がシッパーノズル222に達した場合、ステップS5で得られる起電力EnはステップS3で得られる起電力E0と異なる。そこで、EnとE0の差(|En−E0|)を測定し、この差と事前に決められた閾値(ΔE)とを比較する。
【0067】
このステップS6での比較の結果、EnとE0の差が閾値より大きい(|En−E0|>ΔE)場合(Yes)、希釈容器203内の液面がシッパーノズル222の先端に達したことになる。この場合に、ステップS7の液面検出において、希釈容器203内の溶液の液面高さを検出する。
【0068】
一方、ステップS6の比較の結果、EnとE0の差が閾値より小さい(|En−E0|<ΔE)場合(No)、希釈容器203内の液面がシッパーノズル222の先端に達していないことになる。この場合は、ステップS4の希釈容器への溶液吐出から、ステップS5の起電力En(2回目はn=2、以降順に3回目はn=3、…)測定、ステップS6の|En−E0|>ΔEの判定までを、EnとE0の差が閾値より大きくなるまで繰り返し、EnとE0の差が閾値より大きくなった際に、ステップS7において希釈容器203内の溶液の液面高さを検出する。
【0069】
このように、図4に示す希釈容器203内の溶液の液面高さ検出処理フローの例においては、希釈容器203に溶液を一定量ずつ吐出し、|En−E0|>ΔEの判定条件が成立するまで動作を繰り返すことで、希釈容器203内の溶液の液面高さを検出することができる。
【0070】
<<希釈容器内の溶液の液面高さ検出処理フロー(2)>>
図5を用いて、前述した図4に示した希釈容器内の溶液の液面高さ検出処理フローとは別の例について説明する。図5は、この別の希釈容器内の溶液の液面高さ検出処理フローの一例を示すフローチャートである。ここでは、図4と異なる部分を主に説明する。
【0071】
この希釈容器内の溶液の液面高さ検出処理フローにおいて、制御部13は、例えばコンピュータ10上で動作する装置立ち上げ時の制御プログラムに基づいて、希釈容器203へのシッパーノズル222の下降を繰り返している過程で、起電力Enと起電力E0との差が規定値(閾値ΔE)以上となったことを判断する機能も実現する。
【0072】
まず、ステップS11の電解質溶液吸引において、希釈容器203に吐出された内部標準液を吸引し、シッパーノズル222からイオン選択電極204,205,206までを新しい内部標準液で満たし、イオン選択電極204,205,206とシッパーノズル222の先端が導通された状態とする。
【0073】
次に、ステップS12のシッパーノズル上限点移動において、シッパーノズル222を上限点まで駆動し、停止させる。そして、ステップS13の起電力E0測定において、希釈容器203内の残液を真空ノズル228で除去した後、シッパーノズル222の高さを維持した状態で起電力E0を測定し、得られた起電力E0を記憶部に記録する。
【0074】
さらに、ステップS14の希釈容器への溶液吐出において、希釈容器203に純水や洗剤、希釈液、内部標準液などの溶液を吐出する。そして、ステップS15のシッパーノズル一定量下降・下降量記録において、シッパーノズル222を一定量下降させ、この下降量を記憶部(記憶装置12あるいはコンピュータ10内の記憶領域や付属の記憶媒体)に記録する。この状態で、ステップS16の起電力En測定において、ステップS13で測定した内部標準液の起電力Enを再度測定する。
【0075】
続いて、ステップS17の|En−E0|>ΔEの判定において、EnとE0の差(|En−E0|)と閾値(ΔE)とを比較する。この比較の結果、EnとE0の差が閾値より大きい(|En−E0|>ΔE)場合(Yes)、ステップS18の液面検出において、シッパーノズル222の高さから、希釈容器203内の溶液の液面高さを検出する。
【0076】
一方、ステップS17の比較の結果、EnとE0の差が閾値より小さい(|En−E0|<ΔE)場合(No)、液面高さ検出不能とモニタ(コンピュータ10のモニタ)に出力するとともに、ステップS15のシッパーノズル一定量下降・下降量記録から、ステップS16の起電力En測定、ステップS17の|En−E0|>ΔEの判定までを、EnとE0の差が閾値より大きくなるまで繰り返し、EnとE0の差が閾値より大きくなった際に、ステップS18において希釈容器203内の溶液の液面高さを検出する。
【0077】
このように、図5に示す希釈容器203内の溶液の液面高さ検出処理フローの例においては、シッパーノズル222を一定量ずつ下降させ、|En−E0|>ΔEの判定条件が成立するまで動作を繰り返すことで、希釈容器203内の溶液の液面高さを検出することができる。
【0078】
<<希釈容器内の溶液の流量測定処理フロー>>
図6を用いて、前述した図4および図5に示した希釈容器内の溶液の液面高さ検出処理フローとは別の観点で、前述した電解質測定装置における希釈容器内の溶液の流量測定処理フローについて説明する。図6は、この希釈容器内の溶液の流量測定処理フローの一例を示すフローチャートである。ここでは、図4および図5と異なる部分を主に説明する。
【0079】
この希釈容器内の溶液の流量測定処理フローは、制御部13によりコンピュータ10を介して制御される。すなわち、制御部13は、例えばコンピュータ10上で動作する装置立ち上げ時の制御プログラムに基づいて、希釈容器203への溶液の分注を繰り返している過程で、溶液を分注部で希釈容器203に分注を開始してから、起電力(En)と起電力(E0)との差が規定値(閾値ΔE)以上となるまでの時間を計測し、この計測した時間から分注部で希釈容器203に分注される溶液の流量を算出する機能も実現する。
【0080】
まず、ステップS21の電解質溶液吸引において、希釈容器203に吐出された内部標準液を吸引し、シッパーノズル222からイオン選択電極204,205,206までを新しい内部標準液で満たし、イオン選択電極204,205,206とシッパーノズル222の先端が導通された状態とする。
【0081】
次に、ステップS22のシッパーノズル先端位置制御において、シッパーノズル222の先端に達するのに必要な溶液量が設定値になるように、シッパーノズル222を検出したい液面高さまで駆動し、停止させる。そして、ステップS23の起電力E0測定において、希釈容器203内の残液を真空ノズル228で除去した後、シッパーノズル222の高さを維持した状態で起電力E0を測定し、得られた起電力E0を記憶部に記録する。
【0082】
さらに、ステップS24の希釈容器への一定時間溶液吐出・吐出時間記録において、希釈容器203に純水や洗剤、希釈液、内部標準液などの溶液を一定時間吐出し、この吐出時間を記憶部(記憶装置12あるいはコンピュータ10内の記憶領域や付属の記憶媒体)に記録する。この状態で、ステップS25の起電力En測定において、ステップS23で測定した内部標準液の起電力Enを再度測定する。
【0083】
続いて、ステップS26の|En−E0|>ΔEの判定において、EnとE0の差(|En−E0|)と閾値(ΔE)とを比較する。この比較の結果、EnとE0の差が閾値より大きい(|En−E0|>ΔE)場合(Yes)、ステップS27の吐出時間からの流量算出において、ステップS24で記録した吐出時間の総吐出時間と、シッパーノズル222の先端に達するのに必要な溶液量(設定値)から、希釈容器203に吐出された平均流量や単位時間当たりの流量を算出する。
【0084】
一方、ステップS26の比較の結果、EnとE0の差が閾値より小さい(|En−E0|<ΔE)場合(No)、流量測定不能と出力するとともに、ステップS24の希釈容器への一定時間溶液吐出・吐出時間記録から、ステップS25の起電力En測定、ステップS26の|En−E0|>ΔEの判定までを、EnとE0の差が閾値より大きくなるまで繰り返し、EnとE0の差が閾値より大きくなった際に、ステップS27において希釈容器203に吐出された平均流量や単位時間当たりの流量を算出する。
【0085】
このように、図6に示す希釈容器203内の溶液の流量測定処理フローの例においては、希釈容器203に一定時間ずつ溶液を吐出し、|En−E0|>ΔEの判定条件が成立するまで動作を繰り返すことで、希釈容器203に吐出された溶液の平均流量や単位時間当たりの流量を測定することができる。
【0086】
<<実施の形態の効果>>
以上説明した本実施の形態に係る自動分析装置に含まれる電解質測定装置によれば、イオン選択電極204〜206と比較電極207等を含む電解質測定部と、記憶装置12等の記憶部と、希釈容器203と、プローブ202とシリンジ209,210と電磁弁215〜218等を含む分注部と、シッパーノズル222と、制御部13等を備えることで、以下のような効果を得ることができる。
【0087】
(1)シッパーノズル222が希釈容器203内の溶液に接触していない状態で電解質測定部にて起電力E0を測定し、シッパーノズル222が希釈容器203内の溶液に接触する状態までの過程で電解質測定部によって起電力Enを測定し、起電力Enと起電力E0とに基づいて、希釈容器203内の溶液の液面高さを検出することができる。
【0088】
(2)シッパーノズル222が希釈容器203内の溶液に接触する状態までの過程では、希釈容器203への溶液の分注を繰り返し、起電力Enと起電力E0との差が閾値ΔE以上となったことを判断して、希釈容器203内の溶液が所定量、あるいは所定の液面高さまで収容されていることを検出することで、水位センサや圧力センサ等の機構を設置することなく、希釈容器203内の溶液の液面高さを測定することができる。
【0089】
(3)シッパーノズル222が希釈容器203内の溶液に接触する状態までの過程では、希釈容器203へのシッパーノズル222の下降を繰り返し、起電力Enと起電力E0との差が閾値ΔE以上となったことを判断して、希釈容器203内の溶液が所定量、あるいは所定の液面高さまで収容されていることを検出することで、水位センサや圧力センサ等の機構を設置することなく、希釈容器203内の溶液の液面高さを測定することができる。
【0090】
(4)溶液を分注部で希釈容器203に分注を開始してから、起電力Enと起電力E0との差が閾値ΔE以上となるまでの時間を計測し、この計測した時間から分注部で希釈容器203に分注される溶液の流量を算出することで、水位センサや圧力センサ等の機構を設置することなく、希釈容器203に吐出される溶液の平均流量や単位時間当たりの流量を測定することができる。
【0091】
(5)上記(1)〜(4)により、構造が単純で信頼性の高い電解質測定装置を提供することができる。
【0092】
(6)上記(1)〜(4)により、従来行ってきた検査技師による希釈容器203の清掃が不要になり、検査技師の負担軽減に貢献することができる。
【0093】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の自動分析装置は、特に、生体液中のイオン分析に使用する電解質測定装置、およびこの電解質測定装置を含む生化学自動分析装置、さらにこれらの制御方法に適用して有効である。
【符号の説明】
【0095】
1…サンプルディスク、2…試薬ディスク、3…反応ディスク、4…反応槽、5…サンプリング機構、6…試薬分注機構、7…攪拌機構、8…測光機構、9…洗浄機構、10…コンピュータ、11…電解質測定部、12…記憶装置、13…制御部、14…圧電素子ドライバ、15…攪拌機構コントローラ、16…試料容器、17…円形サンプルディスク、18…試薬ボトル、19…円形試薬ディスク、20…保冷庫、21…反応容器、22…反応容器ホルダ、23…駆動機構、24…サンプルプローブ、25…サンプルプローブ支承軸、26…サンプルプローブアーム、27…試薬プローブ、28…試薬プローブ支承軸、29…試薬プローブアーム、30…電解質測定用サンプリング機構、31…固定部、33…ノズル、34…上下駆動機構、35…電解質測定用サンプルプローブ、36…電解質測定用サンプルプローブ支承軸、37…電解質測定用サンプルプローブアーム、
201…試料容器、202…プローブ、203…希釈容器、204…Naイオン選択電極、205…Kイオン選択電極、206…Clイオン選択電極、207…比較電極、208…シッパーシリンジ、209…内部標準液シリンジ、210…希釈液シリンジ、211…ピンチバルブ、212…比較電極用二方電磁弁、213…シッパーシリンジ吸引用二方電磁弁、214…廃液吐出用二方電磁弁、215…内部標準液吐出用二方電磁弁、216…内部標準液吸引用二方電磁弁、217…希釈液吐出用二方電磁弁、218…希釈液吸引用二方電磁弁、219…比較電極液ボトル、220…内部標準液ボトル、221…希釈液ボトル、222…シッパーノズル、223…希釈液用ヒーター、224…内部標準液用ヒーター、225…希釈容器用ヒーター、226…イオン選択電極用ヒーター、227…比較電極用ヒーター、228…真空ノズル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極法により液中の電解質を測定する電解質測定部と、
前記電解質測定部にて測定した起電力を記憶する記憶部と、
液体を保持する容器と、
前記容器に液体を分注する分注部と、
前記容器内の液体を吸引し、前記電解質測定部に供給するシッパーノズルと、
前記シッパーノズルが前記容器内の液体に接触していない状態で前記電解質測定部にて測定した起電力(E0)を前記記憶部に記憶し、前記シッパーノズルが前記容器内の液体に接触する状態までの過程で前記電解質測定部によって得られた起電力(En)と前記記憶部に記憶している起電力(E0)とに基づいて、前記容器内の液体の液面高さを検出する処理を制御する制御部とを備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、さらに、
前記起電力(En)と前記起電力(E0)との差を判断するための規定値を記憶する規定値記憶部を備え、
前記制御部は、前記シッパーノズルが前記容器内の液体に接触する状態まで前記容器への前記液体の分注を繰り返している過程で、前記起電力(En)と前記起電力(E0)との差が前記規定値以上となったことを判断して、前記容器内の液体の液面高さを検出することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1記載の自動分析装置において、さらに、
前記起電力(En)と前記起電力(E0)との差を判断するための規定値を記憶する規定値記憶部を備え、
前記制御部は、前記シッパーノズルが前記容器内の液体に接触する状態まで前記容器への前記シッパーノズルの下降を繰り返している過程で、前記起電力(En)と前記起電力(E0)との差が前記規定値以上となったことを判断して、前記容器内の液体の液面高さを検出することを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1記載の自動分析装置において、さらに、
前記起電力(En)と前記起電力(E0)との差を判断するための規定値を記憶する規定値記憶部を備え、
前記制御部は、前記シッパーノズルが前記容器内の液体に接触する状態まで前記容器への前記液体の分注を繰り返している過程で、前記液体を前記分注部で前記容器に分注を開始してから、前記起電力(En)と前記起電力(E0)との差が前記規定値以上となるまでの時間を計測し、この計測した時間から前記分注部で前記容器に分注される前記液体の流量を算出することを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
電極法により液中の電解質を測定する電解質測定部と、
液体を保持する容器と、
前記容器に液体を分注する分注部と、
前記容器内の液体を吸引し、前記電解質測定部に供給するシッパーノズルと、
前記容器内の液体の液面高さを検出する処理を制御する制御部とを備えた自動分析装置の制御方法において、
前記制御部の制御として、
前記シッパーノズルを用いて前記容器内の液体を吸引し、前記電解質測定部と前記シッパーノズルとの流路間を液体で満たすステップと、
前記電解質測定部と前記シッパーノズルとの間に生じる起電力に基づいて、前記容器内の液体が所定量、あるいは所定の液面高さまで収容されていることを検出するための基準となる起電力(E0)を得るステップとを有することを特徴とする自動分析装置の制御方法。
【請求項6】
請求項5記載の自動分析装置の制御方法において、
前記起電力(E0)を得るステップは、前記シッパーノズルが前記容器内の液体に接触していない状態で前記電解質測定部にて前記起電力(E0)を測定するステップであり、
前記制御部の制御として、さらに、
前記シッパーノズルが前記容器内の液体に接触する状態まで前記容器への前記液体の分注を繰り返している過程で、前記電解質測定部によって起電力(En)を測定するステップと、
前記起電力(En)と前記起電力(E0)との差が規定値以上となったことを判断して、前記容器内の液体が所定量、あるいは所定の液面高さまで収容されていることを検出するステップとを有することを特徴とする自動分析装置の制御方法。
【請求項7】
請求項5記載の自動分析装置の制御方法において、
前記起電力(E0)を得るステップは、前記シッパーノズルが前記容器内の液体に接触していない状態で前記電解質測定部にて前記起電力(E0)を測定するステップであり、
前記制御部の制御として、さらに、
前記シッパーノズルが前記容器内の液体に接触する状態まで前記容器への前記シッパーノズルの下降を繰り返している過程で、前記電解質測定部によって起電力(En)を測定するステップと、
前記起電力(En)と前記起電力(E0)との差が規定値以上となったことを判断して、前記容器内の液体が所定量、あるいは所定の液面高さまで収容されていることを検出するステップとを有することを特徴とする自動分析装置の制御方法。
【請求項8】
請求項5記載の自動分析装置の制御方法において、
前記起電力(E0)を得るステップは、前記シッパーノズルが前記容器内の液体に接触していない状態で前記電解質測定部にて前記起電力(E0)を測定するステップであり、
前記制御部の制御として、さらに、
前記シッパーノズルが前記容器内の液体に接触する状態まで前記容器への前記液体の分注を繰り返している過程で、前記液体を前記分注部で前記容器に分注を開始してから、前記起電力(En)と前記起電力(E0)との差が規定値以上となるまでの時間を計測するステップと、
前記計測した時間から前記分注部で前記容器に分注される前記液体の流量を算出するステップとを有することを特徴とする自動分析装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−24799(P2013−24799A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161984(P2011−161984)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】